JPH11334609A - ラックアンドピニオン式舵取装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】ラックガイドクリアランス調整を不要とし、ス
プリング受けの耐久性を保持したラックアンドピニオン
式舵取装置を提供する。 【解決手段】ハウジング１に形成されたシリンダ４内に
摺動可能に嵌装されたラックガイド５をスプリング８の
付勢力によってラック軸をピニオン軸２押圧するように
したラックアンドピニオン式舵取装置において、スプリ
ング受け部材７を前記シリンダ４の内周面に形成された
段部に軸方向外方への変位を規制して一部を載置し、こ
のスプリング受け部材７の回転方向の変位を規制する回
り止め部材１０をシリンダ４に圧入した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ラックアンドピニ
オン式舵取装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】自動車等のラックアンドピニオン式舵取
装置は、ハウジングの内部にタイロッドを介して車輪の
操向アームと連結したラック軸と、このラック軸のラッ
ク歯と噛合するピニオン軸が設けられ、ハンドルによっ
て回動するピニオンギヤシャフトとが収納されている。

【０００３】また、前記ラック軸のラック歯とピニオン
軸のピニオン歯とのバックラッシュを除去するために、
ハウジングに形成されたシリンダ内にラックガイドを摺
動自在に嵌装し、ラックガイドをスプリングで付勢する
ことによって、ラック軸をピニオン軸に適度の押圧力で
噛合方向に押圧している。

【０００４】その構造として、特開平８−１３３１０１
号で開示されているように、シリンダにキャップをねじ
込み、このキャップのねじ込み量を加減することにより
ラックガイドとキャップとの間の極小さなクリアランス
（一般に数百μ程度）を調整してラック軸が外力により
変位したときなどに、ラックガイドの軸方向の変位を許
容させているものや、特表平８−５０５８２７号で開示
されているように、シリンダ内の環状溝にスプリング座
を有するスナップリングを装着したものが提供されてい
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
構造のものでは極小さなクリアランスをキャップのねじ
込み量の加減で調整することは熟練を要すると共に、組
み付け工数を増大させることになり、コスト高を招く。
また、後者の構造のものでは前記前者のような調整は不
要であるが、スプリング座となるウエブはスナップリン
グと細頚部でつながれた円形プレートあるいはリベット
で止められた三股形状プレートであり、耐久性に不安が
ある。この耐久性の不安を払拭するにはプレートの板厚
を増大すればよいが、スナップリングをシリンダ内の環
状溝に装着するときは縮径させる必要があるため板厚を
あまり増大することができないという問題がある。

【０００６】本発明の目的は、ラックガイドクリアラン
ス調整を不要とし、スプリング受けの耐久性を保持した
ラックアンドピニオン式舵取装置を提供することであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明は、互いに噛み合うピニオン軸とラック軸と
がハウジング内に設けられ、スプリングの付勢力によっ
て前記ラック軸を両軸の噛み合い部側へ押圧するラック
ガイドが前記ハウジングに形成されたシリンダ内に摺動
可能に嵌装されてなるラックアンドピニオン式舵取装置
において、前記シリンダの内周面に形成された段部に軸
方向外方への変位を規制して一部を載置したスプリング
受け部材と、このスプリング受け部材の回転方向の変位
を規制する回り止め部材とを備えたものである。

【０００８】また、前記スプリング受け部材は、その外
周の一部を膨出させて形成した複数の膨出部を有し、前
記シリンダ内の段部は前記膨出部が係合される環状溝と
して形成し、シリンダの内周面には、その開口端部から
前記環状溝に連絡する複数の軸方向溝が前記複数の膨出
部に対応する位置で形成され、前記回り止め部材は、前
記シリンダに挿入固定されるほぼ円筒形状で、その挿入
先端側に組み付け状態で前記膨出部間に位置して膨出部
に係合する回転規制部が突設されているものである。

【０００９】さらに、前記回り止め部材は挿入先端側と
は反対側の面が有底形状としたものである。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図面に基
づいて説明する。図１において、１はハウジングであ
る。このハウジング１内にはハンドルによって回動する
ピニオン軸２と、タイロッドを介して車輪の操向アーム
と連結されたラック軸３とが収納され、ピニオン軸２の
ピニオン歯とラック軸３のラック歯とが噛み合ってい
る。

【００１１】また、前記ピニオン軸２のピニオン歯とラ
ック軸３のラック歯とのバックラッシュを除去するため
に、ハウジング１に形成されたシリンダ４内に前記ラッ
ク軸３に滑り部材６を介して当接するラックガイド５が
摺動可能に嵌装され、これをスプリング８によって付勢
し、ラック軸３をピニオン軸２側へ適度の押圧力で押圧
するようになっている。

【００１２】前記シリンダ４内には前記スプリング８を
受け座となるスプリング受け部材７が着脱可能に装着さ
れている。このスプリング受け部材７は図４で示すよう
に円板状のものであり、その外周には所定の間隔で複数
の膨出部７ａ（耳部）が形成されており、シリンダ４内
を呼吸させるための複数の小孔９が開けられている構造
である。

【００１３】前記スプリング受け部材７をシリンダ４内
に装着する構造は、図２及び図３にも示すように、シリ
ンダ４の内周面に前記スプリング受け部材７の膨出部７
ａが係合して軸方向外方への変位を規制する環状溝１１
（段部）と、シリンダ４の開口部側から前記環状溝１１
に連絡する複数の軸方向溝１２とが形成されている。こ
の軸方向溝１２は前記スプリング受け部材７の膨出部７
ａと対応する位置に形成され、かつ膨出部７ａが挿通す
る溝幅を有している。また、前記環状溝１１の底の内径
Ｅの寸法とスプリング受け部材７の膨出部７ａの外径Ｆ
の寸法はほぼ同一である。

【００１４】さらに、前記環状溝１１に前記膨出部７ａ
が係合して軸方向外方への変位を規制したスプリング受
け部材７の回転方向の変位を回り止め部材１０（キャッ
プ）によって規制するようになっている。この回り止め
部材１０は図５及び図６にも示すように、底１０ｃを有
し、シリンダ４の内径より僅かに大きい外径の円筒体で
あり、底１０ｃとは反対側の先端円周には切欠１０ａに
よって複数の爪部１０ａが形成された構造である。この
複数の爪部１０ａは前記スプリング受け部材７の各膨出
部７ａ間の間隙と対応する位置で前記間隙の幅とほぼ同
一幅で形成されている。

【００１５】本発明は上記の通りの構造であるから、シ
リンダ４内にラックガイド５及びスプリング８を装填す
る。次にスプリング受部材７の膨出部７ａをシリンダ４
の軸方向溝１２に合わせて挿入する。このスプリング受
部材７の挿入には小孔９に嵌まり込む突起を有する治具
を用いることにより容易に挿入することができる。

【００１６】前記軸方向溝１２を案内にして挿入したス
プリング受部材７が環状溝１１に達したところで膨出部
７ａが軸方向溝１２から位相がずれる位置までスプリン
グ受部材７を回転して膨出部７ａを環状溝１１に係合す
る。

【００１７】これにより、スプリング受部材７はシリン
ダ４に対し軸方向外方への変位を規制し、かつスプリン
グ８を押圧してラックガイド５をスプリング８によって
付勢し、ラック軸３をピニオン軸２に適度の押圧力で噛
合方向に押圧してバックラッシュを除去する。そして、
図３で示すように、ラックガイド５とスプリング受部材
７との間にはクリアランスＤが環状溝１１の位置によっ
て決定され、ラック軸３が外力により変位したときなど
に、ラックガイド５の軸方向の変位を許容するものであ
る。

【００１８】さらに、回り止め部材１０によって前記環
状溝１１に係合したスプリング受部材７の回転方向の変
位を規制する。前記膨出部７ａが軸方向溝１２から位相
がずれる位置までスプリング受部材７を回転して膨出部
７ａを環状溝１１に係合した状態では、各膨出部７ａ間
の間隙が図２で示すように軸方向溝１２と一致した状態
になる。そこで、回り止め部材１０の爪部１０ａを軸方
向溝１２に合わせて圧入することにより爪部１０ａが各
膨出部７ａ間の間隙に入り込みスプリング受部材７の回
転を規制するものである。このシリンダ４に圧入された
回り止め部材１０は、その底１０ｃによってシリンダ４
の開口部を塞ぐため、シリンダ４内への塵等の侵入が防
止される。

【００１９】尚、上記の実施形態ではスプリング受け部
材７を載置する段部を環状溝１１として形成したが、シ
リンダ４内を開口部側から小径部、大径部とし、両部間
の段部にスプリング受け部材７を載置するようにしても
よい。

【００２０】また、スプリング受け部材７に小孔９を設
けたが、これには限定されず、スプリング受け部材７に
突起を設け、この突起に嵌まり込む小孔を設けた治具を
用いるようにしてもよく、スプリング受け部材７をシリ
ンダ４内に装填し回転する構成であればよい。

【００２１】更にまた、ラックガイド５によるラック軸
３の背面の案内には滑り部材６を用いて滑り案内してい
るが、いわゆるローラ式ラックガイドを用いた転がり案
内であってもよい。

【００２２】

【発明の効果】以上述べたように本発明によると、ラッ
クガイドとスプリング受け部材とのクリアランスは、シ
リンダ内周面の段部に載置される、あるいは環状溝に係
合されるスプリング受け部材の位置によって決まるた
め、段部又はは環状溝の加工精度の管理を行えば、組み
付け時に熟練を要するクリアランスの調整を行う必要が
ない。従って、予め板厚の異なるスプリング受け部材を
複数種類用意しておけば、ラックガイドクリアランスの
適正な微調整が容易に行うことができる。

【００２３】また、スプリング受け部材は従来のスナッ
プリングのように縮径させて取付けるものではないた
め、耐久性を考慮して十分な板厚とすることができる。

【００２４】さらに、スプリング受け部材は、段部又は
環状溝によって軸方向の変位を強固に規制され、かつ回
り止め部材によって回転方向の変位も規制されているの
で、使用中に脱落する恐れがなく、また、保守等での分
解操作も容易である。

【００２５】さらに加えて、回り止め部材は例えば圧入
によってシリンダに取付けられているが、スプリングの
付勢力はスプリング受け部材を介して段部又は環状溝で
受けており、回り止め部材には軸方向の力が一切かから
ないので、回り止め部材も脱落する心配はなく、この回
り止め部材が有底形状であればシリンダ内への塵等の侵
入が防止される利点を有している。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置の要部断面図

【図２】図１のＡ−Ａ線断面図

【図３】図１のＢ−Ｂ線断面図

【図４】スプリング受け部材の平面図

【図５】回り止め部材の側面図

【図６】図５のＣ矢視図

【符号の説明】 １ ハウジング ２ ピニオン軸 ３ ラック軸 ４ シリンダ ５ ラックガイド ７ スプリング受け部材 ７ａ 膨出部 ８ スプリング １０ 回り止め部材 １０ａ 爪部 １０ｂ 切欠 １０ｃ 底 １１ 環状溝 １２ 軸方向溝

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 互いに噛み合うピニオン軸とラック軸と
   がハウジング内に設けられ、スプリングの付勢力によっ
   て前記ラック軸を両軸の噛み合い部側へ押圧するラック
   ガイドが前記ハウジングに形成されたシリンダ内に摺動
   可能に嵌装されてなるラックアンドピニオン式舵取装置
   において、 前記シリンダの内周面に形成された段部に軸方向外方へ
   の変位を規制して一部を載置したスプリング受け部材
   と、このスプリング受け部材の回転方向の変位を規制す
   る回り止め部材とを備えたことを特徴とするラックアン
   ドピニオン式舵取装置。
2. 【請求項２】 前記スプリング受け部材は、その外周の
   一部を膨出させて形成した複数の膨出部を有し、前記シ
   リンダ内の段部は前記膨出部が係合される環状溝として
   形成し、シリンダの内周面には、その開口端部から前記
   環状溝に連絡する複数の軸方向溝が前記複数の膨出部に
   対応する位置で形成され、前記回り止め部材は、前記シ
   リンダに挿入固定されるほぼ円筒形状で、その挿入先端
   側に組み付け状態で前記膨出部間に位置して膨出部に係
   合する回転規制部が突設されていることを特徴とする請
   求項１に記載のラックアンドピニオン式舵取装置。
3. 【請求項３】 前記回り止め部材は挿入先端側とは反対
   側の面が有底形状である請求項１または請求項２に記載
   のラックアンドピニオン式舵取装置。