JP2008019923A - 自動車エンジン用チェーン - Google Patents

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Abstract

【課題】極端に劣化した酸化度の高い潤滑油と共に使用された場合にあっても、“異常摩耗伸び”が発生することなく、ブシュとピンとの“凝着に起因する摩耗”が抑制され、 “アブレシブ摩耗”によるピン及びブシュの間の摺接面における“異常摩耗伸び”が抑制され、ブシュとピンの“凝着に起因する摩耗”が抑制された自動車エンジン用チェーンを提供することにある。
【解決手段】ピンの表面が、拡散浸透処理によって、Cr炭化物層を施されており、ピンの母材となる鋼の最外層におけるCr炭化物層が、Cr73 を含み、ピンのCr炭化物層の最外層が、Cr236 を含んでいることにより、上記の課題を解決するものである。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車エンジン用の動力伝達用チェーンやカムシャフト駆動用チェーンに関するものであって、特に好ましくは、自動車エンジン用タイミングチェーンに関する。
近年、自動車用エンジンのカムシャフト駆動機構等に用いられる動力伝達媒体には、高荷重、高速化、レイアウトの自由度の向上及びメンテナンスフリー化の要請から、従来、多用されていた歯付ベルトやVベルトに代わり、耐久性に優れた金属製ローラチェーンや金属製ブシュチェーンの採用が増加している。
一般に、自動車エンジン用金属製チェーンは、円筒状のブシュの両端部が各々一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、ブシュ内に遊貫されたピンの両端が、一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入された構成をしている。
このような構成をした従来のチェーンにおいては、硬度向上、摩耗伸び性能の向上を目的として、(1)ピンに焼入(Quench hardening)・焼戻(Tempering)処理や浸炭(Carburizing)・窒化(Nitriding)処理等の熱処理加工を施したり、(2)ピン表面にボロナイジング処理やクロマイジング処理等の表面硬化処理を施したり、(3)ニッケル等のめっき処理を施したり、(4)焼結合金等の合金鋼で形成したブシュに浸炭処理や窒化処理を施したりしていた(例えば、特許文献1参照)。
また、本願発明の発明者らは、従来の自動車エンジン用タイミングチェーンが抱えていた、エンジンルーム内の極端に劣化した酸化度の高い潤滑油と共に使用された場合に酸化や腐食の影響を受けやすく、ピンとブシュとの凝着(Adhension)に起因して摩耗しやすく、寿命が短いという課題を解決するために、ブシュの材質を浸炭処理を施すと共に、ピンの表面に炭化バナジウム(VC)層を形成した自動車用チェーンを既に開発し、市場で高い評価を得ている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、サイレントチェーンのピンに対して炭化バナジウム(VC)処理を行った後、母材の最表層をバレル研磨処理によって完全に除去することにより、V87以外のバナジウム炭化物を多く含み不純物が除去された炭化バナジウム(VC)層を母材の最外層に形成したものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
実開平1−149048号公報 特許第3659963号公報 特開2005−290435号公報
ところが、上述した特許文献1に開示された自動二輪車用並びに一般機器用の伝動用小型チェーンにおいては、ピン表面にボロナイジング処理やクロマイジング処理等の表面硬化処理を施したり、ニッケル等のめっき処理を施したり、焼結合金等の合金鋼で形成したブシュに浸炭処理や窒化処理を施したりしているにもかかわらず、自動車用エンジンのタイミングチェーン等に使用した際に、期待した耐久性が発揮されずに異常摩耗(Abnormal wear)伸びを生じるチェーンが、ごくわずかであるが存在することが報告された。
また、上述した特許文献2に開示された自動車エンジン用チェーンにおいては、ブシュの材質に浸炭処理を施すと共に、ピンの表面に炭化バナジウム層(VC)を形成したことによって、ブシュとピンとの凝着に起因する摩耗が抑制されるが、ブシュとピンの両方に熱処理加工や炭化バナジウム(VC)層の形成処理が必要であり、“製造原価が上昇”するとともに、金属製チェーンの宿命とも言うべき“潤滑油の給油”が必要であり、“メンテナンス負担の増加”が懸念されていた。
さらに、上述した特許文献3に開示されたサイレントチェーンの表面処理方法を自動車エンジン用チェーンとして使用される、ローラチェーンやブシュチェーンに適用した場合、その摩耗メカニズムは定かではないが、ローラチェーンやブシュチェーンでは、ブシュ内表面が酸化度の高い潤滑油により腐食され、さらに、高負荷下において面圧が高いブシュとピンの摺接により、摺接面の摩耗が促進されるものと推察され、サイレントチェーンに適用したときほどの効果は、得られなかった。
しかも、ピンの最表層をバレル研磨処理によって、完全に除去しているため、ブシュ内表面とピン外表面が面接触をするローラチェーン又はブシュチェーンに適用した場合、摩耗により生じた摩耗粉がピンとブシュの間に夾雑物として存在することにより、摩耗が一層促進する、いわゆる“アブレシブ摩耗(Abrasive wear)”が、ピン及びブシュの間の摺接面の異常摩耗の原因となり、ピンの耐摩耗性を向上させるという効果が、サイレントチェーンに適用した時ほど、発揮できなかった。
さらに、ピンとブシュが親和性の高い材質、例えば、同種元素で構成されている場合には、両者が“凝着”しやすく、自動車エンジン用チェーンの円滑な屈曲摺動を阻害する原因となっていることも明らかになった。
そこで、本発明の第1の目的は、前述したような従来の自動車エンジン用チェーンが抱えていた問題点を解消し、極端に劣化した酸化度の高い潤滑油と共に使用された場合にあっても“アブレシブ摩耗”によるピン及びブシュの間の摺接面における“異常摩耗伸び”が発生することなく、さらに、ピンとブシュが親和性の高い材質、例えば、同種元素で構成されている場合においても、両者が“凝着”し難く、“凝着”に起因する摩耗が抑制され、長期に亘って円滑に屈曲摺動する自動車エンジン用チェーンを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、良好な潤滑性を長期に亘って持続させる自動車エンジン用チェーンを提供することである。
さらに、本発明の第3の目的は、相手材であるブシュへの“攻撃性”を減少させ、“耐衝撃性(Shock resistance)”が向上した自動車エンジン用チェーンを提供することである。
そこで、請求項1に係る自動車エンジン用チェーンは、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、ブシュ内に遊貫されたピンの両端が一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されている自動車エンジン用チェーンであって、ピンの表面が、拡散浸透処理によって、Cr炭化物層が施されており、そのピンの母材となる鋼の最外層におけるCr炭化物層が、Cr73 を含み、さらに、ピンのCr炭化物層の最外層が、Cr236 を含んでいることによって、上記の課題を解決するものである。
また、請求項2に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1に係る自動車エンジン用チェーンの構成に加えて、Cr236 が含まれたピンの最外層に、表面粗さをより小さくする処理を施したことによって、上記の課題をさらに解決するものである。
なお、表面粗さをより小さくするということは、表面をよりきめ細かくすることを意味しており、例えば、表面粗さの測定方法を定めた、JIS0601−1976における十点平均粗さ(Rz)の値が小さくなることを意味している。
さらに、請求項3に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項2に係る自動車エンジン用チェーンの構成に加えて、表面粗さを小さくする処理が、バレル研磨処理であることによって、上記の課題を一層、解決するものである。
請求項4に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1乃至請求項3に係る自動車エンジン用チェーンの構成に加えて、ピンの母材側に形成されたCr73 を含んだ内側Cr炭化物層が、ピンの最表側に形成されたCr236 を含んだ外側Cr炭化物層より厚いことによって、上記の課題をより一層、解決するものである。
請求項1に係る自動車エンジン用チェーンは、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、ブシュ内に遊貫されたピンの両端が一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されている自動車エンジン用チェーンであって、ピンの表面が、拡散浸透処理によって、Cr炭化物層が施されており、そのピンの母材となる鋼の最外層におけるCr炭化物層が、Cr73 を含み、さらに、ピンのCr炭化物層の最外層が、Cr236 を含んでいることによって、ピンの母材上に高硬度の主としてCr73からなる第1層とその上に、耐摩耗性に優れ、多孔質であって耐熱性及び潤滑性にも優れた主としてCr236からなる第2層からなる性質の異なる2層が形成されているので、極端に劣化した酸化度の高い潤滑油の中で使用された場合にも、“異常摩耗伸び”が抑制されると共に、“耐摩耗性”、“耐熱性”、“潤滑性”に優れた自動車エンジン用チェーンが得られる。
また、請求項2に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1に係る自動車エンジン用チェーンが奏する効果に加えて、Cr236 が含まれたピンの最外層に、表面粗さをより小さくする処理を施したことによって、ブシュへの攻撃性およびピン自身の初期なじみによる摩耗が減少することによって初期摩耗および定常摩耗がともに低減される。また、ピンの最外層が、適度な硬度、すなわちビッカース硬度で約1800HV以上を有していることに加えて、ポーラス(多孔質)であるので、“耐摩耗性”が向上する。
さらに、請求項3に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項2に係る自動車エンジン用チェーンが奏する効果に加えて、表面粗さをより小さくする処理がバレル研磨処理であることによって、例えば、
(1)“超仕上げ”(円筒の内外面や平面、球面などワークを鏡面に仕上げることが目的の加工方法で、回転するワークに広い面で接触する砥石をばねで押し付け、且つ、回転軸方向に微小な低周波振動を与える加工方法)、
(2)“化学研磨”(加工したいワークを加工液中に浸して化学反応により平滑にし、光沢を与えることを目的とした加工方法)、及び、
(3)“電解研磨”(加工したいワークを電解液中に浸して、ワークを陽極(+)、加工電極を陰極(−)に繋ぐことによって、陽極のワークの表面を電解液中に溶出される加工方法)などに比べて、被加工物であるピンと研磨材とが、バレル槽内で相対摩擦が起こるので、ピンのような小物部品の研磨を効率よく行うことができる。
請求項4に係る自動車エンジン用チェーンは、請求項1乃至請求項3の構成に加えて、ピンの母材側に形成されたCr73 を含んだ内側Cr炭化物層が、ピンの最外側に形成されたCr236 を含んだ外側Cr炭化物層より厚いことによって、相手材であるブシュへの“攻撃性”が減少するので、チェーンの耐衝撃性が向上し、ブシュの摩耗量を抑制することができる。
これらの効果により、“耐久性”に優れ、“凝着”に起因する摩耗が抑制され、“耐摩耗性”及び“耐衝撃性”に優れ、長期に亘って円滑に屈曲摺動する自動車エンジン用チェーンが提供される。しかも、自動車エンジン用チェーンと共に使用する潤滑油の耐用期間の長期化も図られ、“環境負荷低減”にも寄与する。
本発明の実施の形態を実施例1に基づき、図1を参照して説明する。なお、上述の説明で明らかなように、本発明は、ブシュ内面とピンの外表面の摺接に起因する特性劣化を改善することを目的とした発明であるので、ローラチェーンであってもブシュチェーンであっても効果は、基本的に同じ傾向を示す。したがって、以下の実施例の説明においては、ローラチェーンについてのみ説明する。
図1は、本発明の一実施例であるローラチェーンの一部を示す斜視図である。この図1では、ローラチェーンの内部構造が分かるように、その一部を切り欠いた状態で図示している。
ローラチェーン10は、ブシュ12の両端が、それぞれ一対の内プレート11のブシュ孔11aに圧入され、ブシュ12内に遊貫されたピン15の両端が一対の内プレート11の両外側に配置された一対の外プレート14のピン孔14aに圧入されている。そして、ブシュ12にローラ13を回転自在に外挿している。
本発明のローラチェーン10は、ブシュ12が、合金鋼により構成されていると共に、ピン15の母材となる鋼または低炭素鋼の表面15aに高炭素表面層が形成される。この高炭素表面層の形成方法は、特に限定されるものではないが、浸炭剤中で900〜950℃くらいに加熱し、炭素を拡散させてピン15の表層の炭素量を増加させる、いわゆる “浸炭処理”によって行われる。言うまでもないが、ピン15の母材として高炭素鋼を使用する場合には、この“浸炭処理”を施す必要はない。
次に、このピン15の周辺にクロム粉末又はクロム合金粉末を充填して、900〜1200℃の高温下で5〜25時間加熱処理する拡散浸透処理の一種である“粉末パック法”により、ピン15の表面にクロマイジング層(クロムの拡散層)を形成する。この“粉末パック法”を行うに際して、適宜、アルミナ等の焼結防止剤や塩化アンモニウム等の反応促進剤を添加する。
この実施例1においては、拡散浸透処理の具体的な方法としては、“粉末パック法”により、ピン15の表面にクロマイジング層を形成しているが、この方法以外にも、溶融塩中で処理する“溶融塩法(通称、Toyota Diffusion)”や、クロム粉末と沈殿防止剤を添加した塗料などを塗布して乾燥させ、不活性ガスまたは真空中で加熱する“塗布法”等が知られている。しかしながら、実施例1に於いては、製造原価が安く、ピン15のような小物の処理に適している“粉末パック法”を採用している。
上記のように、高炭素表面層の上に拡散浸透処理によりクロマイジング層を形成させ、処理温度を1000℃程度とすることによって、クロム(Cr)は、強力な炭化物形成元素であるので、ピン15の最外層に形成された高炭素表面層及び母材そのものに含まれる炭素が、ピン15の表面に形成されたクロマイジング層に拡散浸透していき、クロマイジング層に含まれるクロム(Cr)と結合し、図3に示した電子顕微鏡で撮影したピン15表面の断面組織写真から分かるようにピン15の母材となる鋼の最外層におけるCr炭化物層がCr73を含む層となり、ピンの最外層におけるCr炭化物層がCr236を含む層となる。
本実施例の場合、図3に示した断面組織写真から計測すると、母材側のCr73を含むCr炭化物層の厚みが8〜20μmであり、最外層のCr236 を含むCr炭化物層の厚みが1〜6μmである。このように、表面のクロマイジング層が何故に2層に分かれるかについては、今のところ詳細なメカニズムは定かではないが、処理粉末として外部から供給されるクロム(Cr)とピン15の母材および母材表面に形成された高炭素表面層から供給される炭素が結びついて、Cr−C(Cr炭化物層)が形成され、その際に、より母材に近いところでは、より炭素の割合の高いCr73 層が形成され、母材から遠い表面側には、炭素の割合が低いCr236 層が形成される。そして、その形成過程における両者の固相と固相のバランスにより2層に分かれるものと推察される。
次に、実施例1による自動車エンジン用チェーンのピンの特性を図るため下記に示す試験条件で、摩耗伸び試験を行い、その結果を図2に示した。
<摩耗伸び試験条件>
・チェーン: ピッチ8mmのローラチェーン
・スプロケット歯数: 18枚×36枚
・回転速度: 6500r/min
・潤滑油: 劣化したエンジンオイル
・油量: 1L/min
なお、図2に示した実施例1及び実施例2並びに比較のために示した従来例のチェーン伸び試験の結果は、上記の条件で通常のモータリング試験機を用いてチェーン伸び試験を行った結果にのみ基づいている。しかしながら、上記の試験方法は、当業界で通常用いられている試験方法であるので、他の試験方法を行ったとしても、同じ傾向が示されると推認される。
ここで、比較のために示した従来例は、実施例1と同様の方法で製造したピンに対し、バレル研磨処理を徹底的に行い、ピンの表面に形成された2層のCr炭化物層から、最外層のCr236 層を完全に除去したものを示している。そのため、従来例のピンの表面粗さは、向上し、実施例2と同程度の表面粗さを有している。
図2に示したチェーン伸び試験の結果から、実施例1のローラチェーンと、従来例のローラチェーンとを試験時間が50時間経過したところで比較すると、チェーン伸びが略60%に減少している。なお、図2から明らかなように、試験開始後10時間後に、実施例1、実施例2及び従来例ともにチェーン伸びを示す線が屈曲している。これは、初期摩耗(Initial wear)と呼ばれるもので、従来例に比べて、実施例では、小さくなっているが、これは、実施例1では、ピン表面に2層のCr炭化物層が形成されたことによって、1層のCr炭化物層しか有しない従来例に比べて初期摩耗が減少したものである。また、実施例2では、実施例1のピンにピン表面粗さを小さくする処理を施したことによって、ブシュへの攻撃性およびピン自身の初期なじみによる摩耗が減少したものである。
実施例2による自動車エンジン用ローラチェーンは、実施例1のローラチェーンの構成に加えて、Cr236が含まれたピン15の最外層の表面粗さをバレル研磨処理を用いてより小さくし、Cr236が含まれた最外層は多孔質(ポーラス状)であり、ポーラス部が表出している部分は窪みとなり、そこが湯溜まりとなって機能するので、“良好な潤滑性”が長期に亘って持続され、自動車エンジン用ローラチェーンの“耐久性”が向上するものと推察される。このように表面粗さをより小さくするために、バレル研磨処理を用いることによって、被加工物であるピンと研磨材とが、バレル槽内で相対摩擦が起こるので、ピンのような小物部品の研磨を効率よく行うことができる。
図2に示したチェーン伸び試験の結果から、表面粗さをより小さくした実施例2のローラチェーンと、従来例のローラチェーンとを試験時間が50時間経過したところで比較すると、従来例のチェーン伸びを100とすると実施例2のチェーン伸びは、約40であり、チェーン伸びが、明らかに向上している。実施例2のピン表面処理後の最外層厚の目安としては、1〜6μmである。表面粗さを小さくするためにバレル研磨処理を徹底的に行ってしまうと、最外層が完全に無くなってしまい最外層の機能が失われるので、従来例と同一のものになってしまい、ピン摩耗およびブシュ摩耗ともに大きくなる。
ちなみに、表面粗さをより小さくする処理を施していない実施例1の自動車エンジン用チェーンのピンの表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)の値が、0.4〜0.8μmであるのに対して、実施例2では、0.2〜0.3μmであり、ピンの表面粗さが、小さくなっている。
また、実施例2による自動車エンジン用ローラチェーンでは、最外層(Cr236)を確保した状態で、さらに表面粗さを小さくする処理を施すことによって、相手材のブシュへの“攻撃性”が減少し、“ブシュ摩耗量”を抑制することができる。
ちなみに、実施例1、実施例2、従来例の自動車エンジン用ローラチェーンについて、上記の試験を50時間行った後のピン及びブシュの摩耗量を従来例を基準として示すと、実施例1及び実施例2の自動車エンジン用ローラチェーンのピンは、従来例の自動車エンジン用ローラチェーンのピンと比較して摩耗量が15分の1に改善されている。さらに、ブシュの摩耗量については、従来例の自動車エンジン用ローラチェーンのピンと比較して、実施例1では約90%、実施例2では約65%に改善されている。
本発明は、自動車エンジン用チェーンの異常摩耗伸びが潤滑油の酸化劣化に起因することを解明し、その異常摩耗伸びのメカニズムを踏まえて、ピンの表面に施す表面処理の最適化を図ったことにより、特殊な製造設備や高価な材料を用いることなく、きわめて再現性良く異常摩耗伸びの発生を回避することができる点で、産業上の利用可能性は、きわめて大きい。
本発明のローラチェーンの一部を示す斜視図。 本発明のローラチェーンの劣化潤滑油中におけるチェーン伸び試験結果。 本発明のローラチェーンのピンの断面組織写真。
符号の説明
10 ・・・ ローラチェーン
11 ・・・ 内プレート
11a ・・・ ブシュ孔
12 ・・・ ブシュ
13 ・・・ ローラ
14 ・・・ 外プレート
14a ・・・ ピン孔
15 ・・・ ピン
15a ・・・ ピンの表面

Claims (4)

  1. ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に圧入され、前記ブシュ内に遊貫されたピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に圧入されている自動車エンジン用チェーンであって、
    前記ピンの表面が、拡散浸透処理によって、Cr炭化物層が施されており、
    前記ピンの母材となる鋼の最外層における前記Cr炭化物層が、Cr73 を含み、
    前記ピンの前記Cr炭化物層の最外層が、Cr236 を含んでいること
    を特徴とする自動車エンジン用チェーン。
  2. 前記Cr236 が含まれた前記ピンの最外層に、表面粗さをより小さくする処理を施したこと
    を特徴とする請求項1に記載の自動車エンジン用チェーン。
  3. 前記表面粗さをより小さくする処理が、バレル研磨処理であること
    を特徴とする請求項2に記載の自動車エンジン用チェーン。
  4. 前記ピンの母材側に形成されたCr73 を含んだ内側Cr炭化物層が、
    前記ピンの最外側に形成されたCr236 を含んだ外側Cr炭化物層より厚いこと
    を特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の自動車エンジン用チェーン。
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