JP6744802B2 - 転舵制御装置 - Google Patents
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Description
1.転舵制御装置は、転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを操作対象とし、前記転舵アクチュエータは、モータと、該モータの回転軸に機械的に連結された転舵機構と、を備え、前記転舵機構の潤滑対象部分の温度の推定値が低い場合に高い場合に対して、前記モータのトルクを変更する低温時処理と、前記転舵機構に取り付けられている所定の部材の温度を検出する温度センサの検出値を入力とし、通電に伴う前記転舵アクチュエータの発熱量に基づき前記検出値よりも低温の値とした前記推定値を算出する推定処理と、を実行する。
以下、転舵制御装置にかかる第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる転舵制御装置を備える電動パワーステアリングシステムを示す。図1に示すステアリングホイール(ステアリング10)は、コラム軸14、中間軸16およびピニオン軸18を備えるステアリングシャフト12に連結されている。ピニオン軸18は、ラック軸22と所定の交叉角をもって配置され、ラック軸22とともにラックアンドピニオン機構24を構成している。ラックアンドピニオン機構24において、ラック軸22に形成された第1ラック歯22aとピニオン軸18に形成されたピニオン歯18aとが噛合されている。なお、ラック軸22は、ラックハウジング20に支持されており、また、ラック軸22の両端には、タイロッドを介して転舵輪19が連結されている。
図2に示すように、駆動基板44には、インバータINVが実装されている。インバータINVは、直流電圧源(バッテリ50)の正極を、モータ42の端子に接続するスイッチング素子Sup,Svp,Swpと、バッテリ50の負極をモータ42の端子に接続するスイッチング素子Sun,Svn,Swnと、を備えている。なお、以下では、インバータINVのU相、V相およびW相を示す「u,v,w」を総括して記載する場合「¥」を用い、上側アームおよび下側アームを示す「p,n」を総括して記載する場合、「#」を用いる。すなわち、インバータINVは、上側アームのスイッチング素子S¥pおよび下側アームのスイッチング素子S¥nの直列接続体を、3組備えている。
アシストトルク設定処理部M10は、操舵トルクTrqsに基づき、ステアリング10の操作をアシストするアシストトルクTrqaを設定する。詳しくは、アシストトルク設定処理部M10は、操舵トルクTrqsの絶対値が大きい場合に小さい場合よりもアシストトルクTrqaの絶対値を大きい値に設定する。
図3に戻り、温度補正処理部M24は、検出値Tbcから駆動補正量Tdhを減算した値を、推定値Tgeとして出力する。なお、図3に示す処理は、CPU62が起動状態にあることを条件に、実行される。ここで、CPU62が起動状態となるのは、ユーザによって車両を走行可能状態とする指令が出される場合である。これに対し、ユーザによって車両を走行ができない状態とする指令が出される場合、CPU62は、所定期間(ここでは数分から十数分)の間、CPU62の起動状態を保った後、CPU62をオフ状態に切り替える。この起動状態を保っているときにおいても、推定値Tgeの算出処理は実行される。ちなみに、駆動補正量Tdhは、推定値Tgeの算出処理の再開に伴って、前回の算出処理の終了時における値にかかわらず初期化される。なお、車両を走行可能な状態とする指令は、たとえば、車載原動機がエンジンを含む場合、イグニッションスイッチのオン操作などによって生じる。
ステアリング10の操舵により操舵トルクTrqsが検出されると、操舵トルクTrqsに応じてアシストトルクTrqaが設定される。潤滑対象部分の温度の推定値Tgeが低温処理実行温度以下である場合、アシストトルクTrqaが低温補正量ΔTrqにて補正された値がトルク指令値Trq*とされ、ECU60によって、モータ42のトルクをトルク指令値Trq*とするようにインバータINVが操作される。
(1)サーミスタ68が実装された制御基板46を、モータユニット40に収容した。これにより、本実施形態において、制御基板46およびサーミスタ68は、潤滑対象部分よりもインバータINVやモータ42に近く、また、同一の筐体内にあるためにインバータINVやモータ42の発熱の影響を直接的に受けることから、潤滑対象部分と比較して特に温度が上昇しやすい。このため、駆動補正量Tdhによる補正を実行することが特に有効である。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
以下、第3の実施形態について、第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
ここで本実施形態の作用を説明する。
以下、第4の実施形態について、第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
なお、CPU62は、S58,S60の処理が完了する場合、図9に示す処理を一旦終了する。
ECU60が起動状態となると、図8に示した処理に基づきトルク指令値Trq*が算出され、これに基づきインバータINVが操作される。ここで、たとえば車両の発進前等、ステアリング10が未だ操作されない状態においては、トルク指令値Trq*がゼロとなる。この場合、操作信号g¥#は、スイッチング素子S¥#を周期Tcで周期的にオン・オフ操作しつつもモータ42のトルクをゼロとするための信号となる。この場合、インバータINVやモータ42に電流が流れることに起因した発熱量は無視し得る。しかし、図2に示したドライバ66が駆動され、またインバータINVのスイッチング素子g¥#が所定の周期Tcでオン・オフ操作されることによって発熱が生じる。この発熱によって制御基板46の温度のみならず、潤滑対象部分の温度も上昇しうるものの、この発熱の全てが潤滑対象部分に伝達される訳ではないことに加えて、潤滑対象部分の熱容量が大きいことなどから、潤滑対象部分の温度上昇量は制御基板46の温度上昇量よりも小さくなる。起動補正量Tsは、この上昇量の差を補償する量とされる。
以下、第5の実施形態について、第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。
なお、上記実施形態の各事項の少なくとも1つを、以下のように変更してもよい。
「低温時処理について」
上記実施形態では、推定値Tgeのみに基づき低温補正量ΔTrqの絶対値を設定したがこれに限らない。たとえば、車速を加味してもよい。これにより、転舵角を転舵するのに必要なトルクが車速に依存することを加味して低温補正量ΔTrqの絶対値を設定することができる。
駆動補正量算出処理としては、図4に例示した処理や、図10において説明した処理に限らない。たとえば、図4に示した処理において、q軸の実電流iqに代えて、電流指令値iq*を入力としてもよい。また、たとえばq軸の実電流iqとd軸の実電流idとによって定まる電流ベクトル(id,iq)のノルムを入力としてもよい。またたとえば、電流指令値id*,iq*のベクトルのノルムを入力としてもよい。こうした構成は、たとえば弱め界磁制御のようにd軸の電流指令値id*をゼロとしない制御がなされている場合に特に有効である。
残存熱補正量Trhとしては、推定値Tgeの算出開始時の検出値Tbcから、初期値Tge0を減算した値のローパスフィルタ処理値に限らない。たとえば、残存熱補正量Trhをゼロ以上の値とする旨の条件の下、上記減算した値を、算出処理の周期毎に、所定量ずつ減少補正した値としてもよい。
推定値Tgeの算出処理の開始時における検出値Tbcが初期値Tge0よりも高いことを条件に、残存熱補正量Trhを算出する処理を実行すると決定するものに限らない。たとえば、図7のS38の処理に代えて、ローパスフィルタ処理した値と「0」とのうちの大きい方の値を残存熱補正量Trhとする処理を実行し、S32の処理において、上記条件を削除してもよい。
残存熱補正処理としては、残存熱補正量Trhを上記実施形態や「残存熱補正量算出処理について」の欄に記載したように算出するものに限らない。たとえば、推定値Tgeの算出開始時の外気温TOよりも初期値Tge0の方が高いことを条件に、ローパスフィルタ処理のインパルス入力を、算出開始時の検出値Tbcを用いて、「Tbc−Tge0−f(Tbc−TO)」としてもよい。関数f(x)は、独立変数xが正で大きい値であるほど小さい値となるものとする。この関数f(x)は、「Tbc−Tge0」が同一であっても、前回の算出処理の停止時から今回の算出処理の開始時までの時間が長い場合に短い場合よりも、ローパスフィルタ処理の入力値を大きい値とするための項である。これは、時間が長い場合には潤滑対象部分の温度が低下するために、実際の潤滑対象部分の温度が初期値Tge0よりも低いと考えられることに基づくものである。
上記実施形態では、トルク指令値Trq*から定まる電流指令値id*,iq*に実電流id,iqをフィードバック制御したが、これに限らない。たとえば、実電流id,iqに基づき、複数のスイッチングモードのそれぞれが採用されたと仮定した場合の次の制御周期におけるそれぞれの実電流id,iqの予測値を算出し、予測値と電流指令値id*,iq*との差が小さくなるスイッチングモードを実際のインバータINVの操作に採用するいわゆるモデル予測制御を実行してもよい。
上記実施形態では、起動補正量Tsに、CPU62が起動状態にあることによる発熱量に起因した温度上昇量を含めたが、これを無視してもよい。
たとえば、車両が走行可能な状態であるか否かにかかわらずCPU62をオン状態として常時、図3、図5および図10に例示したように、駆動補正量Tdhに基づく推定値Tgeの算出処理を実行してもよい。なお、この際、起動補正量Tsを上限値Tsmaxに固定し、これを更に用いて推定値Tgeを算出してもよい。
タイミングベルト28やプーリ30、ボールねじ機構26を備えることは必須ではない。たとえば、ラックアンドピニオン機構24とは別に、第2ラックアンドピニオン機構を備え、そのピニオン軸にモータ42の回転軸42aが減速機構を介して連結されたものであってもよい。この場合、第2ラックアンドピニオン機構は、転舵機構のうちの潤滑対象部分である。
「転舵系収容室RMについて」
車載原動機58や冷却系59が収容されることは必須ではなく、車載原動機58や冷却系59を、別の車体空間に収容してもよい。この場合であっても、温度センサと、潤滑対象部分とが、同一の車体空間である転舵系収容室RMに収容されているのであれば、温度センサが検出する温度は、潤滑対象部分の温度と強い相関を有することとなるため、温度センサの検出値に基づく潤滑対象部分の温度の推定処理が有効である。
直流電圧源(バッテリ50)の正極および負極とモータ42の端子とを選択的に接続するスイッチング素子S¥#を備える上記インバータINVに限らない。たとえば、モータ42の端子のそれぞれに接続され、バッテリ50の電圧を昇圧および降圧するコンバータであってもよい。この場合、コンバータの出力電圧を正弦波状に変化させることで、モータ42に正弦波状の電圧を印加することができる。
モータとしては、同期電動機に限らない。たとえば誘導機であってもよくまたたとえば直流モータであってもよい。モータ42と、駆動基板44と、制御基板46とを同一の筐体に収容するものに限らない。たとえば、モータ42と制御基板46とを同一の筐体に収容して且つ、駆動基板44を別の筐体に収容してもよい。またたとえば、制御基板46と駆動基板44とを同一の筐体に収容して且つ、モータ42を別の筐体に収容してもよい。
ステアリング10に入力される操舵トルクTrqsを、転舵輪19に伝達しつつ転舵輪19の転舵を転舵アクチュエータPSAによってアシストするものに限らない。たとえば、ステアリング10から転舵輪19への動力の伝達が遮断された状態で、転舵アクチュエータPSAによって転舵輪19を転舵させるステアバイワイヤシステムであってもよい。
温度センサとしては、サーミスタに限らず、たとえば一定の電流が流されているダイオードであってもよい。すなわち、この場合、ダイオードの順方向電圧降下の大きさが温度に依存することに鑑み、順方向電圧降下の値を温度の検出値とすればよい。
CPU62とメモリ64とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、転舵制御装置は、以下の(a)〜(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するメモリとを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラムを記憶するメモリと、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。
図2には、電流センサ69を模式的に示したが、電流センサ69は、実際には、スイッチング素子S¥nと接地との間に設けられたシャント抵抗等であってもよい。
Claims (9)
- 転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを操作対象とし、
前記転舵アクチュエータは、モータと、該モータの回転軸に機械的に連結された転舵機構と、を備え、
前記転舵機構の潤滑対象部分の温度の推定値が低い場合に高い場合に対して、前記モータのトルクを変更する低温時処理と、
前記転舵機構に取り付けられている所定の部材のうち、前記潤滑対象部分とは異なる部分の温度を検出する温度センサの検出値を入力とし、通電に伴う前記転舵アクチュエータの発熱量に基づき前記検出値よりも低温の値とした前記推定値を算出する推定処理と、を実行する転舵制御装置。 - 前記温度センサは、
(a)前記モータに電圧を印加する電圧印加回路、および前記モータの少なくとも1つを収容する筐体に収容されている旨の条件、
(b)前記所定の部材を当該転舵制御装置とする旨の条件、および
(c)前記モータおよび前記温度センサ間の距離と前記電圧印加回路および前記温度センサ間の距離とのうちの短い方が前記潤滑対象部分および前記温度センサ間の距離よりも短い旨の条件、の3つの条件のうちの少なくとも1つの条件を満たす請求項1記載の転舵制御装置。 - 前記推定処理は、前記モータを流れる電流および前記モータのトルクのいずれかである発熱パラメータを入力とし、駆動補正量を、前記転舵アクチュエータの発熱量が大きい場合に小さい場合よりも大きい値となるように算出する駆動補正量算出処理を含み、前記推定値が前記検出値を下回る量を、前記駆動補正量に基づき設定しつつ前記推定値を算出する処理である請求項2記載の転舵制御装置。
- 前記推定処理は、前記推定値を、前記検出値から前記駆動補正量を減算した減算値をローパスフィルタ処理した値、および前記検出値をローパスフィルタ処理した値から前記駆動補正量をローパスフィルタ処理した値を減算した値のいずれか以下の値に算出する処理である請求項3記載の転舵制御装置。
- 当該転舵制御装置がオフ状態となることに起因して前記推定処理が停止される場合、停止される前における前記推定値を記憶部に記憶保持させる記憶処理を実行し、
前記推定処理は、当該転舵制御装置の起動に伴う前記推定処理の再開時における前記検出値が前記記憶処理によって記憶保持された前記推定値を上回る場合、上回らない場合よりも前記推定値が前記検出値を下回る量を大きくする残存熱補正処理を含む請求項3または4記載の転舵制御装置。 - 前記残存熱補正処理は、残存熱補正量を、前記推定処理の再開時における前記検出値から前記記憶処理によって記憶保持された前記推定値を減算した値をローパスフィルタ処理した値として算出する残存熱補正量算出処理を含み、前記推定値が前記検出値を下回る量を、前記残存熱補正量に基づき設定する処理である請求項5記載の転舵制御装置。
- 外気温を取得する外気温取得処理と、
前記再開時において、前記検出値から前記外気温取得処理によって取得された外気温を減算した値が所定値よりも大きいことを条件に、前記残存熱補正処理を実行すると決定し、前記減算した値が前記所定値以下の場合、前記残存熱補正処理を実行しないと決定する決定処理と、を実行する請求項5または6記載の転舵制御装置。 - 前記推定処理は、当該転舵制御装置が前記電圧印加回路の周期的なスイッチング素子のオン・オフ操作を開始してからの経過時間を入力とし、所定の上限値以下の量であって且つ前記経過時間が規定時間以上となることで前記上限値に固定される起動補正量を算出する起動補正量算出処理を含み、前記推定値が前記検出値を下回る量を、前記起動補正量および前記駆動補正量に基づき設定しつつ前記推定値を算出する処理である請求項3〜5のいずれか1項に記載の転舵制御装置。
- 前記転舵機構は、ラック軸を備え、
前記ラック軸の一部は、前記潤滑対象部分であり、
前記ラック軸と前記温度センサとが、車体によって区画される同一の空間内に収容されている請求項2〜8のいずれか1項に記載の転舵制御装置。
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