JP4970653B2 - プロピレン重合用固体触媒成分及び触媒 - Google Patents
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Description
本発明は、高活性かつ対水素活性が良好であり、更に高立体規則性ポリマーを高収率で得ることのできるプロピレン重合用固体触媒成分及び触媒に関する。
背景技術
従来、プロピレンの重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るプロピレン重合用触媒の存在下に、プロピレンを重合もしくは共重合させるプロピレンの重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭57−63310号並びに同57−63311号公報においては、マグネシウム化合物、チタン化合物及び電子供与体を含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及びSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせから成る触媒を用いて、特に炭素数が3以上のオレフィン類を重合させる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、高立体規則性重合体を高取率で得るには、必ずしも充分に満足したものではなく、より一層の改良が望まれていた。
一方、特開昭63−3010号公報においては、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素及びチタンハロゲン化物を接触して得られた生成物を、粉末状態で加熱処理することにより調製した固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物より成るプロピレン重合用触媒とプロピレンの重合方法が提案されている。
また、特開平1−315406号公報においては、ジエトキシマグネシウムとアルキルベンゼンとで形成された懸濁液に、四塩化チタンを接触させ、次いでフタル酸ジクロライドを加えて反応させることによって固体生成物を得、該固体生成物を更にアルキルベンゼンの存在下で四塩化チタンと接触反応させることによって調製された固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物より成るプロピレン重合用触媒及び該触媒の存在下でのプロピレンの重合方法が提案されている。
上記各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂脱灰行程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げている。
ところで上記のような触媒を用いて得られるポリマーは、自動車あるいは家電製品等の成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。これらは、重合により生成したポリマーパウダーを溶融し、各種の成型機により成型されるが、特に射出成型等でかつ大型の成型品を製造する際に、溶融ポリマーの流動性(メルトフローレイト)が高いことが要求される場合があり、そのためポリマーのメルトフローレイトを上げるべく多くの研究が為されている。
メルトフローレイトは、ポリマーの分子量に大きく依存する。当業界においてはプロピレンの重合に際し、生成ポリマーの分子量調節剤として水素を添加することが一般的に行われている。このとき低分子量のポリマーを製造する場合、すなわち高メルトフローレイトのポリマーを製造するためには通常多くの水素を添加するが、リアクターの耐圧にはその安全性から限度があり、添加し得る水素量にも制限がある。このため、より多くの水素を添加するためには重合するモノマーの分圧を下げざるを得ず、この場合生産性が低下することになる。また、水素を多量に用いることからコストの面の問題も生じる。従って、より少ない水素量で高メルトフローレイトのポリマーが製造できるような、いわゆる対水素活性が高くかつ高立体規則性ポリマーを高収率で得られる触媒の開発が望まれていたが、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなかった。
更に上記従来技術においては、固体触媒成分の調製に用いられる電子供与性化合物として、ベンゼン環を含有する化合物が主に使用されているが、これらの環境問題を考慮して、ベンゼン環を含まない化合物の評価を行なったところ、ある種のマレイン酸系化合物が優れた効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マレイン酸ジエステルの中でも特に炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル、とりわけ炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを主成分とすることが、極めて高い効果を有し、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、かかる従来技術に残された問題点を解決し、より高い対水素活性を有し、更に高活性で、高立体規則性かつ高嵩密度のポリマーを高収率で得ることができ、しかも成分中に芳香族エステル化合物を含まないプロピレン重合用固体触媒成分及び触媒を提供することにある。
発明の開示
上記目的を達成するための、本発明によるプロピレン重合用固体触媒成分は、ジアルコキシマグネシウム(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)を接触させることにより調製されることを特徴とする。この際、(c)は炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを主成分とすることが好ましい。更に本発明のプロピレン重合用固体触媒成分は、好ましくは上記各成分を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素(d)中で懸濁接触して得られたものである。
また、本発明のプロピレン重合用触媒は、
上記の固体触媒成分(A)、
(B)一般式(1);
R1 pA1Q3−p (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物及び
(C)一般式(2);
R2 qSi(OR3)4−p (2)
(式中、R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物
によって形成されることを特徴とする。
発明を実施するための手段
本発明のプロピレン重合用固体触媒成分(A)(以下、「固体触媒成分(A)」ということがある。)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウム(a)(以下、「成分(a)」ということがある。)としては、一般式Mg(OR4)(OR5)(式中、R4及びR5は炭素数1〜10のアルキル基を示し、それぞれ同一でも異なってもよい。)で表される化合物が好ましく、より具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、単独又は2種以上併用することもできる。
更に、本発明において固体触媒成分(A)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径1と短軸径wとの比(1/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布を1n(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、同62−51633号公報、特開平3−74341号公報、同4−368391号公報、同8−73388号公報などに例示されている。
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)は、一般式Ti(OR6)nX4−n(式中、R6は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示し、nは0≦n≦4の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)は、下記一般式(3)で表されるものである。
(式中、R7及びR8はそれぞれ炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。)
具体的には、マレイン酸のジエチル、ジ−nあるいはイソ−プロピル、ジ−nあるいはイソ−ブチル、ジ−nあるいはイソ−ペンチル、ジ−nあるいはイソ−ヘキシル、ジ−nあるいはイソ−ヘプチル、ジ−n−オクチル、ジ−2−エチルヘキシルなどを挙げることができる。一般式(3)で表されるマレイン酸ジエステル(c)は、1種又は2種以上併用することもできる。本発明においては、上記のマレイン酸ジエステルのうち、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを主成分とすることが望ましい。炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルの具体的としては、マレイン酸のジエチル、ジ−n−プロピル、ジ−n−ブチル、ジ−nペンチルが挙げられる。
上記に示した通り、本発明においては炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル、より好ましくは炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを用いることが必須条件である。上記所定のマレイン酸ジエステルを用いることにより、活性、立体規則性及び嵩密度のバランスがとれると共に、従来のフタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物を使用したものに較べて対水素活性が高い固体触媒成分を得ることができる。なお、該範囲より炭素数が少ない場合には活性が極めて低くなり、逆に炭素数が多い場合には立体規則性が低下する。また、上記炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルのうち、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを主成分として用いることで、より活性、立体規則性及び嵩密度のバランスがとれた固体触媒成分を得ることができる。ここで、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを主成分として用いるとは、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルの含有量が、使用するマレイン酸ジエステルの全体量のうち50重量%以上であることを意味する。また、マレイン酸ジエステル(c)は、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルと、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルから選択される1種以上を併用し、且つ、前記炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルの含有量は、使用するマレイン酸ジエステルの全体量のうち50重量%以上として使用することができる。
また、マレイン酸ジエステル(c)は、特にマレイン酸ジ−n−ブチルが、活性、立体規則性、嵩密度、対水素活性の総合性能面から望ましい。マレイン酸ジ−n−ブチルの含有量は、使用するマレイン酸ジエステルの全体量のうち50重量%以上であることが望ましい。また、マレイン酸ジ−n−ブチルは、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルから選択される1種以上と併用し、且つ、前記マレイン酸ジ−n−ブチルの含有量を、使用するマレイン酸ジエステルの全体量のうち50重量%以上とすれば、立体規則性のコントロールを行なうことが可能になる。
本発明において、固体触媒成分(A)の調製は、前記(a)、(b)及び(c)成分を沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素(d)中で懸濁接触して行なうことが、前記性能を発揮させる上から望ましい。具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
本発明における固体触媒成分(A)の調製においては、上記(a)〜(d)成分の他、更に、アルミニウム化合物または有機酸の金属塩またはポリシロキサンを使用することができる。これらの使用は、生成ポリマーの結晶性をコントロールする上で有効である。
アルミニウム化合物の具体例としては、アルミニウムトリクロライド、ジエトキシアルミニウムクロライド、ジ−iso−プロポキシアルミニウムクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、iso−プロポキシアルミニウムジクロライド、ブトキシアルミニウムジクロライド、トリエトキシアルミニウム等が挙げられる。
また有機酸の金属塩としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
またポリシロキサンとしては、下記一般式で表されるものの1種あるいは2種以上が用いられる。
(式中、αは平均重合度を表し、2〜30000であり、R9〜R16の主体はメチル基であり、ときにはR9〜R16の一部分はフェニル基、水素、炭素数10〜20の高級脂肪酸残基、エポキシ含有基、炭素数1〜10のポリオキシアルキレン基で置換されたものであり、また上記一般式の化合物はR12及びR13がメチル基の環状ポリシロキサンを形成していてもよい。)
該ポリシロキサンは、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が2〜10000センチストークス、より好ましくは3〜500センチストークスを有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。
以下に、各成分の接触方法について述べる。本発明の固体触媒成分(A)は、上述のジアルコキシマグネシウム(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)、芳香族炭化水素(d)及び任意にアルミニウム化合物または有機酸の金属塩またはポリシロキサンを接触させることにより調製することができる。
より具体的には、ジアルコキシマグネシウム(a)を4価のチタンハロゲン化合物(b)または芳香族炭化水素(d)に懸濁させ、更に炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)及び/または4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触して固体成分を得る方法が挙げられる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体成分を得ることができる。
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
以下に、本発明の固体触媒成分(A)を調製する際の接触順序をより具体的に例示する。
(1)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(2)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(3)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(4)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(5)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(6)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
なお、上記の各接触方法において、二重かっこ(《 》)内の工程については、必要に応じ、複数回繰り返し行なうことで一層活性が向上する。かつ《 》内の工程で用いる成分(b)あるいは成分(d)は、新たに加えたものでも、前工程の残留分のものでもよい。また、上記各接触方法において、いずれかの時点で、必要に応じアルミニウム化合物または有機酸の金属塩またはポリシロキサンを接触させることもできる。更に、上記(1)〜(6)で示した洗浄工程以外でも、各接触段階で得られる生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄することもできる。
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシマグネシウム(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物(1)を得る。この際、マレイン酸ジエステルの1種あるいは2種以上を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望ましい。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(2)を得る。この際、固体反応生成物に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、更に炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)の1種あるいは2種以上を接触させることも好ましい態様である。なお必要に応じ、中間洗浄及び反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A)を得る。
上記の処理あるいは洗浄の好ましい条件は以下の通りである。
▲1▼低温熟成反応:−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃、より好ましくは0〜30℃で、1分〜6時間、好ましくは5分〜4時間、特に好ましくは10分〜3時間。
▲2▼反応処理:0〜130℃、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜115℃で、0.5〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは1〜4時間。
▲3▼洗浄:0〜110℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは30〜90℃で、1〜20回、好ましくは1〜15回、特に好ましくは1〜10回。なお、洗浄の際に用いる炭化水素化合物は、常温で液体の芳香族あるいは飽和炭化水素が好ましく、具体的には、芳香族炭化水素としてトルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、飽和炭化水素としてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。好ましくは、中間洗浄では芳香族炭化水素を、最終洗浄では飽和炭化水素を用いることが望ましい。
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばジアルコキシマグネシウム1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、マレイン酸ジエステルが0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、芳香族炭化水素が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルである。
また本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、マレイン酸ジエステルの含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが1.8〜8.0重量%、好ましくは2.0〜8.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、またマレイン酸ジエステルが合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。本発明のマレイン酸ジエステルとその他の成分を使用してなる固体触媒成分(A)の総合性能を更にバランスよく発揮させるには、チタン含有量が3〜8重量%、マグネシウム含有量が15〜25重量%、ハロゲン原子の含有量が45〜75重量%、マレイン酸ジエステルの含有量が2〜20重量%であることが望ましい。
本発明のプロピレン重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、一般式R1 qA1Q3−p(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
本発明のプロピレン重合用触媒を形成する際に用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、一般式R2 qSi(OR3)4−q(式中、R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される化合物が用いられる。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のプロピレン重合触媒を用いてプロピレンを重合するには、前記した固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)より成る触媒の存在下、プロピレンの重合もしくは共重合を行うが、各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
本発明の固体触媒成分及び触媒はプロピレンの重合用であるが、この際他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
更に、本発明において固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)より成る触媒を用いて行うプロピレン重合(本重合ともいう。)にあたり、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン及び/または1種あるいは2種以上のオレフィン類を接触させる。有機ケイ素化合物(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはプロピレンなどの重合を行うガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン及び/または1種あるいは2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
本発明によって形成されるプロピレン重合用触媒の存在下で、プロピレンの重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、同じ水素量で生成ポリマーのメルトフローレイト(MI)が最大500%に向上しており、更に触媒活性及び生成ポリマーの立体規則性も従来の触媒と同等かそれ以上の性能を示す。すなわち、本発明の触媒をプロピレンの重合に用いると、活性及びポリマーの立体規則性を高度に維持しつつ、かつ飛躍的に対水素活性が改善されるという作用が確認された。
実施例
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ、具体的に説明する。
〈重合評価〉
本発明のプロピレン重合用触媒を用いてプロピレンのバルク重合評価を行い、固体触媒成分当たりの生成ポリマー量(重合活性:Yield)及び生成重合体を高温ソックスレー抽出器にて沸騰n−ヘプタンで6時間抽出した際の、n−ヘプタンに不溶解の重合体の存在割合(HI)を測定した。Yield及びHIは、下記の(4)及び(5)式より算出した。更に、生成重合体のメルトフローレイト(MI)、嵩密度(BD)を測定した。MI及びBDの測定方法はそれぞれJIS K 7210及びJIS K 6721に準拠した。
Yield(g−PP/g−cat.)=a(g)/固体触媒成分(g)(4)
HI(重量%)={b(g)/a(g)}×100 (5)
上記(4)及び(5)式において、aは重合反応終了後に生成した重合体の重量を示し、bは重合反応終了後に生成した重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出した際の、n−ヘプタン不溶解分の重量を示す。
実施例1
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g及びトルエン750mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに予め装入されたトルエン450ml及びチタンテトラクロライド300mlの溶液中に、添加した。次いで該懸濁液を、5℃で1時間反応させた(低温熟成処理)。その後マレイン酸ジ−n−ブチル22.5mlを添加して、90℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理(第1処理)を行った。反応終了後、生成物を80℃のトルエン1300mlで4回洗浄(中間洗浄)し、新たにトルエン1200ml及びチタンテトラクロライド300mlを加えて、撹拌しながら112℃で2時間の反応処理(第2処理)を行った。この後、中間洗浄及び第2処理を、更にもう一度繰り返した。次いで、生成物を40℃のヘプタン1300mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.74重量%であった。
〈重合用触媒の形成及び重合〉
窒素ガスで置換された、内容積2200mlの撹拌装置付きオートクレーブ内に、上記の固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol相当量と、トリエチルアルミニウム1.3mmol及びシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolを入れて撹拌処理し、重合触媒を形成した。その後、水素ガス2000ml、液化プロピレン1400mlを装入し、20℃で5分間予備重合を行い、その後本重合を70℃で1時間行った。重合評価結果を表1に示す。
実施例2
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム10g及びトルエン80mlを装入し、懸濁状態とした。次いで該懸濁液にチタンテトラクロライド20mlを8℃で添加し、その後マレイン酸ジ−n−ブチル1.5mlを添加して、112℃まで昇温して撹拌しながら1.5時間反応処理を行った。反応終了後、生成物を90℃のトルエンで3回洗浄し、新たにトルエン80ml及びチタンテトラクロライド20mlを加えて、撹拌しながら100℃で2時間の反応処理を行った。次いで、生成物を40℃のヘプタンで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、4.18重量%であった。
〈重合用触媒の形成及び重合〉
上記のように調製した固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に行なった。重合評価結果を表1に併載する。
実施例3
固体触媒成分の調製時に、マレイン酸ジ−n−ブチル1.5mlをマレイン酸ジ−n−ブチル1.0mlに代えた以外は実施例2と同様に固体触媒成分の調製及び重合評価を行った。該固体触媒成分中のチタン含有量は7.02重量%であった。結果を表1に併載する。
実施例4
固体触媒成分の調製時に、マレイン酸ジ−n−ブチル1.5mlをマレイン酸ジ−n−ブチル1.5ml及びマレイン酸ジエチル0.5mlに代えた以外は実施例2と同様に固体触媒成分の調製及び重合評価を行なった。該固体触媒成分中のチタン含有量は3.73重量%であった。結果を表1に併載する。
実施例5
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g、トルエン750ml及びマレイン酸ジ−n−ブチル22.5mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに予め装入されたトルエン450ml及びチタンテトラクロライド300mlの溶液中に、添加した。次いで該懸濁液を、5℃で1時間反応させた(低温熟成処理)。その後90℃まで昇温し、撹拌しながら2時間反応処理(第1処理)を行った。反応終了後、生成物を80℃のトルエン1300mlで4回洗浄(中間洗浄)し、新たにトルエン1200ml及びチタンテトラクロライド300mlを加えて、撹拌しながら100℃で2時間の反応処理(第2処理)を行った。この後、中間洗浄及び第2処理を、更にもう一度繰り返した。次いで、生成物を40℃のヘプタン1300mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.66重量%であった。
〈重合用触媒の形成及び重合〉
上記のように調製した固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に行なった。重合評価結果を表1に併載する。
実施例6
固体触媒成分の調製時に、第1処理時間の2時間を1.5時間に代え、第2処理時間の2時間を1時間に代え、もう一度繰り返して行う第2処理時間の2時間を1.0時間に代えた以外は実施例5と同様に固体触媒成分の調製及び重合評価を行なった。該固体触媒成分中のチタン含有量は3.05重量%であった。結果を表1に併載する。
比較例1
マレイン酸ジ−n−ブチルをフタル酸ジ−n−ブチル1.5mlに変えた以外は実施例2と同様に固体触媒成分の調製を行なった。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.69重量%であった。このように調製した固体触媒成分を用い、実施例2と同様に重合を実施した。結果を表1に併載するが、このような固体触媒成分を用いると、MIが低くなるので対水素活性が低下することがわかる。
比較例2
〈固体触媒成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム10g、トルエン80mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液にチタンテトラクロライド20mlを添加し、その後90℃まで昇温してフタル酸ジクロライド1.5mlを添加して、115℃まで昇温して攪拌しながら2時間反応処理を行った。反応終了後、生成物を90℃のトルエン200mlで3回洗浄し、新たにトルエン80ml及びチタンテトラクロライド20mlを加えて、撹拌しながら115℃で2時間の反応処理を行った。次いで、生成物を40℃のヘプタン200mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.87重量%であった。
〈重合用触媒の形成及び重合〉
上記のように調製した固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に行なった。重合評価結果を表1に併載するが、比較例1と同様にMIが低いことから、対水素活性が低いことがわかる。
【表1】
以上の結果から、炭素数2〜8の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを用いると、活性、対水素活性、立体規則性、嵩密度のバランスが良好な固体触媒成分が得られることがわかる。
産業上の利用可能性
本発明の固体触媒成分及び触媒は高活性かつ極めて良好な対水素活性を有し、本発明の重合触媒を用いてプロピレンを重合することにより、高メルトフローレイトでかつ、高立体規則性及び高嵩密度を有するポリプロピレンを高収率で得ることができる。これにより、設備改善や使用水素量増加などによるコストの増加、あるいは生産性低下などの問題を解決し得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の触媒成分及び重合触媒を調製する工程を示すフローチャートである。
Claims (6)
- ジアルコキシマグネシウム(a)を芳香族炭化水素(d)に懸濁させ、この懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させ、反応処理を行なう際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステル(c)の1種あるいは2種以上を接触させることにより調製される、プロピレン重合用固体触媒成分。
- マレイン酸ジエステル(c)が、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルであって、該炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルの含有量は、使用するマレイン酸ジエステルの全体量のうち50重量%以上である、請求項1に記載のプロピレン重合用固体触媒成分。
- マレイン酸ジエステル(c)が、炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルを必須成分とし、更に炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルから選択される1種以上を併用するものであって、前記炭素数2〜5の直鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルの含有量は使用するマレイン酸ジエステル全体量のうち50重量%以上である、請求項1に記載のプロピレン重合用固体触媒成分。
- マレイン酸ジエステルがマレイン酸ジ−n−ブチルであって、該マレイン酸ジ−n−ブチルの含有量は、使用するマレイン酸ジエステル全体量のうち50重量%以上である、請求項1に記載のプロピレン重合用固体触媒成分。
- マレイン酸ジエステルが、マレイン酸ジ−n−ブチルを必須成分とし、更に炭素数2〜8の直鎖状あるいは分枝鎖状アルキル基を有するマレイン酸ジエステルから選択される1種以上を併用するものであって、前記マレイン酸ジ−n−ブチルの含有量は、使用するマレイン酸ジエステルの全体量のうち50重量%以上である、請求項1に記載のプロピレン重合用固体触媒成分。
- (A)請求項1に記載のプロピレン重合用固体触媒成分、
(B)一般式(1);R1 qA1Q3−p (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、及び
(C)一般式(2);R2 qSi(OR3)4−p (2)
(式中、R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物によって形成されることを特徴とするプロピレン重合用触媒。
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