本出願は、完全長抗体、又は重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗原結合フラグメントに融合した、単一ドメイン抗体(sdAb)を含むMABPを提供する。sdAbは、完全長抗体又は抗原結合フラグメントによって認識される標的とは別の標的(例えばエピトープ又は抗原)に特異的に結合することにより、幅広い標的化能を与える。MABP中の構成要素として、sdAbは、低サイズ、高溶解性及び安定性、ヒトにおける低免疫原性、及び様々なエピトープを標的にする能力が挙げられるが、これらに限定されない、現在知られている多重特異性抗体フォーマットで使用されるFab及びscFvなどの他の抗原結合フラグメントを超えるいくつかの利点を有する。そのため、本明細書に記載されるMABPは、完全長抗体又はその抗原結合フラグメントと比較して、同様の分子量と薬物動態特性を有することができる。例えば、MABPは、臨床的有効性及び安全性が証明されているモノクローナル抗体に、1つ又はそれ以上のsdAbを融合することによって設計され、多重特異性構築物の発現性を妨げずに、臨床的利点を増加させ、望ましい薬物動態特性を提供できる。いくつかの実施形態では、MABPは、2つの天然に産生する構成要素又はその誘導体、例えば、互いにポリペプチドリンカーによって融合された、天然に産生する又はヒト化したラクダ科VHHフラグメント及び天然に産生するモノクローナル抗体を含む。多くの既知の二重特異性抗体フォーマットとは異なり、本出願のMABPは、優れた生産性、安定性及び溶解性を有する。In vitro有効性データは、MABPが親抗体の抗腫瘍活性を保持していることを更に示している。in vivo腫瘍動物モデルにおいて、相乗活性も見いだされ、又は期待されている。本出願のMABPフォーマットを利用して、種々の疾患関連エピトープ又は抗原の組み合わせ、例えば、免疫チェックポイント分子の組み合わせ、細胞表面抗原(腫瘍抗原など)の組み合わせ、又は炎症促進性分子の組み合わせを標的とすることによって、癌、炎症、及び自己免疫疾患などの多種多様な疾患及び状態の治療に有用な薬剤を提供できる。
したがって、本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、MABPを提供する。
本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の免疫チェックポイント分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、MABPを提供する。
本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の炎症促進性分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の炎症促進性分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、MABPを提供する。
本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)細胞表面抗原(例えば、腫瘍抗原、又は免疫エフェクター細胞上の細胞表面抗原)に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、MABPを提供する。
また、MABPを含む医薬組成物、キット及び製品、並びに本明細書に記載されるMABPを用いて疾患を治療する方法も提供される。
I.定義
本発明の実施において、具体的な反対の指示がない限り、当該技術分野の範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学、DNA組み換え技術における従来の方法が採用され、その多くを例示目的で以下に記載する。このような技術は、文献で詳細に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology又はCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)及びその他類似の参考文献を参照されたい。
本明細書で使用するとき、用語「治療」は、臨床病理的過程で治療される個体又は細胞の自然経過を変更するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果として、疾患進行率の低下、疾患状態の寛解又は緩和、及び寛解又は予後の改善が挙げられる。例えば、治療される疾患又は状態(例えば、癌、炎症性疾患又は自己免疫疾患)に関連する1つ又は2つ以上の症状が緩和又は除去された場合、本出願のMABPにより個体は成功裏に「治療」される。
本明細書で使用するとき、「有効量」は、被検体における疾患又は状態を治療するのに有効な薬剤又は医薬品の量を指す。癌の場合、本出願の有効量のMABPは、癌細胞数の減少、腫瘍の大きさの縮小、周辺臓器への癌細胞の浸潤抑制(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍の増殖のある程度の抑制、及び/又は、癌に伴う1つ又は2つ以上の症状のある程度の緩和をすることができる。臨床的に理解されるように、有効量の薬剤、化合物、又は医薬組成物は、別の薬剤、化合物、又は医薬組成物と併用して実現しても、実現しなくてもよい。したがって、「有効量」は、1種類以上の治療薬を投与するという観点で考慮されてよく、単剤は、1種類以上の他の薬剤と併用され、所望の結果が実現する、又は実現し得る場合、有効量で投与されたとみなされ得る。
本明細書で使用するとき、「個体」又は「被検体」は、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類又は霊長類が挙げられるが、これらに限定されない、哺乳類を指す。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。
用語「抗体」として、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長の4本鎖抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、及び単鎖分子、並びに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、及びFv)が挙げられる。本明細書では、用語「免疫グロブリン」(Ig)は、「抗体」と互換的に使用される。本明細書で意図される抗体には、重鎖抗体及びsdAbを含む。
基本となる4本鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖と、2つの同一の重(H)鎖からなる、ヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、基本ヘテロ四量体ユニットと共に、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドの5つから構成され、10個の抗原結合部位を含有し、一方IgA抗体は、重合し、J鎖と組み合わせて多価集合体を形成できる基本4本鎖ユニットのうち、2~5つを備えている。IgGの場合、4本鎖ユニットは一般的には約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、一方2本のH鎖は、H鎖のアイソタイプによって1つ又は2つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。また、各H及びL鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端において可変ドメイン(VH)を、続けて、α及びγ鎖のそれぞれには3つの定常ドメイン(CH)を、μ及びεアイソタイプには4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端において可変ドメイン(VL)を、続けて別の末端に定常ドメインを有する。VLはVHと並び、CLは重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)と並ぶ。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の境界部を形成すると考えられている。VHとVLの対形成は、共に単一の抗原結合部位を形成する。異なる種類の抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I.Terr and Tristram G.Parsolw(eds),Appleton & Lange,Norwalk,Conn.,1994,page 71及びChapter 6を参照されたい。任意の脊椎動物由来のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2種類の明らかに異なる種類のうちの1つに割り当てることができる。重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列によって、免疫グロブリンを異なる種類、つまりアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと指定される重鎖を有する、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5種類がある。γ及びαクラスは、CHの配列及び機能における比較的わずかな違いに基づいて、更にサブクラスに分類され、例えば、ヒトは、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2のサブクラスを発現している。
「単離」抗体は、その産生環境(例えば、天然又は組み換え)の構成要素から、同定され、分離され、及び/又は回収されているものである。好ましくは、単離ポリペプチドは、その産生環境由来の他の全ての成分と会合しない。産生環境の混入成分、例えば、組み換えトランスフェクション細胞に起因するものは、典型的には、抗体の研究、診断又は治療用途を干渉する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含む場合がある。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー法によって測定されるとき、95重量%超の抗体、いくつかの実施形態では、99重量%超まで、(1)スピニングカップシークエネーターの使用による、少なくとも15残基のN末端若しくは内部のアミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、又は、(3)クーマシーブルー若しくは好ましくは銀染色を用いる非還元若しくは還元条件下のSDS-PAGEによって均一になるまで生成される。単離抗体は、工程の天然環境のうち少なくとも1つの構成要素が存在しないため、組み換え細胞内のin situ抗体を含む。しかし、通常は、単離ポリペプチドつまり抗体は、少なくとも1回の精製工程によって調製される。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称される場合がある。これらのドメインは、一般に、(同じクラスの別の抗体に対して)抗体の最も可変である部分であり、抗原結合部位を含む。ラクダ科種由来の重鎖抗体は、単一の重鎖可変領域を有し、これは「VHH」と称される。したがって、HHHは、VHの特殊型である。
用語「可変」は、可変ドメインのあるセグメントが抗体間で配列が広範囲に異なることを指す。Vドメインは、抗体結合に関与し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を特徴付ける。しかし、可変性は、可変ドメイン全体にわたって均一に分布されていない。その代わり、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方にある超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうちより良く保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域を含み、大部分がβシート構造を採用しており、3つのHVRによって接続されて、βシート構造に連結する、場合によっては構造の一部を形成するループを形成する。各鎖のHVRはFR領域により近接して保持され、他の鎖由来のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。
本明細書で使用するとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る自然発生突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)以外は同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に対するものであり、高特異性である。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物に比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンが混入しない点で有利である。修飾語である「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されない。例えば、本出願に従って使用されるモノクローナル抗体を様々な手法で作製でき、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495~97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253~260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563~681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ法(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624~628(1991)参照);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581~597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467~12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1~2):119~132(2004)、及び、ヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は前部を有する動物中でヒト又はヒト様抗体を産生する技術(例えば、国際公開第1998/24893号、同第1996/34096号、同第1996/33735号、同第1991/10741号、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255~258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号;Marks et al.,Bio/Technology 10:779~783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856~859(1994);Morrison,Nature 368:812~813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845~851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65~93(1995)参照)が挙げられる。
用語「Naked抗体」は、細胞傷害性部分又は放射線標識に結合していない抗体を指す。
「完全長抗体」「無傷抗体」又は「全抗体」は、互換的に使用され、抗体フラグメントに対して実質的に完全な形の抗体を指す。具体的には、完全長4本鎖抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であってよい。いくつかの場合において、無傷抗体は、1つ又は2つ以上のエフェクター機能を有してよい。
「抗体フラグメント」は、無傷抗体の一部、好ましくは無傷抗体の抗原結合及び/又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント、ダイアボディ、線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057~1062[1995]参照)、抗体フラグメントから形成される一本鎖抗体分子及び多特異性抗体が挙げられる。抗体をパパインで消化すると、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りの「Fc」フラグメント(この呼称は容易に結晶化できることを反映している)をもたらす。Fabフラグメントは、H鎖の可変領域ドメイン(VH)を伴うL鎖全体と、1本の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とからなる。各Fabフラグメントは、抗原結合に関して1価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体をペプシンで処理すると、異なる抗原結合活性を有する2箇所でジスルフィド結合したFabフラグメントにほぼ相当し、依然として抗原の架橋が可能な、1つの大きなF(ab’)2フラグメントが得られる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ又は2つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に、少数の追加の残基を有することによって、Fabフラグメントとは異なる。本明細書では、Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を生じるFab’に対する表記である。F(ab’)2抗体フラグメントは、従来、これらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生された。また、抗体フラグメントのその他化学的結合も既知である。
Fcフラグメントは、ジスルフィドによって共に保持される両H鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体エフェクター機能は、Fc領域の配列によって決定され、この領域は、ある種の細胞に見いだされるFc受容体(FcR)によっても認識される。
「Fv」は、完全な抗原認識かつ結合部位を含む最小抗体フラグメントである。このフラグメントは、強く非共有結合的に会合している、1本の重鎖及び1本の軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2つのドメインが折り畳まれると、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を与える6つの超可変ループ(H及びL鎖それぞれに3つのループ)が延びる。しかし、結合部位全体よりも親和性は低いものの、単一可変ドメイン(つまり、抗原に特異的な3つのみのHVRからなるFvの半分)であっても抗原を認識し、結合する能力を有する。
「単一鎖Fv」は、「sFv」又は「scFv」とも略され、単一のポリペプチド鎖内に連結されるVH及びVL抗体ドメインを含む、抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これによって、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする。sFvに関する総説は、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269~315(1994)を参照されたい。
本明細書に記載される抗体の「機能性フラグメント」は、一般に、無傷抗体の抗原結合若しくは可変領域、又は、FcR結合能を維持若しくは改変された結合能を有する抗体のFc領域を含む、無傷抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例として、線状抗体、単鎖抗体分子、及び、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
用語「ダイアボディ」は、VHとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10)残基)を有するFvフラグメント(上記パラグラフ参照)を構築することによって調製される小さい抗体フラグメントを指し、Vドメイン鎖内ではなく鎖間の対形成が達成されることによって、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られる。二重特異性ダイアボディは、2つの「クロスオーバー」するsFvフラグメントのヘテロに量体であり、2つの抗体のVH及びVLドメインが、異なるポリペプチド鎖に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448(1993)で詳細に説明されている。
本明細書のモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、これは、所望の生物活性を示す限りにおいて、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する、又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、一方鎖の残部は、別の種に由来する、又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、並びに、このような抗体のフラグメントである(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851~6855(1984))。本明細書で対象とするキメラ抗体として、PRIMATTZFD(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを対象とする抗原で免役することによって産生される抗体由来である。本明細書で使用するとき、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここでは、レシピエントのHVR(以下で定義される)の残基が、所望の特異性、親和性及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRの残基で置換される。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基が、対応する非ヒト残基で置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体内にない残基を含んでもよい。結合親和性などの抗体の性能を更に改善するため、これらの修飾がなされる場合がある。一般に、ヒト化抗体は、実質的に全ての少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを含み、全て又は実質的に全ての超可変ループは、非ヒト免疫グロブリン配列のものと一致し、全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列のものであり、ただし、FR領域は、抗体の性能、例えば結合親和性、異性化、免疫原性などを改善する、1つ又は2つ以上の個々のFR残基の置換を含んでもよい。FR中のこれらのアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖では6以下であり、L鎖では3以下である。ヒト化抗体は、任意に、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むだろう。更なる詳細は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522~525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323~329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105~115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035~1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428~433(1994)、並びに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体の配列に対応するアミノ酸配列を有し、及び/又は、本明細書に開示されるヒト抗体を作製するためのいずれかの手法を用いて作製された抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を、具体的に排除する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリなどの当該技術分野において既知の様々な手法を用いて作製できる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製には、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86~95(1991)に記載される方法も使用可能である。また、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368~74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答して、かかる抗体を産生するように改変されているが、内因性の遺伝子座が無効になっている、トランスジェニック動物、例えば、免疫化したxenomiceに抗原を投与することによって調製できる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって発生するヒト抗体に関しては、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557~3562(2006)も参照されたい。
本明細書で使用するとき、用語「可変領域」、「HVR」、又は「HV」は、配列が超可変であり、及び/又は、構造的に画定されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、4本鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、及びVLに3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。単一ドメイン抗体は、3つのHVR、例えばVHHに3つ(H1、H2、H3)を含む。天然の4本鎖抗体では、H3及びL3は、6つのHVRのうち最も多様性を示し、特に、H3は、抗体に対する精密な特異性を与えるのに独自の役割を果たす。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37~45(2000);Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1~25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科抗体は機能性を有し、軽鎖非存在下で安定である。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446~448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733~736(1996)を参照されたい。
用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、Kabatシステムによって定義される超可変領域を指すために使用される。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい。
多くのHVRの記述が使用されており、本明細書に包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)は配列多様性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を参照している(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothiaの構造ループとの間の妥協策を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている。「contact」HVRは、利用可能な複合結晶構造の解析に基づくものである。以下の表Iに、これらHVRそれぞれに由来する残基を記す。
HVRは、VL中の24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)及び89-97又は89-96(L3)、並びにVH中の26-35(H1)、50-65又は49-65(H2)及び93-102、94-102、又は95-102(H3)である、「伸長されたHVR」を含んでよい。可変ドメイン残基は、これらの定義のそれぞれについて、Kabatet al(上記)に従ってナンバリングされる。
「Kabatと同様の可変ドメイン残基のナンバリング」又は「Kabatと同様のアミノ酸位置ナンバリング」という表現及びその変形は、Kabat et al(上記)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR中の短縮、又は挿入に対応して、より少ない又は追加的なアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後ろに1つのアミノ酸挿入(Kabatによると残基52a)と、重鎖FR残基82の後ろに挿入残基(Kabatによると、例えば82a、82b、及び82cなど)を含む場合がある。ある抗体について、「標準」Kabatナンバリング配列を有する抗体の配列の相同性の領域におけるアライメントによって、残基のKabatナンバリングを決定することができる。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」又は「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も共通に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択肢は、可変ドメイン配列のサブグループである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)にあるようなサブグループである。例として、VLについては、サブグループは、Kabat et al(上記)にあるような、サブグループκI、κII、κIII又はκIVであってよい。また、VHについては、サブグループは、Kabat et alにあるような、サブグループI、サブグループII又はサブグループIIIであってよい。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、例えば、ドナーフレームワーク配列を様々なヒトフレームフレーム配列の集合とアライメントすることによって、ドナーフレームワークとの相同性に基づいてヒトフレームワーク残基を選択するときなど、特定の残基において、上記のもの由来である場合がある。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来である」アクセプターヒトフレームワークは、それらと同じアミノ酸配列を含んでよく、又は、予め存在するアミノ酸配列変化を含んでもよい。いくつかの実施形態では、予め存在するアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。
特定の位置、例えば、Fc領域の「アミノ酸修飾」は、特定の残基の置換又は欠失、特定の残基近くへの少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。特定の残基「近く」への挿入は、その1~2残基内への挿入を意味する。挿入は、特定の残基のN末端又はC末端側であってよい。本明細書の好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
「親和性成熟した」抗体は、その1つ又は2つ以上のHVRに1つ又は2つ以上の変更を伴うものであり、その変更により、それらの変更を持たない親抗体と比較して、抗体の抗原に対する親和性の改善がもたらされる。一実施形態では、親和性成熟した抗体は、標的抗原に対してナノモル濃度又は更にはピコモル濃度の親和性を有する。親和性成熟した抗体は、当該技術分野において既知の手順によって作製される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779~783(1992)は、VH-及びVL-ドメインのシャッフリングによる親和性成熟について述べている。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809~3813(1994);Schier et al.Gene 169:147~155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994~2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310~9(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889~896(1992)に記載されている。
本明細書で使用するとき、用語「特異的に結合する」又は「特異的」は、標的と抗体との間の結合などの、測定可能かつ再現性のある相互作用を指し、これは、生物学的分子などの分子の異種集団の存在下での、標的の存在を判定する。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、別の標的に結合するよりも、この標的に、より高い親和性で、より強い結合活性で、より容易に、及び/又はより長時間結合する抗体である。一実施形態では、無関係の標的への抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)で測定するとき、標的に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体の解離定数(Kd)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMである。特定の実施形態では、抗体は、異種由来のタンパク質間で保存されているタンパク質のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は排他的結合を含んでよいが、それは必須ではない。
用語「特異性」は、抗原の特定のエピトープに対する抗原結合タンパク質、つまり抗体の選択的認識を指す。例えば、天然の抗体は単一特異性である。本明細書で使用するとき、用語「多重特異性」は、抗原結合タンパク質、つまり抗体が、2つ以上の抗原結合部位を有し、そのうち少なくとも2つが異なる抗原又は同一の抗原の異なるエピトープに結合することを意味する。本明細書で使用するとき、「二重特異性」は、抗原結合タンパク質、つまり抗原が、2つの異なる抗原結合特異性を有することを意味する。本明細書で使用するとき、用語「単一特異性」抗体は、1つ又は2つ以上の結合部位を有し、それぞれが同じ抗原の同じエピトープに結合する抗体を意味する。
本明細書で使用するとき、用語「価」は、抗原結合タンパク質、つまり抗体分子内に、特定の数の結合部位が存在していることを意味する。例えば、天然抗体、つまり完全長抗体は、2つの結合部位を有し、二価である。このように、用語「三価」、「四価」、「五価」及び「六価」は、抗原結合タンパク質、つまり抗体分子内に、それぞれ2つの結合部位、3つの結合部位、4つの結合部位、5つの結合部位、及び6つの結合部位が存在していることを意味する。本出願のMABPは、少なくとも「二価」であり、例えば、MABPは「三価」又は「四価」であってよい。
「遮断」抗体、つまり「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物活性を抑制又は低減するものである。いくつかの実施形態では、遮断抗体、つまりアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的に又は完全に抑制する。
「アゴニスト」、つまり活性化抗体は、結合する抗原によるシグナル伝達を増強又は開始するものである。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗体は、天然リガンドが存在しなくてもシグナル伝達を引き起こし、又は活性化する。
「抗体エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異Fc領域)に起因するこれらの生物活性を指し、抗体アイソタイプによって変化する。抗体エフェクター機能の例として、C1q結合及び補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、B細胞活性化が挙げられる。抗体エフェクター機能の「低下又は最小化」は、野生型又は未修飾の抗体から、少なくとも50%(あるいは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)低下することを意味する。抗体エフェクター機能の決定は、当業者によって容易に判定可能かつ測定可能である。好ましい実施形態では、抗体エフェクター機能である補体結合、補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞傷害が影響を受ける。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除した定常領域における変異、例えば、「エフェクターレス変異」によって解消される。一態様では、エフェクターレス変異は、CH2領域におけるN297A又はDANA(D265A+N297A)変異である。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591~6604(2001)。あるいは、エフェクター機能の低下又は解消をもたらす追加の突然変異として、K322A及びL234A/L235A(LALA)が挙げられる。あるいは、エフェクター機能は、製造手法によって低下又は解消されることがあり、例えば、グリコシル化しない宿主細胞(例えば、大腸菌)又は、エフェクター機能の促進に無効であるか若しくは効果が低い、改変された変更されたグリコシル化パターンをもたらす宿主細胞(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466~3473(2003)中での発現である。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」つまりADCCは、細胞傷害の一形態を指し、分泌されたIgが特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合すると、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原提示標的細胞に特異的に結合し、続いてその標的細胞を細胞毒で死滅することを可能にする。細胞傷害性細胞の抗体「アーム」は、このメカニズムによる標的細胞の死滅に必要である。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457~92(1991)の464ページ表3にまとめられている。対象分子のADCC活性の評価には、米国特許第5,500,362号又は同5,821,337号に記載されるものなどの、in vitro ADCCアッセイを実施してもよい。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的又は追加的に、対象分子のADCC活性を、in vivo、例えば、動物モデル(例えば、Clynes et al.,PNAS USA 95:652~656(1998)に開示されるもの)で評価してもよい。
本明細書で別途記載のない限り、免疫グロブリン重鎖中の残基のナンバリングは、Kabat et al(上記)にあるようなEUインデックスのものである。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
本明細書の用語「Fc領域」を用いて、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義し、天然配列のFc領域と変異Fc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、一般に、Cys226又はPro230のアミノ酸残基位置から、そのカルボキシル末端にかけて延びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の製造若しくは精製時、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え的に操作することによって、除かれてもよい。したがって、無傷抗体の構成は、全てのK447残基が除かれた抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基がある抗体とない抗体の混合物を有する抗体集団を含んでよい。本明細書に記載される抗体での使用に好適な天然配列Fc領域として、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3及びIgG4が挙げられる。
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(γ受容体)に結合するものであり、対立遺伝子変異体及び異なるスプライシングを受けた型を含む、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体が挙げられ、FcγRII受容体として、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制受容体」)が挙げられ、これらは主に細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含む。抑制受容体FcγRIIBは、細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系抑制モチーフ(ITIM)を含む。(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203~234(1997)を参照されたい。FcRの総説は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457~92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25~34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330~41(1995)にある。その他FcR(将来同定されるものを含む)は、本明細書の用語「FcR」に包含される。
また、用語「Fc受容体」又は「FcR」は、胎児への母体IgGの移動を担う、新生児期受容体であるFcRnも含む。Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994)。FcRnへの結合の測定方法は既知である(例えば、Ghetie and Ward,Immunol.Today 18:(12):592~8(1997);Ghetie et al.,Nature Biotechnology 15(7):637~40(1997);Hinton et al.,J.Biol.Chem.279(8):6213~6(2004);国際公開第2004/92219号(Hinton et al.参照)。in vivoのFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス若しくはトランスフェクトされたヒト細胞株、又は変異Fc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類で評価することができる。国際公開第2004/42072号(Presta)は、FcRへの結合が改善又は低下した抗体変異体について説明している。例えば、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)も参照されたい。
「エフェクター細胞」は、1つ又は2つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を行う白血球である。一態様では、エフェクター細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、天然源、例えば血液から単離されてよい。エフェクター細胞は、一般に、エフェクター相に関与し、サイトカイン産生機能があり(ヘルパーT細胞)、病原体に感染した細胞を殺滅し(細胞傷害性T細胞)、又は抗体を分泌する(分化したB細胞)リンパ球である。
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、補体の存在下で標的細胞を溶解することを指す。従来の補体経路の活性化は、補体系の第1の要素(C1q)の、その同種抗原に結合する抗体(適切なサブクラスの)への結合によって開始される。補体活性化の評価には、CDCアッセイ、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるものを実施してよい。Fc領域のアミノ酸配列が変更されており、C1q結合能が増加又は低下している抗体変異体が、米国特許第6,194,551(B1)号及び国際公開第99/51642号に記載されている。これらの特許公報の内容は、具体的に参照することにより本明細書に組み込まれる。Idusogie et al.J.Immunol.164:4178~4184(2000)も参照されたい。
用語「重鎖抗体」又は「HCAb」は、重鎖を含むが通常抗体にある軽鎖を欠く、機能性抗体を指す。ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ、又はアルパカ)は、HCAbを産生することで知られている。
用語「単一ドメイン抗体」又は「sdAb」は、3つの相補的決定領域(CDR)を有する単一抗原結合ポリペプチドを指す。sdAbは単独で、対応するCDR含有ポリペプチドと対形成することなく抗原に結合することができる。いくつかの場合において、sdAbは、ラクダ科のHCAbから遺伝子操作を受けており、本明細書ではそれらの重鎖可変ドメインを「VHH」と称する。ラクダ科sdAbは、最少の既知の抗原結合抗体フラグメントのうちの1種である(例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446~8(1993);Greenberg et al.,Nature 374:168~73(1995);Hassanzadeh-Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013~26(2013)参照)。
「結合親和性」は一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば、抗原)との間の非共有性相互作用の強度の総和を指す。別途記載のない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間の1対1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの相手Yに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野において既知の一般的な方法により測定できる。低親和性の抗体は一般に、抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるが、一方高親和性の抗体は一般に、抗原により早く結合し、より長く結合したままになる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法は当該技術分野において既知であり、任意のものを本出願の目的で使用できる。結合親和性を測定するための特定例かつ代表的な実施形態を、以下に記載する。
本明細書で使用するとき、「Kd」又は「Kd値」は、一実施形態では、抗体のFab部及び抗原分子を用いて行われる放射線標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定され、このアッセイは以下に説明されており、一連の滴定用非標識抗原の存在下で、Fabを最小限の濃度の(125I)標識抗原と平衡化した後、抗Fab抗体をコーティングしたプレートを用いて結合した抗原を捕捉することによって、抗原に対するFab溶液の結合親和性を測定するものである(Chen,et al.,(1999)J.Mol.Biol 293:865~881)。アッセイ条件を確立するため、マイクロタイタープレート(Dynex)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)を用いて一晩コーティングし、続いて、PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンを用いて、室温(約23℃)にて2~5時間ブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc #269620)中で、100pM又は26pMの[125I]抗原を、連続希釈した対象とするFabと混合する(Presta et al.,(1997)Cancer Res.57:4593~4599での抗VEGF抗体であるFab-12の評価と同じ)。次いで、対象とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションを更に長時間(例えば、65時間)継続し、平衡に達するのを確実にすることもできる。その後、混合物を捕捉プレートに移し、室温で1時間インキュベートする。続いて、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1% Tween-20で8回洗浄する。プレートが乾燥したときに、150μL/ウェルのシンチラント(MicroSchint-20;Packard)を添加し、プレートを、Topcountガンマカウンター(Packard)で10分間カウントする。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合的結合アッセイで用いるために選択する。
別の実施形態によると、Kdは、BIOACORE(登録商標)-2000又はBIOACORE(登録商標)-3000装置(BIAcore,Inc.(Piscataway,N.J.))を、~10応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップと共に25℃で用いる、表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定される。簡潔に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/mL(~0.2μM)まで希釈した後、5μL/分の流速で注入し、およそ10応答単位(RU)の結合タンパク質を得る。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入し、未反応基をブロックする。速度論的測定には、2倍に連続希釈したFab(0.78nM~500nM)を、0.05% TWEEN 20(商標)界面活性剤を含むPBS(PBST)中に、25℃にて、およそ25μL/分の流速で注入する。結合速度(kon)及び解離速度(koff)を、結合解離センサーグラムに同時にフィットさせることによる、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして算出する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865~881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるon速度が106M-1s-1を超えた場合は、分光計、例えば、流れ停止装置付き分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベット付き8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)で測定するとき、濃度増加する抗原の存在下において、PBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab型)の、25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増減を測定する蛍光消光法を用いて、on速度を決定できる。
本明細書で使用するとき、「on速度」「結合の速度」「結合速度」又は「kon」は、BIOACORE(登録商標)-2000又はBIOACORE(登録商標)-3000システム(BIAcore,Inc.(Piscataway,N.J.))を、約10応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップと共に25℃で用いて、上記のように測定することもできる。簡潔に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(biosensor ships)(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(ECD)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5mg/mL 0.2μM)に希釈した後、5mL/分の流速で注入し、およそ10応答単位(RU)の結合タンパク質を得る。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを加え、未反応基をブロックする。速度論的測定には、2倍に連続希釈したFab(0.78nM~500nM)を、0.05% Tween 20を含むPBS(PBST)中に、25℃にて、およそ25μL/分の流速で注入する。結合速度(kon)及び解離速度(koff)を、結合解離センサーグラムに同時にフィットさせることによる、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして算出した。例えば、Chen,Y.,et al.,(1999)J.Mol.Biol 293:865~881を参照されたい。しかし、上記表面プラズモン共鳴アッセイによるon速度が106M-1S-1を超えた場合は、好ましくは、分光計、例えば、流れ停止装置付き分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベット付き8000シリーズSLM-Aminco(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)で測定するとき、濃度増加する抗原の存在下において、PBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab型)の、25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増減を測定する蛍光消光法を用いて、on速度を決定する。
ペプチド、ポリペプチド又は抗体配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、必要に応じて、最大割合の配列同一性を達成するため、配列をアライメントし、かつギャップを導入した後、配列同一性の部分としていかなる保存的置換を考慮せずに、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義する。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的においてアライメントは、当該技術分野における様々な方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大のアライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメント測定用の適切なパラメータを決定することができる。
本明細書のMABP又はsdAbをコードする「単離された」核酸分子は、通常は産生された環境に関係する少なくとも1つの混入核酸分子から、単離され、かつ分離される核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、産生環境に関係する全ての成分と会合しない。本発明のポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、自然に見いだされる形態又は状況以外の形態である。したがって、単離された核酸分子は、細胞内で天然に存在する本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする核酸と区別される。
用語「コントロール配列」は、特定の宿主生物における操作可能に連結されたコーディング配列の発現に必要なDNA配列を意味する。例えば、原核生物に適したコントロール配列は、プロモーター、任意のオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に配置されるとき、「操作可能に連結」される。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、その配列の転写に影響する場合、コード配列に操作可能に連結され、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するために配置される場合、コード配列に操作可能に連結される。一般に、「操作可能に連結される」とは、連結されているDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合は、読まれるときに近接していることを意味する。しかし、エンハンサーは近接している必要はない。連結は、都合がいい制限部位でのライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、従来の方法によって合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
本明細書で使用するとき、「キャリア」は、使用される用量及び濃度に曝露されている細胞又は哺乳類に対して毒性がない、医薬的に許容されるキャリア、賦形剤、又は安定剤を含む。生理学的に許容されるキャリアは、水性pH緩衝液である。生理学的に許容されるキャリアの例として、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、及びその他有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びその他炭水化物、例えばグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩生成対イオン、例えばナトリウム金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又は、非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
本発明の対象とする「希釈剤」は、医薬的に許容され(ヒトへの投与の安全であり毒性がない)、凍結乾燥後再溶解製剤などの液体製剤の調製に有用なものである。例示的な希釈剤として、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水)、無菌食塩水、リンゲル液又はデキストロース溶液が挙げられる。代替的な実施形態では、希釈剤として、塩及び/又は緩衝剤の水溶液が挙げられる。
「保存剤」は、本明細書において製剤に添加し、細菌活性を低下することができる化合物である。保存剤の添加により、例えば、複数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にできる。可能性がある保存剤の例として、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、塩化ベンゼニウムが挙げられる。他の種類の保存剤として、フェノール、ブチル、及びベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。本明細書において最も好ましい防腐剤は、ベンジルアルコールである。
用語「医薬製剤」は、有効成分の生物活性が有効となることを可能にするような形態であり、その製剤が投与される被検体に許容されないほど毒性がある追加の成分を含まない、製剤を指す。このような製剤は無菌である。「無菌」製剤は無菌性であり、つまり、全ての生微生物及びその芽胞を含まない。
「安定」製剤は、含まれるタンパク質が、保管によりその物理学的及び化学的安定性並びに完全性を実質的に保持しているものである。当該技術分野において、タンパク質の安定性の測定には様々な分析法があり、Peptide and Protein Drug Delivery,247~301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29~90(1993)で論説されている。安定性は、選択された期間にわたって選択された温度で測定してよい。迅速スクリーニングのため、製剤を40℃で2週間~1ヶ月保管し、その期間での安定性を測定してもよい。製剤が2~8℃で保管される場合、一般に、30℃又は40℃で少なくとも1ヶ月間安定であり、及び/又は、2~8℃で少なくとも2年間安定でなければならない。製剤が30℃で保管される場合、一般に、30℃で少なくとも2年間安定であり、及び/又は、40℃で少なくとも6ヶ月間安定でなければならない。例えば、保管中の凝集の程度は、タンパク質安定性の指標として使用できる。したがって、「安定」製剤は、約10%未満、好ましくは約5%未満のタンパク質が、製剤中の凝集体として存在するものであってよい。他の実施形態では、製剤の保管中に凝集体形成のなんらかの増加を判定してもよい。
「再溶解」製剤は、タンパク質が全体に分散するように、凍結乾燥したタンパク質、つまり抗体製剤を希釈剤中に溶解することによって調製されているものである。再溶解製剤は、対象とするタンパク質を用いて治療される患者への投与(例えば、皮下投与)に適しており、特定の実施形態では、非経口的又は静脈内投与に適したものであってよい。
「等張性」製剤は、ヒト血液と実質的に同じ浸透圧を有するものである。等張性製剤は、一般に約250~350mOsmの浸透圧を有することになる。用語「低張性」は、ヒト血液よりも低い浸透圧を有する製剤を説明する。同様に、用語「高張性」は、ヒト血液よりも高い浸透圧を有する製剤を説明するのに使用される。等張性は、例えば、蒸気圧式又は氷点式浸透圧計を用いて測定できる。本出願の製剤は、塩及び/又は緩衝剤の添加の結果高張性であってよい。
「免疫チェックポイント分子」は、シグナルを増強するかシグナルを低下するかのいずれかである、免疫系の分子を指す。「刺激性免疫チェックポイント分子」又は「共刺激分子」は、免疫系のシグナルを増強する免疫チェックポイント分子である。「抑制性免疫チェックポイント分子」は、免疫系のシグナルを低下する免疫チェックポイント分子である。
本明細書に記載される実施形態は、実施形態「からなる」及び/又は「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
本明細書に記載される「約」のついた値又はパラメータへの言及は、値又はパラメータ自体を被検体とする変形を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。
本明細書で使用するとき、「~されない」などの否定(not)を伴うある値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ「以外」が肯定されることを一般に意味し、記載する。例えば、「方法は、タイプXの癌を処置するのに使用されない」は、「方法は、X以外のタイプの癌を処置するのに使用される」を意味する。
本明細書で使用する用語「約X~Y」は、「約X~約Y」と同一の意味を有する。
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用するとき、単数形の「a」、「or」、及び「the」は、文脈から単数であることが明確に読み取れる場合を除き、対象の複数形も含まれるものとする。
II.多重特異性抗原結合タンパク質(MABP)
本出願の一態様は、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性抗原結合タンパク質(MABP)を提供する。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
本出願のMABPは、少なくとも2つの異なるエピトープに特異的に結合できる、少なくとも2つの抗原結合部分を有する。MABPが2つの異なるエピトープに対する結合部位を有する限り、少なくとも2つの抗原結合部分の一部は同じであってもよい。MABPは、対称性又は非対称性であってよい。例えば、MABPは、1つ又は2つの第1の抗原結合部分のコピーと、1~8つの第2の抗原結合部分のコピーとを含んでよい。いくつかの実施形態では、MABPは、それぞれが、異なる抗原結合部位を共に形成するVHドメインとVLドメインとを含む、2つの異なる抗原結合部分を含む。例えば、第1の抗原結合部分は二重特異性抗体であってよい。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、単一特異性完全長抗体又はその抗原結合フラグメント、例えばFabである。
いくつかの実施形態では、MABPは、それぞれがsdAbを含む、1、2、3、4、5、6、7、8つ、又はそれ以上の異なる抗原結合部分のうちいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、2つの同一のsdAbは互いに融合し、第1の抗原結合部分に更に融合する。いくつかの実施形態では、2つの異なるsdAbは互いに融合し、第1の抗原結合部分に更に融合する。
MABPは、各エピトープに対して任意の好適な価数、及び任意の好適な数の特異性を有してよい。いくつかの実施形態では、MABPは、第1のエピトープに対して2価、3価、4価、5価、6価、又はそれ以上の価数である。いくつかの実施形態では、MABPは、第2のエピトープに対して2価、3価、4価、5価、6価、又はそれ以上の価数である。いくつかの実施形態では、MABPは二重特異性である。いくつかの実施形態では、MABPは三重特異性である。いくつかの実施形態では、MABPは四重特異性である。いくつかの実施形態では、MABPは4つを超える特異性を有する。例示的なMABPを図1~22に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、1コピーの第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、1又は2以上(例えば2)コピーの第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分の各コピーが第1の抗原結合部分に融合している、二重特異性抗原結合タンパク質(「BABP」)が提供される。例を図5に示す。いくつかの実施形態では、sdAbのうち1つ又は2つ以上は、それぞれが更に他の同一又は異なるsdAbに融合する。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、複数(例えば、2、3、4、5、6つ、又はそれ以上)の第1の抗原結合部分と、(b)第1のエピトープとは異なるエピトープにそれぞれが特異的に結合する、複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、又はそれ以上)の同一又は異なるsdAbと、を含み、sdAbが互いに、及び/又は第1の抗原結合部分と融合している、MABPが提供される。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、2コピーの第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、1コピーの第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分が2コピーの第1の抗原結合部分のうち一方に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。例を図1に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、2コピーの第1の抗原結合部分と、(b)第1のエピトープとは異なるエピトープにそれぞれが特異的に結合する、複数(例えば、2、3、又は4つ)の同一又は異なるsdAbと、を含み、sdAbが互いに、及び/又は第1の抗原結合部分と融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。例を図2、3、17、18、21、及び22に示す。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、2コピーの第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbをそれぞれ含む、2コピーの第2の抗原結合部分と、を含み、1コピーの第2の抗原結合部分が第1の抗原結合部分のそれぞれのコピーに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。例を図4、9、11、13、19、及び20に示す。いくつかの実施形態では、sdAbのうち1つ又は2つ以上は、それぞれが更に他の同一又は異なるsdAbに融合する。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)をそれぞれ含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1のコピー及び第2のコピーの第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、(c)第3のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む、第3の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分が第1のコピーの第1の抗原結合部分に融合しており、第3の抗原結合部分が第2のコピーの第1の抗原結合部分に融合している、多重特異性(例えば三重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。例を図7、10、12、及び14に示す。いくつかの実施形態では、sdAbのうち1つ又は2つ以上は、それぞれが更に他の同一又は異なるsdAbに融合する。
いくつかの実施形態では、(a)第1の重鎖可変ドメイン(VH)及び第1の軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、第1のVH及び第1のVLが、第1のエピトープに特異的に結合する第1の抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む1~4コピーの第2の抗原結合部分と、(c)第3の重鎖可変ドメイン(VH)及び第3の軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、第3のVH及び第3のVLが、第3のエピトープに特異的に結合する第3の抗原結合部位を共に形成する、第3の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分が第1の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分に融合している、多重特異性(例えば三重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。例を図6に示す。いくつかの実施形態では、sdAbのうち1つ又は2つ以上は、それぞれが更に他の同一又は異なるsdAbに融合する。
いくつかの実施形態では、(a)第1の重鎖可変ドメイン(VH)及び第1の軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、第1のVH及び第1のVLが、第1のエピトープに特異的に結合する第1の抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む第2の抗原結合部分と、(c)第3の重鎖可変ドメイン(VH)及び第3の軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、第3のVH及び第3のVLが、第3のエピトープに特異的に結合する第3の抗原結合部位を共に形成する、第3の抗原結合部分と、(d)第4のエピトープに特異的に結合する第2のsdAbを含む第4の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合しており、第3の抗原結合部分及び第4の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば四重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。例を図8に示す。いくつかの実施形態では、sdAbのうち1つ又は2つ以上は、それぞれが更に他の同一又は異なるsdAbに融合する。
エピトープ及び抗原
本明細書に記載されるMABPのいずれかは、少なくとも2つの異なるエピトープに特異的に結合できる。認識される少なくとも2つの異なるエピトープは、同一の抗原上に、又は異なる抗原上に位置してよい。いくつかの実施形態では、抗原は細胞表面分子である。いくつかの実施形態では、抗原は細胞外分子である。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ及び/又は第2のエピトープは、免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は刺激性免疫チェックポイント分子である。例示的な刺激性免疫チェックポイント分子として、CD28、OX40、ICOS、GITR、4-1BB、CD27、CD40、CD3、HVEM、及びTCR(例えば、MHCクラスI又はII分子)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は阻害性免疫チェックポイント分子である。例示的な阻害性免疫チェックポイント分子として、CTLA-4、TIM-3、A2a受容体、LAG-3、BTLA、KIR、PD-1、IDO、CD47、及びそれらのリガンド、例えばB7.1、B7.2、PD-L1、PD-L2、HVEM、B7-H4、NKTR-218、及びSIRP-α受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の免疫チェックポイント分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の免疫チェックポイント分子及び/又は第2の免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ及び/又は第2のエピトープは、細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、T細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞など)、B細胞、マクロファージ、及びナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫エフェクター細胞上の抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、CD3などのT細胞表面抗原である。
いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は腫瘍抗原である。腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞媒介性免疫応答を誘発できる、腫瘍細胞により産生されるタンパク質である。本明細書に記載される標的抗原の選択は、治療される癌の特定の種類に依存する。例示的な腫瘍抗原として、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、前立腺、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、prostein、PSMA、HER2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体及びメソセリンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、悪性腫瘍と関連する1つ又は2つ以上の抗原性癌エピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原となり得る多くのタンパク質を発現する。これらの分子として、組織特異的抗原、例えば、黒色腫のMART-1、チロシナーゼ及びgp100、並びに、前立腺癌の前立腺酸ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない。他のターゲット分子は、癌遺伝子HER2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の種類に属する。標的抗原の更に別の種類は、癌胎児性抗原(CEA)などの癌胎児抗原である。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に特有の完全に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20、及びCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における他の標的抗原候補である。
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍特異抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)である。TSAは、腫瘍細胞特有であり、体内の他の細胞で発生しない。TAA関連抗原は、腫瘍細胞特有ではなく、その代わり、抗原に対する免疫寛容状態を誘発できない条件下で正常細胞にも発現している。腫瘍上の抗原発現は、免疫系を抗原に応答できるようにする条件下で起こり得る。TAAは、胎児発生中、免疫系が未熟で応答できないときに正常細胞上に発現する抗原であり、又は、正常細胞上で極めて低いレベルで通常存在している抗原であるが、腫瘍細胞上でははるかに高いレベルで発現する。
TSA又はTAAの非限定例として、分化抗原、例えばMART-1/MelanA(MART-I)、gp 100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、及び、腫瘍特異的多系列抗原、例えば、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pl5;過剰発現胚抗原、例えばCEA;過剰発現癌遺伝子及び変異腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER2/neu;染色体転座に起因する固有腫瘍抗原、例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;並びに、ウイルス抗原、例えば、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7が挙げられる。その他大型のタンパク質系抗原として、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、pl85erbB2、pl80erbB-3、C-met、nm-23HI、PSA、TAG-72、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS 1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC-関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSが挙げられる。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の腫瘍抗原に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の腫瘍抗原及び/又は第2の腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)免疫エフェクター細胞(例えばT細胞)上の細胞表面抗原に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ及び/又は第2のエピトープは、炎症促進性分子である。「炎症促進性分子」は、炎症性反応を上方制御する免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、白血球など)によって産生され、又は発現される任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン、又はインターロイキンなどの炎症促進性サイトカインである。例示的な炎症促進性分子として、IL-1β、TNF-α、IL-6-、IL-6R、IL-5、IL-17、IL-23、IL-22、IL-21、IL-12、及びエオタキシン-1(すなわち、CCL11)が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の炎症促進性分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の炎症促進性分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の炎症促進性分子及び/又は第2の炎症促進性分子は、IL-1β、TNF-α、IL-5、IL-6、IL-6R、及びエオタキシン-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、第1のエピトープ及び/又は第2のエピトープは、Ang2及びVEGFなどの血管新生因子である。したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の血管新生因子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の血管新生因子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。
融合ポリペプチド
MABPの第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、互いに融合(すなわち共有結合)している。したがって、本出願のMABPは、1つ又は2つ以上の融合ポリペプチドを含む。各融合ポリペプチドは、第2の抗原結合部分と、第1の抗原結合部分由来のポリペプチドと、を含んでよい。
第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、単一の化学的結合(ペプチド結合など)によって直接的に、又はペプチドリンカーを介して結合されてよい。第2の抗原結合部分は、第1の抗原結合部分のいずれか一方(それぞれを含む)のポリペプチドのN末端又はC末端のいずれかで融合してよく、又は、第1の抗原結合部分のいずれか一方(それぞれを含む)のポリペプチドの内部位置、例えば第1の抗原結合部分の重鎖中のFc領域のN末端で融合してもよい。融合ポリペプチドは、組み換え的又は化学的のいずれかで得ることができる。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端は、第1の抗原結合部分のいずれか(それぞれを含む)のポリペプチドのN末端に、化学的結合(ペプチド結合など)又はペプチドリンカーによって融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のN末端は、第1の抗原結合部分のいずれか(それぞれを含む)のポリペプチドのC末端に、化学的結合(ペプチド結合など)又はペプチドリンカーによって融合される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、アミノ酸の主鎖の化学基に関与するペプチド結合ではない、化学的結合を介して第1の抗原結合部位に融合される。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHと、VLと、を含む単鎖抗原フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分はscFvを含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端方向に、sdAbを含む第2の抗原結合部分、任意のペプチドリンカー、VHドメイン及びVLドメインを含む、融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端方向に、sdAbを含む第2の抗原結合部分、任意のペプチドリンカー、VLドメイン及びVHドメインを含む、融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端方向に、VHドメイン、VLドメイン、任意のペプチドリンカー、及びsdAbを含む第2の抗原結合部分を含む、融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端方向に、VLドメイン、VHドメイン、任意のペプチドリンカー、及びsdAbを含む第2の抗原結合部分を含む、融合ポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHドメインを含む重鎖と、VLドメインを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、1つ又は2つ以上の重鎖定常ドメイン、例えばCH1、CH2、CH4、及びCH3、並びに/又は抗体ヒンジ領域(HR)を更に含む。いくつかの実施形態では、軽鎖は、軽鎖定常ドメイン(CL)、例えばλCLドメイン又はκCLドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のN末端は、重鎖のC末端に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端は、重鎖のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のN末端は、軽鎖のC末端に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端は、軽鎖のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、重鎖、任意のペプチドリンカー、及びsdAbを含む第2の抗原結合部分を含む第1のポリペプチドと、軽鎖を含む第2のポリペプチドと、を含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、sdAbを含む第2の抗原結合部分、任意のペプチドリンカー、及び重鎖を含む第1のポリペプチドと、軽鎖を含む第2のポリペプチドと、を含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、軽鎖、任意のペプチドリンカー、及びsdAbを含む第2の抗原結合部分を含む第1のポリペプチドと、重鎖を含む第2のポリペプチドと、を含む。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、sdAbを含む第2の抗原結合部分、任意のペプチドリンカー、及び軽鎖を含む第1のポリペプチドと、重鎖を含む第2のポリペプチドと、を含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、完全長抗体は、2本の同一の重鎖及び2本の同一の軽鎖からなる、完全長モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、重鎖、任意のペプチドリンカー、及びsdAbを含む第2の抗原結合部分をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、軽鎖をそれぞれ含む2つの第2のポリペプチドと、を含む(例えば、図4参照)。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、sdAbを含む第2の抗原結合部分、任意のペプチドリンカー、及び重鎖をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む(例えば、図9参照)。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、軽鎖、任意のペプチドリンカー、及びsdAbを含む第2の抗原結合部分をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、重鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む(例えば、図11参照)。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、sdAbを含む第2の抗原結合部分、任意のペプチドリンカー、及び軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、重鎖を含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む(例えば、図13参照)。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり、第1のエピトープを特異的に認識する、完全長抗体と、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、(c)第3のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、を含み、第1のsdAbのC末端は各重鎖のN末端に融合しており、第2のsdAbのN末端は各重鎖のC末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、第1のsdAb、任意のペプチドリンカー、重鎖、任意のペプチドリンカー、及び第2のsdAbをそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図15を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり、第1のエピトープを特異的に認識する、完全長抗体と、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、(c)第3のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、を含み、第1のsdAbのC末端は各軽鎖のN末端に融合しており、第2のsdAbのN末端は各重鎖のC末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、重鎖、任意のペプチドリンカー、及び第2のsdAbをそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、第1のsdAb、任意のペプチドリンカー、及び軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図16を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)第1及び第2の重鎖並びに第1及び第2の軽鎖からなり、第1のエピトープを特異的に認識する、完全長抗体と、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、(c)第3のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、(d)第4のエピトープを特異的に認識する第3のsdAbと、(e)第5のエピトープを特異的に認識する第4のsdAbと、を含み、第1のsdAbのC末端は第1の軽鎖のN末端に融合しており、第2のsdAbのC末端は第2の軽鎖のN末端に融合しており、第3のsdAbのC末端は第1の重鎖のN末端に融合しており、第4のsdAbのC末端は第2の重鎖のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、第3又は第4のsdAb、任意のペプチドリンカー、及び重鎖をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、第1又は第2のsdAb、任意のペプチドリンカー、及び軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図17を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり、第1のエピトープを特異的に認識する、完全長抗体と、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、(c)第3のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、(d)第4のエピトープを特異的に認識する第3のsdAbと、(e)第5のエピトープを特異的に認識する第4のsdAbと、を含み、第1のsdAbのC末端は第2のsdAbのN末端に融合しており、第2のsdAbのC末端は一方の重鎖のN末端に融合しており、第3のsdAbのC末端は第4のsdAbのN末端に融合しており、第4のsdAbのC末端は別の重鎖のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、第1又は第3のsdAb、任意のペプチドリンカー、第2又は第4のsdAb、任意のペプチドリンカー、及び重鎖をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図18を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり、第1のエピトープを特異的に認識する、完全長抗体と、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、(c)第3のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、を含み、第1又は第2のsdAbのN末端は重鎖のCH1領域のC末端に融合しており、第1又は第2のsdAbのC末端は重鎖のCH2領域のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、VH-CH1-任意のペプチドリンカー-sdAb-CH2-CH3をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、軽鎖をそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図19を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)第1のエピトープを特異的に認識する第1のscFvと、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第2のscFvと、(c)Fc領域と、(d)第3のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、(d)第4のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、を含み、各sdAbのN末端はscFvのC末端に融合しており、sdAbのC末端はFc領域のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、scFv-任意のペプチドリンカー-sdAb-CH2-CH3をそれぞれ含む、2つの同一のポリペプチドを含む。例えば、図20を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)第1のエピトープを特異的に認識する第1のFabと、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第2のFabと、(c)Fc領域と、(d)第3のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、第4のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、を含む第1のFab様ドメインと、(e)第5のエピトープを特異的に認識する第3のsdAbと、第6のエピトープを特異的に認識する第4のsdAbと、を含む第2のFab様ドメインと、を含み、各Fab様ドメインのN末端はFabのC末端に融合しており、Fab様ドメインの2つのC末端のうち一方はFc領域のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、VH-CH1-任意のペプチドリンカー-sdAb-CH1-CH2-CH3をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、N末端からC末端に、VL-CL-任意のペプチドリンカー-sdAb-CLをそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図21を参照されたい。
いくつかの実施形態では、MABPは、(a)第1のエピトープを特異的に認識する第1のscFvと、(b)第2のエピトープを特異的に認識する第2のscFvと、(c)Fc領域と、(d)第3のエピトープを特異的に認識する第1のsdAbと、第4のエピトープを特異的に認識する第2のsdAbと、を含む第1のFab様ドメインと、(e)第5のエピトープを特異的に認識する第3のsdAbと、第6のエピトープを特異的に認識する第4のsdAbと、を含む第2のFab様ドメインと、を含み、各Fab様ドメインの2つのN末端のうち一方はscFvのC末端に融合しており、sdAbの2つのC末端のうち一方はFc領域のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、N末端からC末端に、scFv-任意のペプチドリンカー-sdAb-CH1-CH2-CH3をそれぞれ含む2つの同一の第1のポリペプチドと、N末端からC末端に、sdAb-CLをそれぞれ含む2つの同一の第2のポリペプチドと、を含む。例えば、図22を参照されたい。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)を含む重鎖と、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む軽鎖と、を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のN末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の重鎖のC末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)を含む重鎖と、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む軽鎖と、を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のC末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の重鎖のN末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)を含む重鎖と、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む軽鎖と、を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のN末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の軽鎖のC末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)を含む重鎖と、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む軽鎖と、を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のC末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の軽鎖のN末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む完全長抗体を含み、完全長抗体が、第1のエピトープに特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のN末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の2本の重鎖のうち一方又はそれぞれのC末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む完全長抗体を含み、完全長抗体が、第1のエピトープに特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のC末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の2本の重鎖のうち一方又はそれぞれのN末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む完全長抗体を含み、完全長抗体が、第1のエピトープに特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のN末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の2本の軽鎖のうち一方又はそれぞれのC末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む完全長抗体を含み、完全長抗体が、第1のエピトープに特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第2の抗原結合部分のC末端が、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の2本の軽鎖のうち一方又はそれぞれのN末端に融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の血管新生因子由来であり、第2のエピトープは第2の血管新生因子由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
本明細書に記載されるMABPは、第1の抗原結合部分と第2の抗原結合部分との間に位置付けられる1つ又は2つ以上のペプチドリンカーを含んでよい。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分の重鎖ポリペプチドと第2の抗原結合部分との間のペプチドリンカーは、第1の抗原結合部分の軽鎖ポリペプチドと第2の抗原結合部分との間のペプチドリンカーと同一である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分の重鎖ポリペプチドと第2の抗原結合部分との間のペプチドリンカーは、第1の抗原結合部分の軽鎖ポリペプチドと第2の抗原結合部分との間のペプチドリンカーと異なっている。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、これらの間に配置されるペプチドリンカーを用いずに互いに直接融合している。
MABPの様々な抗原結合部分が、ペプチドリンカーを介して互いに融合されていてよい。異なる抗原結合部分を連結するペプチドリンカーは、同一であっても異なっていてもよい。各ペプチドリンカーは独立して最適化され得る。ペプチドリンカーは任意の好適な長さを有してよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50又はそれ以上のうちいずれかのアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5又はそれ以下のうちいずれかのアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーの長さは、約1個のアミノ酸~約10個のアミノ酸、約1個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約1個のアミノ酸~約30個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約30個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約30個のアミノ酸長、約30個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、又は約1個のアミノ酸~約50個のアミノ酸のうちいずれかである。
ペプチドリンカーは、天然配列又は非天然配列を有してよい。例えば、重鎖抗体のヒンジ領域由来の配列をリンカーとして使用してよい。例えば、国際公開第1996/34103号を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは可動性リンカーである。例示的な可動性リンカーとして、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n(配列番号9)、(GSGGS)n(配列番号10)及び(GGGS)n(配列番号11)、このときnは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野において既知のその他可動性リンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGS(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、IgGのヒンジ領域、例えばヒトIgG1のヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号8)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、IgGのヒンジ領域、例えばヒトIgG1のヒンジ領域由来の修飾配列を含む。例えば、IgGのヒンジ領域中の1つ又は2つ以上のシステインがセリンに置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列EPKSSDKTHTSPPSP(配列番号12)を含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、化学的に互いに融合している。例えば、第2の抗原結合部位と第1の抗原結合部位の1つ又は2つ以上のポリペプチドは、連結基を介して1つ又は2つ以上の反応部位を用いて結合されてよい。化学的結合に有用なポリペプチド中の反応部位は当該技術分野において周知であり、アミノ酸残基上に存在する第一アミノ基、例えばリジンのεアミノ基及びN末端アミノ酸のαアミノ基、システイン残基中のチオール基、C末端アミノ酸のカルボキシ基、並びにグリコシル化抗体中の炭水化物基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、反応部位は、部位特異的突然変異誘発、セレノシステイン又は非天然型アミノ酸の取り込み、二官能性リンカー(ビスアルキル化試薬など)の取り込み、及び/又は糖鎖工学によって、第2の抗原結合部分又は第1の抗原結合部分内に導入される。いくつかの実施形態では、チオール反応性ポリペプチドへの結合のため、ポリペプチドの1つ又は2つ以上の第一アミノ基を、チオール含有基(例えば、システイン又はホモシステイン残基由来)、マレイミド基などの求電子性不飽和基、又はブロモアセチル基などのハロゲン化基に変換できる。当該技術分野において既知である任意の連結基及び結合方法を用いて、第2の抗原結合部分を第1の抗原結合部分に化学的に融合できる。いくつかの実施形態では、結合は、例えば、スクシンイミドエステル(例えば、サクシニミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、又はN-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS))、グルタルアルデヒド、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI))、ベンジジン(BDB)、過ヨウ素酸塩、又はイソチオシアネート(例えば、N-アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT))を用いることによって達成できる。
単一ドメイン抗体を含む抗原結合部分
本出願のMABPは、sdAbを含む少なくとも1つの抗原結合部分を含む。例示的なsdAbとして、重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン(例えば、VHH又はVNAR)、天然に軽鎖を欠く結合分子、従来の4本鎖抗体由来の単一ドメイン(例えば、VH又はVL)、ヒト化重鎖抗体、ヒト重鎖セグメントを発現するトランスジェニックマウス又はラットによって産生されたヒトsdAb、並びに、抗体由来のもの以外の遺伝子操作を受けたドメイン及び単一ドメインスキャフォールドが挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野において既知であるか、又は本発明者らが開発した任意のsdAbを用いて、本出願のMABPを構築できる。sdAbは、マウス、ラット、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤツメウナギ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、及びウシが挙げられるが、これらに限定されない、任意の種由来であってよい。本明細書において想定される単一ドメイン抗体として、ラクダ科及びサメ以外の種由来の天然に存在するsdAb分子も挙げられる。
いくつかの実施形態では、sdAbは、軽鎖を欠く重鎖(本明細書において「重鎖抗体」とも称される)として既知である、天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子由来である。このような単一ドメイン分子は、例えば、国際公開第94/04678号及びHamers-Casterman,C.et al.(1993)Nature 363:446~448に開示されている。明確性目的のため、従来の4本鎖免疫グロブリンのVHと区別するために、天然に軽鎖を欠く重鎖分子由来の可変ドメインは、本明細書においてVHHとして既知である。このようなVHH分子は、ラクダ科、例えば、ラクダ、ラマ、ビクーニャ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びグアナコで生じる抗体由来であってよい。ラクダ科以外の他の種は、天然に軽鎖を欠く重鎖分子を産生でき、このようなVHHは、本出願の範囲内にある。
ラクダ科由来のVHH分子は、IgG分子より約10倍小さい。これらは単一のポリペプチドであり、非常に安定であって、極端なpH及び温度条件に耐えることができる。また、従来の抗体では見られない、プロテアーゼの作用に抵抗することができる。更に、in vitro発現(VHHの)により、適切に折り畳まれた機能性VHHが高収率で産生される。また、ラクダ科で産生された抗体は、抗体ライブラリの使用によってin vitroで、又はラクダ科以外の哺乳類の免疫化を介して産生された抗体が認識するもの以外のエピトープを認識できる(例えば、国際公開第9749805号参照)。このように、1つ又は2つ以上のVHHドメインを含むMABPは、従来の抗体よりもより効率的に標的と相互作用できる。VHHは空洞部や溝部などの「通常ではない」エピトープ内に結合することが知られているため、かかるVHHを含むMABPの親和性は、従来の多重特異性ポリペプチドよりも治療的処置に好適であり得る。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するVHHドメインを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の免疫チェックポイント分子由来であり、第2のエピトープは第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープは第2の腫瘍抗原由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは腫瘍抗原由来であり、第2のエピトープはCD3などの細胞表面分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは第1の炎症促進性分子由来であり、第2のエピトープは第2の炎症促進性分子由来である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、VHHドメインはヒト化されている。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、軟骨魚類に存在する免疫グロブリンの可変領域由来である。例えば、sdAbは、サメ血清中に存在する新規抗原受容体(Novel Antigen Receptor、NAR)として知られている免疫グロブリンアイソタイプ由来であってよい。NAR(「IgNAR」)の可変領域由来の単一ドメイン分子の生成法は、国際公開第03/014161号及びStreltsov(2005)Protein Sci.14:2901~2909に記載されている。
いくつかの実施形態では、sdAbは、組み換え体、CDRグラフト化、ヒト化、ラクダ化、脱免疫化、及び/又はin vitro産生させたもの(例えば、ファージディスプレイによって選択される)である。いくつかの実施形態では、sdAbは、ヒト重鎖セグメントを発現するトランスジェニックマウス又はラットによって産生されるヒトsdAbである。例えば、米国特許出願公開第20090307787(A1)号、米国特許第8,754,287号、米国特許出願公開第20150289489(A1)号、同第20100122358(A1)号、及び国際公開第2004049794号を参照されたい。いくつかの実施形態では、sdAbは親和性成熟している。
VHHドメインを含むsdAbは、ヒト化してヒト用配列を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるVHHドメインのFR領域は、ヒトVHフレームワーク領域に対して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はそれ以上のうちのいずれか1つであるアミノ酸配列相同性を含む。1つの典型的な種類のヒト化VHHドメインは、VHHが、Kabatナンバリングによる45番目の位置において、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、スレオニン、アスパラギン、又はグルタミンからなる群由来のアミノ酸、例えば、L45と103番目の位置におけるトリプトファンを有することを特徴とする。このように、この種類に属するポリペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、かかるポリペプチドは、それによる望まれない免疫応答が予想されず、更なるヒト化の負担なく直接ヒトに投与できる。
他の例示の種類のヒト化ラクダ科sdAbは国際公開第03/035694号に記載されており、ヒト由来又は他の種の従来の抗体に典型的に見られる疎水性FR2残基を含むが、二重鎖抗体由来のVHに存在する保存されたトリプトファン残基を置換している、103番目の位置の荷電アルギニン残基による親水性の損失を代償している。このように、これら2つの種類に属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、かかるペプチドは、それによる望まれない免疫応答が予想されず、更なるヒト化の負担なく直接ヒトに投与できる。
いくつかの実施形態では、MABPは、天然に産生されたsdAb又はその誘導体、例えばラクダ科sdAb、又はラクダ科sdAb由来のヒト化を含む。いくつかの実施形態では、sdAbはラマから得られる。いくつかの実施形態では、sdAbを更に遺伝子操作し、ヒト抗体に通常は見られない配列(例えば、CDR領域又はCDR-FR接合部)を除去する。
いくつかの実施形態では、MABPは、CH1ドメインに融合した第1のsdAb(例えば、VHH)を含む第1のポリペプチド鎖と、CLドメインに融合した第2のsdAb(例えば、VHH)を含む第2のポリペプチド鎖とを、含む、Fab様ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、同じエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、異なるエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、Fab様ドメインの各ポリペプチド鎖は、第1の抗原結合部分のポリペプチド鎖のN末端、C末端又は内部位置に融合している。いくつかの実施形態では、Fab様ドメインの2本のポリペプチド鎖のうち一方は、第1の抗原結合部分のポリペプチド鎖のN末端、C末端又は内部位置に融合している。いくつかの実施形態では、MABPは、1つ又は2つ以上のFab様ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、MABPは、そのエピトープに好適な親和性を有するsdAbを含む抗原結合部分を含む。例えば、sdAbの親和性は、全体的親和性と、MABPの標的細胞又は組織への結合活性に影響を与える場合があり、それが更にMABPの効力に影響を与え得る。いくつかの実施形態では、sdAbは、高い親和性でそのエピトープに結合する。高親和性sdAbは、低いナノモル(10-9M)範囲の解離定数(Kd)、例えば、約5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.2nM、0.1nM、0.05nM、0.02nM、0.01nM、5pM、2pM、1pM、又はそれ以下のうち任意でそのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、低い親和性でそのエピトープに結合する。低親和性sdAbは、低いマイクロモル(10-6M)範囲以上のKdで、例えば、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、又はそれ以上のうち任意でそのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、中程度の親和性でそのエピトープに結合する。中程度の親和性のsdAbは、低親和性sdAbよりも低いが、高親和性sdAbよりも高いKdでそのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、中程度の親和性のsdAbは、約1nM~約10nM、約10nM~約100nM、約100nM~約500nM、約500nM~約1μm、約1nM~約100nM、又は約10nM~約500nM、又は約1nM~約1μmのうち任意の1つのKdで、そのエピトープに結合する。
いくつかの実施形態では、sdAbは、VH及びVLを含む抗原結合部分よりも、そのエピトープに対する強い親和性を有する。いくつかの実施形態では、sdAbは、VH及びVLを含む抗原結合部分よりも、そのエピトープに対する弱い親和性を有する。いくつかの実施形態では、sdAbとそのエピトープと、VH及びVLを含む抗原結合部分とそのエピトープとの間の親和性間の差は、少なくとも約2×、5×、10×、100×、1000×、又はそれ以上のうちいずれかである。いくつかの実施形態では、sdAbとそのエピトープとの間の親和性は、VH及びVLを含む抗原結合部分とそのエピトープとの間のそれに匹敵する。
いくつかの実施形態では、sdAbは、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、刺激性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、阻害性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、免疫チェックポイント分子に対するアゴニストである。いくつかの実施形態では、sdAbは、免疫チェックポイント分子に対するアンタゴニストである。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープである免疫チェックポイント分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、第2の免疫チェックポイント分子由来である。いくつかの実施形態では、第1のエピトープは、炎症促進性分子、例えば炎症促進性サイトカイン由来である。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、IL-1β、TNF-α、IL-5、IL-6、IL-6R、及びエオタキシン-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に低い親和性で結合する。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)CTLA-4に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、sdAbによって特異的に認識されるエピトープとは異なるCTLA-4のエピトープである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-1モノクローナル抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-L1モノクローナル抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、TIM-3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、TIM-3に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、TIM-3に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、TIM-3に低い親和性で結合する。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)TIM-3に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-1モノクローナル抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-L1モノクローナル抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、LAG-3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、LAG-3に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、LAG-3に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、LAG-3に低い親和性で結合する。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)LAG-3に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、TIM-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-1モノクローナル抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-L1モノクローナル抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、VISTAに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、VISTAに高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、VISTAに中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、VISTAに低い親和性で結合する。
したがって、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)VISTAに特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、TIM-3、LAG-3、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-1モノクローナル抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗PD-L1モノクローナル抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、細胞表面抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、sdAbは、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞又はナチュラルキラー細胞上の細胞表面抗原に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の腫瘍抗原に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の腫瘍抗原及び/又は第2の腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗HER-2モノクローナル抗体(トラスツズマブなど)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、CD3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CD3に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CD3に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CD3に低い親和性で結合する。
そのため、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)CD3に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗HER-2モノクローナル抗体(トラスツズマブなど)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、細胞外タンパク質、例えば分泌タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、炎症促進性分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、血管新生因子、例えばVEGFに特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、sdAbは、IL-1βに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、IL-1βに高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、IL-1βに中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、IL-1βに低い親和性で結合する。
そのため、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである炎症促進性分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)IL-1βに特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。βいくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、TNF-α、IL-5、IL-6、IL-6R、及びエオタキシン-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗TNF-αモノクローナル抗体(アダリムマブなど)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、sdAbは、エオタキシン-1、すなわち、CCL11に特異的に結合する。
そのため、いくつかの実施形態では、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、エピトープである炎症促進性分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)エオタキシン-1に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、IL-1β、TNF-α、IL-5、IL-6及びIL-6Rからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗IL-5モノクローナル抗体(メポリズマブなど)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
VH及びVLを含む抗原結合部分
本出願のMABPは、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、少なくとも1つの抗原結合部分を含む。このような抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる従来の完全長抗体、又はそれら由来の抗原結合フラグメントであってよい。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHドメインを含む重鎖と、VLドメインを含む及び軽鎖と、を含む、抗原結合フラグメントである。本明細書で想定される例示的な抗原結合フラグメントとして、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント;二重特異性抗体:線状抗体;単鎖抗体分子(scFvなど);並びに、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fc領域、例えばヒトFc領域を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG分子、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブクラスのうち任意の1つ由来である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及び/又はCDC(補体依存性細胞傷害)などの抗体エフェクター機能を媒介することができる。例えば、野生型Fc配列を有するIgG1、IgG2、IgG3サブクラスの抗体は、通常、CIq及びC3結合を含む補体活性化を示し、一方IgG4は補体系を活性化せず、CIq及び/又はC3に結合しない。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Fc領域のFc受容体に対する結合親和性を低下させる修飾を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域はIgG1 Fcである。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcは、233~236番目の位置に、例えばL234A及び/又はL235Aなどの1つ又は2つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域はIgG4 Fcである。いくつかの実施形態では、IgG4 Fcは、327、330及び/又は331番目の位置に突然変異を含む。例えば、Armour KL et al.,Eur J.Immunol.1999;29:2613;及びShields RL et al.,J.Biol.Chem.2001;276:6591を参照されたい。いくつかの実施形態では、Fc領域は、P329G変異を含む。
いくつかの実施形態では、Fc領域は、2つの同一ではない重鎖のヘテロ二量体形成を促進する修飾を含む。このような修飾されたFc領域は、非対称性設計を有する本明細書に記載されるMABPに対して特に興味深いものであり得る。いくつかの実施形態では、かかる修飾は、重鎖又は重鎖融合ポリペプチドの一方へのノブ修飾と、重鎖又は重鎖融合ポリペプチドの他方へのホール修飾を含む、knob-into-hole修飾である。一実施形態では、Fc領域は、CH3ドメイン中の2本の重鎖間の境界部内に変異を含み、このとき、i)一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基を側鎖がより大きいアミノ酸残基に置換することによって、一方の重鎖のCH3ドメイン中の境界部内に、他方の重鎖のCH3ドメイン中の境界部内の空洞部(「ホール」)中に配置できる突出部(「ノブ」)が作製されており、ii)他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基を側鎖がより小さいアミノ酸残基に置換することによって、第1のCH3ドメイン中の境界部内の突出部(「ノブ」)を内部に配置できる空洞部(「ホール」)が、第2のCH3ドメイン中の境界部内に作製されている。knob-into-hole修飾の例は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287009号、同第2007/0178552号、国際公開第96/027011号、同第98/050431号、及びZhu et al.,1997,Protein Science 6:781~788に記載されている。ヘテロ二量体形成を促進する別のFc領域への修飾も本明細書において想定される。例えば、静電的操作効果をFc領域内に遺伝子操作によって含め、Fc-ヘテロ二量体分子を提供できる(例えば、米国特許第4676980号及びBrennan et al.,Science,229:81(1985))。
いくつかの実施形態では、Fc領域は、Fabアーム交換を阻害する修飾を含む。例えば、IgG4 Fc中のS228P変異は、Fabアーム交換を阻害する。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、κ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、λ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる完全長抗体である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなるモノクローナル抗体(本明細書では「4本鎖抗体」とも称する)を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる多重特異性(例えば二重特異性)完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG1サブクラス、又は変異L234A及びL235Aを有するヒトIgG1サブクラスである、完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG2サブクラスである完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG3サブクラスである完全長抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトIgG4サブクラス、又は追加の変異S228Pを有するヒトIgG4サブクラスである、完全長抗体を含む。
当該技術分野において既知である任意の完全長4本鎖抗体又はそれら由来の抗原結合フラグメントを、本出願のMABPにおける第1の抗原結合部分として使用できる。臨床的に有効性、安全性、及び薬物動態プロファイルが証明されている抗体又は抗体フラグメントが特に興味深い。いくつかの実施形態では、当該技術分野において既知の抗体又は抗体フラグメントを更に遺伝子操作し、例えばヒト化又は変異誘発し、好適な親和性を有する変異体を選択した後、第2の抗原結合部分と融合してMABPを提供する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、当該技術分野において既知のモノクローナル抗体又は抗体フラグメントのVH及びVLドメインと、修飾重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域と、を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、当該技術分野において既知のモノクローナル抗体と、修飾Fc領域、例えば、S228P変異を有するIgG4 Fcと、を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト、ヒト化、又はキメラ型の完全長抗体又は抗体フラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、承認されている(FDA及び/又はEMAによって)又は開発中のモノクローナル抗体又は抗体フラグメント(Fabなど)由来である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、承認されている(FDA及び/又はEMAによって)又は開発中のモノクローナル抗体又は抗体フラグメント(Fabなど)である。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、阻害性免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合する、完全長抗体(アンタゴニスト抗体など)又はそれ由来の抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、刺激性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する、完全長抗体(アゴニスト抗体など)又はそれ由来の抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗PD-1抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブ及びニボルマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ又はアテゾリズマブである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ペンブロリズマブ又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号3のアミノ酸配列を含むVLドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分はIgG4 Fcを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分はIgG4 Fcを含む。
ペンブロリズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))は、癌免疫療法で使用されるヒト化抗体である。これは、プログラム細胞死1(PD-1)受容体を標的とする。この薬物は、転移性黒色腫の治療において最初に使用された。2014年9月4日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAのファストトラック開発プログラム下でKEYTRUDA(登録商標)を承認した。進行性黒色腫における使用が承認されている。2015年10月2日に、米国FDAは、KEYTRUDA(登録商標)を、その腫瘍がPD-L1を発現しており、別の化学療法剤による治療に失敗した患者における転移性非小細胞肺癌の治療に対して承認した。
イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))は、T細胞活性化の下方制御を阻止する、完全ヒト抗CTLA-4免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体(mAb)である。イピリムマブは、CTLA-4経路によって誘導されるT細胞阻害性シグナルを阻止するCTLA-4免疫チェックポイント阻害剤であり、腫瘍反応性Tエフェクター細胞の数を増加させる。イピリムマブをニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標))と組み合わせて使用し、非ヒト霊長類におけるPD-1及びCTLA-4受容体の同時阻害の効果が調べられた。OPDIVO(登録商標)は、腎細胞癌、黒色腫、NSCLC、及び一部のリンパ腫などのいくつかの腫瘍型の治療において、単剤療法として、又はイピリムマブとの組み合わせのいずれかにおいて、臨床効果が確認されている。最近、BMSは、黒色腫治療に対するOPDIVO(登録商標)とイピリムマブの免疫併用療法の治療結果について発表した。イピリムマブ単剤療法と比較して、併用療法は、非常に高い客観的奏効率(61%対11%)と22%の完全寛解率が得られた一方で、疾患進行率又は死亡リスクは60%減少した。この種の治療は、癌の臨床治療における免疫療法剤の異なる組み合わせに対する大いなる可能性を示した。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗HER2抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブである。
最も良く売れている5大治療用抗体の1つであるトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))は、HER2陽性乳癌患者の生存率を有意に増加させている、ヒト化抗HER2受容体モノクローナル抗体である。HER受容体は、細胞膜に埋め込まれており、細胞外由来の分子シグナル(EGFと称される分子)を細胞内に伝え、遺伝子のオンオフを行うタンパク質である。HERタンパク質、つまりヒト上皮成長因子受容体は、ヒト上皮成長因子に結合し、細胞増殖を刺激する。一部の癌、特にある種の乳癌では、HER2が過剰発現しており、癌細胞の無制限な複製の原因となる。しかし、乳癌患者のうち、15~20%のみがヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を増幅かつ過剰発現を呈しており、ほとんどのHER2患者はトラスツズマブに反応しない。また、HER2+患者の一部は、初期治療後にトラスツズマブに対する抵抗性を生じる。上皮成長因子であるRTKファミリーは4つのメンバー、EGFR、HER2、HER3及びHER4からなるため、これらの抗原のうち2つを標的とするためにいくつかの二重特異性抗体が開発されており、従来の単一特異性抗体に対する利点を示している。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、血管新生因子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗Ang2抗体又はその抗原結合フラグメント、例えばLC10である。
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、炎症促進性分子に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、炎症促進性分子は、IL-1β、TNF-α、IL-5、IL-6、IL-6R、及びエオタキシン-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、抗TNF-α抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗TNF-α抗体は、アダリムマブである。
例示的な多重特異性抗原結合タンパク質
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)CTLA-4に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-CH2-CH3-VHHを含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、CH3及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図4に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VHH-VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、VH及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図9に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CL-VHHを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、CL及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図11に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VHH-VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、VL及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図13に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VHH-VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VHH-VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、VL及びVHHドメイン、並びに/又は、VL及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図17に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VHH1-VHH2-VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、VHH1及びVHH2ドメイン、並びに/又は、VH及びVHH2ドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図18に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-VHH-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、CH1及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図19に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、N末端からC末端に、scFv-VHH-CH2-CH3を含むポリペプチドを含み、scFvがPD-1に特異的に結合し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、scFvは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、scFv及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図20に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-VHH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CL-VHH-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、CH1及びVHHドメイン、並びに/又は、CL及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図21に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、scFv-VHH-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VHH-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、scFvがPD-1に特異的に結合し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、scFvは、ペンブロリズマブ又はニボルマブ由来である。いくつかの実施形態では、scFv及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図22に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)TIM-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)LAG-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)VISTAに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)配列番号2のアミノ酸配列からなるVHドメインを含む重鎖と、配列番号3のアミノ酸配列からなるVLドメインを含む軽鎖と、を含む、第1の抗原結合部分と、(b)抗CTLA-4 sdAbを含む第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長ペンブロリズマブである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のN末端は、任意のペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の重鎖のC末端に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分のC末端は、任意のペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分の重鎖のN末端に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)CTLA-4に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VHH-VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、PD-L1に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがCTLA-4に特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、アテゾリズマブ由来である。いくつかの実施形態では、VH及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG4 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図9に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)TIM-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)LAG-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)VISTAに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(トラスツズマブなど)を含み、完全長抗体がHER2受容体に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)CD3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(LC10など)を含み、完全長抗体がAng2に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)VEGFに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 FCを含む。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-CH2-CH3-VHHを含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、Ang2に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがVEGFに特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、LC10由来である。いくつかの実施形態では、CH3及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG1 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図4に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VHH-VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、Ang2に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがVEGFに特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、LC10由来である。いくつかの実施形態では、VH及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG1 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図9に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VL-CL-VHHを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、Ang2に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがVEGFに特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、LC10由来である。いくつかの実施形態では、CL及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG1 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図11に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)N末端からC末端に、VH-CH1-CH2-CH3を含む第1のポリペプチドと、(b)N末端からC末端に、VHH-VL-CLを含む第2のポリペプチドと、を含み、VH及びVLが、Ang2に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、VHHがVEGFに特異的に結合する、二重特異性抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、VH及びVLドメインは、LC10由来である。いくつかの実施形態では、VL及びVHHドメインは、ペプチドリンカー、例えば配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを介して互いに融合している。いくつかの実施形態では、CH2及びCH3ドメインは、IgG1 Fc由来である。いくつかの実施形態では、BABPは、図13に示すような構造を有する。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(アダリムマブなど)を含み、完全長抗体がTNF-αに特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)IL-1βに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(メポリズマブなど)を含み、完全長抗体がIL-5に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)エオタキシン-1に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
MABPの特性
本明細書に記載されるMABPは、生物学的医薬品としての製造及び開発に適している。いくつかの実施形態では、MABPは、高発現レベルで組み換え的に産生できる。いくつかの実施形態では、MABPは、工業的製造に十分なレベルで組み換え的に産生できる。いくつかの実施形態では、MABPは、哺乳類細胞において一過性に発現できる。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞培養におけるMABPの発現レベルは、親4本鎖抗体に匹敵しており、例えば、親4本鎖抗体として、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%以下のうちいずれか1つの溶解性である。本明細書で使用するとき、「親4本鎖抗体」は、第1の抗原結合部分であるVH及びVLを含む、完全長4本鎖抗体などの抗体を指す。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞培養におけるMABPの発現レベルは、親4本鎖抗体よりも高い。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞培養(例えば、CHO細胞)におけるMABPの発現レベルは、少なくとも約10mg/L、15mg/L、20mg/L、30mg/L、40mg/L、50mg/L、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/L、110mg/L、120mg/L、150mg/L、又はそれ以上のうちいずれか1つである。胞培養におけるMABPの発現レベルは、当該技術分野において既知の方法、例えばSDS-PAGE分析、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)若しくは高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)を用いる分析によって測定できる。
いくつかの実施形態では、組み換え発現により産生されたMABPは、サイズ排除クロマトグラフィーによって均質又は実質的に均質になるまで精製してよい。いくつかの実施形態では、精製MABP中の単分散性分子(例えば、4本のポリペプチド鎖からなる二量体タンパク質などの、単量体MABP分子として)の割合は、例えば、クロマトグラフィーによって測定されるとき、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上のうちいずれか1つである。組成物中のMABPの均質性は、当該技術分野において既知の方法、例えばSDS-PAGE分析、動的光散乱(DLS)、又はHPLC若しくはFPLCを用いる分析によって測定できる。いくつかの実施形態では、精製によるMABPの収率は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、精製によるMABPの収率は、約70%~約95%である。
本明細書に記載されるMABPは、生物学的医薬品としての使用に適する様々な生物物理学的特性、例えば、高い溶解性、高い長期安定性、及び熱安定性などを更に有する。MABPの安定性は、粒径に基づいて溶解している異なる分子集団を特徴付ける、動的光散乱(DSL)などの当該技術分野において既知の方法によって測定できる。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、又はそれ以上は、非凝集体構造、すなわち、単一の単量体MABP分子、例えば、4本のポリペプチド鎖からなる二量体タンパク質である。いくつかの実施形態では、組成物中の凝集レベル、すなわち、複数のMABP分子が複合体として会合しているレベルは、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又はそれより高い割合以下のうち、いずれか1つである。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約5%が凝集体を形成するまでの期間は、約4℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、又はそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約5%が凝集体を形成するまでの期間は、室温付近、例えば25℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、又はそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、組成物中のMABPの少なくとも約10%が凝集体を形成するまでの期間は、体温付近、例えば37℃において、少なくとも約1日、2日、3日、4日、6日、7日、10日、2週間、又はそれ以上のうちいずれか1つである。
いくつかの実施形態では、MABPは、親4本鎖抗体又はsdAbに匹敵する溶解性を有しており、例えば、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%以下のうちいずれか1つの溶解性である。いくつかの実施形態では、MABPは、親4本鎖抗体又はsdAbよりも高い溶解性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、例えば、pH7.2のPBS緩衝液中に、少なくとも約50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mL、175mg/mL、200mg/mL、225mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、又はそれ以上のうちいずれか1つの濃度で溶解できる。MABPの溶解性は、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて、例えば、遠心分離フィルターを用いる濃縮後のタンパク質定量、又は、IgGを結合させた相互作用クロマトグラフィー(CIC)カラムにMABPを通すことによって測定できる。いくつかの実施形態では、相互作用クロマトグラフィー(CIC)カラムにおけるMABPの保持係数k’は、約0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、又はそれ以下のうちいずれか1つ以下である。
いくつかの実施形態では、MABPは、親4本鎖抗体又はその抗原結合フラグメントに匹敵する熱安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、親4本鎖抗体又はその抗原結合フラグメントよりも高い熱安定性を有する。熱安定性は、当該技術分野において既知の方法、例えば、キャピラリー示差走査熱量測定(DSC)及び段階的加熱を組み合わせたDLSを用いて測定できる。いくつかの実施形態では、MABPの凝集開始温度(Tagg)は、少なくとも約65℃、例えば少なくとも約66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、又はそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、MABPは、約65℃~約75℃の凝集開始温度(Tagg)を有する。いくつかの実施形態では、MABPの変性中間点温度(Tm)は、少なくとも約65℃、例えば少なくとも約66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、MABPは、約65℃~約75℃の変性中間点温度(Tm)を有する。
いくつかの実施形態では、MABPは、高い長期安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、約4℃において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、又はそれ以上のうちいずれか1つの期間安定である。いくつかの実施形態では、MABPは、高温で高い長期安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPは、室温、例えば約25℃以上において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、又はそれ以上のうちいずれか1つの期間安定である。いくつかの実施形態では、MABPは、体温、例えば約37℃以上において、少なくとも約1日、2日、3日、4日、6日、7日、10日、2週間、又はそれ以上のうちいずれか1つの期間安定である。いくつかの実施形態では、MABPの安定性を、加速安定性評価法、例えば、約40℃、50℃、60℃、70℃、又はそれ以上のうちいずれか1つにおいて試験し、より低温でのMABPの安定性を導き出す。いくつかの実施形態では、MABPは、高濃度、例えば少なくとも約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、又はそれ以上のうちいずれか1つにおいて高い長期安定性を有する。本明細書で使用するとき、「安定」な組成物は、沈殿物及び/又は凝集体を実質的に含まない(例えば、約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は以下のうちいずれか未満)。沈殿物は、光学分光法によって検出できる。凝集体は、例えば、DLSによって検出できる。
いくつかの実施形態では、MABPは、凍結融解サイクルにおいて高い安定性を有する。いくつかの実施形態では、MABPを含む組成物は、MABPの構造的完全性(例えば、凝集体形成)及び/又は活性を失うことなく、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10回、又はそれ以上のうちいずれか1つ、凍結融解できる。いくつかの実施形態では、MABPを含む組成物は、高濃度、例えば少なくとも約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、又はそれ以上のうちいずれか1つにおいて凍結融解できる。
本明細書に記載される多重特異性抗原結合タンパク質のうちいずれか1つ由来のフラグメント、例えばFab様ドメインが、更に提供される。
III.医薬組成物
本出願によって、MABPのうち任意の1つと、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、医薬組成物が更に提供される。医薬組成物は、所望の程度の純度を有するMABPを、任意の医薬的に許容されるキャリア、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合し、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態にすることによって調製できる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、高濃度のMABPを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のMABPの濃度は、少なくとも約50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mL、175mg/mL、200mg/mL、225mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、又はそれ以上のうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、高い熱安定性及び長期安定性を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、室温付近(例えば、約25℃)において、少なくとも約1日、3日、7日、2週間、3週間、4週間、又はそれ以上のうちいずれか1つの期間保管できる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、体温(例えば、約37℃)において、少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、7日、10日、2週間、又はそれ以上のうちいずれか1つの期間保管できる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、MABPの構造的完全性(例えば、凝集体形成)及び/又は活性を失うことなく、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10回、又はそれ以上のうちいずれか1つ、凍結融解できる。いくつかの実施形態では、医薬組成物の有効期間は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、2ヶ月、3ヶ月、又はそれ以上のうちいずれか1つである。
許容されるキャリア、賦形剤又は安定剤は、使用される用量及び濃度においてレシピエントに毒性がないものであり、緩衝剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、二亜硫酸ナトリウム)、保存剤、等張化剤、安定剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、キレート剤(例えば、EDTA)及び/又は非イオン性界面活性剤が挙げられる。
緩衝剤は、特に安定性がpH依存的である場合、治療有効性を最適化する範囲内のpHに制御するために使用される。緩衝剤は、好ましくは、約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在する。本出願での使用に好適な緩衝剤として、有機酸及び無機酸の両方、並びにそれらの塩が挙げられる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。また、緩衝剤は、ヒスチジン及び、Trisなどのトリメチルアミン塩を含んでもよい。
保存剤は、微生物の増殖を遅らせるために添加され、典型的には、0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本出願での使用に好適な保存剤として、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物);塩化ベンゼトニウム;チメロサール;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。
「安定剤」として知られる場合がある等張化剤は、組成物中の液体の浸透圧を調整又は維持するために存在する。タンパク質及び抗体などの大型で帯電している生体分子と共に使用されると、これらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用でき、それによって分子間及び分子内相互作用の可能性を低下させるため、「安定剤」と呼ばれることが多い。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1%~25重量%、好ましくは1~5%の間の任意の量で存在してよい。好ましい等張化剤として、多価糖アルコール、好ましくは三価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。
追加の賦形剤として、(1)充填剤、(2)溶解性増強剤、(3)安定剤、及び(4)変性や容器壁への付着を防止する剤のうち、1つ又は2つ以上として作用できる剤が挙げられる。このような賦形剤として、多価糖アルコール(上記);アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなどのアミノ酸;スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、myoinisitose、myoinisitol、ガラクトース、ガラクチトール、グリセリン、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコールなどの有機糖又は糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリンなどの低分子量タンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);ラフィノースなどの三糖類;及びデキストリン又はデキストランなどの多糖類が挙げられる。
非イオン性界面活性剤又は洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を助け、並びに、治療用タンパク質を撹拌による凝集に対して保護するために存在し、更には、活性治療用タンパク質、つまり抗体の変性を起こすことなく、製剤を表面せん断応力に曝露可能にもする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mL~約1.0mg/mL、好ましくは約0.07mg/mL~約0.2mg/mLの範囲で存在する。
好適な非イオン性界面活性剤として、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロクサマー(polyoxamers)(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用できるアニオン性洗剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。陽イオン性洗剤として、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
in vivo投与に使用される医薬組成物のためには、それらは無菌でなければならない。医薬組成物は、無菌濾過膜を通す濾過によって無菌化されてよい。本明細書の医薬組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈輸液バッグ又はバイアル内に入れられる。
投与経路は、好適な方法、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、動脈内若しくは関節内経路による注射若しくは注入、局所投与、吸入、又は、持続放出若しくは長期間放出手段において、長期間にわたる単回又は複数回のボーラス又は持続など、既知の許容される方法に従う。
持続放出性製剤を調製してもよい。好適な持続放出性製剤の例として、アンタゴニストを含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、造形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
また、本明細書の医薬組成物は、治療される特定の適応に対して必要な、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する2種類以上の活性化合物も含有してよい。あるいは、又は追加的に、組成物は、細胞傷害性剤、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、又は成長阻害剤を含んでよい。このような分子は、適応とする目的に有効な量の組み合わせで好適に存在する。
また活性成分は、例えば、コアセルベーション(coascervation)法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションで閉じ込められてもよい。このような手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th editionに開示されている。
MABPの例示的な製剤は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール、ジエチレントリアミン五酢酸(ペンテト酸)、及びポリソルベート80(Tween 80)を含む、pH6.0の液体製剤である。いくつかの実施形態では、MABPを、4%スクロース、50mMヒスチジン、50mMアルギニンを含む、pH6.0の液体処方中に配合する。
IV.使用方法
本明細書に記載される多重特異性抗原結合タンパク質、及びその組成物(医薬組成物など)は、診断、分子アッセイ、及び治療などの様々な用途に有用である。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、疾患又は状態の治療を必要とする固体におけるその方法があり、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
癌の治療方法
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fc又はIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の免疫チェックポイント分子に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の免疫チェックポイント分子及び/又は第2の免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、B7-H3、TIM-3、LAG-3、VISTA、ICOS、4-1BB、OX40、GITR、及びCD40からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VHを含む重鎖と、VLを含む及び軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、重鎖のN末端、軽鎖のN末端、Fc領域のN末端、重鎖のC末端、又は軽鎖のC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は完全長4本鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)CTLA-4に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)TIM-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)LAG-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、ペンブロリズマブ又はニボルマブ)を含み、完全長抗体がPD-1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)VISTAに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなるペンブロリズマブを含む第1の抗原結合部分と、(b)抗CTLA-4 sdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号1、8又は13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)CTLA-4に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に高い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に中程度の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、sdAbは、CTLA-4に低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)TIM-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)LAG-3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(例えば、デュルバルマブ又はアテゾリズマブ)を含み、完全長抗体がPD-L1に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)VISTAに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の腫瘍抗原に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第1の腫瘍抗原及び/又は第2の腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗HER-2モノクローナル抗体(トラスツズマブなど)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、腫瘍抗原に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)免疫エフェクター細胞(T細胞など)上の細胞表面抗原に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、HER2、BRAF、EGFR、VEGFR2、CD20、RANKL、CD38、及びCD52からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、完全長抗HER-2モノクローナル抗体(トラスツズマブなど)又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の血管新生因子(Ang-2など)に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の血管新生因子(VEGFなど)に特異的に結合するsdAb(例えば、VHH)を含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、腎癌、黒色腫、肺癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、癌(乳癌など)の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(トラスツズマブなど)を含み、完全長抗体がHER2受容体に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)CD3に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG4 Fcを含む。
本明細書に記載される方法は、固形癌及び液性癌の両方を含む様々な癌の治療に好適である。この方法は、初期、進行期及び転移性癌などの、全ての段階の癌に適用できる。本明細書に記載される方法を、アジュバント療法又はネオアジュバント療法中の、第1の療法、第2の療法、第3の療法、又は、当該技術分野において既知である別の種類のがん療法、例えば、化学療法、手術、放射線、遺伝子治療、免疫療法、骨髄移植、幹細胞移植、標的療法、低温療法、超音波療法、光線力学的療法、高周波アブレーションなどとの併用療法として用いることができる。
炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療方法
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2のエピトープに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、炎症性疾患又は自己免疫疾患は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び潰瘍性大腸炎)、大腸炎、乾癬、重症喘息、及び中等度から重度のクローン病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLが、第1の炎症促進性分子に特異的に結合する抗原結合部位を共に形成する、第1の抗原結合部分と、(b)第2の炎症促進性分子に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、炎症性疾患又は自己免疫疾患は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び潰瘍性大腸炎)、大腸炎、乾癬、重症喘息、及び中等度から重度のクローン病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の炎症促進性分子及び/又は第2の炎症促進性分子は、IL-1β、TNF-α、IL-5、IL-6、IL-6R、及びエオタキシン-1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(アダリムマブなど)を含み、完全長抗体がTNF-αに特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)IL-1βに特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、炎症性疾患又は自己免疫疾患は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び潰瘍性大腸炎)、大腸炎、乾癬、重症喘息、及び中等度から重度のクローン病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば二重特異性)抗原結合タンパク質と、医薬的に許容されるキャリアと、を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療を必要とする固体におけるその方法が提供され、MABPは、(a)2本の重鎖と2本の軽鎖からなる完全長抗体(メポリズマブなど)を含み、完全長抗体がIL-5に特異的に結合する、第1の抗原結合部分と、(b)エオタキシン-1に特異的に結合するsdAbを含む、第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分が互いに融合している。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、ヒト化、又はヒトsdAbである。いくつかの実施形態では、炎症性疾患又は自己免疫疾患は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び潰瘍性大腸炎)、大腸炎、乾癬、重症喘息、及び中等度から重度のクローン病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのN末端、Fc領域のN末端、2本の重鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端、又は、2本の軽鎖のうちの一方若しくはそれぞれのC末端において第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、化学的に第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ペプチド結合、つまりペプチドリンカーを介して第1の抗原結合部分に融合している。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは約30以下(例えば、約25、20、又は15以下のうちいずれか1つ)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合フラグメントは、Fc領域、例えばIgG1 Fcを含む。
投与量及び投与経路
本出願の医薬組成物の投与量及び所望の薬物濃度は、想定される特定用途に応じて変わり得る。適切な投与量又は投与経路の決定は、当業者において周知である。動物実験は、ヒトの治療に対する有効量の決定において、信頼性のある指標を提供する。有効量の外挿は、Mordenti,J.and Chappell,W.「The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics」,In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42~46に著される原則に従って実施できる。
本明細書に記載されるMABPのin vivo投与が使用されるとき、通常の投与量は、哺乳類の体重1日あたり約10ng/kg~約100mg/kg以上で可変であってよく、投与経路によって、好ましくは約1mg/kg/日~10mg/kg/日である。異なる製剤が異なる治療及び異なる疾患に有効であり、特定の器官又は組織の治療に意図された投与が、他の器官又は組織とは異なる方法での送達を必要とし得ることは、本出願の範囲内である。更に、投与量を、1回又は2回以上の別々の投与によって、又は持続的注入によって投与できる。数日以上にわたる繰り返し投与において、その状態に応じて、疾患症状の所望される抑制が生じるまで、治療を継続する。しかしながら、他の投与レジメンが有用であってよい。治療の進行は、従来技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回(例えば2、3、4、5、6、又はそれ以上の回数のいずれか)投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、又は1年に1回、投与される。いくつかの実施形態では、投与間隔は、約1週間~2週間、2週間~1ヶ月、2週間~2ヶ月、1ヶ月~2ヶ月、1ヶ月~3ヶ月、3ヶ月~6ヶ月、又は6ヶ月~1年のうち、いずれか1つである。特定の患者に対する最適な投与量及び治療レジメンは、疾患の兆候について患者をモニタリングし、それに応じて治療を調整することによって、医療分野における当業者によって容易に決定できる。
再溶解製剤又は液体製剤などが挙げられるが、これらに限定されない本出願の医薬組成物は、MABPによる治療を必要とする固体、好ましくはヒトに、既知の方法、例えば、単回又は一定時間にわたる持続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、又は吸入経路によって投与される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下(すなわち、皮膚下)投与によって個体に投与される。このような目的のため、注射器を用いて医薬組成物を注入してよい。しかし、医薬組成物の投与には、注入装置、インジェクターペン、オートインジェクター装置、無針装置、及び皮下パッチ送達システムなどの他の装置が存在する。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体の静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、点滴静注などの注入によって固体に投与される。免疫療法に対する注入法は当該技術分野において既知である(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676(1988)参照)。
V.調製方法
本出願は、MABPをコードする単離された核酸、かかる単離された核酸を含むベクター及び宿主細胞、並びに、MABP産生のための組み換え法も提供する。
MABPの組み換え産生では、完全長抗体又は第1の抗原結合部分の抗原結合フラグメント、及びsdAbをコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクターに挿入される。いくつかの実施形態では、完全長抗体又は第1の抗原結合部分の抗原結合フラグメントをコードする核酸は、ペプチドリンカーをコードする拡散を任意に介して第2の抗原結合部分であるsdAbをコードする核酸に、互いに対して全てが翻訳に対してインフレームで組み換え的に融合され、MABPをコードする核酸を提供する。MABP、その構成要素、又はsdAbをコードするDNAは、従来手順を用いて容易に単離され、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブの使用による)。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、使用する宿主細胞に一部依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物又は真核生物(通常は哺乳類)由来のいずれかである。別の方法としては、第1の抗原結合フラグメント及び第2の抗原結合フラグメントは、それぞれ第1の抗原結合フラグメント及び第2の抗原結合フラグメントをコードする核酸を含む原核生物又は真核生物の宿主細胞を用いて、それぞれ組み換え的に調製される。その後、発現された第1の抗原結合フラグメント及び第2の抗原結合フラグメントを化学的に結合し、精製してMABPを提供する。
1.原核細胞中のタンパク質産生
a)ベクター構築
本出願のMABPのポリペプチド構成をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組み換え技術を用いて得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離され、配列決定できる。別の方法としては、ヌクレオチド合成装置やPCR法を用いてポリヌクレオチドを合成できる。得られた後、ポリペプチドをコードする配列を、原核宿主において異種ポリヌクレオチドを複製かつ発現できる組み換えベクターに挿入する。本出願の目的において、当該技術分野において利用可能かつ既知である多くのベクターを使用できる。適切なベクターの選択は、主にはベクターに挿入される核酸の大きさと、ベクターによって形質転換される特定の宿主細胞に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅若しくは発現、又はその両方)、存在する特定の宿主細胞との適合性によって、様々な構成要素を含む。ベクターの構成要素としては、一般には、複製開始点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート及び転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
一般に、宿主細胞と適合する種に由来するレプリコン及びコントロール配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、通常は複製部位、並びに、形質転換細胞中での表現型選択が可能であるマーキング配列を含む。例えば、大腸菌は、典型的には、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含むため、形質転換細胞同定の簡便な手段を提供する。pBR322、その誘導体、又は他の微生物プラスミド若しくはバクテリオファージは更に、内因性タンパク質発現のために微生物によって使用できるプロモーターを含んでも、又は含むように修飾されてもよい。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例は、Carter et al.,米国特許第5,648,237号に詳述されている。
加えて、宿主微生物と適合するレプリコン及びコントロール配列を含むファージベクターは、これらの宿主に関連する形質転換ベクターとして使用できる。例えば、GEM(商標)-11などのバクテリオファージを、大腸菌LE392などの感受性のある宿主細胞の形質転換に使用できる組み換えベクターの作製に利用してよい。
本明細書に記載される発現ベクターは、それぞれのポリペプチド要素をコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置する、未翻訳の制御配列である。原核生物のプロモーターは、典型的には、誘導性及び恒常性の2種類に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の有無、又は温度の変化に応答して、その制御下でシストロンの転写レベルの増加を開始するプロモーターである。
様々な可能性のある宿主細胞によって認識される多くのプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によって元のDNAからプロモーターを除去し、ベクターに単離したプロモーター配列を挿入することによって、軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに操作可能に連結できる。標的遺伝子の直接増幅及び/又は発現に、天然のプロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方を使用できる。いくつかの実施形態では、一般に、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、転写率が高く、発現した標的遺伝子の収率を高くできるため、異種プロモーターを利用する。
原核宿主での使用に好適なプロモーターとして、PhoAプロモーター、ガラクタナーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、並びにハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが挙げられる。しかし、細菌で機能する他のプロモーター(例えば、他の既知の細菌プロモーター又はファージプロモーター)も同様に好適である。これらのヌクレオチド配列は公表されているため、当業者は、任意の必要とする制限部位を含めるためのリンカー又はアダプターを用いて、標的とする軽鎖及び重鎖をコードするシストロンに操作可能にライゲーションできる(Siebenlist et al.(1980)Cell 20:269)。
一態様では、組み換えベクター内の各シストロンは、膜を介して発現したポリペプチドを移動させる、分泌シグナル配列要素を含む。一般に、シグナル配列はベクターの要素であってよく、又は、ベクター内に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本出願の目的のために選択されたシグナル配列は、宿主細胞によって認識されて処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものでなくてはならない。異種ポリペプチド由来のシグナル配列を認識せず、処理しない原核宿主細胞において、そのシグナル配列を、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PheE、PelB、OmpA、及びMBPからなる群から選択される、原核シグナル配列で置換する。いくつかの実施形態では、発現系の両シストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列又はその変化型である。
いくつかの実施形態では、MABPの産生は、宿主細胞の細胞質内で起こることができ、そのため、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分に任意に融合される第1の抗原結合部分のVHドメインをコードするポリペプチド、及び第2の抗原結合部分に任意に融合される第1の抗原結合部分のVLドメインをコードするポリペプチドなどのポリペプチド要素が、発現され、折り畳まれ、集合して細胞質内で機能性MABPを形成する。ある宿主株(例えば、大腸菌trxB-株)は、細胞質をジスルフィド結合形成に適した条件にするため、発現したタンパク質サブユニットの適切な折り畳みと集合を可能にする。Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)。
本出願は、分泌され、適切に集合した本出願のMABPの収率を最大にするための、発現したポリペプチド要素の量的収率を調節できる発現系を提供する。このような調節は、ポリペプチド要素の翻訳強度を同時調節することによって、少なくとも部分的に達成される。翻訳強度を調節するための1つの手法は、Simmons et alの米国特許第5,840,523号に開示されている。これは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の変異を利用するものである。あるTIRについて、ある翻訳強度の範囲を伴う一連のアミノ酸又は核酸配列変異体を作製することによって、所望の発現レベルの特定の鎖に対してこの因子を調節するための簡便な手段を提供できる。TIR変異は、アミノ酸配列を変更し得るコドン変化をもたらすための従来の変異誘発手法によって生じさせることができるが、ヌクレオチド配列中のサイレント変化が好ましい。TIR中の変更として、例えば、シグナル配列の変更を伴うシャイン・ダルガーノ配列の数又はスペーシングの変更が挙げることができる。変異シグナル配列を生じるための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)コーディング配列の始めに「コドンバンク」を生成することである。これは、各コドンの3つ目のヌクレオチド位置を変化させることによって達成でき、また、ロイシン、セリン、アルギニンなどの一部のアミノ酸は、バンク作製を複雑にし得る複数の1つ目及び2つ目の位置を有する。この変異誘発法は、Yansura et al.(1992)METHODS:A Companion to Methods in Enzymol.4:151~158に詳述されている。
好ましくは、中に含まれる各シストロンについてある範囲のTIR強度を有する、ベクターセットを生じさせる。この限定セットにより、様々なTIR強度の組み合わせ下における、各鎖の発現レベル並びに所望のMABP産物の収率を比較する。TIR強度は、Simmons et alの米国特許第5,840,523号に詳述されるように、レポーター遺伝子の発現レベルを定量することによって測定できる。翻訳強度の比較に基づき、所望の個々のTIRが選択され、本出願の発現ベクター構築物に結合される。
b)原核宿主細胞。
本出願のMABPの発現に好適な原核宿主細胞として、グラム陰性菌又はグラム陽性菌などの古細菌及び真正細菌が挙げられる。有用な細菌の例として、大腸菌類(例えば、大腸菌)、桿菌類(例えば、枯草菌)、腸内細菌、シュードモナス属(例えば、緑膿菌)、ネズミチフス菌、セラチア・マルセッセンス、クレブシェラ属、プロテウス属、シゲラ属、根粒菌、ビトレオシラ属、又はパラコッカス属が挙げられる。一実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、大腸菌細胞が宿主として使用される。大腸菌株の例として、W3110株(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987)、pp.1190~1219;ATCC寄託番号27,325)及びその派生株、例えば、遺伝子型W3110 AfhuA(AtonA)ptr3 lac Iq lacL8 AompT A(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する33D3株(米国特許第5,639,635号)が挙げられる。大腸菌294(ATCC 31,446)、大腸菌B、大腸菌1776(ATCC 31,537)及び大腸菌RV308(ATCC 31,608)などの他の株及びその派生株も適している。これらの例は、限定的なものではなく例示である。確定した遺伝子型を有する上記細菌のうち任意のものの派生株を構築する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309~314(1990)に記載されている。一般的には、細菌細胞内のレプリコンの複製力を考慮して、適切な細菌を選択する必要がある。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410などの周知のプラスミドを用いてレプリコンを与えるとき、大腸菌、セラチア、又はサルモネラ属を宿主として好適に使用できる。
典型的には、宿主細胞は、タンパク質分解酵素の分泌量が最小限でなくてはならず、望ましくは、追加的にプロテアーゼ阻害剤を細胞培養内に加える場合がある。
c)タンパク質の産生
宿主細胞を、上記発現ベクターで形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地で培養する。形質転換は、DNAが染色体外要素として、又は染色体組み込み体によってのいずれかで複製可能であるように、原核宿主内にDNAを導入することを意味する。使用する宿主細胞によって、当該細胞に適した標準的手法を用いて形質転換を行う。一般的に、塩化カルシウムを利用するカルシウム処理が、実質的に細胞壁バリアを含む細菌細胞に対して使用される。別の形質転換方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用される更に別の手法は、電気穿孔法である。
本出願のMABPの産生に使用される原核細胞は、当該技術分野において既知であり、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖される。好適な培地の例として、必要な栄養素を加えたL培地(LB)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は、発現ベクターの構築物に基づいて選択された選択剤も含み、発現ベクターを含む原核細胞の増殖を選択的に可能にする。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖には、アンピシリンを培地に添加する。
単独で、又は複合窒素源などの別の添加物若しくは培地との混合物として投入される、炭素、窒素、無機リン酸塩源以外の任意の必要な添加物も、適切な濃度で含めてもよい。任意に、培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコール酸、ジチオエリトリトール及びジチオスレイトールからなる群から選択される、1つ又は2つ以上の還元剤を含有してよい。
原核宿主細胞は、好適な温度で培養される。大腸菌の増殖では、例えば、好ましい温度は、約20℃~約39℃、より好ましくは約25℃~約37℃の範囲であり、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、約5~約9の範囲の任意のpHであってよい。大腸菌では、pHは、好ましくは約6.8~約7.4、より好ましくは約7.0である。
発現ベクター中で誘導性プロモーターを用いる場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの転写を制御するため、PhoAプロモーターを用いる。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のためにリン酸制限培地中で培養される。好ましくは、リン酸制限培地はC.R.A.P培地である(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods(2002),263:133~147)。当該技術分野において既知であるように、使用したベクター構築物に応じて、様々な別の誘導因子を使用できる。
発現した本出願のMABPを宿主細胞のペリプラズム内に分泌させ、そこから回収する。タンパク質の回収は、典型的には、浸透圧刺激、超音波処理、又は細胞溶解などの一般的な手段によって微生物を破壊することを含む。細胞が破壊されると、細胞残屑又は細胞全体を、遠心分離又は濾過によって除去できる。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製できる。あるいは、タンパク質を培地中に移し、そこで単離してもよい。産生したタンパク質を更に精製するために、細胞を培養及び培養上清から取り出し、それを濾過して濃縮してもよい。発現したポリペプチドを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイなどの一般的な既知の方法を用いて、更に単離し、同定できる。
別の方法としては、タンパク質産生を発酵法によって大容量で実施する。様々な大規模流加発酵法が、組み換えタンパク質の製造に利用できる。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容積、好ましくは約1,000~100,000リットルの容積を有する。これらの発酵槽は、攪拌用インペラーを用いて、酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分配させる。小規模発酵は一般に、容積が約100リットル以下の発酵槽での発酵を指し、約1リットル~約100リットルの範囲であってよい。
発酵プロセスの間、典型的には、細胞を好適な条件下で、所望の吸光度、例えば、細胞が初期静止期にある段階のOD550が約180~220まで増殖させた後に、タンパク質発現の誘導が開始される。当該技術分野において既知であり、上記されるように、使用したベクター構築物に応じて、様々な誘導因子を使用できる。細胞は、誘導に先立ってより短い期間増殖させてよい。細胞は、通常は約12~50時間誘導されるが、より長い又はより短い誘導時間を使用してもよい。
本出願のMABPの製造収率及び品質を向上させるため、様々な発酵条件を変更してもよい。例えば、分泌されるポリペプチドの適切な集合と折り畳みを向上するため、シャペロンタンパク質、例えば、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルシス,トランスイソメラーゼ)を過剰発現する追加のベクターを用いて、宿主原核細胞を同時形質転換してもよい。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞中で産生された異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解性を促進することが証明されている。Chen et al.(1999)J Bio Chem 274:19601~19605;Georgiou et al.,米国特許第6,083,715号;Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100~17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106~17113;Arie et al.(2001)Mol.Microbiol.39:199~210。
発現した異種タンパク質(特に、タンパク質分解しやすいもの)のタンパク質分解を最小限にするため、タンパク質分解酵素が欠損した特定の宿主株を本出願に使用できる。例えば、宿主細胞株を改変し、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIなど既知の細菌プロテアーゼ、及びこれらの組み合わせをコードする遺伝子中に遺伝的変異を起こしてもよい。いくつかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用でき、例えば、Joly et al.(1998)、上記;Georgiou et al.,米国特許第5,264,365号;Georgiou et al.,米国特許第5,508,192号;Haraet al.,Microbial Drug Resistance,2:63~72(1996)に記載されている。
タンパク質分解酵素を欠損し、1つ又は2つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換された大腸菌株を、本出願のMABPをコードする発現系において宿主細胞として使用できる。
d)タンパク質の精製
本明細書で産生されるMABPを更に精製し、実質的に均質な調製物を更なるアッセイ及び用途のために得る。当該技術分野において既知の標準的なタンパク質精製法を利用できる。以下の方法、すなわち、イムノアフィニティカラム又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどのカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び、例えばSephadex G-75を用いるゲル濾過は、好適な精製法の例である。
いくつかの実施形態では、固相に固定化したプロテインAを、本明細書に記載されるFc領域を含むMABPのイムノアフィニティ精製に使用する。プロテインAは、抗体のFc領域に高い親和性で結合する黄色ブドウ球菌由来の411(Dの細胞壁タンパク質である。Lindmark et al(1983)J.Immunol.Meth.62:1~13。プロテインAが固定化された固相は、好ましくはガラス又はシリカ表面を含むカラムであり、より好ましくは細孔が制御されたガラスカラム又はケイ酸カラムである。いくつかの用途において、カラムは、混入物質の非特異的付着を防止するために、グリセロールなどの試薬でコーティングされている。続いて、固相を洗浄し、固相に非特異的に結合している混入物質を除去する。最後に、溶出することによって所望のMABPを固相から回収する。
2.真核細胞中のタンパク質産生
真核発現には、ベクターコンポーネントは、一般的には、シグナル配列、複製開始点、1つ又は2つ以上のマーカー遺伝子、及びエンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列のうち、1つ又は2つ以上を非限定的に含む。
a)シグナル配列コンポーネント
真核宿主で使用するベクターは、シグナル配列、又は、成熟タンパク質、つまりポリペプチドのN末端に特定の切断部位を有する別のポリペプチドをコードするインサートも含んでよい。選択された異種シグナル配列は、好ましくは宿主細胞によって認識されて処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳類細胞発現では、哺乳類のシグナル配列並びにウイルスの分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスのgDシグナルを利用できる。
このような前駆領域のDNAを、本出願のMABPをコードするDNAに、読み枠でライゲーションする。
b)複製開始点
一般的に、複製開始点コンポーネントは、哺乳類発現ベクターに必要ではない(SV40開始点が初期プロモーターに含まれるため、典型的にはそれのみを使用できる)。
c)選択遺伝子コンポーネント
発現及びクローニングベクターは、選択マーカーとも称される選択遺伝子を含有してもよい。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又はその他トキシン、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、又はテトラサイクリンに対する体制を付与する、(b)栄養要求性欠損を補完する、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えば、桿菌類のD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止する薬剤を利用するものである。異種遺伝子によって形質転換が成功したこれらの細胞は、薬剤耐性を与えるタンパク質を産生することによって、選択レジメンで生存する。このような優性選択の例は、薬剤であるネオマイシン、ミコフェノール酸及びヒグロマイシンを使用するものである。
哺乳類細胞に好適な選択マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチン脱炭酸酵素などの、本出願のMABPをコードする核酸を取り込む能力を有する細胞の同定を可能にするものである。
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、まず、DHFRの競合的拮抗薬であるメトトレキサート(Mtx)を含む培地中で全形質転換体を培養することによって識別される。野生型DHFRを利用するときの適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)である。
あるいは、DNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)などの別の選択マーカーをコードするポリペプチドによって、形質転換又は同時形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含む野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、又はG418などの選択剤を選択マーカーとして含有する培地中での細胞増殖によって選択できる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
d)プロモーター要素
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、所望のポリペプチド配列をコードする核酸に操作可能に連結されたプロモーターを含む。実質的に全ての真核遺伝子は、転写が開始される部位よりも約25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始点よりも70~80塩基上流にある別の配列は、CNCAAT領域(Nは任意のヌクレオチドであり得る)である。ほとんどの真核の3’末端は、コード配列の3’末端にポリアデニン鎖を付加するシグナルであり得る、AATAAA配列である。これらの配列の全てを、真核発現ベクターに挿入してよい。
原核宿主での使用に好適な他のプロモーターとして、phoAプロモーター、-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、並びにハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターが挙げられる。しかし、他の既知の細菌性プロモーターが好適である。細菌系で使用するプロモーターは、MABPをコードするDNAに操作可能に連結されるシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列も含むであろう。
哺乳類宿主細胞中でのベクター由来のポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから、得られるプロモーターによって制御されるが、これらのプロモーターが宿主細胞系に適合していることを条件とする。
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製開始点も含むSV40制限酵素断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限酵素断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを使用する哺乳類宿主中でDNAを発現する系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの変法が、米国特許第4,601,978号に記載されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下における、マウス細胞中でのヒトインターフェロンcDNAの発現について、Reyes et al.,Nature 297:598~601(1982)も参照されたい。別の方法としては、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復を、プロモーターとして使用できる。
e)エンハンサー構成要素
高等真核生物による本出願のMABPをコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。哺乳類遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が、現在では既知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用するであろう。例として、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化に対するエンハンサー要素については、Yaniv,Nature 297:17~18(1982)も参照されたい。エンハンサーを、ポリペプチドコード配列の5’又は3’の位置でベクター内にスプライスしてよいが、好ましくはプロモーターの5’側に位置付ける。
f)転写終結コンポーネント
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト又は他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含むであろう。このような配列は、通常は5’に、時折3’に存在する、真核生物又はウイルスDNA又はcDNAの非翻訳領域である。これらの領域は、ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分中に、ポリアデニル化フラグメントとして翻訳されたヌクレオチド部分を含む。1つの有用な転写終結コンポーネントは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号及びその明細書に開示される発現ベクターを参照されたい。
g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書のベクター中でDNAをクローニング又は発現するために好適な宿主細胞として、脊椎動物宿主細胞などの本明細書に記載される高等真核生物細胞が挙げられる。培養(組織培養)中の脊椎動物細胞の増殖は、一般的な手順になっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児性腎臓株(293、又は懸濁培養での増殖に対してサブクローンされた293細胞、Graham et al.,J Gen Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243~251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CRL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);buffaloラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス***腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及び、ヒト幹細胞種株(Hep G2)である。
宿主細胞を、MABP産生のための上記発現ベクター又はクローニングベクターで形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地で培養する。
h)宿主細胞の培養
本出願のMABPの産生に使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養されてよい。ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に適している。更に、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;又は同第5,122,469号;国際公開第90/03430号;同第87/00195号;又は米国特許第Re.30,985号に記載される培地のうち任意のものを、宿主細胞の培養培地として使用してよい。これらの培地のうち任意のものに、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝剤(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬)、微量元素(通常はマイクロモルオーダーの最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を添加してもよい。任意のその他必要とされる添加物を、当業者に既知である適切な濃度で含めてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞においてこれまで使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
i)タンパク質の精製
組み換え手法を用いる場合、MABPは、細胞内、ペリプラズム領域内で産生されても、又は、培地中に直接分泌されてもよい。MABP又はsdAbを細胞内で産生する場合、第1の工程として、微粒子残渣、宿主細胞又は溶解フラグメントのいずれかを、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去する。Carter et al.,Bio/Technology 10:163~167(1992)は、大腸菌のペリプラズム領域に分泌された抗体を単離する方法を説明している。簡潔に言うと、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分かけて細胞ペーストを解凍する。細胞残渣を、遠心分離によって除去してよい。MABP又はsdAbが培地中に分泌される場合、通常はまず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて、その発現系の上清を濃縮する。タンパク質分解を阻害するため、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の工程のいずれかに含めてよく、外来混入生物の増殖を阻害するため、抗生物質を含めてもよい。
細胞から調製されたタンパク質組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製法である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、MABP中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプに依存する。プロテインAを用いて、1、2、又は4本の重鎖を含むヒト免疫グロブリン系のMABPを精製できる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1~13(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒト3に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティリガンドが添加されているマトリックスは、ほとんどアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。細孔が制御されたガラス又はポリ(スチレン-ジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成できるよりも速い流速と、短い処理時間を可能にする。MABPがCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker(Phillipsburg,N.J.))が精製に有用である。回収するMABPやsdAbに応じて、タンパク質精製のためのその他手法、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も利用できる。
任意の予備的精製工程に続いて、所望のMABP又はsdAb及び混入物質を含む混合物を、約2.5~4.5のpHの溶出バッファーを用い、好ましくは低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で行われる、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけてよい。
3.抗体の製造
MABPのコンポーネント、例えば、従来の4本鎖抗体、抗原結合フラグメント、及びsdAbは、以下に記載する方法を含む、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて製造できる。
sdAb(例えば、VHH)は、当該技術分野において既知の方法を用いて、例えば、ラクダ科(ラクダ又はラマなど)を免疫化し、そこからハイブリドーマを得ることによって、又は、当該技術分野において既知の分子生物学的手法を用いてsdAbのライブラリをクローニングし、未選択ライブラリの個々のクローンを用いるELISAにより、若しくはファージディスプレイにより引き続き選択することによって、得ることができる。
1)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る自然発生突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)以外は同一である。したがって、修飾語である「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではない抗体の特徴を指す。
例えば、モノクローナル抗体は、最初にKohler et al.,Nature,256:495(1975)によって説明されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は、組み換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製してよい。
ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記のように免疫化し、免疫化に用いたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生する、又は産生能があるリンパ球を誘発する。別の方法としては、リンパ球をin vitroで免疫化してもよい。続いて、リンパ球を、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59~103(Academic Press,1986)。
免疫剤は、典型的には抗原性タンパク質又はその融合変異体を含むであろう。一般に、ヒト由来細胞が望まれる場合は末梢血リンパ球(「PBL」)を使用するか、又は、非ヒト哺乳類源が望まれる場合は脾臓細胞若しくはリンパ節細胞を使用するかのいずれかである。その後、リンパ球を、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて不死化細胞株と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59~103。
不死化細胞株は、通常は、形質転換された哺乳類細胞、特に、げっ歯類、ウシ及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常は、ラット又はマウス骨髄腫細胞株を用いる。このように調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、未融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する1種又は2種以上の物質を含む好適な培養培地中に、播種し、増殖する。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を防ぐ物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む(HAT培地)。
好ましい不死化骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定な高レベルの抗体産生を支持し、HAT培地などの培地に感受性があるものである。これらのうち、好ましいものは、マウス骨髄腫株、例えば、MOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍(Salk Institute Cell Distribution Center(San Diego,Calif.USA)から入手可能)及びSP-2細胞(及びその派生株、例えば、X63-Ag8-653)(American Type Culture Collection(Manassas,Va.USA)から入手可能)由来のものである。ヒトモノクローナル抗体の産生に対して、ヒト骨髄腫及びマウスヒトヘテロ骨髄腫細胞株も説明されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51~63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降法により、又は、ラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのin vitro結合アッセイによって測定する。
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイできる。好ましくは、モノクローナル抗体の結合親和性及び特異性を、免疫沈降法により、又は、ラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合アッセイ(ELISA)などのin vitro結合アッセイによって測定できる。このような手法及びアッセイ法は、当該技術分野において既知である。例えば、結合親和性は、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャチャード解析によって測定できる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、そのクローンを、限界希釈法によってサブクローニングし、標準的手法(Goding、上記)によって増殖させてよい。この目的のために好適な培地として、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。更に、ハイブリドーマ細胞を哺乳類中の腫瘍としてin vivoで増殖させてもよい。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地、腹水、又は血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されるもの、及び上記のような、組み換えDNA方法によって作製することもできる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来手順を用いて容易に単離され、配列決定される(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブの使用による)。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。単離後、DNAを発現ベクター中に挿入でき、それを続いて、組み換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成させるために、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトする。抗体をコードするDNAの細菌中での組み換え発現に関する総説として、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256~262(1993)及びPliickthun,Immunol.Revs.130:151~188(1992)が挙げられる。
更なる実施形態では、抗体は、McCafferty et al.,Nature,348:552~554(1990)に記載される手法を用いて作製された、抗体ファージライブラリから単離できる。Clackson et al.,Nature,352:624~628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581~597(1991)には、ファージライブラリを用いる、それぞれマウス及びヒト抗体の単離について記載されている。後続の文献は、chainシャフリングによる高親和性(nMオーダー)ヒト抗体の産生(Marks et al.,Bio/Technology,10:779~783(1992))、並びに、巨大ファージライブラリ構築戦略としてのコンビナトリアル感染及びin vivo組み換え(Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265~2266(1993))について記載している。したがって、これらの手法は、モノクローナル抗体の単離に対する従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法の実行可能な代替手段である。
また、DNAを、例えば、相同的なマウス配列の代わりに、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置き換えることによって(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、又は、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部若しくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾してもよい。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換され、ある抗原への特異性を有する1つの抗原結合部位と、別の抗原への特異性を有する別の抗原結合部位と、を含む、キメラ二価抗体が形成される。
本明細書に記載されるモノクローナル抗体は一価であってよく、その調製法は当該技術分野において既知である。例えば、1つの方法として、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組み換え発現が挙げられる。重鎖は、重鎖の架橋を防止するため、Fc領域中の任意の点において一般的に切断される。別の方法としては、架橋を防止するため、適切なシステイン残基を他のアミノ酸に置換し、又は、欠失させてもよい。一価抗体の調製には、in vitro法も適している。抗体のフラグメント、特にFabフラグメントを産生するための消化は、当該技術分野において既知の従来手法を用いて実施できる。
キメラ又はハイブリッド抗体も、架橋剤を含むものなどの合成タンパク質化学における既知の方法を用いて、in vitroで調製できる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築できる。この目的のために好適な試薬の例として、イミノチオラート及びメチル-4-メルカプトブチリミダートが挙げられる。
2)ヒト化抗体
抗体は、ヒト化又はヒト抗体を更に含んでよい。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はその他抗体の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体として、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置換される。またヒト化抗体は、レシピエント抗体又は移入されたCDR若しくはフレームワーク配列においても見られない、残基も含んでよい。一般に、ヒト化抗体は、実質的に全ての少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを含み、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンのものである。ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むだろう。Jones et al.,Nature 321:522~525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323~329(1988)及びPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.2:593~596(1992)。
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト源から移入された1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「移入」可変ドメインから取り込まれた「移入」残基と呼ばれることが多い。ヒト化は、Winter及び共著者、Jones et al.,Nature 321:522~525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323~327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534~1536(1988)の方法に従って、つまり、げっ歯類CDR又はヒト抗体の配列に対応するCDR配列を置き換えることによって、本質的に実施できる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、完全なものより実質的に小さいヒト可変ドメインが、非ヒト種の対応する配列により置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似部位由来の残基で置換された、ヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製に使用される、ヒト可変ドメイン(軽鎖及び重鎖の両方)の選択は、抗原性の低減に非常に重要である。いわゆる「最適フィット」法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列について、既知のヒト可変ドメイン配列の完全ライブラリをスクリーニングする。続いて、このげっ歯類に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認める。Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987)。別の方法は、全ヒト抗体の軽鎖及び重鎖の特定のサブグループのコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを利用するものである。いくつかのフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用できる。Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)。
抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持したままヒト化されることが更に重要である。この目的を達成するため、好ましい方法に従って、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いる親配列及び様々な概念的ヒト化生成物の解析プロセスによって、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を示して表示する、コンピュータプログラムが利用できる。これらの表示を精査すると、候補免疫グロブリン配列の機能におけるその残基の考えられる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原結合能に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する親和性が増大するなど所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的に、かつ最も実質的に関与する。
種々の形態のヒト化抗体が意図される。例えば、ヒト化抗体は、免疫複合体を生成するために1つ又は2つ以上の細胞傷害性剤と任意に結合する、Fabなどの抗体フラグメントであってよい。別の方法としては、ヒト化抗体は、無傷IgG1抗体などの無傷抗体であってよい。
いくつかの実施形態では、sdAbは、抗原に対するドメインの従来の親和性を低下させることなく、かつ異種種に対する免疫原性を減少させて、修飾、例えばヒト化される。例えば、ラマ抗体の抗体可変ドメイン(VHH)のアミノ酸残基を決定してよく、例えばフレームワーク領域内の1つ又は2つ以上のラクダ科アミノ酸を、そのポリペプチドが典型的な特性を失うことなく、すなわち、ヒト化が得られるポリペプチドの抗原結合能に顕著な影響を及ぼさずに、ヒトコンセンサス配列中に見られるヒト対応アミノ酸で置き換える。ラクダ科sdAbのヒト化は、単一ポリペプチド鎖中の限られた量のアミノ酸の導入及び変異誘発を必要とする。これは、2本の鎖、軽鎖と重鎖のアミノ酸変化の導入と、両鎖の集合の保存を必要とする、scFv、Fab’、(Fab’)2及びIgGのヒト化とは対照的である。
3)ヒト抗体
ヒト化の代替として、ヒト抗体を産生してもよい。例えば、今では、免疫化によって、内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能な、トランスジェニック動物(例えば、マウス)の作製が可能である。例えば、キメラ及び生殖系変異マウスの抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ結合型欠失により、内因性抗体産生を完全に阻害すると言われている。ヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイをこのような生殖系変異マウスに導入すると、抗原誘発によってヒト抗体が産生する。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255~258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993);米国特許第5,591,669号及び国際公開第97/17852号を参照されたい。完全ヒトsdAb産生能があるトランスジェニックマウス又はラットは、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許出願公開第20090307787(A1)号、米国特許第8,754,287号、米国特許出願公開第20150289489(A1)号、同第20100122358(A1)号、及び国際公開第2004049794号を参照されたい。
別の方法としては、ファージディスプレイ法を用いて、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーからヒト抗体及び抗体フラグメントをin vitroで製造できる。McCafferty et al.,Nature 348:552~553(1990);Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)。この手法によると、抗体Vドメイン遺伝子を、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdのメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかに、インフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面上の機能性抗体フラグメントとして提示する。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能性に基づく選択によって、その特性を提示する抗体をコードする遺伝子も選択する。これにより、ファージは、B細胞の一部の特性を模倣する。ファージディスプレイは、例えば、Johnson,Kevin S,and Chiswell,David J.,Curr.Opin Struct.Biol.3:564~571(1993)に論評されるように、様々な形態で実施できる。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイに使用できる。Clackson et al.,Nature 352:624~628(1991)は、免疫化マウスの脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムコンビナトリアルライブラリから、多種多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーを構築でき、多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581~597(1991)又はGriffith et al.,EMBO J.12:725~734(1993)に記載される方法に本質的には従って単離できる。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号も参照されたい。
Cole et al.,及びBoerner et al.,の手法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)及びBoerner et al.,J.Immunol.147(1):86~95(1991)。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されている、トランスジェニック動物、例えば、マウスに導入することによって、ヒト抗体を作製できる。誘発時、遺伝子再配列、集合、及び抗体レパートリーなどの全ての点において、ヒトで見られるものとよく似たヒト抗体産生が観察される。この方法は、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、並びに、次の科学文献、すなわち、Marks et al.,Bio/Technology 10:779~783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856~859(1994);Morrison,Nature 368:812~13(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845~51(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996)及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65~93(1995)に記載されている。
最終的に、ヒト抗体を、活性化B細胞によってin vitroで産生することもできる(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号)。
4)抗体フラグメント
特定の実施形態では、全抗体よりも抗体フラグメント、例えば抗原結合フラグメントを用いることが有利である。小さいサイズのフラグメントは迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍へのアクセスを向上につながり得る。
抗体フラグメントの産生のために、様々な手法が開発されている。従来は、これらのフラグメントは、無傷抗体のタンパク質分解によって得られた(例えば、Morimoto et al.,J Biochem Biophys.Method.24:107~117(1992);及びBrennan et al.,Science 229:81(1985))。しかし、これらのフラグメントは、今では、組み換え宿主細胞によって直接産生できる。Fab、Fv及びscFv抗体フラグメントは、全て、大腸菌中で発現し、そこから分泌され得るので、大量のこれらのフラグメントを容易に製造することができる。抗体フラグメントは、上記の抗体ファージライブラリから単離できる。別の方法としては、Fab’-SHフラグメントを大腸菌から直接回収し、化学的に連結して、F(ab’)2フラグメントを形成できる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163~167(1992))。別の方法によると、F(ab’)2フラグメントを、組み換え宿主細胞培養から直接単離できる。in vivo半減期が延長したFab及びF(ab’)2は、米国特許第5,869,046号に記載されている。他の実施形態では、選択される抗体は、単鎖Fvフラグメント(scFv)である。国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。抗体フラグメントは、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるような「線状抗体」であってもよい。このような線状抗体フラグメントは、単一特異性又は二重特異性であってもよい。
5)二重特異性及び多特異性抗体
二重特異性抗体(BsAb)は、同じタンパク質又は別のタンパク質上のものなど、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。あるいは、標的抗原発現細胞に対する細胞防御機構を集中させ、局在化するために、一方のアームは標的抗原に結合でき、別のアームは、T細胞受容体分子(例えば、CD3)などの白血球上のトリガー分子、又は、IgGのFc受容体(FcγR)、例えばFcγR1(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)に結合するアームと結合できる。このような抗体は、完全長抗体又は抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)由来であってよい。
また、二重特異性抗体は、標的抗原を発現する細胞に細胞傷害性剤を局所化するためにも使用できる。このような抗体は、所望の抗原に結合する一方のアームと、細胞傷害性剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサート又は放射性同位元素ハプテン)に結合する別のアームとを有する。既知の二重特異性抗体の例として、抗ErbB2/抗FcgRIII(国際公開第96/16673号)、抗ErbB2/抗FcgRI(米国特許第5,837,234号)、抗ErbB2/抗CD3(米国特許第5,821,337号)が挙げられる。
二重特異性抗体を作製する方法は、当該技術分野において既知である。完全長二重特異性抗体の従来の製造は、2本の免疫グロブリン重鎖/軽鎖対(この2本の鎖は異なる特異性を有する)の共発現に基づくものである。Millstein et al.,Nature,305:537~539(1983)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の任意の組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種類の異なる抗体分子を含む可能性がある混合物を生成し、これらのうち1種類のみが、正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティクロマトグラフィー工程によって行われるが、正しい分子の精製はやや煩雑であり、生成物の収率は低い。類似の手順が、国際公開第93/08829号及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655~3659(1991)に開示されている。
異なる方法によると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリンの重鎖定常ドメインと融合する。融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む、第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、及び所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物に同時トランスフェクトされる。これにより、構築物に使用される3本のポリペプチド鎖の比率が異なると最適な収率が得られる実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相互の割合の調節に、高い自由度を与える。しかしながら、少なくとも2本のポリペプチド鎖が同じ比率で発現すると高い収率が得られるとき、又は、比率が重要ではないときに、2本又は3本全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
この方法の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームに、第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームに、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)と、から構成される。この非対称構造によって、二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することで簡便な分離方法を提供するため、不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物を分離することを促進することが発見された。この方法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の生成に更なる詳細は、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照されたい。
国際公開第96/27011号又は米国特許第5,731,168号に記載の他の方法によると、一対の抗体分子間の境界部を遺伝子操作し、組み換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化できる。好ましい境界部は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の境界部の1つ又は2つ以上の小型アミノ酸側鎖を、より大型の側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)に置換する。第2の抗体分子の境界部上に、大型アミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニン又はスレオニン)と置換することによって、大側鎖と同一又は類似の大きさの補完「空洞部」が形成される。これは、ホモ二量体などの別の不要な最終生成物よりも、ヘテロ二量体の収率を増加させる仕組みを提供する。
抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成するための手法は、文献に記載されている。例えば、化学的結合を用いて二重特異性抗体を調製できる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、無傷抗体がタンパク質分解を受けて切断され、F(ab’)2フラグメントを生じる手順について記載している。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤である亜ヒ素ナトリウムの存在下で還元され、近接したジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。次に、生成されたFab’フラグメントをチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。その後、Fab’-TNB誘導体の1つをFab’-TNB誘導体に再変換して、二重特異性抗体を形成する。作製された二重特異性抗体を、酵素の選択的固定の薬剤として使用できる。
Fab’フラグメントは、大腸菌から直接回収でき、化学的に結合させて、二重特異性抗体を形成できる。Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217~225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の作製について記載している。各Fab’フラグメントを、大腸菌から別々に分泌させ、in vitroで化学的結合させて、二重特異性抗体を形成した。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合することができると共に、ヒトの***腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解作用を引き起こすことができた。
二価抗体フラグメントを、組み換え細胞培養から直接作製し、単離する様々な手法についても説明されている。例えば、二価のヘテロ二量体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547~1553(1992)。Fos及びJunタンパク質のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。抗体のホモ二量体を、ヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後再酸化して、抗体のヘテロ二量体を形成した。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444~6448(1993)によって説明される「ダイアボディ」法は、二重特異性/二価抗体フラグメントの作製の別の仕組みを提供している。このフラグメントは、同一鎖上で2つのドメイン間に対形成させるには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。結果として、一方のフラグメントのVH及びVLドメインが、別のフラグメントの相補的なVL及びVHドメインと対形成させられることによって、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(scFv)二量体を使用することによって、二重特異性/二価抗体フラグメントを作製する別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
3価以上の抗体が意図される。例えば、三重特異性抗体を調製してよい。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、ある分子上の2の異なるエピトープに結合し得る。あるいは、特定のタンパク質を発現している細胞に細胞防御機構を集中させるために、抗タンパク質アームは、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28又はB7)などの白血球上のトリガー分子、又は、IgGのFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)に結合するアームと結合できる。また、二重特異性抗体は、特定のタンパク質を発現する細胞に細胞傷害性剤を局所化するためにも使用できる。このような抗体は、タンパク質結合アームと、細胞傷害性剤や放射性核種キレート剤、例えばEUTUBE、DPTA、DOTA又はTETAに結合するアームと、を有する。別の所望の二重特異性抗体は、所望のタンパク質に結合し、組織因子(TF)に更に結合する。
6)多価抗体
多価抗体は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体よりも速く内部移行(及び/又は分解)され得る。本出願のMABPにおいて第1の抗原結合部分として使用される抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外)(例えば四価抗体)であってよく、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組み換え発現によって容易に製造できる。多価抗体は、二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含んでよい。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域又はヒンジ領域を含む(又はこれらからなる)。この状況では、抗体は、Fc領域と、Fc領域のアミノ末端にある3つ以上の抗原結合部位とを含む。本明細書の好ましい多価抗体は、3~約8つ、ただし好ましくは4つの抗原結合部位を含む(又はこれらからなるは)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、このときポリペプチド鎖は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含んでよく、このときVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖は、VH-CH1-可動性リンカー-VH-CH1-Fc領域鎖、又は、VH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含んでよい。本明細書の多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを更に含む。本明細書の多価抗体は、例えば、約2~約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでよい。本明細書で意図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを含み、所望により、CLドメインを更に含む。
7)ヘテロ共役抗体
ヘテロ共役抗体を、本出願のMABPの第1の抗原結合部分として用いることもできる。ヘテロ共役抗体は、共有結合した2つの抗体からなる。例えば、ヘテロ共役体中の一方の抗体をアビジンに、もう一方をビオチンに結合できる。このような抗体は、例えば、HIV感染を治療するため、不要な細胞に対する免疫系細胞を標的化のために提案されている(米国特許第4,676,980号)。国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号、及び欧州特許第0308936号。抗体が、架橋剤を含むものなどの合成タンパク質化学における既知の方法を用いて、in vitroで調製できることが意図される。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築できる。この目的のための好適な試薬の例として、イミノチオオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミド、及び、例えば、米国特許第4,676,980号に開示されるものが挙げられる。ヘテロ共役抗体は、任意の適当な架橋法を用いて作製できる。好適な架橋剤は、当該技術分野において周知であり、多くの架橋法と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
8)エフェクター機能操作
本出願のMABPを、Fcエフェクター機能に関して修飾する、例えば、抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を変更する(例えば、増強又は排除する)ことが望ましい場合がある。好ましい実施形態では、MABPのFcエフェクター機能を低減又は排除する。これは、抗体のFc領域に1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成され得る。別の方法として又は追加的に、システイン残基をFc領域に導入することにより、この領域での鎖間ジスルフィド結合形成を可能にできる。このように生成されたホモ二量体MABPは、内部移行能が向上している、及び/又は、補体媒介性細胞殺滅及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)が増加していることがある。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191~1195(1992)及びShopes,B.J.Immunol.148:2918~2922(1992)を参照されたい。向上した抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolff et al.,Cancer Research 53:2560~2565(1993)に記載されるヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製することもできる。別の方法としては、二重Fc領域を有し、それによって補体溶解及びADCC能が増強された抗体を操作することができる。Stevenson et al.,Anti-Cancer Drug Design 3:219~230(1989)を参照されたい。
抗体の血清半減期を増加させるに、例えば米国特許第5,739,277号に記載されるように、MABP内にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことができる。本明細書で使用するとき、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFc領域のエピトープであって、IgG分子のin vivo血清半減期に延長に貢献するものを指す。
9)その他アミノ酸配列の修飾
本明細書に記載されるMABPの単鎖抗体又は抗体コンポーネントなどの、抗体のアミノ酸配列修飾が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又はその他生物学的特性を改善するのに望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体核酸内に適切なヌクレオチド変化を導入することにより、又はペプチド合成により調製される。このような修飾として、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の、欠失及び/又は挿入及び/又は置換が挙げられる。最終構築物が所望の特性を有することを条件として、欠失、挿入、及び置換のいずれかの組み合わせを施して最終構築物に到達させる。アミノ酸変化により、グリコシル化部位の数や位置の変更など、抗体の翻訳後工程も変更できる。
変異誘発に好ましい位置として抗体の特定の残基又は領域を同定する有用な方法は、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれ、Cunningham and Wells Science,244:1081~1085(1989)に記載されている。ここでは、標的残基の1つ又は群の残基が同定され(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、及びグルタミン酸などの荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)で置換されて、アミノ酸抗原の相互作用に影響を及ぼす。その後、置換に対する機能感受性を呈するアミノ酸位置は、置換部位に、又はそれに対して更なる又は別の変異を導入することによって洗練される。そのため、アミノ酸配列変異を導入する部位が予め定められる一方で、変異自体の性質を予め定める必要がない。例えば、ある部位における変異性能を分析するため、アラニンスキャニング又はランダム変異誘発を標的コドン又は領域にて実施し、発現した抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入として、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまで長さに幅がある、アミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに、単一若しくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例として、N末端がメチオニル残基である抗体、又は、細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が挙げられる。抗体分子のその他の挿入変異体として、酵素に対する抗体のN-又はC末端への融合(例えば、ADEPT向け)又は、抗体の血清半減期を延長するポリペプチドが挙げられる。
他の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子内に、異なる残基によって置換された少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換型突然変異誘発に最も所望される部位として超可変領域が挙げられるが、FR変化も想定される。保存的置換を、「好ましい置換」という見出しで以下の表2に示す。このような置換が生物活性の変化をもたらす場合、表IIに「例示的な置換」と示されているか、又はアミノ酸分類に関して以下に更に記載されているように、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングする。
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えばシート若しくはらせん構造、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、又は、(c)側鎖の大きさ、を維持することについて、その効果が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。自然に存在する残基を、共通する側鎖特性に基づいて分類する。
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン
(2)中性親水性:システイン、セリン、スレオニン
(3)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸
(4)塩基性:アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニン
(5)鎖の向きに影響を与える残基:グリシン、プロリン
(6)芳香族:トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン。
非保存的置換は、これらの分類のうち1つを別の分類のものに交換することを伴う。
抗体の正しい構造維持に関与していない任意のシステイン残基を、一般にはセリンと置換し、分子の酸化安定性を向上し、別の場所での架橋を防ぐこともできる。反対に、システイン結合を抗体に加え、その安定性を向上することもできる(特に、抗体がFvフラグメントなどの抗体フラグメントのとき)。
特に好ましい置換変異体の種類は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の1つ又は2つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、結果として得られ、更なる開発のために選択された変異体は、元になった親抗体に対して改善された生物学的特性を有するであろう。このような置換変異体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟を含む。簡潔に言うと、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)を変異させ、各部位において可能な全てのアミノ置換を生じさせる。このようにして生成された抗体変異体を、各粒子内にパッケージングされたM13のgene IIIへの融合体として、繊維状ファージ粒子から一価でディスプレイする。次に、このファージディスプレイ変異体を、本明細書に開示されるように、生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。変異に関する超可変領域部位の候補を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を行い、抗原結合に大きく寄与する超可変領域の残基を同定できる。別の方法として、又は追加的に、抗原とその標的(例えば、PD-L1、B7.1)との間の接点を特定するため、抗原抗体複合体の結晶構造分析が有用な場合がある。このような接触残基及び隣接する残基は、本明細書に詳述される手法による置換の候補である。このような変異体が生成されると、一連の変異体を本明細書に記載されるスクリーニングにかけ、1つ又は2つ以上の関連アッセイで優れた特性を有する抗体を、更なる開発のために選択できる。
抗体のその他の種類のアミノ酸変異体は、抗体の従来のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、抗体内にある1つ又は2つ以上の炭水化物部分の欠損、及び/又は、その抗体に存在しない1つ又は2つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
抗体のグリコシル化は、典型的には、N-結合又はO-結合のいずれかである。N-結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付加を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンのトリペプチド配列(このとき、Xはプロリン以外のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付加のための認識配列である。そのため、ポリペプチド中にこれらトリペプチド配列のいずれかが存在することで、潜在的グリコシル化部位をもたらす。O-結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースのうち1つへの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンの付加を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンが用いられる場合もある。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上記トリペプチド配列のうち1つ又は2つ以上を含むように、アミノ酸配列を変更することにより簡便に達成される(N-結合型グリコシル化部位)。変更は、元の抗体の配列に1つ又は2つ以上のセリン又はスレオニン残基を付加、又はこれで置換することによっても達成できる(O-結合型グリコシル化部位)。
本出願のMABPに対するアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野において既知の様々な方法によって調製される。これらの方法として、天然源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)、又は、先に調製された変異体若しくは非変異体のオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR変異誘発、若しくはカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
10)その他の修飾
本出願のMABPを更に修飾し、当該技術分野において既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含有することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロ-ル)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中安定性から、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝型又は非分枝型であってよい。抗体に付加されたポリマー数は可変であってよく、2種類以上のポリマーが付加されている場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善する抗体の特定の性質又は機能が挙げられるが、これらに限定されない点、抗体誘導体を特定の条件下での治療に使用するか、などに基づいて決定できる。かかる手法及び別の好適な処方は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Alfonso Gennaro,Ed.,Philadelphia College of Pharmacy and Science(2000)に開示されている。
VI.キット及び製品
本明細書に記載されるMABPのうちいずれかを含む、キット、単位用量製品、及び製品が更に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物のうち任意の1つを含み、好ましくは使用説明書を提供するキットが提供される。
本発明のキットは、好適なパッケージに入っている。好適なパッケージには、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージ(例えば、密閉マイラー又はプラスチック袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットは、任意追加的に、緩衝材及び解釈的情報など追加構成要素を提供してよい。したがって、本願はまた、バイアル(密閉バイアルなど)、ボトル、ジャー、可撓性パッケージなどを含む製品を提供する。
製品は、容器と、この容器上にある又はこの容器に付随したラベル又は添付文書と、を含むことができる。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてよい。一般に、容器は、本明細書に記載の疾患又は障害を処置するのに有効な組成物を保持するものであり、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈輸液バッグ又はバイアルであってよい)。ラベル又は添付文書は、組成物が、個体内の特定の状態を処置するために使用されることを表示する。ラベル又は添付文書は、組成物を個体に投与するための説明書を更に含むことになる。ラベルは、再溶解及び/又は使用に関する指示が示され得る。医薬組成物を保持する容器は、再溶解された製剤の繰り返し投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする、多回使用バイアルであってよい。添付文書は、治療用製品の商品パッケージに習慣的に含まれている、このような治療用製品の使用に関しての指示、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を記載している説明書を参照する。加えて、製品は、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液及びブドウ糖液など、医薬上許容される緩衝液を含む第2の容器を更に含んでよい。これは、他の緩衝液、希釈液、濾過器、針、及び注射器を含めて、商業上及び利用者の立場からの他の好ましい材料を更に含んでよい。
キット又は製品は、医薬組成物の複数回の単位用量と、使用説明書と、を含んでよく、例えば、院内薬局及び調剤薬局など薬局での保管及び使用に十分な量でパッケージ化される。
以下の実施例は、本発明の純粋な例示であると意図されるものであり、したがって、本発明をいかなる方法でも制限しないと見なすべきである。以下の実施例及び詳細な説明は例証のために提供され、それらには限定されない。
実施例1:PD-1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質の構築、発現、及び生物物理学的特徴。
この実施例では、代表的なPD-1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質(BABP)の構築及び発現について説明する。それぞれ2本のポリペプチド鎖を以下のように含む、15種類の構築物を設計して発現させた。
構築物1~3(BCP-73、BCP-74、BCP-75):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(BCP-73にはsdAb-1、BCP-74にはsdAb-2、及びBCP-75にはsdAb-3)のVHHドメイン、ペプチドリンカー(ヒトIgG1ヒンジ領域由来の変更配列、例えば、配列番号13)、ペンブロニズマブの重鎖可変ドメインVH、及びIgG4の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。この3種類のBABPは、図9の構成を有する。
構築物4~6(BCP-78、BCP-79、BCP-80):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(BCP-78にはsdAb-1、BCP-79にはsdAb-2、及びBCP-80にはsdAb-3)のVHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、ニボルマブの重鎖可変ドメインVH、及びIgG4の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ニボルマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。この3種類のBABPは、図9の構成を有する。
構築物7(BCP-2):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロリズマブの重鎖可変ドメインVH、IgG4の重鎖定常ドメイン、ペプチドリンカー(GGGGSGGGS、配列番号1)、及び抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-2は、図4の構成を有する。
構築物8(BCP-16):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの重鎖可変ドメインVH、及びIgG4の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、ペプチドリンカー(ヒトIgG1ヒンジ領域、例えば、配列番号8)、ペンブロリズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-16は、図13の構成を有する。
構築物9(BCP-17):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの重鎖可変ドメインVH、及びIgG4の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、抗体κ軽鎖CLドメイン、ペプチドリンカー(配列番号8)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメインを含む。BCP-17は、図11の構成を有する。
構築物10(BCP-31):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号1)、ペンブロニズマブの重鎖可変ドメインVH、及びIgG4の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号1)、ペンブロリズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-31は、図17の構成を有する。
構築物11(BCP-32):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号1)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号1)、ペンブロニズマブの重鎖可変ドメインVH、及びIgG4の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-32は、図18の構成を有する。
構築物12(BCP-33):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロリズマブの重鎖可変領域、IgG4の定常CH1領域、ペプチドリンカー(配列番号8)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、及びIgG1のFc領域を含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-33は、図19の構成を有する。
構築物13(BCP-34):ポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、ペプチドリンカー(GGGGSGGGGSGGGGS、配列番号12)、ペンブロリズマブの重鎖可変ドメインVH、ペプチドリンカー(配列番号8)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、及びIgG1のFc領域を含む。BCP-34は、図20の構成を有する。
構築物14(BCP-35):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロリズマブの重鎖可変領域、IgG4の定常CH1領域、ペプチドリンカー(配列番号8)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、IgG4の定常CH1領域、及びIgG4のFc領域を含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメイン、抗体κ軽鎖CLドメイン、ペプチドリンカー(配列番号8)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-35は、図21の構成を有する。
構築物15(BCP-36):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、ペンブロニズマブの軽鎖可変ドメインVL、ペプチドリンカー(配列番号12)、ペンブロリズマブの重鎖可変ドメインVH、ペプチドリンカー(配列番号8)、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、及びIgG1のFc領域を含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb(sdAb-1)のVHHドメイン、及び抗体κ軽鎖CCLドメインを含む。BCP-36は、図22の構成を有する。
各BABPは、2コピーの第1のポリペプチドと、2コピーの第2のポリペプチドとからなる。Fabアーム交換を阻害するため、S228P変異をIgG4 Fc領域に導入してよい。更に、BABPのFc領域は、異なるアイソタイプ、例えばIgG1アイソタイプのIgG Fcと交換してもよい。IgG4アイソタイプのFc領域はFcγRに対する結合親和性が低いため、PD-1又はCTLA-4陽性細胞のADCC介在性の枯渇を避けるために、いくつかの実施形態ではIgG1アイソタイプより好ましい。
産生
上記15種類のBABP構築物のプラスミドを調製し、CHO-3E7細胞で一過性発現させた。BABPを一工程プロテインAクロマトグラフィーによって精製し、PBS緩衝液、pH7.4に保存した。精製BABPの組成及び純度を、還元及び非還元の両方の条件下でSDS-PAGEによって分析した。ポリペプチド鎖、並びに完全長BABP分子の大きさは、アミノ酸配列に基づいて計算された分子量と一致していた。溶液中のBABPの物理学的特性を更に調べるため、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて各タンパク質を分析した。全てのBABPが単一の主なピークを示したことは、単量体分子、すなわち、それぞれが2コピーの第1のポリペプチド鎖及び2コピーの第2のポリペプチド鎖を含む4本のポリペプチド鎖からなる二量体タンパク質である、非凝集BABP分子としての物理学的均質性を示す。このデータの概要を表1に示す。表1中のデータは、ほとんどのBABPの産生レベルが、通常のモノクローナル抗体に匹敵しており、BABPを哺乳類細胞で効率的に発現できることを示している。
精製したBABPを、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール、ジエチレントリアミン五酢酸(ペンテト酸)、及びポリソルベート80(Tween80)、pH6.0を含有する溶液中に配合することもできた。
安定性分析
種々のBABPの熱安定性を、MICROCAL(商標)VP-キャピラリー示差走査熱量測定(DSC、Microcal(Northampton,MA,USA)、Malvern Instruments)を用いて調べた。MICROCAL(商標)VP-キャピラリーDSCのユーザーマニュアルに従って、約370μLの各BABP(1mg/mL)及び対応する緩衝液を、96ウェルのプレートに加えた。対照セル及びサンプルセルを清浄に保つため、各サンプルの実験間に洗剤洗浄プログラムを含めた。全てのサンプルを、90℃・/時間(1.5℃/分)の走査速度で20℃~100℃まで受動モードで走査した。収集したデータを、ORGIN(商標)7.0(Northampton,MA,USA)系のVP-Capillary DSCソフトウェアを使用して分析した。全サーモグラムから対照とベースラインを差し引いて、タンパク質変性の見かけ上の中間点(Tm)及び見かけ上のエンタルピー(ΔH)を得た。様々なBABPの変性中間点温度(Tm)を、表2(DSC)に示す。
加熱中のより大きなタンパク質凝集体の形成を、動的光散乱(DLS)を用いて監視した。1.5mg/mLのサンプルについて、約0.75℃の温度間隔で25℃~75℃の温度勾配を、DYNAPRO(登録商標)NANOSTAR(登録商標)プレートリーダー(Wyatt(Santa Barbara,California))を用いて行った。20μLの各BABPサンプルを、WYATT(登録商標)使い捨てキュベットに加え、その後、蒸発を防ぐためにサンプルを10μLの鉱物油(Sigma 8410)でカバーした。測定は3回行い(各測定当たり5回取得)、各BABPサンプルを平均した。選択された温度間隔での実験中、熱走査速度は1.5℃/分と算出された。目標温度である75℃に達するまで熱を連続的に加えながら(~40分)、各サンプルを測定した。凝集温度(T
agg)を、DYNAMICS(商標)7.6.0.48ソフトウェア(Wyatt(Santa Barbara,California))におけるオンセット分析法を用いて分析した。様々なBABPの測定した凝集開始温度(T
agg)を表2に示す。
ヒスチジン緩衝液(pH6.0)中、>50mg/mL濃度のBABPサンプルを、4℃、25℃、37℃の一定温度で7日間インキュベートした。同様の組のサンプルについて、5回の凍結融解も行った。全てのサンプルの無傷の完全モノマー分子の画分をSEC-HPLCで評価し、データを記録して、製造業者によって提供されたCHROMELEON(商標)ソフトウェアを使用して解析した。表3は、BABPが、加熱条件下において、90%を超える完全性を維持していたことを示す。
溶解性分析
精製したBABPの溶解性について特徴を確認するため、1mg/mLの各BABP10mgを、MICROCON(登録商標)-30kDA遠心濃縮器(EMD Millipore)に、~2.5mLの量で加え、4000×g(4℃)で遠心分離した。量を定期的に確認し、残りのタンパク質溶液を使い切るまで、濃縮期にタンパク質を加えた。量が~20μLに達するか、又は、減少が止まるまで、濃縮を2時間続けた。1μLの濃縮BABPを199μLの各対応する緩衝液に希釈して得られたサンプルのUV測定を行うことによって、濃度を求めた。BABPを各対応する緩衝液で1mg/mLに希釈後、分析用SEC-HPLCを用いてサンプルの凝集について評価した。表4は、BABPが、これらのストレス条件下において、完全性を維持していたことを示す。
相互作用クロマトグラフィー(CIC)カラムを用いて、精製したBABPの溶解性も測定した。プールしたマウス血清から精製したマウスポリクローナル抗体を、Sigma-Aldrichから購入した(I5381)。マウスポリクローナル抗体は、~30mg/mLで樹脂マトリックスに結合されていた。PBS緩衝液中の精製BABPを、それぞれ0.05~0.20mg/mLの範囲の濃度で、マウスIgG結合カラム及び対照カラムに注入した。保持時間を用いて、表4に報告する保持係数k’値を算出した。k’=(Vr-Vo)/Vo=(Tr-Tm)/Tm。Vrは、タンパク質結合カラムでのサンプルの溶出量を表し、Voは、対照カラムからの溶出量を表し、Trは、タンパク質結合カラムにおける保持時間を表し、Tmは対照カラムにおける保持時間を表す。同一カラムにおいて、多くのサンプルを2回実験した。k’値>0.6である抗体は、一般に、顕著に溶解性が低い。表4によると、全てのBABPが優れた溶解性を示した。
実施例2:PD-1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質のin vitro機能性アッセイ。
実施例1に記載の15種類の代表的なPD-1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質(BABP)を、次のin vitroアッセイで試験し、BABPによるPD-1及びCTLA-4の機能的遮断を評価した。
標的結合アッセイ
PD-1及びCTLA-4へのBABPの結合能は、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIOACORE(登録商標))、酵素結合免疫吸着測定法、蛍光支援セルソーター法(FACS)、又はこれらの組み合わせを用いて測定できる。分析は、活性化したT細胞で実施できる。
CHO細胞に発現したPD-1への様々なBABPの結合親和性を、蛍光活性化セルソーター(FACS)-系アッセイを用いて測定した。FACS分析用一次抗体として、BABPサンプルを調製した(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)。ヒトPD-1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度のBABPサンプルと混合した(両方とも96-ウェルプレートで)。ペンブロニズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標))を、抗PD-1抗体陽性対照として用いた。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1% BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、二次抗体として使用されるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-共役抗ヒトκ抗体(Jackson ImmunoResearch)を加え、室温で15分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析し、EC50値を算出した。表5に示されるように、FACS結合アッセイにより、BABPが、それぞれペンブロニズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))及びニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標))に匹敵するPD-1結合親和性を保持していたことが示された。
CHO細胞に発現したCTLA-4への15種類のBABPの結合親和性を、蛍光活性化セルソーター(FACS)-系アッセイを用いて測定した。FACS分析用一次抗体として、BABPサンプルを調製した(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)。ヒトCTLA-4を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の抗体と混合した(両方とも96-ウェルプレートで)。sdAb-1-Fc、sdAb-2-Fc、sdAb-3-Fc、及びイピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))を、抗CTLA-4抗体陽性対照として用いた。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1% BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次いで、二次抗体として使用されるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-共役抗ヒトκ抗体(Jackson ImmunoResearch)を加え、室温で15分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析し、EC50値を算出した。表5に示されるように、FACS結合アッセイにより、BABPが、Fcに融合した対応するsdAbに匹敵するCTLA-4への結合親和性を呈することが示された。また、BABPは、イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))に匹敵するCTLA-4への結合親和性を示した。
BABPのPD-1に対する結合動態を、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー、BIOACORE(登録商標)T200(GE Healthcare)を用いて測定した。50nMから開始し、3倍の段階希釈によって、異なる濃度のBABPサンプルを調製した。各BABPサンプルを、Fc捕捉法によってセンサーチップ上に固定した。抗原のPD-1を、分析物として使用した。解離(kd)及び会合(ka)速度定数は、BIOACORE(登録商標)T200評価用ソフトウェアを使用して得た。見かけの平衡解離定数(KD)は、kdのkaに対する割合から算出した。表5に示されるように、BABPは、ペンブロニズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))及びニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標))に匹敵するPD-1に対する結合動態を保持した。
BABPのCTLA-4に対する結合動態を、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー、BIOACORE(登録商標)T200(GE Healthcare)を用いて測定した。200nMから開始し、3倍の段階希釈によって、異なる濃度のBABPサンプルを調製した。各BABPサンプルを、Fc捕捉法によってセンサーチップ上に固定した。抗原のCTLA-4を、分析物として使用した。解離(k
d)及び会合(k
a)速度定数は、BIOACORE(登録商標)T200評価用ソフトウェアを使用して得た。見かけの平衡解離定数(K
D)は、k
dのk
aに対する割合から算出した。表5に示されるように、結合動態により、BABPが、Fcに融合した対応するsdAbに匹敵するCTLA-4への結合動態を呈することが示された。また、BABPは、バイオシミラーのイピリムマブと匹敵するCTLA-4への結合動態を有している。
FACS分析によるリガンド結合の阻害
BABPによるリガンド結合の阻害を、FACSアッセイを用いて評価した。
BABPによるPD-L1の阻害を評価するため、BABPサンプルを調製した(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)。ヒトPD-1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各BABP及び、ビオチンラベルを有する0.5μM hPD-L1-Fc融合タンパク質と混合した。バイオシミラーのペンブロリズマブ又はバイオシミラーのニボルマブを、抗PD-1抗体陽性対照として使用した。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1% BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次に、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。続いて、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析し、IC50値を算出した(表5)。競合アッセイにより、PD-1/PD-L1相互作用に対する、低濃度(1~10μg/mL)でのBABPの効率的阻害能が示された。表5の結合データは、代表的なPD1/CTLA-4 BABPの機能活性が、ペンブロニズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))及びニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標))に非常に類似していることを示している。
BABPによるB7-1(CTLA-4のリガンド)の阻害を評価するため、BABPサンプルを調製した(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)。ヒトB7-1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各BABP及び、ビオチンラベルを有する0.5μM hCTLA-4-Fc融合タンパク質と混合した。sdAb-1-Fc、sdAb-2-Fc、sdAb-3-Fc、及びイピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))を、抗CTLA-4抗体陽性対照として用いた。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1% BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次に、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。続いて、細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析し、IC50値を算出した(表5)。競合アッセイにより、CTLA4-B7-1相互作用に対する、低濃度(1~10μg/mL)でのBABPの効率的阻害能が示された。表5の結合データは、代表的なPD1/CTLA-4 BABPの機能活性が、対応するFcに融合したsdAb及びバイオシミラーのイピリムマブに類似していることを示している。
BABPの発現特性及び二重結合特性は、4本鎖抗体のVH及びVLの適切な対によって形成される抗原結合部位が提供する第1の特異性と、VHHが提供する第2の特異性と、を有する、BABPの二重特異性を明らかに示している。
in vitro機能アッセイ
BABPによるPD-1及びCTLA-4経路の遮断は、T細胞増殖、IFN-γ放出、IL-2分泌、又はPD-1若しくはCTLA-4経路のシグナル伝達によって駆動されるレポーター遺伝子の発現を監視する、種々バイオアッセイを用いて調べることができる。
BCP-73、BCP-74、BCP-75、BCP-78、BCP-79及びBCP-80の6種類のBABPを、in vitroでの生物活性評価のために選択した。PD-1/NFATレポーター-ジャーカット細胞を用いるPD-1/PD-L1細胞系アッセイでの抗PD-1中和抗体の生物活性の特徴を、表6に示す。この場合では、CHO-K1細胞は、ヒトPD-L1及び遺伝子操作を受けたT細胞受容体(TCR)活性化剤によって安定的に発現した。エフェクター細胞-PD-1/NFATレポータージャーカット細胞を、段階希釈したBABPと30分間予備インキュベートし、その後、遺伝子操作を受けたCHO-K1細胞と共に培養した。刺激~6時間後、ONE-STEP(商標)ルシフェラーゼ試薬を細胞に加え、NFAT活性を測定した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析し、EC
50値を算出した。レポーターアッセイにより、ペンブロニズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標)、及びニボルマブ(例えば、OPDIVO(登録商標))と同様の、全てのBABPのNFATシグナルの効率的活性化能が示された。
二重特異性抗体は、CTLA-4細胞系遮断アッセイを用いる表6に示されるように、CTLA-4とB7-1との間の結合を効率的に阻害することがわかる。簡潔に言うと、単離キット(Miltenyl Biotec)によって、PBMCからヒトCD4+ T細胞を精製した。各ウェルには、105個のCD4+ T細胞と、104個のCHO-K1/ヒトCD80(ヒトCD80を安定的に発現しているCHO-K1)を、最終実用量200μLで含めた。二重特異性抗体を、各ウェルに異なる濃度で加えた。抗体無添加を、バックグラウンド対照として使用した。ヒトIgG4を陰性対照として使用し、イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))を陽性抗CTLA4抗体対照として使用した。CTLA-4-Fc(GenScript、Z03373-50)を系に加え、反応を開始した。37℃/5% CO2インキュベーター中で24時間のインキュベーション後、IL-2測定(Cisbio)のために各試験ウェルから100μLの培地を取り出した。CTLA-4遮断バイオアッセイでは、T細胞によるIL-2の抗体濃度依存性分泌を利用して、試験抗体に対するEC50値を抽出するとともに、陽性対照である完全長抗CTLA-4抗体イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))についても抽出した。
BABPであるBCP-74、BCP-75、BCP-79及びBCP-80によるPD-1経路の阻害は、PD-L1を発現している標的細胞(樹状細胞など)、活性化T細胞、及び各BABPを含む混合リンパ球反応液(MLR)における、IL-2及びIFN-γの分泌レベルを測定することによって調べた。単離キット(Miltenyl Biotec)を用いて、PBMCからヒトCD4
+ T細胞及び同種単球を精製する。単球を樹状細胞に導入した。各ウェルには、10
5個のCD4
+ T細胞と、10
4個の同種樹状細胞を、最終実用量200μLで含める。各BABPを、各ウェルに異なる濃度で加えた。抗体を含まないウェルを、バックグラウンド対照として使用した。ヒトIgG4を陰性対照として使用し、ペンブロニズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))を陽性抗PD-1抗体対照として使用した。5% CO
2インキュベーター中、37℃にて72時間のインキュベーション後、IL-2及びIFN-γ測定(Cisbio)のために各試験ウェルから100μLの培地を取り出した。MLR中のIL-2及びIFN-γの濃度依存性分泌を利用して、PD-1に対するBABPのEC
50値を抽出し、対照PD-1抗体のEC
50値と比較する(対照抗体は、ペンブロリズマブ例えば、KEYTRUDA(登録商標)である)。表7に示されるように、種々BABPは、ペンブロリズマブ(例えば、KEYTRUDA(登録商標))に匹敵する阻害力を呈する。
実施例3:PD-1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質のin vivo抗腫瘍効果。
この実施例は、BABPのBCP-75及びBCP-79によるPD-1及びCTLA-4の機能的遮断を評価する、in vivo実験について記載する。抗腫瘍効果は、ヒトCTLA-4及びPD-1ノックインマウスにより腫瘍をきたしたモデルにおいて評価した。マウスにおけるCTLA-4及びPD-1の両方のヒト化により、マウス腫瘍異種移植モデルでのPD-1/CTLA-4 BABPの効果の、in vivoでの直接評価を可能にした。
マウス異種移植モデルは、腫瘍細胞をNSGマウスに導入することによって作製できる。MC38(マウス結腸腺癌細胞株)及びCT26(マウス結腸癌細胞株)などの腫瘍細胞株を用いて、結腸癌に対するマウスモデルを作製できる。マウス黒色腫細胞株であるB16を用いて、黒色腫に対するマウスモデルを作製できる。マウス腎皮質腺癌細胞株であるRencaを用いて、腎癌に対するマウスモデルを作製できる。
6~8週齢のヒトPD-1 KI雌性C57/BL6マウスの背側下部を剃毛し、1×106個の結腸癌細胞株MC38(75%(vol/vol)のRPMI(Life Technologies)及び25%(vol/vol)の標準濃度のMATRIGEL(登録商標)(Corning)の懸濁液50μL中)を皮下注入した。目視によって7日以内に腫瘍が生着しなかったマウスは、続く実験から除外した。MC38の生着後の7日目に開始し、腫瘍を毎日測定した。マウスを個々に処置コホートに分類し、全例について生着約10日後の、腫瘍が閾値である150mm3に達したときのみ、処置を開始した。処置期間中、デジタルノギス測定値及び体重測定値を3日毎に取得した。この実験では、10mg/kgのバイオシミラーのペンブロリズマブ、10mg/kgのバイオシミラーのニボルマブ、又は12.3mg/kgのBABP(BCP-75又はBCP-79)にて、マウスを16日間静脈内注射により処置した。この処置を4日毎に与えた。図23に示されるように、BCP-75及びBCP-79は両方とも、MC38同系マウスモデルにおいて効果的に腫瘍増殖を制御し、バイオシミラーのペンブロニズマブ及びバイオシミラーのニボルマブに匹敵する機能活性を示した。モック対照と比較して、3つの処置群はいずれも、MC38移植マウスの体重に影響を与えなかった(データなし)。
6~8週齢のヒトCTLA-4 KI雌性C57/BL6マウスの背側下部を剃毛し、1×106個の結腸癌細胞株MC38(75%(vol/vol)のRPMI(Life Technologies)及び25%(vol/vol)の標準濃度のMATRIGEL(登録商標)(Corning)の懸濁液50μL中)を皮下注入した。目視によって7日以内に腫瘍が生着しなかったマウスは、続く実験から除外した。MC38の生着後の7日目に開始し、腫瘍を毎日測定した。マウスを個々に処置コホートに分類し、全例について生着約10日後の、腫瘍が閾値である150mm3に達したときのみ、処置を開始した。処置期間中、デジタルノギス測定値及び体重測定値を3日毎に取得した。この実験では、10mg/kgのバイオシミラーのイピリムマブ、12.3mg/kgのBABP(BCP-75又はBCP-79)、又は6.7mg/kgのsdAb-2-Fc若しくはsdAb-3-Fcにて、マウスを16日間静脈内注射により処置した。この処置を4日毎に与えた。図24に示されるように、BCP-75及びBCP-79は両方とも、MC38同系マウスモデルにおいて効果的に腫瘍増殖を制御し、sdAb-2-Fc及びsdAb-3-Fcに匹敵する機能活性を示した。モック対照と比較して、3つの処置群はいずれも、MC38移植マウスの体重に影響を与えなかった(データなし)。
実施例4:PD-L1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質の構築、発現、及び生物物理学的特徴。
この実施例では、代表的なPD-L1/CTLA-4 BABPの構築及び発現について説明する。それぞれ2本のポリペプチド鎖を以下のように含む、2種類の構築物を設計して発現させた。
BCP-84:第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb-2のVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、アテゾリズマブの重鎖可変ドメインVH、及び非グリコシル化IgG1の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、アテゾリズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-84は、図9の構成を有する。
BCP-85:第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗CTLA-4 sdAb-3のVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、アテゾリズマブの重鎖可変ドメインVH、及び非グリコシル化IgG1の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、アテゾリズマブの軽鎖可変ドメインVL、及び抗体κ軽鎖CLドメインを含む。BCP-85は、図9の構成を有する。
BCP-84及びBCP-85はそれぞれ、2コピーの第1のポリペプチドと、2コピーの第2のポリペプチドとからなる。構築物のIgG1 Fc領域は、非グリコシル化IgG1である。更に、二重特異性抗原結合タンパク質のFc領域は、異なるアイソタイプ、例えば、S228P変異を有するIgG4に対する野生型IgG1アイソタイプのIgG Fcと交換してもよい。非グリコシル化IgGアイソタイプのFc領域はFcγRに対する結合親和性がないため、PD-L1又はCTLA-4陽性細胞のADCC介在性の枯渇を避けるために、いくつかの実施形態では野生型IgG1アイソタイプより好ましい。
産生
BCP-84及びBCP-85のプラスミドを調製し、CHO細胞で一過性発現させた。BABPを一工程プロテインAクロマトグラフィーによって精製し、PBS緩衝液、pH7.4に保存した。精製BABPの組成及び純度を、還元及び非還元の両方の条件下でSDS-PAGEによって分析した。ポリペプチド鎖、並びにBABP分子の完全長タンパク質の大きさは、アミノ酸配列に基づいて計算された分子量と一致していた。溶液中の2種のBABPの物理学的特性を更に調べるため、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて各タンパク質を分析した。両BABPが単一の主なピークを示したことは、単量体BABP分子としての物理学的均質性を示す。このデータの概要を表8に示す。
安定性分析
BABPの熱安定性及び凝集度を測定するため、DSC(示差走査熱量測定)及びDLS(動的光散乱)の実験を、実施例1に記載するように実施した。表9に示されるように、BCP-84及びBCP-85のTm及びTaggは、バイオシミラーのアテゾリズマブ(例えば、TECENTRIQ(登録商標))に匹敵している。
実施例5:PD-L1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質のin vitro機能性アッセイ。
BCP-84及びBCP-85を、次のin vitroアッセイで試験し、BABPによるPD-L1及びCTLA-4の機能的遮断を評価した。
標的結合アッセイ
PD-L1及びCTLA-4へのBABPの結合能は、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIOACORE(登録商標))、酵素結合免疫吸着測定法、蛍光支援セルソーター法(FACS)、又はこれらの組み合わせを用いて測定できる。分析は、活性化したT細胞で実施できる。
PD-L1及びCTLA-4の安定発現細胞株に発現したPD-L1及びCTLA-4への各BABPの結合を、蛍光活性化セルソーター(FACS)-系アッセイを用いて測定した。BABPサンプルを調製し(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)、PD-L1及びCTLA-4細胞とインキュベートした。BABPのBCP-84及びBCP-85に結合した細胞を、Alexa Fluor 488結合抗ヒト抗体(Jackson ImmunoResearch)で検出した。EC50は、GraphPad PRISM(商標)バージョン6.0で算出した。
PD-L1へのBCP-84及びBCP-85の結合動態は、CM5センサーチップ(Biacore)に捕捉されたHisタグ付きヒトPD-L1タンパク質を用いて決定した。50nMから開始し、3倍の段階希釈によって、各BABPの6段階の異なるサンプルを調製した。各BABPサンプルを抗原コーティングしたチップ上に流し、表面プラズモン共鳴法を使用して結合活性を測定した。
CTLA-4へのBCP-84及びBCP-85の結合動態は、CM5センサーチップ(Biacore)にコーティングされたHisタグ付きヒトCTLA-4タンパク質を用いて決定した。200nMから開始し、2倍の段階希釈によって、各BABPの6段階の異なるサンプルを調製した。各BABPサンプルを抗原コーティングしたチップ上に流し、表面プラズモン共鳴法を使用して結合活性を測定した。
表10に、PD-L1及びCTLA-4へのBCP-84及びBCP-85の親和性データを示す。
FACS分析によるリガンド結合の阻害
BCP-84及びBCP-85によるリガンド結合の阻害を、FACSアッセイによって評価した。
BABPによるPD-L1の阻害を評価するため、ヒトPD-1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各BABP(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)及び、ビオチンラベルを有する0.1μM hPD-1-Fc融合タンパク質と混合した。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1% BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次に、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。続いて、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析してIC50値を算出し、表10に示す。競合アッセイにより、PD-1/PD-L1相互作用に対する、バイオシミラーのアテゾリズマブと同様のBCP-84及びBCP-85の効率的阻害能が示される。
BCP-84及びBCP-85によるB7-1(CTLA-4リガンド)の阻害を評価するため、ヒトB7-1を発現しているCHO細胞を、接着培養フラスコから剥がし、様々な濃度の各BABP(1μMから開始し、3倍の段階希釈で10濃度)及び、ビオチンラベルを有する0.1μM hCTLA-4-Fc融合タンパク質と混合した。混合物を、室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1% BSAを含むPBS)で3回洗浄した。次に、PE/Cy5ストレプトアビジン二次抗体を混合物に加え、室温で15分間インキュベートした。続いて、細胞をFACS緩衝液で再度洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析してIC50値を算出し、表10に示す。競合アッセイにより、CTLA-4/B7-1相互作用に対する、対応するsdAb-Fc及びイピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))と同様のBCP-84及びBCP-85の効率的阻害能が示される。
in vitro機能アッセイ
BCP-84及びBCP-85によるPD-L1及びCTLA-4経路の遮断は、T細胞増殖、IFN-γ放出、IL-2分泌、又はPD-1若しくはCTLA-4経路のシグナル伝達によって駆動されるレポーター遺伝子の発現を監視する、種々バイオアッセイを用いて調べることができる。
表11は、PD-1/NFATレポーター-ジャーカット細胞を用いるPD-1/PD-L1細胞系アッセイでの抗PD-1中和抗体の生物活性に関するデータを示す。簡潔に言うと、CHO-K1細胞は、ヒトPD-L1及び遺伝子操作を受けたT細胞受容体(TCR)活性化剤によって安定的に発現した。エフェクター細胞-PD-1/NFATレポータージャーカット細胞を、段階希釈したBCP-84及びBCP-85と30分間予備インキュベートし、その後、遺伝子操作を受けたCHO-K1細胞と共に培養した。刺激~6時間後、ONE-STEP(商標)ルシフェラーゼ試薬を細胞に加え、NFAT活性を測定した。データを、非直線回帰を用いてPRISM(商標)(GraphPad Software(San Diego,CA))で解析してEC50値を算出し、表11に示す。競合アッセイにより、バイオシミラーのアテゾリズマブと同様の、BCP-84及びBCP-85の効率的NFATシグナル活性化能が示される。
BCP-84及びBCP-85によるPD-L1経路の阻害は、PD-L1を発現している標的細胞(樹状細胞など)、活性化T細胞、及びBABPを含む混合リンパ球反応液(MLR)における、IL-2の分泌レベルを測定することによって調べた。簡潔に言うと、単離キット(Miltenyl Biotec)を用いて、PBMCからヒトCD4+ T細胞及び同種単球を精製した。単球を樹状細胞に導入した。各ウェルには、105個のCD4+ T細胞と、104個の同種樹状細胞を、最終実用量200μLで含めた。各BABPを、各ウェルに異なる濃度で加えた。抗体を含まないウェルを、バックグラウンド対照として使用した。ヒトIgG1を陰性対照として使用し、バイオシミラーのアテゾリズマブを陽性抗PD-L1抗体対照として使用した。5% CO2インキュベーター中、37℃にて72時間のインキュベーション後、IL-2測定(Cisbio)のために各試験ウェルから100μLの培地を取り出した。MLR中のIL-2の濃度依存性分泌を利用して、PD-L1に対するBCP-84及びBCP-85のEC50値を抽出し、元の抗体であるアテゾリズマブのEC50値と比較した(表12参照)。
BABPによるCTLA-4経路の阻害は、CD80を発現している標的細胞、活性化T細胞、及び各BABPを含む混合リンパ球反応液における、IL-2の分泌レベルを測定することによって調べた。単離キット(Miltenyl Biotec)を用いて、PBMCからヒトCD4
+ T細胞を精製した。各ウェルには、10
5個のCD4
+ T細胞と、10
4個のCHO-K1/ヒトCD80(ヒトCD80を安定的に発現しているCHO-K1)を、最終実用量200μLで含めた。各BABPを、各ウェルに異なる濃度で加えた。抗体を含まないウェルを、バックグラウンド対照として使用した。ヒトIgG4を陰性対照として使用し、イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))を陽性抗CTLA4抗体対照として使用した。CTLA4-Fc(GenScript、Z03373-50)を系に加え、反応を開始した。5% CO2インキュベーター中、37℃にて24時間のインキュベーション後、IL-2測定(Cisbio)のために各試験ウェルから100μLの培地を取り出した。CTLA-4遮断バイオアッセイでのIL-2の濃度依存性分泌を利用して、CTLA-4に対するBABPのEC
50値を抽出し、対照CTLA-4抗体のEC
50値と比較した(対照抗体は、イピリムマブ(例えば、YERVOY(登録商標))である)(表11参照)。
実施例6:PD-L1/CTLA-4二重特異性抗原結合タンパク質のin vivo抗腫瘍効果。
この実施例は、BCP-84及びBCP-85によるPD-L1及びCTLA-4の機能的遮断を評価する、in vivo実験について記載する。抗腫瘍効果は、ヒトCTLA-4ノックインマウスにより腫瘍をきたしたモデルにおいて評価した。バイオシミラーのアテゾリズマブもマウスPD-L1に結合するため、マウスにおけるCTLA-4のヒト化により、マウス腫瘍異種移植モデルでのBABPであるBCP-84及びBCP-85の効果の、in vivoでの直接評価を可能にした。
マウス異種移植モデルは、腫瘍細胞をC57BL/6 CTLA-4 KIマウスに導入することによって作製した。このアッセイには、ヒトPD-L1を安定発現しているマウス結腸腺癌細胞株MC38を使用した。MC38-h PD-L1 KI細胞(107個)を、8週齢のC57BL/6 CTLA-4 KIマウスに皮下注射した。腫瘍サイズをノギスでを測定し、楕円の公式を改変した長さ×(幅)2/2によって、腫瘍量を計算した。腫瘍量が約90~130mm3に達したとき、マウスを無作為に異なる処置群に割り当て、2~6週間維持した。マウスには、腹腔内注射によって、溶媒対照、抗PD-L1抗体(バイオシミラーのアテゾリズマブ)、抗CTLA-4抗体(sdAb-2-Fc、又はsdAb-3-Fc)、バイオシミラーのアテゾリズマブ及び抗CTLA-4抗体(sdAb-2-Fc、又はsdAb-3-Fc)の併用、又はBABP(BCP-84又はBCP-85)を投与した。BABPの効果は、腫瘍サイズ及び腫瘍重量の阻害を調べることによって評価した。
図25に示されるように、マウス腫瘍モデルにおいて、バイオシミラーのアテゾリズマブと抗CTLA-4抗体(sdAb-2-Fc、又はsdAb-3-Fc)の併用は、いずれの単剤療法よりも高い腫瘍阻害効果を示した。特に、BCP-84及びBCP-85の抗腫瘍効果は、併用療法に匹敵していた。
実施例7:Ang2/VEGF二重特異性抗原結合タンパク質の構築、発現、及び生物物理学的特徴。
この実施例では、代表的なAng2/VEGF BABPの構築及び発現について説明する。それぞれ2本のポリペプチド鎖を以下のように含む、4種類の構築物を設計して発現させた。
構築物1(BCP-49):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗VEGF sdAbのVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、LC10(抗Ang2抗体)の重鎖可変ドメインVH、及びIgG1の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、LC10(抗Ang2抗体)の軽鎖可変ドメインVL、及び抗体λ軽鎖CLドメインを含む。BCP-49は、図9の構成を有する。
構築物2(BCP-50):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、LC10(抗Ang2抗体)の重鎖可変ドメインVH、IgG1の重鎖定常ドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、及び抗VEGF sdAbのVHHドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、LC10(抗Ang2抗体)の軽鎖可変ドメインVL、及び抗体λ軽鎖CLドメインを含む。BCP-50は、図4の構成を有する。
構築物3(BCP-51):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、LC10(抗Ang2抗体)の重鎖可変ドメインVH、及びIgG1の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、抗VEGF sdAbのVHHドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、LC10(抗Ang2抗体)の軽鎖可変ドメインVL、及び抗体λ軽鎖CLドメインを含む。BCP-51は、図13の構成を有する。
構築物4(BCP-52):第1のポリペプチドは、N末端からC末端に、LC10(抗Ang2抗体)の重鎖可変ドメインVH、及びIgG1の重鎖定常ドメインを含む。第2のポリペプチドは、N末端からC末端に、LC10(抗Ang2抗体)の軽鎖可変ドメインVL、抗体λ軽鎖CLドメイン、ペプチドリンカー(配列番号13)、抗VEGF sdAbのVHHドメインを含む。BCP-52は、図11の構成を有する。
4種のBABPのプラスミドを調製し、CHO細胞で一過性発現させた。BABPを一工程プロテインAクロマトグラフィーによって精製し、4%スクロース、50mMヒスチジン、50mMアルギニン、pH6.0の緩衝液に保存した。精製BABPの組成及び純度を、還元及び非還元の両方の条件下でSDS-PAGEによって分析した。鎖、並びにBABP分子の完全長タンパク質の大きさは、アミノ酸配列に基づいて計算された分子量と一致している。溶液中の4種のBABPの物理学的特性を更に調べるため、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて各タンパク質を分析した。4種全てのBABPが単一の主なピークを示したことは、単量体BABP分子としての物理学的均質性を示す。このデータの概要を表13に示す。
実施例8:Ang2/VEGF二重特異性抗原結合タンパク質のin vitro機能性アッセイ。
BABPのrhAng2及びrhVEGFに対する結合動態を、HBS-EP(10mM HEPES、pH 7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、及び0.05% Tween-20)を用いる、BIOACORE(登録商標)T200装置での表面プラズモン共鳴(SPR)法によって測定した。簡潔に言うと、標準的なアンミン結合キットを製造業者の説明書に従って使用して、CM5バイオセンサーチップ全体にヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体を直接固定した。精製したFIT-Igサンプルを、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的反応表面で捕捉するためにHEPES緩衝生理食塩水に希釈し、5μL/分の流速で反応マトリックス全体に注入した。会合及び解離速度定数である、k
on及びk
offを、30μL/分の連続流量下で決定した。動態データを表14に示す。Ang2/VEGF BABPの抗体親和性は、対応する4本鎖抗体であるLC10、又はFcフラグメントに融合した抗VEGF sdAbと同様である。
VEGFを標的とするAng2/VEGF BABPの生物活性を評価するため、***促進アッセイにHUVEC細胞を用いた。HUVEC細胞を、1ウェル当たり6×103個の細胞密度で6ウェルのプレートに播種し、10%仔ウシ血清、2mMグルタミン、及び抗生物質を添加した低グルコースダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(GIBCO)(増殖培地)中で培養した。続いて、Fcフラグメントに融合した抗VEGF sdAb(「sdAbVEGF-Fc」)を、1~5000ng/mLの範囲の濃度で加えた。2~3時間後、精製したrhVEGF165を3ng/mLの最終濃度で加えた。5~6日後、細胞をトリプシンに曝して剥がし、Coulterカウンターで計測した。平均細胞数からの変動は、10%を超えなかった。データを4パラメータのカーブフィッティングプログラムで解析した。表14に示されるように、4種のAng2/VEGF BABPは全て、sdAbVEGF-Fcと匹敵しているVEGFを標的とした生物活性を有する。
BABPによるAng-2阻害を評価するため、Ang-2の阻害によって誘導されたTie2のリン酸化を、次のように測定した。HEK293-Tie2細胞を、LC10抗体又は各BABPの存在下又は非存在下において、Ang-2で5分間刺激した。次に、サンドイッチELISAを製造業者の説明書に従って用いて、細胞溶解液中のリン酸化Tie2(「P-Tie2」)のレベルを定量した。IC50値は、GraphPad PRISM(商標)バージョン6を用いて決定した。表14に示されるように、4種のAng2/VEGF BABPは全て、LC10と匹敵しているAng2を標的とした生物活性を有する。
実施例9:Ang2/VEGF二重特異性抗原結合タンパク質のin vivo効果。
A375異種移植片を用いて、抗Ang2 sdAb及び抗VEGF抗体の単剤療法又は併用療法と比較する、実施例7~8に記載のAng2/VEGF BABPの抗腫瘍効果を評価した。
107個のA375細胞を、6週齢のBalb/cヌードマウスに皮下注射した。腫瘍サイズをノギスでを測定し、楕円の公式を改変した長さ×(幅)2/2によって、腫瘍量を計算した。腫瘍量が約90~130mm3に達したとき、マウスを無作為に異なる処置群に割り当て、2~6週間維持した。マウスには、溶媒対照分、LC10、sdAbVEGF-Fc、LC10+sdAbVEGF-Fc併用、又はBCP-49を、1週間に2回静脈内投与した。
1週間に2回腫瘍量を測定したデータを図26Aに示す。溶媒対照と比較して、sdAbVEGF-Fc、LC10+sdAbVEGF-Fc併用療法、及びBCP-49処置群において、腫瘍増殖の有意な阻害が観察された。特に、併用療法群と比較して、BCP49処置群において相乗活性が観察された。
研究終了後、腫瘍重量も測定した。図26Bに示されるように、腫瘍量の結果と一致して、BCP49は、腫瘍重量の低下においてLC10+sdAbVEGF-Fc併用療法よりも効果的であった。
本開示全体の全ての引用文献は、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。