以下、図面を用いて本実施形態に係る車両用ポップアップフード装置20(以下、「PUH装置20」という)について説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、PUH装置20が適用された車両の前方向(進行方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両左右方向(車幅方向)の左右、を示すものとする。
図7に示されるように、本実施形態のPUH装置20は、「フード」としてのフロントフード10の後端部10Rを仮想線で示す閉止位置から実線で示す持上位置にポップアップさせる(持上げる)機能を備えたポップアップ機能付きフードヒンジとされている。以下、先ずフロントフード10の概略の構成について説明し、次いでPUH装置20について説明する。
(フロントフード10の構成)
図8に示されるように、フロントフード10は、前後方向及び車幅方向(左右方向)に延在すると共に車両平面視で略矩形状に形成されて、図示しないパワーユニットを収容するパワーユニットルームERを上方側から覆っている。また、フロントフード10の後端部10Rは、車幅方向に間隔を空けて配置された左右一対のPUH装置20によって回動可能に支持されている。換言すると、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向両端部が、PUH装置20によって回動可能に支持されている。一方、図7に示されるように、フロントフード10の前端部10Fの車幅方向中間部には、フードストライカ12が固定されている。そして、車体の前端部の車幅方向中間部に配置された単一のフードロック装置14にフードストライカ12が係止されることによって、フロントフード10が閉止位置に保持される(即ち、フロントフード10の回動が規制される)ようになっている。
(PUH装置20)
図8に示されるように、PUH装置20は、フロントフード10の後端部10Rの車幅方向両端部にそれぞれ配設されると共に、左右対称に構成されている。このため、以下の説明では右側に配置されたPUH装置20について説明し、左側に配置されたPUH装置20の説明は省略する。
図1及び図2に示されるように、PUH装置20は、フロントフード10を開閉可能に支持するフードヒンジ22と、車両と歩行者との衝突時に作動するアクチュエータ30と、アクチュエータ30の作動後にフロントフード10の振動を抑制するための振動抑制機構50と、を含んで構成されている。以下、具体的に説明する。
(フードヒンジ22について)
フードヒンジ22は、車体に固定されるヒンジベース24と、ヒンジベース24に回動可能に連結された第1アーム26と、第1アーム26に回動可能に連結されると共に「締結部材」としてのヒンジボルトB1(図7参照)を介してフロントフード10の後端部10Rに固定された第2アーム28と、を含んで構成されている。
ヒンジベース24は、鋼板材にプレス加工等を施すことによって形成されており、車両正面視で略逆L字形状に屈曲されている。ヒンジベース24の下端部は取付壁部24−1とされており、取付壁部24−1は、略上下方向を板厚方向にして、前後方向に延在されている。そして、取付壁部24−1が取付ボルトB2よって車体に固定されており、取付ボルトB2は、前後方向に所定の間隔を空けて配置されている。
また、ヒンジベース24は側壁部24−2を有しており、側壁部24−2は取付壁部24−1の車幅方向内側端から上側へ延びている。この側壁部24−2は、車両側面視で上斜め前方へ開放された略V字形状に形成されている。さらに、ヒンジベース24には、ビード部24Bが形成されており、ビード部24Bは、取付壁部24−1の車幅方向外側端から車幅方向内側へ延在されると共に、側壁部24−2の下端から上側へ延在されている。
図1に示されるように、第1アーム26は、ヒンジベース24と同様に鋼板材にプレス加工等を施すことによって形成されて、平面視で略クランク状に屈曲されている。具体的には、第1アーム26は、車幅方向を板厚方向として配置された後端壁26Rと、後端壁26Rの前端から前側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜された中間傾斜壁26CSと、中間傾斜壁26CSの前端から前側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜された前側傾斜壁26FSと、を含んで構成されている。そして、前後方向に対する中間傾斜壁26CSの傾斜角度が、前後方向に対する前側傾斜壁26FSの傾斜角度に対して大きく設定されている。
第1アーム26は、ヒンジベース24に対して車幅方向内側に配置されている。そして、第1アーム26の後端壁26Rは、車幅方向を軸方向とした「第1ピン」としての第1ヒンジピンHP1によってヒンジベース24の側壁部24−2における上端部に回動可能に連結されている。これにより、第1アーム26は、第1ヒンジピンHP1を回動中心としてヒンジベース24に対して上下方向(図2の矢印A方向及び矢印B方向)に相対回動可能に構成されている。
また、第1アーム26の中間傾斜壁26CSは、前述したように、車両平面視で前側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜されているため、第1アーム26の前側傾斜壁26FSが、第1アーム26の後端壁26Rよりも車幅方向内側に配置されている。そして、第1アーム26の前側傾斜壁26FSとヒンジベース24との間の部分(エリア)が、後述する振動抑制機構50を収容する収容エリアCAとされている。
さらに、図3に示されるように、前側傾斜壁26FSの長手方向中間部における下部には、車幅方向内側へ膨出された第1膨出部26Bが形成されている。この第1膨出部26Bの前部には、後述するアクチュエータ30を取付けるための「第1連結軸」としての第1連結ボルトB3が一体に設けられており、第1連結ボルトB3は前側傾斜壁26FSの板厚方向を軸方向として車幅方向内側へ突出されている。すなわち、車両平面視で、第1連結ボルトB3(の軸線)が、車幅方向内側へ向かうに従い後側へ傾斜されて、前側傾斜壁26FSに対して直交している(図1参照)。さらに、第1連結ボルトB3は、第1ヒンジピンHP1に対して前側且つ車幅方向内側に配置されている。
また、前側傾斜壁26FSには、第1膨出部26Bに対して上方側の位置において、図示しないシェアピンが挿通されるシェアピン挿通孔26Cが前側傾斜壁26FSの板厚方向に貫通形成されている。
図1及び図2に示されるように、第2アーム28は、ヒンジベース24及び第1アーム26と同様に鋼板材にプレス加工等を施すことによって形成されている。第2アーム28は、第1アーム26に対して車幅方向内側に配置され、車両平面視で車両前側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜して延在されると共に、車両正面視で略逆L字形状に屈曲されている。具体的には、第2アーム28は、第1アーム26の前側傾斜壁26FSと平行に配置された側壁部28−1を備えている。この側壁部28−1(第2アーム28)の前端部28Fは、「第2ピン」としての第2ヒンジピンHP2によって第1アーム26(前側傾斜壁26FS)の前端部26Fに回動可能に連結されている。この第2ヒンジピンHP2(の軸線)は、第1連結ボルトB3(の軸線)と平行に配置されている。すなわち、第2ヒンジピンHP2(の軸線)は、車両平面視で、車幅方向内側へ向かうに従い後側へ傾斜されて、前側傾斜壁26FS及び側壁部28−1に対して直交して配置されると共に、第1ヒンジピンHP1に対して前側且つ車幅方向内側に配置されている。これにより、第2アーム28は、第2ヒンジピンHP2を回動中心として第1アーム26に対して上下方向(図2の矢印C方向及び矢印D方向)に相対回動可能に構成されている。
第2アーム28の側壁部28−1には、前述した第1アーム26のシェアピン挿通孔26Cに対応する位置において、シェアピン挿通孔28A(図3参照)が貫通形成されている。そして、第1アーム26のシェアピン挿通孔26C及び第2アーム28のシェアピン挿通孔28Aの内部に図示しないシェアピンが嵌入されて、第2アーム28が第1アーム26と結合されている。これにより、後述するアクチュエータ30の非作動状態では、第2アーム28の第1アーム26に対する相対回動が制限されている。
また、第2アーム28は頂壁部28−2を備えている。頂壁部28−2は、側壁部28−1の上端から頂壁部28−2の板厚方向に沿って車幅方向内側へ延出されると共に、側面視でフロントフード10に沿って前後方向に延在されている。この頂壁部28−2には、一対の取付孔28B(図1参照)が貫通形成されており、一対の取付孔28Bは、車両平面視で、側壁部28−1の延在方向に沿って並んで配置されている。すなわち、前側に配置された取付孔28Bが、後側に配置された取付孔28Bに対して車幅方向内側に配置されている。そして、ヒンジボルトB1(図7参照)が下方側から当該取付孔28Bに挿入されて、頂壁部28−2がフロントフード10の後端部10Rに締結(固定)されている。これにより、ヒンジベース24とフロントフード10とが、第1アーム26及び第2アーム28によって連結されている。
さらに、第2アーム28における側壁部28−1の後端部28Rには、第1連結ボルトB3に対して後側の位置において、後述するアクチュエータ30を取付けるための「第2連結軸」としての第2連結ボルトB4が一体に設けられている。この第2連結ボルトB4は、頭部を側壁部28−1に対して車幅方向外側に配置して、側壁部28−1の板厚方向を軸方向として車幅方向内側へ突出されている。すなわち、第2連結ボルトB4(の軸線)が、第1連結ボルトB3(の軸線)と平行に配置されると共に、車両平面視で、車幅方向内側へ向かうに従い後側へ傾斜されて、側壁部28−1に対して直交して配置されている(図1参照)。
また、第2アーム28における側壁部28−1の後端部28Rには、第2連結ボルトB4に対して前側の位置において、後述する振動抑制機構50の第2リンク54を連結するためのスタッド29が一体に設けられている。このスタッド29は、車幅方向を軸方向として車幅方向外側へ突出されており、スタッド29の先端面が車幅方向に対して直交する方向に沿って配置されている。
そして、上記のように構成されたフードヒンジ22は、フロントフード10を回動可能に支持するヒンジ部品として機能している。つまり、フロントフード10の通常の開閉時には、第1アーム26と第2アーム28との相対回動が制限された状態で、第1アーム26が第1ヒンジピンHP1の軸回りにヒンジベース24に対して回動することで、フロントフード10が開閉されるようになっている。
(アクチュエータ30について)
図1に示されるように、アクチュエータ30は、略円柱状に形成されると共に、第2アーム28に対して車幅方向内側に配置されて、第1アーム26の第1連結ボルトB3と第2アーム28の第2連結ボルトB4とを架け渡すように延在されている。すなわち、車両平面視で、アクチュエータ30が、第2アーム28の側壁部28−1に沿って、前側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜して配置されている。図5及び図6に示されるように、アクチュエータ30は、シリンダ32と、ロッド40と、保持機構48と、を含んで構成されている。
シリンダ32は下側(アクチュエータ30の下端側)へ開放された略有底円筒形状に形成されている。このシリンダ32の上端部には、上端側取付部34が一体に設けられており、上端側取付部34には、取付孔34Aが貫通形成されている。この取付孔34Aは、前述した第2アーム28の第2連結ボルトB4と同軸上に配置されており、第2連結ボルトB4が取付孔34A内に挿入されて、上端側取付部34が回動可能に支持されている。これにより、シリンダ32の上端部が第2アーム28に対して相対回動可能に取付けられている(図1参照)。
一方、シリンダ32の下端部における内周部には、ヘッド部36が設けられており、ヘッド部36は、略円筒状に形成されて、シリンダ32の内周部に固定されている。ヘッド部36の内周部には、保持機構48を構成する収容溝36Aが形成されており、収容溝36Aは、ヘッド部36の周方向に沿って延びると共に、ヘッド部36の全周に亘って形成されている。また、収容溝36Aは、シリンダ32の径方向内側へ開放された断面略U字形状に形成されている。具体的には、収容溝36Aは、縦断面視でシリンダ32の軸方向(上下方向)に沿って配置された底面36A1と、底面36A1の上端からシリンダ32の径方向内側へ向かうに従いシリンダ32の上端側へ傾斜された上傾斜面36A2と、底面36A1の下端からシリンダ32の径方向内側へ向かうに従いシリンダ32の下端側へ僅かに傾斜された下傾斜面36A3と、を含んで構成されている。そして、下傾斜面36A3と底面36A1との境界部分が円弧状に滑らかに接続されている。
収容溝36Aの内部には、保持機構48を構成するロックリング38(広義には、「保持部材」として把握される要素である)が配置(収容)されている。ロックリング38は、断面円形状の金属製の線材によって構成されると共に、一部開放された円環状(リング状)に形成されている。換言すると、ロックリング38は略C字形状に形成されている。また、ロックリング38は、バネ性を有すると共に、自身の径方向に弾性変形可能に構成されている。そして、ロックリング38は、自然状態(ロックリング38が弾性変形していない状態)から径方向外側へ弾性変形して、後述するロッド40の外周部に当接された状態で収容溝36A内に収容されている。
ロッド40は、略円筒状に形成されて、シリンダ32と同軸上に配置されており、ロッド40の下端部を除く部分がシリンダ32内に相対移動可能に収容されている。具体的には、シリンダ32がロッド40の軸線に沿ってロッド40に対して上下方向に相対移動するときには、シリンダ32と共にロックリング38がロッド40に対して相対移動して、ロックリング38がロッド40の外周面上を摺動するように構成されている。すなわち、ロックリング38は、シリンダ32と共にロッド40に対して相対移動可能に構成されている。
また、ロッド40の下端部には、取付孔40Aが貫通形成されている。そして、取付孔40Aは、前述した第1アーム26の第1連結ボルトB3と同軸上に配置されており、取付孔40A内に第1連結ボルトB3が挿入されて、ロッド40の下端部が回動可能に支持されている。すなわち、ロッド40の下端部が第1アーム26に対して相対回動可能に取付けられている(図1参照)。
ロッド40の長手方向中間部には、略円柱状のマイクロガスジェネレータ42(以下、「MGG42」という)が嵌入されている。MGG42はスクイブ(点火装置)を備えると共に、MGG42内には、ガス発生剤が充填されている。このMGG42の下端には、ワイヤハーネス44が接続されており、MGG42がワイヤハーネス44を介してECU60(図5及び図8参照)と電気的に接続されている。これにより、ECU60の制御によってMGG42が作動するようになっている。そして、MGG42が作動すると、MGG42によって発生したガスがロッド40内に供給されるようになっている。なお、MGG42の下端から延出されたワイヤハーネス44は、ロッド40の内部に配策されると共に、ロッド40の下端部から外側へ導出されている。そして、ロッド40の内部に樹脂材が充填されて、ワイヤハーネス44とロッド40とが一体化されている。
さらに、ロッド40の上端部には、径方向外側へ突出された略円環状の大径部40Bが形成されており、大径部40Bの外径寸法が、シリンダ32の内径寸法に比べて僅かに小さく設定されている。この大径部40Bの外周部には、シール溝40Cが形成されており、シール溝40Cは、ロッド40の径方向外側へ開放されて、大径部40Bの周方向に沿って延びると共に、大径部40Bの全周に亘って形成されている。そして、シール溝40C内には、ゴム材等で構成されたOリング46が配置されており、ロッド40とシリンダ32との間がOリング46によってシールされている。
また、ロッド40の外周部には、大径部40Bに対してロッド40の下端側の位置において、保持機構48を構成する保持溝40Dが形成されている。保持溝40Dは、ロッド40の径方向外側へ開放されて、ロッド40の周方向に沿って延びると共に、ロッド40の全周に亘って形成されている。具体的には、保持溝40Dは、縦断面視でロッド40の軸方向(上下方向)に沿って配置された底面40D1と、底面40D1の上端からロッド40の径方向外側へ延びる上面40D2と、底面40D1の下端からロッド40の径方向外側へ向かうに従いロッド40の下端側へ傾斜された下傾斜面40D3と、を含んで構成されている。
そして、MGG42が作動すると、MGG42によって発生したガスがロッド40内に供給されて、ロッド40内のガス圧によってシリンダ32がアクチュエータ30の軸方向に沿って上昇するようになっている。これにより、第2アーム28が、図2に示される位置から第1アーム26に対して上方側(図2の矢印C方向)へ相対回動して、フロントフード10が持上位置(図7に示される位置)に持上げられるように構成されている。なお、このときには、第1アーム26は、図2に示される位置からヒンジベース24に対して上方側(図2の矢印A方向)へ相対回動されるようになっている(図3参照)。
また、図5及び図6に示されるように、シリンダ32の下端部には、複数(本実施の形態では2箇所)のガス抜き孔32Aが形成されている。このガス抜き孔32Aは、アクチュエータ30の非作動状態(図5に示される状態)では、Oリング46に対してアクチュエータ30の下端側に配置されている。そして、アクチュエータ30が作動して、シリンダ32が持上位置に上昇されたときには(図6に示される状態では)、ガス抜き孔32Aがロッド40(Oリング46)よりもアクチュエータ30の上端側に配置されるように設定されている。これにより、アクチュエータ30の作動後では、シリンダ32の内部と外部とがガス抜き孔32Aによって連通されて、シリンダ32(ロッド40)内に供給されたガスがガス抜き孔32Aから排出される(抜かれる)ように構成されている。その結果、フロントフード10の持上位置において、ガス圧によるアクチュエータ30のフロントフード10に対する持上げが停止するように構成されている。
さらに、図6に示されるように、シリンダ32が持上位置に上昇したときには、シリンダ32の収容溝36Aが、ロッド40の保持溝40Dの下端部に対してアクチュエータ30の径方向外側に配置されるように設定されている。すなわち、アクチュエータ30の径方向において、収容溝36A(ロックリング38)と保持溝40Dの下端部とが対向配置するように設定されている。また、このときには、ロックリング38が径方向内側へ弾性変形(縮径)して保持溝40D内に入り込むことで、ロックリング38と保持溝40Dの下傾斜面40D3とが係合するようになっている。さらに、このときには、ロックリング38の一部がロッド40の外周部よりも径方向外側に突出されるように、保持溝40Dの溝深さとロックリング38の線径とが設定されている。このため、収容溝36Aの上傾斜面36A2及び保持溝40Dの下傾斜面40D3によってロックリング38が上下方向に挟まれて、シリンダ32が収容溝36Aの部位においてロックリング38に係止されるようになっている。これにより、シリンダ32の後退が制限されて、持上位置におけるフロントフード10の下方側への移動が保持機構48によって制限されるようになっている。
また、詳細については後述するが、持上位置に持上げられたフロントフード10の挙動によって、上方側への所定荷重がシリンダ32の上端側取付部34に入力されたときには、ロックリング38が保持溝40Dの底面40D1上を摺動しながらシリンダ32がロッド40に対して上昇するように構成されている。つまり、アクチュエータ30では、図6に示される作動完了位置よりもシリンダ32(ロックリング38)がさらに上昇できるように、保持溝40Dの幅寸法(底面40D1の上下方向寸法)が設定されている。具体的には、保持溝40Dの幅寸法(底面40D1の上下方向寸法)が、持上位置と後述する上限位置とに対応して設定されている。詳しくは、保持溝40Dの幅寸法が、後述する第1リンク52の連結孔52Dと保持孔52Fとの間の距離に対応して設定されている。
(振動抑制機構50について)
図1〜図4に示されるように、振動抑制機構50は、第1アーム26の前側傾斜壁26FS及び第2アーム28とヒンジベース24との間(すなわち、収容エリアCA(図1参照))に配置されて、ヒンジベース24と第2アーム28との間に架け渡されている。換言すると、振動抑制機構50は、第1アーム26の前側傾斜壁26FS及び第2アーム28に対して車幅方向外側に配置されている。また、振動抑制機構50は、第1リンク52及び第2リンク54によって構成されたリンク機構を成すと共に、第1リンク52及び第2リンク54の連結部位において変位機構58を有している。そして、フロントフード10の閉止位置では、側面視で振動抑制機構50が後方側へ開放された略V字形状に屈曲されている(図2に示される状態であり、以下この状態を「格納状態」という)。
第1リンク52は、鋼板等の金属製の板材によって構成されて、略長尺板状に形成されている。この第1リンク52は、振動抑制機構50の一端側の部分(下方側の部分)を構成すると共に、車幅方向を板厚方向としてヒンジベース24の車幅方向内側に配置されている。また、第1リンク52は、格納状態において、側面視で前方側へ向かうに従い上方側へ若干傾斜して配置されている。そして、第1リンク52の一端部52Aが、車幅方向を軸方向とした第1リンクピンLP1によってヒンジベース24の側壁部24−2における下端部に回動可能に連結されている。具体的には、第1リンクピンLP1が側壁部24−2の下端部における前後方向中間部に配置されている(図2参照)。
図1に示されるように、第1リンク52の長手方向中間部には、第1リンク中間部52Cが形成されており、第1リンク中間部52Cは、第1リンク52の長手方向他方側(第1リンク52の他端部52B側)へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜しつつ車幅方向に延在されている。これにより、第1リンク52では、その一端部52Aに対してその他端部52Bが車幅方向内側にオフセットして配置されている。
また、図3における部分拡大図に示されるように、第1リンク52の他端部52Bには、後述する第2リンク54を連結するための円形状の連結孔52Dが貫通形成されている。また、第1リンク52の他端部52Bには、連結孔52Dに対して第1リンク52の他端側において、変位機構58を構成する溝部52Eが貫通形成されている。この溝部52Eは、第1リンク52の長手方向に沿って延在されており、溝部52Eの一端が連結孔52Dに連通されている。換言すると、溝部52Eは、連結孔52Dから第1リンク52の他端側へ延出されている。また、溝部52Eの幅寸法は、連結孔52Dの直径寸法よりも小さく設定されると共に、溝部52Eの長手方向に亘って一定に設定されている。一方、溝部52Eの他端部には、変位機構58を構成する円形状の保持孔52Fが貫通形成されており、保持孔52Fの直径寸法が連結孔52Dの直径寸法と同じに設定されている。
図1〜図4に示されるように、第2リンク54は、第1リンク52と同様に、鋼板等の金属製の板材によって構成されて、略長尺板状に形成されている。第2リンク54は、振動抑制機構50の他端側の部分(上方側の部分)を構成すると共に、車幅方向を板厚方向として第1リンク52の車幅方向内側に配置されている。そして、振動抑制機構50の格納状態では、第2リンク54は、車両側面視で前方側へ向かうに従い下方側へ傾斜して配置されている。
第2リンク54の一端部54Aは、第1リンク52の他端部52Bに対して車幅方向内側に隣接して配置されると共に、変位機構58を構成する車幅方向を軸方向としたリンク軸56によって第1リンク52の他端部52Bに回転可能に連結されている。具体的には、第2リンク54の一端部54Aにリンク軸56が固定されており、リンク軸56の軸部56A(図3の部分拡大図参照)が一端部54Aから車幅方向外側へ突出されて、連結孔52D内に挿通されている。このリンク軸56の軸部56Aは、断面略円形状に形成されており、軸部56Aの直径寸法が、連結孔52Dの直径寸法よりも若干小さく設定されると共に、溝部52Eの幅寸法よりも若干大きく設定されている。これにより、リンク軸56が連結孔52Dに回動可能に支持されて、第2リンク54の一端部54Aが第1リンク52の他端部52Bに回転可能に連結されている。
また、第2リンク54の長手方向中間部には、第2リンク中間部54C(図1参照)が形成されており、第2リンク中間部54Cは、第2リンク54の長手方向他方側(第2リンク54の他端部54B側)へ向かうに従い車幅方向内側に傾斜されている。これにより、第2リンク54の一端部54Aに対して第2リンク54の他端部54Bが車幅方向内側にオフセットして配置されている。
第2リンク54の他端部54Bは、第2アーム28におけるスタッド29の先端面に対して車幅方向外側に隣接して配置されて、車幅方向を軸方向とした第2リンクピンLP2によってスタッド29に回動可能に連結されている。具体的には、振動抑制機構50の格納状態において、第2リンク54の他端部54Bが、第2連結ボルトB4に対して前方側に隣接して配置されている。より詳しくは、第2リンクピンLP2が第2連結ボルトB4の径方向外側に隣接して配置されている(図2参照)。
そして、図2に示されるように、振動抑制機構50の格納状態では、側面視で第2リンクピンLP2の軸心を通過し且つ上下方向に沿った仮想線を仮想基準線L1とすると、リンク軸56が仮想基準線L1に対して前方側に配置されている。一方、アクチュエータ30が作動してフロントフード10が持上位置に持上げられたときには、第1リンク52がヒンジベース24に対して相対回動(図2の矢印Eを参照)すると共に、第2リンク54が第2アーム28に対して相対回動(図2の矢印Fを参照)して、振動抑制機構50が略上下方向に沿った直線状に延在するように設定されている(図3に示される状態であり、以下この状態を「作動状態」という)。
さらに、詳細については後述するが、図3に示される振動抑制機構50の作動状態において、持上位置に持上げられたフロントフード10に生じる振動によって、上方側への所定荷重が振動抑制機構50の他端部(第2リンク54の他端部54B)入力されたときには、連結孔52Dによるリンク軸56の回動支持状態が解除されて、変位機構58が作動するようになっている。具体的には、振動抑制機構50のリンク軸56が、溝部52Eを幅方向外側へ押し広げながら溝部52E内を上方側へ移動するように構成されている。すなわち、変位機構58の作動時には、リンク軸56が溝部52Eの内周面上を摺動しながら溝部52Eに沿って上方側へ移動するようになっている(図3の部分拡大図において2点鎖線で示されるリンク軸56を参照)。また、溝部52Eに沿って上方側へ移動したリンク軸56が保持孔52F内に到達すると、変位機構58の作動が完了して、保持孔52Fにリンク軸56が保持されるようになっている(図4参照)。すなわち、フロントフード10に生じる振動によって、上方側への所定荷重が振動抑制機構50の他端部(第2リンク54の他端部54B)入力されたときには、振動抑制機構50の他端部がフロントフード10と共に上方側へ変位して、フロントフード10が持上位置よりも上側の位置において保持されるようになっている(図4に示される位置であり、以下この位置を「上限位置」という)。
なお、フロントフード10の持上位置とは、車両と歩行者との衝突時にフロントフード10上に倒れ込む歩行者に対する保護性能を確保するように、所定の高さに設定されている。また、上限位置は、持上位置に持上げられたフロントフード10の振動を抑制するために、以下のように設定されている。すなわち、詳細については後述するが、持上位置に持上げられたフロントフード10は単振動するようになり、フロントフード10の車幅方向中央部が上死点に到達した位置において、フロントフード10が略水平になるように上限位置が設定されている。
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
フロントフード10の閉止位置において歩行者等の衝突体と車両が前面衝突すると、衝突体と前面衝突したことが衝突検知センサ(図示省略)によって検知され、ECU60に衝突信号が出力される。ECU60では、入力された衝突信号に基づいてPUH装置20を作動させるべきか否かを判断し、PUH装置20を作動させるべきと判断すると、ECU60からアクチュエータ30に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ30のMGG42におけるスクイブが着火して、ロッド40内にガスが供給される。
ロッド40内にガスが供給されると、ロッド40内のガス圧によってシリンダ32が押圧されて、シリンダ32がロッド40の軸方向に上昇する。これにより、シリンダ32が第2アーム28の後端部28Rを持上げて、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向両端部が持上位置に持上げられる(図7の実線で示されるフロントフード10を参照)。なお、このときには、第2アーム28と第1アーム26との間を結合するシェアピンが破断して、第2アーム28が第1アーム26に対して上方側(図2の矢印C方向側)へ相対回動すると共に、第1アーム26が、ヒンジベース24に対して上方側(図2の矢印A方向側)へ相対回動する。これにより、フロントフード10が持上位置に持上げられる。そして、このときには、振動抑制機構50が格納状態から作動状態に切り替わり、第2アーム28のヒンジベース24に対する上方側への移動が制限される。
次に、アクチュエータ30の作動時にアクチュエータ30から第1アーム26に作用する作動荷重と、第1アーム28の撓みと、の関係を、図9に示される比較例と比較しつつ説明する。この図に示されるように、この比較例は、第1アームの前側傾斜壁26FSが、車幅方向を板厚方向として配置されている。換言すると、車両平面視で前側傾斜壁26FSが前後方向に沿って延在されている。また、比較例では、前側傾斜壁26FSの配置に伴って、第2アーム28及びアクチュエータ30も車両平面視で前後方向に沿って延在されている。なお、図9に示される各部品に対して、本実施の形態と同一の符号を付している。
そして、第1連結ボルトB3及び第2ヒンジピンHP2は、第1ヒンジピンHP1に対して前側且つ車幅方向内側に配置されている。すなわち、第1アーム26では、車両平面視で、アクチュエータ30の作動荷重Fが作用して第1アーム26の作用点となる第1連結ボルトB3が、第1アーム26の回動支点である第1ヒンジピンHP1に対して前側且つ車幅方向内側に配置されている。このため、車両平面視で、第1アーム26の回動支点(第1ヒンジピンHP1によって連結される部分)と、第1アーム26の作用点(第1連結ボルトB3がアクチュエータ30に連結される部分)を、を結ぶ架空線L2が、前側へ向かうに従い車幅方向内側に傾斜する。
一方、第1連結ボルトB3に入力されるアクチュエータ30の作動荷重Fは、アクチュエータ30の軸線L3に沿う方向に作用する。すなわち、第1連結ボルトB3には、車両平面視で前側への作動荷重Fが作用する。これにより、作動荷重Fの方向が架空線L2に対して交差するため、第1アーム26における第1連結ボルトB3の部位には、上記架空線L2に対して直交し且つ車幅方向外側へ向かう作動荷重Fの分力F1が作用する。このため、第1ヒンジピンHP1を起点とする時計回りの回転モーメントM(図9の矢印Mを参照)が第1アーム26に作用して、第1アーム26の前端部28Fが車幅方向外側へ変位するように第1アーム26が撓み変形する。その結果、第1アーム26及び第2アーム28によってフロントフード10を良好に持上げることができなくなる可能性がある。
これに対して、本実施の形態では、図1に示されるように、アクチュエータ30が車両平面視で前側へ向かうに従い車幅方向内側に傾いて配置されている。そして、上述と同様に、第1連結ボルトB3に入力されるアクチュエータ30の作動荷重Fは、アクチュエータ30の軸線L3に沿う方向に作用するため、第1連結ボルトB3には、車両平面視で前側へ向かうに従い車幅方向内側に傾斜する方向の作動荷重Fが作用する。このため、車両平面視において、第1アーム26の回動支点(第1ヒンジピンHP1)と作用点(第1連結ボルトB3)とを結ぶ架空線L2に対して、上記作動荷重Fの作用方向を平行に近づけることができる。換言すると、アクチュエータ30の軸線L3と架空線L2との成す角θ(交差する角度)を、上記比較例に比べて小さくすることができる。これにより、架空線L2に対して直交し且つ車幅方向外側へ向かう作動荷重Fの分力F1を、上記比較例と比べて小さくすることができる。その結果、第1ヒンジピンHP1を起点とする時計回りの回転モーメントMが第1アーム26に生じることを抑制でき(第1アーム26に生じる回転モーメントMを小さくすることができ)、ひいては第1アーム26の撓み変形を抑制することができる。
またここで、第1連結ボルトB3、第2連結ボルトB4、及び第2ヒンジピンHP2のそれぞれの軸線が、アクチュエータ30と直交している。すなわち、第1連結ボルトB3、第2連結ボルトB4、及び第2ヒンジピンHP2のそれぞれの軸線が、車両平面視で平行に配置されて、アクチュエータ30と直交している。これにより、アクチュエータ30から第1連結ボルトB3及び第2連結ボルトB4に作用する作動荷重が、第2ヒンジピンHP2の軸方向に対して直交する方向に作用するため、第2アーム28を第1アーム26に対して良好に相対回動させることができる。以上により、フロントフード10を良好に持上げることができる。
また、第2アーム28をフロントフード10に固定するヒンジボルトB1が、車両平面視で、第2アーム28の延在方向に対応して、前後方向に並んで配置されている。換言すると、後側に配置されたヒンジボルトB1に対して前側に配置されたヒンジボルトB1が車幅方向内側に配置されている。これにより、第2アーム28の頂壁部28−2の突出量が大きくなることを抑制できる。したがって、第2アーム28の大型化を抑制することができると共に、ひいては、PUH装置20の大型化を抑制することができる。
次に、図10を用いて、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向両端部をアクチュエータ30によって持上げたときの、フロントフード10の挙動と、振動抑制機構50の状態及びアクチュエータ30の状態と、の関係を説明する。なお、図10では、アクチュエータ30がフロントフード10を持上げたときの後方側から見たフロントフード10の状態を時系列で模式的に示しており、フロントフード10の車幅方向両端部が白抜きの丸印で示されている。
図10の(1)では、アクチュエータ30がフロントフード10を持上げる前の状態を示している。この状態では、アクチュエータ30は、図5に示される非作動状態にあり、振動抑制機構50は、図2に示される格納状態になっている。
そして、アクチュエータ30の作動が開始すると、図6に示されるように、シリンダ32がロッド40に対して瞬時に上昇して、フロントフード10が持上位置に持上げられる。このとき、シリンダ32のガス抜き孔32Aがロッド40のOリング46よりもアクチュエータ30の上端側に配置される。このため、ロッド40の内部のガスがガス抜き孔32Aからアクチュエータ30の外部へ放出される。これにより、アクチュエータ30によるフロントフード10に対する持上げが停止される。また、この状態では、シリンダ32と共に上昇するロックリング38が、ロッド40の保持溝40Dの下端部とシリンダ32の収容溝36Aとの間に配置される。
アクチュエータ30が作動してフロントフード10が持上位置に持上げられると、振動抑制機構50は格納状態から作動状態に切り替わる(図2に示される状態から図3に示される状態に切り替わる)。そして、振動抑制機構50の作動状態では、変位機構58の溝部52Eが、連結孔52Dから上方側へ延出するように配置される。なお、振動抑制機構50では、第1リンク52及び第2リンク54を連結するリンク軸56の軸部56Aの直径寸法が、溝部52Eの幅寸法よりも大きく設定されているため、振動抑制機構50の作動状態では、リンク軸56が連結孔52D内に保持される。すなわち、ヒンジベース24に対する第2アーム28の上方側への変位が振動抑制機構50によって制限されて、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向両端部の上方側への変位が制限される。
一方、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向両端部をアクチュエータ30によって持上げるときには、フロントフード10の車幅方向中央部は慣性力によってその位置に留まろうとする。このため、アクチュエータ30によるフロントフード10の持上初期では、フロントフード10の車幅方向両端部のみが持上げられる(図10の(2)の状態を参照)。そして、フロントフード10の車幅方向中央部がフロントフード10の車幅方向両端部よりも遅れて上方側へ変位する(図10の(3)に示される矢印を参照)。さらに、フロントフード10の車幅方向中央部では、上下方向への変位は制限されていないため、上方側へ変位するフロントフード10の車幅方向中央部は慣性力によって持上位置よりも上方側へ変位する(オーバーシュートする)(図10の(3)の状態を参照)。これにより、フロントフード10の持上げ時では、後方側から見て、フロントフード10の車幅方向中央部が腹となり、フロントフード10の車幅方向両端部が節となるように、フロントフード10が単振動しようとする。
そして、フロントフード10の車幅方向中央部が持上位置よりも上方側へオーバーシュートするときには、フロントフード10から第2アーム28を介して振動抑制機構50の他端部(第2リンク54の他端部54B)に上方側への所定荷重が作用する。このため、振動抑制機構50の変位機構58が作動する。具体的には、連結孔52Dによるリンク軸56の回動支持状態が解除されて、リンク軸56が溝部52Eの内周面上を摺動しつつ第1リンク52に対して上方側へ相対移動する(図3に示される状態から図4に示される状態に切り替わる)。これにより、第2アーム28が第1アーム26に対して上方側へ回動してヒンジベース24に対して上方側へ変位すると共に、振動抑制機構50の他端部がフロントフード10の車幅方向両端部と共に上限位置に変位する。
図10を用いてより詳しく説明すると、フロントフード10の車幅方向中央部が上死点又は上死点付近に到達すると、フロントフード10の車幅方向両端部が上限位置に変位する(図10の(3)の状態から図10の(4)の状態になる)。その結果、後方側から見てフロントフード10が略水平になるようにフロントフード10の車幅方向両端部が開放される。したがって、オーバーシュートすることによって生じるフロントフード10の振動が早期に減衰される。
そして、フロントフード10の車幅方向両端部が上限位置に変位したときには、振動抑制機構50のリンク軸56が保持溝40D内に保持される(図4参照)。これにより、フロントフード10の振動が抑制された状態で、フロントフード10の車幅方向両端部が上限位置において保持される。なお、振動抑制機構50の他端部が持上位置から上限位置に変位するときには、アクチュエータ30のシリンダ32もロッド40に対して持上位置よりさらに上昇する。すなわち、ロックリング38が、保持溝40Dの下端部から上端部へ底面40D1上を摺動しつつ移動する(図6に示す状態からシリンダ32がロッド40に対してさらに上昇する)。
以上により、PUH装置20によれば、アクチュエータ30が作動してフロントフード10が持上位置に持上げられたときには、振動抑制機構50は格納状態から作動状態に切り替わり、ヒンジベース24に対する第2アーム28の上方側への移動(変位)が振動抑制機構50によって規制される。すなわち、車体において剛性の高い部位に固定されるヒンジベース24に第2アーム28を振動抑制機構50によって連結して、ヒンジベース24に対する第2アーム28の上方側への移動を制限することができる。これにより、PUH装置20において仮に振動抑制機構50を省略した場合と比べて、ポップアップ完了時のフロントフード10の車幅方向両端部における振れを抑制することができる。したがって、ポップアップ完了時におけるフロントフード10の振動を抑制することができる。
しかも、本実施の形態では、アクチュエータ30が車両平面視で前側へ向かうに従い車幅方向内側に傾いて配置されており、第2ヒンジピンHP2の軸線が車両平面視でアクチュエータ30と直交している。すなわち、第2ヒンジピンHP2の軸線が車両平面視で車幅方向内側へ向かうに従い後側に傾斜されている。このため、第2アーム28が第2ヒンジピンHP2の軸回りに回動してフロントフード10の後部における車幅方向外側端部を持上げるときには、第2アーム28(のフロントフード10との締結固定部)が、車両平面視で前側かつ車幅方向内側へ変位する(図8の矢印G参照)。これにより、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向両端部が第2アーム28によって車幅方向中央側へ変位するように、フロントフード10が撓む。したがって、フロントフード10を持上げたときに生じるフロントフード10の振動エネルギーがフロントフード10の撓み変形に用いられるため、フロントフード10の振動を一層抑制することができる。
また、振動抑制機構50は、第1アーム26の前側傾斜壁26FS及び第2アーム28とヒンジベース24との間(すなわち、収容エリアCA)に配置されている。これにより、収容エリアCAを有効に活用して、フロントフード10の振動を抑制する振動抑制機構50を収容エリアCAに配置することができる。
また、持上位置では、ヒンジベース24及び第2アーム28が、作動状態に切り替わった振動抑制機構50によって連結されている。これにより、ポップアップしたフロントフード10に被衝突物が当接した際に、当該フロントフード10が後方側へ向けて後退することを抑制することができる。
また、振動抑制機構50は、第1リンク52及び第2リンク54を有するリンク機構として構成されており、第1リンク52及び第2リンク54がリンク軸56によって連結されている。これにより、第1アーム26及び第2アーム28の回動形態に対応して、振動抑制機構50を格納状態から作動状態に簡易な構成で切り替えることができる。
また、フロントフード10の後端部10Rにおける車幅方向中央部が持上位置よりもさらに上方側へオーバーシュートして、上方側への所定荷重がフロントフード10から振動抑制機構50(第2リンク54)の他端部に作用すると、リンク軸56及び溝部52Eによって構成された変位機構58が作動する。これにより、フロントフード10の車幅方向両端部が持上位置よりも上方側の上限位置に移動(変位)することが許容される。したがって、上述したように、車幅方向中央部が上方側へオーバーシュートすることによって生じるフロントフード10の振動を早期に減衰させることができる。
また、振動抑制機構50の変位機構58では、リンク軸56の軸部56Aの直径寸法が溝部52Eの幅寸法よりも大きく設定されている。このため、変位機構58の作動時では、リンク軸56(の軸部56A)が溝部52Eの内周面上を摺動しつつ連結孔52Dから保持孔52Fへと移動する。これにより、変位機構58の作動時には、リンク軸56と溝部52Eとの間に生じる摩擦力によってフロントフード10の振動エネルギーを吸収することができる。したがって、変位機構58による振動減衰効果を高めることができる。
また、変位機構58は、溝部52Eの他端部に形成された保持孔52Fを有しており、上限位置において、リンク軸56が保持孔52Fによって保持される。このため、フロントフード10の振動を抑制した状態で、フロントフード10を上限位置に保持することができる。
なお、本実施の形態では、第1アーム26の回動支点と作用点とを結ぶ架空線L2とアクチュエータ30の軸線L3とが、車両平面視で交差するように構成されているが、上記架空線L2とアクチュエータ30の軸線とを車両平面視で一致するように構成してもよい。例えば、図11に示されるように、第1アーム26において中間傾斜壁26CSを省略して、第1アーム26の後端壁26Rの前端から前側傾斜壁26FSを前側へ向かうに従い車幅方向内側へ延ばす。そして、アクチュエータ30の軸線L3と上記架空線L2とが一致するように、前側傾斜壁26FSの傾斜角度や位置などを適宜変更してもよい。この場合には、上記架空線L2とアクチュエータ30の軸線L3とが一致するため、アクチュエータ30の作動荷重Fを架空線L2に沿って作用させることができる。これにより、アクチュエータ30の作動時に第1アーム26に生じる回転モーメントを一層抑制することができると共に、第1アーム26の撓み変形を一層抑制することができる。
また、本実施の形態では、第2アーム28をフロントフード10に固定するためのヒンジボルトB1が、車両平面視で第2アーム28の延在方向に沿うように前後方向に並んで配置されている。すなわち、前側に配置されたヒンジボルトB1が、後側に配置されたヒンジボルトB1に対して車幅方向内側に配置されているが、ヒンジボルトB1の車幅方向の位置は適宜変更可能である。例えば、前側に配置されたヒンジボルトB1及び後側に配置されたヒンジボルトB1の車幅方向の位置を一致させてもよい。
また、持上位置に持上げられたフロントフード10の振動を早期に減衰させるという観点からすると、本実施の形態のように、振動抑制機構50において変位機構58を設けることが望ましい。しかしながら、例えば、各種車両において、フロントフード10の曲げ剛性が比較的高く構成された場合等では、フロントフード10の車幅方向両端部をアクチュエータ30によって持上げたときに、フロントフード10のオーバーシュートが比較的小さくなる。したがって、このようなフロントフード10を有する車両の場合には、振動抑制機構50において変位機構58を省略してもよい。すなわち、第1リンク52において溝部52Eを省略してもよい。
また、本実施の形態では、アクチュエータ30及び振動抑制機構50を、第1アーム26及び第2アーム28に対して車幅方向内側及び外側にそれぞれ配置した例について説明したが、アクチュエータ30及び振動抑制機構50の配置はこれに限定されない。例えば、アクチュエータ30及び振動抑制機構50を、第1アーム26及び第2アーム28に対して車幅方向外側に配置してもよいし、車幅方向内側に配置してもよい。このように、アクチュエータ30及び振動抑制機構50の配置は、フードヒンジ22の周辺の他の部材とのクリアランス等を考慮して適宜設定すればよい。
以上、本実施の形態においてPUH装置20を説明したが、本開示の車両用ポップアップフード装置は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。