本発明における、電子写真感光体の表面層とは、支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、支持体より最も隔離された層をいう。図4(a)乃至(e)に、本発明の電子写真感光体の構成例を示し、本発明の電子写真感光体の表面層を説明する。
すなわち、図4(a)に示すように支持体101上に下引き層102、中間層103、電荷発生層104、電荷輸送層105をこの順に有する場合(順層)には電荷輸送層105を表面層とする。図4(b)に示すように支持体101上に下引き層102、中間層103、電荷輸送層105、電荷発生層104をこの順に有する場合(逆層)には電荷発生層104を表面層とする。これらの場合、下引き層102、中間層103は必ずしも必要ではなく、いずれか一方だけを有しても、いずれも無くても構わない。また、図4(c)に示すように電荷輸送層105が第1電荷輸送層1051上に更に第2電荷輸送層1052を有する場合には第2電荷輸送層1052が表面層となり、図4(d)に示すように電荷輸送層105上に表面保護層106を有する場合には表面保護層106を表面層とする。あるいは図4(e)に示すように第2電荷輸送層1052上に表面保護層106を有する場合には表面保護層106を表面層とする。
上述のとおり、電子写真感光体の表面層は、下記式(11)で示される繰り返し構造単位α及び下記式(12)で示される繰り返し構造単位βを有するジオルガノポリシロキサンを含有する。これによって、電子写真感光体作製後も均一なフッ素樹脂粉末分散表面層を形成でき、低温低湿環境でも耐久性能に優れ、更に電子写真特性に弊害が生じず、優れた表面潤滑性を持続する電子写真感光体を提供することができる。
式(11)中、R11は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。B11は、少なくとも、フッ素原子を有するアルキル基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造又はフッ素原子を有するアルキレン基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造を有する一価の有機基を示す。
式(12)中、R12は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。D11は、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、又は、炭素原子数12以上の1価の有機基を示す。
本発明の顕著な効果が得られる理由は明確でないが、式(12)中のD11の非フッ素系置換基である有機基が結着樹脂への親和性を示す。特に式(11)中のB11が、フッ素原子を有するアルキル基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造又はフッ素原子を有するアルキレン基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造を有することにより、酸素が介在することで、よりフッ素樹脂粉末への親和性を示す。また、フッ素原子が立体的な拡がりをもって存在できるようになるため、特許文献1及び特許文献2に記載されているパーフルオロアルキル基を有するジオルガノポリシロキサンを含有する表面層を持つ電子写真感光体よりも、更にフッ素樹脂粉末への親和性を示すので、本発明のジオルガノポリシロキサンがフッ素樹脂粉末と結着樹脂との間に介在し、フッ素樹脂粉末の結着樹脂への分散を促進すると共に、フッ素樹脂粉末の凝集を防ぐ働きをより強くする。その結果、クリーニングブレードの圧が高く、また低温低湿下であっても長期耐久枚数に亘り、電子写真感光体表面の接触角を高く維持し、電位変動も少なくすることが出来、高画質を安定的に維持したまま高耐久とすることができたと考えられる。
また、上記ジオルガノポリシロキサンは、更に下記式(13)で示される繰り返し構造単位γを有してもよい。
式(13)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。
また、上記ジオルガノポリシロキサンの末端基としては、例えば、下記式(14)で示される構造を有する末端基I、下記式(15)で示される構造を有する末端基IIが挙げられる。
式(14)中、E11は、置換又は無置換の1価の炭化水素基、少なくとも、フッ素原子を有するアルキル基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造、又はフッ素原子を有するアルキレン基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造を有する一価の有機基、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、又は、炭素原子数12以上の1価の有機基を示す。ただし、上記式(14)中のE11は、上記ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位の主鎖(−Si−O−)中のSiと結合する。
式(15)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。E12は、置換又は無置換の1価の炭化水素基、少なくとも、フッ素原子を有するアルキル基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造、又はフッ素原子を有するアルキレン基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造を有する一価の有機基、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、又は、炭素原子数12以上の1価の有機基を示す。ただし、上記式(15)中のSiは、上記ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位の主鎖(−Si−O−)中のOと結合する。
また、式(14)中のE11と式(15)中のE12の少なくともいずれか一方が重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基の場合には、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基がジオルガノポリシロキサン中の繰り返し構造単位βとなり、末端基として繰り返し構造単位βが存在することになる。この場合、末端基以外に繰り返し構造単位βはなくてもよい。
本発明において、有機基とは、置換又は無置換の炭化水素基を意味する。また、炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基及びアリールアルケニル基等が挙げられる。
上記式(11)中のR11、式(12)中のR12、式(13)中のR13及びR14、式(15)中のR15及びR16の1価の炭化水素基としては、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアリールアルケニル基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は1以上30以下であることが好ましく、特にはメチル基やフェニル基がより好ましい。
上記アルキレン基としては、エチレン基及びプロピレン基等が挙げられる。上記アルキレンオキシアルキレン基としては、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基及びプロピレンオキシプロピレン基等が挙げられる。
上記式(12)中のD11の重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基は、下記式(3)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
式(3)中、R31は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を示す。R32及びR33は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を示す。W31は、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を示す。R34は、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を示す。bは、0又は1を示す。
上記2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基が挙げられ、炭素原子数1以上10以下であることが好ましい。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられる。上記アリール基としては、無置換であることが好ましく、フェニル基等が挙げられる。
上記式(12)中のD11の置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基は、下記式(4)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
式(4)中、R41及びR42は、それぞれ独立に、置換又は無置換の2価の炭化水素基を示す。R43は、水素原子、又は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。cは、0又は1を示す。dは、1以上300以下の整数を示す。
上記2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基等のアルキレン基や、フェニレン基等のアリーレン基等が挙げられる。上記1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。上記dは、5以上であることが好ましい。
上記式(12)中のD11の置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基は、下記式(5)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
式(5)中、R51は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又は、酸素原子を示す。R52、R53、R54、R55及びR56は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を示す。eは、3以上の整数を示す。
上記アルキレン基としては、エチレン基及びプロピレン基等が挙げられる。アルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基等が挙げられる。上記アルキル基としては、メチル基及びエチル基等が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基等が挙げられる。上記eは、5以上であることが好ましい。
上記式(12)中のD11の炭素原子数12以上の1価の有機基としては、n−ドデシル基、n−テトラドデシル基、n−ヘキサデシル基及びn−オクタデシル基等のアルキル基が挙げられる。上記炭素原子数は、100以下であることが好ましい。
上記各基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子や、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(11)で示される繰り返し構造単位αの数(平均)は、1以上1000以下であることが好ましく、特には10以上200以下であることがより好ましい。
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(12)で示される繰り返し構造単位βの数(平均)は、1以上1000以下であることが好ましく、特には5以上100以下であることがより好ましい。
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(13)で示される繰り返し構造単位γの数(平均)は、0以上1000以下であることが好ましく、特には100以上200以下であることがより好ましい。
上記ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位は、上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位βを含むことが必須であり、上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位βと、更に上記式(13)で示される繰り返し構造単位γを含むことが好ましい。また、式(14)中のE11と式(15)中のE12の少なくともいずれか一方が、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基の場合には、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基がジオルガノポリシロキサン中の繰り返し構造単位βとなり、末端基として繰り返し構造単位βが存在することになる。この場合、末端基以外に繰り返し構造単位βはなくてもよい。
上記ジオルガノポリシロキサンにおける上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位βと上記式(13)で示される繰り返し構造単位γとの和(平均)は、2以上2000以下であることが好ましく、特には5以上1000以下であることがより好ましく、更には20以上500以下であることがより一層好ましい。
上記式(11)で示される繰り返し構造単位αの数が2以上の場合、複数のR11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のB11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。
上記式(12)で示される繰り返し構造単位βの数が2以上の場合、複数のR12は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のD11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。D11は、上述のとおり、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、及び、炭素原子数12以上の1価の有機基のいずれかであるが、D11が複数の場合は、少なくとも1個のD11は、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基であることが好ましい。
上記式(13)で示される繰り返し構造単位γの数が2以上の場合、複数のR13は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のR14は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。
同様のことが、上記式(3)中のR32とR33、上記式(4)中のR42、上記式(5)中のR52とR53についてもいえる。
以下に、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンの上記式(11)で示される繰り返し構造単位α中のB11の具体例として下記式(1)で示される一価の有機基が挙げられる。ただし、本発明はこれら具体例に限定されない。
式(1)中、R2は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基及びヘキシレン基といった直鎖アルキレン基;イソプロピレン基及びイソブチレン基といった分岐アルキレン基が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基が挙げられる。中でもフェニレン基が好ましい。
上記式(1)中、Rf1は、少なくとも、フッ素原子を有するアルキル基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造、又はフッ素原子を有するアルキレン基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素により結合した構造を有する一価の基を示す。
フッ素原子を有するアルキル基としては、下記式(CF−1)乃至(CF−7)が挙げられる。
フッ素原子を有するアルキレン基としては、下記式(CF−8)乃至(CF−14)が挙げられる。
上記式(1)に記載されたRf1の具体例としては、下記式(Rf1−1)乃至(Rf1−17)が挙げられる。
こららの中でも、(Rf1−13)、(Rf1−14)、(Rf1−16)及び(Rf1−17)の構造が好ましい。
式(11)中のB11は、フッ素原子を有するアルキル基とフッ素原子を有するアルキレン基が酸素に結合した構造を有する1価の有機基であることが好ましく、更に、フッ素原子を有するアルキル基がパーフルオロアルキル基であるかフッ素原子を有するアルキレン基がパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
以下に、本発明に用いられる上記式(11)で示される繰り返し構造単位αと上記式(12)で示される繰り返し構造単位β、上記式(13)で示される繰り返し構造単位γを有するジオルガノポリシロキサン(1−1)乃至(1−21)の具体例を示す。ただし、本発明はこれら具体例に限定されない。
上記ジオルガノポリシロキサン(1−1)乃至(1−8)は、いずれも、末端基として上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)を有する。
上記ジオルガノポリシロキサン(1−9)は、末端基として上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:下記式(16))、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12:下記式(16)、R15及びR16:メチル基)を有する。
上記ジオルガノポリシロキサン(1−10)は、末端基として上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12:上記式(16)、R15及びR16:メチル基)を有する。
上記ジオルガノポリシロキサン(1−11)は、末端基として上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:上記式(16))、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)を有する。
上記ジオルガノポリシロキサン(1−12)乃至(1−15)は、いずれも、末端基として上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)を有する。
これらの中では、ジオルガノポリシロキサン(1−1)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−9)及び(1−10)が好ましく、特には(1−1)、(1−4)及び(1−5)がより好ましい。
また、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、1000以上1000000以下が好ましく、10000以上200000以下であることがより好ましく、特には10000以上100000以下であることがより好ましく、更には20000以上40000以下であることがより一層好ましい。
本発明において、樹脂の重量平均分子量は、常法に従い、以下のようにして測定されたものである。すなわち、測定対象樹脂をテトラヒドロフラン中に入れ、数時間放置した後、振盪しながら測定対象樹脂とテトラヒドロフランと良く混合し(測定対象樹脂の合一体がなくなるまで混合し)、更に12時間以上静置した。
その後、東ソー(株)製のサンプル処理フィルターマイショリディスクH−25−5を通過させたものをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)用試料とした。
次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、GPC用試料を10μl注入して、測定対象樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムには、東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHM−Mを用いた。
測定対象樹脂の重量平均分子量の測定にあたっては、測定対象樹脂が有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作製用の標準ポリスチレン試料には、アルドリッチ社製の単分散ポリスチレンの分子量が、3,500、12,000、40,000、75,000、98,000、120,000、240,000、500,000、800,000、1,800,000のものを10点用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
また、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサン中のフッ素原子の含有量は、ジオルガノポリシロキサン全質量に対して1質量%以上90質量%以下であることが好ましく、特には、5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。フッ素原子の含有量が1質量%未満では、電子写真感光体の表面層の離型性が十分に発揮されない場合がある。90質量%を超えると、電子写真感光体の表面層中の結着樹脂との相溶性が悪くなったり、アンカー効果が十分に得られなかったりして、表面に移行し易くなり、長時間耐久使用により電子写真感光体の表面が摩耗した場合、十分な効果が得られなくなる場合がある。
一般的に、シリコーンオイルやシロキサン化合物は、層中で表面移行性があるため、長時間耐久使用により電子写真感光体の表面が摩耗した場合、これらの成分の多くが失われてしまい、十分な効果が得られなくなるのである。
それに対して、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンは、特に側鎖のD11が電子写真感光体の表面層の結着樹脂に対してアンカー効果を有するため、表面層中での表面移行性が抑制される。特に、D11が重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基の場合、より有効なアンカー効果を有する。また、E11とE12の少なくともいずれか一方が重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基の場合には、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基がジオルガノポリシロキサン中の繰り返し構造単位βとなり、末端基として繰り返し構造単位βが存在することになる。この場合、末端基以外に繰り返し構造単位βはなくてもよい。
以下、本発明に用いられる電子写真感光体の構成について説明する。
本発明に用いられる電子写真感光体は支持体及び該支持体上に設けられた感光層を有する。
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)であればよく、アルミニウム、ステンレス等の金属製の支持体や、金属、紙、プラスチック等の上に導電性を付与する層を設けた支持体等が挙げられる。支持体の形状としては、円筒状、ベルト状等が挙げられる。
感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)であってもよいが、電子写真特性の観点からは積層型が好ましい。また、積層型感光層には、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層と、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層があるが、電子写真特性の観点からは順層型が好ましい。
支持体の傷を被覆することを目的として、また、露光光がレーザー光の場合、散乱による干渉縞を防止することを目的として、支持体上に導電層を設けてもよい。導電層は、カーボンブラック、金属粒子等の導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5μm以上40μm以下であることが好ましく、特には10μm以上30μm以下であることがより好ましい。なお、切削処理、アルマイト処理、乾式ブラスト処理、湿式ブラスト処理等によって支持体の表面を処理することによっても干渉縞を防止することができる。
支持体又は導電層の上に、接着機能やバリア機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン等の樹脂を適当な溶剤に溶解し、これを支持体又は導電層上に塗布・乾燥することにより形成することができる。中間層の膜厚は0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、特には0.3μm以上1μm以下であることがより好ましい。なお、支持体表面をアルマイト処理したり、ゾルゲル法による導電性膜を用いたりする場合は、中間層を必ずしも必要ではない。
感光層が順層型感光層である場合、支持体、導電層又は中間層の上には電荷発生層が設けられる。
電荷発生物質としては、例えば、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、アゾ(トリスアゾ、ジスアゾ、モノアゾ)、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニン等の顔料が挙げられる。
電荷発生層は、電荷発生物質を、その質量比で0.3倍量以上4倍量以下の結着樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、液衝突型高速分散機等の方法でよく分散し、得られた分散液を、塗布・乾燥することにより形成することができる。なお、結着樹脂を電荷発生物質の分散後投入してもよいし、電荷発生物質に成膜性があれば結着樹脂を使用しなくてもよい。電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
感光層が順層型感光層である場合、電荷発生層の上には、電荷輸送層が設けられる。
電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、トリアリルメタン化合物、チアゾール化合物等が挙げられる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を溶剤で溶解し、得られた塗布液を、塗布・乾燥することにより形成することができ、また、電荷輸送層が電子写真感光体の表面層である場合は、電荷輸送物質及び結着樹脂更に上記ジオルガノポリシロキサンを溶剤で溶解し、得られた塗布液を、塗布・乾燥することにより形成することができる。電荷輸送物質と結着樹脂との質量比は5:1乃至1:5であることが好ましく、特には3:1乃至1:3であることがより好ましい。電荷輸送層の膜厚は5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下がより好ましい。
電荷輸送層の結着樹脂としては、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、又は、これらの樹脂の繰り返し構造単位のうち2つ以上を含む共重合体、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー等が挙げられる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーからも選択できる。
これらのうちポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂は、本発明のジオルガノポリシロキサンとフッ素樹脂とのなじみが良く、良好な塗工液を作製することができるので好ましい。ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂は下記式(6)及び(7)で示される構成単位を有する。これらのうち、ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂は、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンとの相溶性が良く、良好な塗布液を作製することができるため好ましい。特に、ジオルガノポリシロキサンと併せて用いるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、20000以上300000以下の範囲であることが好ましく、50000以上150000以下の範囲であることがより好ましい。また、ジオルガノポリシロキサンと併せて用いるポリアリレート樹脂の重量平均分子量は、20000以上300000以下の範囲であることが好ましく、50000以上150000以下の範囲であることがより好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂としては、下記式(6)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂が好ましい。
式(6)中、X601は、単結合、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、又は、−CR605R606−基(R605、R606は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、又は、R605とR606とが結合して形成される置換又は無置換のシクロアルキリデン基を示す。)を示す。R601R602、R603、R604、R607、R608、R609及びR610は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を示す。
これらの中でも、上記X601は、単結合、−CR605R606−基が好ましく、R602、R604、R607、R609は水素原子が好ましい。
また、ポリアリレート樹脂としては、下記式(7)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂が好ましい。
式(7)中、X701は、単結合、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、又は、−CR705R706−基(R705、R706は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、又は、R705とR706とが結合して形成される置換又は無置換のシクロアルキリデン基を示す。)を示す。R701、R702、R703、R704、R707、R708、R709、R710、R711、R712、R713、R714、R715、R716、R717及びR718は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を示す。
これらの中でも、上記X701は、単結合、−CR705R706−基が好ましく、R702、R704、R707、R709は水素原子が好ましい。
また上記式中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。アルキリデン基としては、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。
これら各基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子や、メチル基、エチル基及びプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。
以下に、上記式(6)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
これらの中では、(6−1)、(6−3)、(6−4)、(6−10)及び(6−16)が好ましく、特には(6−1)、(6−3)及び(6−16)がより好ましい。
以下に、上記式(7)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
これらの中では、(7−2)、(7−3)、(7−6)、(7−13)、(7−22)、(7−23)及び(7−24)が好ましく、特には(7−3)、(7−13)、(7−22)及び(7−24)がより好ましい。
電子写真感光体の表面層が電荷輸送層の場合、本発明のジオルガノポリシロキサンは、フッ素樹脂粉体及び結着樹脂とを混合し、予め分散することが好ましい。ジオルガノポリシロキサンの含有量は、電荷輸送層全質量に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、特には0.1質量部以上10.0質量部以下がより好ましい。更に、ジオルガノポリシロキサンの含有量は、フッ素樹脂粉体100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、特に好ましくは3質量部以上25質量部以下である。これらの含有量が少な過ぎると本発明の効果が得られ難くなり、多過ぎるとキャリアのトラップの原因となり、電位変動が生じ易くなる。
フッ素樹脂粉体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.5質量部以上25質量部以下が好ましい。0.5質量部未満では効果が少なく、25質量部を超えると光の透過性が著しく減少し、電子写真特性に著しい悪影響を及ぼし易い。
有機光導電性物質である電荷発生物質、電荷輸送物質等は、一般に紫外線、オゾン、オイルによる汚れ、金属等に弱いため、感光層を保護することを目的として、感光層上に表面保護層を設け、これを電子写真感光体の表面層としてもよい。
本発明で用いることができる電子写真感光体の表面層となる表面保護層は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー等の結着樹脂と、フッ素樹脂粉体及び本発明のジオルガノシロキサンを含有する溶液を感光層の上に塗布、乾燥することによって形成する。また、結着樹脂として縮合系モノマーや不飽和基を持つラジカル重合系モノマーを用いた場合は、塗布後、熱や紫外線等のエネルギー光を当てて硬化、形成してもよい。また、必要に応じて、金属や導電性金属酸化物等の導電性粒子や電荷輸送材料等を更に含有させてもよい。
表面保護層の膜厚は、0.05μm以上20μm以下であることが好ましい。表面保護層は、電荷輸送層よりも薄膜にすることが可能であるため、フッ素樹脂、粉体及びジオルガノポリシロキサンの量を増加させることが可能である。具体的には、ジオルガノポリシロキサンは、フッ素樹脂粉体100質量に対して100質量部まで好ましく用いられ、フッ素樹脂粉体は、結着樹脂100質量部に対して50質量部まで好ましく用いられる。
フッ素樹脂粉体としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂及びこれらの共重合樹脂等の粉体が挙げられる。これらの中では、特に四フッ化エチレン樹脂(テトラフルオロエチレン)が電子写真特性的に好ましい。
フッ素樹脂粉体の分散にはホモジナイザー、ラインミキサー、ウルトラディスパーサー、ホモミキサー、液衝突型高速分散機及び超音波分散機等の各種乳化機や分散機、ミキサー等の混合装置が使用できる。電子写真感光体の表面層となる表面保護層は、上記ジオルガノポリシロキサンとポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー等の結着樹脂と適当な溶剤に溶解し、得られた塗布液を感光層上に塗布・乾燥することにより形成することができる。また、表面保護層の結着樹脂として縮合系モノマーや不飽和基をもつラジカル重合系モノマーから得られる樹脂を用いる場合は、塗布液を塗布した後、熱や紫外線等のエネルギー光を当てて硬化し、表面保護層を形成してもよい。表面保護層の膜厚は0.05μm以上20μm以下であることが好ましい。
また、表面保護層は電荷輸送層よりも薄膜にすることが可能であるため、本発明のジオルガノポリシロキサンの量を増加させることが可能である。
本発明の電子写真感光体の表面層には、必要に応じて、金属、導電性金属酸化物等の導電性粒子や電荷輸送物質を更に含有させてもよい。
上記各層を形成する際、塗布する方法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、スピナー塗布法、ブレード塗布法、ロール塗布法等が挙げられる。
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段(一次帯電手段)3により、正又は負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の周面に形成された静電潜像は、現像手段5のトナーにより現像されてトナー画像となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成担持されているトナー画像が、転写手段(転写ローラー)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙等)Pに順次転写されていく。
トナー画像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー画像転写後の電子写真感光体1の周面は、クリーニング手段(クリーニングブレード)7によって転写残トナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレール等の案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
電子写真感光体の表面の高い離型性を長期に亘り維持し、転写電流を強くすることなく転写効率を十分に高くすること、また、シャープな静電潜像を得ることは電子写真装置全般に要求されることであるが、カラー電子写真装置(多重転写方式、中間転写方式、インライン方式等)にはより高次元に要求されることであるため、本発明の電子写真感光体は、カラー電子写真装置用の電子写真感光体として特に好適である。
以下、カラー電子写真装置の例として、中間転写方式のカラー電子写真装置及びインライン方式のカラー電子写真装置を説明する。なお、以下の説明において、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の例を挙げたが、本発明における「カラー」とは、4色に限定されるものではなく、多色、すなわち2種以上の色である。
図2に、本発明の電子写真感光体を有する中間転写方式のカラー電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図2において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段(一次帯電手段)3により、正又は負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。この際の露光光は、目的のカラー画像の第1色成分像(例えば、イエロー成分像)に対応した露光光である。こうして電子写真感光体1の周面に、目的のカラー画像の第1色成分像に対応した第1色成分静電潜像(イエロー成分静電潜像)が順次形成されていく。
張架ローラー12及び二次転写対向ローラー13によって張架された中間転写体(中間転写ベルト)11は、矢印方向に電子写真感光体1とほぼ同じ周速度(例えば、電子写真感光体1の周速度に対して97%以上103%以下)で回転駆動される。
電子写真感光体1の周面に形成された第1色静電潜像は、第1色成分現像手段(イエロー成分現像手段)5Yの第1色トナー(イエロートナー)により現像されて第1色トナー画像(イエロートナー画像)となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成担持されている第1色トナー画像が、一次転写手段6pからの一次転写バイアスによって、電子写真感光体1と一次転写手段(一次転写ローラー)6pとの間を通過する中間転写体11の周面に順次一次転写されていく。
第1色トナー画像転写後の電子写真感光体1の周面は、クリーニング手段7によって一次転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、次色の画像形成に使用される。
第2色トナー画像(マゼンタトナー画像)、第3色トナー画像(シアントナー画像)、第4色トナー画像(ブラックトナー画像)も、第1色トナー画像と同様にして電子写真感光体1の周面に形成され、中間転写体11の周面に順次転写される。こうして中間転写体11の周面に目的のカラー画像に対応した合成トナー画像が形成される。第1色〜第4色の一次転写の間は、二次転写手段(二次転写ローラー)6s、電荷付与手段(電荷付与ローラー)7rは中間転写体11の周面から離れている。
中間転写体11の周面に形成された合成トナー画像は、二次転写手段6sからの二次転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から二次転写対向ローラー13・中間転写体11と二次転写手段6sとの間(当接部)に中間転写体11の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙等)Pに順次二次転写されていく。
合成トナー画像の転写を受けた転写材Pは、中間転写体11の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることによりカラー画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
合成トナー画像転写後の中間転写体11の周面には電荷付与手段7rが当接される。電荷付与手段7rは、中間転写体11の周面の二次転写残トナーに一次転写時と逆極性の電荷を付与する。一次転写時と逆極性の電荷が付与された二次転写残トナーは、電子写真感光体1と中間転写体11との当接部及びその近傍において、電子写真感光体1の周面に静電的に転写される。こうして合成トナー画像転写後の中間転写体11の周面は、転写残トナーの除去を受けて清浄面化される。電子写真感光体1の周面に転写された二次転写残トナーは、電子写真感光体1の周面の一次転写残トナーと共に、クリーニング手段7によって除去される。中間転写体11から電子写真感光体1への二次転写残トナーの転写は、一次転写と同時に行うことができるため、スループットの低下を生じない。
また、クリーニング手段7による転写残トナー除去後の電子写真感光体1の周面を、前露光手段からの前露光光により除電処理してもよいが、図2に示すように、帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
図3に、本発明の電子写真感光体を有するインライン方式のカラー電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図3において、1Y、1M、1C、1Kはドラム状の本発明の電子写真感光体(第1色〜第4色用電子写真感光体)であり、それぞれ軸2Y、2M、2C、2Kを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される第1色用電子写真感光体1Yの周面は、第1色用帯電手段(第1色用一次帯電手段)3Yにより、正又は負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4Yを受ける。露光光4Yは、目的のカラー画像の第1色成分像(例えば、イエロー成分像)に対応した露光光である。こうして第1色用電子写真感光体1Yの周面に、目的のカラー画像の第1色成分像に対応した第1色成分静電潜像(イエロー成分静電潜像)が順次形成されていく。
張架ローラー12によって張架された転写材搬送部材(転写材搬送ベルト)14は、矢印方向に第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kとほぼ同じ周速度(例えば、第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの周速度に対して97%以上103%以下)で回転駆動される。また、転写材供給手段(不図示)から給送された転写材(紙等)Pは、転写材搬送部材14に静電的に担持(吸着)され、第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kと転写材搬送部材との間(当接部)に順次搬送される。
第1色用電子写真感光体1Yの周面に形成された第1色成分静電潜像は、第1色用現像手段5Yのトナーにより現像されて第1色トナー画像(イエロートナー画像)となる。次いで、第1色用電子写真感光体1Yの周面に形成担持されている第1色トナー画像が、第1色用転写手段(第1色用転写ローラー)6Yからの転写バイアスによって、第1色用電子写真感光体1Yと第1色用転写手段6Yとの間を通過する転写材搬送部材14に担持された転写材Pに順次転写されていく。
第1色トナー画像転写後の第1色用電子写真感光体1Yの周面は、第1色用クリーニング手段(第1色用クリーニングブレード)7Yによって転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、繰り返し第1色トナー画像形成に使用される。
第1色用帯電手段3Y、第1色用露光手段4Y、第1色用現像手段5Y、第1色用転写手段6Yをまとめて第1色用画像形成部と称する。
第2色用帯電手段3M、第2色用露光手段4M、第2色用現像手段5M、第2色用転写手段6Mを有する第2色用画像形成部、第3色用帯電手段3M、第3色用露光手段4M、第3色用現像手段5M、第3色用転写手段6Mを有する第3色用画像形成部、第4色用帯電手段3K、第4色用露光手段4K、第4色用現像手段5K、第4色用転写手段6Kを有する第4色用画像形成部の動作は、第1色用画像形成部の動作と同様である。つまり、転写材搬送部材14に担持され、第1色トナー画像が転写された転写材Pに、第2色トナー画像(マゼンタトナー画像)、第3色トナー画像(シアントナー画像)、第4色トナー画像(ブラックトナー画像)が順次転写されていく。こうして転写材搬送部材14に担持された転写材Pに目的のカラー画像に対応した合成トナー画像が形成される。
合成トナー画像が形成された転写材Pは、転写材搬送部材14の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることによりカラー画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
また、第1色〜第4色用クリーニング手段7Y、7M、7C、7Kによる転写残トナー除去後の第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの周面を、前露光手段からの前露光光により除電処理してもよいが、図3に示すように、第1色〜第4色用帯電手段3Y、3M、3C、3Kが帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
次に、中間転写体について説明する。
中間転写体としては、張架ローラー(駆動ローラー、テンションローラーを含む)によって張架される無端状の中間転写ベルトが挙げられる。中間転写ベルトの体積抵抗率は106Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。中間転写ベルトの体積抵抗率が低過ぎると、一次転写を受けた部分とそうでない部分とで中間転写ベルトの抵抗値に大きな差ができてしまうため、2色目以降のトナーを効率良く転写することができなくなってしまい、目的とする色合いの画像が得られなくなってしまう。また、中間転写ベルトの抵抗値が高過ぎると、2色目以降のトナーを一次転写する際、それ以前に一次転写を終了したトナーが電子写真感光体に戻ってしまう場合がある。
また、中間転写ベルトの材料としては、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂や、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等の弾性材料が挙げられ、フッ素樹脂又はポリイミド又はポリエチレンテレフタレートが強度や電子写真特性の観点から好ましい。抵抗調整は、上記樹脂や弾性材料にカーボンブラックや金属粒子(酸化チタン粒子や酸化スズ粒子等)等の導電性粒子を分散させて行うことができる。導電性粒子の量を増やすことにより、体積抵抗率を下げることができる。
中間転写ベルトの張力としては、伸び率が1%以内になるように設定して、中間転写ベルトの破断や永久歪みが発生しないようにすることが好ましい。また、中間転写ベルトの厚さは10μm以上200μm以下であることが好ましい。
次に、転写材搬送部材について説明する。
転写材搬送部材としては、張架ローラー(駆動ローラー、テンションローラーを含む)によって張架される無端状の転写材搬送ベルトが挙げられる。転写材搬送ベルトの体積抵抗率は107Ω・cm以上1013Ω・cm以下であることが好ましく、特には108Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることがより好ましい。体積抵抗率が大き過ぎると、転写材搬送ベルトを汚染したトナーの除去を行う際、転写時における電荷蓄積が悪影響を与える場合があり、小さ過ぎると、転写材の吸着が不安定となる場合がある。
また、転写材搬送ベルトの材料としては、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂や、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等の弾性材料が挙げられ、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂が転写性、転写材の吸着性の観点から好ましい。抵抗調整は、上記樹脂や弾性材料にカーボンブラックや金属粒子(酸化チタン粒子、酸化スズ粒子等)等の導電性粒子を分散させて行うことができる。導電性粒子の量を増やすことにより、体積抵抗率を下げることができる。
転写材搬送ベルトの張力としては、伸び率が1%以内になるように設定して、転写材搬送ベルトの破断や永久歪みが発生しないようにすることが好ましい。また、転写材搬送ベルトの厚さは10μm以上200μm以下であることが好ましい。
転写材搬送ベルト上の電荷蓄積が、転写性や転写材の吸着性に悪影響を与えるのを防止するために、転写材搬送ベルトを次色のトナー画像転写よりも前に除電手段により除電する方法が挙げられる。しかしながら、転写材搬送ベルト上に汚染トナーが付着した状態で、除電器の部分を通過させることは、除電器のトナーによる汚染やトナーのチャージアップ(又は電荷消失)、場合によっては、転写材搬送ベルトの放電破壊等の原因となることもある。
転写材搬送ベルトの周面(転写材を担持する側の面)の表面粗さRzは、5μm以下であることが好ましく、特には3μm以下であることがより好ましい。表面粗さRzが5μmを超えると、汚染トナーと転写材搬送ベルト表面の密着性が高まり、汚染トナーの除去が困難となる場合がある。
一方、転写材搬送ベルトの表面粗さRzは、0.05μm以上であることが好ましい。トナーには、その単位面積当たりの帯電電荷量を制御するために、粒径0.001μm以上0.05μm以下程度のシリカ粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子等の無機粒子を外添されている。このようなサブミクロン粒子は、転写材搬送ベルトに対する静電吸着力が強いため、転写材搬送ベルト表面からの除去は困難である。したがって、搬送ベルトの表面粗さRzをこれらの外添剤の粒径(直径)よりも大きくして、搬送ベルトにある程度埋め込まれることが好ましいのである。
本発明において、体積抵抗率は、JIS−K6911に準拠した測定プローブを用い、ADVANTEST社製の高抵抗計R8340にて100Vを印加して得た測定値を、中間転写ベルト、転写材搬送ベルトの厚さで正規化した値である。
中間転写ベルトや転写材搬送ベルトの周面の表面粗さを上記範囲内にするには、例えば、ベルトを型内で加熱成形する方法を用い、このときの型のベルトと接触する面の表面粗さを上記値よりも十分小さくする方法、あるいは、成形後のベルト表面を研磨等の後加工により平滑化する方法が挙げられる。
次に、トナーについて説明する。
本発明の電子写真感光体は、より小粒子径のトナーを用いた場合に、転写効率向上の効果が顕著に現れ、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いた場合に、更に顕著に現れる。
トナーとしては、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤及び低軟化物質を含有している非磁性一成分トナーが好適に用いられる。
トナーの結着樹脂としては、通常用いられているものでよく、例えば、スチレン−ポリエステル、スチレン−ブチルアクリレート等のスチレン系共重合体やポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等が挙げられる。
着色剤は、通常用いられているものでよく、例えば、イエロートナー用としては、ベンジン黄色顔料、フォロンイエロー、アセト酢酸アニリド不溶性アゾ顔料、モノアゾ染料、アゾメチン色素等が挙げられる。
マゼンタトナー用としては、キサンテンマゼンタ染料のリンタングステンモリブテン酸レーキ顔料、2,9−ジメチルキナクリドン、ナフトール不溶性アゾ顔料、アントラキノン染料、キサンテン染料と有機カルボン酸とからなる色材、チオインジゴ、ナフトール不溶性アゾ顔料等が挙げられる。
シアントナー用としては、銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
荷電制御剤としては、通常用いられているものでよく、例えば、負電荷制御剤としては、アルキルサリチル酸の金属錯体、ジガルボン酸の金属錯体、多環体サリチル酸金属塩等が挙げられ、正電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩、ベンゾチアゾール誘導体、グアナミン誘導体、ジブチルチンオキサイド、その他の含窒素化合物等が挙げられる。
低軟化物質としては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロピッシュワックス等のポリメチレンワックスや、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、エステルワックス、及び、これらのグラフト化合物、ブロック化合物等の誘導体が挙げられ、トナー全質量に対して5質量%以上30質量%以下の含有量が好ましい。
また、トナーの円相当個数平均径(D1)は、2μm以上10μm以下であることが好ましい。トナーの平均円形度は0.920以上0.995以下であることが好ましく、特には0.950以上0.995以下であることがより好ましく、更には0.970以上0.990以下であることがより一層好ましい。トナーの円形度標準偏差は0.040未満であることが好ましく、特には0.035未満であることがより好ましく、一方、0.015以上であることが好ましい。
本発明において、円相当個数平均径(D1)、円形度、平均円形度、円形度標準偏差とは、それぞれ、フロー式粒子像測定装置で計測される個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおける、相当個数平均径(D1)、円形度、平均円形度、円形度標準偏差である。
また、本発明において、トナーは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断層面観察において、フロー式粒子像測定装置で計測される質量基準の円相当質量平均径(D4)に対し、
0.9≦R/D4≦1.1
の関係を満たす長径Rを呈するトナーの断層面を20箇所選び出し、選び出したトナーの20箇所の断層面中に存在するワックス成分に起因する相分離構造のうち、最も大きいものの長径rを計測し、r/Rの相加平均値(r/R)stが、
0.05≦(r/R)st≦0.95
を満たすように該ワックス成分がトナーの結着樹脂中に球状又は紡錘形の島状に分散されているトナーであることが好ましい。特には、相加平均値(r/R)stが、
0.25≦(r/R)st≦0.90
であることがより好ましい。
また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いれば、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
以下に、具体的な実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
まず、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンは、次のように合成することができる。
(合成例1)
フラスコに、下記繰り返し構造単位α、β、γを有するポリシロキサンを3.23gと、
塩化白金酸20ppm(5%イソプロピルアルコール溶液)と、下記式で示される構造を有するポリスチレン(n:平均25)18.9gと、
m−キシレンヘキサフルオライド80gとを混合し、徐々に加熱した。更に、80℃で6時間反応を続けた。次いで、140℃の条件下で20Torrまで減圧して、溶媒や低沸点成分を除去した。
このようにして、得られた反応生成物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、ジオルガノポリシロキサン(1−1)であることが判明した。
(合成例2)
合成例1において、ポリスチレンを下記式で示される構造を有するポリスチレン(n:平均25)13.4gに変更した以外は、合成例1と同様にして合成を行った。
得られた反応生成物を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、ジオルガノポリシロキサン(1−4)であることが判明した。
他の構造の本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンも、合成例1や合成例2と同様にして合成することができる。
(実施例1)
φ30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬塗布法で塗布し、140℃で30分間硬化させ、膜厚15μmの導電層を形成した。
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール(質量比0.2/0.8) 20部
次に、導電層上にN−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬塗布法で塗布し、乾燥することによって、膜厚0.5μmの中間層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニン結晶4部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬塗布法で塗布し、乾燥することによって、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送層用の塗料を調製した。まず、結着樹脂として繰り返し構成単位例(7−2)で示されるポリアリレート樹脂10部{粘度平均分子量(以下Mvと略す)45,000}をクロロベンゼン100部に溶解し、テトラフルオロエチレン樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ルブロンL−2、一次粒子径0.3μm、二次粒子径5μm)10部と、ジオルガノポリシロキサン(1−1)(重量平均分子量:36000)2部を添加して良く振り混ぜた。液衝突型分散機を用い、この混合物を2回分散することによってフッ素樹脂粉末分散液を調製した。
次に、上記ポリアリレート樹脂、下記式で示されるアミン化合物A及びB
を最終質量比率でポリアリレート樹脂が10、アミン化合物Aが9、アミン化合物Bが1、テトラフルオロエチレン樹脂粉末が1、ジオルガノポリシロキサンが0.2、溶剤が80になるようにフッ素樹脂粉末分散液にポリアリレート樹脂、アミン化合物A及びB及び溶剤を添加した。なお、溶剤は最終質量比率でモノクロロベンゼン:ジクロロメタンが1:1になるように調製した。この塗料を浸漬塗布法で塗布し、130℃で1時間乾燥することによって、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
次に、評価について説明する。装置は、キヤノン製GP211複写機(毎分21枚機)の改造機を用いた。改造は高圧電源基板に対して行い、電子写真感光体が回転している間、一次帯電が出力する様にした。また、クリーニングブレードを改造し、電子写真感光体に接する部分の圧力を通常の製品の50%増しとした。試験は、15℃で湿度10%RHの環境下で、コピーした後一旦停止してからすぐコピーを開始するモードで画像全面にカブリが生じるまで繰り返し画像形成した。画像はA4、印字率5%の文字パターンとした。
更に、初期と20,000枚耐久後に表面電位を測定し、明部電位の差(ΔVl)を調べた。なお、{(20,000枚耐久後の明部電位の絶対値)−(初期の明部電位の絶対値)}の値をもってΔV1とする。また、光量は初期明部電位が−150Vになる様に設定した。更に、初期、耐久終了時に感光体表面と純水との接触角を調べた。これらの結果を表1に示す。
(実施例2〜5)
電荷輸送層の結着樹脂として、繰り返し構成単位例(7−1)で示されるポリアリレート樹脂(Mv=44,000)、繰り返し構成単位例(6−2)で示されるポリカーボネート樹脂(Mv=42,000)、繰り返し構成単位例(6−13)で示されるポリカーボネート樹脂(Mv=40,000)、及び繰り返し構成単位例(6−1)と繰り返し構成単位例(6−2)の構造をモル比で1:1の割合で有する共重合ポリカーボネート(Mv=43,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例6〜10)
最終質量比率でポリアリレート樹脂が10、アミン化合物Aが9、アミン化合物Bが1、テトラフルオロエチレン樹脂粉末が1、ジオルガノポリシロキサンが0.1、溶剤が80になるようにジオルガノポリシロキサンの量を変えた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例11〜15)
ジオルガノポリシロキサンとして、ジオルガノポリシロキサン(1−1)の代わりにジオルガノポリシロキサン(1−12)(重量平均分子量:38000)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例16〜20)
ジオルガノポリシロキサンとして、ジオルガノポリシロキサン(1−1)の代わりにジオルガノポリシロキサン(1−13)(重量平均分子量:18000)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例21〜25)
ジオルガノポリシロキサンとして、ジオルガノポリシロキサン(1−1)の代わりにジオルガノポリシロキサン(1−14)(重量平均分子量:45000)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例26〜30)
ジオルガノポリシロキサンとして、ジオルガノポリシロキサン(1−1)の代わりにジオルガノポリシロキサン(1−7)(重量平均分子量:37000)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例31〜35)
ジオルガノポリシロキサンとして、ジオルガノポリシロキサン(1−1)の代わりにジオルガノポリシロキサン(1−8)(重量平均分子量:30000)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例36〜40)
ジオルガノポリシロキサンとして、ジオルガノポリシロキサン(1−1)の代わりにジオルガノポリシロキサン(1−9)(重量平均分子量:38000)を用いた以外は、実施例1〜5と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例41)
電荷輸送層の結着樹脂として、繰り返し構成単位例(7−24)で示されるポリアリレート樹脂(Mv=150,000)、を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例42〜44)
フッ素樹脂粉体としてテトラフルオロエチレン樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ルブロンL−2、一次粒子径0.3μm、二次粒子径5μm)の代わりにそれぞれテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンPFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンPEP)、トリフルオロクロロエチレン樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ネオフロンPCTFE)を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例45)
実施例1と同様にして電荷発生層まで作製した後、以下のようにして電荷輸送層を作製した。
即ち、繰り返し構成単位例(6−3)で示されるポリカーボネート樹脂10部(Mv=40000)とアミン化合物Bの8部をクロロベンゼン40部/ジクロロメタン40部の混合溶媒に溶解した塗料を浸漬塗布法で塗布し、130℃で1時間乾燥することによって、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
更に、以下の手順で、保護層を形成した。まず、平均粒径0.02μmのアンチモン含有酸化スズ微粒子(三菱マテリアル(株)製、商品名:T1)100部、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン(信越化学製)30部及び95%エタノール水溶液300部を混合した溶液を、ミリング装置で1時間分散した溶液を濾過し、エタノールで洗浄後に乾燥し、120℃で1時間加熱処理することにより酸化スズ微粒子表面を処理した。
次に、下記式で示されるアクリルモノマー25部、2−メチルチオキサントン0.5部、前記の表面処理済み酸化スズ粒子35部及びトルエン300部を混合してサンドミル装置で96時間分散した分散液に、テトラフルオロエチレン樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ルブロンL−2、一次粒子径0.3μm、二次粒子径5μm)25部及びジオルガノポリシロキサン(1−1)10部を混合して再びサンドミル装置で8時間分散した。このフッ素樹脂分散液をスプレー塗布後、乾燥し、高圧水銀灯にて800mW/cm2の光強度で15秒間紫外線を照射することによって、4μm厚の保護層を形成した。
得られた電子写真感光体を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
(実施例46)
実施例45と同様に電荷輸送層まで作製した後、以下のようにして保護層を作製した。
まず、繰り返し構成単位例(6−3)で示されるポリカーボネート樹脂35部(Mv=89,000)をクロロベンゼン100部に溶解し、テトラフルオロエチレン樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製、商品名:ルブロンL−2、一次粒子0.3μm、二次粒子径5μm)5部、ジオルガノポリシロキサン(1−1)2部を添加して良く振り混ぜた。液衝突型分散機を用い、この混合物を2回分散することによってフッ素樹脂粉末分散液を調製した。
次いで、繰り返し構成単位例(6−3)で示されるポリカーボネート樹脂、アミン化合物B及び溶剤を添加し、最終質量比率でポリカーボネート樹脂が2、アミン化合物Bが1、テトラフルオロエチレンが1、溶剤が100になるようにフッ素樹脂粉末分散液にポリカーボネート樹脂、アミン化合物B及び溶剤を添加した。なお、溶剤は最終質量比率でモノクロロベンゼンとジクロロメタンが1:0.4になるように調製した。この塗料をスプレー法で塗布し、130℃で1時間乾燥することによって、膜厚6μmの保護層を形成した。
得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
また、実施例1〜46で調製した表面層用塗工液は、1時間放置した後でもフッ素樹脂粉体の凝集、沈降は発生せず良好な分散液であった。
(比較例1〜3)
ジオルガノポリシロキサンの代わりに、フッ素成分がグラフトしたポリメタクリル酸メチル(商品名:アロンGF300、東亜合成製)を1部用いた以外は、実施例1、6及び11と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
(比較例4)
ジオルガノポリシロキサンの代わりに、フッ素成分がグラフトしたポリメタクリル酸メチル(商品名:アロンGF300、東亜合成製)を1部用いた以外は、実施例22と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
(比較例5〜6)
テトラフルオロエチレン樹脂粉末とジオルガノポリシロキサンを用いなかった以外は、実施例1及び4と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
(比較例7)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−1)(重量平均分子量:34000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−1)の末端基は、下記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、下記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例8)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−2)(重量平均分子量:36000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−2)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例9)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−3)(重量平均分子量:37000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−3)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例10)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−4)(重量平均分子量:48000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−4)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例11)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−5)(重量平均分子量:36000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−5)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例12)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−6)(重量平均分子量:43000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−6)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例13)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−7)(重量平均分子量:28000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−7)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。
(比較例14)
実施例1において電荷輸送層用塗布液中のジオルガノポリシロキサン(1−1)を、下記ジオルガノポリシロキサン(2−8)(重量平均分子量:38000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
ただし、下記ジオルガノポリシロキサン(2−8)の末端基は、上記式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、上記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)である。