JP5742214B2 - 連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法に関する。
転がり軸受の内輪や外輪に対しては、焼入れによる硬化処理が行われる。焼入れは、加熱工程と冷却工程とからなり、加熱工程で使用される焼入れ炉には、ベルトなどの駆動によりワークを搬送しながら連続的に加熱する連続焼入れ炉と、ワークを一つ一つ加熱処理するバッチ式の焼入れ炉がある。一般に、バッチ式の焼入れ炉よりも連続焼入れ炉の方が焼入れ変形が大きいことが分かっている。また、連続焼入れ炉は、生産性を重視して大量のワークに焼入れを行う場合に適しており、バッチ式の焼入れ炉は、多品種、異種条件に対応し易い。
図1は、転がり軸受の内輪や外輪に対する一般的な連続熱処理設備を示す。この設備は、連続加熱炉1と、その内部に配置された耐熱リンクベルト3と、このベルト3の上流側にワーク5を導入するためのフィーダー2と、ベルト3の下流に達したワーク(加熱後のワーク)6を、焼入れ油8を入れた容器7に落とすシューター4を備えている。
容器7内には、ワーク6を焼入れ油8に浸漬しながら上昇させて容器7外まで導く搬送メッシュベルト9が配置されている。そして、焼入れ後のワーク10は、搬送メッシュベルト9から洗浄槽11内とその前後に渡って配置された搬送ベルト16の上流側に落とされる。搬送ベルト16に載せられたワーク(焼入れ後のワーク)10は、洗浄槽11内で洗浄されながら進み、洗浄後のワーク14が焼戻し炉12用の搬送ベルト17に載せられて焼戻しがなされ、焼戻し完了後のワーク15として次工程のために回収される。
焼入れ油8を入れた容器7に自然落下させた時のワーク6の姿勢や落下のタイミングによって、ワーク6の冷却状態が変わり、図2(a)に示すように、比較的素直に落下する場合と、図2(b)に示すように、後ろのワーク6と干渉して落下が遅れる場合とでは、後者の方が冷却ムラが発生し易いため、焼入れ変形が大きくなる。
[本発明に至る経緯]
図1に示す連続熱処理設備で、呼び番号が6009である深溝玉軸受の外輪を熱処理し、各工程を行うことによって生じる外輪の変形量を調べる試験を行った。
この外輪は、外径が75mmで、有効肉厚が3.734mmで、幅が16mmの環状体である。また、この外輪の材質は高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)である。
連続加熱炉1としては、リンクベルト3で搬送する方式のものを用い、フィーダー2としては振動を加えてワーク5をリンクベルト3に向かわせる振動フィーダーを用いた。焼入れ剤としては、出光興産(株)製の「ダフニーブライドクエンチ油」を用い、洗浄槽に入れる洗浄液としては、カンエイ産業(株)製「クリンスーパー285N」を用いた。
先ず、フィーダー2を25〜50Hzで稼動して、ワーク5を連続加熱炉1内のリンクベルト3に載せる。リンクベルト3の駆動速度は、炉の加熱部長さ当り15〜43分である。この条件でワーク5の移動を行うと、図3(a)に示すように、フィーダー2からワーク5がリンクベルト3の上に載せられ、図3(b)に示すように、フィーダー2内でワーク5が詰まり、空間ができる場合があるが、その後にフィーダー2から入れられたワークにより押されて詰まりが解消し、図3(c)に示すように、密に配置された状態となってリンクベルト3で搬送されながら加熱される。この加熱温度は830〜850℃とし、加熱時間は15〜43分とした。
フィーダー2上の下流端まで進んだワーク6は、シューター4から焼入れ油8が入った容器7内に落下して、搬送メッシュベルト9上に載る。搬送メッシュベルト9上に載ったワーク10は、メッシュベルト9の駆動により、容器7の底側から徐々に上昇して焼入れ油8の上方まで搬送されることで焼入れされる。焼入れ後のワーク10は、搬送メッシュベルト9から洗浄槽11内とその前後に渡って配置された搬送ベルト16の上流側に落とされる。搬送ベルト16に載せられたワーク(焼入れ後のワーク)10は、洗浄槽11内で洗浄されながら進み、洗浄後のワーク14が焼戻し炉12用の搬送ベルト17に載せられて焼戻しがなされ、焼戻し完了後のワーク15が得られる。
各工程後のワークの変形量は、真円度と反りを測定してその変化率で比較した。環状体の径方向での変形(楕円変形)に関しては、ワークである外輪の外径寸法の最大値と最小値を測定して、その差を真円度とし、この真円度を外径の最小値で割った値を楕円変形率(%)とした。環状体の軸方向での変形(反り変形)に関しては、ワークである外輪の軸方向寸法の最大値と最小値を測定して、その差を反りとし、この反りを軸方向寸法の最小値で割った値を反り変形率(%)とした。楕円変形率および反り変形率を各工程後に60個ずつ測定した。また、これらの測定値から、それぞれの変形率の平均値を算出した。
その結果を下記の表1と図4に示す。
Figure 0005742214
この結果から、焼入れ時の加熱工程と冷却工程で変態応力や熱応力が作用することで、焼入れ後の楕円変形および反り変形が大きくなるが、その後の工程では搬送時の落下やワーク同士の衝突などで徐々に変形したものと考えられる。
次に、焼入れ時の加熱工程のみでのワークの変形量を調べるために、リンクベルト3の最も下流の位置に達したワークを、リンクベルト3の回転の向きを交互に変えることで、その位置にとどめた状態で炉内で徐冷し、焼入れしない状態で取り出して変形率を調べた。また、徐冷後に、洗浄および焼き戻し工程を行った後のワークの変形率も調べた。その結果を、下記の表2と図5に併せて示す。
Figure 0005742214
この結果から、焼入れ時の加熱工程のみでも、大きく楕円変形および反り変形していることが分かる。
次に、加熱焼入れによって発生する変形の一部として、前工程として行った旋削などの機械加工で付与された残留応力が解放されることで発生する変形があるため、この残留応力の解放による変形のみを調べた。すなわち、バッチ式の熱処理炉を用いてワークを加熱した後、球状焼鈍の熱処理パターンで時間をかけてゆっくり冷却した場合の変形量を測定した。その結果を表3と図6に示す。
Figure 0005742214
この結果から、残留応力の解放による変形のみで生じる変形量は、楕円変形については加熱炉で加熱後に放冷した場合の変形量(表2参照)より小さいことが分かる。反り変形については、加熱炉で加熱後に放冷した場合の変形量(表2参照)と同等であった。
以上のことから、図1に示す連続熱処理設備で処理されたワークは、加熱炉1での加熱工程で大きく楕円変形しているが、その主な原因は残留応力の解放ではないことが分かる。
標準的な連続焼入れ設備では、平面図である図7(a)と側面図である図7(b)に示すように、フィーダー2上のワーク5も加熱炉1内のワーク6も、互いに接触して押し合いながら密に存在しているため、温度が上昇してワークが熱膨張すると、図8(a)の状態から図8(b)の状態になる。ワークがSUJ2製の前記寸法の外輪であるため、730℃で約1mmほど膨張する(d2−d1≒1mm)。この外輪が押し合い状態となってオーステナイト組織に変態するため、変態超塑性が作用して変形しやすい状態になる。変態超塑性とは、変態が発生、進行しているときに、低い作用応力で塑性が発生する現象である。図8(b)に示すように、互いに押し合った状態で変態超塑性が作用してワークが変形する。
一方、反り変形については、バッチ式加熱炉においても連続焼入れ設備と同様に、反り変形を抑える拘束がないため、反り変形量が同等であったものと考えられる。
このように、従来の連続焼入れ方法ではワークの楕円変形を抑えることは困難であり、従来のバッチ式焼入れにおいてもワークの反り変形を抑えることは困難である。
特許文献1には、焼入れ変形を小さくするために、処理材を投入する際の焼入れ油の面圧を減圧し、処理材の表面が蒸気膜段階または沸騰段階にある状態で不活性ガスあるいは空気を導入して焼入れ油面圧を大きくすることで、冷却ムラに起因して発生する歪みを小さくする方法が記載されている。しかし、この方法は連続焼入れ炉ではなく、バッチ式の焼入れ炉に適用される方法である。
特許文献2には、転がり軸受の環状体の焼入れにおける冷却工程で、環状体の組織がオーステナイト状態のうちに、環状体を金型に圧入して塑性加工による変形矯正を行うことで焼入れ変形を小さくすることが記載されている。しかし、この方法は、連続焼入れ炉で加熱した後の冷却工程でワークを一つ一つ処理する方法であるため、生産性が低く、大量生産には向いていない。
特許文献3には、連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法として、図9に示す方法が記載されている。この方法で使用する設備は、ワーク(環状体)5をベルト3で搬送しながら連続的に加熱する連続加熱炉1と、ベルト3上にワーク5を、径方向が水平方向に沿って置かれるように導くフィーダー2と、焼入れ油(焼入れ剤)8を入れた容器7と、加熱後のワーク6を搬送ベルト3から容器7内に配置された搬送メッシュベルト9上に落下させるシューター4と、からなる。
特許文献3の方法では、フィーダー2上、加熱炉1の搬送ベルト3上、搬送メッシュベルト9上で、全てのワーク5,6,10同士が接触しない状態に保持しながら移動させることで、環状体の楕円変形(図8で説明した変形)を抑制することができる。
しかし、特許文献3の方法では、環状体の軸方向での変形(反り変形)を抑制することができない。また、この方法は、加熱炉の搬送ベルト上において、全ての環状体同士を接触しない状態に保持しながら移動させるため、加熱炉で処理できるワーク数が少ないことから、生産性の点で改善の余地がある。
特開2001−316722号公報 特許3817764号公報 特開2009−84635号公報
本発明の課題は、連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法として、焼入れ変形を、楕円変形だけでなく反り変形についても抑えることができ、特許文献3の方法よりも生産性が高い方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、環状体からなるワークをベルトで搬送しながら連続的に加熱する加熱炉と、この加熱炉の搬送ベルト上に環状体を、径方向が水平方向に沿って置かれるように導くフィーダーと、焼入れ剤を入れた容器と、加熱後のワークを搬送ベルトから前記容器内に配置された搬送メッシュベルト上に落下させるシューターと、を備え、搬送メッシュベルトはワークを焼入れ剤に浸漬しながら容器外まで導くものである連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法において、前記フィーダー上および前記加熱炉の搬送ベルト上で、全ての環状体を、互いに外周面が接触せず、鉛直方向に2個以上が積み上げられた状態に保持しながら移動させ、前記搬送メッシュベルト上で、全ての環状体を互いに接触しない状態に保持しながら移動させることを特徴とする連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法を提供する。
本発明の方法は、前記フィーダー上および前記加熱炉の搬送ベルト上で、全ての環状体を、互いに外周面が接触せず、鉛直方向に2個積み上げられた状態に保持しながら移動させた場合、環状体の厚さをtとし、外径をDとし、軸方向寸法をBとしたとき、「D/t」で表される肉厚率が11.2以上27.2以下であり、「D/B」が3.5以上8.2以下である環状体が対象の時に、特に高い効果が得られる。
本発明の連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法によれば、焼入れ時の環状体の楕円変形および反り変形を抑えることができるとともに、特許文献3の方法よりも生産性を高くすることができる。
転がり軸受の内輪や外輪に対する一般的な連続熱処理設備を示す概略構成図である。 加熱炉の下流端から焼入れ油を入れた容器に自然落下させた時のワークの姿勢や落下のタイミングを説明する図であり、比較的素直に落下する場合(a)と後ろのワークと干渉して落下が遅れる場合(b)を示す。 フィーダーからワークがリンクベルトの上に載せられた状態を示す側面図(a)、フィーダー内でワークが詰まり、空間ができる場合を示す平面図(b)、フィーダーから入れられたワークにより押されて詰まりが解消した状態を示す平面図(c)である。 従来法で各工程後のワークの平均変形率を示すグラフである。 従来法で、加熱後に焼入れしない状態(徐冷後)で取り出して調べた変形率と、徐冷後に、洗浄および焼き戻し工程を行った後に調べたワークの変形率を示すグラフである。 バッチ式の熱処理炉を用いてワークを加熱した後、球状焼鈍の熱処理パターンで時間をかけてゆっくり冷却した場合の変形量を測定した結果を示す図である。 標準的な連続焼入れ設備を示す平面図(a)と側面図(b)である。 図7の連続焼入れ設備で温度が上昇してワークが熱膨張した時の変化を示す図であり、加熱前の状態(a)と加熱後の状態(b)の状態を示す。 特許文献3の方法を示す平面図(a)と側面図(b)である。 本発明の実施形態の方法を示す平面図(a)と側面図(b)である。 実施例の方法で、加熱後に焼入れしない状態(徐冷後)で取り出して調べた変形率と、徐冷後に、洗浄および焼き戻し工程を行った後に調べたワークの変形率を示すグラフであって、(a)は楕円変形率を(b)は反り変形率を示す。 焼入れ時に変態しないステンレス鋼を用いて矩形リングを作製し、これを用いて、連続焼入れ、洗浄、焼戻しの一連の工程を行った結果(楕円変形率)を示すグラフであって、(a)は従来の方法による結果を、(b)は実施例の方法による結果を示す。 焼入れ時に変態しないステンレス鋼を用いて矩形リングを作製し、これを用いて、連続焼入れ、洗浄、焼戻しの一連の工程を行った結果(反り変形率)を示すグラフであって、(a)は従来の方法による結果を、(b)は実施例の方法による結果を示す。 実施例の方法で、加熱炉の下流端から焼入れ油を入れた容器に自然落下させた時のワークの姿勢や落下のタイミングを説明する図である。 表7に示す、各寸法の内輪および外輪のそれぞれ1000個について、従来の方法と本発明の方法と比較例(特許文献3)の方法で、連続焼入れ、洗浄、焼戻しを行い、不良率を測定した結果を示すグラフであって、(a)は、楕円変形不良率と肉厚率(D/t)との関係を、従来の方法を「○」で本発明の方法を「●」で示し、(b)は、反り変形率不良率とD/Bとの関係を、従来の方法を「○」で本発明の方法を「●」で比較例の方法を「△」で示す。 表7に示す、各寸法の内輪および外輪のそれぞれ1000個について、従来の方法と本発明の方法と特許文献3(比較例)の方法で、連続焼入れ、洗浄、焼戻しを行い、不良率を測定した結果を示すグラフであって、(a)は「従来例と本発明例とでの楕円変形不良率の差」と肉厚率(D/t)との関係を示し、(b)は、「従来例と本発明例とでの反り変形不良率の差」とD/Bとの関係(○)と「比較例と本発明例とでの反り変形不良率の差」とD/Bとの関係(△)を示す。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図10は、この実施形態の方法を示す平面図(a)と側面図(b)である。この方法で使用する設備は、ワーク(環状体)5a,5bをベルト3で搬送しながら連続的に加熱する連続加熱炉1と、ベルト3上にワーク5a,5bを、径方向が水平方向に沿って置かれるように導くフィーダー2と、焼入れ油(焼入れ剤)8を入れた容器7と、加熱後のワーク6a,6bを搬送ベルト3から容器7内に配置された搬送メッシュベルト9上に落下させるシューター4と、からなる。
そして、フィーダー2上と加熱炉1の搬送ベルト3上で、全てのワーク5a,5b,6a,6bを、互いに外周面が接触せず、鉛直方向に2個積み上げられた状態に保持しながら移動させる。フィーダー2上で、上側のワーク5aは、下側の隣り合う3つのワーク5bで形成される隙間の中心と、各ワーク5aの中心を合わせて配置され、この状態が維持されてワーク6a,6bが搬送ベルト3上を移動する。この移動は、加熱時のワーク最大径などから加熱前のワーク同士の隙間を計算し、ワーク加熱時でもワーク外周面が互いに接触せず、フィーダー2上でのワークの配置が維持されるように、フィーダー2の周波数を調整することで実現する。
また、搬送メッシュベルト9上では、全てのワーク10が互いに接触せず、鉛直方向にも1個のみが存在する状態に保持しながら移動させる。この移動は、加熱時のワーク最大径などから加熱前のワーク同士の隙間を計算し、ワーク加熱時でもワーク外周面が互いに接触しないようにフィーダー2の周波数を調整することで実現する。
この実施形態では、ワークを鉛直方向に2個積み上げられた状態にしているが、鉛直方向にワークを積み上げる個数は3個以上であってもよく、最上段のワークは製品として使用しないダミーを用いてもよい。
実施形態に記載した設備を用い、焼入れ時の加熱工程のみでのワーク6の変形量を調べるために、リンクベルト3の最も下流の位置に達したワークを、リンクベルト3の回転の向きを交互に変えることで、その位置にとどめた状態で炉内で徐冷し、焼入れしない状態で取り出して変形率を調べた。また、徐冷後に、洗浄および焼き戻し工程を行った後のワークの変形率も調べた。その結果を、下記の表4と図11に併せて示す。図11(a)は楕円変形率、図11(b)は反り変形率を示すグラフである。
Figure 0005742214
この結果を前述した従来法の結果(表2および図5)と比較すると、焼入れ時の加熱工程のみでのワークの変形量が低減している(平均変形量:楕円変形0.18→0.11、反り変形1.5→1.0)ことが分かる。ただし、焼戻し後の変形量が従来法では低減していた(表2で、楕円変形0.18→0.14、反り変形1.5→1.2)のに対して、この実施例の方法では僅かではあるが増加していた(表4で、楕円変形0.11→0.16、反り変形1.0→1.3)。また、最大変形率が従来法では楕円変形0.94、反り変形4.7であったのに対して、この実施例の方法では楕円変形0.38、反り変形2.3と大幅に低減されていた。
焼戻し後の変形率が大きくなる理由として、焼入れの冷却工程でワーク間の隙間が適切に保持されていないことが考えられる。そのため、焼入れ時に変態しないステンレス鋼を用いて矩形リングを作製し、これを用いて、従来の方法とこの実施例の方法でそれぞれ連続焼入れ、洗浄、焼戻しの一連の工程を行った。その結果を、従来法については表5に、実施例の方法については表6に示す。
Figure 0005742214
Figure 0005742214
また、図12に、従来法による楕円変形率(a)と実施例の方法による楕円変形率(b)のグラフを示す。図13に、従来法による反り変形率(a)と実施例の方法による反り変形率(b)のグラフを示す。
この結果から従来例(表5と図12(a)および図13(a))よりも実施例(表6と図12(b)および図13(b))の方が、加熱放冷後も焼戻し後も変形率が少なくなることが分かる。ただし、従来例と実施例とで加熱放冷後と焼戻し後での変形率の増加量が同じになっている。このことから、実施例の方法により、焼入れの冷却工程での変態応力を制御する効果があると推測される。
また、実施例の方法では、図14に示すように、ワーク6をベルト3から焼入れ油8を入れた容器7に自然落下させる際に一定のタイミングで安定して落下するが、従来法では図2(a)および図2(b)に示すように、ワーク6の落下のタイミングがばらついたり、落下姿勢や落下時の回転量が異なるため安定しない。
次に、下記の表7に示す、各寸法の内輪および外輪のそれぞれ1000個について、従来の方法と本発明の方法と特許文献3(比較例)の方法で、連続焼入れ、洗浄、焼戻しを行った。そして、従来の方法と本発明の方法で得られたものについては、最大真円度が0.15mmを超えたものを不良品として、楕円変形の不良率を測定した。また、従来の方法と本発明の方法と特許文献3(比較例)の方法で得られたものについて、最大反りが0.15mmを超えたものを不良品として、反り変形の不良率を測定した。
特許文献3の方法としては、図10において上側のワーク5aを載せずに下側のワーク5bのみを同じ配置となるようにした以外は実施形態と同じ方法(すなわち、図9に示す方法)を実施した。
なお、熱処理前の旋削工程や冷間加工で発生する残留応力のばらつきを考慮して、同じサンプルを前工程のロットが異なる別のタイミングで2回測定している。この結果を下記の表7に併せて示すとともに、図15にグラフで示す。
図15(a)は肉厚率と楕円変形不良率との関係を示すグラフであり、図15(b)は「D/B」と反り変形不良率との関係を示すグラフである。これらのグラフにおいて、「●」は実施例の方法による結果を、「○」は従来例の方法による結果を示す。また、図15(b)において、「△」は特許文献3(比較例)の方法による結果を示す。
また、同じ肉厚率の従来例の2種類の楕円変形不良率と本発明例の2種類の楕円変形不良率のうち、従来例の楕円変形不良率の最小値から本発明例の楕円変形不良率の最大値を引いた値を、楕円変形不良率の差として算出した。この結果を下記の表7に併せて示すとともに、肉厚率と「楕円変形不良率の差」との関係を図16(a)にグラフで示す。
また、同じ「D/B」の従来例の2種類の反り変形不良率と本発明例の2種類の反り変形不良率のうち、従来例の反り変形不良率の最小値から本発明例の反り変形不良率の最大値を引いた値を、反り変形不良率の差(対従来例)として算出した。さらに、同じ「D/B」の比較例(特許文献3の方法で得られたもの)の2種類の反り変形不良率と本発明例の2種類の反り変形不良率のうち、比較例の反り変形不良率の最小値から本発明例の反り変形不良率の最大値を引いた値を、反り変形不良率の差(対比較例)として算出した。
これらの結果も下記の表7に併せて示すとともに、「D/B」と「反り変形不良率の差」との関係を図16(b)にグラフで示す。図16(b)において、「○」は従来例との差を示し、「△」は比較例(特許文献3の方法で得られたもの)との差を示す。
Figure 0005742214
この結果から、楕円変形については、肉厚率が8.7の場合は従来の方法でも不良率が0であり、31.7の場合は本発明例の方が不良率が高いため、肉厚率が11.2以上27.2以下で本発明の方法による効果が得られ、肉厚率が13.7以上24.0以下であるとさらに高い効果が得られることが分かる。反り変形については、「D/B」が9.5の場合は従来の方法でも不良率が0であり、2.8と3.1の場合は本発明例の方が不良率が高いため、「D/B」が3.5以上8.2以下で本発明の方法による効果が得られ、「D/B」が3.9以上8.2以下であるとさらに高い効果が得られることが分かる。
1 連続加熱炉
2 フィーダー
3 耐熱リンクベルト
4 シューター
5 ワーク
5a 上側のワーク
5b 下側のワーク
6 加熱後のワーク
6a 加熱後の上側のワーク
6b 加熱後の下側のワーク
7 容器
8 焼入れ油
9 搬送メッシュベルト
10 焼入れ後のワーク
11 洗浄槽
12 焼戻し炉
14 洗浄後のワーク
15 焼戻し完了後のワーク
16 搬送ベルト
17 搬送ベルト

Claims (2)

  1. 環状体からなるワークをベルトで搬送しながら連続的に加熱する加熱炉と、この加熱炉の搬送ベルト上に環状体を、径方向が水平方向に沿って置かれるように導くフィーダーと、焼入れ剤を入れた容器と、加熱後のワークを搬送ベルトから前記容器内に配置された搬送メッシュベルト上に落下させるシューターと、を備え、搬送メッシュベルトはワークを焼入れ剤に浸漬しながら容器外まで導くものである連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法において、
    環状体の厚さをtとし、外径をDとし、軸方向寸法をBとしたとき、「D/t」で表される肉厚率が11.2以上27.2以下であり、「D/B」が3.5以上8.2以下である環状体を対象とし、
    前記フィーダー上および前記加熱炉の搬送ベルト上で、全ての環状体を、互いに外周面が接触せず、鉛直方向に2個以上が積み上げられた状態に保持しながら移動させ、前記搬送メッシュベルト上で、全ての環状体を互いに接触しない状態に保持しながら移動させることを特徴とする連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法。
  2. 環状体からなるワークをベルトで搬送しながら連続的に加熱する加熱炉と、この加熱炉の搬送ベルト上に環状体を、径方向が水平方向に沿って置かれるように導くフィーダーと、焼入れ剤を入れた容器と、加熱後のワークを搬送ベルトから前記容器内に配置された搬送メッシュベルト上に落下させるシューターと、を備え、搬送メッシュベルトはワークを焼入れ剤に浸漬しながら容器外まで導くものである連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法において、
    環状体の厚さをtとし、外径をDとし、軸方向寸法をBとしたとき、「D/t」で表される肉厚率が11.2以上27.2以下であり、「D/B」が3.5以上8.2以下である環状体を対象とし、
    前記フィーダー上および前記加熱炉の搬送ベルト上で、全ての環状体を、互いに外周面が接触せず、鉛直方向に2個積み上げられた状態に保持しながら移動させ、前記搬送メッシュベルト上で、全ての環状体を互いに接触しない状態に保持しながら移動させることを特徴とする連続焼入れ炉を用いた環状体の焼入れ方法。
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