以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
〔封止材用エポキシ樹脂組成物〕
本実施形態の封止材用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」、「組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂と、25℃で固体の硬化剤粒子とを含有する。また、上記硬化剤粒子における比表面積値(m2/g)と篩下積算分率50%の粒径D50(μm)とが、下記式(1)で表される関係を満たす。
4.0X-1 ≦ Y ≦ 8.3X-1 (1)
(式(1)中、Xは、粒径D50を示し、Yは、比表面積値を示す。)
〔エポキシ樹脂〕
エポキシ樹脂組成物が含有する、本実施形態のエポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(e1)」、「成分(e1)」、「(e1)」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、モノエポキシ化合物及び多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物が挙げられる。
モノエポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、及びグリシジルベンゾエートが挙げられる。
多価エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイドが挙げられる。
〔硬化剤粒子〕
本実施形態の硬化剤粒子(以下、「エポキシ樹脂用硬化剤粒子」、「エポキシ樹脂用硬化剤」、「硬化剤」ともいう。)は、25℃で固体であり、かつ、粒子の形状である。また、硬化剤粒子においては、該粒子の比表面積値(m2/g)と篩下積算分率50%の粒径D50(μm)とが下記式(1)で表される関係を満たす。
4.0X-1 ≦ Y ≦8.3X-1 (1)
(式(1)中、Xは、篩下積算分率50%の粒径D50(μm)を示し、Yは、比表面積値(m2/g)を示す。)
後述するように、硬化剤粒子においては、該粒子の篩下積算分率50%の粒径D50が、0.3μmを超えて12μm以下であることが好ましく、また、該粒子の篩下積算分率50%の粒径D50に対する篩下積算分率99%の粒径D99の比率(D99/D50)で表される粒度分布が、6.0以下であり、かつ、該粒子の含有水分量が、1.5%質量以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂用硬化剤は、上述したように構成されているため、封止材用エポキシ樹脂組成物を作製する際に、貯蔵安定性に優れる封止材用エポキシ樹脂組成物を提供することができる。より詳細には、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤は、その粉末の形状補正をすることによって、粉末の比表面積値を低下させ、硬化剤(粒子)同士の凝集を抑制し、1液型エポキシ樹脂用硬化剤とした後に封止材樹脂組成物に含有させることによって封止材に用いる反応性希釈剤、無機充填剤、硬化促進剤、溶剤等の様々な添加剤の長期貯蔵安定性に優れる封止材用エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
エポキシ樹脂用硬化剤の各構成について詳細に説明する。エポキシ樹脂用硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系硬化剤を主成分とするものが挙げられる。アミン系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、アミンアダクト系、変性ポリアミン系、脂肪族ポリアミン系、複素環式ポリアミン系、脂環式ポリアミン系、芳香族アミン系、ポリアミドアミン系、ケチミン系、ウレタンアミン系の硬化剤が挙げられる。これらの中でも、適度な反応性を有する観点から、低分子アミン化合物(a1)とアミンアダクトとからなるアミン系硬化剤が好ましい。ここで、アミン系硬化剤を「主成分とする」とは、硬化剤の総量(100質量%)に対して、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を含有することをいう。
アミン系硬化剤に用いられる低分子アミン化合物(以下、「低分子アミン化合物(a1)」、「成分(a1)」、「(a1)」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するが、三級アミノ基を有さない化合物;少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基とを有する化合物が挙げられる。
少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するが、三級アミノ基を有さない化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の三級アミノ基を有さない第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン等の三級アミノ基を有さない第二アミン類が挙げられる。
少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基とを有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、及びイソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類が挙げられる。
これらの低分子アミン化合物(a1)の中でも、適度な反応性を有する観点から、イミダゾール化合物が好ましい。すなわち、硬化剤粒子は、イミダゾール化合物を変性させたものを含むことが好ましい。
アミンアダクトとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、尿素化合物、イソシアネート化合物、及びエポキシ樹脂(e2)からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物と、アミン化合物(a2)との反応により得られるアミノ基を有する化合物が挙げられる。
カルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、及びダイマー酸が挙げられる。
スルホン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、エタンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸が挙げられる。
尿素化合物としては、特に限定されないが、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、及びt−ブチル尿素が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、及びポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、及び1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2−イル)−シクロヘキサンが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、及び1,5−ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。脂肪族トリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、及び1,3,6−トリイソシアネートメチルヘキサンが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートが挙げられる。上記ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、及びカルボジイミド型ポリイソシアネートが挙げられる。
アミンアダクトに用いられるエポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(e2)」、「成分(e2)」、「(e2)」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、モノエポキシ化合物及び多価エポキシ化合物のいずれか、及びそれらの混合物が挙げられる。モノエポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、及びグリシジルベンゾエートが挙げられる。多価エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイドが挙げられる。
エポキシ樹脂(e2)の全塩素量は、硬化性及び貯蔵安定性のバランスに優れた組成物を得る観点から、エポキシ樹脂(e2)の総量に対して、2500質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは2000質量ppm以下であり、さらに好ましくは1500質量ppm以下であり、よりさらに好ましくは800質量ppm以下であり、さらにより好ましくは400質量ppm以下であり、一層好ましくは200質量ppm以下であり、より一層好ましくは180質量ppm以下であり、さらに一層好ましくは100質量ppm以下であり、よりさらに一層好ましくは80質量ppm以下であり、さらにより一層好ましくは50質量ppm以下である。ここで、全塩素量とは、エポキシ樹脂(e2)中に含まれる有機塩素及び無機塩素の総量を示し、エポキシ樹脂に対する質量基準の値である。エポキシ樹脂の全塩素量は、下記の方法により測定される。
エポキシ樹脂(e2)をそれに含まれるエポキシ樹脂を全て抽出するまで、キシレンを用いて洗浄と濾過とを繰り返す。次に、抽出したエポキシ樹脂が含まれるろ液を100℃以下で減圧留去し、エポキシ樹脂を得る。得られたエポキシ樹脂試料1〜10gを、滴定量が3〜7mLになるよう精秤し、25mLのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定KOHのプロピレングリコール溶液25mLを加えて、20分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した滴定量より計算する。
また、エポキシ樹脂(e2)の全塩素量は、シェル形成反応のコントロールを容易にする観点から、0.01質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.02質量ppm以上であり、さらに好ましくは0.05質量ppm以上であり、よりさらに好ましくは0.1質量ppm以上であり、さらにより好ましくは0.2質量ppm以上であり、一層好ましくは0.5質量ppm以上である。さらに、全塩素量が0.1質量ppm以上であることにより、シェル形成反応が硬化剤を含むコア表面で効率よく行われ、より一層貯蔵安定性に優れた硬化剤が得られる傾向にある。
エポキシ樹脂(e2)の全塩素量の好ましい範囲は、0.01質量ppm以上200質量ppm以下であり、より好ましい範囲は0.2質量ppm以上80質量ppm以下であり、さらに好ましい範囲は0.5質量ppm以上50質量ppm以下である。
ここで、エポキシ樹脂(e2)の全塩素の内、1、2−クロロヒドリン基に含まれる塩素は、加水分解性塩素という。エポキシ樹脂(e2)中の加水分解性塩素量は、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは0.01質量ppm以上20質量ppm以下、さらに好ましくは0.05質量ppm以上10質量ppm以下である。加水分解性塩素量が50質量ppm以下であることにより、高い硬化性と貯蔵安定性とを両立する観点から好ましく、硬化物が優れた電気特性を示す傾向にある。
ここで、加水分解性塩素は、下記の方法により測定される。すなわち、エポキシ樹脂(e2)3gを50mLのトルエンに溶解し、これに0.1規定KOHのメタノール溶液20mLを加えて15分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した滴定量より計算する。
アミンアダクトに用いられるアミン化合物(以下、「アミン化合物(a2)」、「成分(a2)」、「(a2)」ともいう。)としては、例えば、上述した低分子アミン化合物(a1)の例として挙げたアミン化合物と同様のものが挙げられる。
上述したアミンアダクトの中では、エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミノ基を有する化合物が好ましい。エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミンアダクトは、未反応のアミン化合物(a2)を低分子アミン化合物(a1)として流用できるという観点からも好ましい。
エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミンアダクトは、例えば、エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物(a2)を、エポキシ樹脂(e2)のエポキシ基1当量に対して、アミン化合物(a2)の活性水素基が好ましくは0.5当量以上10当量以下、より好ましくは0.8当量以上5.0当量以下、さらに好ましくは0.95当量以上4.0当量以下となるような範囲で、必要に応じて溶剤の存在下において、例えば、50〜250℃の温度で0.1〜10時間反応させることにより得られる。エポキシ基に対する活性水素基の当量比を0.5以上にすると、ゲルパーミエーションクラマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布が7.0以下となるアミンアダクトを得るのに有利であり、その結果、アミンアダクトの流動性が高まる傾向にある。さらに、上記のようなアミンアダクトを用いることは組成物の保存安定性及び低温硬化性の観点から好ましい。当量比を10以下にすると、未反応のアミン化合物(a2)を回収せずにそのまま低分子アミン化合物(a1)として利用できるので有利である。
エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物(a2)とによりアミンアダクトを得る反応において、必要に応じて用いられる溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂用硬化剤の比表面積値は、式(1)で表される関係を満たすものであれば特に限定されないが、0.3以上30以下であることが好ましく、0.5以上25以下であることがより好ましく、0.7以上20以下であることがさらに好ましい。比表面積値が0.3以下であると、硬化速度が低下する傾向にあり、比表面積値が30以上であると、硬化剤粒子の凝集が大きく、安定性が低下する傾向にある。比表面積値が0.3以上30以下であるエポキシ樹脂用硬化剤を得るためには、所定の大きさへの粉砕やポーラス体を作製しない粉砕方法により得られる。ここで、比表面積値は、後述する実施例に記載された方法に準じて測定することができる。
エポキシ樹脂用硬化剤の篩下積算分率50%の粒径D50は、式(1)で表される関係を満たすものであれば特に限定されないが、0.3μm超12μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。粒径D50が12μm以下であると、均質な硬化物を得ることができる傾向にあり、粒径D50が0.3μm超であると、エポキシ樹脂用硬化剤間での凝集を抑制でき、薄いシェルの形成が容易となる傾向にある。粒径D50が0.3μm超12μm以下であるエポキシ樹脂用硬化剤を得るためには、力学的な粉砕や溶媒中での粒子成長を行えばよい。ここで、粒径D50は、後述する実施例に記載された方法に準じて測定することができる。
硬化剤粒子の粒度分布とは、篩下積算分率50%の粒径D50に対する篩下積算分率99%の粒径D99の比率(以下、単に「D99/D50」とも表す。)である。粒度分布において、粒子同士の凝集を防止する観点から、D99/D50は、6.0以下であることが好ましく、同様の観点から、より好ましくは5.5以下であり、さらに好ましくは5.0以下である。D99/D50が6.0以下であることにより、紛体粒子中の粗大粒子が少なく、凝集物の生成を抑制し、硬化物の物性が損なわれることを抑制する傾向にある。D99/D50は、小さければ小さいほど粒度の分布はブロードではないことを意味し、均質な硬化物を得やすく、良好な硬化性能が得られやすい。また、D99/D50の値が6.0以下であることにより、粒度分布が狭く、粒径の比較的大きな粒子が存在しにくくなるため、配合物を作製した際のギャップへの浸透性が優れる傾向にある。また、D99/D50は、1.2以上が好ましい。D99/D50が1.2以上であることにより、硬化剤粒子間に多くの隙間ができることを抑制する傾向にあり、好ましく、同様の観点から、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは1.7以上であり、よりさらに好ましくは2.0以上である。
硬化剤粒子における比表面積値(m2/g)と篩下積算分率50%の粒径D50(μm)とは、下記式(1)で表される関係を満たす。
4.0X-1 ≦ Y ≦ 8.3X-1 (1)
式(1)中、Xは、篩下積算分率50%の粒径D50(μm)を示し、Yは、比表面積値(m2/g)を示す。比表面積値と粒径D50とを上記関係を満たすよう調整するためには、例えば、表面改質を実施すればよい。また、Yが4.0X-1以上であることにより、粒子同士の凝集を抑制することとなり、Yが8.3X-1以下であることにより、エポキシ樹脂との混合後の安定性が向上する。
比表面積を調整したエポキシ樹脂用硬化剤の水分量は、硬化剤の質量(100質量%)に対して、1.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.6質量%以下である。水分量が1.5質量%以下であることにより、不具合の発生を抑制する傾向にある。すなわち、エポキシ樹脂用硬化剤の硬化性能の低下や保存安定性の劣化、粉としての流動性の低下による生産性の低下や、凝集物の発生によるエポキシ樹脂用硬化剤の分散性の低下、収率の低下等の不具合の発生を抑制する傾向にある。水分量が0.8質量%以下であることにより、補正形状後のブロッキングをより好ましく抑制でき、物性も安定する傾向にあり、同様の観点から、0.6質量%以下であるとさらに好ましい。なお、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤を作製する際には、比表面積と水分量とを調整して得られた本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤に対して、カプセル膜作製時にさらに水を含ませることで表面シェル形成効率がよく行われると共に、形成されるシェルがより貯蔵安定性及び耐溶剤性に優れた膜となる傾向にある。水の含有量は、比表面積、電量滴定を利用するカールフィッシャー法により測定できる。
硬化剤粒子において、粒径D50が、0.3μm超12μm以下であり、粒径D50に対する粒径D99の比率で表される粒度分布が、6.0以下であり、かつ含有水分量(上記水分量)が、該硬化剤粒子の質量に対して、1.5質量%以下であることが好ましい。これらの要件を全て満たすことにより、エポキシ樹脂用硬化剤の硬化性能の向上、保存安定性の向上、粉としての流動性の向上による生産性の向上、凝集物の発生によるエポキシ樹脂用硬化剤の分散性の向上、及び収率の向上が得られる傾向にある。
本実施形態の硬化剤粒子は、単層の硬化剤粒子であってもよいが、コアと該コアを被覆するシェルとを有するコアシェル型であることが好ましい。該コアとして用いるエポキシ樹脂用硬化剤粒子を、「エポキシ樹脂用硬化剤粒子(H)」、「硬化剤粒子(H)」、又は「硬化剤(H)」という。コアシェル型の硬化剤粒子は、エポキシ樹脂用硬化剤粒子(H)から形成されるコア(以下、「コア(C)」、「(C)」ともいう。)と、コア(C)を被覆するシェル(以下、「シェル(S)」、「(S)」ともいう。)と、を有し、シェル(S)が、波数1630cm-1以上1680cm-1以下の赤外線を吸収する結合基(以下、「結合基(x)」、「(x)」ともいう。)と、波数1680cm-1以上1725cm-1以下の赤外線を吸収する結合基(以下、「結合基(y)」、「(y)」ともいう。)と、波数1730cm-1以上1755cm-1以下の赤外線を吸収する結合基(以下、「結合基(z)」、「(z)」ともいう。)とを、少なくともその表面に有することがより好ましい。このように構成されているため、エポキシ樹脂用硬化剤由来の粒子同士の凝集比率が低減され、硬化性、貯蔵安定性、及び隙間浸透性のいずれにも優れるものとなる傾向にある。さらに、同様の観点から、エポキシ樹脂用硬化剤粒子(H)は、エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミンアダクトを主成分とすることがさらに好ましい。ここで、アミンアダクトを「主成分とする」とは、硬化剤粒子(H)の質量に対して、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を含有することをいう。
コア(C)を形成するための出発材料粒子(エポキシ樹脂用硬化剤(H))の粒子径は、メジアン径で定義される平均粒子径が、0.3μm超12μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10μm以下であることが好ましく、1.5μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。ここで、出発材料粒子の粒子径とは、レーザー回析・光散乱法で測定されるストークス径をいう。出発材料粒子の粒子径が12μm以下であると、均質な硬化物を得ることができる傾向にあり、粒子径が0.3μm以上であると、出発材料粒子間での凝集を抑制でき、薄いシェルの形成が容易となる傾向にある。
出発材料粒子は、25℃で固体である。出発材料粒子を熱風処理する際の熱風の温度は、好ましくは100℃以上400℃以下である。熱風の温度が100℃以上であると、コア表面の加熱を十分に行うことができ所望の円形度に容易にコントロールできる傾向にあり、熱風の温度が400℃以下であると、コア(C)の熱分解をより良好に抑制できる傾向にある。上記観点と同様の観点から、熱風温度は、より好ましくは150℃以上300℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上250℃以下である。
出発材料粒子の重量平均分子量は、50以上50000以下であることが好ましい。出発材料粒子の重量平均分子量が50以上であると、熱風処理の段階で粒子同士の融着をより良好に抑制でき、粒子径が大きくなり過ぎることを防止できる傾向にあり、重量平均分子量が50000以下であると、粒子の軟化温度が高くなりすぎず、熱風処理においてより容易に所望の円形度が得られる傾向にある。上記観点と同様の観点から、出発材料粒子の重量平均分子量の範囲は、より好ましくは70以上10000以下であり、さらに好ましくは100以上5000以下であり、よりさらに好ましくは500以上4000以下であり、さらにより好ましくは1000以上3000以下である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクラマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
コア(C)を形成するための出発材料粒子には、上述したアミン系硬化剤の他に、例えば、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸等の酸無水物系硬化剤;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等のフェノール系硬化剤;プロピレングリコール変性ポリメルカプタン、トリメチロールプロパンのチオグルコン酸エステル、ポリスルフィド樹脂等のメルカプタン系硬化剤;トリフルオロボランのエチルアミン塩等のハロゲン化ホウ素塩系硬化剤;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデカ−7−エンのフェノール塩等の四級アンモニウム塩系硬化剤;3−フェニル−1,1−ジメチルウレア等の尿素系硬化剤;トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン系硬化剤等の他のエポキシ樹脂用硬化剤(以下、「エポキシ樹脂用硬化剤(h1)」、「硬化剤(h1)」、「(h1)」)を併用することもできる。ただし、(h1)は、上記したもののみに限定されるものではない。
シェル(S)は、コア(C)を被覆するものであり、少なくとも第一シェル(以下、「シェル(S1)」、「(S1)」ともいう。)を含む。シェル(S1)は、コア(C)の表面を直接被覆しており、波数1630cm-1以上1680cm-1以下の赤外線を吸収する結合基(x)、波数1680cm-1以上1725cm-1以下の赤外線を吸収する結合基(y)、及び波数1730cm-1以上1755cm-1以下の赤外線を吸収する結合基(z)を有し、かつ、結合基(x)、(y)及び(z)の合計の濃度(Cx+Cy+Cz)に対する結合基(x)の濃度Cxの比率(Cx/(Cx+Cy+Cz))が、0.50以上0.75未満であることが好ましい。ここで、Cxはシェル(S1)中における結合基(x)の濃度を表し、Cyはシェル(S1)中における結合基(y)の濃度を表し、Czはシェル(S1)中における結合基(z)の濃度を表す。ここで、上記の赤外線吸収は、赤外分光光度計を用いて測定することができるが、特に、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)を用いることが好ましい。
結合基(x)は、好ましくはウレア結合基である。結合基(y)は、好ましくはビュレット基である。結合基(z)は、好ましくはウレタン結合基である。濃度比(Cx/(Cx+Cy+Cz))が0.50以上であると、耐溶剤性がより向上する傾向にある。また、濃度比(Cx/(Cx+Cy+Cz))が0.75未満であると、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤の粒子同士の融着及び凝集をより良好に抑制でき、より良好な粘度を確保できる傾向にある。その結果、エポキシ樹脂用硬化剤を安定した品質で管理することができ、貯蔵安定性をより向上させることができる傾向にある。
本実施形態のシェル(S)及び/又は(S1)は、ウレア基を有し、かつ、エステル基を実質的に有さないことが好ましく、ウレア基、ビュレット基及びウレタン基を有し、且つ、エステル基を有さないことがより好ましい。エステル結合部位は加水分解を受けやすいため、湿度が高い状態においてもシェル(S1)を十分に維持し、エポキシ樹脂用硬化剤の貯蔵安定性及び耐湿性や、これを含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の物性を十分に確保する観点から、上記構成を有するシェル(S)又は(S1)が好ましい。ここで、「エステル基を実質的に有さない」とは、シェルの構成材料としてシェル(S)又は(S1)にエステル基を有する化合物を用いていないことを意味する。よって、シェル(S)及び(S1)には、不純物として含有するエステル基を有する化合物が含まれていてもよい。
シェル(S1)としては、上述のコア(C)を形成するための出発材料となる粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)と、イソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましく、特にアミン系硬化剤とイソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましい。ここで、イソシアネート化合物としては、上述のコア(C)に含まれるアミンアダクトの原料の例として挙げたイソシアネート化合物が使用できる。
シェル(S1)がアミン系硬化剤又は他のエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とイソシアネート化合物との反応生成物である場合は、シェル(S1)が上述のコア(C)を形成するための出発材料となる粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とエポキシ樹脂との反応生成物である場合に比べて、結合基(x)、結合基(y)、及び結合基(z)の含有量がより増加する傾向にあり、そのようなシェル(S1)を有するマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤はより優れた貯蔵安定性や耐溶剤性を発揮できる傾向にある。
結合基(x)、結合基(y)、及び結合基(z)を含有する第一シェルは、特に限定されないた、出発材料粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とエポキシ樹脂とが反応する温度よりも低い温度で、出発材料粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とイソシアネート化合物とを反応させること等により得ることができる。
コアシェル型のエポキシ樹脂用硬化剤は、上述したエポキシ樹脂用硬化剤のD50に対するシェル(S)の厚さの比率は、1.5/100以上18/100以下であることが好ましい。コアシェル型のエポキシ樹脂用硬化剤は、このように構成されているため、保存安定性と硬化性とのバランスに優れる傾向にある。さらに、同様の観点から、エポキシ樹脂用硬化剤(H)は、エポキシ樹脂(e2)とアミン化合物との反応により得られるアミンアダクト(A)を主成分とすることが好ましい。ここで、アミンアダクト(A)を「主成分とする」とは、硬化剤の質量(100質量%)に対して、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占めることをいう。なお、「コアシェル型」は、「カプセル型」ともいう。
シェル(S)は、保存安定性と硬化性とのバランスの観点から、イソシアネート化合物、活性水素化合物、エポキシ樹脂用硬化剤(以下、特にシェルに用いる他のエポキシ樹脂用硬化剤を「エポキシ樹脂用硬化剤(h2)」、「成分(h2)」、「(h2)」ともいう。)、エポキシ樹脂(以下、特にシェルに用いるエポキシ樹脂を「エポキシ樹脂(e3)」、「成分(e3)」、「(e3)」ともいう。)、及び低分子アミン化合物(以下、特にシェルに用いる低分子アミン化合物を「低分子アミン化合物(B)」、「成分(B)」、「(B)」ともいう。)からなる群より選択される1種又は2種以上を反応して得られる、反応生成物を含むことが好ましい。さらに、上述したシェル(S1)の表面に、該シェル(S1)とエポキシ樹脂(e3)との反応生成物からなる第二シェル(以下、「シェル(S2)」、「(S2)」ともいう。)を含むことがより好ましい。ここで、(h2)には、(h1)と同様のものを用いることができ、(e3)には、(e2)と同様のものを用いることができ、(B)には、アミン系硬化剤に用いられる(a1)と同様のものを用いることができる。
シェル(S2)は、シェル(S1)とエポキシ樹脂(e3)との反応生成物であることが好ましい。エポキシ樹脂(e3)としては、上述のコア(C)に含まれるアミンアダクトの原料となるエポキシ樹脂(e2)の例として挙げた多価エポキシ化合物が使用できる。これらのエポキシ樹脂(e3)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂(e3)は、後述するマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(e4)と同一又はエポキシ樹脂(e4)が混合物の場合はその一部であると、貯蔵安定性と耐溶剤性に優れたマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤が得られる傾向にあるので好ましい。
エポキシ樹脂は、分子内に塩素が結合した不純末端を有するが、硬化物の電気特性を十分に確保する観点から、このような不純末端を低減することが好ましい。従って、エポキシ樹脂(e3)の全塩素量は、エポキシ樹脂(e3)に対して、2500質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1500質量ppm以下、さらに好ましくは500質量ppm以下である。
上記の(e3)に関する観点と同様の観点から、本実施形態の硬化剤粒子において、コアが含有する塩素量とシェルに用いられるエポキシ樹脂(e3)が含有する塩素量との合計量が、該硬化剤粒子に対して、2500質量ppm以下であることがより好ましい。
エポキシ樹脂(e3)とシェル(S1)との反応は分散媒中で行なうことができる。分散媒としては、特に限定されないが、例えば、溶媒、エポキシ樹脂、及び可塑剤が挙げられる。溶媒及び可塑剤としては、後述するイソシアネート化合物と活性水素化合物との反応で使用できる溶媒及び可塑剤の例として挙げるものを使用できる。
活性水素化合物としては、特に限定されないが、例えば、水、少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有する化合物、少なくとも1個の水酸基を有する化合物等であり、その構造にエステル基を含有しないものが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシプロピレンジアミン、及びポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンポリアミン類が挙げられる。脂環式アミンとしては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、及びイソホロンジアミンが挙げられる。芳香族アミンとしては、特に限定されないが、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。
少なくとも1個の水酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルコール化合物、及びフェノール化合物が挙げられる。アルコール化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチル等のモノアルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類が挙げられる。また、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物と、少なくとも1個の水酸基、カルボキシル基、一級又は二級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる二級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物も、多価アルコール類として挙げられる。これらのアルコール化合物は、第一、第二、又は第三アルコールのいずれでもよい。フェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等のモノフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類が挙げられる。少なくとも1個の水酸基を有する化合物は、多価アルコール類及び多価フェノール類が好ましく、多価アルコール類がより好ましい。
イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応は、特に限定されないが、−10℃〜150℃の温度範囲で、10分間〜12時間の反応時間で行われることが好ましい。
また、イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応は、必要に応じて分散媒中で行なうことができる。分散媒としては、特に限定されないが、例えば、溶媒、可塑剤、及び樹脂類が挙げられる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。可塑剤としては、以下に限定されないが、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系;アジピン酸ジ(2−エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系;リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系;ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系の溶媒が挙げられる。樹脂類としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂類、エポキシ樹脂類、及びフェノール樹脂類が挙げられる。
このような、イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応生成物は、ウレア結合を有するが、同時にエステル結合を実質的に有さないことが好ましく、さらに、ビュレット結合とウレタン結合とを有することがより好ましい。反応生成物がビュレット結合とウレタン結合とを有すると、得られるコアシェル型の硬化剤の耐溶剤性が高まる傾向にある。
コア(C)を被覆するようにシェル(S)を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、コア(C)を形成するための出発材料となる粒子を分散媒に分散させ、この分散媒にシェルを形成する材料を添加して出発材料粒子上に析出させる方法、及び分散媒にシェルを形成する材料の原料を添加し、出発材料粒子の表面を反応の場として、そこでシェル形成材料を生成する方法が挙げられる。後者の方法は、反応と被覆を同時に行うことができるので好ましい。そこで用いられる分散媒としては、例えば、溶媒、可塑剤、及び樹脂が挙げられる。溶媒、可塑剤、及び樹脂としては、上述のイソシアネート化合物と活性水素化合物の反応で使用できる溶媒、可塑剤、及び樹脂の例として挙げたものが使用できる。ここで、分散媒としてエポキシ樹脂を用いると、シェル形成と同時に、マスターバッチ型エポキシ樹脂硬化剤組成物を得ることができるため好ましい。
シェル(S1)の形成反応は、特に限定されないが、好ましくは−10℃〜100℃、より好ましくは0℃〜50℃、さらに好ましくは20℃〜40℃の温度範囲で、好ましくは10分間〜24時間間、より好ましくは2.0時間〜10時間の反応時間で行われる。反応温度が−10℃以上であると、反応が速く工業的に好ましく、反応温度が100℃以下であると、コア材が反応系に溶出することを抑制でき、貯蔵安定性や耐溶剤性等をより向上させることができる傾向にある。
また、シェルを形成する材料をシェル形成反応の初期に存在させておくと、シェル(S1)がより効果的に形成され、貯蔵安定性や耐溶剤性等の効果がより一層顕著に発現される傾向にある。
シェル(S2)は、シェル(S1)で被覆されたコア(C)とエポキシ樹脂を反応させることにより形成することができる。その際の反応温度は、好ましくは−10℃〜150℃、より好ましくは0℃〜100℃、さらに好ましくは10℃〜70℃の温度範囲であり、反応時間は、好ましくは10分間〜24時間、より好ましくは2.0時間〜10時間である。
また、シェル(S2)の形成反応温度がシェル(S1)の形成反応温度よりも高いと、貯蔵安定性や耐溶剤性等の本実施形態の効果がより顕著に発現される傾向にある。
本実施形態におけるコアシェル型のエポキシ樹脂用硬化剤は、コア(C)に対する分散安定剤の含有量が、8.0質量%以下であることが好ましい。コアシェル型のエポキシ樹脂用硬化剤に含有される分散安定剤の量が少ないほど、該コアシェル型のエポキシ樹脂用硬化剤をエポキシ樹脂に混合したときの粘度に低減できる傾向にあり、硬化過程における流動性を十分に確保でき、被着体との密着性を十分に確保できる傾向にある。すなわち、その硬化物の耐湿性及び浸透性を良好なものとすることができるだけでなく、耐溶剤性及び耐フィラー性等をより良好なものにできる傾向にある。結果として、硬化物を電気部品等に使用したときの電気部品の信頼性を十分に確保できる傾向にある。このような観点から、コアシェル型のエポキシ樹脂用硬化剤中のコア(C)に対する分散安定剤の含有量は8.0質量%以下が好ましく、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以下であり、さらにより好ましくは含まないことである。なお、上記分散安定剤の含有量については、FT−IRによって、分散安定剤に特徴的なピークを観察することから定量することができる。
分散安定剤とは、コアシェル型のエポキシ樹脂硬化剤に含まれる各成分を分散させる機能を有するものであり、特に限定されないが、例えば、以下に示すグラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びその他の重合体が挙げられる。
グラフト共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレンをグラフト共重合したメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、ポリ2−ヒドロキシメタクリレート、ポリ2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ4−ビニル−エチルピリジウムブロミド、メチルメタクリレートをグラフト共重合したメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/フルオロアルキルアクリレート共重合体、メタクリル酸をグラフト共重合したポリブタジエン、メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、N−メチロールアクリルアミドをグラフト共重合したポリメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、1,2−ヒドロキシステアリン酸をグラフト共重合したポリメチルメタクリレート、エチルアクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをグラフト共重合したポリメチルメタクリレート、エチレンオキシドをグラフト共重合したポリ塩化ビニル、及びメチルメタクリレートをグラフト共重合したスチレン/グリシジルメタクリレートが挙げられる。
ブロック共重合体としては、特に限定されないが、例えば、ポリラウリルメタクリレート/ポリメタクリル酸ブロック共重合体、ポリスチレン/ポリメタクリル酸ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド/ポリスチレン/ポリエチレンオキシドブロック共重合体、及びポリ12−ヒドロキシステアリン酸/ポリエチレングリコール/ポリ12−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
ランダム共重合体としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル/N−ビニルピロリドン共重合体、及びN−ビニルピロリドン/メチルメタクリレートが挙げられる。
その他の重合体としては、特に限定されないが、例えば、カチオン化したアミン変性ポリエステルが挙げられる。
分散安定剤の重量平均分子量としては、特に限定されないが、好ましくは1000以上2000000以下である。
分散安定剤として市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、メチルメタクリレートをグラフト共重合したスチレン/グリシジルメタクリレート(東亜合成社製、レゼタGP300)、メチルメタクリレートをグラフト共重合したメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の32.3%MIBK溶液(東亜合成社製、レゼダGP101S)、スチレン/アクリルグラフト共重合系(東亜合成社製、レゼダGP−310S)、及びアクリル/PMMAグラフト共重合系(東亜合成社製、レゼダGP−301、レゼダGP−102S)が挙げられる。
〔添加剤〕
封止剤用エポキシ樹脂組成物は、添加剤をさらに含有してもよい。封止剤用エポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂の硬化作用を促進する観点から硬化剤を含有しているが、さらに添加剤として、熱膨張係数や熱伝導性の観点から無機充填剤、シランカップリング剤、接着強度向上及びクラック性の耐性向上の観点から有機充填剤、粘度調整の観点から反応性希釈剤、溶剤、熱可塑性ポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上の添加剤を含有することができる。また、その他の添加剤として、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤(h1)、及び硬化促進剤をさらに含有してもよい。これらの添加剤の中でも、封止剤用エポキシ樹脂組成物は、無機充填材、反応性希釈剤、他の硬化剤、及び硬化促進剤からなる群より選択される1種又は2種以上をさらに含有することが好ましい。
無機充填剤を含有する場合には、封止材の熱膨張係数を調整することにより、アンダーフィルとして使用した際の耐熱性及び耐湿性の向上にも寄与する傾向にある。
無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイ力、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカ等の酸化シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;亜硫酸カルシウム等亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐湿性、及び強度を向上できる観点から、溶融シリカ、結晶シリカ、及び合成シリカ粉末が好ましく、また、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び窒化ホウ素のいずれかが好ましい。これらを用いることで、熱線膨張係数を抑制できるため、冷熱サイクル試験の改善等が見込まれる。これらの充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤の形状は、特に限定されず、例えば、不定形、球状、及びりん片のいずれの形態であってもよい。無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上85質量%以下である。無機充填剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、優れた低線膨張が実現できる傾向にある。無機充填剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、弾性率の上昇をより抑えることができる傾向にある。
無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤を液状封止用エポキシ樹脂組成物中に含有させることでも、その性能は発揮されるが、シランカップリング剤で無機充填剤の表面処理を行うことで、エポキシ樹脂組成物の一層の低粘度化を実現できる傾向にある。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、接着強度の観点から、重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
有機充填剤とは、応力緩和性を有する耐衝撃緩和剤としての機能を有するものである。組成物は、有機充填剤を含有することで、各種接続部材との接着性をより一層向上することができ、また、フィレットクラックの発生及び進展を抑制することができる傾向にある。有機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂、及びこれらを成分として含む共重合体の有機微粒子が挙げられる。接着性向上の観点から、有機微粒子として、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体、シリコーンと(メタ)アクリル酸との複合体、(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレンとシリコーンとの複合体及び(メタ)アクリル酸アルキルとシリコーンとの複合体を用いることが好ましい。
有機充填材は、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層とで組成が異なる有機微粒子を用いることもできる。コアシェル型の有機微粒子として、例えば、シリコーン−アクリルゴムをコアとてアクリル樹脂をグラフトした粒子、及びアクリル共重合体にアクリル樹脂をグラフトとした粒子が挙げられる。コアシェル型の有機微粒子の含有による低弾性率化によって、封止材をアンダーフィルとして使用した際に、フィレット部に生じる応力が低減され、フィレットクラックの発生を抑制することができる傾向にある。また、フィレットクラックが発生した場合には、含有させたコアシェル型の有機微粒子が応力緩和剤として作用し、フィレットクラックの進展を抑制する傾向にある。
上記コア層の構成材料としては、柔軟性に優れた材料が用いられることが好ましい。構成材料として、特に限定されないが、例えば、シリコーン系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、及びシリコーン/アクリル系複合系エラストマーが挙げられる。一方、上記シェル層の構成材料としては、半導体樹脂封止材の他の成分に対する親和性、特にエポキシ樹脂に対する親和性に優れた材料が用いられることが好ましい。構成材料として、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂が、封止材の他の成分に対する親和性、特にエポキシ樹脂に対する親和性の観点から好ましい。
コアシェル型の有機微粒子は、平均粒子径が、10μm以下であることが、封止材をアンダーフィルとして使用する際の注入性が優れること、及び、封止材をアンダーフィルとして使用した際のフィレットクラックの発生及び進展を抑制する効果に優れる傾向にあることから好ましい。コアシェル型の有機微粒子は、平均粒子径が、5.0μm以下であることがより好ましい。
封止材において、コアシェル型の有機微粒子の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、3.0質量部以上55質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。含有量が3.0質量部以上であることにより、フィレットクラックの発生及び進展を抑制する傾向にある。一方、含有量が55質量部以下であることにより、封止材の常温での粘度の上昇を抑制し、アンダーフィルとして使用する際に、注入性の悪化を抑制する傾向にある。
反応性希釈剤と区別される非反応性希釈剤としては、例えば、特定の有機溶剤が挙げられる。特定の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルが挙げられる。これらの特定の有機溶剤は沸点が低いため、アンダーフィルの粘度を下げるのに非反応性の希釈剤を使用すると、ボイド発生の原因となる懸念がある。一方、本実施形態の反応性希釈剤は、分子内にエポキシ基を持つため、硬化剤と反応して硬化物の一部となるため、非反応性希釈剤で懸念される問題は、生じ難い。
反応性希釈剤は、半導体樹脂用の封止材の粘度を下げる目的で、組成物に含有させることができる。本実施形態の反応性希釈剤とは、その分子内にエポキシ基を1つ以上含有することにより、硬化剤と反応して硬化物の一部となるものである。また、反応性希釈剤としては、各種のモノエポキシ化合物や多価アルコールのグリシジルエーテル化合物も使用できるが、これらは硬化剤との反応に寄与する官能基(エポキシ基、グリシジル基)が1分子中に1つのみの化合物を反応性希釈剤である場合、硬化時に三次元的な架橋を形成することができないことに起因して、樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)や強靱性を十分なものとすることができない傾向にある。よって、反応性希釈剤として1分子中に2以上のグリシジル基を含む化合物からなるものを用いることで、硬化時に三次元的に架橋を形成するため好ましい。これにより、半導体樹脂用の封止材をアンダーフィルとして用いた際に、硬化時におけるガラス転移温度(Tg)や強靱性の低下を抑制する傾向にある。
反応性希釈剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上30質量部以下であることが好ましい。含有量が1.0質量部以上であることにより、半導体樹脂用の封止材の常温での粘度の上昇を抑制し、アンダーフィルとして使用する際に、注入性の悪化を抑制する傾向にある。また、半導体樹脂封止材をアンダーフィルとして用いた際に、硬化時におけるガラス転移温度(Tg)や強靱性の低下を抑制し、フィレットクラックの発生及び進展を抑制する傾向にある。一方、含有量が30質量部以下であることにより、半導体樹脂用の封止材をアンダーフィルとして用いた際に、密着性の低下を抑制し、吸湿リフロー試験時の剥離を抑制する傾向にある。
本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤を用いることで、封止材全体の粘度を低減させることができることに加えて、フィラーを高充填化した時に生じる粘度の上昇を抑制する目的で反応性希釈剤をさらに含有させてもよい。
反応性希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N’−グリシジル−o−トルイジン、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが挙げられる。
熱可塑性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びポリエーテル樹脂が挙げられ、これらの中でもビニルエステルが好ましく、カルボン酸ビニルエステルがより好ましい。さらに、カルボン酸ビニルエステルと共重合可能なモノマーとをモノマー単位として含んでいてもよい。このようなモノマーとしては、例えば、カルボン酸アリルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には、酢酸アリル、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルである。
熱可塑性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、40000以上150000以下であることが好ましく、60000以上130000以下であることがより好ましく、70000以上120000以下であることがさらに好ましい。
硬化促進剤としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができるが、例えば、尿素化合物、イミダゾール類、第3級アミン類、ホスフィン類、及びアミノトリアゾール類が挙げられる。
封止材用エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、上述した以外の添加剤として、安定化剤、液状低応力剤、難燃剤、及びレべリング剤をさらに含有してもよい。
安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、貯蔵安定性の向上のため、ホウ酸、及び環状ホウ酸エステル化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。環状ホウ酸エステル化合物とは、ホウ素が環式構造に含まれているものである。環状ホウ酸エステル化合物は、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)であることが好ましい。
液状低応力剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコール類及びそのアミン変性体、ポリブタジエン、アクリロニトリル等の有機ゴム;ジメチルシロキサン等のシリコーンゴム;シリコーンオイルが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。液状低応力剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂の質量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、及び無機系難燃剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモフェノールが挙げられる。リン系難燃剤としては、例えば、9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファナンスレン−10−オキサイド及びそのエポキシ誘導体、トリフェニルホスフィンやその誘導体、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物が挙げられる。窒素系難燃剤としては、グアニジン系難燃剤、トリアジン構造含有フェノール、ポリリン酸メラミン、及びイソシアヌル酸が挙げられる。無機系難燃化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムが挙げられ、耐熱性の観点から水酸化マグネシウムが好ましい。難燃剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂の質量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以上200質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上100質量%以下である。
レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系レベリング剤、及びアクリル系レベリング剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
〔封止材〕
本実施形態の封止材は、上述した封止材用エポキシ樹脂組成物を用いている。
以下に、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(水分量)
各エポキシ樹脂用硬化剤の水分量は、ダイアインスツルメンツ製カールフィッシャー水分計CA−100型を用いることにより測定した。
(比表面積値)
各エポキシ樹脂用硬化剤の比表面積値は、株式会社マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置HM model−1201を用いてN2/He=30/70(体積比)の混合ガスを吸着ガスとして測定した。
(篩下平均粒径D50、篩下平均粒径D99)
各エポキシ樹脂用硬化剤を乾式粒度分布計により測定し、篩下積算分率50%を篩下平均粒径D50とし、篩下積算分率99%を篩下平均粒径D99とした。
(シェルの厚さ)
各エポキシ樹脂用硬化剤のシェルの厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による画像観察により測定した。
(塩素量)
各エポキシ樹脂用硬化剤の塩素量は、コアの塩素量とシェルに含まれるエポキシ樹脂の塩素量との合計量を、JIS K7246に従い測定し、質量基準で、全エポキシ樹脂用硬化剤の質量に対する塩素量として求めた。
(製造例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂1当量と、2−メチルイミダゾール1当量(活性水素換算)を、n−ブタノールとトルエンとの1:1混合溶媒中、80℃で反応させた。その後減圧下で過剰のアミンを溶剤と共に留去し、25℃で固体のブロック状エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
次いで、ブロック状エポキシ樹脂硬化剤をジェットミル粉砕して、25℃で固体であり、水分量が1.1%、比表面積値が3.63m2/g、篩下平均粒径D50が2.40μm、D99/D50が8.6となる粒子(粉砕品、エポキシ樹脂用硬化剤1)を得た。
液状エポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ社製の商品名「AER2603」)200質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤1 100質量部、カプセル化剤(日本ポリウレタン社製の商品名「MR−400」)30質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤2を得た。
(製造例2)
エポキシ樹脂用硬化剤1を用いて、アーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度8000rpm、供給速度10kg/hr、風量3m3/minで、形状補正処置を行い、比表面積値が3.10m2/g、水分量が0.6%、D50が3.1μm、D99/D50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製し、エポキシ樹脂用硬化剤3を得た。
比表面積値を調整後、液状エポキシ樹脂200質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤3 100質量部、カプセル化剤20質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤4を得た。
(製造例3)
エポキシ樹脂用硬化剤1を用いて、アーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m3/minで、形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールした環境下において比表面積値が2.67m2/g、水分量が0.6%、D50が3.1μm、D99/D50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製し、エポキシ樹脂用硬化剤5を得た。
比表面積値を調整後、液状エポキシ樹脂200質量部に、エポキシ樹脂硬化剤5 100質量部、カプセル化剤20質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤6を得た。
(製造例4)
製造例3で得られたエポキシ樹脂用硬化剤6を金属シャーレ上に万遍なく広げ、温度23℃、湿度50%の環境下で4時間静置した。硬化剤の水分測定を行った結果、硬化剤中の水分量は1.5%であり、その他の物理的性質に変化は見られなかった。その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、静置後のエポキシ樹脂用硬化剤6 100質量部、カプセル化剤9.75質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤7を得た。
(製造例5)
製造例4で得られたエポキシ樹脂用硬化剤7を更に温度23℃、湿度50%の環境下でさらに2時間静置した。硬化剤の水分測定を行った結果、硬化剤中の水分量は1.6%であり、その他の物理的性質に変化は見られなかった。その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、静置後のエポキシ樹脂用硬化剤7 100質量部、カプセル化剤9.75質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤8を得た。
(製造例6)
エポキシ樹脂用硬化剤1を用いて日本ニューマチック社製「メテオレインボ−MR−10」を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を7.0kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入し、分級機による分級操作をすることにより比表面積値が1.3m2/g、水分量が0.6%、D50が3.1μm、D99/D50が4.7となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤9を作製した。
その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤9 100質量部、カプセル化剤9.75質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤10を得た。
(製造例7)
製造例6で得られたエポキシ樹脂硬化剤9を金属シャーレ上に万遍なく広げ、温度23℃、湿度50%の環境下で4時間静置した。硬化剤の水分測定を行った結果、硬化剤中の水分量は1.5%であり、その他の物理的性質に変化は見られなかった。その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、静置後のエポキシ樹脂用硬化剤9 100質量部、カプセル化剤9.75質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤11を得た。
(製造例8)
製造例6で得られたエポキシ樹脂硬化剤9を温度23℃、湿度50%の環境下で6時間静置した。硬化剤の水分測定を行った結果、硬化剤中の水分量は1.6%であり、その他の物理的性質に変化は見られなかった。その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、静置後のエポキシ樹脂用硬化剤9 100質量部、カプセル化剤9.75質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤12を得た。
(製造例9)
三つ口丸底フラスコに、2−メチルイミダゾール(2MZ,0.34当量)および分散安定剤としてポリ((スチレン−co−グリシジルメタクリレート)−g−メチルメタクリレート)のグラフト共重合体(東亜合成株式会社製、レゼダGP−300、数平均分子量30000)を仕込み、これにMIBKを加えてから、温度を80℃に上げて完全に溶解した。次いでエピコート828の50%MIBK溶液(0.34当量)を加え、内容物を300rpmの速度で撹拌しながら80℃で9時間反応させた。その後室温に冷却し、有機溶剤系用スプレードライヤー(ヤマト科学株式会社製,GS−31型)で噴霧乾燥して、エポキシ樹脂用硬化剤13を回収した。得られた粒子の比表面積値は1.6m2/g、水分量が2.0%、D50が2.8μm、D99/D50が2.0であった。
その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤13 100質量部、カプセル化剤12質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤14を得た。
(製造例10)
エポキシ樹脂用硬化剤1を用いて日本ニューマチック社製「メテオレインボ−MR−10」を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を7.0kg/hr、275℃の熱風処理することにより比表面積値が1.6m2/g、水分量が1.5%、D50が3.1μm、D99/D50が8.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂硬化剤15を作製した。
その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、エポキシ樹脂硬化剤15 100質量部、カプセル化剤12.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤16を得た。
(製造例11)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂1当量と、イソホロンジアミン0.7当量(活性水素換算)を、n−ブタノールとトルエンの1:1混合溶媒中、80℃で反応させた。その後得られた変性ポリアミンにフェノール樹脂0.3当量投入し均一に混合後、180℃減圧下で過剰のアミンを溶剤と共に留去し、25℃で固体のブロック状エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
次いで、上記ブロック状エポキシ樹脂硬化剤をジェットミル粉砕して分級機による分級操作をすることにより、25℃で固体であり、水分量が1.6%、比表面積値が2.23m2/g、篩下平均粒径D50が4.7μm、D99/D50が1.9となる粒子(粉砕品、エポキシ樹脂用硬化剤17)を得た。
その後、日本ニューマチック社製「メテオレインボ−MR−10」を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を7.0kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入し、分級機による分級操作をすることにより比表面積値が1.6m2/g、水分量が1.2%、D50が4.6μm、D99/D50が1.6となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤18を作製した。
その後、液状エポキシ樹脂200質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤18 100質量部、カプセル化剤12.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、エポキシ樹脂用硬化剤19を得た。
配合品I 保存安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)とを30:100の質量比で配合し配合品Iとした。この配合品Iを60℃環境下に3ヵ月間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、保存安定性を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上3.0倍未満の範囲であれば○、3.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば△、4.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品II 反応性希釈剤安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、反応性希釈剤として1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとを10:100:20の質量比で配合し配合品IIとした。この配合品IIを40℃環境下に1週間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、反応性希釈剤安定性を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品III 球状シリカフィラー安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、無機充填剤として球状シリカフィラー(デンカ株式会社製 SEFP−30M)とを10:30:60の質量比で配合し、配合品IIIとした。この配合品IIIを40℃環境下に1週間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、球状シリカフィラー安定性を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品IV 球状アルミナフィラー安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、無機充填剤として球状アルミナフィラー(デンカ株式会社製 DAW−05)とを10:30:60の質量比で配合し、配合品IVとした。この配合品IVを40℃環境下に1週間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、球状アルミナフィラー安定性を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品V 窒化ホウ素フィラー安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、無機充填剤として窒化ホウ素フィラー(デンカ株式会社製 h−BN)とを10:30:60の質量比で配合し配合品Vとした。この配合品Vを40℃環境下に1週間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、窒化ホウ素フィラー安定性を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品VI 酸無水物安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、酸無水物硬化剤として3or4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量172)とを10:100:84の質量比で配合し配合品VIした。この配合品VIを40℃環境下に1週間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、酸無水物安定性を評価した。なお、この配合では、エポキシ樹脂用硬化剤は硬化促進剤となり、酸無水物とエポキシ樹脂の反応を加速させる。評価基準は2.0倍以上3.0倍未満の範囲であれば◎、3.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品VII チオール安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、チオールとしてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(チオール当量122)とを10:100:58の質量比で配合し配合品VIIとした。この配合品VIIを40℃環境下に1週間静置した時の粘度上昇倍率を測定し、チオール安定性を評価した。なお、この配合ではエポキシ樹脂用硬化剤は硬化促進剤となりチオールとエポキシ樹脂の反応を加速させる。一方、硬化促進剤が安定でもチオールはエポキシ樹脂と保存中に徐々に反応をする。評価基準は、2.0倍以上3.0倍未満の範囲であれば◎、3.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品VIII ジシアンジアミド安定性
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、硬化剤としてジシアンジアミドとを10:100:8の質量比で配合し配合品VIIIとした。この配合品VIIIを60℃環境下に1ヵ月静置した時の粘度上昇倍率を測定し、ジシアンジアミド安定性を評価した。なお、この配合ではエポキシ樹脂用硬化剤は硬化促進剤となりジシアンジアミドとエポキシ樹脂の反応を加速させる。一方、硬化促進剤が安定でもジシアンジアミドはエポキシ樹脂と保存中に徐々に反応をする。評価基準は2.0倍以上3.0倍未満の範囲であれば◎、3.0倍以上4.0倍未満の範囲であれば○、4.0倍以上8.0倍未満の範囲であれば△、8.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品IX 耐溶剤性(酢酸エチル)
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、溶剤として酢酸エチルとを10:100:20の質量比で配合し配合品IXとした。この配合品IXをB型粘度計(HAAKE viscotester)で粘度を測定し、40℃1時間震盪機で浸透させて再度粘度を測定し、粘度の増粘倍率を求め、耐溶剤性(酢酸エチル)を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上3.0倍未満の範囲であれば○、3.0倍以上5.0倍未満の範囲であれば△、5.0倍以上の範囲であれば×とした。
配合品X 耐溶剤性(2−ブタノン)
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW:185)と、溶剤として酢酸エチルとを10:100:20の質量比で配合し配合品Xとした。この配合品XをB型粘度計(HAAKE viscotester)で粘度を測定し、40℃1時間震盪機で浸透させて再度粘度を測定し、粘度の増粘倍率を求め、耐溶剤性(2−ブタノン)を評価した。評価基準は1.0倍以上2.0倍未満の範囲であれば◎、2.0倍以上3.0倍未満の範囲であれば○、3.0倍以上5.0倍未満の範囲であれば△、5.0倍以上の範囲であれば×とした。
試験I ボイド、
各製造例で得られた各エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(EEW185)と、反応性希釈剤として1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルと、無機充填剤として球状シリカフィラー(デンカ株式会社製 SEFP−30M)とを10:30:6:100の質量比で配合し、封止材用エポキシ樹脂組成物を作製した。
得られた封止材用エポキシ樹脂組成物のボンディング性の評価として30μmのバンプが、50μmピッチで544個Siチップを準備した。バンプは、SnAgめっきされた銅ピラーであった。また、シリコンチップのバンプパターンに対応した電極を有する厚さ:360μmのFR−4基板を準備した。この基板を60℃のステージに載置し、この基板の電極上に、23Gのニードルのディスペンサーを用いて、得られた封止樹脂組成物を塗布し、その上から、フリップチップボンダーを用いて、260℃×4秒の条件でSiチップを圧接し、評価サンプルを作製した。作製した評価サンプルのチップ部を、研磨によって取り除き、顕微鏡にてボイドの状態を確認し、ボイドを評価した。ここで、確認できたボイドの発生数が、0〜1個以下を「○」、2〜10個を「△」、11個以上を「×」とした。
試験II 吸湿リフロー性
株式会社日立超LSIシステムズ製JKIT TypeIII基板上にPHASE2E175_LF(株式会社日立超LSIシステムズ製)をフリップチップ実装させた評価用基板の間隙に、上記試験Iで得られた各封止材用エポキシ樹脂組成物を毛細管現象により注入させ、165℃のバッチ式温風乾燥機にて2時間硬化させたのち、デジタルマルチメーターにより抵抗値を測定した。次いで、リフロー炉にてMAX260℃のリフロー処理を行い、次いで60℃/60%の恒温恒湿槽に40時間放置し、再度リフロー処理を3回行った後、抵抗値及び超音波探傷機(SAT)を用いて剥離の状態を観察し、吸湿リフロー性を評価した。剥離が全く観察されず導通不良のない場合(抵抗値が硬化後に対する変化率が±10%未満である場合)を◎、チップ面積に対する剥離の発生している面積の割合が1%未満でありかつ導通不良のない場合を○、剥離の範囲が1%以上もしくは導通不良のある場合を×とし、○以上の評価のものを吸湿リフロー性が良好であるとした。
試験III 絶縁性
上記試験IIで抵抗値を測定後の基板と同様の基板を85℃、85%RHに保持しながら、低電圧低電流電源を用いて、配線間に30Vの直流電圧を印加した。この配線間の絶縁抵抗を5分間毎に測定し、絶縁抵抗が10MΩ以下になるまでの時間を測定し、その値を絶縁低下時間とし、絶縁性を評価した。この絶縁低下時間が500時間未満の場合を×、500時間以上1000時間の場合を△、1000時間以上の場合を○として評価した。
試験IV 浸透性
厚さ15μmのフッ素樹脂製シール2枚を30mm間隔で挟んだ2枚のガラス板を、150℃のホットプレート上に水平に置き、上部ガラス片の温度が145℃に達したところで、試験Iで得られた封止材用エポキシ樹脂組成物をガラス板の隙間部に垂らして15分間保持し、封止材用エポキシ樹脂組成物が浸透した距離を測定し、浸透性を評価した。評価基準は、以下の通りであった。
◎:30mm以上100mm以下浸透し、均一に硬化した。
○:15mm以上30mm未満浸透し、均一に硬化した。
△:30mm以上100mm以下浸透したが、硬化物の濁りやムラが発生した。
×:15mm未満の浸透、又は硬化せずに100mm以上浸透した。
下記の表1及び表2に、各硬化剤を用いた配合品I〜Xの評価結果、及び試験I〜IVの評価結果を示す。