JP2018063013A - チェーン - Google Patents
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Abstract
【課題】 チェーンにおいて、リンクプレート及びピンの摩耗を低減する。【解決手段】 一対のピン孔を備えた複数のリンクプレートと、前記ピン孔に摺動可能に挿入され、複数の前記リンクプレートを互いに屈曲可能に繋ぐ複数のピンとを有するチェーンであって、前記ピンの外周面のビッカース硬さが、1700HV以上3000HV以下であり、前記リンクプレートの前記ピン孔の孔面のビッカース硬さが、800HV以上1500HV以下であることを特徴とするチェーンを提供する。【選択図】 図4
Description
本発明は、チェーンに関し、特に自動車の内燃機関に使用されるものに関する。
自動車の内燃機関に使用されるサイレントチェーンにおいて、エンジンオイルに混入した煤に起因するリンクプレート及びピンの摺動部の摩耗を抑制するべく、ピンの表面、又はリンクプレートに形成されたピン孔の孔面にバナジウム炭窒化物(VCN)からなる硬質被膜を形成したものがある(例えば、特許文献1)。VCN被膜はビッカース硬さが1600HV以上であり、煤のビッカース硬さ(800HV)よりも高いため、リンクプレート及びピンの摺動部に煤が存在しても、摺動部の摩耗が抑制される。
硬質被膜をリンクプレートに形成する場合、リンクプレートの表面の全域に硬質被膜を形成する手法が、作業性及びコストの観点から有利である。しかしながら、リンクプレートの表面の全域に硬質被膜を形成する場合、リンクプレートの歯部にも同様に硬質被膜が形成され、硬度が高くなる。リンクプレートの歯部が噛み合うスプロケットは、一般的に炭素鋼から形成され、VCNからなる硬質被膜よりも硬度が低い。そのため、リンクプレートとスプロケットとの摺接によって、スプロケットの歯部が摩耗し易くなる。
本発明は、以上の背景を鑑み、チェーンにおいて、リンクプレート及びピンの摩耗を低減することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明の一態様は、一対のピン孔を備えた複数のリンクプレートと、前記ピン孔に摺動可能に挿入され、複数の前記リンクプレートを互いに屈曲可能に繋ぐ複数のピンとを有するチェーンであって、前記ピンの外周面のビッカース硬さが、1700HV以上3000HV以下であり、前記リンクプレートの前記ピン孔の孔面のビッカース硬さが、800HV以上1500HV以下であることを特徴とするチェーンを提供する。
この態様によれば、リンクプレートのピン孔の孔面及びピンの外周面の硬度のそれぞれが、煤の硬度(800HV)よりも高く設定されているため、エンジンオイル内に煤が存在し、煤がリンクプレートのピン孔の孔面及びピンの外周面の間に進入したとしても、リンクプレートのピン孔の孔面及びピンの外周面の摩耗が抑制される。
また、上記の態様において、当該チェーンは、サイレントチェーンであり、前記リンクプレートは、一対の歯部を備え、前記リンクプレートの前記歯部の表面のビッカース硬さが、800HV以上1500HV以下であるとよい。
この態様によれば、リンクプレートの歯部の表面の硬度が、ピンの外周面の硬度よりも低く設定されているため、リンクプレートが噛み合うスプロケットが炭素鋼から形成される場合にも、スプロケットの摩耗が低減される。
また、上記の態様において、前記リンクプレートの前記歯部の表面及び前記ピン孔の孔面のビッカース硬さが、800HV以上1300HV以下であるとよい。
この態様によれば、リンクプレートの歯部の表面の硬度が、煤の硬度よりも高い範囲で一層低く設定されるため、スプロケットの摩耗が一層低減される。
また、上記の態様において、前記リンクプレートは、鋼からなるプレート基材と、前記プレート基材における少なくとも前記ピン孔及び前記歯部の表面に形成され、鉄及びマンガンを含む合金からなるプレート表面層とを有するとよい。
この態様によれば、プレート表面層のビッカース硬さを800HV以上1500HV以下にすることができる。
また、上記の態様において、前記プレート表面層は、(Mn,Fe)3C、(Mn,Fe)7C3、及び(Mn,Fe)23C6の少なくとも1つを含むとよい。
この態様によれば、プレート表面層のビッカース硬さを800HV以上1500HV以下にすることができる。プレート表面層のビッカース硬さは、(Mn,Fe)3Cの場合には1000HV以上1300HV以下になり、(Mn,Fe)7C3又は(Mn,Fe)23C6の場合には1200HV以上1500HV以下になる。
また、上記の態様において、前記プレート表面層は、前記リンクプレートの表面の全域に形成されているとよい。
この態様によれば、リンクプレートの製造性が向上し、コストが低減する。
また、上記の態様において、前記ピンは、鋼からなるピン基材と、前記ピン基材の外周面に形成されたバナジウム系のピン表面層とを有するとよい。
この態様によれば、ピン表面層のビッカース硬さを1700HV以上3000HV以下にすることができる。
また、上記の態様において、前記ピン表面層は、クロム炭化バナジウム、炭化バナジウム、及び窒化バナジウムの少なくとも1つを含むとよい。
この態様によれば、ピン表面層のビッカース硬さを1700HV以上3000HV以下にすることができる。
また、上記の態様において、前記ピン表面層は、前記ピンの表面の全域に形成されているとよい。
この態様によれば、ピンの製造性が向上し、コストが低減する。
また、上記の態様において、前記リンクプレートの前記歯部が噛み合うスプロケットの歯部のビッカース硬さが、800HV以上900HV以下であるとよい。
この態様によれば、リンクプレートとスプロケットとの摺接部において、煤に起因する摩耗が低減される。
また、上記の態様におけるチェーンはガソリン直噴エンジン又はディーゼルエンジンに使用されるとよい。
上記の態様におけるチェーンは、上述したように煤に起因する摩耗が生じ難いため、エンジンオイルへの煤の混入が比較的多いガソリン直噴エンジンやディーゼルエンジンへの使用に適している。
以上の構成によれば、チェーンにおいて、リンクプレート及びピンの摩耗が低減する。
以下、図面を参照して、本発明のチェーンの実施形態について説明する。実施形態に係るサイレントチェーン1は、例えば、内燃機関においてクランクシャフトに設けられたスプロケットと、吸気及び排気カムシャフトのそれぞれに設けられたスプロケット7とに巻き掛けられて使用される。本実施形態に係るサイレントチェーン1は、特に、煤がエンジンオイルに混入し易いガソリン直噴エンジンやディーゼルエンジンへの使用に適している。
図1及び図2に示すように、サイレントチェーン1は、複数のリンクプレート2と、各リンクプレート2を屈曲可能に繋ぐ複数のピン3とを有する。リンクプレート2は、インナプレート4とアウタプレート5とを有する。各インナプレート4は、所定の方向に延びた形状に形成され、長手方向における両端において厚み方向に貫通した一対のピン孔4Aと、長手方向に沿った側縁の一方から側方に突出した一対の歯部4Bとを有する。各インナプレート4は、長手方向における端部が隣り合うインナプレート4の端部と重なり合い、かつそれぞれの歯部4Bが一側に並ぶように配置され、ピン孔4Aにピン3が摺動可能に挿入されることによって互いに回動可能に連結されている。これにより、複数のインナプレート4は、複数のピン3によって無端状にかつ屈曲可能に繋がっている。
ピン3によって互いに連結される各インナプレート4は、それぞれの厚み方向において複数個が同位置に間隔をおいて積層されている。サイレントチェーン1は、厚み方向において所定の複数個のインナプレート4が積層された第1部分と、第1部分における数よりも1個多い複数個のインナプレート4が積層された第2部分とを、サイレントチェーン1の長手方向に交互に有する。第1部分と第2部分とは、互いに連結される端部において、それぞれのインナプレート4が厚み方向に交互に配列されている。
第1部分の厚み方向における両端部には、それぞれアウタプレート5が設けられている。各アウタプレート5は、インナプレート4の2つのピン孔4Aと対応する位置にそれぞれピン孔5Aを有する。ピン3は、各インナプレート4のピン孔4Aと同様にアウタプレート5のピン孔5Aを通過し、各アウタプレート5の外方における両端部においてかしめられている。これにより、ピン3は、インナプレート4及びアウタプレート5から抜け出せない状態となっている。アウタプレート5は、一方の側縁にインナプレート4の一対の歯部4B及び一対の歯部4B間の空間に対応した部分を覆う突出部5Bを有する。
インナプレート4及びアウタプレート5は、鋼から形成されたプレート基材と、プレート基材の表面に形成されたプレート表面層とを有する。プレート基材を形成する鋼は、例えばオーステンパー処理されたオーステンパー材又はマルテンパー処理されたマルテンパー材であることが好ましく、例えばSAE1050等の炭素鋼である。プレート基材の硬度(ビッカース硬さ)は、500HV以上600HV以下であることが好ましい。以下、本実施形態では、単に硬度という場合にはビッカース硬さのことをいう。
インナプレート4のプレート表面層は、少なくともプレート基材の歯部4Bの表面及びピン孔4Aの孔面に対応した部分に形成されている。インナプレート4及びアウタプレート5のプレート表面層は、プレート基材の表面の全域に形成されていることが好ましい。プレート表面層は、例えば、鉄及びマンガンを含む合金から形成されており、鋼からなるプレート基材の表面にマンガンが拡散した層(被膜)であってよい。プレート表面層は、例えば(Mn,Fe)3C、(Mn,Fe)7C3、及び(Mn,Fe)23C6の少なくとも1つを含むとよい。(Mn,Fe)3Cは、セメンタイトにマンガンが固溶した形態を表す。プレート表面層の硬度は、800HV以上1500HV以下であり、より好ましくは800HV以上1300HV以下である。プレート表面層は、(Mn,Fe)3Cの場合には硬度が1000HV以上1300HV以下となり、(Mn,Fe)7C3又は(Mn,Fe)23C6の場合には硬度が1200HV以上1500HV以下となる。プレート表面層の厚みは、5μm以上15μm以下であり、約10μmが好ましい。
鉄及びマンガンを含む合金からなるプレート表面層は、公知の様々な被膜形成方法を用いて形成することができ、例えば粉末パック法によって鋼から形成されたプレート基材の表面に形成される。鋼から形成されたプレート基材の表面に鉄及びマンガンを含む合金からなるプレート表面層を形成した場合、プレート基材側に(Mn,Fe)7C3及び(Mn,Fe)23C6が多く存在し、表面側(プレート基材と相反する側)に(Mn,Fe)3Cが多く存在する。
ピン3は、鋼から形成されたピン基材と、ピン基材の表面に形成されたピン表面層とを有する。ピン基材を形成する鋼は、例えばSUJ2等の高炭素クロム鋼であることが好ましい。ピン表面層は、バナジウム系の硬質被膜であり、クロム炭化バナジウム(CrVC)、炭化バナジウム(VC)、及び窒化バナジウム(VN)の少なくとも1つを含むとよい。クロム炭化バナジウム、炭化バナジウム、及び窒化バナジウムのピン表面層は、鋼であるピン基材の表面へのクロム炭化バナジウム、炭化バナジウム、及び窒化バナジウムの拡散浸透処理によって形成される。ピン3は、ピン基材の表面にピン表面層を形成した後に、焼入れ及び焼戻し処理がなされているとよい。ピン3の外周面を含むピン表面層の硬度は、1700HV以上3000HV以下であることが好ましい。
スプロケット7は、炭素鋼から形成され、例えば高濃度浸炭処理によってセメンタイトが表面に形成されていることが好ましい。インナプレート4の歯部4Bと噛み合うスプロケット7の歯部7Aの硬度は、800HV以上900HV以下であるとよい。
以上のように構成したサイレントチェーン1は、インナプレート4及びアウタプレート5を含むリンクプレート2のピン孔4Aの孔面及びピン3の外周面の硬度のそれぞれが、煤の硬度(800HV)よりも高く設定されているため、エンジンオイル内に煤が存在し、エンジンオイルによる潤滑によって煤がピン孔4Aの孔面及びピン3の外周面の間に進入したとしても、ピン孔4Aの孔面及びピン3の外周面の摩耗が抑制される。また、リンクプレート2の歯部4Bの表面の硬度が、ピン3の外周面の硬度よりも低く設定されているため、リンクプレート2が噛み合うスプロケット7が炭素鋼から形成される場合にも、スプロケット7の摩耗が低減される。
また、インナプレート4及びアウタプレート5の表面の全領域にプレート表面層を形成するため、インナプレート4及びアウタプレート5の製造が容易であり、製造コストの削減が可能になる。
(実施例)
以下、上記実施形態に係るサイレントチェーン1の実施例1と、比較例1〜5との各種測定結果を以下に示す。実施例1と比較例1〜5とは、形状、プレート基材の材料、ピン基材の材料が互いに同じであり、プレート表面層の材料及びピン表面層の材料が互いに相違する。
以下、上記実施形態に係るサイレントチェーン1の実施例1と、比較例1〜5との各種測定結果を以下に示す。実施例1と比較例1〜5とは、形状、プレート基材の材料、ピン基材の材料が互いに同じであり、プレート表面層の材料及びピン表面層の材料が互いに相違する。
実施例1及び比較例1〜5では、プレート基材がオーステンパー材であるSAE1050によって形成され、ピン基材がSUJ2から形成されている。
実施例1では、プレート表面層が、主に(Mn,Fe)3Cである鉄及びマンガンを含む合金から形成され、ピン表面層が炭化バナジウムによって形成されている。実施例1におけるプレート表面層の硬度は1000HVであり、ピン表面層の硬度は2300HVである。
比較例1では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層が炭化バナジウムによって形成されている。比較例1におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は2300HVである。
比較例2では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層がクロム炭化バナジウムによって形成されている。比較例2におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は1800HVである。
比較例3では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層が炭化クロムによって形成されている。比較例3におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は1550HVである。
比較例4では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層が炭化チタンによって形成されている。比較例4におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は3100HVである。
比較例1〜4では、プレート表面層として硬質被膜が形成されていない。
比較例5では、プレート表面層が炭化クロムから形成され、ピン表面層が炭化バナジウムによって形成されている。比較例5におけるプレート表面層の硬度は1550HVであり、ピン表面層の硬度は2300HVである。
図3に示すように、実施例1及び比較例1〜5は、プレート表面層及びピン表面層の硬度によって区別される。
実施例1では、プレート表面層が、主に(Mn,Fe)3Cである鉄及びマンガンを含む合金から形成され、ピン表面層が炭化バナジウムによって形成されている。実施例1におけるプレート表面層の硬度は1000HVであり、ピン表面層の硬度は2300HVである。
比較例1では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層が炭化バナジウムによって形成されている。比較例1におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は2300HVである。
比較例2では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層がクロム炭化バナジウムによって形成されている。比較例2におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は1800HVである。
比較例3では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層が炭化クロムによって形成されている。比較例3におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は1550HVである。
比較例4では、プレート表面層がプレート基材と同じSAE1050から形成され、ピン表面層が炭化チタンによって形成されている。比較例4におけるプレート表面層の硬度は550HVであり、ピン表面層の硬度は3100HVである。
比較例1〜4では、プレート表面層として硬質被膜が形成されていない。
比較例5では、プレート表面層が炭化クロムから形成され、ピン表面層が炭化バナジウムによって形成されている。比較例5におけるプレート表面層の硬度は1550HVであり、ピン表面層の硬度は2300HVである。
図3に示すように、実施例1及び比較例1〜5は、プレート表面層及びピン表面層の硬度によって区別される。
実施例1及び比較例1〜5に係るサイレントチェーンに対して、伸び試験を行った。伸び試験は、長手方向におけるリンクプレートの数が136個であるサイレントチェーンを試験機の駆動スプロケット及び従動スプロケットに巻き掛けて行った。駆動スプロケット及び従動スプロケットは、炭素鋼を高濃度浸炭処理したものであり、その表面はセメンタイトによって形成されて硬度が850HVである。駆動スプロケットの歯数は23個、従動スプロケットの歯数は46個であり、駆動スプロケットの回転数が7000rpm、サイレントチェーンの張力が1500Nである。サイレントチェーンと駆動スプロケットとの噛み始め部には、0.4%のディーゼル排気微粒子を含む0W−20低燃費油(エンジンオイル)を、油温度80℃、油量0.5L/分で供給した。
図4は、実施例1及び比較例1〜4に係るサイレントチェーンについて、伸び試験の試験継続時間(耐久時間)とサイレントチェーン1の伸び(%)との関係を示すグラフである。サイレントチェーンの伸びは、インナプレート及びアウタプレートのピン孔の摩耗、及びピンの摩耗によって生じるため、ピン孔及びピンの摩耗の程度を表している。図4に示すように、実施例1と比較例1との比較によって、ピン表面層の硬度が2300HVで同じである場合、プレート表面層の硬度は550HVよりも1000HVの方がチェーンの伸びが小さくなり、摩耗量が小さいことがわかる。これは、プレート表面層の硬度が煤の硬度(800HV)よりも高くなることによって、煤によるプレート表面層の摩耗が低減されたことに起因すると考えられる。また、比較例2〜4の比較によって、ピン表面層の硬度は2300HV付近のときにピンとインナプレート及びアウタプレートとの摩耗量が最も小さくなると考えられる。ピン表面層の硬度が2300HVよりも低下すると、ピン表面層の硬度が低下することによってピンの摩耗量が増え、ピン表面層の硬度が2300HVよりも高くなると、ピンとインナプレート及びアウタプレートとの硬度差が大きくなることによってインナプレート及びアウタプレートの摩耗量が増加すると考えられる。
図5は、実施例1、比較例1及び5に係るサイレントチェーンについて、プレート表面層の硬度とスプロケットの歯部の摩耗量との関係を示すグラフである。図5の試験結果は、試験継続時間を136時間として得られた結果である。図5に示すように、プレート表面層の硬度が高くなるにつれて、スプロケットの歯部の摩耗量が増加することがわかる。比較例5のように、プレート表面層の硬度が1550HVのとき、スプロケットの摩耗量は50μm以上になる。
図4及び図5の結果から、プレート表面層の硬度は、煤の硬度(800HV)より大きくなると、ピンとインナプレート及びアウタプレートとの合計の摩耗量が低下するが、1500HVより大きくするとスプロケットの摩耗量が問題となる。そのため、プレート表面層の硬度は、800HV以上1500HV以下、より好ましくは800HV以上1300HV以下であるとよい。一方、ピン表面層の硬度は、自身の摩耗量の点からできるだけ高いことが好ましいが、ピン表面層の硬度が高くなりピン表面層の硬度との差が大きくなるとピン表面層の摩耗量が大きくなるため、1700HV以上3000HV以下であるとよい。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記の実施形態では本発明をサイレントチェーンに適用した例について示したが、本発明はローラーチェーンに適用することができる。ローラーチェーンを構成する場合、上述したサイレントチェーン1のリンクプレート2のピン孔4A、5A及びピン3の構成をローラーチェーンのプレート及びピンの構成に適用するとよい。
1 :サイレントチェーン
2 :リンクプレート
3 :ピン
4 :インナプレート
4A :ピン孔
4B :歯部
5 :アウタプレート
5A :ピン孔
5B :突出部
7 :スプロケット
7A :歯部
2 :リンクプレート
3 :ピン
4 :インナプレート
4A :ピン孔
4B :歯部
5 :アウタプレート
5A :ピン孔
5B :突出部
7 :スプロケット
7A :歯部
Claims (11)
- 一対のピン孔を備えた複数のリンクプレートと、前記ピン孔に摺動可能に挿入され、複数の前記リンクプレートを互いに屈曲可能に繋ぐ複数のピンとを有するチェーンであって、
前記ピンの外周面のビッカース硬さが、1700HV以上3000HV以下であり、
前記ピン孔の孔面のビッカース硬さが、800HV以上1500HV以下であることを特徴とするチェーン。 - 当該チェーンは、サイレントチェーンであり、
前記リンクプレートは、一対の歯部を備え、
前記リンクプレートの前記歯部の表面のビッカース硬さが、800HV以上1500HV以下であることを特徴とする請求項1に記載のチェーン。 - 前記リンクプレートの前記歯部の表面及び前記ピン孔の孔面のビッカース硬さが、800HV以上1300HV以下であることを特徴とする請求項2に記載のチェーン。
- 前記リンクプレートは、鋼からなるプレート基材と、前記プレート基材における少なくとも前記ピン孔及び前記歯部の表面に形成され、鉄及びマンガンを含む合金からなるプレート表面層とを有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のチェーン。
- 前記プレート表面層は、(Mn,Fe)3C、(Mn,Fe)7C3、及び(Mn,Fe)23C6の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4に記載のチェーン。
- 前記プレート表面層は、前記リンクプレートの表面の全域に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のチェーン。
- 前記ピンは、鋼からなるピン基材と、前記ピン基材の外周面に形成されたバナジウム系のピン表面層とを有することを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1つの項に記載のチェーン。
- 前記ピン表面層は、クロム炭化バナジウム、炭化バナジウム、及び窒化バナジウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載のチェーン。
- 前記ピン表面層は、前記ピンの表面の全域に形成されていることを特徴とする請求項6又は請求項8に記載のチェーン。
- 前記リンクプレートの前記歯部が噛み合うスプロケットの歯部のビッカース硬さが、800HV以上900HV以下であることを特徴とする請求項2〜請求項9のいずれか1つの項に記載のチェーン。
- ガソリン直噴エンジン又はディーゼルエンジンに使用されることを特徴とする請求項2〜請求項10のいずれか1つの項に記載のチェーン。
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