JP4865163B2 - スチール製di缶 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスチールを素材とした絞り−しごき加工して成形されるDI缶に関するもので、塗膜密着性、耐食性に優れた缶体を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属缶には、筒状の缶胴を製造し、その両端開口部に、天蓋および地蓋を巻締めたスリーピース缶と、缶胴と地蓋が一体となった有底筒状容器に天蓋を巻締めたツーピース缶とがある。
スリーピース缶は、缶胴を電気抵抗溶接や接着剤等で接合するため、素材としてはスチールの薄板が使用される。
一方、ツーピース缶の一種は、缶胴と地蓋が一体となった有底筒状容器が絞り加工や絞り−しごき加工(Drawn and Ironed)によって得られるため一般にDI缶と呼ばれる。このDI缶は、缶胴の接合を必要とせず、素材としてはアルミニウム合金やスチール等の薄板が使用される。
スチールおよびアルミニウム合金を素材としたDI缶では、缶体成形後、脱脂・化成処理工程を経て、缶の内面側は耐食性確保の観点から塗装が、外面側は商標や装飾のため印刷・塗装が施されて使用されている。
スチール素材のDI缶の内面側の耐食性について言えば、化成処理皮膜だけでは耐食性を向上させることは殆ど難しく、結局は化成処理後に施される塗装に頼っており、しかもその塗布量はスチールを素材としたDI缶の場合はアルミニウム合金を素材としたDI缶に比べて多くしており、それは素材の耐食性がアルミニウム合金に比べてスチールの方が劣ることに起因している。
【0003】
又、缶の外面側はスチールを素材としたDI缶では印刷デザインにもよるが、印刷外観の点から多くの場合白色塗装が施された後、印刷、クリアーが行われている。しかも、スチールの場合は金属固有の分光反射率がアルミニウム合金に比べて低いことから、黒みを呈する色調(黒みがかった色調)となるため、白色塗料の塗布量はアルミニウム合金を素材とした場合に比べ多くする必要がある。
このように、スチールを素材としたDI缶の場合、内面の塗装および外面の白色塗装の塗布量は、いずれもアルミニウム合金を素材とした場合に比べ、多くする必要があることから、製造コストはむしろ高くなる場合があり、金属素材の価格差はなくなってしまうどころか、トータルコストとしても割高となる場合もある。
また、非常に希なケ−スではあるが、スチールを素材としたDI缶の場合、特に、レトルト加熱殺菌処理を行う内容物を充填した場合に、缶外面側の塗膜が蓋の巻締め部の中から巻締めの外まで達する局部的な浮きが発生することがある。こうした局部浮きは商品価値を著しく低下させることがあるので好ましくない。
こうした缶外面塗膜が局部的に浮くと言った現象は、(1)アルミニウム合金の蓋を巻しめた場合にのみ起こり、(2)胴材がアルミニウム合金を素材としたDI缶では見られないことから、アルミニウム合金蓋とスチール缶胴が接触して起こる「異種金属接触腐食」によるものと考えられている。
【0004】
また、近年のトータル缶コストの低減化から、使用金属板の板厚の低減化(薄板化)や缶蓋であるアルミニウム合金製の開口容易缶蓋(イージーオープンエンド、通称EOE)の径を小さくすることが進み、例えば、缶胴が350mlのビール缶の場合、通称211径と呼ばれ、缶胴直径は約66mmであり、当然巻締める缶蓋も211径用であったが、現在は206径(直径約58mm)化、204径(直径約55mm)化、202径(直径約52mm)化となっており、更には200径(直径約49mm)化が進められている。
このことは、必然的に缶胴の開口部をネック加工又はネックイン加工により、より小さい径に絞る、いわゆる縮径化となり、従って缶胴に用いられている金属は勿論、その表面に被覆されている有機塗料にとっても厳しい加工をうけることになる。
DI缶成形後の化成処理はこうした耐食性や縮径化に対応すべく改良検討がなされており、スチ−ルを素材としたDI缶の化成処理は、現在は主にリン酸Sn系の化成処理が多く適用されている。
しかし、現在適用されているリン酸Sn系の化成処理では、スチールを素材としたDI缶が持つ多くの問題を解決することは難しい。
【0005】
スチールを素材としたDI缶の化成処理技術について言えば、例えば特開平1−177379号公報、特開平2−608号公報、特開平11−264075号公報等に開示されているが、こうした先行技術では現在要求されている塗膜密着性や耐食性と言った性能面で不十分であり、また前述した希に発生するレトルト加熱殺菌処理時の缶外面側の塗膜浮きを防止できないと言った問題を有している。
スチ−ル素材のDI缶は、アルミニウム合金素材のDI缶に比べ、缶重量が重い、対内容物耐食性が劣る、印刷外観が黒ずむ、と言った欠点があるが、一方缶の流がスムースである、天蓋の巻締性が良く安定していると言った利点もあり、更には素材価格が安価であることから、現状の缶性能が向上できればスチール素材のDI缶を使用したいと言う声は根強くある。
こうした状況から、スチール素材のDI缶の缶体自身の耐食性や缶内外面の塗膜の加工密着性を少しでも向上できる新しい化成処理剤の出現の期待が強くあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スチールを素材としたDI缶の塗料密着性や耐食性を大幅に改善させ、より高品質で生産歩留まりの良い缶を提供する点にある
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、絞りしごき加工によって得られるスチール製DI缶において、缶の内外面の鋼板表面にリン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜が形成されており、該化成処理皮膜におけるリン(P)の付着量片面0.05〜2.0mg/m、金属(M)の付着量が片面0.05〜2.0mg/m、有機樹脂(R)の付着量が炭素(C)量として片面で0.5〜20mg/m金属(M)がジルコニウム及び/又はチタニウムであり、かつ炭素(C)付着量と金属(M)付着量の比 C/M が1〜100であることを特徴とするスチール製DI缶に関する。
【0008】
本発明における缶体は、スチールを素材とした絞り−しごき加工によって得られる、有底のツーピース缶(ドロー・アイアニング缶、 DI缶)である。
スチール素材としては特に限定するものではないが、現在DI缶として適用されている薄鋼板にSnめっきが施されたブリキが使用される。好ましい具体例としては、板厚が0.15mm〜0.30mmの薄鋼板に片面の付着量として1.0〜6.0g/mの錫めっき鋼板があげられる。
板厚は、主に缶強度、特に缶底の耐圧強度(通称ボトム耐圧)によって決められ、内容物を充填した後の内圧によって板厚は選定され、内圧が高い例えば、炭酸飲料やビール等を充填・密封する内圧缶の場合は、板厚が0.15mm以下では、いわゆるバックリングと呼ばれる、缶底部が外方へ張り出した状態になる場合があり好ましくない。
一方、スチール素材の場合は、0.30mm以上の板厚は耐圧強度は十分に確保されるが、実質的に過剰品質であり、経済的でない。
前記のバックリングといった現象は、同一板厚でも金属素材の機械的強度によって発生するか否かが分かれるため、機械的強度が高い場合は板厚の薄手化は可能となることから、板厚は、缶全体の強度バランスを考慮し、適宜選択することが望ましい。
【0009】
次に、本発明で適用される化成処理皮膜について述べる。
本発明に適用されるスチール素材のDI缶の化成処理皮膜は、リン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)から成る有機無機複合型化成処理皮膜である。リン(P)の付着量は、片面で0.05〜2.0mg/m、金属(M)の付着量は片面で0.05〜2.0mg/m、有機樹脂(R)の付着量は炭素(C)量として片面で0.5〜20mg/m金属(M)がジルコニウム及び/又はチタニウムであり、かつ炭素(C)付着量と金属(M)付着量の比 C/M 1〜100である。
こうした化成処理によって析出する皮膜は、通常交換皮膜と呼ばれ、鋼板やアルミニウムの局部溶解によって起こる水素イオンの還元によりその部位では局部的にpHが上昇し、有機樹脂や金属イオンが溶解出来なくなり、析出するもので、析出箇所は鉄の露出部と考えられている。
リン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜は、対内容物耐食性の向上や缶内外面の塗膜密着性の向上だけでなく、前述したレトルト加熱殺菌処理を行う内容物を充填した場合に発生する、缶外面側の局部的塗膜浮き防止に特に効果がある。
【0010】
リン(P)は鋼板やアルミニウムの局部溶解を促すための物質ではあるが、有機樹脂や金属イオンと同時に析出される。
従って、リン(P)の付着量が直接缶体の耐食性や塗膜密着性に関与するものではないが、皮膜の品質管理面からはリン(P)の付着量は重要である。
リン(P)の付着量の下限値である0.05mg/m未満では有機樹脂(R)や金属(M)の析出が不十分で、対内容物耐食性や缶内外面の塗膜密着性が共に劣り好ましくない。
一方、リン(P)の付着量の上限値である2.0mg/mを超えても、有機樹脂(R)や金属(M)の析出による対内容物耐食性や缶内外面の塗膜密着性の向上効果は飽和し経済的でない。
化成処理後に施される缶の内外面塗膜との密着性や、缶内面の耐食性向上からは、基本的には有機樹脂(R)の付着量が重要である。
有機樹脂(R)は直接測定ができないため、付着炭素(C)量として測定され、片面の付着炭素(C)として0.5〜20mg/mである。
炭素(C)量の下限値である0.5mg/m未満では有機樹脂(R)の析出が不十分で、鉄露出部を十分に覆うことができず、対内容物耐食性や缶内外面の塗膜密着性が共に劣り好ましくない。
特に、密着性については、前述したネック加工の高縮径化に対し、特にレトルト殺菌処理を行う場合に塗膜剥離を起こすことがあるので重要な要件となる。
また、缶内面の耐食性についても、実用上問題ない量とは言え、鉄溶出量が多めになることがあり、好ましくない。
一方、炭素(C)量の上限値である20mg/m2を超えても、有機樹脂(R)の析出による対内容物耐食性や缶内外面の塗膜密着性の向上効果は飽和し経済的でない。
【0011】
前述したように、レトルト加熱殺菌処理で発生する外面塗膜の局部浮きは、蓋であるアルミニウムと胴であるスチールとの接触によって起こる「異種金属接触腐食」によるもので、蓋であるアルミニウムが陽極反応として溶解し、胴であるスチール面で陰極反応である酸素の還元反応が起こっている。従って、局部浮きは陰極アルカリピールと判断される。
従って、外面塗膜の局部浮きを防止するには、(1)陰極反応である酸素の還元反応を抑制する表面にすること、(2)もし腐食が起こってもアルカリピールが起こり難い密着力を有する表面にすることが考えられる。
本発明のリン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜の金属(M)は、前述した陰極反応である酸素の還元反応を抑制しており、更に有機樹脂(R)と共存させることで、化成処理皮膜の上層に存在する塗膜がアルカリピールが起こり難い密着力を有する化成処理皮膜となっているものと推定される。
従って、本発明のように有機樹脂(R)と金属(M)を共析させることで、前述した缶外面側の塗膜浮き防止に効果が顕著にみられる。
【0012】
金属(M)の付着量は片面0.05〜2.0mg/mである。
金属(M)の付着量下限値を下回る0.05mg/m未満でも、リン(P)付着量や有機樹脂(R)の付着量が本発明の範囲内であれば、対内容物耐食性や缶内外面の塗膜密着性は確保されるが、金属(M)の付着量下限値を下回る0.05mg/m未満では、前述した酸素の還元反応を抑制する効果は劣り、レトルト加熱殺菌処理で発生する外面塗膜の局部浮きを防止することができず好ましくない。
一方、金属(M)の付着量上限値である2.0mg/mを超えても、レトルト加熱殺菌処理で発生する外面塗膜の局部浮きの防止効果は飽和し経済的でない。
リン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜の場合、缶性能や化成処理の安定性からリン(P)の付着量は、片面0.1〜1.5mg/m、金属(M)の付着量は片面0.1〜1.8mg/m、有機樹脂(R)の付着量は炭素(C)量として片面で1.0〜15mg/mが、特に好ましい範囲である。
更に、リン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜の場合、特にレトルト加熱殺菌処理で発生する缶外面塗膜の局部浮きの防止の点からは、炭素(C)付着量と金属(M)付着量の比である C/M 比が重要で、本発明では1〜100である。
【0013】
炭素(C)量と金属(M)付着量の比である C/M 比は内外面に施される塗膜の密着性とレトルト加熱殺菌処理で発生する缶外面塗膜の局部浮きの防止との兼備と言った観点から重要で、C/M 比が下限値である1未満では、塗膜との密着性が不十分で、缶外面塗膜の局部浮きが起こる危険性があり好ましくはない。
一方、上限値である100を超えても、缶外面塗膜の局部浮き防止効果は飽和する。炭素(C)量と金属(M)付着量の比である C/M 比は、5〜50の範囲が、缶外面塗膜の局部浮き防止効果と化成処理の安定性を考慮すると最適である。
また、リン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜の金属(M)としては、ジルコニウム及び/又はチタニウムを用いるが、特にジルコニウムが缶特性の安定性や化成処理の安定性等から最適である。
本発明を実施する方法は特別なものでなく、現在アルミニウム合金やスチールを素材として製造されているDI缶の脱脂・化成処理方法が適用できる。
具体的には、DI加工後の缶体をアルカリ脱脂した後、例えばリン酸または縮合リン酸とフルオロジルコニウム酸のようなフッ化ジルコニウムやフルオロチタン酸のようなフッ化チタニウム、リン酸スズの一種と水溶性有機樹脂、例えば水溶性フェノール樹脂、水溶性アクリル樹脂等を含む水溶液に必要に応じて、反応性を促進させるためにフッ化水素酸またはフッ化化合物を添加した処理液を、缶体にスプレー塗布した後、水洗、乾燥し硬化させる方法や缶体を処理液に浸漬した後、水洗、乾燥し硬化させる方法等が適宜適用できる。
乾燥硬化方法としては熱風での乾燥、電気炉での乾燥等の方法が適用でき、温度は150℃〜250℃で乾燥時間は10秒〜2分程度である。
【0014】
本発明の有機無機複合化成処理皮膜は、化成処理後の加熱乾燥により有機樹脂の重合反応が起こり、高分子的な皮膜を形成する性質を有している。
しかも、有機樹脂が処理皮膜の表層に富化して存在するため、塗料との密着力が強固なものとなり、前述した、胴部径211径の缶体開口部の204径(直径約54mm)化や202径(直径約52mm)化、更には200径(直径約49mm)化へのネック加工にも耐えるだけでなく高腐食性の内容物に対しても高耐食性を有する優れた缶体が得られる。
従って、高縮径となるネック加工ほど有機無機複合化成処理皮膜は有利である。
本発明のスチ−ルを素材としたDI缶は、従来のリン酸スズ系化成処理に比べ、缶体の品質特性は著しく向上し、対内容物耐食性、缶内外面の塗膜密着性が大幅に改善されるだけでなく、希に発生するレトルト加熱殺菌処理での缶外面塗膜の局部浮きも抑えることができる。また、塗膜密着性が大幅に改善されるので、缶外面に直接装飾印刷を施す代わりに、接着剤層を備えた印刷フィルムを貼着する方法も採用することができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。尚、本実施例で行った評価方法は以下の通りである。
(1)化成処理皮膜の有機樹脂付着量を示す炭素(C)量は、島津製作所(株)製の全有機体炭素計(TOC−5000/SSM−5000A固体試料TOC測定システム)にて測定した。
(2)化成処理皮膜のリン(P)および金属(M)付着量は、理学電機工業株式会社製の蛍光X線(X−RAY SPECTRO−METER)にて測定した。
(3)塗膜のデュポン衝撃密着性評価は、内外面塗装缶のネック加工部を切り出し、300g−30cmの条件でデュポン衝撃試験をおこない、セロファンテープ剥離試験で塗膜の剥離状態を観察した。
◎:塗膜剥離なし ○:微小塗膜剥離僅かに発生
△:塗膜剥離中程度に発生 ×:塗膜剥離大きく発生
(4)塗膜の碁盤目密着性評価は、内外面塗装缶の缶胴部を切り出し、1mm間隔にNTカッター(商品名;折り取りタイプのカッター)で塗膜面に下地金属に達する傷を碁盤目状に100の升目を入れ、125℃で30分間のレトルト加熱処理を行った後セロファンテ−プ剥離試験を行い塗膜の剥離状態を観察した。
◎:塗膜剥離なし ○:塗膜剥離1〜5%発生
△:塗膜剥離6〜15%発生 ×:塗膜剥離16%以上発生
(5)外面塗膜浮き評価は、缶体に水を満注状態で充填し、アルミニウム合金製のEOE缶蓋で巻締めた後、130℃で30分間のレトルト加熱処理を行い、外面塗膜の浮きの発生状況を評価した。
◎:塗膜浮きなし ○:塗膜浮き0.01〜0.1%発生
△:塗膜浮き0.2〜2%発生 ×:塗膜剥離2%以上発生
(6)耐食性評価は、市販のペットボトルに充填されていたお茶またはコ−ラを缶体内に所定量充填し、アルミニウム合金製のEOE缶蓋で巻締めた後、38℃で6ヶ月貯蔵し腐食状況を観察した。
◎:腐食なし ○:僅かに変色程度の表面腐食発生
△:表面腐食発生 ×:塗膜浮き、または鋼板の孔食を伴う腐食発生
【0016】
実験例1
板厚0.22mmの薄鋼板にSnめっきを片面付着量として2.8g/mを両面に施したブリキを用いてDI成形を行い、缶胴外径211径(約66mm)で内容物充填量が350mlの缶になるように開口端面側をトリミングしてスチール製DI缶を作成し、直ちに現行のスチ−ルDI缶用のアルカリ脱脂剤でスプレー脱脂・水洗処理した後、リン酸−フッ化ジルコニウム−水溶性フェノール樹脂−フッ化水素酸からなるリン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)系で濃度、処理時間等の処理条件を変化させ、スプレーで化成処理を行ったのち水洗、純水水洗処理を行い、210℃で40秒間乾燥した。得られた缶の化成処理皮膜量は、それぞれ次の通りである。
リン付着量0.03mg/m、Zr付着量0.02mg/m、C付着量0.31mg/m、C/Mが15.50の化成処理(テスト1)、リン付着量0.07mg/m、Zr付着量0.07mg/m、C付着量0.85mg/m、C/Mが12.14の化成処理(テスト2)、リン付着量0.11mg/m、Zr付着量0.18mg/m、C付着量2.32mg/m、C/Mが12.89の化成処理(テスト3)、リン付着量0.32mg/m、Zr付着量0.31mg/m、C付着量3.54mg/m、C/Mが11.42の化成処理(テスト4)、リン付着量0.56mg/m、Zr付着量0.45mg/m、C付着量7.06mg/m、C/Mが15.69の化成処理(テスト5)、リン付着量1.07mg/m、Zr付着量0.86mg/m、C付着量13.12mg/m、C/Mが15.26の化成処理(テスト6)、リン付着量1.70mg/m、Zr付着量1.78mg/m、C付着量19.75mg/m、C/Mが11.10の化成処理(テスト7)、リン付着量0.95mg/m、Zr付着量0.65mg/m、C付着量0.58mg/m、C/Mが0.89の化成処理(テスト8)。
また、比較のため、前記の缶高さと同一の高さになるようにトリミングしたスチ−ル製DI缶を、脱脂処理は本発明例と同様に行い、化成処理を現行のリン酸Sn系の処理(テスト9)を行ったリン付着量が1.03mg/mの缶も併せて作成した。
次いで、缶の外面には酸化チタンを含有する市販のアクリル・アミノ系白色塗料をロール塗装で150〜160mg/dm塗装し、乾燥・焼き付けを行い、更に印刷を施し、その上に市販のポリエステル・エポキシ・アミノ系クリヤー塗料をロール塗装で60mg/dm塗装してから乾燥・焼き付けを行った後、缶の内面には市販のエポキシ・フェノール系内面用塗料をスプレー塗装で70〜80mg/dm塗装し、乾燥・焼き付けを行った後、内外面塗装缶の開口部に、ネック加工とフランジ加工とを行い、開口部径が202径の缶を作成した。
こうして得た、内外面塗装缶の塗膜密着性を調べるため、デュポン衝撃密着性評価および碁盤目密着性評価を行った。
また、外面のレトルト加熱殺菌処理での塗膜浮きを調べるため、缶体に水を満注状態で充填し、開口部にアルミニウム合金製のEOE缶蓋を巻締めた後、130℃で30分間レトルト加熱殺菌処理を行い、外面塗膜の浮き発生率を評価した。
耐食性を調べるため、市販のペットボトルに充填されていたお茶またはコーラを、缶体内に所定量充填し、開口部にアルミニウム合金製のEOE缶蓋を巻締めた後、38℃で6ヶ月間貯蔵し腐食状況を観察した。
実験例1で行った、本発明のスチール製DI缶の化成処理皮膜および比較例の化成処理皮膜の明細、そして各種の評価結果を表1に示した。
【0017】
【表1】
Figure 0004865163
【0018】
表1から判るように、本発明の化成処理を施したテスト2〜テスト7(本発明例1〜6)のスチール製DI缶は、内外面の塗膜密着性に優れ、また、外面塗膜の浮き発生率に対しても良好な性能を示し、内容物耐食性にも優れていることが判る。
それに反し、テスト1(比較例1)のZr付着量およびC付着量が共に本発明の下限値未満の場合は、内外面の塗膜密着性は劣り、外面塗膜の浮き発生率も高く、内容物耐食性も劣る。また、テスト8(比較例2)のC/Mが1以下の場合も、やはり内外面の塗膜密着性は劣り、外面塗膜の浮き発生率も高い。
また、現行のリン酸Sn系化成処理を施したテスト9(比較例3)の場合、内外面の塗膜密着性は本発明の化成処理皮膜を有する缶と遜色ないが、外面塗膜の浮き発生率は高いことがわかる。
【0019】
実験例2
板厚0.22mmの薄鋼板に、缶の内面に当たる面にはSnめっきを片面付着量として2.8g/m、缶の外面に当たる面にはSnめっきを片面付着量として5.6g/mのブリキを用いて実験例1と同一径のDI成形を行い、実験例1の手順に従いトリミングした後、直ちに現行のスチール製DI缶用のアルカリ脱脂剤でスプレー脱脂・水洗処理した後、リン酸−フッ化チタニウム−水溶性フェノール樹脂−フッ化水素酸からなるリン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)系で濃度、処理時間等の処理条件を変化させ、スプレーで化成処理を行ったのち水洗、純水水洗処理を行い、210℃で40秒間乾燥した。得られた缶の化成処理皮膜量は、それぞれ次の通りである。
リン付着量0.12mg/m、Ti付着量0.07mg/m、C付着量1.51mg/m、C/Mが21.57の化成処理(テスト10)、リン付着量0.35mg/m、Ti付着量0.23mg/m、C付着量3.24mg/m、C/Mが14.09の化成処理(テスト11)、リン付着量0.83mg/m、Ti付着量0.74mg/m、C付着量10.35mg/m、C/Mが13.99の化成処理(テスト12)、リン付着量1.26mg/m、Ti付着量1.36mg/m、C付着量14.72mg/m、C/Mが10.82の化成処理(テスト13)。
また、比較のため、前記の缶高さにトリミングしたスチール製DI缶に脱脂処理は本発明例と同様に行い、化成処理を現行のリン酸Sn系の処理(テスト14)を行ったリン付着量が0.87mg/mの缶も併せて作成した。その後、缶の外面及び内面に、実験例1と同一の塗装及び印刷を施し、更に、内外面塗装缶の開口部に、ネックイン加工とフランジ加工とを行って、開口部径が202径の缶を作成した。
こうして得た、内外面塗装缶を、実験例1の手順に従って、缶の内外面の塗膜密着性、外面塗膜の塗膜浮き発生率および缶内面の耐食性を調べた。
実験2で行った、本発明のスチール製DI缶の化成処理皮膜および比較例の化成処理皮膜の明細、そして各種の評価結果を表2に示した。
【0020】
【表2】
Figure 0004865163
【0021】
表2から判るように、本発明の化成処理を施したテスト10〜テスト13(本発明例7〜10)のスチール製DI缶は、内外面の塗膜密着性に優れ、また、外面塗膜の浮き発生率に対しても良好な性能を示し、内容物耐食性にも優れていることが判る。
一方、比較例である現行のリン酸Sn系化成処理を施したテスト14(比較例4)は、内外面の塗膜密着性は本発明の化成処理皮膜を有する缶と遜色ないが、外面塗膜の浮き発生率は高いことがわかる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の化成処理を施したスチール製DI缶は、缶の内外面に塗装される塗膜の密着性に優れ、また内面の対内容物耐食性にも優れていることから、品質の安定性が向上できる。更に、特に、内容物を充填後にレトルト加熱殺菌処理を行う用途に対しても、希に外面の塗膜浮きが発生することがあるトラブルがほぼ完全に解消できる。こうした優れた特性を有していることから、単に品質が向上できるだけではなく、製造面でも安心して生産できるため、生産性が大幅に向上でき、経済的効果も大きいものがある。

Claims (1)

  1. 絞りしごき加工によって得られるスチール製DI缶において、缶の内外面の鋼板表面にリン(P)−金属(M)−有機樹脂(R)からなる化成処理皮膜が形成されており、該化成処理皮膜におけるリン(P)の付着量片面0.05〜2.0mg/m、金属(M)の付着量が片面0.05〜2.0mg/m、有機樹脂(R)の付着量が炭素(C)量として片面で0.5〜20mg/m金属(M)がジルコニウム及び/又はチタニウムであり、かつ炭素(C)付着量と金属(M)付着量の比 C/M が1〜100であることを特徴とするスチール製DI缶。
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