しかしながら、上記特許文献1のように燃料タンク内にパイプを配管する場合、作業者は、把持したパイプを燃料タンクの開口部から挿入し、手探りでパイプをクリップの保持部に押し込んで保持させており、パイプ及びクリップを視認することができないので、クリップにパイプが確実に保持されたかどうかを確認することは難しかった。クリップにパイプが正常に保持されていないと、自動車等が凹凸のある路面を走行した場合等に、パイプが抜け外れてしまったり、がたついて異音が発生したりする不都合が生じる。
また、燃料タンクの外部や車体パネル等にパイプを配管する場合であっても、パイプをクリップに保持させた際の作業者の感覚(クリック感等)が乏しいときや、組立てライン等において、作業時間が制限されているときときには、クリップにパイプが確実に保持されたかを十分に確認できないこともあった。
したがって、本発明の目的は、クリップに管又は線状物が確実に保持されたかどうかを、たとえ目視でなくても確認できるチェッカー付きクリップを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第1は、
管又は線状物を保持するクリップ本体と、
このクリップ本体に装着され、前記クリップ本体に管又は線状物が保持されると、前記クリップ本体から外すことが可能なチェッカー部材とを備え、
前記クリップ本体は、底板と、この底板から立設した一対の側壁と、前記底板及び前記側壁により形成された保持空間とを有し、前記側壁の少なくとも一方の内側に管又は線状物を抜け止めする突部が突設され、
前記チェッカー部材は、つまみ部と、このつまみ部から突設され、その先端部が前記保持空間に臨まされて、前記底板又は側壁に係合される係止片とを有しており、
前記チェッカー部材が前記クリップ本体に装着された状態で、前記保持空間に管又は線状物が挿入されると、前記係止片が管又は線状物に押圧されて、前記係止片の前記底板又は側壁に対する係合が解除されるように構成されていることを特徴とするチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第1の発明によれば、クリップ本体の底板又は側壁に、チェッカー部材の係止片を係合させることにより、係止片の先端部をクリップ本体の保持空間に臨ませた状態で、クリップ本体にチェッカー部材を装着することができる。そして、クリップ本体の保持空間に、管又は線状物を挿入していき、管又は線状物がクリップ本体に完全に保持されると、この管又は線状物が突部によって抜け止めされると共に、係止片の先端部が押圧されて、底板又は側壁との係合が解除されるので、チェッカー部材をクリップ本体から取外すことができる。一方、管又は線状物がクリップ本体に完全に保持されていない場合には、係止片が底板又は側壁に係合されたままの状態であるので、チェッカー部材を取外すことはできない。
したがって、チェッカー部材をクリップ本体から取外すことができるか否かによって、クリップ本体に管又は線状物が確実に保持されたかどうかを確認することができるようになる。
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記クリップ本体の前記側壁に、前記チェッカー部材の前記係止片が係合する係合孔が形成されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第2の発明によれば、チェッカー部材の係止片が、クリップ本体の側壁から保持空間に突出するようになるので、保持空間内に管又は線状物が挿入された際に、係止片の先端部を撓ませやすくなり、側壁に対する係合をスムーズに解除させることができる。また、係止片を撓ませやすいので、比較的小さな押込力でも管又は線状物をクリップ本体に挿入できる。
本発明の第3は、前記第2の発明において、前記係合孔は、保持された状態の管又は線状物の中心から、該管又は線状物の直径の1/3の範囲にあるチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第3の発明によれば、係合孔の位置を上記の範囲としたので、管又は線状物により係止片が効果的に押圧されて、係止片を撓ませやすくして、側壁に対する係止片の係合をより解除させやすくすることができる。
本発明の第4は、前記第2又は第3の発明において、前記側壁の前記係合孔及び前記突部の間には開口部が形成され、前記チェッカー部材の前記つまみ部からは、前記係止片から所定間隔をおいて舌片が突出しており、前記チェッカー部材を前記側壁に係合させた際に、前記舌片が前記開口部に挿入されるように構成されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第4の発明によれば、側壁に形成された開口部に、チェッカー部材の舌片が挿入するようになっているので、舌片と係止片との間に弾性係合力が発生し、係止片と側壁との係合が解除されても、チェッカー部材が脱落しないようにさせることができる。
本発明の第5は、前記第4の発明において、前記チェッカー部材の前記つまみ部及び前記舌片は、ほぼ同一の軸線上で互いに反対方向に伸びて形成されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第5の発明によれば、チェッカー部材を側壁から取外す際に、開口部から舌片を抜けやすくすることができると共に、係止片を撓ませて抜けやすくすることができる。
本発明の第6は、前記第1の発明において、前記クリップ本体の前記底板に、前記チェッカー部材の前記係止片が係合する係合孔が形成されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第6の発明によれば、チェッカー部材の係止片が、クリップ本体の底板から保持空間に突出して、管又は線状物の保持空間への挿入方向と同じ方向になるので、管又は線状物が保持空間内に挿入されると、管又は線状物からの押圧力が係止片の抜け方向に直接作用して、係止片の底板に対する係合をスムーズに解除させることができる。
本発明の第7は、前記第6の発明において、前記係合孔は、前記保持空間に管又は線状物を挿入した際に、該管又は線状物の中心軸に整合する位置で形成されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第7の発明によれば、保持空間へ管又は線状物が挿入された際に、管又は線状物からの押圧力が効果的に作用するようになるので、係止片の底板に対する係合をよりスムーズに解除させることができる。
本発明の第8は、前記第1の発明において、前記底板の前記側壁が立設されていない辺部に、前記係止片が係合する係合溝が形成されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第8の発明によれば、底板の辺部に形成された係合溝に、チェッカー部材の係止片が係合するようになっており、係止片の外側の撓みが規制されることがないので、係合溝に対する係止片の係合が解除された後、チェッカー部材を簡単に取外すことができる。
本発明の第9は、前記第6〜8の発明のいずれか1つにおいて、前記係止片の先端部における前記底板に係合する部分、又は、前記底板の前記係止片の先端部に係合する部分の少なくとも一方は、テーパ状をなしているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第9の発明によれば、係止片の先端部における底板に係合する部分、又は、底板の係止片の先端部に係合する部分の少なくとも一方が、テーパ状をなしているので、管又は線状物によって係止片の先端部が押圧されたときに、係止片の先端部を底板から滑らせるようにして摺動させて、係止片の底板に対する係合を解除させることができる。
本発明の第10は、前記第1〜9の発明のいずれか1つにおいて、前記クリップ本体と前記チェッカー部材とが複数組設けられ、各チェッカー部材が帯状部材によって連結されているチェッカー付きクリップを提供するものである。
上記第10の発明によれば、管又は線状物の各部を複数のクリップ本体に保持させたとき、複数のチェッカー部材を一度に取外すことができ、作業性を向上させることが可能となると共に、帯状部材により連結されているので、先に取外されたチェッカー部材が紛失する虞れを少なくすることがきる。
本発明のチェッカー付きクリップによれば、クリップ本体にチェッカー部材を装着した状態で保持空間に管又は線状物を挿入して完全に保持されると、管又は線状物が突部によって抜け止めされると共に、係止片の先端部が押圧され底板又は側壁との係合が解除されて、チェッカー部材をクリップ本体から取外すことができる。そのため、チェッカー部材をクリップ本体から取外すことができるか否かによって、クリップ本体に管又は線状物が確実に保持されたかどうかを確認できる。
以下、図面を参照して、本発明のチェッカー付きクリップの一実施形態について説明する。
本発明のチェッカー付きクリップは、燃料パイプ等の管、又はハーネス等の線状物を所定箇所に保持する際に用いられる。図2には、その一例として、燃料タンク1の内部にパイプPを所定箇所に配管する場合が示されている。
図2に示すように、この燃料タンク1は鞍型をなし、その底壁にシャフト等に干渉しないための凹部2が設けられ、この凹部2を挟んでメインタンク室3及びサブタンク室4が形成されている。各タンク室3、4の上面には、取付孔5、6が設けられている。メインタンク室3の底壁には所定量の燃料を貯留するためのチャンバー7が固着されており、このチャンバー7内に取付孔5に取付けられたポンプユニット8が配設されている。なお、ポンプユニット8は、図示しないエンジンの燃料供給系に連結される。
また、燃料タンク1内には、サブタンク室4から燃料を搬送するためのパイプPが配設され、その一端が上記チャンバー7に連結してメインタンク室3側に配置され、他端はフィルタ9が装着されると共にサブタンク室4側に配置されて、チャンバー7内の圧力変動によって、フィルタ9を介してサブタンク室4側の燃料を吸い込んで、チャンバー7に移動させるようになっている。
そして、上記パイプPは、燃料タンク1の凹部2に隣接して配置された一対のセンダー10、10に取付けられたクリップによって、燃料タンク1内の所定箇所に配管される。図2に示すように、センダー10は、リテーナ20を介して燃料タンク1の底壁に固着されている。
図1を併せて参照すると、リテーナ20は、筒状の壁部21と、この壁部21の外周に突設されたフランジ部22とを有し、その内周には開口23を介して突起24が設けられている。
このリテーナ20に取付けられるセンダー10は、基板11と、この基板11の上面の一端から、前述した燃料タンク1の凹部2の傾斜に沿って、上方へ延出する支持部12とを有している。センダー10の基板11には、後述する第1クリップ30の係合脚部50が係合する第1係合孔13が設けられており、そのほぼ中央には、リテーナ20の突起24が挿入される孔14が形成され、リテーナ20に対し位置決めされる。
支持部12は、基板11の対向する辺部から立ち上がる一対の立壁15で形成され、それらの内側面には補強用の格子状のリブ15aが形成され、また、立壁15には第2クリップ31の係合爪部54が係合する第2係合孔16が形成されている。また、基板11の下面から壁部17が突設し、この壁部17の下端部には周方向に対向して一対の突片18、18が突設され、この突片18がリテーナ20の開口23に挿入されて、センダー10を回し込んだときに、リテーナ20のフランジ部22の裏面に係合するようになっている。
上記センダー10には、第1クリップ30及び第2クリップ31が取付けられるようになっている。図1及び図3を併せて参照すると、センダー10の第1係合孔13に係合される第1クリップ30は、底板41と、この底板41から所定間隔を空けて互いに平行に立設した一対の側壁42、42とからなるクリップ本体40を有している。このクリップ本体40の内側は、パイプPを保持するための保持空間43をなしている。また、側壁42の高さ方向(すなわち、底板41に対して垂直な方向)中央よりもやや下側における、側壁42、42の間は当接壁44によって連結されている。この当接壁44にパイプPの外周の下端部が当接して、パイプPの保持高さが規定されている。
側壁42の一方には、当接壁44の上方に、後述するチェッカー部材70の係止片72が挿入される係合孔45が形成され、この係合孔45の上方に開口部46が形成されている。そして、後述するチェッカー部材70の舌片73(図8参照)が、開口部46内に挿入されて、開口部46の下端面に当接すると共に、チェッカー部材70の係止片72の爪部74が、係合孔45の内側の上端部周縁に係合し、該爪部74が保持空間43に臨まされた状態で、チェッカー部材70がクリップ本体40に装着される。
この際、係止片72の爪部74が、側壁42から保持空間43に突出するようになるので、保持空間43内にパイプPが挿入されると、パイプP外周が爪部74を押圧し係止片72を撓ませやすくして、側壁42に対する係合をスムーズに解除させることができる。また、係止片72を撓ませやすくすることができるので、比較的小さな押込力でもパイプPをクリップ本体40に容易に挿入できるようになる。
また、係合孔45は、図8(b)に示すように、保持空間43内にて保持された状態におけるパイプPの径方向の中心O1から、パイプPの直径D1に対して1/3の範囲であるD2に位置するように、側壁42に形成されることが好ましい。こうすると、パイプPを保持空間43内に挿入させた際に、チェッカー部材70の係止片72が効果的に押圧されるようになるので、係止片72を撓ませやすくして、側壁42に対する係止片72の係合をより解除させやすくすることができる。
なお、上記範囲D2よりも下側に係合孔45が形成されている場合は、係止片72を長く形成しなければ、パイプPに当接させることが難しくなるので好ましくない。一方、上記範囲D2よりも上側に係合孔45が形成されている場合には、パイプPを保持空間43内に挿入して、後述する弾性爪部47がパイプP外周の上端部に当接して抜け止めされる前に、係止片72の係合孔45に対する係合が解除される可能性が生じる。こうなると、パイプPが完全に保持されていないにも関わらず、チェッカー部材70がクリップから外れてしまうので、クリップにパイプPが確実に保持されたか否かが分からず好ましくない。
更に、係合孔45のパイプPの挿入方向の長さD3は、図8(a)、(b)を併せて参照すると、チェッカー部材70を装着後、パイプPを挿入して係止片72を撓ませるときに、係止片72を十分に撓ませることが可能な長さで形成されることが好ましい。上記D3が短い場合、係止片72を十分に撓ませることができず、係止片72に過度の押圧力が付与されて破損の虞れが生じる。
また、開口部46のパイプPの挿入方向の長さD4は、舌片73を挿入して開口部46の下端面に配置した状態で、弾性爪部47を撓ませた際に、該弾性爪部47が舌片73に干渉せずに、開口部46の内側まで変形可能な長さで形成されることが好ましい。上記D4が短い場合、弾性爪部47がパイプPの通過の妨げとなって、パイプPを保持空間43内に挿入することができなくなる虞れが生じる。
図3(a)、(b)に示すように、係合孔45及び開口部46が形成された側壁42には、その上端から保持空間43に向かって斜め下方に伸びる弾性爪部47が形成されている。この弾性爪部47は、パイプPを通過させて、パイプPが保持空間43内に挿入された際に、内側に撓んでパイプPの挿入を可能にすると共に、図8(b)に示すごとく、パイプP外周の上端部に当接して、パイプPを押圧して確実に保持すると共に、抜け止めする役割をなしている。また、弾性爪部47の先端部47aは、側壁42側に向けてやや屈曲しており、パイプPの上端部外周との接触面積を多くして抜け止め効果を高めている。
側壁42の他方には、弾性爪部47にほぼ対向して、固定爪部48が保持空間43に向かって突設されている。この固定爪部48も、上記弾性爪部47と同様に、保持空間43内に挿入されたパイプPの保持及び抜け止めの役割をなしている。また、この固定爪部48を設けたことにより、パイプPを保持空間43内に挿入すると、固定爪部48によりパイプPが弾性爪部47側に押圧されて、その結果、弾性爪部47を撓ませてチェッカー部材70の係止片72に効果的に押圧させることができるので、保持空間43内にパイプPを挿入しやすくなる。
上記弾性爪部47と固定爪部48が、本発明における管又は線状物を抜け止めする突部をなしている。
図3(a)に示すように、第1クリップ30の底板41における、側壁42、42とは反対側の面からは、センダー10の第1係合孔13に係合する係合脚部50が突設されている。この係合脚部50の両側部には、コ字状のスリット51によって切り掛かれた一対の弾性係合片52、52が形成されている。この弾性係合片52は、係合脚部50の先端側から基端側に向けて次第に高さが高くなるテーパ形状をなし、その先端部には段部53、53が形成され、この段部53が第1係合孔13の裏側周縁に係合して、センダー10に第1クリップ30が取付けられるようになっている。
図4には、センダー10の立壁15に取付けられる第2クリップ31が示されている。この第2クリップ31は、センダー10への係合部を除いて、上記第1クリップ30とほぼ同一の形状をなしているので、第1クリップ30と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この第2クリップ31は、センダー10に係合させるための係合部が相違する。すなわち、この第2クリップ31は、固定爪部48が設けられた側壁42の外側に、係合片54が設けられている。係合片54は、側壁42の高さ方向ほぼ中央の端縁から、上方から見てL字状に延設された腕部55と、この腕部55の先端から側壁42側に突設された爪部56とから構成され、この爪部56がセンダー10の立壁15の第2係合孔16に係合して、センダー10に第2クリップ31が取付けられるようになっている。
図1及び図5には、第1クリップ30及び第2クリップ31に装着されるチェッカー部材70が示されている。図5(a)及び(c)に示すように、この実施形態の場合、一対のチェッカー部材70、70が、帯状部材80によって連結した構造をなしている。そのため、パイプPをクリップ本体40に確実に保持すれば、複数のチェッカー部材70を一度に取外すことができるので、作業性を向上させることが可能となる。また、一対のチェッカー部材70は、帯状部材80により連結されているので、先に取外されたチェッカー部材70が、燃料タンク1内に落下して紛失する虞れを少なくできる。
チェッカー部材70は、作業者の把持用のつまみ部71と、このつまみ部71先端の側部からL字状に突設して、係合孔45周縁に係合する係止片72と、つまみ部71と同一軸上で突出して、開口部46に挿入される舌片73とで構成されている。また、係止片72の先端には、舌片73に向けて突出した爪部74が形成されている。
また、爪部74の両面にはテーパ面74a、74bが形成されている。テーパ面74aは、パイプPが保持空間43に挿入された際に、パイプP外周に当接して係止片72を撓ませつつ抜け方向に押される作用をなす。また、図8(b)に示すように、パイプPが弾性爪部47及び固定爪部48により抜け止め保持された際に、テーパ面74aにパイプP外周が当接し、テーパ面74bは、係合孔45の下端部周縁に当接する。そのため、係止片72の先端部がパイプPと係合孔45の下端周縁とに挟まれて、クリップ本体40からチェッカー部材70が直ちに抜け外れないように保持可能となっている。なお、爪部74にテーパ面74bを形成することにより、チェッカー部材70の取外しやすさを確保している。また、図5(b)に示すように、舌片73の幅W1は、係止片72の幅W2よりもやや小さく形成されており、開口部46への挿入のしやすさ、及び、開口部46からの取外しやすさを確保している。
更に、側壁42の開口部46に舌片73が挿入されて、開口部46の下端面に舌片73が支持された状態で、係合孔45に係止片72が挿入されるので、舌片73と係止片72との間に弾性係合力が発生し、係止片72と側壁42との係合が解除されても、チェッカー部材70が脱落しないようにさせることができる。
また、チェッカー部材70のつまみ部71及び舌片73は、ほぼ同一軸上で互いに反対方向に伸びて形成されているので、チェッカー部材70を側壁42から取外す際に、開口部46から舌片73を抜けやすくすることができると共に、係止片72を撓ませやすくすることができる。
次に、本発明のチェッカー付きクリップを用いて、燃料タンク1内にパイプPを配管する工程の一例について説明する。
すなわち、燃料タンク1の底壁に予め固着したリテーナ20の開口23に、センダー10の突片18を挿入し回転させて、突片18をリテーナ20のフランジ部22裏側に係合させて、リテーナ20にセンダー10を取付けておく。
そして、センダー10の第1係合孔13に第1クリップ30を取付ける。すなわち、第1係合孔13に、第1クリップ30の係合脚部50を挿入すると、第1係合孔13周縁に弾性係合片52が押圧されて内側に撓み、段部53が第1係合孔13に達すると、弾性係合片52が弾性復帰して、第1係合孔13の裏側の周縁に係合して、第1クリップ10がセンダー10に取付けられる。
同様に、センダー10の第2係合孔16に第2クリップ31を取付ける。この場合は、第2係合孔16に第2クリップ31の係合爪部54を挿入して、爪部56をセンダー10の立壁15の端部に係合させると共に、側壁42の外側面がセンダー10の立壁15に当接して保持されるので、センダー10に第2クリップ31が取付けられるようになる。
こうして、センダー10に第1クリップ30及び第2クリップ31を取付けた後、一対のチェッカー部材70を各クリップ30、31に装着させる。すなわち、チェッカー部材70の舌片73及び係止片72を、側壁42の開口部46及び係合孔45に整合させて押し込むと、舌片73が開口部46の下端面に摺接しつつ、係合孔45の上端部周縁にテーパ面75aが押圧されて係止片72が外側に撓み、係合孔45を乗り越えると弾性復帰して、係合孔45の内側の上端部周縁に爪部74が係合し、チェッカー部材70の先端部である爪部74を保持空間43に臨ませた状態で(図8(a)参照)、図6に示すごとく一対のチェッカー部材70のそれぞれを、各クリップ30、31のクリップ本体40に装着することができる。
そして、各クリップ30、31にパイプPを保持させる。この実施形態の場合、燃料タンク1の取付孔5又は6から燃料タンク1内にパイプPを挿入して、手探りで各クリップ30、31に保持させる。すなわち、各クリップ30、31のクリップ本体40の保持空間43に、図6、及び、図8(a)の矢印に示すようにパイプPを挿入していくと、パイプPが固定爪部48により弾性爪部47側に押圧されて、弾性爪部47が内側に撓むと共に、爪部74のテーパ面74aがパイプP外周に押圧されて、係止片72が撓んでいき、パイプPが保持空間43の下端面にまで押し込まれると、弾性爪部47が弾性復帰し、その先端部47aがパイプPの上端部外周に当接して固定爪部48と相俟って、パイプPを抜け止めした状態でクリップ本体40に完全に保持させることができる(図7参照)。
また、その状態では、係止片72の係合孔45に対する係合も解除されるので、図8(b)の矢印方向にチェッカー部材70を引っ張ることにより、チェッカー部材70をクリップ本体40から取外すことができる。このとき、テーパ面74bが係合孔45の下端周縁に当接すると共に、テーパ面74aがパイプPに当接してその摩擦力によって一時的に保持されるので、クリップ本体40からチェッカー部材70が直ちに抜け外れないようにされている。一方、パイプPがクリップ本体40に完全に保持されていない場合には、係止片72の爪部74が、係合孔45の上端部周縁に係合されたままの状態であるので、チェッカー部材70を取外すことはできない。
したがって、チェッカー部材70を各クリップ30、31のクリップ本体40から取外すことができるか否かによって、各クリップ30、31にパイプPが確実に保持されたかどうかを確認することができるようになる。そのため、図1に示す鞍型の燃料タンク1の内部にパイプPを配設する場合のように、パイプPのクリップ本体40に対する保持状態を視認できない場合等であっても、クリップ本体40にパイプPを確実に保持することができるので、パイプPの組付け作業の信頼性を向上させることができる。
図9及び10には、本発明のチェッカー付きクリップの他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態においては、チェッカー部材70aをクリップ本体40aの底板41に、係合させる点が前記実施形態と相違する。
すなわち、底板41の側壁42が立設していない側の対向する辺部であって、そのほぼ中央には、チェッカー部材70aの係止片72a、72aが係合する一対の係合溝49、49が形成されている。すなわち、この係合孔としての係合溝49は、保持空間43内にパイプPを挿入した際に、該パイプPの中心軸O2に整合する位置で形成されている。一方、チェッカー部材70aは、つまみ部71と、このつまみ部71の先端から2股に分かれて軸方向に延出した一対の係止片72a、72aとからなり、更に係止片72aの先端が内側に突出して爪部75が形成されている。両爪部75の内側には、テーパ面75a、75bが形成されている。
そして、チェッカー部材70aをクリップ本体40aに取付ける際には、底板41の下側から爪部75を係合溝49に整合させて押し込んで、係合溝49周縁にテーパ面75aが押圧されて係止片72aが外側に撓み、係合溝49を通過すると、テーパ面45bが係合溝49の上側周縁に係合して、爪部75が保持空間43に臨まされた状態で、図10(a)に示すようにチェッカー部材70aがクリップ本体40aに取付けられる。
そして、パイプPを保持させるべく図10(a)に示すように保持空間43内に挿入すると、パイプP外周に弾性爪部47が押圧されて内側に撓むと共に、テーパ面75aが押圧されて係止片72が外側に撓み、パイプPが保持空間43の下端面にまで押し込まれると、弾性爪部47が弾性復帰して、その先端部47aがパイプPの上端部外周に当接して、図10(b)に示すように、パイプPを抜け止めした状態でクリップ本体40に完全に保持させることができる。このとき、チェッカー部材70aは、爪部75のテーパ面75bが係合溝49の内周面に当接して、クリップ本体40からチェッカー部材70aが抜け外れないように保持される。
この実施形態によれば、チェッカー部材70の係止片72aが、クリップ本体40の底板41から保持空間43に突出して、パイプPの保持空間43への挿入方向と同じ方向で、係止片72aが突出するようになるので、パイプPが保持空間43内に挿入されると、パイプPからの押圧力が係止片72aの先端部である爪部75に直接作用して、係止片72aの底板41に対する係合をスムーズに解除させることができる。
また、係合溝49は、保持空間43にパイプPを挿入した際に、該パイプPの中心軸O2に整合する位置で形成されているので、保持空間43へパイプPが挿入された際に、パイプPからの押圧力が効率的に爪部75に作用するようになるので、係止片72aの底板41に対する係合をよりスムーズに解除させる。
更に、底板41の側壁42が立設されていない端部に係合溝49が形成されて係止片72aが係合するようになっており、係止片72aの外側への撓みが規制されることがないので、係合溝49に対する係止片72aの係合が解除された後、チェッカー部材70を簡単に取外すことができる。
図11〜13には、本発明のチェッカー付きクリップそれぞれの他の実施形態が示されている。
図11に示す実施形態の場合、チェッカー部材70bは、つまみ部71からやや斜めに突設した腕部76を介して一対の係止片72aが形成されており、つまみ部71から底板41の裏側に当接する基部77が形成されている。
この形状の場合、係止片72aは、腕部76の長さD5の分だけ、撓みやすくなっている。すなわち、腕部76の長さD5にパイプPからの押圧力Fが作用して、曲げモーメントM=F×D5が、係止片72aの基端部O3に作用するようにようになるので、外側に撓みやすくされている(図11中、想像線参照)。
また、この形状においては、係止片72aの底板41に係合する部分にテーパ面75bが形成されているので、パイプPによって係止片72aが押圧されたときに、係止片72aの爪部75を底板41から滑らせるように摺動させて外側に開かせ、係止片72aの底板41に対する係合を解除させることができる。
図12に示す実施形態では、底板41の側壁42の内側に、一対の係合孔45a、45aが形成されている。この形状の場合、パイプPに爪部75が押圧されると、下側のテーパ部75bが係合孔45a周縁に押圧されて、係止片72aが外側に撓んで(図12中、想像線参照)、チェッカー部材70aを底板41から取外し可能とされている。
図13に示す実施形態の場合、両側壁42、42の下方に係合孔45bが設けられており、一方、チェッカー部材70cは、つまみ部71に対向して突起78が形成されている。また、底板41のほぼ中央には、チェッカー部材70cの突起78を突出させるための孔41bが形成されている。そして、チェッカー部材70cは、突起78を底板41の孔41bから突出させた状態で、爪部75のテーパ面75bが係合孔45bの下端部周縁に係合して底板41に取付けられる。そのため、パイプPが保持空間43内に挿入されると、突起78の上端面を押圧して、その押圧力が左右の係止片72aに伝達されて、図13の想像線で示すように外側に撓ませる。このとき、係合孔45bの下端部周縁には爪部75のテーパ面75bが係合した状態であるので、パイプPを保持しつつ、クリップ本体40からチェッカー部材70cが直ちに抜け外れないように仮保持されると共に、つまみ部71を引っ張ることによって引き抜き可能とされる。