JPH0336410B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は情報記録層に与えた物理的、化学的変
化による情報を光学的に読み出す、いわゆぬ光記
録媒体に関するものである。

従来の技術 光記録媒体の中で、有機材料の情報記録層とし
ては、染料，染料・ポリマ複合体、光重合物、ジ
アゾ感光材、ホトクロミツク等が用いられてい
る。染料や染料・ポリマ複合体はそれらの情報記
録層にレーザ光を照射して選択的に溶融、蒸発気
化、変形等をさせて、媒体に凹凸を形成して記録
するものであり、いわゆるヒートモード記録とよ
れば、既に実用化されているカルコゲナイド半導
体物質と同じ用い方である。

一方、有機ホトクロミツク材料は、その可逆性
に着目され、書き換え可能な、ホトンモード記録
として研究されている。例えば、Ｌ、Ｍ、
Ralston，SPIE420 186（1983）等に報告されて
いる。ホトクロミツクは溶剤に可溶なものが多
く、スピンコートにより薄膜を形成し、デイスク
製造が可能になるものとして期待されているが、
実用化はされていない。

発明が解決しようとする問題点 有機ホトクロミツク材料は、光を照射するとホ
トクロミツク化合物が反応して照射前の光吸収ス
ペクトルと異つたスペクトルを有するようにな
る。ところが、シス−トランス異性化に基づくホ
トクロミツク化合物は、溶液内ではホトクロミズ
ムを示すが、固体薄膜では全くホトクロミズムを
示さない。

本発明は、シス−トランス異性化に基づくホト
クロミツク材料からなり、双方の状態で安定な薄
膜を用いた光記録媒体を提供することを目的とす
る。

問題点を解決するための手段 シス−トランス異性化によるホトクロミツク化
合物を、親水部と疎水部のバランスを保つた両親
媒性にした両親媒性ホトクロミツク化合物と、両
親媒性単分子形成物とを混合して、分子次元で二
次元平面に配向させた単分子膜を、基板上に累積
した記録薄膜を構成する。

作 用 本発明の記録媒体にレーザ光を照射すると、情
報記録層が反応した照射前の吸収スペクトルと異
つたスペクトルを有するようになり、情報が記録
される。この時、本発明の記録媒体は照射前の状
態に自然に戻らないで記録が維持できる。

これは両親媒性ホトクロミツク材料の分子構造
による立体障害と、分子次元で二次元平面に配向
させたことによる立体障害とが、両親媒性単分子
膜形成物とを混合することにより、両親媒性ホト
クロミツク単独にくらべてよりうまくバランス
し、薄膜内でホトクロミズムを維持したまま、か
つ熱的な逆反応は止められて記録寿命が長くなつ
たと考えられる。

実施例 本発明に用いる両親媒性ホトクロミツク材料と
しては、−Ｎ＝Ｎ−骨格を有するアゾベンゼンや
−Ｃ＝Ｃ−骨格を有するインジゴ，チオインジゴ
等の不飽和二重結合のシス−トランス異性化に基
づく化合物に、アルキル鎖が少くとも１個以上
を、不飽和二重結合の骨格以外の所に付加するよ
う合成されたものを用いることができる。

上記両親媒性ホトクロミツク材料と混合する両
親媒性単分子膜形成物は、ステアリン酸，アラキ
ジン酸等の脂肪酸およびステアリン酸メチル，ス
テアリルアルコール等の誘導体、トリパルミチン
リン脂質、ステロール類等を用いることができ
る。

上記のような材料を、分子次元で２次元平面に
配向した単分子膜として累積した記録層を形成す
るために、いわゆるラングミユア−ブロジエツト
法あるいは水平付着法とよばれる単分子累積法に
よつて基板上に膜形成を行う。まずPHや金層イ
オン等を最適に調整した蒸留水いわゆるサブフエ
イズで形成された気水界面上に、両親媒性ホトク
ロミツクを最な溶媒に溶かして展開し、溶媒が蒸
発気化した後の展開物質によつて生じる表面圧を
バリアによつて制御する。最適な表面圧を生じた
時、いわゆる累積圧に達した時、サブフエイズに
垂直な方向へあるいは水平に、ガラス、金属ある
いは半導体物質等の平滑な支持基体を静かに移動
させ、それらの基板上に単分子膜を移動せしめ、
これを繰り返して累積膜を形成する。

実施例 １ ４−モノステアロイルアミノアゾベンゼンとス
テアリン酸をモル比１：２で、１×10^-3Mの濃度
でベンゼンに溶解した。この溶液にほぼ360nｍ
の光を照射した後、250μの試料を、18℃、PH
＝７のサブフエイズに展開し、10mm／秒のバリア
速度でその単分子層を圧縮した。約20dyn／cmの
累積圧を生じた時、デイスク基板を気水界面上の
単分子膜に垂直に上下させて累積膜を形成した。
15回の往復をした結果、基板上に30層の単分子膜
が累積し、第１図に示すような約750Åの厚さの
情報記録層を得た。１は基板であり、２はその上
に形成された記録層である。記録層２の上には保
護膜３が形成される。円内は記録層２の部分を拡
大した図であり、単分子膜２ａ〜２ｃが模式的に
示されている。また、ホトクロミツク化合物分子
４と他の両親媒性単分子膜形成物５とが混在して
いる様子も示されている。

こうして得た記録媒体にほぼ440nｍの光をス
ポツトサイズ1μｍに集束して照射をおこない記
録した。照射前にはほぼ440nｍの光を吸収して
いたが、照射後は透過し、明らかに照射前後で情
報記録層の光学濃度の変化が認められ、光記録媒
体としての機能を備えていることがわかる。この
記録媒体は約30日以上経過した後も変らず、従来
のホトクロミツク化合物のように数時間で自然に
情報が消えてしまうことはなかつた。

実施例 ２ ６，6′−ジヘキシオキシチオインジゴとトリパ
ルミチンをモル比１：２で１×10^-3Mの濃度でク
ロロホルムに溶解した。この溶液にほぼ453nｍ
の光を照射した後、実施例１と同様にして、累積
した。Grメツキ板はアラキン酸Cdであらかじめ
疎水処理をして用いた。累積膜は12層形成し、約
300Åの厚さの情報記録層を得た。

この記録媒体にほぼ480nｍの光をスポツトサ
イズ1μｍに集束して照射をおこない記録した。
照射の前後での吸光特性を第２図に示す。この図
から明らかなように、照射前はほぼ540nｍの光
を吸収しないので反射光は強いが、照射後は光を
吸収するため反射光は弱くなり、明らかに照射前
後で情報記録層の光学濃度の変化が認められ、光
記録媒体としての機能を備えていることがわか
る。この記録媒体は約30日以上経過した後も変ら
ず、従来のホトクロミツク材料のように数時間で
自然に情報が消えてしまうことはなかつた。

発明の効果 以上述べてきたように、本発明によれば、きわ
めて簡単な構成で、従来用いることができなかつ
たシス−トランス異性化に基づくホトクロミツク
化合物の薄膜を記録層として用いることが可能と
なり、かつ記録寿命の長い記録媒体を提供でき
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の光記録媒体の構成
を示す断面図、第２図は本発明の一実施例におけ
る記録層の照射前後の吸収スペクトルを示すグラ
フである。 １……基板、２……記録層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ シス−トランス異性化によるホトクロミズム
   を示すとともに両親媒性のホトクロミツク化合物
   と、両親媒性単分子膜形成物とを混合した材料を
   分子次元で二次元平面に配向させた単分子膜とし
   て基板上に累積した記録層を備えた光記録媒体。 ２ ホトクロミツク化合物として、−Ｎ＝Ｎ−骨
   格を有する両親媒性アゾベンゼンを用いた特許請
   求の範囲第１項記載の光記録媒体。 ３ ホトクロミツク化合物として−Ｃ＝Ｃ−骨格
   を有する両親媒性インジゴ、又はチオインジゴを
   用いた特許請求の範囲第１項記載の光記録媒体。