本発明の第1の観点によれば、以下の構成の自動原稿搬送装置が提供される。即ち、この自動原稿搬送装置は、ローラと、読取部と、スキャナフレームと、開閉機構と、を備える。前記ローラは、折返し部を有するU字状の原稿搬送経路に配置される。前記読取部は、縮小光学系の読取部として構成されており、前記原稿を読み取るために前記原稿搬送経路の内側に配置される。前記スキャナフレームは、前記読取部の読取部分を保持する。また、前記スキャナフレームは、前記読取部分から前記折返し部に近い側の少なくとも一部において、当該折返し部に近づくに従って前記原稿搬送経路から離れるような面を有する。前記開閉機構は、前記スキャナフレームを、前記ローラの軸を回動中心として、原稿を読み取るときの使用位置から前記読取部の読取部分が露出する露出位置に回動可能とする。この開閉機構は、前記露出位置にあるときの前記スキャナフレームが自重によって前記折返し部側に倒れないように当該スキャナフレームを受け止める。
これにより、スキャナフレームを回動させるときに、その回動軌跡が原稿搬送経路に干渉しにくいので、スキャナフレームを露出位置までスムーズに回動させることができる。また、露出位置のスキャナフレームは、倒れないように開閉機構によって支持されるので、スキャナフレームを露出位置で安定させることができる。また、露出位置において、スキャナフレームは開閉機構に自重を預けるような姿勢で支持されるので、読取部の読取部分が広く開放される。従って、メンテナンス作業のためのスペースを十分に確保でき、作業効率を向上させることができる。更に、スキャナフレームの回動中心がローラと同軸上にあるので、構成を容易に簡素化することができ、製造コスト及び製造工数を低減することができる。
前記の自動原稿搬送装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記ローラは、原稿の斜行を矯正するレジストローラである。前記レジストローラは、前記スキャナフレームを挟んで前記読取部の読取部分と反対側に配置されている。前記スキャナフレームが前記露出位置にあるときは、前記読取部の読取部分が前記レジストローラよりも上方に位置する。
これにより、原稿搬送経路において、レジストローラと読取部を合理的に配置することができる。また、レジストローラの軸を中心に読取部の読取部分を大きく回動させることができるので、露出位置では当該読取部分を含めた広い範囲を良好に露出させることができる。
前記の自動原稿搬送装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、この自動原稿搬送装置は、原稿をセットするための原稿トレイを備える。前記スキャナフレームは、前記原稿トレイとは独立して回動する。
これにより、原稿トレイが回動の邪魔になることを回避し、スキャナフレームを使用位置から露出位置にスムーズに回動させることができる。また、原稿トレイを自動原稿搬送装置から取り外す等の手間を省略できるため、スキャナフレームの開閉作業を速やかに行うことができる。
前記の自動原稿搬送装置においては、前記開閉機構は、前記スキャナフレームが前記露出位置にあるときに当該スキャナフレーム側の部材に接触する接触部を備えることが好ましい。
前記の自動原稿搬送装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記読取部はイメージセンサを備える。前記スキャナフレームが前記露出位置にあるときは、前記イメージセンサが前記スキャナフレーム内の上部に位置するように前記読取部が構成される。
これにより、露出位置において、スキャナフレーム内の塵又は埃等は、イメージセンサから離れる向きに重力に従って落下する。従って、イメージセンサへの異物の付着を防止し、画質を長期間にわたって良好に維持することができる。また、露出位置では、折返し部側に傾いているスキャナフレームの上部にイメージセンサが配置されているので、スキャナフレームの重心がより折返し部側に近い位置に移動することになる。これによって、スキャナフレームを露出位置でより安定させることができる。
前記の自動原稿搬送装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記スキャナフレームは、当該スキャナフレームが前記使用位置にあるときに前記原稿を押圧可能な押圧ローラを備える。前記スキャナフレームが前記使用位置から前記露出位置に回動するに従って、前記押圧ローラが前記原稿搬送経路から離間する。
これにより、原稿が押圧ローラによって押圧された状態で自動原稿搬送装置内に詰まった場合でも、スキャナフレームを露出位置に回動させることで原稿を容易に取り出すことができる。また、スキャナフレームの回動時に押圧ローラが離間するので、詰まった原稿が押圧ローラに引っ張られて損傷することを防止できる。
前記の自動原稿搬送装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記自動原稿搬送装置は、フレームカバーと、固定部と、を備える。前記フレームカバーは、前記スキャナフレームに形成された開放部を閉鎖する。前記固定部は、前記フレームカバーをスキャナフレームに固定するとともに、当該スキャナフレームが前記露出位置にあるときは、その頭部が水平方向より上側に向いている。
これにより、露出位置では固定部の頭部が水平方向より上側を向いているので、フレームカバーを取り外す作業を上側から容易に行うことができる。また、スキャナフレームを自動原稿搬送装置本体から取り外すことなくスキャナフレームの内部を露出させることができるので、メンテナンス作業を一層効率化できる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る原稿読取装置としてのイメージスキャナ装置10を含む、コピーファクシミリ複合機(複合機)20の外観斜視図である。図2は、本実施形態のイメージスキャナ装置10の構成を示した正面断面図である。
図1に示すコピーファクシミリ複合機20は、ブックスキャナ及びオートドキュメントフィードスキャナとして機能するイメージスキャナ装置10を、当該複合機20の上部に備えている。また、複合機20は、コピー部数、ファクシミリ送信先及び原稿読取等を指示するための操作パネル77を備える。
更に、複合機20は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成部等を内蔵した本体78と、前記用紙を順次供給する給紙カセット79と、を備えている。この本体78は、通信回線を介して画像データを伝送するための図略の送受信部等を備える。
次に図2を参照して、前記複合機20が備えるイメージスキャナ装置10について説明する。図2に示すように、イメージスキャナ装置10は、プラテンガラス22と原稿台カバー21とを備えている。この原稿台カバー21には自動原稿搬送装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)25が備えられている。また、イメージスキャナ装置10は、原稿の画像を読み取るための本体側スキャナユニット50及びADF側スキャナユニット(読取部)60を備えている。
このイメージスキャナ装置10をオートドキュメントフィードスキャナとして使用する場合は、前記ADF25によって原稿を1枚ずつ搬送する。そして、原稿の表側の面(第1面)の画像は本体側スキャナユニット50によって読み取られ、裏側の面(第2面)の画像はADF側スキャナユニット60によって読み取られる。
一方、イメージスキャナ装置10をブックスキャナとして使用する場合は、読み取るべきブック原稿をユーザがプラテンガラス22上に載置して、その上から原稿台カバー21によって押圧し、ブック原稿が動かないように固定する。この状態で、本体側スキャナユニット50によって原稿の画像を読み取ることができるようになっている。
図2に示すように、前記原稿台カバー21が備えるADF25は、原稿台カバー21の上部に設けられた原稿トレイ23と、この原稿トレイ23の下方に設けられた排出トレイ24と、を備える。また、ADF25は、ADF本体部16と、その上側を覆うカバー部11とを備えている。このカバー部11は、カバー回動軸43を介してADF本体部16に回動可能に支持されている。
図2に示すように、前記原稿台カバー21の内部には、原稿トレイ23と排出トレイ24とを繋ぐ湾曲状(正面視で横向きU字状)の原稿搬送経路30が構成されている。この構成で、原稿トレイ23に重ねてセットされた原稿は、1枚ずつ分離されて前記原稿搬送経路30に沿って搬送され、排出トレイ24へ排出される。原稿の読取開始等の指示は、図1に示す操作パネル77によって行うことができる。
次に、原稿搬送経路30に沿って、ADF25の各部の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、原稿トレイ23から原稿搬送経路30に原稿が供給される箇所にはピックアップローラ31が配置されている。このピックアップローラ31の下流側には分離ローラ32が備えられ、この分離ローラ32に対向して対向ローラ37が配置されている。
この構成で、ピックアップローラ31が駆動されることによって、原稿トレイ23上の最上層の原稿がADF25内に繰り込まれる。原稿はピックアップローラ31の駆動によって分離ローラ32へ送られ、当該分離ローラ32と対向ローラ37との間にニップされる。そして原稿は、回転駆動する分離ローラ32によって1枚ずつ分離され、原稿搬送経路30の下流側へ搬送される。
分離ローラ32の下流側には、レジストローラ39と、このレジストローラ39と対になる対向ローラと、が配置されている。レジストローラ39は前記対向ローラとともに、分離ローラ32によって搬送されてくる原稿の先頭側を一時的に止めて弛ませ、所定時間後に弛みを除去しつつ下流側に搬送する。これにより、原稿の斜行が矯正される。なお、前記レジストローラ39の近傍には、後述のヒンジ機構46を構成する本体部フレーム13が配置されている。
レジストローラ39の下流側には、複数の搬送ローラ33,34,35が設けられる。また、この搬送ローラ33,34,35のそれぞれに対向するようにローラが配置されている。前記レジストローラ39の駆動によって下流側へ搬送された原稿は、搬送ローラ33,34,35とそれらに対向するローラとによりニップされて、更に下流側へ搬送される。
2つの搬送ローラ34,35の間には第1原稿読取位置80が設定されており、この第1原稿読取位置80にはプラテンローラ29が配置されている。そして、この第1原稿読取位置80を通過する原稿は、後述の本体側スキャナユニット50によって走査され、読み取られる。なお、前記搬送ローラ33から第1原稿読取位置80までの間において、原稿搬送経路30には、原稿の搬送方向を反転させる折返し部45が形成されている。
本体側スキャナユニット50について説明する。この本体側スキャナユニット50は本体78側に設置されるとともに、ADF25及びプラテンガラス22の下方(前記原稿搬送経路30の外側)に配置されている。また、この本体側スキャナユニット50は、光源51と、反射ミラー52,53,54と、集光レンズ55と、電荷結合素子(CCD)56と、を備えている。光源51は前記ADF25の前記第1原稿読取位置80(又はプラテンガラス22)に対して光を照射し、反射ミラー52,53,54は原稿からの反射光を反射させる。そしてこの反射光を集光レンズ55で収束させて、この収束光がCCD56の部分で結像するように構成されている。
本体側スキャナユニット50の光源51及び反射ミラー52等は移動可能に構成されている。前述したようにイメージスキャナ装置10をブックスキャナとして使用する場合は、本体側スキャナユニット50の光源51及び反射ミラー52等をプラテンガラス22に沿って移動させる。これによって、プラテンガラス22上に載置された原稿を読み取ることができるようになっている。
一方、イメージスキャナ装置10をオートドキュメントフィードスキャナとして使用する場合は、光源51及び反射ミラー52等は、図2に示すように、前記第1原稿読取位置80に対向する位置まで移動させて静止させておく。この状態でADF25を駆動することにより、原稿搬送経路30を搬送されて第1原稿読取位置80を通過する原稿の表側の面を、本体側スキャナユニット50が走査して読み取ることができる。
本体側スキャナユニット50において、原稿からの反射光は前述のとおりCCD56へ導かれて結像し、CCD56は原稿の画像情報に応じた電気信号を出力する。この信号は適宜変換処理され、複合機20が備える画像形成部に送信される。そして、この送信された画像情報が画像形成部によって記録媒体としての用紙に転写されることで、複合機20のコピー機能等が実現される。
原稿搬送経路30において、前記第1原稿読取位置80の下流側(搬送ローラ35の下流側)には第2原稿読取位置90が設定されている。この第2原稿読取位置90を通過する原稿の裏面は、次に説明するADF側スキャナユニット60によって走査されて読み取られる。
ADF側スキャナユニット60について説明する。このADF側スキャナユニット60は、U字状に構成された前記原稿搬送経路30に内側から接するように、当該原稿搬送経路30の内側に設置されている。また、ADF側スキャナユニット60は、ADF25の内部に保持されるスキャナフレーム12を備えている。このスキャナフレーム12は、内部の光学系を構成する部品等を支持するとともに、その外側を覆って保護するように構成されている。
スキャナフレーム12の底部(原稿搬送経路30に接する部分)には、原稿の裏面を読み取るための読取ガラス(読取部分)42が備えられる。この読取ガラス42は、前記第2原稿読取位置90に対応する位置に配置される。また、図2に示すように、この読取ガラス42は、前述したレジストローラ39よりも前記折返し部45から若干遠い側に位置している。
また、スキャナフレーム12の前記第2原稿読取位置90に対向するように、プラテンローラ38がADF25本体部分に配置されている。この構成で、前記搬送ローラ35により搬送された原稿がプラテンローラ38の部分に差し掛かると、当該原稿はプラテンローラ38により搬送されながらその裏側の面が走査されて読み取られる。
以上のようにして2つの原稿読取位置で表裏両面の内容を読み取られた原稿は、排出ローラ36によって搬送され、排出トレイ24へ排出される。このようにして、原稿搬送経路30に原稿を1回通過させるだけで両面読取が可能な構成の、いわゆるワンパス方式のADF25が構成されている。
次にスキャナフレーム12について説明する。前述したように、スキャナフレーム12はADF25内に保持されている。また、スキャナフレーム12の下面には、読取ガラス42より原稿搬送経路30上流側(前記折返し部45に近い側であって、図2における紙面左側)を開放させる開放部が形成されている。
また、前記スキャナフレーム12は、前記開放部を閉鎖するフレームカバー14を備える。このフレームカバー14は、読取ガラス42から前記折返し部45に近づくに従って前記原稿搬送経路30から離れるように上方へ円弧状に湾曲する湾曲面を有している。このフレームカバー14によって前記開放部が閉鎖され、後述の縮小光学系を配置するための密閉空間が形成されている。
また、スキャナフレーム12には押圧ローラ40が回転可能に支持され、この押圧ローラ40は、前記排出ローラ36に対向するようにしてスキャナフレーム12の底部に配置されている。この構成で、ADF側スキャナユニット60で読み取られた原稿は、前記押圧ローラ40と排出ローラ36との間でニップされ、排出ローラ36の駆動によって排出トレイ24へ導かれる。
前記スキャナフレーム12は、レジストローラ39を支持するローラ軸41を中心として回動可能に構成されている。このレジストローラ39は、スキャナフレーム12を挟んで読取ガラス42と反対側に配置されているので、当該読取ガラス42を大きな弧を描いて回動させることができる。
以下、具体的な構成を説明する。前記ADF25は、湾曲状の原稿搬送経路30の内側で原稿の向きを案内するインナーガイド19を備えている。このインナーガイド19は、原稿搬送経路30においてピックアップローラ31からレジストローラ39までの範囲に配置される。インナーガイド19は、ピックアップローラ31及び分離ローラ32の下方に配置されるとともに、レジストローラ39のローラ軸41に軸支されている。
前記インナーガイド19はカバー状に形成されており、前記スキャナフレーム12の上側を広範囲にわたって覆うように構成されている。このインナーガイド19をスキャナフレーム12が有する図略の爪部に取り付けることで、スキャナフレーム12がインナーガイド19とともに回動できるようになっている。
そして、前記ローラ軸41と、ADF本体部16が備える本体部フレーム(接触部)13と、によって、スキャナフレーム12を開閉するためのヒンジ機構(開閉機構)46が構成されている。なお、このヒンジ機構46を用いたスキャナフレーム12の開閉については後述する。
次に、ADF側スキャナユニット60において構成される縮小光学系について説明する。図2に示すように、ADF側スキャナユニット60は、光源61と、反射ミラー62,63,64,65と、集光レンズ67と、イメージセンサとしての電荷結合素子(CCD)57と、を備えている。これらの部品は、何れもスキャナフレーム12の内部に配置されている。
光源61は読取ガラス42を臨むように配置されており、当該読取ガラス42を介して第2原稿読取位置90に光を照射することができる。反射ミラー62,63,64,65は、原稿からの反射光を更に複数回折り返すように反射させ、集光レンズ67に導くように構成されている。集光レンズ67は光を収束させてCCD57の部分に結像させ、CCD57は、本体側スキャナユニット50におけるCCD56と同様に、原稿の画像情報に応じた電気信号を出力する。この信号も適宜変換処理され、複合機20が備える画像形成部に送信される。
次に、ヒンジ機構46による前記スキャナフレーム12の開閉について説明する。図3は、ADF25のカバー部11を開いた様子を示した要部断面図である。図4は、スキャナフレーム12を開き位置に回動させた様子を示した要部断面図である。
前記スキャナフレーム12は、通常の状態では図2に示すように原稿搬送経路30の内側に位置しており、ほぼ水平姿勢となっている。また、この状態では、前記CCD57はスキャナフレーム12内において前記折返し部45から離れた場所に配置されている。更に、前記読取ガラス42のガラス面(読取面)は直下方を向いており、また、前記押圧ローラ40は排出ローラ36との間で原稿を押圧可能な状態である。
なお、図2では図示していないが、前記スキャナフレーム12は、前記フレームカバー14を当該スキャナフレーム12の本体に固定するためのネジ(固定部)15を備えている。このネジ15は前記読取ガラス42の近傍に配置されるとともに、スキャナフレーム12の原稿幅方向両端部に配置されている。図3で示す状態では、ネジ15の頭部は直下方を向いている。また、前記フレームカバー14においては、前記折返し部45に近い側の端部に図略のフレーム爪が形成されている。この構成で、フレームカバー14の取付けは、フレームカバー14の一側の端部を前記フレーム爪部によってスキャナフレーム12の本体に係合させた上で、フレームカバー14の他側の端部を前記ネジ15でスキャナフレーム12に固定することによって行われる。
この構成で、ADF側スキャナユニット60のメンテナンス等を行う際には、最初に、ADF25のカバー部11を持ち上げるように上方向に回動させて、図3に示すようにカバー部11を開いた状態とする。これにより、レジストローラ39及び分離ローラ32のニップが解除されるとともに、原稿搬送経路30の上流側半部が開放される。
次に、スキャナフレーム12を持ち上げることで、図3の位置(閉じ位置)から前記ローラ軸41を中心に回動させて上方向に引き出し、図4に示す位置(開き位置)まで移動させる。なお、前記スキャナフレーム12のフレームカバー14は、前述のとおり、折返し部45に近づくに従って前記原稿搬送経路30から徐々に離れるように形成されている。従って、スキャナフレーム12の回動軌跡が原稿搬送経路に干渉しにくいので、スキャナフレーム12をスムーズに回動させることができる。
この回動に伴って、前記押圧ローラ40は排出ローラ36との接触を解除し、前記原稿搬送経路30から離間する。このようにスキャナフレーム12を開き位置まで回動させることで、図4に示すようにスキャナフレーム12の底面側を露出させ、また、原稿搬送経路30の下流側の大部分を開放させることができる。
なお、前記原稿トレイ23はADF本体部16に取り付けられており、スキャナフレーム12とは独立して設けられている。また、原稿トレイ23は前述のスキャナフレーム12の回動軌跡と干渉しないように配置されている。従って、原稿トレイ23をADF本体部16から取り外す等の作業を行うことなく、スキャナフレーム12を単独で開閉することができる。
前記スキャナフレーム12を図3の閉じ位置から図4の開き位置まで回動させる角度は、90度を上回る所定の角度(例えば、約110度)となるように設定されている。従って、回動後の位置(図4の開き位置)では、スキャナフレーム12は、垂直な姿勢から上部が前記折返し部45に近づくようにやや傾いた姿勢となる。
なお、この傾斜姿勢により、スキャナフレーム12の重心はローラ軸41(回動中心)よりも折返し部45側に位置することとなる。しかしながら本実施形態では、スキャナフレーム12が露出位置にあるときは、前記ヒンジ機構46を構成する本体部フレーム13が前記インナーガイド19(即ち、スキャナフレーム12側の部材)に接触して、当該スキャナフレーム12の重量の一部を受け止めるようになっている。この支持する向きは、図4の太線矢印で示すように、露出位置から使用位置へ向かう方向であり、前記折返し部45から離れる方向である。従って、スキャナフレーム12は自重によって折返し部45側に倒れることなく、前記傾斜姿勢を安定して保持することができる。
以上のようにしてADF25の内部を開放することで、メンテナンス作業を容易に行うことができる。なお、以降の説明では、図3に示す閉じた位置を使用位置と称し、図4に示す開き位置を露出位置と称することがある。
次に、スキャナフレーム12が露出位置にあるときの各部品の位置関係について説明する。即ち、図4に示すように、スキャナフレーム12が露出位置にあるときは、前記CCD57はスキャナフレーム12内の上部に位置することになる。従って、スキャナフレーム12の内部に紙粉等の異物が侵入した場合であっても、スキャナフレーム12を露出位置とすることでCCD57から離れる向きに落下することになる。従って、CCD57に異物が付着して読取画質を著しく低下させることを防止することができる。
また、スキャナフレーム12を露出位置に回動させた状態では、前記読取ガラス42が、前記スキャナフレーム12において前記折返し部45から遠い側の面に位置することになり、また、レジストローラ39よりも上方に位置する。これにより、読取ガラス42のメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、図4に示すように、スキャナフレーム12の露出位置では、当該読取ガラス42のガラス面は、その法線が水平方向より若干上方を向くように構成される。これにより、読取ガラス42の清掃作業等を上側から行うことができるので、作業スペースを広く確保して作業を容易に行うことができる。
更に、スキャナフレーム12にフレームカバー14を固定する前記ネジ15も、スキャナフレーム12が露出位置にあるときは、水平方向よりも若干上方を向くように構成されている。従って、図4の鎖線で示すように、ドライバー等の適宜の工具98をネジ15の頭部に水平方向より上側から差し込むことができるので、視界及び作業スペースを広く確保しつつ、フレームカバー14に対するネジ15の取付け及び取外しを容易に行うことができる。これにより、例えばメンテナンス作業中に手元を誤って読取ガラス42を工具98で損傷するような事態を防止できる。
また、図4のように工具98を使ってネジ15を取り外すことで、スキャナフレーム12をADF本体部16に取り付けたままの状態で、スキャナフレーム12の内部を開放することができる。従って、ADF本体部16からスキャナフレーム12を取り外す手間を省くことができ、ADF側スキャナユニット60内のメンテナンス作業を迅速に行うことができる。
メンテナンス作業の終了後、図2等に示す使用位置に戻すために、ユーザはスキャナフレーム12を手で押し下げる。スキャナフレーム12は、前述のローラ軸41を中心に下方向に回動する。その後、更にカバー部11を閉じることで、ADF25を再び使用できる状態になる。
以上に示すように、本実施形態の複合機20が備えるADF25は、レジストローラ39と、ADF側スキャナユニット60と、スキャナフレーム12と、ヒンジ機構46と、を備える。レジストローラ39は、折返し部45を有するU字状の原稿搬送経路30に配置される。ADF側スキャナユニット60は、縮小光学系のスキャナユニットとして構成され、前記原稿の裏側の面を読み取るために原稿搬送経路30の内側に配置される。スキャナフレーム12は、前記ADF側スキャナユニット60の読取ガラス42を保持する。また、スキャナフレーム12は、読取ガラス42より前記折返し部45に近い側において、当該折返し部45に近づくに従って前記原稿搬送経路30から離れるような曲面を有している。ヒンジ機構46は、スキャナフレーム12を、前記レジストローラ39の軸(ローラ軸41)を回動中心として、原稿を読み取るときの使用位置から、前記読取ガラス42が露出する露出位置に回動可能とする。このヒンジ機構46は、前記露出位置にあるときの前記スキャナフレーム12が前記折返し部45側に倒れないように当該スキャナフレーム12を受け止める。
この構成により、スキャナフレーム12を回動させるときに、その回動軌跡が原稿搬送経路30に干渉しにくいので、スキャナフレーム12を露出位置までスムーズに回動させることができる。また、スキャナフレーム12の重量の一部をヒンジ機構46が支持するので、露出位置でスキャナフレーム12を安定して支持できる。また、露出位置において、スキャナフレーム12はヒンジ機構46に自重を預けるような姿勢で支持されるので、ADF側スキャナユニット60の読取部分(読取ガラス42)が広く開放される。従って、メンテナンス作業のためのスペースを十分に確保でき、作業効率を向上させることができる。また、スキャナフレーム12の回動中心がレジストローラ39と同軸上にあるので、構成を簡素化することができ、製造コスト及び製造工数を低減することができる。更に、図4に示すように、露出位置において、スキャナフレーム12のフレームカバー14が下方に行くに従って折返し部45側に逃げるように曲面で形成されているので、ADF25内部に大きな作業スペースを形成することができる。これにより、プラテンローラ38等、ADF25の底部に配置されている部品のメンテナンスを効率的に行うことができる。
また、本実施形態のADF25において、スキャナフレーム12は、原稿の斜行を矯正するレジストローラ39のローラ軸41を中心として回動する。このレジストローラ39は、スキャナフレーム12を挟んでADF側スキャナユニット60の読取ガラス42と反対側に配置されている。また、スキャナフレーム12が露出位置にあるときは、前記読取ガラス42が前記レジストローラ39よりも上方に位置する。
この構成により、原稿搬送経路30において、レジストローラ39とADF側スキャナユニット60を合理的に配置することができる。また、レジストローラ39の軸(ローラ軸41)を中心にスキャナフレーム12を大きく回動させることができるので、露出位置では、読取ガラス42を含む広範囲の領域を良好に露出させることができる。
また、本実施形態のADF25は、原稿をセットするための原稿トレイ23を備える。そして、前記スキャナフレーム12は、前記原稿トレイとは独立して回動する。
この構成により、原稿トレイ23が回動の邪魔になることを回避し、スキャナフレーム12を使用位置から露出位置にスムーズに回動させることができる。また、原稿トレイ23をADF25から取り外す等の手間を省略できるため、スキャナフレーム12の開閉作業を速やかに行うことができる。
また、本実施形態のADF25において、前記ヒンジ機構46は、前記露出位置で前記スキャナフレーム12に接触する本体部フレーム13を備える。
この構成により、簡素な構成で、スキャナフレーム12を露出位置で安定して支持することができる。
また、本実施形態のADF25において、前記ADF側スキャナユニット60はCCD(イメージセンサ)57を備える。また、前記ADF側スキャナユニット60が前記露出位置にあるときは、CCD57が前記スキャナフレーム12内の上部に位置するようにADF側スキャナユニット60が構成される。
この構成により、露出位置において、スキャナフレーム12内の塵又は埃等は、CCD57から離れる向きに重力に従って落下する。従って、CCD57への異物の付着を防止し、画質を長期間にわたって良好に維持することができる。また、露出位置では、折返し部45側に傾いているスキャナフレーム12の上部にCCD57が配置されているので、スキャナフレーム12の重心がより折返し部45側に近い位置に移動することになる。これによって、スキャナフレーム12を露出位置でより安定させることができる。
また、本実施形態のADF25において、スキャナフレーム12は、当該スキャナフレーム12が前記使用位置にあるときに原稿を押圧可能な押圧ローラ40を備える。そして、スキャナフレーム12が前記使用位置から前記露出位置に回動するに従って、押圧ローラ40は前記原稿搬送経路30から離間する。
この構成により、原稿が押圧ローラ40に押圧された状態でADF25内に詰まった場合でも、スキャナフレーム12を露出位置に回動させることで容易に原稿を取り出すことができる。また、スキャナフレーム12の回動時に押圧ローラ40が離間するので、詰まった原稿が押圧ローラ40に引っ張られて損傷することを防止できる。
また、本実施形態のADF25は、フレームカバー14と、ネジ15と、を備える。フレームカバー14は、スキャナフレーム12に形成された開放部を閉鎖する。ネジ15は、前記フレームカバー14をスキャナフレーム12に固定している。また、当該スキャナフレーム12が前記露出位置にあるときは、ネジ15の頭部は水平方向より上側に向いている。
この構成により、露出位置ではネジ15の頭部が水平方向より上側を向いているので、フレームカバー14を取り外す作業を容易に行うことができる。また、スキャナフレーム12をADF25本体から取り外すことなくスキャナフレーム12の内部を露出させることができるので、メンテナンス作業を一層効率化できる。
また、本実施形態のイメージスキャナ装置10は、前記ADF25を備える。これにより、効率的に開閉作業を行うことができるとともに、メンテナンス時の作業効率を向上させたイメージスキャナ装置10を提供することができる。
なお、上記実施形態では前記フレームカバー14は緩やかに湾曲された曲面を有しているが、この面が略平面状となるように変更することができる。以下、図5を参照して、ADF25の変形例について説明する。なお、変形例において上記実施形態と同一及び類似する構成については、図面に同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図5に示すように、変形例のスキャナフレーム112は、その本体に形成された開放部を閉鎖するフレームカバー114を備えている。このフレームカバー114は、読取ガラス42から前記折返し部45に近づくに従って前記原稿搬送経路30から直線状に離れる平面を有している。なお、上記のフレームカバー114の形状以外の構成は、前述の実施形態と全く同様である。
この変形例の構成によっても、前述の実施形態と同様に、スキャナフレーム112がADF25の他の部品に接触することなく、使用位置から露出位置までスムーズに回動させることができる。ただし、この変形例よりも前述の実施形態の方が、スキャナフレーム12の内部空間を若干広くでき、スキャナフレーム12の内部で所定の光路長を容易に確保できる点で有利である。
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
上記実施形態において、露出位置にあるスキャナフレーム12の重量の一部は本体部フレーム13で支持するように構成されている。しかしながらこの構成に代えて、例えば、ローラ軸41上に配置される適宜のストッパ部材によってスキャナフレーム12が支持される構成に変更することができる。また、本体部フレーム13がインナーガイド19に接触する構成に代えて、例えばスキャナフレーム12に直接接触して当該スキャナフレーム12を受け止める構成に変更することができる。
フレームカバー14は、前述のネジ15に代えて、例えばピンによって固定する構成に変更することができる。
前記コピーファクシミリ複合機20に代えて、例えば、コピー機、ファクシミリ装置等にも、本発明のADF25を適用することができる。
上記実施形態ではイメージスキャナ装置10は複合機20の一部として備えられているが、この構成に代えて、単体のイメージスキャナ装置として構成することができる。