JPWO2002078468A1 - 血管障害疾患用飲食物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管障害疾患用飲食物に関し、またその原料に関する。
Description
発明の背景
本発明は、血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走、内膜肥厚および動脈硬化等の細胞増殖性血管病変、動脈硬化症および経皮的冠動脈形成術後の再狭窄等の血管障害疾患に対する予防および/または治療の効果を発現する飲食物に関する。
近年、欧米において、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や脳卒中、脳塞栓症等の脳血管疾患が、その死亡率の高さゆえに大きな社会問題になっている。また日本においても、食生活の欧米化や高齢化に伴い、上記疾患が死亡原因の一つとして急増している。これら疾患は、動脈硬化によって生じる血管内腔の狭小化や血管壁の弾力性消失等の血管病変により誘導される。
動脈硬化の成立は、単一ではなく、複数の要因と誘因とによっているが、大別して、その主たる要因を2つに分ける事ができる。1つは動脈内皮損傷による各種網内系細胞の凝集と、それ以降におこる血管平滑筋細胞増殖因子の放出、そして中膜由来の血管平滑筋細胞の動脈硬化巣への遊走及びそこでの増殖であり、他の1つは、コレステロールを含む高脂血症による血管内皮細胞、血管平滑筋細胞の形質転換、そして動脈硬化巣での増殖である。すなわち、血管平滑筋細胞の内膜への遊走、および内膜での増殖によって生じる細胞繊維性の肥厚により、血管内腔の狭小化等の細胞増殖性血管病変が生じる。
血管の狭小化を外科的に治療する方法の一つに、経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:以下、PTCAと略す)がある。これは大腿動脈などからバルーンカテーテルを遠隔的に挿入していき、狭窄部でバルーンを膨らませ、物理的に血管を拡張させる手術であり、施術直後の優れた症状改善率が臨床的に評価されている。
しかしながら、PTCA施行後に再び狭窄が起こる例がある。この再狭窄部位は、血管平滑筋細胞を主とする細胞繊維性内膜肥厚であることが知られている。また、血管平滑筋細胞の増殖、内膜への遊走、マトリックス沈着等の結果により生じる内膜肥厚は、動脈硬化性疾患、高血圧、虚血性心疾患、脳血管疾患においても発症の主な要因となっている。さらに、心臓、肝臓、腎臓、血管等の臓器移植後における血管狭窄も血管平滑筋細胞の増殖が関与している。
狭心症や心筋梗塞の治療薬としては、抗血栓薬や血管拡張薬等が主として用いられているが、PTCA後の再狭窄および動脈硬化によって招来される血管内腔の狭小化や血管の弾力性消失を治療するには至っておらず、これまでのところ血管平滑筋細胞増殖が関与する動脈硬化性疾患、虚血性心疾患および脳血管疾患を薬物で治療することには限界があるため、血管内腔の狭小化の原因となる内膜肥厚や動脈硬化等の細胞増殖性血管病変を予防あるいは治療できる飲食物が渇望されている。
本発明に関わるトリテルペン類とは、一般にイソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転移、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれる。これらの効果としては、概して、抗炎症効果、抗発癌プロモーター効果(日本油化学会誌,49,571,2000)等が知られている。特にウルソール酸やオレアノール酸に関しては、抗高脂血症効果があることが知られており、さらにウルソール酸は高脂血症に伴うアテローム性動脈硬化症に対する効果を有することも知られている(Chemical Abstracts,91,49279r.,1981、あるいは、Farmacology and Toksikology,45,66−70,1982)。しかしながら、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体が、血管平滑筋細胞に対する効果を有することは、これまで、全く知られていなかった。
発明の開示
本発明は、血管平滑筋細胞増殖や遊走を抑制し、内膜肥厚および動脈硬化等の細胞増殖性血管病変や、動脈硬化症およびPTCA後の再狭窄等の血管障害疾患を予防および/または治療するために、これらに対する非常に優れた効果を有する血管障害疾患用飲食物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を達成する為に鋭意検討した結果、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物が、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、抗細胞増殖性血管病変効果、抗血管障害疾患効果等により、血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走によって生じる動脈硬化および内膜肥厚等の細胞増殖性血管病変や、動脈硬化症およびPTCA後の再狭窄等の血管障害疾患に対し、優れた予防および/または治療効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物に関し、また、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物に関する。
また、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走に起因する抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が内膜肥厚である抗内膜肥厚用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が動脈硬化である抗動脈硬化用飲食物に関する。
また本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が細胞増殖性血管病変に起因する血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が動脈硬化症である抗動脈硬化症用飲食物に関し、好ましくは前記血管障害疾患がPTCA後の再狭窄であるPTCA後の抗再狭窄用飲食物に関する。
本発明はまた、オリーブの脱脂物をエタノール溶液で処理して得られる抽出物を含有する血管血管障害疾患用飲食物に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖又は血管平滑筋細胞が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する、内膜肥厚、動脈硬化、細胞増殖性血管病変、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症、動脈硬化症、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄、心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中又は脳血管疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の、血管障害疾患用飲食物を製造するための使用に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料に関する。
本発明はまた、オリーブの脱脂物をエタノール溶液で処理して得られる抽出物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
また、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
これらの物質は、イソプレン単位6個から成るトリテルペン類のうち五環性の化合物であり、自然界においては様々な植物体に多く存在する物質群である。これらは、天然には植物体から抽出して得ることができ、また、その中のいくつかは人工的に合成され、既に試薬等として販売されているものもあり、いずれも好適に使用することができる。天然原料から抽出されたものが好ましい。
これらは血管平滑筋細胞増殖抑制および/または血管平滑筋細胞遊走抑制といった抗動脈硬化効果を有し、これらの効果は、培養細胞による試験法で評価することができる。この評価方法によれば、従来の抗動脈硬化用飲食物として知られているα−トコフェロール(D.Boscoboinik et al.,Arch.Biochem.Biophys.,286(1),264−269(1991))と比較しても、2〜20倍の抗動脈硬化効果を有することがわかる。
ここで、有効成分として含有するとは、その血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果を発揮する程度に含有するということであるが、その含量は特に制限されず、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すれば良い。特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜99.99質量%、さらに好ましくは0.005〜99.99質量%、さらに好ましくは0.01〜99.99質量%、さらに好ましくは0.05〜99.99質量%、さらに好ましくは0.1〜99.99質量%、さらに好ましくは0.5〜99.99質量%、さらに好ましくは1〜99.99質量%である。
また、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走に起因する抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が内膜肥厚である抗内膜肥厚用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が動脈硬化である抗動脈硬化用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。これらは抗細胞増殖性血管病変効果、例えば内膜肥厚抑制効果および/または抗動脈硬化効果を有し、これらの効果は、動物による試験法で評価することができる。
ここで、有効成分として含有するとは、抗細胞増殖性血管病変効果、例えば内膜肥厚抑制効果および/または抗動脈硬化効果を発揮する程度に含有するということであるが、その含量は特に制限されず、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すれば良い。特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜99.99質量%、さらに好ましくは0.005〜99.99質量%、さらに好ましくは0.01〜99.99質量%、さらに好ましくは0.05〜99.99質量%、さらに好ましくは0.1〜99.99質量%、さらに好ましくは0.5〜99.99質量%、さらに好ましくは1〜99.99質量%である。
また本発明は、五環性トリデルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が細胞増殖性血管病変に起因する血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が動脈硬化症である抗動脈硬化症用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患がPTCA後の再狭窄であるPTCA後の抗再狭窄用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。これらは抗血管障害疾患効果、例えば抗動脈硬化症効果および/または抗再狭窄効果を有し、これらの効果は、動物および臨床による試験法で評価することができる。
ここで、有効成分として含有するとは、抗血管障害疾患効果、例えば抗動脈硬化症効果および/または抗再狭窄効果を発揮する程度に含有するということであるが、その含量は特に制限されず、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すれば良い。特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜99.99質量%、さらに好ましくは0.005〜99.99質量%、さらに好ましくは0.01〜99.99質量%、さらに好ましくは0.05〜99.99質量%、さらに好ましくは0.1〜99.99質量%、さらに好ましくは0.5〜99.99質量%、さらに好ましくは1〜99.99質量%である。
本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物および/または血管平滑筋遊走抑制用飲食物および/または抗内膜肥厚用飲食物・抗動脈硬化用飲食物等の抗細胞増殖性血管病変用飲食物および/または抗動脈硬化症用飲食物・PTCA後の抗再狭窄用飲食物等の血管障害疾患用飲食物に関する。これらの物質は、トリテルペン類の1種であり、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物であり、天然の植物から得ることも、人工的に得ることもでき、市販品も好適に利用することができる。天然原料から抽出されたものが好ましい。また、ここで、有効成分として含有するとは、その各目的の効果を発揮する程度に含有するということである。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖又は血管平滑筋細胞が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する、内膜肥厚、動脈硬化、細胞増殖性血管病変、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症、動脈硬化症、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄、心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中又は脳血管疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
生理的に許容される塩とは、特に五環性トリテルペン酸のカルボキシル基から誘導される塩であり(部分構造:−COOX;Xは任意の陽イオン性物質を示す。)、本発明における天然原料からの単離物に本来的に含まれているものも含む。本発明においては、通常飲食物または医薬組成物で用いられている塩であれば特に限定はされない。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛等のアルカリ土類金属塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、テトラブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン等のアルキルアミン塩、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩、ピペラジン、ピペリジン等のその他の有機アミン塩、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン等の塩基性アミノ酸塩等の塩が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩及び塩基性アミノ酸塩が好ましい一概にこれらの塩類は、その元となる五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系の血管障害疾患用飲食物等に適用する場合に好ましい。
また、誘導体とは、生化学的あるいは人工的に形成可能な誘導体であり、本発明においては、可能な誘導体であれば特に限定はされないが、例えば、アルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体、あるいは配糖体等が挙げられる。これらのうち、特にアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、その元となるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンに比べて、より脂溶性を示すため、本発明においては、特に油系の血管障害疾患用飲食物等に適用する場合に好ましく、配糖体は、その元となる五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系の血管障害疾患用飲食物等に適用する場合に好ましい。
これらの誘導体は、一部は天然にも存在し、また、上述の通り人工により形成させることで得ることができる。また、本発明の誘導体を再度誘導体化して、それらの塩を使用することもできる。
このように、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸及びベツリンを、生理的に許容される適当な塩や誘導体の形態にすることにより、水溶性又は油溶性を向上させることができ、従って、ハンドリング性・品質・血管平滑筋細胞増殖抑制効果・血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を向上させた製品を設定することができる。
アルコールエステル基とは、一般的なカルボキシル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−COOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコールエステル基を有する誘導体とは、特に、そのカルボキシル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はトリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
脂肪酸エステル基とは、一般的な水酸基と脂肪酸類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OCOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、脂肪酸エステル基を有する誘導体とは、特に、その水酸基と脂肪酸類から形成可能な誘導体を示す。この際の脂肪酸類に特に制限は無いが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。このうち、酢酸、無水酢酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸又はドコサヘキサエン酸から形成される誘導体が好ましい。
アルコキシ基とは、一般的な水酸基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシ基を有する誘導体とは、特に、その水酸基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はトリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
アルコキシメチル基とは、一般的なヒドロキシメチル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−CH2OR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシメチル基を有する誘導体とは、特に、そのヒドロキシメチル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はトリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
また、本発明における配糖体とは、上記のアルコールエステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体のうち、特に、五環性トリテルペン類のカルボキシル基、水酸基、ヒドロキシメチル基と糖類から形成可能な誘導体を示す(部分構造:−COOR、−OR、−CH2OR;Rは任意の糖類を示す。)。この際の糖類に特に制限は無いが、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、フコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸等が挙げられ、何れもα体、β体どちらでもよい。またこれらの配糖体は、単糖でもよいし、二糖以上の様々な組合せのオリゴ糖でもよい。これらの中には、通常天然に存在し、サボニンという総称で知られているものも有るが、本発明においては、これらのいずれを用いてもよい。
本発明における五環性トリテルペン類等は上述の通りであるが、特に抗動脈硬化効果の高さの面からは、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が好ましい。それぞれ、オレアナン系トリテルペン類については一般式(I)に、ウルサン系トリテルペン類については一般式(II)に、ルパン系トリテルペン類については一般式(III)に示される骨格を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体である。また、それぞれの式中の官能基については、上記と同様である。
(式中、R1、R2は水素原子(−H)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アルコールエステル基(−OCOR)を示し、R3はメチル基(−CH3)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、アルコキシメチル基(−CH2OR)、カルボキシル基(−COOH)、脂肪酸エステル基(−COOR)、カルボン酸塩(−COOX)を示す。)
(式中、R1は水素原子(−H)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アルコールエステル基(−OCOR)を示し、R2はメチル基(−CH3)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、アルコキシメチル基(−CH2OR)、カルボキシル基(−COOH)、脂肪酸エステル基(−COOR)、カルボン酸塩(−COOX)を示す。)
(式中、R1は水素原子(−H)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アルコールエステル基(−OCOR)を示し、R2はメチル基(−CH3)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、アルコキシメチル基(−CH2OR)、カルボキシル基(−COOH)、脂肪酸エステル基(−COOR)、カルボン酸塩(−COOX)を示す。)
本発明において特に制限は無いが、例えば、オレアナン系トリテルペン類として、マスリン酸、オレアノール酸、エリトロジオール、β−アミリン、ヘデラゲニン、グリチルレチン酸等が挙げられ、ウルサン系トリテルペン類として、ウルソール酸、ウバオール、α−アミリン、キノボ酸、タラキサステロール、α−ヒドロキシウルソール酸等が挙げられ、ルパン系トリテルペン類として、ベツリン酸、ベツリン、ルペオール等が挙げられる。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、本発明が飲食物であることを考慮に入れると、天然物を用いることが好ましい。
上述の通り、本発明においては、五環性トリテルペン類のうちのオレアナン系トリテルペン類(I)、ウルサン系トリテルペン類(II)、ルパン系トリテルペン類(III)およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が好ましいが、抗動脈硬化効果の強さの面から更に、オレアナン系トリテルペンとしてマスリン酸、エリトロジオールが好ましく、ウルサン系トリテルペンとしてウルソール酸、ウバオールが好ましく、ルパン系トリテルペンとしてベツリン酸、ベツリンが好ましく、当然に、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が好ましい。
マスリン酸、エリトロジオールは、何れもオレアナン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、マスリン酸、エリトロジオール、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができる。
本発明においては、抗動脈硬化効果等の高さ、安定供給の面で、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が最も好ましい。マスリン酸(maslinic acid)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(IV)に示す構造であり、効果としては、抗炎症効果や抗ヒスタミン効果を有することが知られている。天然には、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、マスリン酸、その生理的に許容される塩および誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等の天然から得られるものが好ましく、特にオリーブから得られるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は原料供給や含量の面で非常に好ましい。これらの原料、特にはオリーブ植物から、水および/または有機溶媒により抽出処理することで得ることができ、さらに濃縮・精製することで高濃度の天然由来マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を簡便かつ大量に得ることができる。
尚、本明細書において、「オリーブ」は、オリーブ植物及び/又はオリーブ油及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物を意味する。
本発明において、マスリン酸の生理的に許容される塩および誘導体については前記記載と同様である。すなわち、その生理的に許容される塩とは化学式(IV)における−COOHから誘導されるものであり、その塩の種類は通常飲食物または医薬組成物で用いられるものであれば特に限定はされない。具体的には、例えば、マスリン酸の塩として、マスリン酸ナトリウム、マスリン酸カリウム、マスリン酸アンモニウム、マスリン酸ジメチルアンモニウム、マスリン酸カルシウム、マスリン酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、マスリン酸ナトリウム及びマスリン酸カリウムが好ましい。
また、マスリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、マスリン酸メチルエステル、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸n−プロピルエステル、マスリン酸イソプロピルエステル、マスリン酸n−ブチルエステル、マスリン酸トリメチルシリルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、マスリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、マスリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、3−O−プロピオニル−マスリン酸、3−O−ブチリル−マスリン酸、3−O−バレリル−マスリン酸、3−O−カプリル−マスリン酸、3−O−ラウリル−マスリン酸、3−O−ミリスチル−マスリン酸、3−O−パルミチル−マスリン酸、3−O−パルミトオレイル−マスリン酸、3−O−ステアリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸、3−O−オレイル−マスリン酸、3−O−バクセニル−マスリン酸、3−O−リノレイル−マスリン酸、3−O−リノレニル−マスリン酸、3−O−アラキジル−マスリン酸、3−O−アラキドニル−マスリン酸、3−O−ベヘニル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−プロピオニル−マスリン酸、2−O−ブチリル−マスリン酸、2−O−バレリル−マスリン酸、2−O−カプリル−マスリン酸、2−O−ラウリル−マスリン酸、2−O−ミリスチル−マスリン酸、2−O−パルミチル−マスリン酸、2−O−パルミトオレイル−マスリン酸、2−O−ステアリル−マスリン酸、2−O−ステアロイル−マスリン酸、2−O−オレイル−マスリン酸、2−O−バクセニル−マスリン酸、2−O−リノレイル−マスリン酸、2−O−リノレニル−マスリン酸、2−O−アラキジル−マスリン酸、2−O−アラキドニル−マスリン酸、2−O−ベヘニル−マスリン酸、3−O−メチル−マスリン酸、3−O−エチル−マスリン酸、3−O−t−ブチル−マスリン酸、3−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸、2−O−メチル−マスリン酸、2−O−エチル−マスリン酸、2−O−t−ブチル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、2−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸等が挙げられるこのうち、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸及び2−O−ステアロイル−マスリン酸が好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、マスリン酸又は上述の好ましいマスリン酸エステルの2,3−O−ジアセチル体、2,3−O−ジトリエチルシリル体及び2,3−ジステアロイル体が好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
エリトロジオール(erythrodiol)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(V)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、抗炎症効果(Planta.Med.VOL.61,No.2,182−185 1995)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、エリトロジオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
エリトロジオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−エリトロジオール、3−O−プロピオニル−エリトロジオール、3−O−ブチリル−エリトロジオール、3−O−バレリル−エリトロジオール、3−O−カプリル−エリトロジオール、3−O−ラウリル−エリトロジオール、3−O−ミリスチル−エリトロジオール、3−O−パルミチル−エリトロジオール、3−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、3−O−ステアリル−エリトロジオール、3−O−ステアロイル−エリトロジオール、3−O−オレイル−エリトロジオール、3−O−バクセニル−エリトロジオール、3−O−リノレイル−エリトロジオール、3−O−リノレニル−エリトロジオール、3−O−アラキジル−エリトロジオール、3−O−アラキドニル−エリトロジオール、3−O−ベヘニル−エリトロジオール、28−O−アセチル−エリトロジオール、28−O−プロピオニル−エリトロジオール、28−O−ブチリル−エリトロジオール、28−O−バレリル−エリトロジオール、28−O−カプリル−エリトロジオール、28−O−ラウリル−エリトロジオール、28−O−ミリスチル−エリトロジオール、28−O−パルミチル−エリトロジオール、28−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、28−O−ステアリル−エリトロジオール、28−O−ステアロイル−エリトロジオール、28−O−オレイル−エリトロジオール、28−O−バクセニル−エリトロジオール、28−O−リノレイル−エリトロジオール、28−O−リノレニル−エリトロジオール、28−O−アラキジル−エリトロジオール、28−O−アラキドニル−エリトロジオール、28−O−ベヘニル−エリトロジオール、3−O−メチル−エリトロジオール、3−O−エチル−エリトロジオール、3−O−t−ブチル−エリトロジオール、3−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、28−O−メチル−エリトロジオール、28−O−エチル−エリトロジオール、28−O−t−ブチル−エリトロジオール、28−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−エリトロジオール及び28−O−アセチル−エリトロジオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−エリトロジオールが好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウルソール酸、ウバオール、は、何れもウルサン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ウルソール酸、ウバオール、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、天然物を用いることが好ましい。
ウルソール酸(ursolic acid)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(VI)で示される構造の化合物で、効果としてはこれまでに、抗炎症効果、抗動脈硬化効果、抗糖尿病効果、抗高脂血症効果(Jie Liu,Journal of Ethnopharmacology,49,57−68,1995)等を有することが知られている。天然には、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の果実や葉に広く分布することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ウルソール酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の天然から得られるものが好ましい。
ウルソール酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、その生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ウルソール酸の塩として、ウルソール酸ナトリウム、ウルソール酸カリウム、ウルソール酸アンモニウム、ウルソール酸ジメチルアンモニウム、ウルソール酸カルシウム、ウルソール酸マグネシウム等が挙げられる。
ウルソール酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ウルソール酸メチルエステル、ウルソール酸エチルエステル、ウルソール酸n−プロピルエステル、ウルソール酸イソプロピルエステル、ウルソール酸n−ブチルエステル、ウルソール酸トリメチルシリルエステル、ウルソール酸トリエチルシリルエステル、ウルソール酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ウルソール酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ウルソール酸、3−O−プロピオニル−ウルソール酸、3−O−ブチリル−ウルソール酸、3−O−バレリル−ウルソール酸、3−O−カプリル−ウルソール酸、3−O−ラウリル−ウルソール酸、3−O−ミリスチル−ウルソール酸、3−O−パルミチル−ウルソール酸、3−O−パルミトオレイル−ウルソール酸、3−O−ステアリル−ウルソール酸、3−O−ステアロイル−ウルソール酸、3−O−オレイル−ウルソール酸、3−O−バクセニル−ウルソール酸、3−O−リノレイル−ウルソール酸、3−O−リノレニル−ウルソール酸、3−O−アラキジル−ウルソール酸、3−O−アラキドニル−ウルソール酸、3−O−ベヘニル−ウルソール酸、3−O−メチル−ウルソール酸、3−O−エチル−ウルソール酸、3−O−t−ブチル−ウルソール酸、3−O−トリエチルシリル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウルソール酸等が挙げられる。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウバオール(uvaol)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(VII)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、抗炎症効果(Planta.Med.VOL.61,No.2,182−185 1995)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害効果(特開平9−67249)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ウバオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ウバオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ウバオール、3−O−プロピオニル−ウバオール、3−O−ブチリル−ウバオール、3−O−バレリル−ウバオール、3−O−カプリル−ウバオール、3−O−ラウリル−ウバオール、3−O−ミリスチル−ウバオール、3−O−パルミチル−ウバオール、3−O−パルミトオレイル−ウバオール、3−O−ステアリル−ウバオール、3−O−ステアロイル−ウバオール、3−O−オレイル−ウバオール、3−O−バクセニル−ウバオール、3−O−リノレイル−ウバオール、3−O−リノレニル−ウバオール、3−O−アラキジル−ウバオール、3−O−アラキドニル−ウバオール、3−O−ベヘニル−ウバオール、28−O−アセチル−ウバオール、28−O−プロピオニル−ウバオール、28−O−ブチリル−ウバオール、28−O−バレリル−ウバオール、28−O−カプリル−ウバオール、28−O−ラウリル−ウバオール、28−O−ミリスチル−ウバオール、28−O−パルミチル−ウバオール、28−O−パルミトオレイル−ウバオール、28−O−ステアリル−ウバオール、28−O−ステアロイル−ウバオール、28−O−オレイル−ウバオール、28−O−バクセニル−ウバオール、28−O−リノレイル−ウバオール、28−O−リノレニル−ウバオール、28−O−アラキジル−ウバオール、28−O−アラキドニル−ウバオール、28−O−ベヘニル−ウバオール、3−O−メチル−ウバオール、3−O−エチル−ウバオール、3−O−t−ブチル−ウバオール、3−O−トリエチルシリル−ウバオール、28−O−メチル−ウバオール、28−O−エチル−ウバオール、28−O−t−ブチル−ウバオール、28−O−トリエチルシリル−ウバオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ウバオール及び28−O−アセチル−ウバオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ウバオールが好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン酸、ベツリン、は、何れもルパン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ベツリン酸、ベツリン、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、天然物を用いることが好ましい。
ベツリン酸(betulinic acid)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(VIII)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、制癌効果、抗炎症効果、創傷治療促進効果(特公平4−26623)、アルコール吸収抑制効果(特開平7−53385)、発毛促進効果(特開平9−157139)等を有することが知られている。天然には、センブリ、チョウジ、ブドウ果皮、オリーブ等に遊離状態で、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等にはサポニンとして存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ベツリン酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、センブリ、チョウジ、ブドウ、オリーブ、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブから得られるものが好ましく、具体的には、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ベツリン酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、その生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ベツリン酸の塩として、ベツリン酸ナトリウム、ベツリン酸カリウム、ベツリン酸アンモニウム、ベツリン酸ジメチルアンモニウム、ベツリン酸カルシウム、ベツリン酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、ベツリン酸ナトリウム及びベツリン酸カリウムが好ましい。
ベツリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ベツリン酸メチルエステル、ベツリン酸エチルエステル、ベツリン酸n−プロピルエステル、ベツリン酸イソプロピルエステル、ベツリン酸n−ブチルエステル、ベツリン酸トリメチルシリルエステル、ベツリン酸トリエチルシリルエステル、ベツリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ベツリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ベツリン酸、3−O−プロピオニル−ベツリン酸、3−O−ブチリル−ベツリン酸、3−O−バレリル−ベツリン酸、3−O−カプリル−ベツリン酸、3−O−ラウリル−ベツリン酸、3−O−ミリスチル−ベツリン酸、3−O−パルミチル−ベツリン酸、3−O−パルミトオレイル−ベツリン酸、3−O−ステアリル−ベツリン酸、3−O−ステアロイル−ベツリン酸、3−O−オレイル−ベツリン酸、3−O−バクセニル−ベツリン酸、3−O−リノレイル−ベツリン酸、3−O−リノレニル−ベツリン酸、3−O−アラキジル−ベツリン酸、3−O−アラキドニル−ベツリン酸、3−O−ベヘニル−ベツリン酸、3−O−メチル−ベツリン酸、3−O−エチル−ベツリン酸、3−O−t−ブチル−ベツリン酸、3−O−トリエチルシリル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン酸等が挙げられる。このうち、ベツリン酸エチルエステルが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン(betulin)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(IX)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、生体タンパク質変性抑制効果(特開平9−67253)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害効果(特開平9−67249)、リパーゼ阻害効果(特開平10−265328)、肝疾患予防効果(特開平11−209275)等を有することが知られている。天然には、シラカバの樹皮等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ベツリンまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、シラカバの樹皮等の天然から得られるものが好ましい。
ベツリンについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ベツリン、3−O−プロピオニル−ベツリン、3−O−ブチリル−ベツリン、3−O−バレリル−ベツリン、3−O−カプリル−ベツリン、3−O−ラウリル−ベツリン、3−O−ミリスチル−ベツリン、3−O−パルミチル−ベツリン、3−O−パルミトオレイル−ベツリン、3−O−ステアリル−ベツリン、3−O−ステアロイル−ベツリン、3−O−オレイル−ベツリン、3−O−バクセニル−ベツリン、3−O−リノレイル−ベツリン、3−O−リノレニル−ベツリン、3−O−アラキジル−ベツリン、3−O−アラキドニル−ベツリン、3−O−ベヘニル−ベツリン、28−O−アセチル−ベツリン、28−O−プロピオニル−ベツリン、28−O−ブチリル−ベツリン、28−O−バレリル−ベツリン、28−O−カプリル−ベツリン、28−O−ラウリル−ベツリン、28−O−ミリスチル−ベツリン、28−O−パルミチル−ベツリン、28−O−パルミトオレイル−ベツリン、28−O−ステアリル−ベツリン、28−O−ステアロイル−ベツリン、28−O−オレイル−ベツリン、28−O−バクセニル−ベツリン、28−O−リノレイル−ベツリン、28−O−リノレニル−ベツリン、28−O−アラキジル−ベツリン、28−O−アラキドニル−ベツリン、28−O−ベヘニル−ベツリン、3−O−メチル−ベツリン、3−O−エチル−ベツリン、3−O−t−ブチル−ベツリン、3−O−トリエチルシリル−ベツリン、28−O−メチル−ベツリン、28−O−エチル−ベツリン、28−O−t−ブチル−ベツリン、28−O−トリエチルシリル−ベツリン、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ベツリン及び28−O−アセチル−ベツリンが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ベツリンが好ましい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
本発明は、上記、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物に関する。ここで、有効成分として含有するとは、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を発現する程度に含有するということである。
本発明において、血管平滑筋細胞増殖抑制効果とは、動脈硬化巣内に侵入した血管平滑筋細胞が動脈硬化巣内で増殖することを抑制することを示し、結果的には、動脈硬化巣が血管内膜に生成することを予防したり、既に存在する動脈硬化巣がそれ以上肥大しないように、あるいは縮小させたりすることが期待できる。本発明の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物は、特に動脈硬化の増生等に対する予防および/または治療用として使用するものである。予防用としての使用とは、内膜へと遊走してきた血管平滑筋細胞の増殖を抑制し、動脈硬化が発生しないようにすることを目的として使用することを示す。治療用としての使用とは、既に内膜内に存在する血管平滑筋細胞のそれ以上の増殖を抑制したり、あるいは、増殖した血管平滑筋細胞を速やかに減少させる等により、総血管平滑筋細胞を減少させ、動脈硬化巣の増生を抑制したり、動脈硬化巣の破裂を阻止することを目的として使用することを示す。従って本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖が病態に関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明で血管平滑筋細胞増殖抑制効果の評価に用いた方法は、in vitroでの抗動脈硬化薬物のスクリーニング法として既知の方法であり(特開平5−56796)、スクリーニングが容易で、迅速且つ多大な動物の犠牲が回避できる点が特徴である。本発明では、培養血管平滑筋細胞の有する酸化還元能により蛍光物質を生成する試薬を用い、その蛍光物質の生成量を蛍光強度の強弱により判定することで、増殖抑制効果の有無を検討している。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞増殖抑制効果は、血管平滑筋細胞を用いた試験法にて示される。ここで一般に、動脈壁中膜に存在する血管平滑筋細胞とは、収縮と弛緩を繰り返し、血流を調節する機能を有し、構造的には、α−アクチンを含む繊維成分に富む。本発明において対象としている血管平滑筋細胞とは、平滑筋増殖因子等の刺激によってフェノタイプが合成型に変換したものであり、このタイプは繊維成分が粗であるため収縮能を失い、逆に、増殖能、遊走能、多量の結合織産生能を獲得し、ある場合には変性リポタンパクを取込み泡沫化するので、動脈硬化症発症の一因となるものである。本発明で用いた血管平滑筋細胞は、ラット大動脈由来の増殖型培養血管平滑筋細胞株であり、この細胞は通常に培養した場合、倍数時間25時間の増殖能で、培養面上に均一に単層を形成する。これに対して、この培養系に血管平滑筋細胞増殖抑制効果を有する物質を存在させると、血管平滑筋細胞の増殖が抑えられ相対的に細胞の酸化還元能が抑制され、生成される蛍光物質の量も減少し蛍光強度が減少する。この相対的な蛍光強度の度合いから、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を、公知の抗動脈硬化用飲食物であるα−トコフェロールと比較すると、例えば、マスリン酸では約10〜14倍、マスリン酸の塩では約6〜10倍、エリトロジオールでは約10〜14倍、ウルソール酸では約6〜10倍、ウバオールでは約4〜8倍、ベツリン酸では約4〜8倍、ベツリンでは約4〜8倍、マスリン酸エチルエステルでは約6〜10倍、アセチル化マスリン酸では約6〜10倍、トリエチルシリル化マスリン酸では約4〜8倍、ステアリル化マスリン酸エチルでは約6〜10倍、アセチル化エリトロジオールでは約4〜8倍、ウルソール酸エチルエステルでは約6〜10倍、アセチル化ウバオールでは約4〜6倍、ベツリン酸エチルでは約4〜6倍、アセチル化ベツリンでは約4〜6倍という、高い血管平滑筋細胞増殖抑制効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を含有することにより、高い血管平滑筋細胞増殖抑制効果を享受できるものである。
また、上記、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有する。すなわち本発明は、より直接的に、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物に関する。ここで、有効成分として含有するとは、その血管平滑筋細胞遊走抑制効果を発現する程度に含有するということである。
本発明において、血管平滑筋遊走抑制効果とは、血管傷害や高脂血症等により正常値を逸脱した血液成分より増殖能を獲得した中膜由来の血管平滑筋細胞が、血液中の遊走因子の濃度勾配に従って、血管中膜から血管内膜もしくは血管内皮細胞下の動脈硬化巣へと移動(=遊走)していくのを抑制することを示し、結果的には、血管平滑筋細胞の遊走を抑制することで動脈硬化巣が生成することを予防したり、既に存在する動脈硬化巣に血管平滑筋細胞が遊走しないようにすることが期待できる。すなわち、本発明の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物は、血管平滑筋細胞の中膜から内膜内への遊走を抑制し、動脈硬化巣が発生しないようにすることを目的とした、動脈硬化巣の増生等に対する予防用として使用するものである。本発明では、血管平滑筋細胞が遊走因子により活性化され、遊走因子の濃度の濃い方へと遊走していった細胞数を計測し、対照群と比較することで遊走抑制効果の有無を判定している。従って本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞遊走が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞遊走抑制効果は、血管平滑筋細胞を用いた試験法にて示される。本発明で用いた血管平滑筋細胞とは、ラット大動脈由来の増殖型培養血管平滑筋細胞株であり、この細胞に遊走因子である血小板活性化因子を効果させると、その濃度の濃い方へ細胞が遊走する。これに対して、遊走因子と共に血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有する物質を存在させると、細胞の遊走数が減少する。この相対的な細胞数の度合いから、血管平滑筋細胞遊走抑制効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞遊走抑制効果を、公知の抗動脈硬化用飲食物であるα−トコフェロールと比較すると、例えば、マスリン酸では約25〜30倍、マスリン酸の塩では約25〜30倍、ウルソール酸では約25〜30倍、マスリン酸エチルエステルでは約25〜30倍、アセチル化マスリン酸では約25〜30倍、トリエチルシリル化マスリン酸では約24〜27倍、ステアリル化マスリン酸エチルでは約25〜30倍、ウルソール酸エチルエステルでは約24〜27倍という、非常に高い血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類およびその生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を含有することにより、その非常に強力な血管平滑筋細胞遊走抑制効果を享受できるものである。特にこれらは、血管平滑筋細胞増殖抑制効果も有するため、非常に好ましい。
本発明は、上述のごとく、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関する。ここで、細胞増殖性血管病変とは、血管平滑筋細胞の遊走および異常増殖によって血管内膜の肥厚や動脈硬化が発生した血管組織部位のことであり、冠動脈硬化、腹部大動脈硬化、腎動脈硬化、頚動脈硬化、眼底動脈硬化、脳動脈硬化等の動脈硬化病変部や、PCTA施行後の再狭窄部を指す。本発明の抗細胞増殖性血管病変用飲食物は、特に血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走に起因する血管内膜の肥厚や動脈硬化に対する効果により、内膜肥厚や動脈硬化の予防および/または治療効果を有する。
また、本発明は、前記細胞増殖性血管病変が内膜肥厚である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗内膜肥厚用飲食物に関する。ここで、有効成分として含有するとは、内膜肥厚抑制効果を発現する程度に含有するということである。また、内膜肥厚抑制効果とは、血管平滑筋細胞の遊走および異常増殖による血管内膜の肥厚化を抑制することを示し、結果的には、動脈硬化症や、心筋梗塞、心不全等の虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中などの脳血管疾患の予防および/または治療が期待できる。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の内膜肥厚抑制効果は、動物を用いた試験法にて示される。すなわち、物理的に動脈の内皮細胞を剥離することで当該部位に炎症が生じ、その部位の内膜に血管平滑筋細胞が遊走し増殖することで内膜が肥厚化する。それに対して、内膜肥厚抑制効果を有する物質を動物に投与すると肥厚化が抑制される。この抑制度合いから内膜肥厚抑制効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の内膜肥厚抑制効果を、対照群である綿実油と比較すると、例えば、マスリン酸では約40〜60%抑制、マスリン酸の塩では約35〜55%抑制、エリトロジオールでは約40〜60%抑制、ウルソール酸では約30〜50%抑制、ウバオールでは約25〜45%抑制、ベツリン酸では約15〜35%抑制、ベツリンでは約15〜35%抑制という、高い内膜肥厚抑制効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を含有することにより、高い内膜肥厚抑制効果を享受できるものである。
本発明は、前記、細胞増殖性血管病変が動脈硬化である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化用飲食物に関する。本発明の抗動脈硬化用飲食物は、経口および/または非経口で投与することで、抗動脈硬化効果を発現する。
抗動脈硬化効果とは、動脈硬化巣内の血管平滑筋細胞の増殖抑制および/または増殖型血管平滑筋細胞の動脈硬化巣内への遊走抑制を意図している。一般に、動脈硬化とは、動脈内皮損傷が引き金となって収縮型から増殖型へと形質転換した血管平滑筋細胞が、中膜から内膜へと遊走し内膜内で増殖することで血管内膜が肥厚して発生するものと考えられている。したがって、血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑制することで血管内皮の肥厚化を阻止することができれば、動脈硬化症や虚血性心疾患、脳血管疾患等の血管疾患を予防、改善することが可能である。この点において、本発明の抗動脈硬化用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有するため、動脈硬化症や虚血性心疾患、脳血管疾患等の血管疾患の発症を最小限に抑えることが期待でき、非常に好ましい。すなわち、本発明の抗動脈硬化用飲食物は、摂取することによりその抗動脈硬化効果を発現するものであり、虚血性心疾患や脳血管疾患等を改善あるいは防止し、延命率の延長等に大きく寄与するものである。特に、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有し、強力な抗動脈硬化用飲食物として使用することができ、非常に好ましい。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の抗動脈硬化効果は、動物を用いた試験法にて示される。すなわち、高コレステロール食を長期に渡り摂食させることで大動脈に動脈硬化を発症させる。それに対して、抗動脈硬化効果を有する物質を動物に投与すると大動脈の動脈硬化が抑制される。この抑制度合いから抗動脈硬化効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の抗動脈硬化効果を、対照である高コレステロール食群と比較すると、例えば、マスリン酸では約40〜60%抑制、マスリン酸の塩では約40〜60%抑制、エリトロジオールでは約50〜70%抑制、ウルソール酸では約40〜60%抑制、ウバオールでは約30〜50%抑制、ベツリン酸では約25〜45%抑制、ベツリンでは約25〜45%抑制という、高い抗動脈硬化効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を含有することにより、高い抗動脈硬化効果を享受できるものである。
また本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関する。ここで、血管障害疾患とは、主に前記細胞増殖性血管病変に起因する疾患であり、血管平滑筋細胞の増殖や血管内膜への遊走により動脈硬化や血管内膜肥厚化等の血管障害が発生した結果惹起される疾患のことである。具体的には冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症等の動脈硬化症や、PTCA後の再狭窄、心筋梗塞・狭心症等の虚血性心疾患、脳梗塞・脳卒中等の脳血管疾患を言う。
すなわち、本発明の血管障害疾患用飲食物は、血管障害の発生に関与する血管平滑筋細胞に対する効果により、血管平滑筋細胞を主とした細胞増殖性血管病変の発生による動脈硬化症、PTCA後の再狭窄、虚血性心疾患、脳血管疾患等の予防および/または治療効果を有する。予防効果としては、血管平滑筋細胞の増殖および/または遊走を抑制することで、動脈硬化巣や血管内膜肥厚が発生しないようにしたり、動脈硬化症やPTCA後の再狭窄等の血管障害疾患を予防することを示す。治療効果としては、それ以上の血管平滑筋細胞の増殖および/または遊走を抑制、あるいは、増殖した血管平滑筋細胞の速やかな減少等により、総血管平滑筋細胞を減少させ、動脈硬化巣や血管内膜肥厚の増生を抑制したり、動脈硬化巣の破裂を阻止したり、内膜肥厚を解消することで血管障害疾患を治療することを示す。
本発明は、前記血管障害疾患が動脈硬化症である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化症用飲食物に関する。ここで動脈硬化症とは、動脈壁が肥厚し弾力性を失う多くの疾患の包括的な用語であり、全身性心血管障害を指す。具体的には、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症等を指す。すなわち、本発明は、動脈硬化巣の生成に関与する血管平滑筋細胞に対する効果をもって、上記物質を有効成分とする抗動脈硬化症用飲食物に関する。特に、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化症用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有することから、強力な抗動脈硬化症用飲食物として使用することができ、非常に好ましい。
本発明は、前記血管障害疾患がPTCA後の再狭窄である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とするPTCA後の抗再狭窄用飲食物に関する。本発明の抗再狭窄用飲食物は、経口摂取することで、前述した、内膜肥厚抑制効果を発現する。
一般に、再狭窄とは、PTCA施行後に同一部位に血管平滑筋細胞を主とする細胞繊維性の内膜肥厚の結果、当該部位が狭小化することであることが知られている。したがって、血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑制することで血管内膜の肥厚化を阻止することができれば、PTCA後の再狭窄を予防、治療することが可能である。この点において、本発明のPTCA後の抗再狭窄用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有するため、動脈硬化や血管内膜肥厚が阻止され、PTCA後の再狭窄による虚血性心疾患の発症を最小限に抑えることが期待でき、非常に好ましい。すなわち、本発明のPTCA後の抗再狭窄用飲食物は、摂取することによりその内膜肥厚抑制効果を発現するものであり、虚血性心疾患を改善あるいは防止し、延命率の延長等に大きく寄与するものである。特に、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗再狭窄用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有することから、強力な抗再狭窄用飲食物として使用することができ、非常に好ましい。
五環性トリテルペン類およびそれらのアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、概して脂溶性なので、油系、あるいは乳化系の血管障害疾患用飲食物等に好適に配合することができる。また、特に油脂あるいは油脂加工品としての摂取においては、油とともに吸収されることが期待されるため、吸収性の面で好ましい。
また、五環性トリテルペン類の生理的に許容される塩あるいは配糖体は、概して水溶性を示すので、水系あるいは乳化系等の血管障害疾患用飲食物に、均一に溶解ないしは分散させて含有させることで好適に配合することができる。特に飲料等は水系あるいは乳化系での製品化が多いので、この場合、必要に応じて五環性トリテルペン類を、その生理的に許容される塩あるいは配糖体とすることで好適に配合することができる。
さらに、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、強い効果を有し少量の血管障害疾患用飲食物等への配合で、通常必要とされる血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を得ることができるので、コスト面でのメリットがあるとともに、配合比の面から他の成分を配合できる余裕が生じるので、その他の機能をさらに充実させることができ、好ましい。
当然、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の配合量を増やすことで、極めて優れた血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物、血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物、抗細胞増殖性血管病変用飲食物、血管障害疾患用飲食物等の製造が、本発明により可能である。
本発明における五環性トリテルペン類は、上述の通り、天然物として植物等に存在している事が知られており、ほとんどのものがそれらの植物を通して、食経験があるものであり、過剰摂取しない限り生体に対する悪影響はないとされている。
実際に動物に投与した場合では、例えばマスリン酸の場合、LD50値は、2000mg/体重kg以上であり、極めて安全性の高いことが確認できる。このことは、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を安全に投与することができることを示す。
本発明の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の抗細胞増殖性血管病変用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗細胞増殖性血管病変用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の抗内膜肥厚用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗内膜肥厚用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の抗動脈硬化用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗動脈硬化用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の血管障害疾患用飲食物は、上述の通り五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有することを特徴とし、その用途は任意であるが、例えば、保健機能食品、健康食品、治療食品等の広い分野で、血管障害疾患用飲食物として用いることができる。この時、本発明の血管障害疾患用飲食物の配合量は、用途、投与形態、投与対象の種、年齢、性別、体重、症状の程度、健康状態などの条件により異なるので、一概に規定されないが、当然、血管平滑筋細胞の増殖抑制、遊走抑制による動脈硬化の発生や増生に対する予防および/または治療に効果を有する量である。
本発明の血管障害疾患用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の血管障害疾患用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%である。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明の血管障害疾患用飲食物の五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を摂取することにより、好適に抗動脈硬化効果を得るための所用量は、摂取の形態、対象者の性別、体重、体調等により異なり、特に制限されないが、例えば、0.001g/日以上、好ましくは0.01g/日以上、特に好ましくは0.1g/日以上である。
本発明の、血管障害疾患が動脈硬化症である抗動脈硬化症用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗動脈硬化症用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明の、血管障害疾患がPTCA後の再狭窄である抗再狭窄用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗再狭窄用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
特に、マスリン酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等、非常に強い効果を持ちあわせる為、好ましい。すなわち、マスリン酸およびその生理的に許容される塩、またはその誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする、血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物および/または血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物、抗内膜肥厚および抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変用飲食物、抗動脈硬化症およびPTCA後の抗再狭窄等の血管障害疾患用飲食物に関する。また、後述するが、マスリン酸は、オリーブ植物という比較的定常的に栽培され、食用油として既に搾油されている植物から得ることも可能であるため、食経験を有する点で安全性に優れ、好ましい。さらに、定常的に供給できる点で低コスト化が可能であり、非常に好ましい。
この場合、本発明の、マスリン酸を含有する各目的の効果を有する飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。特にマスリン酸およびその生理的に許容される塩、またはその誘導体は、上述のごとく、既に食経験を有する天然物から得られるものも存在するので、健康食品等としても好ましい。その際のマスリン酸およびその生理的に許容される塩、またはその誘導体の配合量は、一概には規定されず、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
また本発明の飲食物には、機能の向上、特に、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等の相乗的な向上、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等の補助、吸収性の向上等を目的として、その他の生理活性成分等を配合することができる。特に制限は無いが、例えば、相乗的な効果が期待できる成分、抗酸化成分、体内での吸収性を向上させ効果の効率を上げるための油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等が挙げられる。
相乗的な効果が期待できる成分としては、ブラシカステロール、カンペステロール、ステグマステロール、7−エルゴステロール、シトステロール、イソフコステロール、7−スチグマステロール、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール、シクロブラシノール等の植物ステロール類、ジンゲロール、クルクミン、ベルガモティン、ACA等のフェニルプロパノイド類、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン、ルテオリン、カルダモニン、ノビレチン等のフラボノイド類、β−カロチン、アスタキサンチン等のカロテノイド類及びその誘導体、ペクチン等の食物繊維類、アリキシン、フェルラ酸およびその誘導体、等が挙げられる。これらの成分は、本発明における五環性トリテルペン類との相乗効果が期待できるため、好ましい。
抗酸化成分としては、通常飲食物等に使用されているものであれば特に制限は無いが、例えば、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩、トコフェロールやトコトリエノールおよびそれらの誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類及びそれらの誘導体、亜硫酸ナトリウムや次亜硫酸ナトリウムや二硫化硫黄等の硫酸系化合物、γ−オリザノール等のフェルラ酸誘導体、ルチン及びその誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類及びその誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、イソケルセチン、ロイコアントシアニジン、ゲニスチン、ゲニステイン、6“−O−アセチルゲニスチン、6“−O−マロニルゲニスチン、ダイズイン、ダイゼイン、6“−O−アセチルダイズイン、6“−O−マロニルダイズイン、グリシチン、グリシテイン、6“−O−アセチルグリシチン、6“−O−マロニルグリニチン、プエラリン、ケルセチン、ケンフェロー、ミロエステロール等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、スーパーオキシドディムスターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の酵素類、アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、甘草油性抽出物、グローブ抽出物、グアヤク脂、生コーヒー豆抽出物、米ぬか油抽出物、カンナ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、テンペ抽出物、菜種油抽出物、ピメンタ抽出物、ブルーベリー抽出物、プロポリス抽出物、ペパー抽出物、メラロイカ抽出物、ユーカリ抽出物、リンドウ抽出物、ソバ抽出物、アズキ抽出物、ローズマリー抽出物、オリーブ粕抽出物や大豆粕抽出物等の油粕抽出物、大豆胚芽抽出物、チアミン類及びその塩、リボフラビン、酢酸リボフラビン等のリボフラビン類、塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、ビリルビン、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ノルジヒドログアイアレチン酸等があげられる。これらの抗酸化剤は、その抗酸化作用による生活習慣病予防効果や抗老化効果等により、人体等に対する総合的な相乗効果も期待できるため、好ましい。
油性成分としては、大豆油、菜種油、ゴマ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、牛脂、魚油等の動物油脂の他、特に制限は無いが、例えば、天然および化学反応や酵素反応により得られた、MCT、MLCT、ジグリセライド、モノグリセライドや、脂肪酸の構造を設計した構造油脂等が挙げられる。
栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等については、特に制限はないが、食品添加物公定書に定められるものが望ましい。
その他、本発明の飲食物には、通常の飲食物に使用されている原材料を配合・使用することができる。特に制限は無いが、例えば、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、豚脂、牛脂、乳脂等の動物性油脂、鯨油、イワシ油、ニシン油等の海産物性油脂、大豆油、菜種油、綿実油、米油、コーン油、胡麻油、落花生油、ヒマワリ油、紅花油、椿油、オリーブ油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等の植物性油脂、キサンタンガム等の増粘剤、砂糖、グラニュー糖、乳糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、ハチミツ等の甘味剤、MSG(モノソディウムグルタミン)等のうまみ調味料、米酢、リンゴ酢、酒精酢等の食酢、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸等の酸味剤、安息香酸ナトリウム等の合成保存料、小麦粉、脱脂大豆、小麦ふすま、小麦胚芽等のシリアル原料、食塩、こしょう、フレーバー等が挙げられる。特にオリーブ油は、本発明におけるマスリン酸等を含有するため、非常に好ましい。マスリン酸、その生理的に許容される塩等を高度に含有するように製造されたオリーブ油等が好ましい。
上記各成分は使用目的によって適宜設計、配合することができる。吸収性や作用効果の種類によって効果を相乗、補完することや使用形態として好ましい態様とすることができる。また、例えばイソフラボン類及びその誘導体は水溶性に優れ、概して油溶性物質である本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類と同時に生体に作用させることで、抗エストロゲン阻害効果を含め、水及び脂質媒介性の様々な代謝経路を経た、同時作用による効果が発揮され、その効果は相乗的になることが期待できる。さらには、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類とイソフラボノイド等を同時に配合した血管障害疾患用飲食物等はイソフラボノイドの抗酸化性や抗エストロゲン様作用等の生理活性が同時にかつ相乗的に活性化されることが期待できる。
本発明の飲食物について、下記に具体例を列記するが、本発明はこれらに制限されるものではない。本発明の飲食物としては、菓子、加工食品、調合油脂類、油脂加工品、乳製品及び飲料等の各種飲食物があげられる。また、その形状・性状は特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状及び粉末状等のいずれでもよい。また、その形態等について特に制限はないが、例えば、通常の形態の他、流動食品、経腸栄養食品、健康食品、乳幼児用食品等の形態をとることができる。具体的には、おかき、煎餅、おこし、饅頭、飴等の和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、シリアル食品、パイ、カステラ、ドーナッツ、プリン、スポンジケーキ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、キューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パン、菓子パン等の各種洋菓子、ポテトチップ等のスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等の氷菓、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、炭酸飲料等の清涼飲料水、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア等の嗜好品及びこれらの飲料、日本酒、ワイン、ブランディー、ウイスキー、薬用酒などの酒類、牛乳、発酵乳、加工乳、チーズ等の乳製品、豆乳、豆腐等の大豆加工食品、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペースト等のペースト類、漬物類、うどんの麺、パスタ等の穀物製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセイジ、ビーフジャーキー、ハンバーグ等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚貝類製品、魚、貝等の干物、鰹、鯖、鰺等の各種節、ウニ、イカ等の塩辛、スルメ、魚等のみりん干、鮭等の燻製品、のり、小魚、貝、山菜、椎茸、昆布等の佃煮、カレー、シチュー等のレトルト食品、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、米飯類、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品や、調合油脂を含有する各種レンジ及び冷凍食品等が挙げられる。特に、継続的な摂取という面からは、米飯や各種調味料や、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品が好ましい。
本発明の飲食物における五環性トリテルペン類は、元来、概して脂溶性の物質であるので、溶解性の面からも本発明の飲食物として調合油脂や調合油脂加工食品等は好ましい。この様な調合油脂として、特に制限はないが、例えば、天然あるいは人工的に得た五環性トリテルペン類を通常の油脂に溶かし込んで含有させた調合油脂が挙げられ、また、植物種子の圧搾・抽出条件を調整し種子中の五環性トリテルペン類を圧搾・抽出油に高濃度に含有させた調合油脂や、精製条件を調整することで油中に存在する五環性トリテルペン類を残存させた調合油脂等が挙げられる。また、該五環性トリテルペン類高含有油脂と他の油脂を混合することもでき、この場合、該他の油脂に含まれる微量成分の生理活性効果との相乗効果を期待することができる。
五環性トリテルペン類は油糧原料である植物からも得られることから、製造の点からも調合油脂は好ましいといえ、更にこの調合油脂の加工品であるマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の調合油脂加工品は好ましいといえる。
同様に、本発明の上記調合油脂等を使用した製品も良好である。ここで、使用とは原料として使用することと、揚げ物や炒め物等に使用するいわゆる調合油脂としての使用の双方を示す。
ここで、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の飲食物への使用に関して特に制限は無いが、油系の飲食物に対しては、五環性トリテルペン類、あるいはアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体が好ましい。これらは、比較的脂溶性であるため、好適に油系の飲食物へ適用することができる。また当然、五環性トリテルペン類の生理的に許容される塩あるいは配糖体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
また、概して、水系の飲食物に対しては、五環性トリテルペン類の生理的に許容された塩、あるいは配糖体が好ましい。これらは、比較的水溶性であるため、好適に水系の飲食物へ適用することができる。また当然、五環性トリテルペン類あるいはその誘導体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
本発明の飲食物を飲食することで、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を体内に吸収することにより効果を奏する。飲食物という形態であるため、医薬品のような労力も必要なく、継続的に摂取することができるため好ましい。
上記、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、合成することも、天然物から抽出することもできる。天然には、それぞれに前述した植物体から抽出することにより、詳しくは水及び/又は有機溶媒で抽出処理し、さらに濃縮処理及び/又は分画・精製処理することによりで得ることができる。すなわち、各植物体から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
天然物からの単離物を使用して飲食物とした場合、天然物由来の夾雑物の影響が排除され、無色〜淡色および/または無臭〜無臭に近い状態になるので好ましい。従って、天然物から、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類及びそれらの生理的に許容できる塩又はそれらの誘導体を単離することにより、供する料理の風味等に影響を与えることなく調理できる。特に、オリーブ等の原料とする天然物の風味を必要としない料理にも配合できる。従って、本発明の飲食物は、原料として用いられる天然物の種類に影響されることなく調理又は配合可能な飲食物を含む。
さらに、オリーブやオリーブ油をそのままの形態で摂取した場合、本発明で対象とする五環性トリテルペン類を少量しか摂取できないが、天然物から単離した五環性トリテルペン類を配合した飲食物を摂取すれば、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類を比較的容易に多量に摂取することができる。
また、オリーブ等に含まれる五環性トリテルペン類は概して脂溶性物質であるため、通常は油脂中に存在することが多く、このため、水系の飲食物に配合するのは困難であるが、天然物から単離した五環性トリテルペン類であれば、油系の飲食物にでも水系の飲食物にでも配合することができる。清涼飲料等の水系飲食物にすることにより、本発明で対象とする五環性トリテルペン類の例えば数g〜数10gを容易に摂取することが可能となる。
さらにまた、天然物から単離した特定の五環性トリテルペン類を含有する本発明の飲食物は、本発明の体内への吸収を阻害する不純物又は夾雑物が除去されていることから、好適な本発明の効果、すなわち血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を得ることが可能となるので好ましい。
以下、マスリン酸の抽出例を示す。
前述の通り、マスリン酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、天然には、前記の植物体から抽出することで得ることができるが、特に、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、オリーブ植物等から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
オリーブ植物(Olea europaea L.)は、国産、欧州産などの産地、食用あるいは搾油用を問わず使用できる。本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、天然植物であるオリーブ植物の主に、実または種子から得ることができ、さらに、その種皮、葉、茎、芽から得ることができる。また、これらの乾燥物、粉砕物、脱脂物からも好適に得ることができる。このうち、脱脂された実(果皮含む)や果皮の乾燥物及び粉砕物が好ましい。さらに、オリーブ油の製造工程で生じる生成物、例えば圧搾残査、抽出残査、搾油残査、圧搾油、抽出油、脱ガム油滓、脱酸油滓、ダーク油、廃脱色剤、脱臭スカム、搾油ジュース、排水及び廃濾過材から得ることができる。このうち、搾油残査が好ましい。
また、上記オリーブ植物の果実やその脱脂物等に、添水する等により加水した場合、あるいは蒸気により蒸す等の加湿処理を行った場合、これらオリーブ植物の果実やその脱脂物等が適度に膨潤するので、抽出効率が良くなり好ましい。
特に、オリーブ植物の脱脂物には、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が高濃度で存在し、かつ、得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩から油分を除去する必要がないため好ましい。
当該脱脂物は、食油精製工程中に産出するオリーブ搾油残査、またはヘキサン等による抽出残査を原料とすることができる。
また、オリーブ植物または当該脱脂物に含まれる脂質成分をペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、酢酸エチルエステル等の低級脂肪酸アルキルエステル、ジエチルエーテル等の公知の非水溶性有機溶媒の1種又は2種以上で抽出除去し、更に必要に応じてこの洗浄処理を繰り返した脱脂物も好適に利用できる。
上記オリーブ植物から水および/または有機溶媒で抽出することにより、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得るために用いる有機溶媒としては、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒のいずれでもよい。具体的には、親水性有機溶媒として、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒が挙げられ、疎水性有機溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
工業的には、例えば植物組織への浸透性、抽出効率等からは、親水性有機溶媒を用いることが好ましく、また含水親水性有機溶媒を用いることが好ましい。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有機溶媒およびこれらの含水溶媒が挙げられる。これらの中からなる群より選ばれる、1種または2種以上により、オリーブ植物から、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
抽出条件は、特に限定されないが、例えば、温度は5℃〜95℃、好ましくは10℃〜90℃、さらに好ましくは15℃〜85℃で、常温でも好適に抽出することができる。温度が高いほうが、抽出効率が高くなる傾向はある。圧力は、常圧でも、加圧でも、吸引等による減圧でも好適に抽出することができる。また、抽出効率を向上させるため、振とう抽出や、攪拌機等のついた抽出機でも抽出することができる。抽出時間は、他の抽出条件によるが、数分〜数時間であり、長時間なほど十分な抽出がなされるが、生産設備、収率等の生産条件によって適宜決めれば良い。
また、抽出に使用する溶媒は、水を単独で使用する場合、有機溶媒を単独で使用する場合、水と有機溶媒とを混合して使用する場合のいずれの場合にも、原料に対し1〜100倍量(「質量/質量」。以下同様。)、好ましくは1〜20倍量を使用することができる。
また、人体等への安全性等を考えれば、特に、水、含水低級アルコール、無水低級アルコールの何れかにより抽出することが好ましい。このうち、無水低級アルコールがより好ましく、無水エタノールが特に好ましい。
さらに、得られるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の収率や、抗動脈硬化効果の強さをも考慮に入れた場合、低級アルコール含量が10質量%以上である含水低級アルコールで抽出することが好ましい。さらには低級アルコール含量が10質量%〜95質量%の含水アルコールを使用することが好ましく、最も好ましくは低級アルコール含量が30質量%〜95質量%に調節された含水低級アルコールが好ましい。
ここで、本発明で使用するアルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール等の1級アルコール、2−プロパノール、2−ブタノール等の2級アルコール、2−メチル−2−プロパノール等の3級アルコールさらにエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール等の公知の溶媒が挙げられ、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
低級アルコールとは、炭素数が1〜4である公知のアルコール、例えば、前述の1、2、3級、もしくは、液状多価のアルコール等があげられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようにして得られた粗抽出物及び/又は粗抽出液から、溶媒、水分を除去することで、本発明におけるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
溶媒、水分の除去は減圧蒸留、減圧・真空乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の公知の方法で行うことができる。
もちろん、溶媒、水分を含んだままでも良く特に状態は制限されない。
脱脂物からの抽出物は、トリグリセライドやステロール、トコフェロール等の油溶性成分は含有していないので、これらを除去、精製する必要がないため、好ましい。加えて、脱脂物とは、搾油後の残査を含むので、オリーブ油を搾油した圧搾粕および抽出粕を使用できることから、オリーブの極めて優れた有効利用方法であり、通常は廃棄または飼料等に使用されるものを利用するため、生産コストの面から見ても優れた方法といえる。
さらに、オリーブ植物から抽出されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の抗動脈硬化効果をより一層引き出すためには、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有させるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮処理等することが好ましい。
濃縮条件は、特に限定されないが、例えば、水への溶解性を利用した方法が挙げられる。本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、比較的極性が低く、難水溶性の化合物である。この性質を利用して、オリーブ植物からの粗抽出物を水に溶解しにくい成分および/または水に溶解しない成分、つまり難水溶性等の成分と水に容易に溶ける成分とに分けることで、大幅に濃縮することができる。オリーブ植物からの粗抽出物に含まれる難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物全体と比べても、大幅に抗動脈硬化効果に優れており、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が濃縮されていることが確認できる。
難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物を水に添加・攪拌した後、析出している部分をろ過等により採取することで簡易に得ることができる。
また、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、必要に応じて、一般的な溶剤の組み合わせによる液−液分配により濃縮することができる。溶剤の組み合わせは一概に規定し難いが、例えば、水−疎水性有機溶媒の組み合わせが挙げられ、疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、n−ブタノール、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。このうち、ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールが好ましい。
マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は難水溶性であるため、疎水性有機溶媒相を分取することで、不要な水溶性成分を除去することができる。溶媒を除去することで、容易にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮することができる。
さらに、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、上述した抽出物および/または濃縮物から分画・精製処理することが好ましい。これにより上記濃縮以上に濃縮することができ、目的とする成分を単離することができる。
分画・精製処理することの利点としては、抗動脈硬化効果等を非常に向上させることができることに加え、不純物を除去することができること等が挙げられる。すなわち、該分画・精製処理した場合、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を白色結晶として得ることができるため、血管障害疾患用飲食物に余計な色をつけることなく好適に配合することができる等のメリットがあり、好ましい。
分画・精製処理の方法については一概に規定し難いが、例えば、再結晶法、分別沈殿法、クロマトグラフィーを利用する方法などが挙げられる。特にクロマトグラフィーの中でも液体クロマトグラフィーを利用する方法は、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分解することなく、収率良く分画・精製出来るので、好ましい。液体クロマトグラフィーとしては、具体的に、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられるが、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分画・精製処理する際には、いずれの方法を用いることができる。とりわけ、分離能、処理量、工程数等を考慮に入れると、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好ましい。
ここで、順相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばシリカゲルを固定相、ヘキサン−酢酸エチル混液、クロロホルム−メタノール混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一移動相による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次増加させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
逆相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばオクタデシルシランを結合させたシリカ(ODS)を固定相、水−メタノール混液、水−アセトニトリル混液、水−アセトン混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一溶媒による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次低下させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とは、原理的には、上記順相液体クロマトグラフィーあるいは逆相液体クロマトグラフィーと同様のものであり、より迅速かつ高分離能での分画・精製を行うためのものである。
上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を非常に濃縮でき、かつ、不純物が除去された状態で得ることができるため好ましい。
さらに、上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の純度を調整することができ、必要に応じた抗動脈硬化効果の強さ、特性等を設計することもできる。
前述した濃縮処理について、好ましくは繰り返し濃縮処理することができ、さらには異なる濃縮処理を組み合わせることができる。同様に、分画・精製処理について、好ましくは繰り返し分画・精製処理することができ、さらには異なる分画・精製処理を組み合わせることができる。さらに、濃縮処理を行った後に分画・精製処理しても良く、分画・精製処理を行った後に分画・精製処理しても良く、濃縮処理した後に分画・精製処理を行い更に濃縮処理することもできる。当然、前述の組み合わせ以外の組み合わせでも良い。
上記に記載した抽出処理、濃縮処理、分画および/または精製処理等を様々に組み合わせることによって、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。その組み合わせについては特に限定されないが、一連の処理の具体例としては以下のような方法が挙げられる。
例えば、オリーブ植物を水および/または親水性有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出液について親水性有機溶媒の一部または全部を除去し、必要により水を加えて撹拌し、水層部に析出した水不溶分を回収することで濃縮する。析出した水不溶分は、ろ過や遠心分離等のよって回収することができるが、この回収効率の向上のため、必要に応じ水溶液に対して水の添加・攪拌等の処理を行うことができる。また、オリーブ植物から得られる抽出液の水および/または親水性有機溶媒を除去した乾固状態の抽出物についても、上記同様に水の添加・攪拌等の処理を行い、ろ過等によりその水不溶分を回収することで濃縮処理することができる。この濃縮方法によれば、水系での処理であるので、溶剤を用いた濃縮よりも安全性に優れ、また、使用できる機器の範囲も広いため好ましい。また、油分がほとんど含まれていないため、濃縮・精製の効率にも優れており、好ましい。
これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。
また、オリーブ植物から得られる抽出液について親水性有機溶媒を除去し、残った水溶液に対して、必要に応じて水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。また、乾固状態の抽出物についても、上記同様に水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
ここで、液−液分配の際に添加する水の量は分配処理し得る量を用いれば特に限定されないが、乾固された抽出物の質量当り1〜100倍量が好ましく、より好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは10〜30倍量程度である。
また、水−疎水性有機溶媒での液−液分配において、水と疎水性有機溶媒とは、水:疎水性有機溶媒=9:1〜1:9(体積比)で使用するのが好ましく、8:2〜2:8で使用するのがより好ましい。
また、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるマスリン酸と生理的に許容されるその塩との混合物中のマスリン酸及び生理的に許容されるそれらの塩の合計の含有率が、95%以上であるのが好ましく、より好ましくは95%〜99.99%である。当該含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明の血管障害疾患用飲食物は、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を含有させることができるが、前記抽出物及び濃縮物を含有させることでも本発明の血管障害疾患用飲食物を得ることもできる。また、濃縮、精製等の度合いを調整することで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の濃度等を調整することができ、血管障害疾患用飲食物へ好適に配合することができる。
さらに、他の抗動脈硬化物質を配合して使用することができ、これにより、詳細な抗動脈硬化効果の設計が可能であり、また、他の抗動脈硬化物質との相乗効果により大幅な抗動脈硬化効果の強化も期待できる。
オリーブ油にはマスリン酸が含有されていることから、本発明の血管障害疾患用飲食物について、油性成分としてさらにオリーブ油を使用することで、さらに好適な抗動脈硬化効果等が得られるため好ましい。
また、オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を抽出する場合には、同時にオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩が抽出されるが、このオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩は、マスリン酸との相溶性に優れている点から、これらの混合物を本発明の血管障害疾患用飲食物に直接配合することができる。これにより、それぞれが有する生理効果について相乗効果が期待でき、特にはマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の本発明における抗動脈硬化効果について相乗効果が期待できるため好ましい。マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩をオリーブ植物から抽出、分離精製等するに際し、その条件を調整することで、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩との混合物として得ることもでき、オリーブ植物からそれぞれ別々にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を単離し、後に混合することでも得ることができる。また、それぞれ異なる原料から得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩と、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を混合した物でも良い。
本発明はマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関する。これらのマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制および抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症およびPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果に優れている。また、本発明におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、天然植物から得たもの、人工的に得られたもの、何れも好適に使用でき、特に各種製剤原料とする場合、その純度は高いものほど好ましい。
本発明の具体的な実施態様として、オリーブの脱脂粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を0.5質量%以上の量で含有する食用調合油脂があげられる。
また、本発明の具体的な実施態様として、オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上含有するドレッシングがあげられる。
本発明の具体的な実施態様として、オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上の量で含有する食用調合油脂があげられる。
本発明の具体的な実施態様として、オリーブの脱脂粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を0.5質量%以上の量で含有するマーガリンがあげられる。
また、本発明の具体的な実施態様として、オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上含有するマヨネーズがあげられる。
実施例
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例に使用した五環性トリテルペンとして、エリトロジオール(フナコシ社製)、ウルソール酸(和光純薬社製)、ウバオール(フナコシ社製)、ベツリン酸(フナコシ社製)、ベツリン(フナコシ社製)については、試薬として購入した。HPLCグレードのものはそのまま用い、そうでないものは、沸点まで加熱したエタノールに飽和になるまで溶解した後、冷却して再結晶させたものを濾過、乾固して用いた。マスリン酸については、以下に実例を挙げて説明するが、オリーブ植物から抽出、精製し、純度95%であることを確認したものを用いた。
<製造例1>
国内産のオリーブ(Olea europaea L.)の乾燥果実(種子を含む)500gを破砕し、3Lのヘキサンを加え3時間抽出した。これを4度繰り返した脱脂果実(脱脂粕)について、種子を除去した後、粉砕し、再度5倍量のヘキサンで3時間抽出することで、完全に油分を除去した脱脂粕229gを得た。この脱脂粕に10倍量のエタノール含量が60質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物112.7gを得た。
この抽出物100gに、水2Lを加え、室温で1時間、激しく攪拌した。全量を遠心分離で処理した後、上澄みはデカンテーションにより除去し、残った沈殿を乾燥して濃縮物10.0gを得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を1.96g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(60g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(600mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(1800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸1を1.51g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が95%以上であることを確認した。
<製造例2>
イタリア産のオリーブ(Olea europaea L.)を搾油し得られた搾油残査(搾油粕)1kgに、10倍量のエタノール含量が65質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固し抽出物を20.2g得た。
この抽出物に、n−ブタノール1L、水1Lを加えて10分間攪拌した後、n−ブタノール相と水相に分けた。n−ブタノール相のn−ブタノールを除去後、真空乾燥し濃縮物を13.3g得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(500g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1250mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を2.66g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(80g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(2400mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸2を2.06g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸2は、その一部が遊離酸の状態で、残りの大部分がナトリウムやカリウム等の塩の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
<製造例3>
オリーブ油製造工程で得られるイタリア産のオリーブの抽出残渣(搾油残渣をさらに抽出工程で処理した脱脂粕)1kgに、10倍量のエタノールを加え、55℃に加温して激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して、抽出物35gを得た。
次にこの抽出物を、約40倍量(1400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。まず、充填したシリカゲルの約10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(3500mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させ、さらに、充填したシリカゲルの10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物5.90gを得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を焼く30倍量(180g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(1800ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(5400ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールおよび水を除去後、真空乾燥し精製マスリン酸3を5.36g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸3は、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの誘導体としては、以下のようにして得た。
<合成例1> マスリン酸エチル
マスリン酸4.5gとトリエチルアミン1.0gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.2gを加え、トリエチルアミン1.0gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、マスリン酸エチルエステルを3.5g得た。
<合成例2> 2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸
マスリン酸2.0gをピリジン100mLに溶解し、無水酢酸50mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸を2.2g得た。
<合成例3> 2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステル
マスリン酸1.0gを無水ジメチルフォルムアミド200mLに溶解し、イミダゾール144.0mgおよびトリエチルシリルクロライド350□Lを0□で加え、密栓して2時間攪拌した。ジメチルフォルムアミドを溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステルを1.5g得た。
<合成例4> 2,3−O−ジ−ステアリルマスリン酸エチル
合成例1で得たマスリン酸エチル1.0gを無水トルエン50mLに溶解し、トリエチルアミン5.0gを加え、さらにステアリン酸クロライド6.0gを氷冷下で徐々に添加しながら、1時間攪拌し、徐々に室温に戻しながら9時間攪拌した。1N塩酸水溶液を適量加え、エーテルで抽出し、エーテル相はさらに飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−ステアリルマスリン酸エチルを1.2g得た。
<合成例5> 3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール
エリトロジオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオールを5.4g得た。
<合成例6> ウルソール酸エチル
ウルソール酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ウルソール酸エチルエステルを3.8g得た。
<合成例7> 3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール
ウバオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ウバオールを5.4g得た。
<合成例8> ベツリン酸エチル
ベツリン酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ベツリン酸エチルエステルを3.8g得た。
<合成例9> 3,28−O−ジ−アセチル−ベツリン
ベツリン5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ベツリンを5.4g得た。
実施例1
<血管平滑筋細胞増殖抑制効果の評価>
ラット由来血管平滑筋細胞株A7r5(ATCCより購入)を、3x106細胞/75cm2組織培養フラスコ(Nunc社製)の密度で、10%牛胎児血清を含むDMEM培地(ナカライテスク社製)にて培養した。対数増殖期後半に入る11日後に、細胞を1x104細胞/0.32cm2マルチプルウェルプレート(Corning Costar社製)の密度で移植し、2.5%牛胎児血清を含むDMEM培地にて、五環性トリテルペン類を、表1に記載の濃度になるように加えた状態で48時間培養した。培養開始後44時間目にAlamarBlueTM(Alamar社製)を加え、更に4時間培養した。培養終了後、細胞による酸化還元反応によって生じた蛍光物質を蛍光分光光度計で測定し、コントロール群の蛍光強度と比較することより細胞増殖抑制率を算出した。その際、五環性トリテルペン類による細胞毒性を知るために、細胞形態をも観察した。
(評価基準) 五環性トリテルペン類を溶かした溶媒のみを加えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた蛍光強度を100%とした時の、被検物質添加群の蛍光強度から、増殖抑制率を算出した。すなわち、数式1の通りである。
上記方法によって血管平滑筋細胞増殖抑制効果を評価した。その結果を増殖抑制率として表1に示す。
表1から、比較としたオレアノール酸にはほとんど血管平滑筋細胞増殖抑制効果はなかった。これに対して、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の血管平滑筋細胞増殖抑制効果は非常に強いことが分かった。なお、培養終了後の細胞形態の観察により、検討した濃度での五環性トリテルペン類の細胞毒性は全く認められなかった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた血管平滑筋細胞増殖抑制効果を有することが明らかになった。
実施例2
<血管平滑筋細胞遊走抑制効果の評価>
ラット由来血管平滑筋細胞株A7r5(ATCCより購入)を、3x105細胞/75cm2組織培養フラスコ(Nunc社製)の密度で、10%牛胎児血清を含むDMEM培地(ナカライテスク社製)にて培養した。対数増殖期後半に入る11日後に、0.32cm2マルチプルウェルプレート(Corning Costar社製)に設置したケモタキセル(倉敷紡績社製)の上室に、培養細胞を5x104細胞/セルの密度で移植し、下室に25ng/mlの血小板由来活性化因子のB鎖ホモダイマー(PDGF−BB:Sigma社製)を含むDMEM培地と、五環性トリテルペン類を、表2に記載の濃度となるように加えた状態で、6時間培養した。培養終了後、ケモタキセルの膜下面に移動した細胞数を、Diff−Quik染色(国際試薬社製)により細胞を染色した後に計測し、コントロール群の細胞数と比較することより細胞遊走抑制率を算出した。
(評価基準) 五環性トリテルペン類を溶かした溶媒のみを加えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた遊走細胞数を100%とした時の、被検物質添加群の細胞数から、遊走抑制率を算出した。すなわち、数式2の通りである。
上記方法によって血管平滑筋細胞遊走抑制効果を評価した。その結果を遊走抑制率として表2に示す
表2から、比較としたエリトロジオール、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンには全く血管平滑筋細胞遊走抑制効果はなかった。また、オレアノール酸は、公知の抗動脈硬化用飲食物であるα−トコフェロールと同程度の抑制効果しか示さなかった。これに対して、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の血管平滑筋細胞遊走抑制効果は、非常に強いことが分かった。
これにより、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有することが明らかになった。
実施例3
<動物における内膜肥厚抑制効果の確認試験>
ウィスター系雌ラット(15週令)をAIN−93組成の粉末調製飼料で1週間予備飼育した後、8群(1群4匹)に分けた。ペントバルビタール麻酔下で背位固定し、左外頚動脈を露出させ、外頚動脈よりカテーテルを総頚動脈分岐部まで挿入した。その部分でバルーンを膨らませ回転をかけながら外頚動脈まで引くことで内皮細胞を剥離した。この操作を4回繰り返した後、手術部位を縫合した。表4に示す各被験物質を綿実油に懸濁し、200mg/kgの用量で1日1回、ゾンデを用いて強制的に経口投与した。引き続きAIN−93組成の粉末調製飼料で飼育を行い、2週間後、ペントバルビタール麻酔下で開胸し、心臓弓部より10%リン酸緩衝/ホルマリン液で灌流した後、内皮細胞を剥離した左外頚動脈を摘出した。当該部位をホルマリン固定、パラフィン包埋し、組織切片を作製後、エラスチカ・ワンギーソン染色を行った。各切片の内膜および中膜の面積を、顕微鏡下でデジタルカメラ(オリンパス社製)で撮影した画像を解析することで測定した。
(評価基準) 五環性トリテルペン類を懸濁させた綿実油のみを加えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた内膜に対する中膜の面積比を100%とした時の、五環性トリテルペン類投与群の内膜に対する中膜の面積比から、内膜肥厚抑制率を算出した。すなわち、数式3の通りである。
上記方法によって内膜肥厚抑制効果を評価した。その結果を内膜肥厚抑制率として表4に示す
表3から、評価したマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は内膜肥厚抑制効果を有することが分かった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、優れた内膜肥厚抑制効果を有することが明らかとなり、再狭窄用飲食物として有用であることが分かった。
実施例4
<動物における抗動脈硬化効果の確認試験>
NZWウサギ(雄、2〜2.5kg)を、コレステロールを1%含むAIN−93組成の粉末調製飼料(コレステロール食)で1週間予備飼育した後、8群(1群5羽)に分け、表3に示す各被験物質を1%含むコレステロール食で、1日1回の制限給餌(40g/kg)にて8週間飼育した。8週間後、ペントバルビタール麻酔下で殺処分、解剖し、大動脈を摘出した。ホルマリン固定後、SudanIV染色し、大動脈内腔総面積および動脈硬化病変面積を、顕微鏡下でデジタルカメラ(オリンパス社製)で撮影した画像を解析することで測定した。
(評価基準) コレステロール食を与えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた大動脈内腔総面積に対する動脈硬化病変面積の割合を100%とした時の、五環性トリテルペン類添加コレステロール食を与えた群の大動脈内腔総面積に対する動脈硬化病変面積の割合から、動脈硬化抑制率を算出した。すなわち、数式4の通りである。
上記方法によって抗動脈硬化抑制効果を評価した。その結果を動脈硬化抑制率として表4に示す
表4から、評価したマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は動脈硬化抑制効果を有することが分かった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、優れた動脈硬化抑制効果を有することが明らかとなり、抗動脈硬化用飲食物として有用であることが分かった。
実施例5
<動物における急性毒性試験>
急性毒性試験は以下の方法で行った。ウィスター系雌ラット(6週齢、平均体重160g)をAIN−93組成の粉末調製飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が均等になるように6群(1群8匹)に分け、それぞれにマスリン酸投与群、エリトロジオール投与群、ウルソール酸投与群、ウバオール投与群、ベツリン酸投与群、ベツリン投与群とした。各被験物質を綿実油に懸濁し、2000mg/体重kgになるように、ゾンデを用いて強制的に経口投与した。引き続きAIN−93組成の粉末調製飼料で飼育を行い、投与後2週間の予後状態を観察し、2週間後に解剖による内臓状態の検視を行った。
結果としては、投与後2週間において、何れの群においても死亡例はなく、また、解剖による内臓の所見でも特に異常は見られなかった。このことから各五環性トリテルペンのLD50値は2000mg/体重kg以上であり、安全性に極めて優れており、また、血管障害疾患用飲食物の形態として、経口摂取することも可能であることが分かった。
実施例6 食用調合油脂
精製マスリン酸1 5.0g
大豆白絞油 845.0g
MCT 150.0g
上記配合比率にて、大豆白絞油とMCTの混合油に精製マスリン酸1を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例7 ドレッシング
水 46.6g
キサンタンガム 0.1g
果糖ぶどう糖液糖 5.0g
食塩 5.0g
MSG 0.3g
米酢(酸度10%) 10.0g
こしょう 適量
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
MLCT 32.0g
上記配合比率にて、まずMLCTを除く原材料を、攪拌機付きの加温可能な容器に投入し、プロペラ攪拌機を用いて100rpmで攪拌しながら品温が90℃になるまで加熱し、品温を90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。その後、品温が20℃になるまで冷却してMLCTと合わせてドレッシングを得た。
実施例8 清涼飲料
合成例5の3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール 0.5g
ハチミツ 15.0g
クエン酸 0.1g
dl−リンゴ酸 0.1g
D−ソルビトール液(70%) 10.0g
安息香酸ナトリウム 0.1g
香料 適量
精製水 全量100gとする残余
上記原料を均一に混合し、健康用飲料を得た。
実施例9 シリアル食品
合成例7の3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール 15.0g
小麦粉 30.0g
脱脂大豆 18.5g
小麦ふすま 15.0g
小麦胚芽 11.5g
グラニュー糖 10.0g
上記配合比率にて混合したものを、加水、成型し、オーブンで加熱乾燥して、球形状のシリアル食品を得た。
実施例10 食用調合油脂
製造例3の精製マスリン酸3 10.0g
ミックストコフェロール 1.0g
米油 989.0g
上記配合比率にて、米油に精製マスリン酸3とミックストコフェロールを添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例11 食用調合油脂
製造例1の精製マスリン酸1 5.0g
植物ステロール 1.0g
紅花油 989.0g
上記配合比率にて、紅花油に精製マスリン酸1と植物ステロールを添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例12 マーガリン
菜種油 42.0g
菜種硬化油 42.0g
水 14.0g
食塩 0.5g
レシチン 0.5g
モノグリセリド 0.4g
製造例1の精製マスリン酸1 0.5g
香料 適量
カロチン 微量
上記原料を常法により混合し、コンビネーターを用い急冷混捏処理してマーガリンを得た。
実施例13 マヨネーズ
大豆サラダ油 74.0g
水 8.4g
砂糖 1.0g
グルタミン酸ナトリウム 0.3g
粉末マスタード 0.3g
食塩 1.0g
米酢 4.0g
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
加塩卵黄 10.0g
上記配合比率にて、まず大豆サラダ油、加塩卵黄を除く原材料を、混合攪拌しながら90℃まで加熱し、90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。20℃まで冷却した後、大豆サラダ油、加塩卵黄を合わせて減圧下で撹拌し、マヨネーズを得た。
本発明の血管障害疾患用飲食物によれば、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制および抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症およびPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果に優れており、天然由来であるため安心感や安全性を付与でき、容易に、かつ、継続的な摂取により、好適な効果を享受することができる。
本発明は、血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走、内膜肥厚および動脈硬化等の細胞増殖性血管病変、動脈硬化症および経皮的冠動脈形成術後の再狭窄等の血管障害疾患に対する予防および/または治療の効果を発現する飲食物に関する。
近年、欧米において、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や脳卒中、脳塞栓症等の脳血管疾患が、その死亡率の高さゆえに大きな社会問題になっている。また日本においても、食生活の欧米化や高齢化に伴い、上記疾患が死亡原因の一つとして急増している。これら疾患は、動脈硬化によって生じる血管内腔の狭小化や血管壁の弾力性消失等の血管病変により誘導される。
動脈硬化の成立は、単一ではなく、複数の要因と誘因とによっているが、大別して、その主たる要因を2つに分ける事ができる。1つは動脈内皮損傷による各種網内系細胞の凝集と、それ以降におこる血管平滑筋細胞増殖因子の放出、そして中膜由来の血管平滑筋細胞の動脈硬化巣への遊走及びそこでの増殖であり、他の1つは、コレステロールを含む高脂血症による血管内皮細胞、血管平滑筋細胞の形質転換、そして動脈硬化巣での増殖である。すなわち、血管平滑筋細胞の内膜への遊走、および内膜での増殖によって生じる細胞繊維性の肥厚により、血管内腔の狭小化等の細胞増殖性血管病変が生じる。
血管の狭小化を外科的に治療する方法の一つに、経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:以下、PTCAと略す)がある。これは大腿動脈などからバルーンカテーテルを遠隔的に挿入していき、狭窄部でバルーンを膨らませ、物理的に血管を拡張させる手術であり、施術直後の優れた症状改善率が臨床的に評価されている。
しかしながら、PTCA施行後に再び狭窄が起こる例がある。この再狭窄部位は、血管平滑筋細胞を主とする細胞繊維性内膜肥厚であることが知られている。また、血管平滑筋細胞の増殖、内膜への遊走、マトリックス沈着等の結果により生じる内膜肥厚は、動脈硬化性疾患、高血圧、虚血性心疾患、脳血管疾患においても発症の主な要因となっている。さらに、心臓、肝臓、腎臓、血管等の臓器移植後における血管狭窄も血管平滑筋細胞の増殖が関与している。
狭心症や心筋梗塞の治療薬としては、抗血栓薬や血管拡張薬等が主として用いられているが、PTCA後の再狭窄および動脈硬化によって招来される血管内腔の狭小化や血管の弾力性消失を治療するには至っておらず、これまでのところ血管平滑筋細胞増殖が関与する動脈硬化性疾患、虚血性心疾患および脳血管疾患を薬物で治療することには限界があるため、血管内腔の狭小化の原因となる内膜肥厚や動脈硬化等の細胞増殖性血管病変を予防あるいは治療できる飲食物が渇望されている。
本発明に関わるトリテルペン類とは、一般にイソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転移、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれる。これらの効果としては、概して、抗炎症効果、抗発癌プロモーター効果(日本油化学会誌,49,571,2000)等が知られている。特にウルソール酸やオレアノール酸に関しては、抗高脂血症効果があることが知られており、さらにウルソール酸は高脂血症に伴うアテローム性動脈硬化症に対する効果を有することも知られている(Chemical Abstracts,91,49279r.,1981、あるいは、Farmacology and Toksikology,45,66−70,1982)。しかしながら、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体が、血管平滑筋細胞に対する効果を有することは、これまで、全く知られていなかった。
発明の開示
本発明は、血管平滑筋細胞増殖や遊走を抑制し、内膜肥厚および動脈硬化等の細胞増殖性血管病変や、動脈硬化症およびPTCA後の再狭窄等の血管障害疾患を予防および/または治療するために、これらに対する非常に優れた効果を有する血管障害疾患用飲食物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を達成する為に鋭意検討した結果、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物が、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、抗細胞増殖性血管病変効果、抗血管障害疾患効果等により、血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走によって生じる動脈硬化および内膜肥厚等の細胞増殖性血管病変や、動脈硬化症およびPTCA後の再狭窄等の血管障害疾患に対し、優れた予防および/または治療効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物に関し、また、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物に関する。
また、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走に起因する抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が内膜肥厚である抗内膜肥厚用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が動脈硬化である抗動脈硬化用飲食物に関する。
また本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が細胞増殖性血管病変に起因する血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が動脈硬化症である抗動脈硬化症用飲食物に関し、好ましくは前記血管障害疾患がPTCA後の再狭窄であるPTCA後の抗再狭窄用飲食物に関する。
本発明はまた、オリーブの脱脂物をエタノール溶液で処理して得られる抽出物を含有する血管血管障害疾患用飲食物に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖又は血管平滑筋細胞が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する、内膜肥厚、動脈硬化、細胞増殖性血管病変、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症、動脈硬化症、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄、心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中又は脳血管疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の、血管障害疾患用飲食物を製造するための使用に関する。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料に関する。
本発明はまた、オリーブの脱脂物をエタノール溶液で処理して得られる抽出物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
また、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
これらの物質は、イソプレン単位6個から成るトリテルペン類のうち五環性の化合物であり、自然界においては様々な植物体に多く存在する物質群である。これらは、天然には植物体から抽出して得ることができ、また、その中のいくつかは人工的に合成され、既に試薬等として販売されているものもあり、いずれも好適に使用することができる。天然原料から抽出されたものが好ましい。
これらは血管平滑筋細胞増殖抑制および/または血管平滑筋細胞遊走抑制といった抗動脈硬化効果を有し、これらの効果は、培養細胞による試験法で評価することができる。この評価方法によれば、従来の抗動脈硬化用飲食物として知られているα−トコフェロール(D.Boscoboinik et al.,Arch.Biochem.Biophys.,286(1),264−269(1991))と比較しても、2〜20倍の抗動脈硬化効果を有することがわかる。
ここで、有効成分として含有するとは、その血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果を発揮する程度に含有するということであるが、その含量は特に制限されず、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すれば良い。特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜99.99質量%、さらに好ましくは0.005〜99.99質量%、さらに好ましくは0.01〜99.99質量%、さらに好ましくは0.05〜99.99質量%、さらに好ましくは0.1〜99.99質量%、さらに好ましくは0.5〜99.99質量%、さらに好ましくは1〜99.99質量%である。
また、本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走に起因する抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が内膜肥厚である抗内膜肥厚用飲食物に関し、好ましくは、前記細胞増殖性血管病変が動脈硬化である抗動脈硬化用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。これらは抗細胞増殖性血管病変効果、例えば内膜肥厚抑制効果および/または抗動脈硬化効果を有し、これらの効果は、動物による試験法で評価することができる。
ここで、有効成分として含有するとは、抗細胞増殖性血管病変効果、例えば内膜肥厚抑制効果および/または抗動脈硬化効果を発揮する程度に含有するということであるが、その含量は特に制限されず、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すれば良い。特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜99.99質量%、さらに好ましくは0.005〜99.99質量%、さらに好ましくは0.01〜99.99質量%、さらに好ましくは0.05〜99.99質量%、さらに好ましくは0.1〜99.99質量%、さらに好ましくは0.5〜99.99質量%、さらに好ましくは1〜99.99質量%である。
また本発明は、五環性トリデルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が細胞増殖性血管病変に起因する血管障害疾患用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患が動脈硬化症である抗動脈硬化症用飲食物に関し、好ましくは、前記血管障害疾患がPTCA後の再狭窄であるPTCA後の抗再狭窄用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。これらは抗血管障害疾患効果、例えば抗動脈硬化症効果および/または抗再狭窄効果を有し、これらの効果は、動物および臨床による試験法で評価することができる。
ここで、有効成分として含有するとは、抗血管障害疾患効果、例えば抗動脈硬化症効果および/または抗再狭窄効果を発揮する程度に含有するということであるが、その含量は特に制限されず、摂取の頻度、摂取量、使用の目的によって適宜調整すれば良い。特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜99.99質量%、さらに好ましくは0.005〜99.99質量%、さらに好ましくは0.01〜99.99質量%、さらに好ましくは0.05〜99.99質量%、さらに好ましくは0.1〜99.99質量%、さらに好ましくは0.5〜99.99質量%、さらに好ましくは1〜99.99質量%である。
本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物および/または血管平滑筋遊走抑制用飲食物および/または抗内膜肥厚用飲食物・抗動脈硬化用飲食物等の抗細胞増殖性血管病変用飲食物および/または抗動脈硬化症用飲食物・PTCA後の抗再狭窄用飲食物等の血管障害疾患用飲食物に関する。これらの物質は、トリテルペン類の1種であり、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物であり、天然の植物から得ることも、人工的に得ることもでき、市販品も好適に利用することができる。天然原料から抽出されたものが好ましい。また、ここで、有効成分として含有するとは、その各目的の効果を発揮する程度に含有するということである。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖又は血管平滑筋細胞が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する、内膜肥厚、動脈硬化、細胞増殖性血管病変、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症、動脈硬化症、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄、心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中又は脳血管疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料に関する。五環性トリテルペン類のうち、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類及びルパン系トリテルペン類が好ましい。中でも、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンが好ましい。特に、マスリン酸、エリトロジオール及びウバオールが好ましい。さらに特にマスリン酸が好ましい。
生理的に許容される塩とは、特に五環性トリテルペン酸のカルボキシル基から誘導される塩であり(部分構造:−COOX;Xは任意の陽イオン性物質を示す。)、本発明における天然原料からの単離物に本来的に含まれているものも含む。本発明においては、通常飲食物または医薬組成物で用いられている塩であれば特に限定はされない。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛等のアルカリ土類金属塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、テトラブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン等のアルキルアミン塩、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩、ピペラジン、ピペリジン等のその他の有機アミン塩、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン等の塩基性アミノ酸塩等の塩が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩及び塩基性アミノ酸塩が好ましい一概にこれらの塩類は、その元となる五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系の血管障害疾患用飲食物等に適用する場合に好ましい。
また、誘導体とは、生化学的あるいは人工的に形成可能な誘導体であり、本発明においては、可能な誘導体であれば特に限定はされないが、例えば、アルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体、あるいは配糖体等が挙げられる。これらのうち、特にアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、その元となるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンに比べて、より脂溶性を示すため、本発明においては、特に油系の血管障害疾患用飲食物等に適用する場合に好ましく、配糖体は、その元となる五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系の血管障害疾患用飲食物等に適用する場合に好ましい。
これらの誘導体は、一部は天然にも存在し、また、上述の通り人工により形成させることで得ることができる。また、本発明の誘導体を再度誘導体化して、それらの塩を使用することもできる。
このように、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸及びベツリンを、生理的に許容される適当な塩や誘導体の形態にすることにより、水溶性又は油溶性を向上させることができ、従って、ハンドリング性・品質・血管平滑筋細胞増殖抑制効果・血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を向上させた製品を設定することができる。
アルコールエステル基とは、一般的なカルボキシル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−COOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコールエステル基を有する誘導体とは、特に、そのカルボキシル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はトリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
脂肪酸エステル基とは、一般的な水酸基と脂肪酸類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OCOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、脂肪酸エステル基を有する誘導体とは、特に、その水酸基と脂肪酸類から形成可能な誘導体を示す。この際の脂肪酸類に特に制限は無いが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。このうち、酢酸、無水酢酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸又はドコサヘキサエン酸から形成される誘導体が好ましい。
アルコキシ基とは、一般的な水酸基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシ基を有する誘導体とは、特に、その水酸基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はトリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
アルコキシメチル基とは、一般的なヒドロキシメチル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−CH2OR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシメチル基を有する誘導体とは、特に、そのヒドロキシメチル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はトリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
また、本発明における配糖体とは、上記のアルコールエステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体のうち、特に、五環性トリテルペン類のカルボキシル基、水酸基、ヒドロキシメチル基と糖類から形成可能な誘導体を示す(部分構造:−COOR、−OR、−CH2OR;Rは任意の糖類を示す。)。この際の糖類に特に制限は無いが、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、フコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸等が挙げられ、何れもα体、β体どちらでもよい。またこれらの配糖体は、単糖でもよいし、二糖以上の様々な組合せのオリゴ糖でもよい。これらの中には、通常天然に存在し、サボニンという総称で知られているものも有るが、本発明においては、これらのいずれを用いてもよい。
本発明における五環性トリテルペン類等は上述の通りであるが、特に抗動脈硬化効果の高さの面からは、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が好ましい。それぞれ、オレアナン系トリテルペン類については一般式(I)に、ウルサン系トリテルペン類については一般式(II)に、ルパン系トリテルペン類については一般式(III)に示される骨格を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体である。また、それぞれの式中の官能基については、上記と同様である。
(式中、R1、R2は水素原子(−H)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アルコールエステル基(−OCOR)を示し、R3はメチル基(−CH3)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、アルコキシメチル基(−CH2OR)、カルボキシル基(−COOH)、脂肪酸エステル基(−COOR)、カルボン酸塩(−COOX)を示す。)
(式中、R1は水素原子(−H)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アルコールエステル基(−OCOR)を示し、R2はメチル基(−CH3)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、アルコキシメチル基(−CH2OR)、カルボキシル基(−COOH)、脂肪酸エステル基(−COOR)、カルボン酸塩(−COOX)を示す。)
(式中、R1は水素原子(−H)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アルコールエステル基(−OCOR)を示し、R2はメチル基(−CH3)、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)、アルコキシメチル基(−CH2OR)、カルボキシル基(−COOH)、脂肪酸エステル基(−COOR)、カルボン酸塩(−COOX)を示す。)
本発明において特に制限は無いが、例えば、オレアナン系トリテルペン類として、マスリン酸、オレアノール酸、エリトロジオール、β−アミリン、ヘデラゲニン、グリチルレチン酸等が挙げられ、ウルサン系トリテルペン類として、ウルソール酸、ウバオール、α−アミリン、キノボ酸、タラキサステロール、α−ヒドロキシウルソール酸等が挙げられ、ルパン系トリテルペン類として、ベツリン酸、ベツリン、ルペオール等が挙げられる。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、本発明が飲食物であることを考慮に入れると、天然物を用いることが好ましい。
上述の通り、本発明においては、五環性トリテルペン類のうちのオレアナン系トリテルペン類(I)、ウルサン系トリテルペン類(II)、ルパン系トリテルペン類(III)およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が好ましいが、抗動脈硬化効果の強さの面から更に、オレアナン系トリテルペンとしてマスリン酸、エリトロジオールが好ましく、ウルサン系トリテルペンとしてウルソール酸、ウバオールが好ましく、ルパン系トリテルペンとしてベツリン酸、ベツリンが好ましく、当然に、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が好ましい。
マスリン酸、エリトロジオールは、何れもオレアナン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、マスリン酸、エリトロジオール、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができる。
本発明においては、抗動脈硬化効果等の高さ、安定供給の面で、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が最も好ましい。マスリン酸(maslinic acid)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(IV)に示す構造であり、効果としては、抗炎症効果や抗ヒスタミン効果を有することが知られている。天然には、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、マスリン酸、その生理的に許容される塩および誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等の天然から得られるものが好ましく、特にオリーブから得られるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は原料供給や含量の面で非常に好ましい。これらの原料、特にはオリーブ植物から、水および/または有機溶媒により抽出処理することで得ることができ、さらに濃縮・精製することで高濃度の天然由来マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を簡便かつ大量に得ることができる。
尚、本明細書において、「オリーブ」は、オリーブ植物及び/又はオリーブ油及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物を意味する。
本発明において、マスリン酸の生理的に許容される塩および誘導体については前記記載と同様である。すなわち、その生理的に許容される塩とは化学式(IV)における−COOHから誘導されるものであり、その塩の種類は通常飲食物または医薬組成物で用いられるものであれば特に限定はされない。具体的には、例えば、マスリン酸の塩として、マスリン酸ナトリウム、マスリン酸カリウム、マスリン酸アンモニウム、マスリン酸ジメチルアンモニウム、マスリン酸カルシウム、マスリン酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、マスリン酸ナトリウム及びマスリン酸カリウムが好ましい。
また、マスリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、マスリン酸メチルエステル、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸n−プロピルエステル、マスリン酸イソプロピルエステル、マスリン酸n−ブチルエステル、マスリン酸トリメチルシリルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、マスリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、マスリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、3−O−プロピオニル−マスリン酸、3−O−ブチリル−マスリン酸、3−O−バレリル−マスリン酸、3−O−カプリル−マスリン酸、3−O−ラウリル−マスリン酸、3−O−ミリスチル−マスリン酸、3−O−パルミチル−マスリン酸、3−O−パルミトオレイル−マスリン酸、3−O−ステアリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸、3−O−オレイル−マスリン酸、3−O−バクセニル−マスリン酸、3−O−リノレイル−マスリン酸、3−O−リノレニル−マスリン酸、3−O−アラキジル−マスリン酸、3−O−アラキドニル−マスリン酸、3−O−ベヘニル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−プロピオニル−マスリン酸、2−O−ブチリル−マスリン酸、2−O−バレリル−マスリン酸、2−O−カプリル−マスリン酸、2−O−ラウリル−マスリン酸、2−O−ミリスチル−マスリン酸、2−O−パルミチル−マスリン酸、2−O−パルミトオレイル−マスリン酸、2−O−ステアリル−マスリン酸、2−O−ステアロイル−マスリン酸、2−O−オレイル−マスリン酸、2−O−バクセニル−マスリン酸、2−O−リノレイル−マスリン酸、2−O−リノレニル−マスリン酸、2−O−アラキジル−マスリン酸、2−O−アラキドニル−マスリン酸、2−O−ベヘニル−マスリン酸、3−O−メチル−マスリン酸、3−O−エチル−マスリン酸、3−O−t−ブチル−マスリン酸、3−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸、2−O−メチル−マスリン酸、2−O−エチル−マスリン酸、2−O−t−ブチル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、2−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸等が挙げられるこのうち、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸及び2−O−ステアロイル−マスリン酸が好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、マスリン酸又は上述の好ましいマスリン酸エステルの2,3−O−ジアセチル体、2,3−O−ジトリエチルシリル体及び2,3−ジステアロイル体が好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
エリトロジオール(erythrodiol)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(V)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、抗炎症効果(Planta.Med.VOL.61,No.2,182−185 1995)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、エリトロジオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
エリトロジオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−エリトロジオール、3−O−プロピオニル−エリトロジオール、3−O−ブチリル−エリトロジオール、3−O−バレリル−エリトロジオール、3−O−カプリル−エリトロジオール、3−O−ラウリル−エリトロジオール、3−O−ミリスチル−エリトロジオール、3−O−パルミチル−エリトロジオール、3−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、3−O−ステアリル−エリトロジオール、3−O−ステアロイル−エリトロジオール、3−O−オレイル−エリトロジオール、3−O−バクセニル−エリトロジオール、3−O−リノレイル−エリトロジオール、3−O−リノレニル−エリトロジオール、3−O−アラキジル−エリトロジオール、3−O−アラキドニル−エリトロジオール、3−O−ベヘニル−エリトロジオール、28−O−アセチル−エリトロジオール、28−O−プロピオニル−エリトロジオール、28−O−ブチリル−エリトロジオール、28−O−バレリル−エリトロジオール、28−O−カプリル−エリトロジオール、28−O−ラウリル−エリトロジオール、28−O−ミリスチル−エリトロジオール、28−O−パルミチル−エリトロジオール、28−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、28−O−ステアリル−エリトロジオール、28−O−ステアロイル−エリトロジオール、28−O−オレイル−エリトロジオール、28−O−バクセニル−エリトロジオール、28−O−リノレイル−エリトロジオール、28−O−リノレニル−エリトロジオール、28−O−アラキジル−エリトロジオール、28−O−アラキドニル−エリトロジオール、28−O−ベヘニル−エリトロジオール、3−O−メチル−エリトロジオール、3−O−エチル−エリトロジオール、3−O−t−ブチル−エリトロジオール、3−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、28−O−メチル−エリトロジオール、28−O−エチル−エリトロジオール、28−O−t−ブチル−エリトロジオール、28−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−エリトロジオール及び28−O−アセチル−エリトロジオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−エリトロジオールが好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウルソール酸、ウバオール、は、何れもウルサン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ウルソール酸、ウバオール、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、天然物を用いることが好ましい。
ウルソール酸(ursolic acid)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(VI)で示される構造の化合物で、効果としてはこれまでに、抗炎症効果、抗動脈硬化効果、抗糖尿病効果、抗高脂血症効果(Jie Liu,Journal of Ethnopharmacology,49,57−68,1995)等を有することが知られている。天然には、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の果実や葉に広く分布することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ウルソール酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の天然から得られるものが好ましい。
ウルソール酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、その生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ウルソール酸の塩として、ウルソール酸ナトリウム、ウルソール酸カリウム、ウルソール酸アンモニウム、ウルソール酸ジメチルアンモニウム、ウルソール酸カルシウム、ウルソール酸マグネシウム等が挙げられる。
ウルソール酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ウルソール酸メチルエステル、ウルソール酸エチルエステル、ウルソール酸n−プロピルエステル、ウルソール酸イソプロピルエステル、ウルソール酸n−ブチルエステル、ウルソール酸トリメチルシリルエステル、ウルソール酸トリエチルシリルエステル、ウルソール酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ウルソール酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ウルソール酸、3−O−プロピオニル−ウルソール酸、3−O−ブチリル−ウルソール酸、3−O−バレリル−ウルソール酸、3−O−カプリル−ウルソール酸、3−O−ラウリル−ウルソール酸、3−O−ミリスチル−ウルソール酸、3−O−パルミチル−ウルソール酸、3−O−パルミトオレイル−ウルソール酸、3−O−ステアリル−ウルソール酸、3−O−ステアロイル−ウルソール酸、3−O−オレイル−ウルソール酸、3−O−バクセニル−ウルソール酸、3−O−リノレイル−ウルソール酸、3−O−リノレニル−ウルソール酸、3−O−アラキジル−ウルソール酸、3−O−アラキドニル−ウルソール酸、3−O−ベヘニル−ウルソール酸、3−O−メチル−ウルソール酸、3−O−エチル−ウルソール酸、3−O−t−ブチル−ウルソール酸、3−O−トリエチルシリル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウルソール酸等が挙げられる。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウバオール(uvaol)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(VII)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、抗炎症効果(Planta.Med.VOL.61,No.2,182−185 1995)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害効果(特開平9−67249)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ウバオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ウバオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ウバオール、3−O−プロピオニル−ウバオール、3−O−ブチリル−ウバオール、3−O−バレリル−ウバオール、3−O−カプリル−ウバオール、3−O−ラウリル−ウバオール、3−O−ミリスチル−ウバオール、3−O−パルミチル−ウバオール、3−O−パルミトオレイル−ウバオール、3−O−ステアリル−ウバオール、3−O−ステアロイル−ウバオール、3−O−オレイル−ウバオール、3−O−バクセニル−ウバオール、3−O−リノレイル−ウバオール、3−O−リノレニル−ウバオール、3−O−アラキジル−ウバオール、3−O−アラキドニル−ウバオール、3−O−ベヘニル−ウバオール、28−O−アセチル−ウバオール、28−O−プロピオニル−ウバオール、28−O−ブチリル−ウバオール、28−O−バレリル−ウバオール、28−O−カプリル−ウバオール、28−O−ラウリル−ウバオール、28−O−ミリスチル−ウバオール、28−O−パルミチル−ウバオール、28−O−パルミトオレイル−ウバオール、28−O−ステアリル−ウバオール、28−O−ステアロイル−ウバオール、28−O−オレイル−ウバオール、28−O−バクセニル−ウバオール、28−O−リノレイル−ウバオール、28−O−リノレニル−ウバオール、28−O−アラキジル−ウバオール、28−O−アラキドニル−ウバオール、28−O−ベヘニル−ウバオール、3−O−メチル−ウバオール、3−O−エチル−ウバオール、3−O−t−ブチル−ウバオール、3−O−トリエチルシリル−ウバオール、28−O−メチル−ウバオール、28−O−エチル−ウバオール、28−O−t−ブチル−ウバオール、28−O−トリエチルシリル−ウバオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ウバオール及び28−O−アセチル−ウバオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ウバオールが好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン酸、ベツリン、は、何れもルパン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ベツリン酸、ベツリン、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、天然物を用いることが好ましい。
ベツリン酸(betulinic acid)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(VIII)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、制癌効果、抗炎症効果、創傷治療促進効果(特公平4−26623)、アルコール吸収抑制効果(特開平7−53385)、発毛促進効果(特開平9−157139)等を有することが知られている。天然には、センブリ、チョウジ、ブドウ果皮、オリーブ等に遊離状態で、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等にはサポニンとして存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ベツリン酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、センブリ、チョウジ、ブドウ、オリーブ、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブから得られるものが好ましく、具体的には、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ベツリン酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、その生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ベツリン酸の塩として、ベツリン酸ナトリウム、ベツリン酸カリウム、ベツリン酸アンモニウム、ベツリン酸ジメチルアンモニウム、ベツリン酸カルシウム、ベツリン酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、ベツリン酸ナトリウム及びベツリン酸カリウムが好ましい。
ベツリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ベツリン酸メチルエステル、ベツリン酸エチルエステル、ベツリン酸n−プロピルエステル、ベツリン酸イソプロピルエステル、ベツリン酸n−ブチルエステル、ベツリン酸トリメチルシリルエステル、ベツリン酸トリエチルシリルエステル、ベツリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ベツリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ベツリン酸、3−O−プロピオニル−ベツリン酸、3−O−ブチリル−ベツリン酸、3−O−バレリル−ベツリン酸、3−O−カプリル−ベツリン酸、3−O−ラウリル−ベツリン酸、3−O−ミリスチル−ベツリン酸、3−O−パルミチル−ベツリン酸、3−O−パルミトオレイル−ベツリン酸、3−O−ステアリル−ベツリン酸、3−O−ステアロイル−ベツリン酸、3−O−オレイル−ベツリン酸、3−O−バクセニル−ベツリン酸、3−O−リノレイル−ベツリン酸、3−O−リノレニル−ベツリン酸、3−O−アラキジル−ベツリン酸、3−O−アラキドニル−ベツリン酸、3−O−ベヘニル−ベツリン酸、3−O−メチル−ベツリン酸、3−O−エチル−ベツリン酸、3−O−t−ブチル−ベツリン酸、3−O−トリエチルシリル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン酸等が挙げられる。このうち、ベツリン酸エチルエステルが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン(betulin)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(IX)の様な構造であり、効果としてはこれまでに、生体タンパク質変性抑制効果(特開平9−67253)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害効果(特開平9−67249)、リパーゼ阻害効果(特開平10−265328)、肝疾患予防効果(特開平11−209275)等を有することが知られている。天然には、シラカバの樹皮等に存在することが知られている。本発明の血管障害疾患用飲食物等において、ベツリンまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、経口用途を考慮に入れると、例えば、シラカバの樹皮等の天然から得られるものが好ましい。
ベツリンについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ベツリン、3−O−プロピオニル−ベツリン、3−O−ブチリル−ベツリン、3−O−バレリル−ベツリン、3−O−カプリル−ベツリン、3−O−ラウリル−ベツリン、3−O−ミリスチル−ベツリン、3−O−パルミチル−ベツリン、3−O−パルミトオレイル−ベツリン、3−O−ステアリル−ベツリン、3−O−ステアロイル−ベツリン、3−O−オレイル−ベツリン、3−O−バクセニル−ベツリン、3−O−リノレイル−ベツリン、3−O−リノレニル−ベツリン、3−O−アラキジル−ベツリン、3−O−アラキドニル−ベツリン、3−O−ベヘニル−ベツリン、28−O−アセチル−ベツリン、28−O−プロピオニル−ベツリン、28−O−ブチリル−ベツリン、28−O−バレリル−ベツリン、28−O−カプリル−ベツリン、28−O−ラウリル−ベツリン、28−O−ミリスチル−ベツリン、28−O−パルミチル−ベツリン、28−O−パルミトオレイル−ベツリン、28−O−ステアリル−ベツリン、28−O−ステアロイル−ベツリン、28−O−オレイル−ベツリン、28−O−バクセニル−ベツリン、28−O−リノレイル−ベツリン、28−O−リノレニル−ベツリン、28−O−アラキジル−ベツリン、28−O−アラキドニル−ベツリン、28−O−ベヘニル−ベツリン、3−O−メチル−ベツリン、3−O−エチル−ベツリン、3−O−t−ブチル−ベツリン、3−O−トリエチルシリル−ベツリン、28−O−メチル−ベツリン、28−O−エチル−ベツリン、28−O−t−ブチル−ベツリン、28−O−トリエチルシリル−ベツリン、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ベツリン及び28−O−アセチル−ベツリンが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ベツリンが好ましい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類からなる群より選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
本発明は、上記、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物に関する。ここで、有効成分として含有するとは、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を発現する程度に含有するということである。
本発明において、血管平滑筋細胞増殖抑制効果とは、動脈硬化巣内に侵入した血管平滑筋細胞が動脈硬化巣内で増殖することを抑制することを示し、結果的には、動脈硬化巣が血管内膜に生成することを予防したり、既に存在する動脈硬化巣がそれ以上肥大しないように、あるいは縮小させたりすることが期待できる。本発明の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物は、特に動脈硬化の増生等に対する予防および/または治療用として使用するものである。予防用としての使用とは、内膜へと遊走してきた血管平滑筋細胞の増殖を抑制し、動脈硬化が発生しないようにすることを目的として使用することを示す。治療用としての使用とは、既に内膜内に存在する血管平滑筋細胞のそれ以上の増殖を抑制したり、あるいは、増殖した血管平滑筋細胞を速やかに減少させる等により、総血管平滑筋細胞を減少させ、動脈硬化巣の増生を抑制したり、動脈硬化巣の破裂を阻止することを目的として使用することを示す。従って本発明はまた、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖が病態に関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明で血管平滑筋細胞増殖抑制効果の評価に用いた方法は、in vitroでの抗動脈硬化薬物のスクリーニング法として既知の方法であり(特開平5−56796)、スクリーニングが容易で、迅速且つ多大な動物の犠牲が回避できる点が特徴である。本発明では、培養血管平滑筋細胞の有する酸化還元能により蛍光物質を生成する試薬を用い、その蛍光物質の生成量を蛍光強度の強弱により判定することで、増殖抑制効果の有無を検討している。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞増殖抑制効果は、血管平滑筋細胞を用いた試験法にて示される。ここで一般に、動脈壁中膜に存在する血管平滑筋細胞とは、収縮と弛緩を繰り返し、血流を調節する機能を有し、構造的には、α−アクチンを含む繊維成分に富む。本発明において対象としている血管平滑筋細胞とは、平滑筋増殖因子等の刺激によってフェノタイプが合成型に変換したものであり、このタイプは繊維成分が粗であるため収縮能を失い、逆に、増殖能、遊走能、多量の結合織産生能を獲得し、ある場合には変性リポタンパクを取込み泡沫化するので、動脈硬化症発症の一因となるものである。本発明で用いた血管平滑筋細胞は、ラット大動脈由来の増殖型培養血管平滑筋細胞株であり、この細胞は通常に培養した場合、倍数時間25時間の増殖能で、培養面上に均一に単層を形成する。これに対して、この培養系に血管平滑筋細胞増殖抑制効果を有する物質を存在させると、血管平滑筋細胞の増殖が抑えられ相対的に細胞の酸化還元能が抑制され、生成される蛍光物質の量も減少し蛍光強度が減少する。この相対的な蛍光強度の度合いから、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を、公知の抗動脈硬化用飲食物であるα−トコフェロールと比較すると、例えば、マスリン酸では約10〜14倍、マスリン酸の塩では約6〜10倍、エリトロジオールでは約10〜14倍、ウルソール酸では約6〜10倍、ウバオールでは約4〜8倍、ベツリン酸では約4〜8倍、ベツリンでは約4〜8倍、マスリン酸エチルエステルでは約6〜10倍、アセチル化マスリン酸では約6〜10倍、トリエチルシリル化マスリン酸では約4〜8倍、ステアリル化マスリン酸エチルでは約6〜10倍、アセチル化エリトロジオールでは約4〜8倍、ウルソール酸エチルエステルでは約6〜10倍、アセチル化ウバオールでは約4〜6倍、ベツリン酸エチルでは約4〜6倍、アセチル化ベツリンでは約4〜6倍という、高い血管平滑筋細胞増殖抑制効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を含有することにより、高い血管平滑筋細胞増殖抑制効果を享受できるものである。
また、上記、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有する。すなわち本発明は、より直接的に、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物に関する。ここで、有効成分として含有するとは、その血管平滑筋細胞遊走抑制効果を発現する程度に含有するということである。
本発明において、血管平滑筋遊走抑制効果とは、血管傷害や高脂血症等により正常値を逸脱した血液成分より増殖能を獲得した中膜由来の血管平滑筋細胞が、血液中の遊走因子の濃度勾配に従って、血管中膜から血管内膜もしくは血管内皮細胞下の動脈硬化巣へと移動(=遊走)していくのを抑制することを示し、結果的には、血管平滑筋細胞の遊走を抑制することで動脈硬化巣が生成することを予防したり、既に存在する動脈硬化巣に血管平滑筋細胞が遊走しないようにすることが期待できる。すなわち、本発明の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物は、血管平滑筋細胞の中膜から内膜内への遊走を抑制し、動脈硬化巣が発生しないようにすることを目的とした、動脈硬化巣の増生等に対する予防用として使用するものである。本発明では、血管平滑筋細胞が遊走因子により活性化され、遊走因子の濃度の濃い方へと遊走していった細胞数を計測し、対照群と比較することで遊走抑制効果の有無を判定している。従って本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞遊走が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物に関する。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞遊走抑制効果は、血管平滑筋細胞を用いた試験法にて示される。本発明で用いた血管平滑筋細胞とは、ラット大動脈由来の増殖型培養血管平滑筋細胞株であり、この細胞に遊走因子である血小板活性化因子を効果させると、その濃度の濃い方へ細胞が遊走する。これに対して、遊走因子と共に血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有する物質を存在させると、細胞の遊走数が減少する。この相対的な細胞数の度合いから、血管平滑筋細胞遊走抑制効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の血管平滑筋細胞遊走抑制効果を、公知の抗動脈硬化用飲食物であるα−トコフェロールと比較すると、例えば、マスリン酸では約25〜30倍、マスリン酸の塩では約25〜30倍、ウルソール酸では約25〜30倍、マスリン酸エチルエステルでは約25〜30倍、アセチル化マスリン酸では約25〜30倍、トリエチルシリル化マスリン酸では約24〜27倍、ステアリル化マスリン酸エチルでは約25〜30倍、ウルソール酸エチルエステルでは約24〜27倍という、非常に高い血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類およびその生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を含有することにより、その非常に強力な血管平滑筋細胞遊走抑制効果を享受できるものである。特にこれらは、血管平滑筋細胞増殖抑制効果も有するため、非常に好ましい。
本発明は、上述のごとく、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗細胞増殖性血管病変用飲食物に関する。ここで、細胞増殖性血管病変とは、血管平滑筋細胞の遊走および異常増殖によって血管内膜の肥厚や動脈硬化が発生した血管組織部位のことであり、冠動脈硬化、腹部大動脈硬化、腎動脈硬化、頚動脈硬化、眼底動脈硬化、脳動脈硬化等の動脈硬化病変部や、PCTA施行後の再狭窄部を指す。本発明の抗細胞増殖性血管病変用飲食物は、特に血管平滑筋細胞増殖および/または血管平滑筋細胞遊走に起因する血管内膜の肥厚や動脈硬化に対する効果により、内膜肥厚や動脈硬化の予防および/または治療効果を有する。
また、本発明は、前記細胞増殖性血管病変が内膜肥厚である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗内膜肥厚用飲食物に関する。ここで、有効成分として含有するとは、内膜肥厚抑制効果を発現する程度に含有するということである。また、内膜肥厚抑制効果とは、血管平滑筋細胞の遊走および異常増殖による血管内膜の肥厚化を抑制することを示し、結果的には、動脈硬化症や、心筋梗塞、心不全等の虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中などの脳血管疾患の予防および/または治療が期待できる。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の内膜肥厚抑制効果は、動物を用いた試験法にて示される。すなわち、物理的に動脈の内皮細胞を剥離することで当該部位に炎症が生じ、その部位の内膜に血管平滑筋細胞が遊走し増殖することで内膜が肥厚化する。それに対して、内膜肥厚抑制効果を有する物質を動物に投与すると肥厚化が抑制される。この抑制度合いから内膜肥厚抑制効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の内膜肥厚抑制効果を、対照群である綿実油と比較すると、例えば、マスリン酸では約40〜60%抑制、マスリン酸の塩では約35〜55%抑制、エリトロジオールでは約40〜60%抑制、ウルソール酸では約30〜50%抑制、ウバオールでは約25〜45%抑制、ベツリン酸では約15〜35%抑制、ベツリンでは約15〜35%抑制という、高い内膜肥厚抑制効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を含有することにより、高い内膜肥厚抑制効果を享受できるものである。
本発明は、前記、細胞増殖性血管病変が動脈硬化である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化用飲食物に関する。本発明の抗動脈硬化用飲食物は、経口および/または非経口で投与することで、抗動脈硬化効果を発現する。
抗動脈硬化効果とは、動脈硬化巣内の血管平滑筋細胞の増殖抑制および/または増殖型血管平滑筋細胞の動脈硬化巣内への遊走抑制を意図している。一般に、動脈硬化とは、動脈内皮損傷が引き金となって収縮型から増殖型へと形質転換した血管平滑筋細胞が、中膜から内膜へと遊走し内膜内で増殖することで血管内膜が肥厚して発生するものと考えられている。したがって、血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑制することで血管内皮の肥厚化を阻止することができれば、動脈硬化症や虚血性心疾患、脳血管疾患等の血管疾患を予防、改善することが可能である。この点において、本発明の抗動脈硬化用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有するため、動脈硬化症や虚血性心疾患、脳血管疾患等の血管疾患の発症を最小限に抑えることが期待でき、非常に好ましい。すなわち、本発明の抗動脈硬化用飲食物は、摂取することによりその抗動脈硬化効果を発現するものであり、虚血性心疾患や脳血管疾患等を改善あるいは防止し、延命率の延長等に大きく寄与するものである。特に、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有し、強力な抗動脈硬化用飲食物として使用することができ、非常に好ましい。
本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の抗動脈硬化効果は、動物を用いた試験法にて示される。すなわち、高コレステロール食を長期に渡り摂食させることで大動脈に動脈硬化を発症させる。それに対して、抗動脈硬化効果を有する物質を動物に投与すると大動脈の動脈硬化が抑制される。この抑制度合いから抗動脈硬化効果を見積もることができる。
上記試験法での評価によると、本発明における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の抗動脈硬化効果を、対照である高コレステロール食群と比較すると、例えば、マスリン酸では約40〜60%抑制、マスリン酸の塩では約40〜60%抑制、エリトロジオールでは約50〜70%抑制、ウルソール酸では約40〜60%抑制、ウバオールでは約30〜50%抑制、ベツリン酸では約25〜45%抑制、ベツリンでは約25〜45%抑制という、高い抗動脈硬化効果を有していることが分かる。すなわち、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を含有することにより、高い抗動脈硬化効果を享受できるものである。
また本発明は、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関する。ここで、血管障害疾患とは、主に前記細胞増殖性血管病変に起因する疾患であり、血管平滑筋細胞の増殖や血管内膜への遊走により動脈硬化や血管内膜肥厚化等の血管障害が発生した結果惹起される疾患のことである。具体的には冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症等の動脈硬化症や、PTCA後の再狭窄、心筋梗塞・狭心症等の虚血性心疾患、脳梗塞・脳卒中等の脳血管疾患を言う。
すなわち、本発明の血管障害疾患用飲食物は、血管障害の発生に関与する血管平滑筋細胞に対する効果により、血管平滑筋細胞を主とした細胞増殖性血管病変の発生による動脈硬化症、PTCA後の再狭窄、虚血性心疾患、脳血管疾患等の予防および/または治療効果を有する。予防効果としては、血管平滑筋細胞の増殖および/または遊走を抑制することで、動脈硬化巣や血管内膜肥厚が発生しないようにしたり、動脈硬化症やPTCA後の再狭窄等の血管障害疾患を予防することを示す。治療効果としては、それ以上の血管平滑筋細胞の増殖および/または遊走を抑制、あるいは、増殖した血管平滑筋細胞の速やかな減少等により、総血管平滑筋細胞を減少させ、動脈硬化巣や血管内膜肥厚の増生を抑制したり、動脈硬化巣の破裂を阻止したり、内膜肥厚を解消することで血管障害疾患を治療することを示す。
本発明は、前記血管障害疾患が動脈硬化症である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化症用飲食物に関する。ここで動脈硬化症とは、動脈壁が肥厚し弾力性を失う多くの疾患の包括的な用語であり、全身性心血管障害を指す。具体的には、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症等を指す。すなわち、本発明は、動脈硬化巣の生成に関与する血管平滑筋細胞に対する効果をもって、上記物質を有効成分とする抗動脈硬化症用飲食物に関する。特に、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗動脈硬化症用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有することから、強力な抗動脈硬化症用飲食物として使用することができ、非常に好ましい。
本発明は、前記血管障害疾患がPTCA後の再狭窄である、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とするPTCA後の抗再狭窄用飲食物に関する。本発明の抗再狭窄用飲食物は、経口摂取することで、前述した、内膜肥厚抑制効果を発現する。
一般に、再狭窄とは、PTCA施行後に同一部位に血管平滑筋細胞を主とする細胞繊維性の内膜肥厚の結果、当該部位が狭小化することであることが知られている。したがって、血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑制することで血管内膜の肥厚化を阻止することができれば、PTCA後の再狭窄を予防、治療することが可能である。この点において、本発明のPTCA後の抗再狭窄用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有するため、動脈硬化や血管内膜肥厚が阻止され、PTCA後の再狭窄による虚血性心疾患の発症を最小限に抑えることが期待でき、非常に好ましい。すなわち、本発明のPTCA後の抗再狭窄用飲食物は、摂取することによりその内膜肥厚抑制効果を発現するものであり、虚血性心疾患を改善あるいは防止し、延命率の延長等に大きく寄与するものである。特に、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする抗再狭窄用飲食物は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有することから、強力な抗再狭窄用飲食物として使用することができ、非常に好ましい。
五環性トリテルペン類およびそれらのアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、概して脂溶性なので、油系、あるいは乳化系の血管障害疾患用飲食物等に好適に配合することができる。また、特に油脂あるいは油脂加工品としての摂取においては、油とともに吸収されることが期待されるため、吸収性の面で好ましい。
また、五環性トリテルペン類の生理的に許容される塩あるいは配糖体は、概して水溶性を示すので、水系あるいは乳化系等の血管障害疾患用飲食物に、均一に溶解ないしは分散させて含有させることで好適に配合することができる。特に飲料等は水系あるいは乳化系での製品化が多いので、この場合、必要に応じて五環性トリテルペン類を、その生理的に許容される塩あるいは配糖体とすることで好適に配合することができる。
さらに、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、強い効果を有し少量の血管障害疾患用飲食物等への配合で、通常必要とされる血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を得ることができるので、コスト面でのメリットがあるとともに、配合比の面から他の成分を配合できる余裕が生じるので、その他の機能をさらに充実させることができ、好ましい。
当然、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の配合量を増やすことで、極めて優れた血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物、血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物、抗細胞増殖性血管病変用飲食物、血管障害疾患用飲食物等の製造が、本発明により可能である。
本発明における五環性トリテルペン類は、上述の通り、天然物として植物等に存在している事が知られており、ほとんどのものがそれらの植物を通して、食経験があるものであり、過剰摂取しない限り生体に対する悪影響はないとされている。
実際に動物に投与した場合では、例えばマスリン酸の場合、LD50値は、2000mg/体重kg以上であり、極めて安全性の高いことが確認できる。このことは、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を安全に投与することができることを示す。
本発明の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞増殖抑制中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の抗細胞増殖性血管病変用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗細胞増殖性血管病変用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗細胞増殖性血管病変用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の抗内膜肥厚用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗内膜肥厚用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗内膜肥厚用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の抗動脈硬化用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗動脈硬化用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の抗動脈硬化用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明の血管障害疾患用飲食物は、上述の通り五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有することを特徴とし、その用途は任意であるが、例えば、保健機能食品、健康食品、治療食品等の広い分野で、血管障害疾患用飲食物として用いることができる。この時、本発明の血管障害疾患用飲食物の配合量は、用途、投与形態、投与対象の種、年齢、性別、体重、症状の程度、健康状態などの条件により異なるので、一概に規定されないが、当然、血管平滑筋細胞の増殖抑制、遊走抑制による動脈硬化の発生や増生に対する予防および/または治療に効果を有する量である。
本発明の血管障害疾患用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の血管障害疾患用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%である。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてマスリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてエリトロジオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてウルソール酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてウバオールおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてベツリン酸およびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
本発明中の血管障害疾患用飲食物中に有効成分としてベツリンおよびその生理的に許容される塩またはそれらの誘導体を含有する場合、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜70質量%、さらに好ましくは0.001〜60質量%、さらに好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜30質量%含有するのが好ましい。
含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明の血管障害疾患用飲食物の五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を摂取することにより、好適に抗動脈硬化効果を得るための所用量は、摂取の形態、対象者の性別、体重、体調等により異なり、特に制限されないが、例えば、0.001g/日以上、好ましくは0.01g/日以上、特に好ましくは0.1g/日以上である。
本発明の、血管障害疾患が動脈硬化症である抗動脈硬化症用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗動脈硬化症用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
本発明の、血管障害疾患がPTCA後の再狭窄である抗再狭窄用飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。本発明の抗再狭窄用飲食物における五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の配合量は、一概には規定されず、トリテルペン類の種類、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
特に、マスリン酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等、非常に強い効果を持ちあわせる為、好ましい。すなわち、マスリン酸およびその生理的に許容される塩、またはその誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする、血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物および/または血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物、抗内膜肥厚および抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変用飲食物、抗動脈硬化症およびPTCA後の抗再狭窄等の血管障害疾患用飲食物に関する。また、後述するが、マスリン酸は、オリーブ植物という比較的定常的に栽培され、食用油として既に搾油されている植物から得ることも可能であるため、食経験を有する点で安全性に優れ、好ましい。さらに、定常的に供給できる点で低コスト化が可能であり、非常に好ましい。
この場合、本発明の、マスリン酸を含有する各目的の効果を有する飲食物は、継続的な摂取をすることで、より好適な効果を得ることができる。特にマスリン酸およびその生理的に許容される塩、またはその誘導体は、上述のごとく、既に食経験を有する天然物から得られるものも存在するので、健康食品等としても好ましい。その際のマスリン酸およびその生理的に許容される塩、またはその誘導体の配合量は、一概には規定されず、予防か治療かという使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を踏まえ、必要とする効果の強さに応じて適宜決めればよい。以下に限定されないが、好ましくは0.00001〜90質量%、より好ましくは0.0001〜80質量%、さらに好ましくは0.001〜70質量%、さらに好ましくは0.01〜65質量%、さらに好ましくは0.1〜60質量%、さらに好ましくは0.2〜55質量%、さらに好ましくは0.4〜50質量%、さらに好ましくは0.6〜45質量%、さらに好ましくは0.8〜40質量%、さらに好ましくは1.0〜35質量%、さらに好ましくは2.0〜30質量%であれば良い。何れにせよ含量が高いほど効果が強いが、使用の目的や使用する期間、量、使用対象の年齢、性別、体重等を考慮し、含量を調整することが必要である。
また本発明の飲食物には、機能の向上、特に、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等の相乗的な向上、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等の補助、吸収性の向上等を目的として、その他の生理活性成分等を配合することができる。特に制限は無いが、例えば、相乗的な効果が期待できる成分、抗酸化成分、体内での吸収性を向上させ効果の効率を上げるための油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等が挙げられる。
相乗的な効果が期待できる成分としては、ブラシカステロール、カンペステロール、ステグマステロール、7−エルゴステロール、シトステロール、イソフコステロール、7−スチグマステロール、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール、シクロブラシノール等の植物ステロール類、ジンゲロール、クルクミン、ベルガモティン、ACA等のフェニルプロパノイド類、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン、ルテオリン、カルダモニン、ノビレチン等のフラボノイド類、β−カロチン、アスタキサンチン等のカロテノイド類及びその誘導体、ペクチン等の食物繊維類、アリキシン、フェルラ酸およびその誘導体、等が挙げられる。これらの成分は、本発明における五環性トリテルペン類との相乗効果が期待できるため、好ましい。
抗酸化成分としては、通常飲食物等に使用されているものであれば特に制限は無いが、例えば、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩、トコフェロールやトコトリエノールおよびそれらの誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類及びそれらの誘導体、亜硫酸ナトリウムや次亜硫酸ナトリウムや二硫化硫黄等の硫酸系化合物、γ−オリザノール等のフェルラ酸誘導体、ルチン及びその誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類及びその誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、イソケルセチン、ロイコアントシアニジン、ゲニスチン、ゲニステイン、6“−O−アセチルゲニスチン、6“−O−マロニルゲニスチン、ダイズイン、ダイゼイン、6“−O−アセチルダイズイン、6“−O−マロニルダイズイン、グリシチン、グリシテイン、6“−O−アセチルグリシチン、6“−O−マロニルグリニチン、プエラリン、ケルセチン、ケンフェロー、ミロエステロール等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、スーパーオキシドディムスターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の酵素類、アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、甘草油性抽出物、グローブ抽出物、グアヤク脂、生コーヒー豆抽出物、米ぬか油抽出物、カンナ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、テンペ抽出物、菜種油抽出物、ピメンタ抽出物、ブルーベリー抽出物、プロポリス抽出物、ペパー抽出物、メラロイカ抽出物、ユーカリ抽出物、リンドウ抽出物、ソバ抽出物、アズキ抽出物、ローズマリー抽出物、オリーブ粕抽出物や大豆粕抽出物等の油粕抽出物、大豆胚芽抽出物、チアミン類及びその塩、リボフラビン、酢酸リボフラビン等のリボフラビン類、塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、ビリルビン、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ノルジヒドログアイアレチン酸等があげられる。これらの抗酸化剤は、その抗酸化作用による生活習慣病予防効果や抗老化効果等により、人体等に対する総合的な相乗効果も期待できるため、好ましい。
油性成分としては、大豆油、菜種油、ゴマ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、牛脂、魚油等の動物油脂の他、特に制限は無いが、例えば、天然および化学反応や酵素反応により得られた、MCT、MLCT、ジグリセライド、モノグリセライドや、脂肪酸の構造を設計した構造油脂等が挙げられる。
栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等については、特に制限はないが、食品添加物公定書に定められるものが望ましい。
その他、本発明の飲食物には、通常の飲食物に使用されている原材料を配合・使用することができる。特に制限は無いが、例えば、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、豚脂、牛脂、乳脂等の動物性油脂、鯨油、イワシ油、ニシン油等の海産物性油脂、大豆油、菜種油、綿実油、米油、コーン油、胡麻油、落花生油、ヒマワリ油、紅花油、椿油、オリーブ油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等の植物性油脂、キサンタンガム等の増粘剤、砂糖、グラニュー糖、乳糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、ハチミツ等の甘味剤、MSG(モノソディウムグルタミン)等のうまみ調味料、米酢、リンゴ酢、酒精酢等の食酢、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸等の酸味剤、安息香酸ナトリウム等の合成保存料、小麦粉、脱脂大豆、小麦ふすま、小麦胚芽等のシリアル原料、食塩、こしょう、フレーバー等が挙げられる。特にオリーブ油は、本発明におけるマスリン酸等を含有するため、非常に好ましい。マスリン酸、その生理的に許容される塩等を高度に含有するように製造されたオリーブ油等が好ましい。
上記各成分は使用目的によって適宜設計、配合することができる。吸収性や作用効果の種類によって効果を相乗、補完することや使用形態として好ましい態様とすることができる。また、例えばイソフラボン類及びその誘導体は水溶性に優れ、概して油溶性物質である本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類と同時に生体に作用させることで、抗エストロゲン阻害効果を含め、水及び脂質媒介性の様々な代謝経路を経た、同時作用による効果が発揮され、その効果は相乗的になることが期待できる。さらには、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類とイソフラボノイド等を同時に配合した血管障害疾患用飲食物等はイソフラボノイドの抗酸化性や抗エストロゲン様作用等の生理活性が同時にかつ相乗的に活性化されることが期待できる。
本発明の飲食物について、下記に具体例を列記するが、本発明はこれらに制限されるものではない。本発明の飲食物としては、菓子、加工食品、調合油脂類、油脂加工品、乳製品及び飲料等の各種飲食物があげられる。また、その形状・性状は特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状及び粉末状等のいずれでもよい。また、その形態等について特に制限はないが、例えば、通常の形態の他、流動食品、経腸栄養食品、健康食品、乳幼児用食品等の形態をとることができる。具体的には、おかき、煎餅、おこし、饅頭、飴等の和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、シリアル食品、パイ、カステラ、ドーナッツ、プリン、スポンジケーキ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、キューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パン、菓子パン等の各種洋菓子、ポテトチップ等のスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等の氷菓、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、炭酸飲料等の清涼飲料水、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア等の嗜好品及びこれらの飲料、日本酒、ワイン、ブランディー、ウイスキー、薬用酒などの酒類、牛乳、発酵乳、加工乳、チーズ等の乳製品、豆乳、豆腐等の大豆加工食品、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペースト等のペースト類、漬物類、うどんの麺、パスタ等の穀物製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセイジ、ビーフジャーキー、ハンバーグ等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚貝類製品、魚、貝等の干物、鰹、鯖、鰺等の各種節、ウニ、イカ等の塩辛、スルメ、魚等のみりん干、鮭等の燻製品、のり、小魚、貝、山菜、椎茸、昆布等の佃煮、カレー、シチュー等のレトルト食品、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、米飯類、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品や、調合油脂を含有する各種レンジ及び冷凍食品等が挙げられる。特に、継続的な摂取という面からは、米飯や各種調味料や、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品が好ましい。
本発明の飲食物における五環性トリテルペン類は、元来、概して脂溶性の物質であるので、溶解性の面からも本発明の飲食物として調合油脂や調合油脂加工食品等は好ましい。この様な調合油脂として、特に制限はないが、例えば、天然あるいは人工的に得た五環性トリテルペン類を通常の油脂に溶かし込んで含有させた調合油脂が挙げられ、また、植物種子の圧搾・抽出条件を調整し種子中の五環性トリテルペン類を圧搾・抽出油に高濃度に含有させた調合油脂や、精製条件を調整することで油中に存在する五環性トリテルペン類を残存させた調合油脂等が挙げられる。また、該五環性トリテルペン類高含有油脂と他の油脂を混合することもでき、この場合、該他の油脂に含まれる微量成分の生理活性効果との相乗効果を期待することができる。
五環性トリテルペン類は油糧原料である植物からも得られることから、製造の点からも調合油脂は好ましいといえ、更にこの調合油脂の加工品であるマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の調合油脂加工品は好ましいといえる。
同様に、本発明の上記調合油脂等を使用した製品も良好である。ここで、使用とは原料として使用することと、揚げ物や炒め物等に使用するいわゆる調合油脂としての使用の双方を示す。
ここで、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体の飲食物への使用に関して特に制限は無いが、油系の飲食物に対しては、五環性トリテルペン類、あるいはアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体が好ましい。これらは、比較的脂溶性であるため、好適に油系の飲食物へ適用することができる。また当然、五環性トリテルペン類の生理的に許容される塩あるいは配糖体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
また、概して、水系の飲食物に対しては、五環性トリテルペン類の生理的に許容された塩、あるいは配糖体が好ましい。これらは、比較的水溶性であるため、好適に水系の飲食物へ適用することができる。また当然、五環性トリテルペン類あるいはその誘導体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
本発明の飲食物を飲食することで、血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制や抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症やPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果等を有する五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体を体内に吸収することにより効果を奏する。飲食物という形態であるため、医薬品のような労力も必要なく、継続的に摂取することができるため好ましい。
上記、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、合成することも、天然物から抽出することもできる。天然には、それぞれに前述した植物体から抽出することにより、詳しくは水及び/又は有機溶媒で抽出処理し、さらに濃縮処理及び/又は分画・精製処理することによりで得ることができる。すなわち、各植物体から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
天然物からの単離物を使用して飲食物とした場合、天然物由来の夾雑物の影響が排除され、無色〜淡色および/または無臭〜無臭に近い状態になるので好ましい。従って、天然物から、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類及びそれらの生理的に許容できる塩又はそれらの誘導体を単離することにより、供する料理の風味等に影響を与えることなく調理できる。特に、オリーブ等の原料とする天然物の風味を必要としない料理にも配合できる。従って、本発明の飲食物は、原料として用いられる天然物の種類に影響されることなく調理又は配合可能な飲食物を含む。
さらに、オリーブやオリーブ油をそのままの形態で摂取した場合、本発明で対象とする五環性トリテルペン類を少量しか摂取できないが、天然物から単離した五環性トリテルペン類を配合した飲食物を摂取すれば、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類を比較的容易に多量に摂取することができる。
また、オリーブ等に含まれる五環性トリテルペン類は概して脂溶性物質であるため、通常は油脂中に存在することが多く、このため、水系の飲食物に配合するのは困難であるが、天然物から単離した五環性トリテルペン類であれば、油系の飲食物にでも水系の飲食物にでも配合することができる。清涼飲料等の水系飲食物にすることにより、本発明で対象とする五環性トリテルペン類の例えば数g〜数10gを容易に摂取することが可能となる。
さらにまた、天然物から単離した特定の五環性トリテルペン類を含有する本発明の飲食物は、本発明の体内への吸収を阻害する不純物又は夾雑物が除去されていることから、好適な本発明の効果、すなわち血管平滑筋細胞増殖抑制効果、血管平滑筋細胞遊走抑制効果等を得ることが可能となるので好ましい。
以下、マスリン酸の抽出例を示す。
前述の通り、マスリン酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、天然には、前記の植物体から抽出することで得ることができるが、特に、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、オリーブ植物等から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
オリーブ植物(Olea europaea L.)は、国産、欧州産などの産地、食用あるいは搾油用を問わず使用できる。本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、天然植物であるオリーブ植物の主に、実または種子から得ることができ、さらに、その種皮、葉、茎、芽から得ることができる。また、これらの乾燥物、粉砕物、脱脂物からも好適に得ることができる。このうち、脱脂された実(果皮含む)や果皮の乾燥物及び粉砕物が好ましい。さらに、オリーブ油の製造工程で生じる生成物、例えば圧搾残査、抽出残査、搾油残査、圧搾油、抽出油、脱ガム油滓、脱酸油滓、ダーク油、廃脱色剤、脱臭スカム、搾油ジュース、排水及び廃濾過材から得ることができる。このうち、搾油残査が好ましい。
また、上記オリーブ植物の果実やその脱脂物等に、添水する等により加水した場合、あるいは蒸気により蒸す等の加湿処理を行った場合、これらオリーブ植物の果実やその脱脂物等が適度に膨潤するので、抽出効率が良くなり好ましい。
特に、オリーブ植物の脱脂物には、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が高濃度で存在し、かつ、得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩から油分を除去する必要がないため好ましい。
当該脱脂物は、食油精製工程中に産出するオリーブ搾油残査、またはヘキサン等による抽出残査を原料とすることができる。
また、オリーブ植物または当該脱脂物に含まれる脂質成分をペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、酢酸エチルエステル等の低級脂肪酸アルキルエステル、ジエチルエーテル等の公知の非水溶性有機溶媒の1種又は2種以上で抽出除去し、更に必要に応じてこの洗浄処理を繰り返した脱脂物も好適に利用できる。
上記オリーブ植物から水および/または有機溶媒で抽出することにより、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得るために用いる有機溶媒としては、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒のいずれでもよい。具体的には、親水性有機溶媒として、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒が挙げられ、疎水性有機溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
工業的には、例えば植物組織への浸透性、抽出効率等からは、親水性有機溶媒を用いることが好ましく、また含水親水性有機溶媒を用いることが好ましい。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有機溶媒およびこれらの含水溶媒が挙げられる。これらの中からなる群より選ばれる、1種または2種以上により、オリーブ植物から、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
抽出条件は、特に限定されないが、例えば、温度は5℃〜95℃、好ましくは10℃〜90℃、さらに好ましくは15℃〜85℃で、常温でも好適に抽出することができる。温度が高いほうが、抽出効率が高くなる傾向はある。圧力は、常圧でも、加圧でも、吸引等による減圧でも好適に抽出することができる。また、抽出効率を向上させるため、振とう抽出や、攪拌機等のついた抽出機でも抽出することができる。抽出時間は、他の抽出条件によるが、数分〜数時間であり、長時間なほど十分な抽出がなされるが、生産設備、収率等の生産条件によって適宜決めれば良い。
また、抽出に使用する溶媒は、水を単独で使用する場合、有機溶媒を単独で使用する場合、水と有機溶媒とを混合して使用する場合のいずれの場合にも、原料に対し1〜100倍量(「質量/質量」。以下同様。)、好ましくは1〜20倍量を使用することができる。
また、人体等への安全性等を考えれば、特に、水、含水低級アルコール、無水低級アルコールの何れかにより抽出することが好ましい。このうち、無水低級アルコールがより好ましく、無水エタノールが特に好ましい。
さらに、得られるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の収率や、抗動脈硬化効果の強さをも考慮に入れた場合、低級アルコール含量が10質量%以上である含水低級アルコールで抽出することが好ましい。さらには低級アルコール含量が10質量%〜95質量%の含水アルコールを使用することが好ましく、最も好ましくは低級アルコール含量が30質量%〜95質量%に調節された含水低級アルコールが好ましい。
ここで、本発明で使用するアルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール等の1級アルコール、2−プロパノール、2−ブタノール等の2級アルコール、2−メチル−2−プロパノール等の3級アルコールさらにエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール等の公知の溶媒が挙げられ、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
低級アルコールとは、炭素数が1〜4である公知のアルコール、例えば、前述の1、2、3級、もしくは、液状多価のアルコール等があげられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようにして得られた粗抽出物及び/又は粗抽出液から、溶媒、水分を除去することで、本発明におけるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
溶媒、水分の除去は減圧蒸留、減圧・真空乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の公知の方法で行うことができる。
もちろん、溶媒、水分を含んだままでも良く特に状態は制限されない。
脱脂物からの抽出物は、トリグリセライドやステロール、トコフェロール等の油溶性成分は含有していないので、これらを除去、精製する必要がないため、好ましい。加えて、脱脂物とは、搾油後の残査を含むので、オリーブ油を搾油した圧搾粕および抽出粕を使用できることから、オリーブの極めて優れた有効利用方法であり、通常は廃棄または飼料等に使用されるものを利用するため、生産コストの面から見ても優れた方法といえる。
さらに、オリーブ植物から抽出されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の抗動脈硬化効果をより一層引き出すためには、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有させるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮処理等することが好ましい。
濃縮条件は、特に限定されないが、例えば、水への溶解性を利用した方法が挙げられる。本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、比較的極性が低く、難水溶性の化合物である。この性質を利用して、オリーブ植物からの粗抽出物を水に溶解しにくい成分および/または水に溶解しない成分、つまり難水溶性等の成分と水に容易に溶ける成分とに分けることで、大幅に濃縮することができる。オリーブ植物からの粗抽出物に含まれる難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物全体と比べても、大幅に抗動脈硬化効果に優れており、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が濃縮されていることが確認できる。
難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物を水に添加・攪拌した後、析出している部分をろ過等により採取することで簡易に得ることができる。
また、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、必要に応じて、一般的な溶剤の組み合わせによる液−液分配により濃縮することができる。溶剤の組み合わせは一概に規定し難いが、例えば、水−疎水性有機溶媒の組み合わせが挙げられ、疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、n−ブタノール、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。このうち、ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールが好ましい。
マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は難水溶性であるため、疎水性有機溶媒相を分取することで、不要な水溶性成分を除去することができる。溶媒を除去することで、容易にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮することができる。
さらに、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、上述した抽出物および/または濃縮物から分画・精製処理することが好ましい。これにより上記濃縮以上に濃縮することができ、目的とする成分を単離することができる。
分画・精製処理することの利点としては、抗動脈硬化効果等を非常に向上させることができることに加え、不純物を除去することができること等が挙げられる。すなわち、該分画・精製処理した場合、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を白色結晶として得ることができるため、血管障害疾患用飲食物に余計な色をつけることなく好適に配合することができる等のメリットがあり、好ましい。
分画・精製処理の方法については一概に規定し難いが、例えば、再結晶法、分別沈殿法、クロマトグラフィーを利用する方法などが挙げられる。特にクロマトグラフィーの中でも液体クロマトグラフィーを利用する方法は、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分解することなく、収率良く分画・精製出来るので、好ましい。液体クロマトグラフィーとしては、具体的に、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられるが、本発明の血管障害疾患用飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分画・精製処理する際には、いずれの方法を用いることができる。とりわけ、分離能、処理量、工程数等を考慮に入れると、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好ましい。
ここで、順相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばシリカゲルを固定相、ヘキサン−酢酸エチル混液、クロロホルム−メタノール混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一移動相による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次増加させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
逆相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばオクタデシルシランを結合させたシリカ(ODS)を固定相、水−メタノール混液、水−アセトニトリル混液、水−アセトン混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一溶媒による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次低下させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とは、原理的には、上記順相液体クロマトグラフィーあるいは逆相液体クロマトグラフィーと同様のものであり、より迅速かつ高分離能での分画・精製を行うためのものである。
上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を非常に濃縮でき、かつ、不純物が除去された状態で得ることができるため好ましい。
さらに、上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の純度を調整することができ、必要に応じた抗動脈硬化効果の強さ、特性等を設計することもできる。
前述した濃縮処理について、好ましくは繰り返し濃縮処理することができ、さらには異なる濃縮処理を組み合わせることができる。同様に、分画・精製処理について、好ましくは繰り返し分画・精製処理することができ、さらには異なる分画・精製処理を組み合わせることができる。さらに、濃縮処理を行った後に分画・精製処理しても良く、分画・精製処理を行った後に分画・精製処理しても良く、濃縮処理した後に分画・精製処理を行い更に濃縮処理することもできる。当然、前述の組み合わせ以外の組み合わせでも良い。
上記に記載した抽出処理、濃縮処理、分画および/または精製処理等を様々に組み合わせることによって、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。その組み合わせについては特に限定されないが、一連の処理の具体例としては以下のような方法が挙げられる。
例えば、オリーブ植物を水および/または親水性有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出液について親水性有機溶媒の一部または全部を除去し、必要により水を加えて撹拌し、水層部に析出した水不溶分を回収することで濃縮する。析出した水不溶分は、ろ過や遠心分離等のよって回収することができるが、この回収効率の向上のため、必要に応じ水溶液に対して水の添加・攪拌等の処理を行うことができる。また、オリーブ植物から得られる抽出液の水および/または親水性有機溶媒を除去した乾固状態の抽出物についても、上記同様に水の添加・攪拌等の処理を行い、ろ過等によりその水不溶分を回収することで濃縮処理することができる。この濃縮方法によれば、水系での処理であるので、溶剤を用いた濃縮よりも安全性に優れ、また、使用できる機器の範囲も広いため好ましい。また、油分がほとんど含まれていないため、濃縮・精製の効率にも優れており、好ましい。
これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。
また、オリーブ植物から得られる抽出液について親水性有機溶媒を除去し、残った水溶液に対して、必要に応じて水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。また、乾固状態の抽出物についても、上記同様に水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
ここで、液−液分配の際に添加する水の量は分配処理し得る量を用いれば特に限定されないが、乾固された抽出物の質量当り1〜100倍量が好ましく、より好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは10〜30倍量程度である。
また、水−疎水性有機溶媒での液−液分配において、水と疎水性有機溶媒とは、水:疎水性有機溶媒=9:1〜1:9(体積比)で使用するのが好ましく、8:2〜2:8で使用するのがより好ましい。
また、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるマスリン酸と生理的に許容されるその塩との混合物中のマスリン酸及び生理的に許容されるそれらの塩の合計の含有率が、95%以上であるのが好ましく、より好ましくは95%〜99.99%である。当該含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明の血管障害疾患用飲食物は、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を含有させることができるが、前記抽出物及び濃縮物を含有させることでも本発明の血管障害疾患用飲食物を得ることもできる。また、濃縮、精製等の度合いを調整することで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の濃度等を調整することができ、血管障害疾患用飲食物へ好適に配合することができる。
さらに、他の抗動脈硬化物質を配合して使用することができ、これにより、詳細な抗動脈硬化効果の設計が可能であり、また、他の抗動脈硬化物質との相乗効果により大幅な抗動脈硬化効果の強化も期待できる。
オリーブ油にはマスリン酸が含有されていることから、本発明の血管障害疾患用飲食物について、油性成分としてさらにオリーブ油を使用することで、さらに好適な抗動脈硬化効果等が得られるため好ましい。
また、オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を抽出する場合には、同時にオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩が抽出されるが、このオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩は、マスリン酸との相溶性に優れている点から、これらの混合物を本発明の血管障害疾患用飲食物に直接配合することができる。これにより、それぞれが有する生理効果について相乗効果が期待でき、特にはマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の本発明における抗動脈硬化効果について相乗効果が期待できるため好ましい。マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩をオリーブ植物から抽出、分離精製等するに際し、その条件を調整することで、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩との混合物として得ることもでき、オリーブ植物からそれぞれ別々にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を単離し、後に混合することでも得ることができる。また、それぞれ異なる原料から得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩と、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を混合した物でも良い。
本発明はマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分とする血管障害疾患用飲食物に関する。これらのマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制および抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症およびPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果に優れている。また、本発明におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、天然植物から得たもの、人工的に得られたもの、何れも好適に使用でき、特に各種製剤原料とする場合、その純度は高いものほど好ましい。
本発明の具体的な実施態様として、オリーブの脱脂粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を0.5質量%以上の量で含有する食用調合油脂があげられる。
また、本発明の具体的な実施態様として、オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上含有するドレッシングがあげられる。
本発明の具体的な実施態様として、オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上の量で含有する食用調合油脂があげられる。
本発明の具体的な実施態様として、オリーブの脱脂粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を0.5質量%以上の量で含有するマーガリンがあげられる。
また、本発明の具体的な実施態様として、オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上含有するマヨネーズがあげられる。
実施例
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例に使用した五環性トリテルペンとして、エリトロジオール(フナコシ社製)、ウルソール酸(和光純薬社製)、ウバオール(フナコシ社製)、ベツリン酸(フナコシ社製)、ベツリン(フナコシ社製)については、試薬として購入した。HPLCグレードのものはそのまま用い、そうでないものは、沸点まで加熱したエタノールに飽和になるまで溶解した後、冷却して再結晶させたものを濾過、乾固して用いた。マスリン酸については、以下に実例を挙げて説明するが、オリーブ植物から抽出、精製し、純度95%であることを確認したものを用いた。
<製造例1>
国内産のオリーブ(Olea europaea L.)の乾燥果実(種子を含む)500gを破砕し、3Lのヘキサンを加え3時間抽出した。これを4度繰り返した脱脂果実(脱脂粕)について、種子を除去した後、粉砕し、再度5倍量のヘキサンで3時間抽出することで、完全に油分を除去した脱脂粕229gを得た。この脱脂粕に10倍量のエタノール含量が60質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物112.7gを得た。
この抽出物100gに、水2Lを加え、室温で1時間、激しく攪拌した。全量を遠心分離で処理した後、上澄みはデカンテーションにより除去し、残った沈殿を乾燥して濃縮物10.0gを得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を1.96g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(60g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(600mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(1800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸1を1.51g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が95%以上であることを確認した。
<製造例2>
イタリア産のオリーブ(Olea europaea L.)を搾油し得られた搾油残査(搾油粕)1kgに、10倍量のエタノール含量が65質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固し抽出物を20.2g得た。
この抽出物に、n−ブタノール1L、水1Lを加えて10分間攪拌した後、n−ブタノール相と水相に分けた。n−ブタノール相のn−ブタノールを除去後、真空乾燥し濃縮物を13.3g得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(500g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1250mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を2.66g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(80g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(2400mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸2を2.06g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸2は、その一部が遊離酸の状態で、残りの大部分がナトリウムやカリウム等の塩の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
<製造例3>
オリーブ油製造工程で得られるイタリア産のオリーブの抽出残渣(搾油残渣をさらに抽出工程で処理した脱脂粕)1kgに、10倍量のエタノールを加え、55℃に加温して激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して、抽出物35gを得た。
次にこの抽出物を、約40倍量(1400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。まず、充填したシリカゲルの約10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(3500mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させ、さらに、充填したシリカゲルの10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物5.90gを得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を焼く30倍量(180g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(1800ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(5400ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールおよび水を除去後、真空乾燥し精製マスリン酸3を5.36g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸3は、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの誘導体としては、以下のようにして得た。
<合成例1> マスリン酸エチル
マスリン酸4.5gとトリエチルアミン1.0gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.2gを加え、トリエチルアミン1.0gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、マスリン酸エチルエステルを3.5g得た。
<合成例2> 2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸
マスリン酸2.0gをピリジン100mLに溶解し、無水酢酸50mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸を2.2g得た。
<合成例3> 2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステル
マスリン酸1.0gを無水ジメチルフォルムアミド200mLに溶解し、イミダゾール144.0mgおよびトリエチルシリルクロライド350□Lを0□で加え、密栓して2時間攪拌した。ジメチルフォルムアミドを溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステルを1.5g得た。
<合成例4> 2,3−O−ジ−ステアリルマスリン酸エチル
合成例1で得たマスリン酸エチル1.0gを無水トルエン50mLに溶解し、トリエチルアミン5.0gを加え、さらにステアリン酸クロライド6.0gを氷冷下で徐々に添加しながら、1時間攪拌し、徐々に室温に戻しながら9時間攪拌した。1N塩酸水溶液を適量加え、エーテルで抽出し、エーテル相はさらに飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−ステアリルマスリン酸エチルを1.2g得た。
<合成例5> 3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール
エリトロジオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオールを5.4g得た。
<合成例6> ウルソール酸エチル
ウルソール酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ウルソール酸エチルエステルを3.8g得た。
<合成例7> 3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール
ウバオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ウバオールを5.4g得た。
<合成例8> ベツリン酸エチル
ベツリン酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ベツリン酸エチルエステルを3.8g得た。
<合成例9> 3,28−O−ジ−アセチル−ベツリン
ベツリン5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ベツリンを5.4g得た。
実施例1
<血管平滑筋細胞増殖抑制効果の評価>
ラット由来血管平滑筋細胞株A7r5(ATCCより購入)を、3x106細胞/75cm2組織培養フラスコ(Nunc社製)の密度で、10%牛胎児血清を含むDMEM培地(ナカライテスク社製)にて培養した。対数増殖期後半に入る11日後に、細胞を1x104細胞/0.32cm2マルチプルウェルプレート(Corning Costar社製)の密度で移植し、2.5%牛胎児血清を含むDMEM培地にて、五環性トリテルペン類を、表1に記載の濃度になるように加えた状態で48時間培養した。培養開始後44時間目にAlamarBlueTM(Alamar社製)を加え、更に4時間培養した。培養終了後、細胞による酸化還元反応によって生じた蛍光物質を蛍光分光光度計で測定し、コントロール群の蛍光強度と比較することより細胞増殖抑制率を算出した。その際、五環性トリテルペン類による細胞毒性を知るために、細胞形態をも観察した。
(評価基準) 五環性トリテルペン類を溶かした溶媒のみを加えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた蛍光強度を100%とした時の、被検物質添加群の蛍光強度から、増殖抑制率を算出した。すなわち、数式1の通りである。
上記方法によって血管平滑筋細胞増殖抑制効果を評価した。その結果を増殖抑制率として表1に示す。
表1から、比較としたオレアノール酸にはほとんど血管平滑筋細胞増殖抑制効果はなかった。これに対して、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の血管平滑筋細胞増殖抑制効果は非常に強いことが分かった。なお、培養終了後の細胞形態の観察により、検討した濃度での五環性トリテルペン類の細胞毒性は全く認められなかった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた血管平滑筋細胞増殖抑制効果を有することが明らかになった。
実施例2
<血管平滑筋細胞遊走抑制効果の評価>
ラット由来血管平滑筋細胞株A7r5(ATCCより購入)を、3x105細胞/75cm2組織培養フラスコ(Nunc社製)の密度で、10%牛胎児血清を含むDMEM培地(ナカライテスク社製)にて培養した。対数増殖期後半に入る11日後に、0.32cm2マルチプルウェルプレート(Corning Costar社製)に設置したケモタキセル(倉敷紡績社製)の上室に、培養細胞を5x104細胞/セルの密度で移植し、下室に25ng/mlの血小板由来活性化因子のB鎖ホモダイマー(PDGF−BB:Sigma社製)を含むDMEM培地と、五環性トリテルペン類を、表2に記載の濃度となるように加えた状態で、6時間培養した。培養終了後、ケモタキセルの膜下面に移動した細胞数を、Diff−Quik染色(国際試薬社製)により細胞を染色した後に計測し、コントロール群の細胞数と比較することより細胞遊走抑制率を算出した。
(評価基準) 五環性トリテルペン類を溶かした溶媒のみを加えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた遊走細胞数を100%とした時の、被検物質添加群の細胞数から、遊走抑制率を算出した。すなわち、数式2の通りである。
上記方法によって血管平滑筋細胞遊走抑制効果を評価した。その結果を遊走抑制率として表2に示す
表2から、比較としたエリトロジオール、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンには全く血管平滑筋細胞遊走抑制効果はなかった。また、オレアノール酸は、公知の抗動脈硬化用飲食物であるα−トコフェロールと同程度の抑制効果しか示さなかった。これに対して、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の血管平滑筋細胞遊走抑制効果は、非常に強いことが分かった。
これにより、マスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた血管平滑筋細胞遊走抑制効果を有することが明らかになった。
実施例3
<動物における内膜肥厚抑制効果の確認試験>
ウィスター系雌ラット(15週令)をAIN−93組成の粉末調製飼料で1週間予備飼育した後、8群(1群4匹)に分けた。ペントバルビタール麻酔下で背位固定し、左外頚動脈を露出させ、外頚動脈よりカテーテルを総頚動脈分岐部まで挿入した。その部分でバルーンを膨らませ回転をかけながら外頚動脈まで引くことで内皮細胞を剥離した。この操作を4回繰り返した後、手術部位を縫合した。表4に示す各被験物質を綿実油に懸濁し、200mg/kgの用量で1日1回、ゾンデを用いて強制的に経口投与した。引き続きAIN−93組成の粉末調製飼料で飼育を行い、2週間後、ペントバルビタール麻酔下で開胸し、心臓弓部より10%リン酸緩衝/ホルマリン液で灌流した後、内皮細胞を剥離した左外頚動脈を摘出した。当該部位をホルマリン固定、パラフィン包埋し、組織切片を作製後、エラスチカ・ワンギーソン染色を行った。各切片の内膜および中膜の面積を、顕微鏡下でデジタルカメラ(オリンパス社製)で撮影した画像を解析することで測定した。
(評価基準) 五環性トリテルペン類を懸濁させた綿実油のみを加えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた内膜に対する中膜の面積比を100%とした時の、五環性トリテルペン類投与群の内膜に対する中膜の面積比から、内膜肥厚抑制率を算出した。すなわち、数式3の通りである。
上記方法によって内膜肥厚抑制効果を評価した。その結果を内膜肥厚抑制率として表4に示す
表3から、評価したマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は内膜肥厚抑制効果を有することが分かった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、優れた内膜肥厚抑制効果を有することが明らかとなり、再狭窄用飲食物として有用であることが分かった。
実施例4
<動物における抗動脈硬化効果の確認試験>
NZWウサギ(雄、2〜2.5kg)を、コレステロールを1%含むAIN−93組成の粉末調製飼料(コレステロール食)で1週間予備飼育した後、8群(1群5羽)に分け、表3に示す各被験物質を1%含むコレステロール食で、1日1回の制限給餌(40g/kg)にて8週間飼育した。8週間後、ペントバルビタール麻酔下で殺処分、解剖し、大動脈を摘出した。ホルマリン固定後、SudanIV染色し、大動脈内腔総面積および動脈硬化病変面積を、顕微鏡下でデジタルカメラ(オリンパス社製)で撮影した画像を解析することで測定した。
(評価基準) コレステロール食を与えた群をコントロール群とし、コントロール群で得られた大動脈内腔総面積に対する動脈硬化病変面積の割合を100%とした時の、五環性トリテルペン類添加コレステロール食を与えた群の大動脈内腔総面積に対する動脈硬化病変面積の割合から、動脈硬化抑制率を算出した。すなわち、数式4の通りである。
上記方法によって抗動脈硬化抑制効果を評価した。その結果を動脈硬化抑制率として表4に示す
表4から、評価したマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は動脈硬化抑制効果を有することが分かった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、優れた動脈硬化抑制効果を有することが明らかとなり、抗動脈硬化用飲食物として有用であることが分かった。
実施例5
<動物における急性毒性試験>
急性毒性試験は以下の方法で行った。ウィスター系雌ラット(6週齢、平均体重160g)をAIN−93組成の粉末調製飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が均等になるように6群(1群8匹)に分け、それぞれにマスリン酸投与群、エリトロジオール投与群、ウルソール酸投与群、ウバオール投与群、ベツリン酸投与群、ベツリン投与群とした。各被験物質を綿実油に懸濁し、2000mg/体重kgになるように、ゾンデを用いて強制的に経口投与した。引き続きAIN−93組成の粉末調製飼料で飼育を行い、投与後2週間の予後状態を観察し、2週間後に解剖による内臓状態の検視を行った。
結果としては、投与後2週間において、何れの群においても死亡例はなく、また、解剖による内臓の所見でも特に異常は見られなかった。このことから各五環性トリテルペンのLD50値は2000mg/体重kg以上であり、安全性に極めて優れており、また、血管障害疾患用飲食物の形態として、経口摂取することも可能であることが分かった。
実施例6 食用調合油脂
精製マスリン酸1 5.0g
大豆白絞油 845.0g
MCT 150.0g
上記配合比率にて、大豆白絞油とMCTの混合油に精製マスリン酸1を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例7 ドレッシング
水 46.6g
キサンタンガム 0.1g
果糖ぶどう糖液糖 5.0g
食塩 5.0g
MSG 0.3g
米酢(酸度10%) 10.0g
こしょう 適量
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
MLCT 32.0g
上記配合比率にて、まずMLCTを除く原材料を、攪拌機付きの加温可能な容器に投入し、プロペラ攪拌機を用いて100rpmで攪拌しながら品温が90℃になるまで加熱し、品温を90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。その後、品温が20℃になるまで冷却してMLCTと合わせてドレッシングを得た。
実施例8 清涼飲料
合成例5の3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール 0.5g
ハチミツ 15.0g
クエン酸 0.1g
dl−リンゴ酸 0.1g
D−ソルビトール液(70%) 10.0g
安息香酸ナトリウム 0.1g
香料 適量
精製水 全量100gとする残余
上記原料を均一に混合し、健康用飲料を得た。
実施例9 シリアル食品
合成例7の3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール 15.0g
小麦粉 30.0g
脱脂大豆 18.5g
小麦ふすま 15.0g
小麦胚芽 11.5g
グラニュー糖 10.0g
上記配合比率にて混合したものを、加水、成型し、オーブンで加熱乾燥して、球形状のシリアル食品を得た。
実施例10 食用調合油脂
製造例3の精製マスリン酸3 10.0g
ミックストコフェロール 1.0g
米油 989.0g
上記配合比率にて、米油に精製マスリン酸3とミックストコフェロールを添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例11 食用調合油脂
製造例1の精製マスリン酸1 5.0g
植物ステロール 1.0g
紅花油 989.0g
上記配合比率にて、紅花油に精製マスリン酸1と植物ステロールを添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例12 マーガリン
菜種油 42.0g
菜種硬化油 42.0g
水 14.0g
食塩 0.5g
レシチン 0.5g
モノグリセリド 0.4g
製造例1の精製マスリン酸1 0.5g
香料 適量
カロチン 微量
上記原料を常法により混合し、コンビネーターを用い急冷混捏処理してマーガリンを得た。
実施例13 マヨネーズ
大豆サラダ油 74.0g
水 8.4g
砂糖 1.0g
グルタミン酸ナトリウム 0.3g
粉末マスタード 0.3g
食塩 1.0g
米酢 4.0g
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
加塩卵黄 10.0g
上記配合比率にて、まず大豆サラダ油、加塩卵黄を除く原材料を、混合攪拌しながら90℃まで加熱し、90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。20℃まで冷却した後、大豆サラダ油、加塩卵黄を合わせて減圧下で撹拌し、マヨネーズを得た。
本発明の血管障害疾患用飲食物によれば、五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体は、血管平滑筋細胞増殖抑制効果および/または血管平滑筋細胞遊走抑制効果、内膜肥厚抑制および抗動脈硬化等の抗細胞増殖性血管病変効果、抗動脈硬化症およびPTCA後の抗再狭窄等の抗血管障害疾患効果に優れており、天然由来であるため安心感や安全性を付与でき、容易に、かつ、継続的な摂取により、好適な効果を享受することができる。
Claims (33)
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖抑制用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞遊走抑制用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する抗細胞増殖性血管病変用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する抗内膜肥厚用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する抗動脈硬化用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管障害疾患用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する抗動脈硬化症用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する経皮的冠動脈形成術後の抗再狭窄用飲食物。
- 五環性トリテルペン類がオレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類から選ばれる化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の飲食物。
- オレアナン系トリテルペン類がマスリン酸である請求項9に記載の飲食物。
- オレアナン系トリテルペン類がエリトロジオールである請求項9に記載の飲食物。
- ウルサン系トリテルペン類がウルソール酸である請求項9に記載の飲食物。
- ウルサン系トリテルペン類がウバオールである請求項9に記載の飲食物。
- ルパン系トリテルペン類がベツリン酸である請求項9に記載の飲食物。
- ルパン系トリテルペン類がベツリンである請求項9に記載の飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物が天然原料から抽出されたものである請求項1〜15のいずれか1項に記載の飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物が天然原料から抽出され、濃縮および/または分画・精製されたものである請求項1〜16のいずれか1項に記載の飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物が天然原料から単離されたものである請求項1〜17のいずれか1項に記載の飲食物。
- マスリン酸及びその生理的に許容される塩からなる群より選ばれる化合物がオリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ及びナツメからなる群から選ばれる天然物から得られるものである請求項10記載の飲食物。
- マスリン酸及びその生理的に許容される塩からなる群より選ばれる化合物が、オリーブ植物および/またはオリーブ油製造工程で得られる生成物を水および/または有機溶媒で抽出処理し、濃縮および/または分画・精製処理することで得られるものである請求項10記載の飲食物。
- マスリン酸及びその生理的に許容される塩からなる群より選ばれる化合物が、オリーブ植物および/またはオリーブ油製造工程で得られる生成物を抽出処理し、濃縮および/または分画・精製処理することで得られるものから、さらに単離されたものである請求項20に記載の飲食物。
- 有機溶媒が親水性有機溶媒である請求項20または21に記載の飲食物。
- 親水性有機溶媒がアルコールである請求項22に記載の飲食物。
- アルコールがエタノールである請求項23に記載の飲食物。
- オリーブの脱脂物をエタノール溶液で処理して得られる抽出物を含有する血管障害疾患用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する血管平滑筋細胞増殖又は血管平滑筋細胞が関与する病変又は病態に関与する疾患の予防用又は治療用飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含有する、内膜肥厚、動脈硬化、細胞増殖性血管病変、冠動脈硬化症、腹部大動脈硬化症、閉塞性動脈硬化症、腎動脈硬化症、頚動脈硬化症、眼底動脈硬化症、脳動脈硬化症、動脈硬化症、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄、心筋梗塞、狭心症、虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中又は脳血管疾患の予防用又は治療用飲食物。
- 飲食物が水系飲食物である請求項1〜27のいずれか1項に記載の飲食物。
- 飲食物が油脂および/または油脂加工品である請求項1〜27のいずれか1項に記載の飲食物。
- 請求項29に記載の油脂および/または油脂加工品を使用した飲食物。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物の、血管障害疾患用飲食物を製造するための使用。
- 五環性トリテルペン類、それらの生理的に許容される塩及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる化合物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料。
- オリーブの脱脂物をエタノール溶液で処理して得られる抽出物を含有する血管障害疾患用飲食物用原料。
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