しかしながら、上記従来の温度センサでは、電力制御装置の温度制御を高感度でおこなえないという問題点を有している。
ダイオードを用いる温度センサは、構造が単純である。そのため、上記特許文献2の方法のように安定性の高い複数の電流源などは必要ではなく、構成の単純さから温度センサとして好ましい。
しかしながら、温度センサに用いるダイオードは温度の変化に対して高感度である必要があり、また、理想的にはダイオードの温度Tsとパワーデバイスの温度Tchとが同じ温度になる(Ts=Tch)ことが好ましい。
上記ダイオードが温度の変化に対して高感度であるためには、上記ダイオード毎の温度感受性を向上させるとともに、上記ダイオードを直列に接続し、ダイオード列として用いることによって温度に対する電圧の変化量を増大させることが行なわれている。上記ダイオード毎の温度感受性を向上させる方法については後述する。
パワーデバイスの温度Tchがダイオードに伝わる過程について検討する。
図16の(a)は、パワーMOSFETと温度測定用のダイオード列との熱結合の様子を示した回路図であり、図16の(b)は、図16の(a)に示す回路の熱回路図である。パワーMOSFETの動作によって生じた熱Pdは、パワーMOSFETを構成する素子の温度をTchに上昇させる。また上記の熱はパワーMOSFETを構成する素子に溜まる(CTH)。また、発生した熱の一部はGpによってパワーMOSFETを構成する素子の外部に放出される。
パワーMOSFETと温度測定用のダイオード列とは、素子を構成する構造が異なっている。そのため、上記パワーMOSFETと上記温度測定用のダイオード列との間には、熱伝導係数Gcで示される熱の移動効率を示す定数が規定されている。上記熱伝導係数は大きいほど熱の移動効率が高いので、温度測定用のダイオード列によってパワーMOSFETの温度を測定しようとする場合にも上記熱伝導係数が大きいことが望ましい。
熱伝導係数Gcによって温度測定用のダイオード列に移動した熱は、温度測定用のダイオード列を構成する素子の温度をTsに上昇させる。また上記の熱は温度測定用のダイオード列を構成する素子に溜まる(CTHS)。また、発生した熱の一部はGsによって温度測定用のダイオード列を構成する素子の外部に放出される。
ここで、従来の図13〜図15に示されるパワーMOSFETと温度測定用のダイオード列との間の熱結合に関する問題点を明らかにする。
図13に記載するPNジャンクション拡散型ダイオードを用いる従来のセンサ構造では、パワーMOSFETと温度測定用のダイオード列とを電気的に分離するために、上記温度測定用のダイオード列は上記パワーMOSFETから離れた位置に形成されている。これは上記パワーMOSFETと温度測定用のダイオード列とが、ともにシリコン基板の上に形成されており、電気的に絶縁する絶縁層を持たないためである。そのため、上記図13のような構成をとった場合には、上記パワーMOSFETと上記温度測定用のダイオード列との間は距離を置いて形成される。つまり、熱結合は弱くなり、熱伝導係数Gcは小さくなる。さらに、PNダイオードを形成する工程がトレンチのプロセスとは工程上で互換ではないため、コストが高くなるという問題がある。
また、図14に記載するPolySiを用いた従来の温度測定用のダイオード列では、ダイオードは、ロコスによって電気的にも熱的にもSi基板から分離されて形成されている。
一般的に、LOCOSを形成するSiO2の熱伝導係数κoxはSiの熱伝導係数κSiと比較して小さいことが知られている。例えばκSi/κox=103.57である。そのため、上記パワーMOSFETと温度測定用のダイオード列とをLOCOSで隔てる図14の構成では、熱の伝導は遅く、熱伝導係数Gcは小さくなる。即ち、温度測定用のダイオード列の温度TsはパワーMOSFETの温度Tchの変化に対して遅延して変化することになる。
さらに、図14に開示されたダイオードでは、順方向電圧(VF)に対する温度係数(TCD)がPNジャンクション拡散型ダイオードの温度係数(TCD)に比べて小さい。そのため、PNジャンクション拡散型ダイオードを用いる場合と比較して、温度センサとしての感度が低いという問題点がある。
さらに、図15に記載されているMOSFETへの組み込み型PNダイオードD701、D701’,D702では、温度測定用のダイオードのPNジャンクションはトレンチから離れた位置に形成されている。このような構成が必要となるのは、パワーMOSFETに寄生する電流の効果が上記組み込まれたPNダイオードD701、D701’,D702に及ばないようにする必要があるためである。
事実、上記特許文献3では、温度測定用のダイオードのカソードはトレンチのゲートから離さなければならないと記載されており、さらに特許文献3の請求項1では、カソード(第1拡散層)は第2拡散層を取り囲んでいる必要があると記載されている。換言すると、PNダイオードのカソードはトレンチから切り離されて形成される必要がある。
即ち、上記特許文献3の方法では、上記のように温度測定用のダイオードとパワーMOSFETとを分離して構成する必要がある。つまり、パワーMOSFETを構成するために大きな領域が必要であるとともに、温度測定用のダイオードとパワーMOSFETと距離が大きくなり、結果として熱伝導係数Gcが小さくなるという問題が発生する。
以上のように、従来のように電力制御装置に組み込まれた温度センサでは、高感度に電力装置の温度変化を検出することができなかった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、温度制御を高感度でおこなうことができる温度センサを組み込んだ電力制御装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明の電力制御装置は、上記課題を解決するために、同一基板上に、電力制御素子となるトランジスタ及び温度センサとなるダイオードが形成されている電力制御装置であって、上記トランジスタは、第1の導電タイプである高ドープドレイン部、第1の導電タイプである低ドープドレイン部、第2の導電タイプであるチャネルボディ部、及び第1の導電タイプであるソース部が、この順に隣接して積層された半導体基板上に、上記ソース部及び上記チャネルボディ部を貫通し上記低ドープドレイン部に達するトランジスタトレンチ部が設けられており、上記トランジスタトレンチ部によってトランジスタ領域が区画されており、上記ダイオードは、第1の導電タイプである高ドープドレイン部、第1の導電タイプである低ドープドレイン部、第2の導電タイプである第1バイアス拡散部、第1の導電タイプである低ドープアノード部が、この順に隣接して積層されるとともに、上記第1バイアス拡散部の一部は上記低ドープアノード部を貫通して表面に露出するように形成され、上記低ドープアノード部上には、第1の導電タイプである高ドープアノード部及び第2の導電タイプであるカソード部が隣接するように形成され、上記露出した上記第1バイアス拡散部上には、第2の導電タイプである第2バイアス拡散部が形成され、上記高ドープアノード部、カソード部、低ドープアノード部、及び上記第1バイアス拡散部を貫通し前記低ドープドレイン部に達するダイオードトレンチ部が設けられており、上記高ドープアノード部にアノード電極が設けられ、上記カソード層にカソード電極が設けられ、上記バイアス拡散部に第1バイアス電極が設けられ、上記ダイオードトレンチ部に第2バイアス電極が設けられており、上記ダイオードトレンチ部によってダイオード領域を区画されており、上記トランジスタと上記ダイオードは隣接して形成されるが、電気的には絶縁されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、同一基板上に電力制御素子となるトランジスタと温度センサとなるダイオードとがそれぞれトランジスタトレンチ及びダイオードトレンチによって区画されて形成されている。つまり、上記の電力制御素子及び上記温度センサはそれぞれ上記のトランジスタトレンチ及びダイオードトレンチで囲まれた部分を単位として上記基板上で組み合わせることができるため、上記温度センサの配置を自由に行うことができる。
また、上記ダイオードトレンチは、上記高ドープアノード部、カソード部、低ドープアノード部、及び上記第1バイアス拡散部を貫通し、上記低ドープドレイン部に到達するように形成され、かつ、上記ダイオードを形成する高ドープアノード部、カソード部、低ドープアノード部、第1バイアス拡散部、及び第2バイアス拡散部を囲むように形成されている。そのため、上記ダイオードを構成する高ドープアノード部と、低ドープアノード部と、上記カソード部とはその下に形成されている第1バイアス拡散部及び上記ダイオードトレンチに囲まれて形成されている。
上記第2バイアス拡散部には第1バイアス電極が設けられており、上記第1バイアス電極に電位を与えてバイアスすることにより、上記のように構成されるダイオードが基板に形成されているトランジスタ及び他のダイオードからの電位変動を受けないように構成することができる。
また、上記電力制御装置を構成するトランジスタが垂直トレンチ型MOSFETで構成されており、トランジスタのゲート電極を構成するトランジスタトレンチによってそれぞれのトランジスタが区画されている。
即ち、上記ダイオード及び上記トランジスタはそれぞれがトランジスタトレンチ及びダイオードトレンチ、即ちトレンチで隔てられた位置に形成されており、上記トランジスタで発生した熱は隣接するトレンチを経由して速やかに上記ダイオードに伝導することができる。上記トランジスタ及びダイオードは、電力制御装置を構成する基板上に形成される積層構造の殆ど同じ階層に構成される構造であるので、上記トランジスタ及び上記ダイオードは基板上に平面的に配置することができるとともに、上記のように配置を行うことによって上記トランジスタ及び上記ダイオードをトレンチによって隔てただけの位置に形成することができ、上記トランジスタと上記ダイオードとの熱伝導効率をさらに向上させることができる。
また、上記の電力制御装置では、従来のように熱伝導性の劣るLOCOS膜を用いて上記トランジスタとダイオードとを区画せず、熱の伝導性に優れる上記トランジスタトレンチ及び上記ダイオードトレンチによって区画することができる。つまり上記トランジスタから上記ダイオードへの熱の伝導性に優れた構成とすることができる。特に上記ダイオードを温度センサとして用いる場合には、上記電力制御装置の温度変化に対する感受性が高い温度センサを実現することができる。
尚、上記第1の導電タイプがp型の半導体であり、上記第2の導電タイプがn型の半導体である構成であってもよいし、上記第1の導電タイプがn型の半導体であり、上記第2の導電タイプがp型の半導体である構成であってもよい。
また、上記ダイオードトレンチ部及び上記トランジスタトレンチ部がポリシリコンで形成されている構成であってもよい。
上記の構成によれば、電力制御装置に形成されるトレンチ部がポリシリコンで構成されている。ポリシリコンは熱の伝導性が高いため、上記トランジスタ及び上記ダイオードの熱伝導効率をさらに向上させることができる。
また、上記ダイオードトレンチ部と、上記トランジスタトレンチ部とが電気的に接続されていない構成であってもよい。
上記の構成によれば、ダイオードを区画するトレンチ部とトランジスタを区画するトレンチ部が電気的に接続されていないため、上記ダイオードはトランジスタを制御するために上記トランジスタトレンチ部に印加される電圧の影響を受けることがない。
また、上記ダイオードが同一基板上に複数形成され、ダイオード列が形成されており、上記ダイオード列は、第1個目の上記ダイオードの上記高ドープアノード部が上記ダイオード列のアノード電極として形成されており、第1個目の上記ダイオードの上記カソード部と次の上記ダイオードの上記高ドープアノード部とが電気的に接続され、ダイオード列要素が形成されており、さらに上記ダイオード列要素の端の上記カソード部と次の上記ダイオードの上記高ドープアノード部とが電気的に接続され、あらたにダイオード列要素が形成されるダイオード列要素の電気的な接続が繰り返し形成されており、最後の上記ダイオード列要素に電気的に接続された上記ダイオードの上記カソード部が上記ダイオード列のカソード電極として形成されており、上記ダイオード列が、上記温度センサである構成であってもよい。
上記の構成によれば、ダイオード列によって温度センサが構成されている。上記温度センサでは、温度の変化はダイオードによる電圧降下の大きさを基にして測定している。そのため、上記ダイオードを複数直列に接続したダイオード列を温度センサとして用いると、温度変化による電圧降下の大きさが単一のダイオードによって生じる電圧降下よりも大きくなるので、電力制御装置の温度の変化を高感度に検出することができる。
また、上記ダイオード列が、上記トランジスタの周囲に形成されている構成であってもよい。
上記の構成によれば、上記ダイオード列が上記トランジスタの周囲に形成されているため、上記トランジスタと上記ダイオード列との熱結合が向上する。即ち、熱の伝導効率を向上させることができ、上記温度センサの温度に対する感受性を高めることができる。
また、上記第2バイアス拡散部と上記高ドープアノード部とが電気的に接続されている構成であってもよい。
上記の構成によれば、上記ダイオードを構成する上で寄生して生じるバイポーラトランジスタの動作を停止することができる。上記の寄生するバイポーラトランジスタは、上記低ドープアノード部をエミッタ、上記第1バイアス拡散部をベース、上記高ドープドレイン部をコレクタとするバイポーラトランジスタであるが、上記第2バイアス拡散部と上記高ドープアノード部とが電気的に接続されていることによってエミッタ−ベース間の電位を等しくすることができ、これによって上記の寄生するバイポーラトランジスタの動作を停止することができる。
特に上記のようにダイオード列を形成している場合では、高ドープアノード部の半導体の極性がp型であれば、構成するダイオード列による電圧降下によって、エミッタにかかる電圧がベースにかかる電圧よりも低くなるため、上記の寄生するバイポーラトランジスタの動作を停止することができる。また高ドープアノード部の半導体の極性がn型であれば、構成するダイオード列による電圧降下によって、エミッタにかかる電圧がベースにかかる電圧よりも高くなるため、上記の寄生するバイポーラトランジスタの動作を停止することができる。
また、上記第2バイアス電極と上記アノード電極とが電気的に接続されている構成であってもよい。
上記の構成によれば、上記ダイオードを構成する上で寄生して生じるMOSFETの動作を停止することができる。上記の寄生するMOSFETは、上記ダイオードトレンチ部をゲート、上記高ドープアノード部をソース、上記高ドープドレイン部をドレインとするMOSFETであるが、上記第2バイアス電極と上記アノード電極とが電気的に接続されていることによってゲート−ソース間の電位Vgsが等しくなり、これによって上記の寄生するMOSFETの動作を停止することができる。
特に上記のようにダイオード列を形成している場合では、アノード電極の半導体の極性がp型であれば、構成するダイオード列による電圧降下によってゲートの電位の方がソースの電位より高くなり、上記の寄生するMOSFETの動作を停止することができる。またアノード電極の半導体の極性がn型であれば、構成するダイオード列による電圧降下によってゲートの電位の方がソースの電位より低くなり、上記の寄生するMOSFETの動作を停止することができる。
また、本発明の電力制御装置の製造方法は、上記課題を解決するために、同一基板上に、電力制御素子となるトランジスタがトランジスタトレンチ部によって区画されて形成されており、温度センサとなるダイオードがダイオードトレンチ部によって区画されて形成されている電力制御装置の製造方法であって、第1の導電タイプである高ドープドレイン部、第1の導電タイプである低ドープドレイン部、第2の導電タイプであるチャネルボディ部を、この順に隣接して基板上に積層する第1積層工程と、上記トランジスタトレンチ部を形成するトランジスタトレンチ形成工程と、上記ダイオードトレンチ部を形成するダイオードトレンチ形成工程と、上記ダイオードトレンチで区画された上記基板のチャネルボディ部上であり、かつ、上記高ドープドレイン部に対向する位置の一部をドープして第1の導電タイプである低ドープアノード部を形成する第2積層工程と、上記低ドープアノード部の上に第1の導電タイプである高ドープアノード部及び第2の導電タイプであるカソード部が互いに隣接するようにドープする第3積層工程と、上記ダイオードトレンチで区画された上記基板の上記チャネルボディ部上であり、かつ、上記高ドープドレイン部に対向する位置であるとともに上記低ドープアノード部が形成されずに上記チャネルボディ部が露出している位置をドープして第2の導電タイプである第2バイアス拡散部を形成する第4積層工程と、上記トランジスタトレンチで区画された上記基板の上記チャネルボディ部上であり、かつ、上記高ドープドレイン部に対向する位置に第1の導電タイプであるソース拡散部を隣接して上記基板上に積層する第5積層工程とを有しており、上記トランジスタトレンチ形成工程は、上記ソース拡散部及び上記チャネルボディ部を貫通し、上記低ドープドレイン部に到達するようにエッチングしてトランジスタトレンチ溝を形成する工程と、上記トランジスタトレンチ溝の表面にトランジスタゲート絶縁体を形成する工程と、上記トランジスタゲート絶縁体で囲まれる領域にトランジスタゲート電極を形成する工程と、上記トランジスタゲート電極の上に絶縁層を形成する工程とを含み、上記ダイオードトレンチ形成工程は、上記高ドープアノード部、上記カソード部、上記第2バイアス拡散部、上記低ドープアノード部、及び上記チャネルボディ部を貫通し、上記低ドープドレイン部に到達し、かつ、上記ダイオードを形成する上記高ドープアノード部、上記カソード部、上記第2バイアス拡散部、上記低ドープアノード部、及び上記チャネルボディ部を囲むようにエッチングしてダイオードトレンチ溝を形成する工程と、上記ダイオードトレンチ溝の表面にダイオードゲート絶縁体を形成する工程と、上記ダイオードゲート絶縁体で囲まれる領域に第2バイアス電極を形成する工程と、上記第2バイアス電極の上に絶縁層を形成する工程とを含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、上記トランジスタ及び上記ダイオードは同一基板上に形成され、かつ、それらを同一の工程で形成することができる。即ち、製造するための工程を単純にすることができる。
本発明の電力制御装置は、以上のように、上記トランジスタは、第1の導電タイプである高ドープドレイン部、第1の導電タイプである低ドープドレイン部、第2の導電タイプであるチャネルボディ部、及び第1の導電タイプであるソース部が、この順に隣接して積層された半導体基板上に、上記ソース部及び上記チャネルボディ部を貫通し上記低ドープドレイン部に達するトランジスタトレンチ部が設けられており、上記トランジスタトレンチ部によってトランジスタ領域が区画されており、上記ダイオードは、第1の導電タイプである高ドープドレイン部、第1の導電タイプである低ドープドレイン部、第2の導電タイプである第1バイアス拡散部、第1の導電タイプである低ドープアノード部が、この順に隣接して積層されるとともに、上記第1バイアス拡散部の一部は上記低ドープアノード部を貫通して表面に露出するように形成され、上記低ドープアノード部上には、第1の導電タイプである高ドープアノード部及び第2の導電タイプであるカソード部が隣接するように形成され、上記露出した上記第1バイアス拡散部上には、第2の導電タイプである第2バイアス拡散部が形成され、上記高ドープアノード部、カソード部、低ドープアノード部、及び上記第1バイアス拡散部を貫通し前記低ドープドレイン部に達するダイオードトレンチ部が設けられており、上記高ドープアノード部にアノード電極が設けられ、上記カソード層にカソード電極が設けられ、上記バイアス拡散部に第1バイアス電極が設けられ、上記ダイオードトレンチ部に第2バイアス電極が設けられており、上記ダイオードトレンチ部によってダイオード領域を区画されており、上記トランジスタと上記ダイオードは隣接して形成されるが、電気的には絶縁されている。
また、本発明の電力制御装置の製造方法は、以上のように、第1の導電タイプである高ドープドレイン部、第1の導電タイプである低ドープドレイン部、第2の導電タイプであるチャネルボディ部を、この順に隣接して基板上に積層する第1積層工程と、上記トランジスタトレンチ部を形成するトランジスタトレンチ形成工程と、上記ダイオードトレンチ部を形成するダイオードトレンチ形成工程と、上記ダイオードトレンチで区画された上記基板のチャネルボディ部上であり、かつ、上記高ドープドレイン部に対向する位置の一部をドープして第1の導電タイプである低ドープアノード部を形成する第2積層工程と、上記低ドープアノード部の上に第1の導電タイプである高ドープアノード部及び第2の導電タイプであるカソード部が互いに隣接するようにドープする第3積層工程と、上記ダイオードトレンチで区画された上記基板の上記チャネルボディ部上であり、かつ、上記高ドープドレイン部に対向する位置であるとともに上記低ドープアノード部が形成されずに上記チャネルボディ部が露出している位置をドープして第2の導電タイプである第2バイアス拡散部を形成する第4積層工程と、上記トランジスタトレンチで区画された上記基板の上記チャネルボディ部上であり、かつ、上記高ドープドレイン部に対向する位置に第1の導電タイプであるソース拡散部を隣接して上記基板上に積層する第5積層工程とを有しており、上記トランジスタトレンチ形成工程は、上記ソース拡散部及び上記チャネルボディ部を貫通し、上記低ドープドレイン部に到達するようにエッチングしてトランジスタトレンチ溝を形成する工程と、上記トランジスタトレンチ溝の表面にトランジスタゲート絶縁体を形成する工程と、上記トランジスタゲート絶縁体で囲まれる領域にトランジスタゲート電極を形成する工程と、上記トランジスタゲート電極の上に絶縁層を形成する工程とを含み、上記ダイオードトレンチ形成工程は、上記高ドープアノード部、上記カソード部、上記第2バイアス拡散部、上記低ドープアノード部、及び上記チャネルボディ部を貫通し、上記低ドープドレイン部に到達し、かつ、上記ダイオードを形成する上記高ドープアノード部、上記カソード部、上記第2バイアス拡散部、上記低ドープアノード部、及び上記チャネルボディ部を囲むようにエッチングしてダイオードトレンチ溝を形成する工程と、上記ダイオードトレンチ溝の表面にダイオードゲート絶縁体を形成する工程と、上記ダイオードゲート絶縁体で囲まれる領域に第2バイアス電極を形成する工程と、上記第2バイアス電極の上に絶縁層を形成する工程とを含んでいる構成である。
上記の構成によれば、上記の電力制御素子及び上記温度センサはそれぞれ上記のトランジスタトレンチ及びダイオードトレンチで囲まれた部分を単位として上記基板上で組み合わせることができるため、上記温度センサの配置を自由に行うことができる。
また、上記ダイオードは、その下に形成されているチャネルボディ部及び上記ダイオードトレンチに囲まれて形成されている。上記バイアス拡散部には第1バイアス電極が設けられており、上記第1バイアス電極に電位を与えてバイアスすることにより、上記のように構成されるダイオードが基板に形成されているトランジスタ及び他のダイオードからの電位変動を受けないように構成することができる。
また、上記の電力制御装置では、従来のように熱伝導性の劣るLOCOS膜を用いて上記トランジスタとダイオードとを区画せず、熱の伝導性に優れる上記トランジスタトレンチ及び上記ダイオードトレンチによって区画することができる。つまり上記トランジスタから上記ダイオードへの熱の伝導性に優れた構成とすることができる。特に上記ダイオードを温度センサとして用いる場合には、上記電力制御装置の温度変化に対する感受性が高い温度センサを実現することができる。
また上記の構成によれば、上記トランジスタ及び上記ダイオードは同一基板上に形成され、かつ、それらを同一の工程で形成することができる。即ち、製造するための工程を単純にすることができる。特にトランジスタを垂直トレンチ型MOSFETとして形成すると、上記製造工程をさらに単純に構成することができる。
それゆえ、温度制御を高感度でおこなうことができる温度センサを組み込んだ電力制御装置を提供することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1〜図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態では、トレンチ型ダイオードデバイスの詳細について記載する。また、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイスを有する温度センサ、及び上記温度センサとトレンチ型MOSFETとで構成される電力制御装置について記載する。
図1は、本発明のトレンチ型ダイオードデバイスを用いた電力制御装置の実施の一形態を示す見取り図であり、本実施の形態でのトレンチ型MOSFETと温度センサとの構造を示す断面の見取り図である。
また、図2は、図1のトレンチ型ダイオードデバイスの一つを拡大した断面の見取り図である。
本実施の形態の温度センサは、トレンチ型ダイオードデバイス13を1個用いたダイオートまたは複数直列に接続したダイオード列で構成される。温度の変化はダイオードによる電圧降下の大きさを基にして測定する。特にダイオード列を用いて温度センサを構成すると、温度変化による電圧降下の大きさが単一のダイオードによって生じる電圧降下よりも大きくなるので、電力制御装置の温度の変化を高感度に検出することができる。
本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13の構造は、図1に示すようにトレンチ型MOSFET12の構造と似ている。
まず、本実施の形態でのトレンチ型MOSFET12の構成を図1を用いて説明する。
本実施の形態でのトレンチ型MOSFET12では、高密度にドープされた基板1及びエピタキシャル層2である半導体層とMOSFETの第1バイアス拡散層3’である半導体層とを有する。上記基板1の上に上記エピタキシャル層2が形成され、さらに上記エピタキシャル層2の上に第1バイアス拡散層3’が形成される。上記エピタキシャル層2は基板1よりも低密度にドープされた部位であり、ドリフト部を形成している。また、上記第1バイアス拡散層3’の上には、ソース拡散層7’が形成される。上記第1バイアス拡散層3’の上に、第2ボディ拡散層8’がソース拡散層7’に隣り合うように設けられていてもよい。
上記基板1、エピタキシャル層2、及びソース拡散層7’の極性(第1の極性)と第1バイアス拡散層3’及び第2ボディ拡散層8’の極性(第2の極性)とは反対であり、本実施の形態では第1の極性をp型として記載している。上記極性は設計によって適宜変更できるものであり、上記第1の極性をn型として実施することも可能である。
また、本実施の形態でのトレンチ型MOSFET12では、ゲート電極6’とゲート電極の周囲に設けられているゲート絶縁体5’とは、ソース拡散層7’、第2ボディ拡散層8’及び第1バイアス拡散層3’を貫通し、エピタキシャル層2の一部に到達するトレンチ4’を形成している。また、ゲート電極6’はゲート電極Gに接続されている。また、本実施の形態のゲート電極6’は、ポリシリコンで形成されていることが好ましい。
そして、ソース拡散層7’及び第2ボディ拡散層8’は図示しないトップの金属被覆に接続され、ソース電極Sを形成する。また、上記基板1の底部には金属被覆9が形成され、ドレイン電極Dが形成される。
本実施の形態のトレンチ型MOSFET12では、ソース拡散層7’に印加している電位よりも低い電位をゲート電極6’に印加すると、上記トレンチ4’が第1バイアス拡散層3’へチャネルを形成し、反転層を形成する。そのためソース拡散層7’とエピタキシャル層2との間に電流を流すことができる。つまり、MOSFET12の電気の伝導を制御することができる。即ち、これらは従来のトレンチ型MOSFETの構造と同じ構造である。
次に、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13の構成を図1を用いて説明する。
本実施の形態でのトレンチ型ダイオードデバイス13では、高密度にドープされた基板1及びエピタキシャル層2である半導体層とMOSFETの第1バイアス拡散層3である半導体層とを有する。上記基板1の上に上記エピタキシャル層2が形成され、さらに上記エピタキシャル層2の上に第1バイアス拡散層3が形成される。上記エピタキシャル層2は基板1よりも低密度にドープされた部位であり、ドリフト部を形成している。
また、本実施の形態でのトレンチ型ダイオードデバイス13では、上記第1バイアス拡散層3の上部に低密度にドープされた低ドープアノード層10が形成され、それらの上部に高ドープアノード層7、カソード層8、第2バイアス拡散層11、カソード層8を電気的に分離する為の分離用拡散層19、及び第2バイアス拡散層11が形成される。高ドープアノード層7及びカソード層8は、隣り合うように形成される。そして第2バイアス拡散層11は上記高ドープアノード層7及びカソード層8とは分離用拡散層19を挟んで形成されている。高ドープアノード層7、カソード層8、及び分離用拡散層19は低ドープアノード層10の上に形成されるが、第2バイアス拡散層11は後述するように第1バイアス拡散層3の上部に形成される。低ドープアノード層10、カソード層8、及び第2バイアス拡散層11については後に詳しく記載する。
上記基板1、エピタキシャル層2、高ドープアノード層7、及び低ドープアノード層10の極性(第1の極性)と第1バイアス拡散層3、カソード層8、及び第2バイアス拡散層11の極性(第2の極性)とは反対であり、本実施の形態では第1の極性をp型として記載している。上記極性は設計によって適宜変更できるものであり、上記第1の極性をn型として実施することも可能である。
また、本実施の形態でのトレンチ型ダイオードデバイス13では、ゲート電極6とゲート電極の周囲に設けられているゲート絶縁体5とは、高ドープアノード層7、カソード層8、分離用拡散層19、第2バイアス拡散層11、低ドープアノード層10、及び第1バイアス拡散層3を貫通し、エピタキシャル層2の一部に到達するトレンチ4を形成している。またトレンチ4は、上記の高ドープアノード層7、カソード層8、分離用拡散層19、第2バイアス拡散層11、低ドープアノード層10、第1バイアス拡散層3、及びエピタキシャル層2の一部(以降、ダイオード要素と記載)を取り囲むように形成される。そのため、本実施の形態でのトレンチ型ダイオードデバイス13では、それぞれのダイオード要素がトレンチ4によって隔てられて形成されている。
また、本実施の形態のゲート電極6は、ポリシリコンで形成されていることが好ましい。ゲート電極6がポリシリコンで形成されていることにより、本実施の形態での複数のトレンチ型ダイオードデバイス13を隔てているトレンチ4の熱伝導効率を高くすることができる。また、トレンチ型MOSFET12のトレンチ4’のゲート電極6’もポリシリコンで形成されていると、トレンチ型MOSFET12で発生した熱がトレンチ型ダイオードデバイス13に伝導する効率を高めることができる。即ち、トレンチ型MOSFET12とトレンチ型ダイオードデバイス13との熱結合を高めることができる。
そして、高ドープアノード層7は図示しないトップの金属被覆に接続される。また金属被覆9はデバイスの底部に金属被覆を形成しており、ドレイン電極Dを形成している。
また、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、図2に示すように、上記第2の極性である第1バイアス拡散層3が第1の極性をもつ低ドープアノード層10を取り囲むように覆っている。また、トレンチ4の近くにある第1バイアス拡散層3の一部は低ドープアノード層10とトレンチ4の間から基板1とは反対側へ伸展しており、第2の極性を持つ第2バイアス拡散層11に接続している。上記第2バイアス拡散層11は第1バイアス電極VBに接続している。第1バイアス電極VBは、エピタキシャル層2と上記ダイオード要素との電気的な接続の影響を抑えるためのバイアス電位VBを印加する電極である。バイアス電位VBを印加することによる動作の詳細については後述する。
低ドープアノード層10の上部には、第1の極性をもつ高ドープアノード層7と第2の極性をもつカソード層8とが形成される。本実施の形態では、高ドープアノード層7と低ドープアノード層10とはトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード(A)を構成し、カソード層8はカソード(K)を構成する。上記高ドープアノード層7及びカソード層8はそれぞれアノード電極EA及びカソード電極EAに接続されている。
また、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13のトレンチ4は、本実施の形態のトレンチ型MOSFET12のトレンチ4’とは別に形成されており、それぞれに形成されるゲート電極6’及びゲート電極6は独立しており、電気的にも接続されていない。トレンチ型ダイオードデバイス13のゲート電極6は、第2バイアス電極DGに接続されている。第2バイアス電極DGに電圧を印加し、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13に寄生するMOSFETの動作を抑える作用については後述する。
一般的に、トレンチ型MOSFETを構成する第1バイアス拡散層3のドーピング密度は3×1016〜4×1017〔at/cm3〕であり、第1バイアス拡散層3の層の厚さXjnは1〜4〔μm〕である。また低ドープアノード層10のドーピング密度は1×1016〜1×1018〔at/cm3〕であり、低ドープアノード層10の厚さXjpは0.5〜3〔μm〕である。また高ドープアノード層7のドーピング密度は約1×1020〔at/cm3〕であり、高ドープアノード層7の厚さXjp+は0.1〜0.5〔μm〕である。また、カソード層8の厚さXjn+は0.1〜0.5〔μm〕である。
本実施の形態でのトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13でも、上記の構成は特に限定されない。また、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13は順方向領域で使用されるため、上記構成であってもブレイクダウンをおこすことはない。
本実施の形態のトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13は、例えば、図1に示すように、トレンチ型MOSFET12のすぐ隣に本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13を形成することができる。上記のように構成することにより、トレンチ型MOSFET12で発生した熱を本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13に速やかに伝達することができる。また従来のポリシリコン型ダイオードとトレンチ型MOSFETとを組み合わせる構成と比較すると、LOCOSを形成することなくダイオードを形成することができるため、トレンチ型MOSFETからダイオードへの熱伝導が向上するとともに、LOCOSを構成するための基板領域を新たに設ける必要がなく、トレンチ型MOSFETとダイオードによる温度センサとを備える電力制御装置を小型に構成することができる。
図1では、トレンチ型MOSFET12とトレンチ型ダイオードデバイス13とがそれぞれ近くにまとめられて、トレンチ型MOSFET群とトレンチ型ダイオードデバイス群とが隣り合う構成となっているが、上記のトレンチ型MOSFET12とトレンチ型ダイオードデバイス13との配置はこれには限定されない。即ち、目的とする装置の構成によって適宜自由に設定することができる。例えば、上記トレンチ型MOSFET12とトレンチ型ダイオードデバイス13とが交互、または必要に応じて入り混じって配置される構成などとすることができる。即ち、電力制御素子であるパワーMOSFETの近くにPNジャンクション型のダイオードを有する電力制御装置を構成することができる。
尚、本発明の温度センサと組み合わせて電力制御装置を構成するパワーMOSFETは、本実施の形態のようにトレンチ型MOSFET12であることが好ましいが、例えばプレーナ型のMOSFETと組み合わせて構成することも可能である。例えば、図3のようにソースS’’、ゲートG’’、及びドレインD’’を有するプレーナ型MOSFET12’’が、トレンチ4を挟んで本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13と組み合わされるような電力制御装置を構成することができる。この場合には、プレーナ型MOSFET12’’と上記温度センサとの間がトレンチ4によって隔てられる構成となるため、従来のようにLOCOSによる熱の伝達の阻害は発生せず、またMOSFETのすぐそばに温度センサを設けることができるため、電力制御装置の温度制御を高感度で行うことができる。
次に、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13の動作について記載する。
本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13は、第1の極性をもつ層と第2の極性をもつ層とが積層することによって、図2及び図4に図示するような等価回路として実現されている。
即ち、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、カソード層8をエミッタとし、高ドープアノード層7及び低ドープアノード層10をベースとし、第1バイアス拡散層3をコレクタとする、トレンチ4によって囲われている領域の中に形成されるNPNバイポーラトランジスタQが形成されている。上記NPNバイポーラトランジスタQは、順方向のエミッタ−ベース接合によってダイオードとして機能するように構成されている。上記高ドープアノード層7及びカソード層8はそれぞれアノード電極EA及びカソード電極EAに接続されており、上記第1バイアス拡散層3は第2バイアス拡散層11を経由して電極Bに接続されている。
また、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、低ドープアノード層10をエミッタとし、第1バイアス拡散層3をベースとし、エピタキシャル層2をコレクタとする、寄生するPNPバイポーラトランジスタQpも形成されている。上記低ドープアノード層10は高ドープアノード層7を経由してアノード電極EAに接続し、上記第1バイアス拡散層3は第2バイアス拡散層11を経由して電極Bに接続し、上記エピタキシャル層2は基板1及び金属被覆9を経由してドレイン電極Dに接続している。
さらに、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、図4に図示するような等価回路で示されるMOSFETのTrpが寄生している。上記の寄生するMOSFETのTrpでは、トレンチ4のゲート電極6がゲートを構成し、高ドープアノード層7及び低ドープアノード層10がソースを構成し、エピタキシャル層2がドレインを構成している。上記ソース及びドレインの間には第1バイアス拡散層3が挟み込まれており、トレンチ型のMOSFETを構成している。尚、上記ゲート電極6は第2バイアス電極DGに接続し、上記高ドープアノード層7はアノード電極EAに接続し、上記エピタキシャル層2は基板1及び金属被覆9を経由してドレイン電極Dに接続している。
特に、上記の寄生するMOSFETのTrpは、トレンチ4がゲートとして機能し、第1バイアス拡散層3に反転層を形成すると、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイスのアノード(A)とエピタキシャル層2とを電気的に接続してしまう。すなわち、上記の寄生するMOSFETのTrpを動作させると、本実施の形態でのトレンチ型ダイオードデバイス13の動作が不安定になる可能性を有している。
そのため、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、上記トレンチ4のゲート電極6が適当な電位に接続されることによって上記問題を解消している。たとえば、図5に示す回路図のように、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、トレンチ4のゲートの第2バイアス電極DGがダイオードのアノード(A)に接続される。
上記のように接続することによって、上記の寄生するMOSFETのTrpではゲート−ソース間の電位Vgsが等しくなり、寄生するMOSFETのTrpはOFFの状態になる。即ち上記寄生するMOSFETのTrp自体の動作を停止することができ、本実施の形態でのトレンチ型ダイオードデバイスの動作を安定させることができる。
また、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13では、第1バイアス電極VBにバイアス電位VBを印加することにより、上記のそれぞれのダイオード要素の動作をエピタキシャル層2などによる電気的な動作から切り離すことができる。即ち、上記トレンチ4と、第1バイアス拡散層3に印加されるバイアス電位VBとによって、それぞれのトレンチ型ダイオードデバイス13は周囲のトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13から、機械的、電気的に隔離される。
さらに、寄生するPNPバイポーラトランジスタQpは、エミッタ−ベース電位をVEB≦0とすることによってOFFの状態とすることができる。例えば図6に示す回路図のように、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAと第1バイアス拡散層3から伸びる第1バイアス電極VBとを電気的に接続し、電位VBをアノードの電位と等しくしてしまっても良い。このように接続することによって、少なくともVEB=0とすることができるため、上記Qpを動作させることなく、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13を動作させることができる。
また、上記トレンチ型ダイオードデバイス13のアノード(A)とカソード(K)とを直列につなぎ、ダイオード列を形成することもできる。図7に本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13を直列につないだダイオード列200の一例を示す。図7に示すダイオード列200では、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13を複数個設け、1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のカソード電極EAと2番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAとを接続し、ダイオード列要素13’とする。同様に接続していき、i番目のトレンチ型ダイオードデバイス13までを接続したダイオード列要素13’の端のカソード電極EAとi+1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAとを接続し、N個のダイオードを直列に接続する。
それぞれのトレンチ型ダイオードデバイス13に寄生するMOSFETのTrp及びPNPバイポーラトランジスタQpは、例えば以下のように電極を接続することによって動作を停止させることができる。
まず、図1のように形成された複数のトレンチ型ダイオードデバイス13では、それぞれのドレイン電極Dは共通であるので接続されている。次に、それぞれのトレンチ型ダイオードデバイス13の第1バイアス電極VBを上記1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAに接続する。また、それぞれのトレンチ型ダイオードデバイス13の第2バイアス電極DGを上記1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAに接続する。本実施の形態では、上記のように接続した1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAをアノードとし、N番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のカソード電極EAをカソードとするダイオード列を形成している。
上記のように接続すると、寄生するPNPバイポーラトランジスタQpのベース電位が全て1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノードの電位に固定される。また、寄生するMOSFETのTrpのゲート電位が全て1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノードの電位に固定される。
2番目以降i番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAiは一つ前のトレンチ型ダイオードデバイス13のカソード電極EAi−1に接続されるため、i番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノードの電位は1番目のアノードの電位と比較して、i−1個のダイオード列での電圧降下に相当する電圧だけ電位が降下している。即ちi番目のトレンチ型ダイオードデバイス13に寄生するPNPバイポーラトランジスタQpiのエミッタ電位は、i−1個のダイオード列での電圧降下に相当する電圧だけ電位が降下している。また、i番目のトレンチ型ダイオードデバイス13に寄生するMOSFETのTrpiのソース電位は、i−1個のダイオード列での電圧降下に相当する電圧だけ電位が降下している。
一方、i番目のPNPバイポーラトランジスタQpiのベース電位は、1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノードの電位に固定されている。このため、寄生するPNPバイポーラトランジスタQpのエミッタにかかる電位をベースにかかる電位よりも低くすることができる。即ち、寄生するPNPバイポーラトランジスタQpiの動作を停止させることができる。
また、i番目のMOSFETのTrpiのゲート電位は、1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノードの電位に固定されている。このため、寄生するMOSFETのTrpのゲートにかかる電位をソースにかかる電位よりも高くすることができる。即ち、寄生するMOSFETのTrpiの動作を停止させることができる。
尚、上記では半導体の第1の極性がp型である場合について記載したが、第1の極性がn型である場合であっても同様にダイオード列に寄生するNPNバイポーラトランジスタQpi’及びMOSFETのTrpi’の動作を停止させることができる。半導体の第1の極性がn型の場合には、NPNバイポーラトランジスタQpi’では構成するダイオード列による電圧降下によって、エミッタにかかる電位がベースにかかる電位よりも高くなるため、上記の寄生するバイポーラトランジスタの動作を停止することができる。また、MOSFETのTrpi’では、構成するダイオード列による電圧降下によってゲートの電位の方がソースの電位より低くなり、上記の寄生するMOSFETの動作を停止することができる。
本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13は、上記のような構成をとり、寄生するMOSFETのTrp及びPNPバイポーラトランジスタQpの動作を停止させることができる。また、各トレンチ型ダイオードデバイス13は、トレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13から機械的、電気的に隔離されており、かつ、上記トレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13はトレンチ4,4’を隔てた位置に隣接して配置することができる。上記トレンチ4,4’はゲート電極6、6’とゲート絶縁体5、5’とによって構成されており、ゲート電極6、6’がポリシリコンで構成されているので、熱の伝導性がよい。即ちトレンチ型MOSFET12で発生した熱は速やかにトレンチ型ダイオードデバイス13に伝達される。
次に、本実施の形態でのトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13の製造方法を、図8に基づいて説明する。図8の(a)〜(g)は、本実施の形態のトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13の製造方法の各段階での状態を示す断面の見取り図である。本実施の形態では、トレンチ型MOSFET12を図8(a)〜(g)の左側、トレンチ型ダイオードデバイス13を図8(a)〜(g)の右側に形成する場合について説明する。トレンチ型MOSFET12とトレンチ型ダイオードデバイス13とを設ける個数及び形成する位置などは、目的とする装置の構成によって適宜自由に設定することができる。尚、本実施の形態では、第1の極性がp型のトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13の製造方法について記載するが、上記極性は設計によって適宜変更できるものであり、上記第1の極性をn型として実施することも可能である。
まず、図8(a)のように、高密度にドープされたp型の極性を持つ基板1を形成する。典型的な例として、その抵抗率が0.01〔Ω・cm〕以下となるようにp型に高密度にドープされている。
次に、上記基板1の上に、当該基板1より低密度にドープされたp型の層をエピタキシャル成長させてエピタキシャル層2を形成する。このように形成されるエピタキシャル層2の抵抗率及び層の厚さは、目的とする半導体装置の電気的な特性によって設定することができる。例えば、製造する半導体装置が縦型のp型MOSFETであり、そのMOSFETのVdssが約40〔V〕である半導体装置を製造する場合には、上記エピタキシャル層2の有する抵抗率は1.5〜3〔Ω・cm〕であることが好ましく、また上記エピタキシャル層2の層の厚さは5〜10〔μm〕であることが好ましい。
次に、上記エピタキシャル層2の上に、MOSFETの第1バイアス拡散層3’及びトレンチ型ダイオードデバイスの第1バイアス拡散層3を形成する。
上記第1バイアス拡散層3,3’は、n型の極性を有する物質を上記基板1と反対の方向から打ち込むことによって形成する。例えばリン原子などをドーパントとして用いることができる。また、上記第1バイアス拡散層3,3’の層の厚さ(Xjn)及びドープする密度は目的とする半導体装置の電気的な特性によって設定することができる。例えば層の厚さを1.5〔μm〕とし、ドープする密度は第1バイアス拡散層3,3’の表面において1×1017〜3×1017〔at/cm3〕であるように形成してもよい。
尚、本実施の形態の図8では、トレンチ型MOSFET12の図7に示す切断面から遠い領域14には第1バイアス拡散層3’を形成していないが、領域14においても第1バイアス拡散層3’を形成してもよい。上記の領域14に第1バイアス拡散層3’を形成しない場合には、上記領域14をレジストなどによってマスクした後、第1バイアス拡散層3’のドープを行えばよい。
次に、図8(b)のように、第1バイアス拡散層3,3’の上側に酸化膜15を形成する。さらにフォトレジスト剤16を酸化膜15の上に設けた後に、トレンチ4,4’を形成する位置のパターニングを行い、さらにトレンチ4,4’を形成する部分のフォトレジスト剤16を除去する。これらのパターン形成は、公知の方法で行うことができる。
次に、図8(c)のように、上記のパターンをエッチングマスクとして用い、上記積層された基板をエッチングする。エッチングは公知の方法を用いることができる、例えばドライエッチングなどの方法を用いることができる。
エッチングは上記積層された基板の基板1とは反対側の表面から行い、酸化膜15及び第1バイアス拡散層3,3’を貫通し、エピタキシャル層2の一部に到達するようにトレンチ4,4’を形成する。
上記トレンチ4,4’の深さXtは第1バイアス拡散層3,3’の層の厚さXjnよりも深く形成される。例えば、トレンチ4,4’の深さXtは2〜3.5〔μm〕としてもよい。
次に、トレンチ4,4’を形成し、酸化膜15及びフォトレジスト剤16を除去した後、図8(d)のように上記トレンチ4,4’の表面に20〜50〔nm〕の酸化膜17を熱形成などによって形成し、さらにウエットエッチングによって上記酸化膜17を除去する。
上記の工程によって、トレンチ4,4’の側壁がスムースになり、また上記ドライエッチングの工程によって生じたトレンチ4,4’表面のダメージを取り除くことができる。
酸化膜17を除去した後、図8(e)のようにゲート絶縁体5,5’を形成する。ゲート絶縁体5,5’は、例えばトレンチ4,4’の側壁を酸化して成長させてもよい。ゲート絶縁体5,5’の厚さは、目的とする半導体装置の電気的な特性によって決定すればよい。例えば上記のp型MOSFETを製造する場合には、ゲート絶縁体5,5’の厚さを30〜100〔nm〕とすればよい。
そして、トレンチ4,4’のゲート絶縁体5,5’に囲まれた領域にポリシリコンを充填し、ゲート電極6,6’を形成する。上記ゲート電極6,6’はn型のドーパントを用いてドーピングされる。ドーピングの密度は、例えば5×1019〔at/cm3〕より高い密度であることが好ましい。そして、ゲート電極6,6’の上にCVD酸化物を堆積させ、ゲート電極6,6’を孤立化させる。
そして、フォトレジスト剤18を上記の積層された基板の基板1とは反対側の表面に設け、図8(f)のようにトレンチ型ダイオードデバイス13の第1バイアス拡散層3の位置位置のパターニングを行う。さらに第1バイアス拡散層3を形成する位置のフォトレジスト剤18を除去する。これらのパターニングは、公知の方法で行うことができる。
次に、図8(g)のように11B+イオンを1×1013〜3×1013〔at/cm3〕の密度でドーピングし、p型の低ドープアノード層10を形成する。p型の低ドープアノード層10の層の厚さXjpは、例えば0.7〜1〔μm〕とすればよい。
続けて、公知の方法などによって、低ドープアノード層10の露出している表面であり、かつ、高ドープアノード層7を形成する領域及び第1バイアス拡散層3の露出している表面であり、かつ、ソース拡散層7’を形成する領域にp型のドーパントをドープし、高ドープアノード層7及びソース拡散層7’を形成する。また、低ドープアノード層10の露出している表面であり、かつ、カソード層8を形成する領域、第1バイアス拡散層3の露出している表面であり、かつ、第2バイアス拡散層11を形成する領域、及び第1バイアス拡散層3’の露出している表面であり、かつ、カソード層8を形成する領域にn型のドーパントをドープし、カソード層8、第2バイアス拡散層11、及びカソード層8を形成する。カソード層8と第2バイアス拡散層11との間には、公知の方法によってバイアス分離用拡散層19が形成される。
そして、公知の方法を用いて、トレンチ型MOSFET12のソース拡散層7’にソース電極Sを形成し、ゲート電極6’にゲート電極Gを形成し、基板1の底面に金属被覆9を形成し、ドレイン電極Dを形成する。
また、公知の方法を用いて、トレンチ型ダイオードデバイス13の高ドープアノード層7にアノード電極EAを形成し、カソード層8にカソード電極EAを形成し、第2バイアス拡散層11に第1バイアス電極VBを形成し、ゲート電極6に第2バイアス電極DGを形成する。
上記のように、本実施の形態のトレンチ型MOSFET12及びトレンチ型ダイオードデバイス13は、公知の方法によって製造することができる。
即ち、これらは従来のトレンチ型MOSFETの構造と似た構造及びプロセスで形成することができる。即ち、本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13は、従来のトレンチ型MOSFETと同じプロセスを用いて形成することができ、同じ基板上に形成することができる。
次に、図9を用いて上記トレンチ型ダイオードデバイス13を用いた温度センサについて説明する。即ち、本実施の形態では、上記のトレンチ型ダイオードデバイス13が温度センサとして動作する。
図9は、本実施の形態でのシャットダウン回路300について記載している回路図である。本実施の形態のシャットダウン回路300は、パワーMOSFET301に発生する熱によってシャットダウン回路300の温度が温度Tcまで上昇するとシャットダウンする回路である。尚、図9の温度センサ305が、図1に記載されたトレンチ型ダイオードデバイス13を直列に接続したダイオード列である。
本実施の形態のダイオード列では、上記トレンチ型ダイオードデバイス13がN個直列に接続されている。実施の形態1では、図7のようにダイオード列が、NPNバイポーラトランジスタQ、寄生するMOSFETのTrp、及び寄生するPNPバイポーラトランジスタQpによって形成される回路図で示した。本実施の形態では、上記のように図7の説明で示した方法によって上記の寄生するMOSFETのTrp及び寄生するPNPバイポーラトランジスタQpの動作を停止させることができることを示したので、便宜上寄生するMOSFETのTrpは記載していない。また、図9のパワーMOSFET301は、図1に記載されたトレンチ型MOSFET12によってアレイ状に形成されたパワーMOSFETを示している。
上記のパワーMOSFET301は、ゲート端子がパワーMOSFET301の制御信号を入力するゲート電極302と、シャットダウン制御信号を出力するトランジスタ308のドレイン端子とに接続している。また、上記のパワーMOSFET301のソース端子は電極303に接続しており、供給電圧Vddが印加されている。また、パワーMOSFET301のドレイン端子とアース端子との間には、電力の負荷回路304が接続されている。
上記に示したとおり、本実施の形態でのダイオード列はエピタキシャル層2及びカソード層8をエミッタとし、高ドープアノード層7及び低ドープアノード層10をベースとし、第1バイアス拡散層3をコレクタとする、トレンチ4によって囲われている領域の中に形成されているNPNバイポーラトランジスタQの順方向のエミッタ−ベース接合によって実現されており、i番目(iは1≦i<Nの自然数)のNPNバイポーラトランジスタQiのエミッタ端子がi+1番目のNPNバイポーラトランジスタQi+1のベース端子に接続されるように配線される。即ち、i番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のカソード電極EAiが、i+1番目のトレンチ型ダイオードデバイス13のアノード電極EAi+1に接続されている。N番目のNPNバイポーラトランジスタQNのエミッタが出力する電位、即ち上記ダイオード列のカソード(K)が出力する電位をVG1とする。尚、N=1の場合であってもよく、その場合にはNPNバイポーラトランジスタQ1のエミッタが出力する電位を上記ダイオード列のカソード(K)が出力する電位をVG1とすればよい。
本実施の形態では、上記トレンチ型ダイオードデバイス13によるダイオード列のアノード(A)、即ち1番目のNPNバイポーラトランジスタQ1のベースが電極303から供給される供給電圧Vddに接続している。また、上記ダイオード列のカソード(K)、即ちN番目のNPNバイポーラトランジスタQNのエミッタがトランジスタ306のゲートに接続している。
トランジスタ306は、パワーMOSFET301をシャットダウンするための閾値電位VTOと、上記ダイオード列のカソード(K)によって出力される電圧降下量とを検出するコンパレータ(比較測定器)である。図9ではトランジスタ306はp型のトランジスタとして記載したが、同様の機能をもつ素子であればいずれであっても用いることができる。
上記トランジスタ306のソース端子は電極303から供給される供給電圧Vddに接続しており、ドレイン端子はラッチ307に接続している。またラッチ307は、トランジスタ308にも接続している。ラッチ307は、トランジスタ306からの入力がある限りトランジスタ308に対して供給電圧Vddを出力する一方、トランジスタ306からの入力がなくなるとトランジスタ308に対する出力を停止する回路である。
また、トランジスタ309と電圧分圧用抵抗器310〜315とは、回路をバイアスするための電圧の基準値を形成するように動作する。
次に、本実施の形態のダイオード列を用いた温度センサの動作について説明する。
まず、パワーMOSFET301の温度が上昇する場合について考える。パワーMOSFET301と温度センサ305とは、図1及び実施の形態1に示すようにお互い近くに設けられており、熱の伝導効率が高い、即ち熱伝導係数Gcが大きくなるように構成されている。
パワーMOSFET301によって電力制御がおこなわれると、パワーMOSFET301の中で大きな電力が消費され、上記パワーMOSFET301の温度Tchが上昇する。すると、パワーMOSFET301の温度Tchが上昇し、上記の熱が温度センサ305に伝導する。温度センサ305では、伝わってきた熱によって温度センサ305の温度が上昇する。
温度センサ305では、温度が上昇するのに伴い、温度センサ305を構成するそれぞれのダイオードでの順方向電圧(VF)が小さくなる。温度による順方向電圧(VF)の減少する割合は、ダイオードの種類によって定められており、TCDとして定義されている。本実施の形態での温度センサ305を構成するトレンチ型ダイオードデバイスは、PNジャンクション型の接合によって形成されているため、ダイオードの温度係数(TCD)の絶対値が大きい。即ち、温度センサとしての感度が高い。
本実施の形態では、温度センサ305はN個のダイオード列によって構成されるため、温度センサ305全体での電圧降下は、
VD=N×VF・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
と記載することができる。
上記のように、温度センサ305の温度が上昇すると、温度センサ305を構成するそれぞれのダイオードでの順方向電圧(VF)が小さくなる。すると、数式(1)に従って、ダイオード列の順方向電圧の値VDも小さくなる。そのため、ダイオード列のカソード(K)の電位VG1が上昇する。
VG1が上昇すると、トランジスタ306のゲートの電位は上昇してVddに近づき、トランジスタ306のゲート−ソース間電位が減少する。
パワーMOSFET301のシャットダウン温度Tcでは、トランジスタ306のゲート−ソース間電位がさらに減少し、トランジスタ306がON状態からOFF状態に変化する。トランジスタ306からの入力が途絶えると、ラッチ307はトランジスタ308に対する出力を停止する。
この結果、トランジスタ308のゲート−ソース間電位はVddとなり、トランジスタ308はON状態となる。トランジスタ308がON状態となると、パワーMOSFET301のゲート端子にはVddが印加される。つまり、この状態ではパワーMOSFET301のゲート−ソース間電位の差がなくなる。その結果、パワーMOSFET301は動作を停止(シャットダウン)する。
ここで、温度センサ305に用いられたダイオード列を形成している全てのダイオード要素が同じ順方向電圧降下VF及び温度係数TCDを持ち、トランジスタ306が閾値電位VTOと温度係数TCTrを持っていると仮定する(第一近似)。パワーMOSFET301がシャットダウンする温度Tcでは、ダイオード列及びトランジスタ306は、温度Tcで動作することになる。このとき、N個のダイオード列での電圧降下は
N×{1−TCD×(Tc−T0)}×VFT0・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
と表現できる。また、トランジスタ306の閾値電位の変化は
{1−TCTr×(Tc−T0)}×VT0・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
と表現することができる。ここにT0は基準となる環境の温度であり、VFT0はT0での本実施の形態でのダイオードの順方向電圧降下であり、VT0はT0でのトランジスタ306の閾値電位である。
本実施の形態では、トランジスタ306のゲート端子には供給電圧Vddから数式(2)で求められる電圧降下した電位が入力される。一方、ソース端子には供給電圧Vddが入力される。トランジスタ306では、該トランジスタ306の動作を入切する閾値電位が式(3)のように温度に依存している。トランジスタ306は、該トランジスタ306のソース端子に印加される供給電圧Vddから数式(3)で求められる閾値電位を差し引いた電位(ソース実効電位)が、ゲート端子に入力される電位に対して高い場合に動作を行うのであるが、上記ソース実効電位とゲート端子に入力される電位とが等しいか、ソース実行電位がゲートに入力される電位に対して低くなる場合に動作を停止する。
即ち、上記の式(2)及び式(3)の値がほぼ等しくなる場合にトランジスタ306は動作を停止する。即ち、次の関係式(4)を解くことによってTcと上記係数との関係式を導くことができる。
N{1−TCD×(Tc−T0)}×VFT0≒{1−TCTr(Tc−T0)}×VT0・・・・・(4)
上記式(4)をTcについて解くと、
Tc≒T0+(NVFT0−VT0)/(NVFT0×TCD−VT0×TCTr)・・(5)
が得られる。
〔比較例〕
本実施の形態の温度センサと従来の温度センサとの熱伝導係数Gcについて比較する。
従来の温度センサの例として、図14に記載するトレンチ型MOSFETに組み込まれた温度センサを考える。
熱伝導係数Gcは、パワーMOSFETから温度センサへの熱の伝わり易さを示す係数であり、上記係数は大きいほど熱が伝わり易いことを示す。
理解を単純化するために、本実施の形態の図1と従来の図14とに記載するトレンチ型MOSFETの大きさ及び材質が同じ構成であると仮定する。LOCOSはシリコン酸化膜であるのでSiO2である。
本実施の形態のパワーMOSFET12と温度センサとは、同じトレンチ構造をしているため、パワーMOSFETで発生した熱はトレンチ4,4’を伝わって温度センサ、即ち本実施の形態のトレンチ型ダイオードデバイス13に到達する。このとき、本実施の形態での熱伝導係数GcTDは、トレンチを構成するシリコン(Si)の熱伝導係数κSiに比例し、トレンチの幅wTに反比例すると考えられる。
一方、従来の図14に記載する温度センサは、パワーMOSFETの近くの基板上に設けられたLOCOS上に形成される。即ち、パワーMOSFETで発生した熱は、パワーMOSFETと温度センサとが設けられる距離をSi基板内で伝導した後、さらにLOCOS層を伝導して到達することになる。LOCOSを形成するSiO2の熱伝導係数κoxは、Siの熱伝導係数κSiと比較して小さい。例えばκSi/κox=103.57である。そのため、従来の構成では、熱伝導係数Gcは主にLOCOS層を通過する熱の伝導効率によって決定される。
つまり、従来の図14に記載する温度センサでは、熱伝導係数Gcknownは、LOCOS層を構成するSiO2の熱伝導係数κoxに比例し、LOCOS層の厚さdに反比例すると考えることができる。
本実施の形態の熱伝導係数GcTDと従来の図14に記載する温度センサの熱伝導係数Gcknownとは、上記のように構成されるので、その比をとると、
GcTD/Gcknown=(κSi/κox)×(d/wT)・・・・・・・・・・・・(6)
と記載することができる。
一般的には、トレンチの幅及びLOCOS層の厚さはそれぞれ0.5〔μm〕程度であるので、上記熱伝導係数はκSi/κoxにのみ依存し、本実施の形態のパワーMOSFETと温度センサとの熱伝導係数GcTDは、従来の図14に記載する温度センサに対して約100倍大きいことがわかる。
また、図13及び図15に記載するような従来の温度センサでは、パワーMOSFETと温度センサとを電気的に分離するために、上記温度センサは上記パワーMOSFETから離れた位置に形成されている。即ち、熱結合が弱くなると考えられる。
以上のように、本発明の電力制御装置の温度センサは、従来のトレンチ型MOSFETと同じプロセスを用いて形成することができ、同じ基板上に形成することができる。
また、本発明の電力制御装置の温度センサは、温度感受性の高いダイオードによって構成されており、かつ、上記温度センサはトレンチ型MOSFETと同様の製造工程で製造することができる。即ち、電力制御装置を製造するための工程を単純にすることができる。
また、上記の温度センサはパワーMOSFETの近くに熱伝導効率の高いトレンチを挟んだ状態で形成することができるので、パワーMOSFETと温度センサとの熱結合を向上させることができ、パワーMOSFETの動作の信頼性を向上させることができる。
尚、本発明の温度センサと組み合わせて電力制御装置を構成するパワーMOSFETは、本実施の形態のようにトレンチ型のパワーMOSFETであることが好ましいが、プレーナ型のMOSFETと組み合わせて構成することも可能である。
また、本発明の電力制御装置の温度センサは、トレンチ構造によってパワーMOSFETと温度測定用のダイオード列とを電気的に分離することができる。
さらに本発明の電力制御装置の温度センサは、トレンチ構造によって生じる、寄生MOSFETのTrpの動作を停止することができ、また寄生するPNPバイポーラトランジスタQpの動作を停止することができるので、漏れ電流を減らすことができる。
また、本発明の電力制御装置の温度センサは、PNジャンクション型のダイオードを用いて構成することができるので、温度感受性を向上させることができる。特に従来のPolySiのダイオードと比較して、パワーMOSFETと温度センサとを離れた位置に形成する必要がないため、温度感受性を向上させることができる。
即ち、上記の構成によって、トレンチ型パワーMOSFETにさらなる効果を与えることができる。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。