JP2006132637A

JP2006132637A - サイレントチェーン

Info

Publication number: JP2006132637A
Application number: JP2004321202A
Authority: JP
Inventors: Takashi Tohara; 隆戸原
Original assignee: Tsubakimoto Chain Co
Current assignee: Tsubakimoto Chain Co
Priority date: 2004-11-04
Filing date: 2004-11-04
Publication date: 2006-05-25
Also published as: US20060094551A1; GB2419931B; DE102005050926A1; GB0519857D0; GB2419931A; CN1769739A; CN100473866C

Abstract

【課題】極端に劣化した酸化度の高い潤滑油とともに使用された場合にあっても、異常摩耗伸びが発生することなく、長期に亘って円滑に屈曲摺動するサイレントチェーンを提供する。
【解決手段】ガイドリンクプレートＧＬＰと、該ガイドリンクプレートのピン孔に嵌合固定された連結ピンＱと、該連結ピンがピン孔に遊嵌されてなる噛合い歯を有するインナーリンクプレートＩＬＰとで構成されたサイレントチェーンにおいて、前記インナーリンクプレートは、炭素鋼からなり、熱処理前にバレル混転による磨き処理を行い、表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にした後、表面にクロマイジング処理が施されており、前記連結ピンは、表面にＶＣ層を形成させた後、バレル混転による磨き処理を行い表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にしたことによって、上記の目的を達成する。
【選択図】図１

Description

本発明は、自動車、産業用機械等において、動力伝達、搬送機構等に用いられるサイレントチェーンに関する。

近年、高速及び高荷重条件下で使用される自動車のタイミングチェーン等の分野において、サイレントチェーンの採用が増加している。

サイレントチェーンは、ガイドリンクプレートと、噛合い歯を有するインナーリンクプレートと、ガイドリンクプレートに穿孔されたピン孔に嵌合固定されるとともに、インナーリンクプレートに穿孔したピン孔に遊嵌されている連結ピンとで構成されており、インナーリンクプレートがスプロケットの歯先に接触して噛み合い始めるときから、離れるときまで、歯形に沿って滑り込むため、スプロケットとチェーンとの衝突による衝撃が緩和され、騒音レベルが低下するという特徴を有している。

このような従来のサイレントチェーンにおいては、連結ピン及びリンクプレートの基材として、入手の容易さや材料原価の点から、合金鋼や高炭素鋼を使用していた。そして、連結ピンの表面に、浸炭焼入処理や浸炭窒化処理等の表面処理を施し、連結ピンの摩耗を抑制していた。

また、連結ピン表面の表面処理に加えて、リンクプレート表面に窒化処理や拡散浸透処理の表面硬化処理を施し、リンクプレートの摩耗を抑制することも提案されていた（例えば、特許文献１参照）。
特開２０００−２４９１９６号公報

ところが、上述したサイレントチェーンにおいては、連結ピン表面やリンクプレート表面への表面処理にもかかわらず、期待した耐摩耗性を発揮せずに異常に摩耗するチェーンが、ごくわずかであるが存在することが報告された。そのため、エンジンの一層の信頼性向上のためにチェーンの異常摩耗伸びの克服が急務の課題であった。そこで本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、このチェーンの異常摩耗伸びは、エンジンルーム内の潤滑油が極度に劣化し、潤滑油の酸化がｐH＜３（全酸価が６以下）にまで進行した際に、インナーリンクプレートのピン孔内壁の摩耗が促進されることによって発生することを解明した。さらに連結ピンとインナーリンクプレートの基材の材質が同じ場合には、両者の基材が凝着しやすく、摩耗を一層促進させる原因となっていることも明らかになった。

そこで、本発明の目的は、前述したような従来のサイレントチェーンが抱えていた問題点を解消し、極端に劣化した酸化度の高い潤滑油とともに使用された場合にあっても、異常摩耗伸びが発生することなく、長期に亘って円滑に屈曲摺動するサイレントチェーンを提供することにある。

請求項１に係る発明は、ガイドリンクプレートと、該ガイドリンクプレートのピン孔に嵌合固定された連結ピンと、該連結ピンがピン孔に遊嵌されてなる噛合い歯を有するインナーリンクプレートとで構成されたサイレントチェーンにおいて、前記インナーリンクプレートは、炭素鋼からなり、熱処理前にバレル混転による磨き処理を行い、表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にした後、表面にクロマイジング処理が施されており、前記連結ピンは、表面にＶＣ（炭化バナジウム）層を形成させた後、バレル混転による磨き処理を行い表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にしたことによって、上記の課題を解決している。

なお、本発明におけるクロマイジング処理とは、鋼を対象として金属元素であるＣｒを拡散浸透させる処理のことをいい、通常は、粉末パック法と呼ばれる方法が用いられる。この粉末パック法とは、拡散原料としての金属粉末、すなわちクロムと、焼結防止剤としてのアルミナ、反応促進剤としてのＮＨ₄Ｃｌの混合粉末中で炭素鋼からなるインナーリンクプレートを加熱することにより、インナーリンクプレートの表面に炭化クロムを形成するものである。

また、磨き処理によって、表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にする理由は、表面粗さは、摺動部材の摩耗に比例的に関与しており、実験的に０．５μｍＲＺ以下であれば、相手材に与える攻撃性が少なく摩耗が少ないものと判断されるからである。

請求項１に係る発明は、ガイドリンクプレートと、該ガイドリンクプレートのピン孔に嵌合固定された連結ピンと、該連結ピンがピン孔に遊嵌されてなる噛合い歯を有するインナーリンクプレートとで構成されたサイレントチェーンにおいて、前記インナーリンクプレートは、炭素鋼からなり、熱処理前にバレル混転による磨き処理を行い、表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にした後、表面にクロマイジング処理が施されており、前記連結ピンは、表面にＶＣ層を形成させた後、バレル混転による磨き処理を行い表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にしたことによって、インナーリンクプレートのピン孔表面が滑らかになり、連結ピンとの摩擦によるピン孔の摩耗が抑制される。

また、インナーリンクプレートの表面に施したクロマイジング処理により、酸化劣化オイルによる酸化や腐食の影響を受けにくい。さらに、連結ピンの表面にＶＣ層を形成させたことにより、リンクプレートに含まれているクロムと連結ピンに含まれているクロムとの間にＶＣ層が存在することになり、同種元素による凝着が抑制される。また、連結ピン表面に磨き処理を施すことにより、連結ピンの表面粗さが緻密になり、インナーリンクプレートとの摺動性が向上し、摩耗が低減される。上記の効果の相乗効果によって、本発明のサイレントチェーンは、酸化雰囲気中においても異常摩耗伸びを起こすことなく長期に亘り円滑に屈曲摺動する。

本発明の実施の形態を実施例に基づき、図１及び図２を参照して説明する。

図１は、本発明のサイレントチェーンの一例を示す斜視図であるが、チェーン内部の構造が分かるように、手前中央の２枚のガイドリンクプレートＧＬＰを切り欠いて図示している。このサイレントチェーン１０は、内側に二股状に形成された２個の歯１２ａ，１２ａを有する複数枚のインナーリンクプレートＩＬＰを連結ピンＱにより連結して無端状に構成されている。各列のインナーリンクプレートＩＬＰは、偶数枚及び奇数枚からなり、図１に示したサイレントチェーン１０においては、２枚のインナーリンクＩＬＰからなるガイド列Ｂと、３枚のインナーリンクプレートＩＬＰからなる関節列Ａとからなり、少ない枚数からなるガイド列Ｂの両側には、上記歯１２ａを有しないガイドリンクプレートＧＬＰが連結ピンＱによりカシメられて連結されている。したがって、最外列にガイドリンクプレートＧＬＰを有するガイド列ＢとインナーリンクプレートＩＬＰのみによって構成される関節列ＡとがピンＱによってチェーンの長手方向に交互に連結されている。

なお、図１に示した例では、ガイド列ＢにおけるインナーリンクプレートＩＬＰが２枚、関節列Ａにおけるインナーリンクプレートが３枚のものについて図示しているが、ガイド列ＢのインナーリンクプレートＩＬＰが関節列Ａのそれより１枚少ないものであれば、特にその枚数については限定されるものではなく、インナーリンクプレート配列が４×５枚のものなど、要求される負荷等に応じて適宜選択することができる。

ここで、本発明におけるインナーリンクプレートＩＬＰは、炭素鋼からなり、熱処理前にバレル混転による磨き処理を行い、表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にした後、表面にクロマイジング処理を施している。一方、連結ピンは、表面にＶＣ層を形成させた後、バレル混転による磨き処理を行い表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にしている。

本発明の有効性を実証するために、上述した本発明に加えて、（１）連結ピンにＶＣ層を形成する処理のみを行い、磨き処理は行わず、インナーリンクプレートに対しては、磨き処理もクロマイジング処理も行わない従来例と、（２）連結ピンにＶＣ層を形成する処理を行わず磨き処理のみを行い、インナーリンクプレートに対しては、磨き処理とクロマイジング処理を行う参考例１、（３）連結ピンにＶＣ層を形成する処理のみを行い磨き処理を行わなく、インナーリンクプレートに対しては、磨き処理及びクロマイジング処理を行う参考例２、（４）連結ピンにＶＣ層を形成する処理及び磨き処理を行い、インナーリンクプレートに対しては、磨き処理は行わずクロマイジング処理のみを行う参考例３、（５）連結ピンにＶＣ層を形成する処理及び磨き処理を行い、インナーリンクプレートに対しては、磨き処理もクロマイジング処理も行わない参考例４の６つのチェーンを製造し、弱酸オイル中でのそれぞれのチェーンの伸びを調べた結果を図２に示す。

図２から明らかなように、上述した処理を施したインナーリンクプレートと連結ピンからなる本発明品は、従来品及び参考例１〜４に比べて、弱酸オイル中における摩耗伸び率において良好な結果が得られた。

本発明は、サイレントチェーンの異常摩耗伸びの原因を究明し、異常摩耗伸びのメカニズムを踏まえて基材の磨き処理と表面処理の最適化を図ったことにより、きわめて再現性良く異常摩耗伸びの発生を回避することができる点で産業上の利用可能性はきわめて大きい。

本発明のサイレントチェーンの一部を示す斜視図。本発明のサイレントチェーンの弱酸オイル中での耐摩耗性試験の結果を示す図。

符号の説明

１０・・・サイレントチェーン
１２ａ・・・歯
ＧＬＰ・・・ガイドリンクプレート
ＩＬＰ・・・インナーリンクプレート
Ｑ・・・連結ピン

Claims

ガイドリンクプレートと、該ガイドリンクプレートのピン孔に嵌合固定された連結ピンと、該連結ピンがピン孔に遊嵌されてなる噛合い歯を有するインナーリンクプレートとで構成されたサイレントチェーンにおいて、
前記インナーリンクプレートは、炭素鋼からなり、熱処理前にバレル混転による磨き処理を行い、表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にした後、表面にクロマイジング処理が施されており、
前記連結ピンは、表面にＶＣ層を形成させた後、バレル混転による磨き処理を行い表面粗さを０．５μｍＲＺ以下にしたこと
を特徴とするサイレントチェーン。