JP6504501B2 - メッシュベルト式連続焼結炉、及び焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明者は、メッシュベルトの長寿命化を達成するべく、メッシュベルトの高温クリープに着目した。具体的には、予熱から冷却までの焼結体の製造過程で、最も高温クリープが生じやすいと思われる焼結部内での最高温度の位置に着目して、その位置の近傍におけるメッシュベルトの高温クリープの低減について検討した。その結果、高温クリープは、メッシュベルトが最高温度となる位置とその位置に最も近い上流側のプーリーの位置との間の長さに大きな影響を受けることが判明した。この「最高温度となる位置」とは、メッシュベルトの長手方向の温度分布において、極大値として最高温度になる位置がある場合は、その極大値となる位置のことをいい、所定の長さにわたって最高温度になる範囲がある場合は、その範囲のうち最も下流側の位置のことをいう。以下の説明では、上記「極大値となる位置」と「最も下流側の位置」を纏めて最高温度終端箇所Tということがある。例えば、最高温度終端箇所Tは、上述の図2では説明の便宜上、焼結部13の搬送方向中央に示している(この点は後述の図1でも同じ)。そして、最高温度終端箇所Tとその上流側で最も近接したプーリーとの距離(以下、加熱ベルト区間Lということがある)を短くできれば、加熱ベルト区間Lに作用する荷重を低減でき、メッシュベルトの高温クリープに伴う伸びを大幅に抑制できるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。最初に本発明の実施態様の内容を列記して説明する。
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。
図1を用いて、実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉1を説明する。実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、炉本体部10と、無端のメッシュベルト30とを備える。炉本体部10が、予熱部11と焼結部13と冷却部14とを有する点と、メッシュベルト30が、炉本体部10の入口側プーリー21及び出口側プーリー22に張架されて、炉本体部10の入口から出口に走行して加熱対象(図示略)を搬送する点とは、図2を用いて説明した従来のメッシュベルト式連続焼結炉100と同様である。実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉1の主たる特徴とするところは、予熱部11の入口端から焼結部13の出口端までの間で、所定の張力がメッシュベルト30に作用する区間を入口側と出口側とに分断する張力分断機構12を備える点にある。即ち、実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、炉本体部10の構成が従来のメッシュベルト式連続焼結炉100の炉本体部110と異なるため、以下の説明はその相違点を中心に行う。従来と同様の構成については、図2と同一符号を付してその説明を省略する。その後、このメッシュベルト式連続焼結炉1を用いた焼結体の製造方法を説明する。
炉本体部10は、メッシュベルト30の上に載置してメッシュベルト30の走行により搬送される加熱対象(図示略)に対して予熱・焼結・冷却を行う。メッシュベルト30の走行は、入口側プーリー21と出口側プーリー22の少なくとも一方を駆動プーリーとして、その駆動により行う。ここでは、出口側プーリー22を駆動プーリー(回転方向を矢印で示す)とし、入口側プーリー21を従動プーリーとしている。炉本体部10の出口を出たメッシュベルト30は、炉本体部10の下を通って炉本体部10の入口に戻される。入口側プーリー21と出口側プーリー22のそれぞれの近傍には、メッシュベルト30のテンションを調整するテンションプーリー211,221が設けられている。
張力分断機構12は、予熱部11の入口端から焼結部13の出口端までの間で、所定の張力がメッシュベルト30に作用する区間を入口側と出口側とに分断する。張力分断機構12により分断された各区間のメッシュベルト30の張力は、実質的に影響し合うことがなく、互いに独立した状態となっている。即ち、メッシュベルト30に独立して張力が作用する区間を短くできる。特に、最高温度終端箇所Tから上流側に最も近いプーリーとの間の長さ(以下、加熱ベルト区間L)を従来に比較して短くできる。最高温度終端箇所Tは、図1では説明の便宜上、焼結部13の搬送方向中央に示すが、実際には異なる場合がある。それにより、メッシュベルト30に作用する応力を低減できるため、メッシュベルト30の高温クリープ変形を抑制でき、メッシュベルト30を長寿命化できる。張力分断機構12の設置箇所は、理論上、予熱部11の途中や焼結部13の途中(特に最高温度終端箇所Tよりも上流側)に設けることができるが、ここでは、予熱部11と焼結部13との間に設ける。本例の張力分断機構12は、入口側プーリー21と出口側プーリー22を結ぶ接線上にて加熱対象を搬送する中間搬送機構120と、中間搬送機構120により形成されるメッシュベルト30の弛み部31とを備える。
中間搬送機構120は、入口側プーリー21との間でメッシュベルト30を架け渡す中間駆動プーリー121と、出口側プーリー22との間でメッシュベルト30を架け渡す中間従動プーリー122とを備える。
中間駆動プーリー121は、張力分断機構12よりも下流側(焼結部13側)のメッシュベルト30とは分断して張力が作用するように、張力分断機構12よりも上流側(予熱部11側)のメッシュベルト30を駆動させる。この中間駆動プーリー121により、後述するメッシュベルト30の弛み部31が形成される。
中間従動プーリー122は、メッシュベルト30の弛み部31の下流側が架け渡されると共に、メッシュベルト30を焼結部13の表面に沿って搬送させる。この中間従動プーリー122の径は、中間駆動プーリー121の径よりも小さくしてもよい。中間従動プーリー122は、中間駆動プーリー121とは異なり、メッシュベルト30との摩擦抵抗を確保しなくてよいからである。中間従動プーリー122の径を中間駆動プーリーの径よりも小さくすれば、メッシュベルト30との摩擦抵抗を小さくしてメッシュベルト30を走行させ易い。その上、予熱部11から焼結部13への搬送経路を短くし易いため、その搬送過程での加熱対象の温度低下を抑制し易い。
搬送ロール123は、メッシュベルト30が架け渡されず両プーリー121,122の間隔を埋めるように配置され、中間駆動プーリー121から中間従動プーリー122に加熱対象を搬送する。それにより、中間駆動プーリー121と中間従動プーリー122との互いの配置関係を加熱対象の搬送方向の長さよりも大きな間隔に配置しても、両プーリー121,122間に加熱対象が脱落したり、大きく傾いたりしない。搬送ロール123の数は、そのサイズや上記間隔の長さに応じて適宜選択でき、ここでは複数としている。搬送ロール123は、本例では従動ロールであるが、駆動ロールとすることもできる。
中間搬送機構120は、メッシュベルト30の弛み部31に掛けられて、メッシュベルト30のテンションを調整するテンションプーリー124を備えることが好ましい。中間搬送機構120は、テンションプーリー124に加えてアイドラプーリー125を備えていてもよいが、このアイドラプーリー125はなくてもよい。
張力分断機構12には、予熱部11から搬送される加熱対象を保温する補助ヒーター126(二点鎖線で示す)が設けられていてもよい。張力分断機構12における加熱対象の搬送経路の周辺は、断熱材で覆われている。そのため、張力分断機構12での加熱対象の温度低下が小さければ、補助ヒーター126は不要で、断熱材だけでよい。しかし、例えば、中間駆動プーリー121などのサイズや中間駆動プーリー121と中間従動プーリー122との間隔の長さなどによっては予熱部11と焼結部13との間の長さが長くなることもある。補助ヒーター126を設けていれば、上記のように予熱部11と焼結部13との間の長さが長くなっても、予熱した加熱対象の温度が予熱部11から焼結部13への搬送過程で所定の温度より低下するのを抑制できる。
メッシュベルト30の弛み部31は、その上流と下流とで、所定の張力がメッシュベルト30に作用する区間を分断する。この分断により、加熱ベルト区間Lを、最高温度終端箇所Tから中間従動プーリー122までの長さL1(図1)にでき、最高温度終端箇所Tから入口側プーリー21までの長さL2(図2)であった従来の加熱ベルト区間Lよりも短くできる。その上、この弛み部31の存在により、入口側プーリー21と中間駆動プーリー121との間におけるメッシュベルト30の張力と、中間従動プーリー122と出口側プーリー22との間におけるメッシュベルト30の張力とは、実質的に影響し合うことがなく、互いに独立した状態となっている。それにより、焼結部13におけるメッシュベルト30に作用する応力を低減できるため、メッシュベルト30の高温クリープ変形を抑制でき、メッシュベルト30を長寿命化できる。
以上説明した実施形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1によれば、予熱部11と焼結部13との間の張力分断機構12により、その間で所定の張力がメッシュベルト30に作用する区間を分断させられる。その分断により、加熱ベルト区間Lを従来よりも短くすると共に、予熱部11側のメッシュベルト30と焼結部13側のメッシュベルト30とに作用する張力が、実質的に影響し合うことがなく、互いに独立した状態となる。その結果、メッシュベルト式連続焼結炉1は、以下の効果を奏することができる。
焼結体の製造方法は、走行ベルトで上流側から下流側に搬送される成形体に、予熱、焼結、冷却の各工程を順に施す。この焼結体の製造方法の主たる特徴とするところは、走行ベルトのうち、予熱工程の始端から焼結工程の終端に対応する範囲内で、所定の張力が走行ベルトに作用する区間を上流側と下流側とに分断して成形体を搬送する点にある。以下の説明では、加熱対象である成形体の概要を説明した後、成形体の搬送、予熱、焼結、冷却を順に説明する。ここでは、焼結体の製造には、上述のメッシュベルト式連続焼結炉1を用い、メッシュベルト30が上記走行ベルトに相当する。
加熱対象である成形体は、例えば、後述の焼結を経て製品化される機械部品の素材である。機械部品の種類としては、例えば、スプロケット、オイルポンプロータ、ギア、リング、フランジ、プーリーなどが挙げられる。成形体は、金属粉末を含む原料粉末を圧縮成形してなる。金属粉末の種類は、上記機械部品の種類に応じて適宜選択でき、例えば、鉄や鉄を主成分とする鉄合金などが挙げられる。成形体は、潤滑剤を含有していることが好ましい。上記のように原料粉末を圧縮成形して成形体を作製する際に、原料粉末が潤滑剤を含有することで成形時の潤滑性が高められ成形性が向上するからである。成形体の形状・サイズは、上記機械部品の最終形状に沿った形状・サイズである。
上記成形体を上述の炉本体部10に搬送する。この成形体の炉本体部10への搬送は、上述のメッシュベルト30の上に載置して行われる。メッシュベルト30の上には、成形体を直接載置してもよいし、成形体が並べられたトレイを載置してもよい。複数の成形体を搬送する際、複数の成形体をメッシュベルト30上で重ねずに搬送してもよいが、複数の成形体をメッシュベルト30上に多段積みして搬送することもできる。メッシュベルト式連続焼結炉1は、上述のように所定の張力がメッシュベルト30に作用する区間を短くできて、メッシュベルト30に作用する応力を低減できるからである。多段積みすれば、焼結体の生産性を高められる。成形体の多段積みは、成形体を電磁石や真空パッドなどで吸着したり、ロボットハンドなどのマニピュレータで把持したりすることで行える。
成形体を焼結する前に加熱する。この予熱により成形体の温度を一定以上に高めることで、成形体に含まれる潤滑剤を除去することができる。それにより、成形体を焼結した際、煤や肌荒れなどが生じ難く、表面性状に優れる焼結体を製造し易い。この予熱は、上述の予熱部11により行う。予熱温度は、成形体に含まれる潤滑剤の材質に応じて適宜選択できるが、例えば300℃以上、更には500℃以上が挙げられる。予熱温度は、例えば、730℃以下、更には700℃以下が挙げられる。
成形体を焼結して焼結体を作製する。この焼結は、上述の焼結部13により行う。焼結温度は、成形体の材質に応じて焼結に必要な温度を適宜選択することができ、例えば、鉄系焼結体の場合、1000℃以上、更に1100℃以上が挙げられる。焼結温度の上限は、メッシュベルト30の耐熱性によるが、例えば、1160℃以下が挙げられる。焼結時間は、凡そ20分以上150分以下が挙げられる。
焼結体を冷却する。焼結された直後の焼結体の温度は非常に高いため、焼結体を冷却してその温度を下げる。この冷却は、冷却部14により行う。冷却には、例えば、冷却部14内に冷媒ガスを吹き流すことが挙げられる。冷媒ガスには、例えば、窒素ガスを用いることができる。
上述の焼結体の製造方法によれば、複数の成形体を多段積みして搬送したり、予熱の昇温速度を遅くしたりすることができ、表面性状に優れる焼結体を生産性よく製造できる。
10、110 炉本体部
11 予熱部
12 張力分断機構
120 中間搬送機構
121 中間駆動プーリー
122 中間従動プーリー
123 搬送ロール
124 テンションプーリー
125 アイドラプーリー
126 補助ヒーター
13 焼結部
14 冷却部
21 入口側プーリー
22 出口側プーリー
211,221 テンションプーリー
30 メッシュベルト
31 弛み部
Claims (10)
- 予熱部と焼結部と冷却部とを有する炉本体部と、前記炉本体部の入口側プーリー及び出口側プーリーに張架されて、前記炉本体部の入口から出口に走行して加熱対象を搬送する無端のメッシュベルトとを備えるメッシュベルト式連続焼結炉であって、
前記予熱部と前記焼結部との間に設けられて、所定の張力が前記メッシュベルトに作用する区間を入口側と出口側とに分断する張力分断機構を備えるメッシュベルト式連続焼結炉。 - 前記張力分断機構は、前記入口側プーリーと前記出口側プーリーを結ぶ接線上にて前記加熱対象を搬送する中間搬送機構を備える請求項1に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
- 前記中間搬送機構は、
前記入口側プーリーとの間で前記メッシュベルトを架け渡す中間駆動プーリーと、
前記出口側プーリーとの間で前記メッシュベルトを架け渡す中間従動プーリーとを備え、
前記メッシュベルトは、前記中間駆動プーリーと前記中間従動プーリーとの間に形成される弛み部を有する請求項2に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。 - 前記中間駆動プーリーと前記中間従動プーリーとは互いに、前記加熱対象の搬送方向の長さよりも大きな間隔に配置され、
前記中間搬送機構は、前記メッシュベルトが架け渡されることなく前記間隔を埋めるように配置されて、前記中間駆動プーリーから前記中間従動プーリーに前記加熱対象を搬送する搬送ロールを備える請求項3に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。 - 前記中間駆動プーリーと前記中間従動プーリーとは互いに、前記加熱対象の搬送方向の長さよりも小さな間隔に配置されている請求項3に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
- 前記中間搬送機構は、前記メッシュベルトの前記弛み部に掛けられて、前記メッシュベルトのテンションを調整するテンションプーリーを備える請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
- 前記張力分断機構は、前記加熱対象を保温する補助ヒーターが設けられている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
- 走行ベルトで上流側から下流側に搬送される成形体に、予熱、焼結、冷却の各工程を順に施す焼結体の製造方法であって、
前記走行ベルトのうち、前記予熱工程の終端と前記焼結工程の始端との間で、所定の張力が走行ベルトに作用する区間を上流側と下流側とに分断して成形体を搬送する焼結体の製造方法。 - 複数の前記成形体を多段積みして搬送する請求項8に記載の焼結体の製造方法。
- 前記予熱の昇温速度が40℃/min以下である請求項8又は請求項9に記載の焼結体の製造方法。
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