JP4475486B2 - ポジ型感光性平版印刷版及びその製版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポジ型感光性平版印刷版に関する。更に詳しくは、650〜1300nmの波長域の光線、特に、半導体レーザーやYAGレーザー等を用いた直接製版に好適なポジ型感光性平版印刷版。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光あるいはサーマルヘッド等により、直接レジスト画像を形成する感光または感熱ダイレクト製版システムが注目されている。特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザーを用いる、高解像度のレーザー感光ダイレクト製版システムは、小型化、製版作業時の環境光や版材コストの面から、その実現が強く望まれていた。
【0003】
レーザー感光ダイレクト製版用の印刷版のなかで、最近、赤外線レーザーを用い、主として化学変化以外変化によって露光部の現像液に対する溶解度を増大させることによりポジ画像を形成する方法が注目を集めており、例えば特開平10−268512号公報、特開平11−194504号公報、特開平11−223936号公報、特開平11−84657号公報、特開平11−174681号公報、WO97/39894、WO98/42507等に開示されている。
従来のポジ型感光性平版印刷版が、典型的にはo−キノンジアジド化合物の光分解により、即ち化学変化により現像液に対する溶解度を増大させ、これを画像形成に利用したのに対し、上記の各文献に記載されたポジ型感光性平版印刷版は、赤外吸収色素等の赤外光を吸収して熱に変換する物質とノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂とを主な感光層成分とし、赤外レーザー光露光で発生した熱によって、樹脂のコンフォメーション変化等の物理変化を起こして現像液に対する溶解度を増大させるものである。
【0004】
非化学変化による溶解性の増大を利用したポジ型感光性平版印刷版は、o−キノンジアジド化合物のような白色光に感光する物質を必要としないので、印刷版の取り扱いが白色灯下でも行える利点を有する。
しかしながら、このような印刷版は、化学変化を利用していないので、露光部と未露光部との溶解速度差が小さく、感度、現像ラチチュード(現像時に露光部が完全に除去される迄の時間と、現像時も未露光部の残膜率が十分に確保される時間の差)等の印刷版の基本性能、現像処理枚数を増やしたときの現像処理安定性等を全て満足させるのは困難であった。
【0005】
この問題に対し感光層の膜厚を薄くすることが考えられるが、熱変換型の感光層の場合、薄くしすぎると支持体への熱拡散が増えるため逆に感度が低下する問題があった。更に保存性、耐刷、耐薬品性に対しても経時変化や保存状態の影響を大きくうけていた。特に耐薬品性や耐刷性を向上させるために感光素材の中のバインダー成分の分子量等を変更するとアルカリ溶解性が悪くなり現像性に難を与えた。この様に常に該耐薬品性および保存性ならびに耐刷性は、感度や現像性といった性能に対して相反し、ポジ型感光性平板印刷版として要求される性能としては、満足いくものではなかった。
【0006】
又、例えば特開2000−105454には、ノボラック樹脂と光熱変換物質を含むポジ型感光性組成物に、界面活性剤を含有すること、好ましく、HLB8以上、特に好ましくはHLB10以上の非イオン性界面活性剤又はフッ素系界面活性剤を添加することにより、画線部の残膜率が向上することが記載され、HLB11.5以上の界面活性剤を使用した例が示されている。
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、感光性組成物に界面活性剤を含有するこの方法においても、現像ラチチュードが依然狭く、実用上は、現像処理における非画線部の除去と、画線部の高い残膜率を同時に実現するという点においては更に改善が必要であることが分かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、現像ラチチュード、つまり感度とアルカリ現像後の未露光部の残膜率とが共に優れ、且つ現像液で多量の枚数を現像処理した場合にも処理安定性を損なわない感光性平版印刷版を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、感光層の現像ラチチュードを高めるためには、感光層中にHLBの低い界面活性剤を含有することが有効であり、一方、現像処理に対する安定性を良好にするにはHLBの高い界面活性剤を含有させることが有効であることを見いだし本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、支持体上に、(A)光熱変換物質、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)HLB10未満の界面活性剤、及び(D)HLB10以上の界面活性剤を含有するを含有するポジ型感光性組成物層を有する感光性平版印刷版に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する感光性組成物層を設ける支持体としては、アルミニウム、亜鉛、鋼、銅等の金属板、並びにクロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等がメッキ又は蒸着された金属板、紙、プラスチックフィルム及びガラス板、樹脂が塗布された紙、アルミニウム等の金属箔が張られた紙、親水化処理したプラスチックフィルム等のシート等が挙げられる。このうち好ましいのはアルミニウム板である。本発明の感光性平版印刷版の支持体としては、塩酸または硝酸溶液中での電解エッチングまたはブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶媒中での陽極酸化処理および必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されているアルミニウム板を用いることがより好ましい。
【0012】
支持体表面の粗面度に関しては、一般的に、表面粗さRaの値で示される。これは表面粗度計を用いて測定することができる。本発明において用いられる支持体としてはその平均粗さRaとして0.3〜1.0μmのアルミニウム板が好ましく、更に、0.4〜0.8μmのものがより好ましい。本支持体は必要に応じ、更に有機酸化合物による表面処理を施して用いることができる。
【0013】
本発明のポジ型感光性組成物に用いられる第1成分である(A)「光熱変換物質」について述べる。これら光熱変換物質としては、吸収した光を熱に変換し得る化合物であれば特に限定されないが、波長域650〜1300nmの近赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する有機又は無機の顔料や染料、有機色素、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硼化物等が挙げられる中で、光吸収色素が特に有効である。これらの光吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色灯に含まれるような弱い紫外線によっては感光性組成物を変成させる作用のない化合物である。
【0014】
これらの光吸収色素としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等を含む複素環等がポリメチン(−CH=)n で結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられ、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、狭義のシアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、オキサゾール系(所謂、オキサシアニン系)、アミノベンゼン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系、アミニウム系、イモニウム系、フタロシアニン系、アントラキノン系等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、アミノベンゼン系、ピリリウム系、又はチアピリリウム系、アミニウム系、イモニウム系色素が好ましい。
【0015】
本発明においては、前記シアニン系色素の中で、キノリン系色素としては、特に、下記一般式(Ia) 、(Ib)、又は(Ic)で表されるものが好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
〔式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)中、R1及びR2は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、L1は置換基を有していてもよいトリ、ペンタ、又はヘプタメチン基を示し、該ペンタ又はヘプタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、キノリン環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。X-は対アニオンを示す。〕
ここで、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)中のR1及びR2における置換基としては、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、又はフェニル基等が挙げられ、L1 における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、キノリン環における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0018】
又、インドール系、ベンゾチアゾール系色素及びベンゾオキサゾール系色素としては、特に、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
〔式(II)中、Y1及びY2は各々独立して、ジアルキルメチレン基、硫黄原子又は酸素原子を示し、R3及びR4は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、L2は置換基を有していてもよいトリ、ペンタ、又はヘプタメチン基を示し、該ペンタ又はヘプタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、縮合ベンゼン環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。X-は対アニオンを示す。〕
ここで、式(II)中のR3及びR4における置換基としては、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、又はフェニル基等が挙げられ、L2における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、ベンゼン環における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0021】
又、アミノベンゼン系色素としては、特に、下記一般式(III) で表されるものが好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
〔式(III) 中、R5、R6、R7、及びR8は各々独立して、アルキル基を示し、R9及びR10は各々独立して、置換基を有していてもよいアリール基、フリル基、又はチエニル基を示し、L3は置換基を有していてもよいモノ、トリ、又はペンタメチン基を示し、該トリ又はペンタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、キノン環及びベンゼン環は置換基を有していてもよい。X-は対アニオンを示す。〕
ここで、式(III) 中のR9及びR10として具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基等が挙げられ、それらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、L3における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、キノン環及びベンゼン環における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0024】
又、ピリリウム系、及びチアピリリウム系色素としては、特に、下記一般式(IVa) 、(IVb) 、又は(IVc) で表されるものが好ましい。
【0025】
【化4】
【0026】
〔式(IVa) 、(IVa) 、及び(IVc) 中、Y3及びY4は各々独立して、酸素原子又は硫黄原子を示し、R11、R12、R13、及びR14は各々独立して、水素原子又はアルキル基、又は、R11とR13、及びR12とR14が互いに連結して炭素数5又は6のシクロアルケン環を形成していてもよく、L4は置換基を有していてもよいモノ、トリ、又はペンタメチン基を示し、該トリ又はペンタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、ピリリウム環及びチアピリリウム環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。X-は対アニオンを示す。〕
ここで、式(IVa) 、(IVa) 、及び(IVc) のL4における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、ピリリウム環及びチアピリリウム環における置換基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0027】
更に、アミニウム系、及びイモニウム系色素としては、N,N−ジアリールイミニウム塩骨格を少なくとも1個有するものが好ましく、特に、下記一般式(Va)、又は(Vb)で表されるものが好ましい。
【0028】
【化5】
【0029】
〔式(Va)、及び(Vb)中、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、及びR22は各々独立して、水素原子、アルキル基、又はフェニル基を示し、キノン環及びベンゼン環は置換基を有していてもよい。X-は対アニオンを示す。尚、式(Vb)中の電子結合(─)は他の電子結合との共鳴状態を示す。〕
ここで、式(Va)、及び(Vb)中のキノン環及びベンゼン環における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0030】
尚、前記一般式(Ia 〜c)、(II)、(III) 、(IVa〜c)、及び(Va 〜b)における対アニオンX-としては、例えば、Cl-、Br-、I-、ClO4 -、PF6 -、及び、BF4 -等の無機硼酸等の無機酸アニオン、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、酢酸、及び、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等の有機基を有する有機硼酸等の有機酸アニオンを挙げることができる。
【0031】
以上、前記一般式(Ia 〜c)で表されるキノリン系色素、前記一般式(II)で表されるインドール系又はベンゾチアゾール系色素、前記一般式(III)で表されるアミノベンゼン系色素、前記一般式(IVa〜c)で表されるピリリウム系又はチアピリリウム系色素、及び前記一般式(Va 〜b)で表されるアミニウム系又はイモニウム系色素は、感度の点で有利である。
以下に好ましく用いられる光熱変換物質の具体例を示す。
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
これらの熱変換物質の本発明のポジ型感光性組成物中における含有割合は、重量比で通常0.5〜30%、好ましくは1〜20%,更に好ましくは2〜10%、特に3〜10%である。特に、後述の界面活性剤との組み合わせにおいては、光熱変換物質の含有量を比較的高くすることが可能であり、その結果、感度、現像ラチチュードが特に改善される点で好ましい。
【0044】
次に、本発明のポジ型感光性組成物に用いられる第2成分である(B)「アルカリ可溶性樹脂」(以下、高分子または樹脂と称することがある)について説明する。該アルカリ可溶性樹脂は、基本的には、上記(A)成分の光熱変換物質との組み合せに於て、露光部と未露光部が主として化学変化以外の変化によって、アルカリ現像液に対する溶解性に差を生じうる高分子であり、当然該高分子自体が、主として化学変化以外の変化によって、アルカリ現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物である場合を含む。このような高分子としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル酸誘導体の共重合体等のアルカリ可溶性樹脂等が挙げられるが、これらのうちノボラック樹脂を含有するのが好ましい。
【0045】
ノボラック樹脂としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシン、ピロガロール、ビスフェノール、ビスフェノール−A、トリスフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール等の芳香族炭化水素類の少なくとも1種を酸性触媒下、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類及び、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類から選ばれた少なくとも1種のアルデヒド類又はケトン類と重縮合させたものが挙げられる。
【0046】
ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの代わりに、それぞれパラホルムアルデヒド及びパラアルデヒドを使用してもよい。ノボラック樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)測定によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、GPC測定による重量平均分子量をMwと略す)は、好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上、また好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下のものが用いられる。
【0047】
ノボラック樹脂の芳香族炭化水素類としては、より好ましくは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、及び3,5−キシレノール、レゾルシンから選ばれる少なくとも1種のフェノール類をホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類の中から選ばれる少なくとも1種と重縮合したノボラック樹脂が挙げられる。
【0048】
中でも、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシンの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20のフェノール類または、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。アルデヒド類の中でも、特にホルムアルデヒドが好ましい。尚、後述する如く、本発明の感光性組成物は、更に溶解抑止剤を含んでいても良く、その場合、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシンの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20のフェノール類または、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。
【0049】
ノボラック樹脂以外の樹脂としては、例えば特開2000−105454号公報に記載のアルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でも混合して用いても良い。
上述の樹脂のうち、特に、ノボラック樹脂を含有するのが感度・現像ラチチュードの点で好ましい。ポジ型感光性組成物中におけるこれら樹脂の含有割合は重量比で好ましくは50%〜99%であり、より好ましくは60%〜99%、特に好ましくは70〜98%である。
【0050】
次に本発明に用いられる感光層中には、(C)「HLBが10未満の界面活性剤」(以下、親油性界面活性剤と称することがある)、及び(D)「HLBが10以上の界面活性剤」(以下、親水性界面活性剤と称することがある)を含有する必要がある。親油性界面活性剤としては好ましくは、HLBは9以下であり、更に好ましくは8.5以下であり、好ましくは3以上であり、更に好ましくは5以上である。また、親水性界面活性剤としては好ましくはHLBは11以上であり、更に好ましくは12以上であり、好ましくは18以下であり、更に好ましくは16以下である。
【0051】
本発明に用いられる感光層に親油性界面活性剤と親水性界面活性剤とを併用した場合に優れた効果を発揮する理由は必ずしも明確ではないが、以下のように推定している。
【0052】
印刷版を現像すると、現像液の処理劣化が進む。現像液の劣化のプロセスは以下のように推定している。ポジ型で有れば感光性組成物層の未露光部が現像液中に溶出するので現像枚数が増えるに従って感光性組成物の濃度が増大していく。現像液中の感光性組成物の濃度が高くなると、その分アルカリ現像液に対する印刷版上の感光性組成物層の親和性が大きくなり(現像性が高くなり)、未露光部の溶解性までも高くなるので、結果として膜べりを生ずるものと推定される。ここで、現像液中に親水性界面活性剤があると、現像液と印刷版上の感光性組成物層の親和性が押さえられて膜べりを減ずる(残膜率を向上させる)ことが出来るものと推定されるが、感光層中に、膜べり防止効果のある親水性界面活性剤を含有させておくと、溶けだした感光性組成物に比例して親水性界面活性剤も現像液に供給されるのである。従って、感光層の膜べり防止効果のある親水性界面活性剤を、感光層中に含有させることにより、印刷版の処理枚数の増加による現像液の劣化に対する処理安定性が向上するものと推定される。
【0053】
本発明に用いられる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性等のいずれも可能であるが、特に好ましいものとしては非イオン性界面活性剤が挙げられ、エーテル型、エステル型、アミノエーテル型、エーテルエステル型、アルカノールアミド型のもの等が挙げられる。具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。なかでも好ましいものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0054】
より好ましいものはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルであり、特にポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルであるのが好ましい。上述の界面活性剤は同系であっても、例えばオキシエチレン繰り返し単位の繰り返し数が異なることによってHLBも異なってくるので、HLBが10未満のものと、HLBが10以上のものをそれぞれ選択して併用する。
【0055】
本発明のポジ型感光性組成物中におけるHLB10未満の界面活性剤の含有量は少な過ぎると現像ラチチュードが小さくなる傾向にあり、多過ぎてもまた現像ラチチュードが小さくなる傾向にあるため、含有量は好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1%以上、特に好ましくは2%以上であり、また、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下である。
また、HLB10以上の界面活性剤の含有量は、少なすぎると十分な膜べり防止効果が得られず、多すぎると現像ラチチュードが小さくなる傾向にあるので、好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.5%以上であり、また、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下である。
また、HLB10以上の界面活性剤の含有量は、少なすぎると十分な膜べり防止効果が得られず、多すぎると現像ラチチュードが小さくなる傾向にあるので、好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.15%以上であり、また、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。
また、低HLB、すなわち親油性界面活性剤と高HLB、すなわち親水性界面活性剤の含有割合としては、好ましくは40:1〜1:10であり、更に好ましくは30:1〜1:5であり、特に好ましくは20:1〜1:1である。
【0056】
本発明の感光性組成物層中には、感光性組成物のアルカリ現像液に対する溶解性を減少させる性質を有する溶解抑止剤を含有することができる。本発明に用いられる溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報、特開平11−288089号公報等に記載のスルホン酸エステル、リン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミンおよび芳香族エーテル化合物、トリアリールメタン骨格を有する化合物を挙げることができる。また、特開平11−190903号公報等に記載のラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、スルホラクトン骨格を有する塩基発色色素も挙げることができる。
【0057】
又、本発明の感光層中には、熱の作用によりアルカリ可溶性樹脂を架橋し得る作用を有する化合物(以下、熱架橋性化合物と略すことがある)を含有していても良い。熱架橋化合物を感光層中に含有させた場合には、露光後に後加熱処理を行うことによって、アルカリ可溶性樹脂を架橋することができ、その結果、耐薬品性、耐刷性を向上させることができる。かかる熱架橋性化合物としては、通常150℃〜300℃に加熱することによりアルカリ可溶性樹脂を架橋しうる化合物が挙げられる。
【0058】
熱架橋性化合物としては、熱架橋性を有する含窒素化合物が挙げられ、好ましくは、アミノ基を含有する化合物であり、より具体的には例えば、官能基としてメチロール基、それのアルコール縮合変性したアルコキシメチル基、その他、アセトキシメチル基等を少なくとも二個有するアミノ化合物が挙げられる。アミノ基を有する化合物の中でも、構造中に複素環構造、特に含窒素複素環構造を有するのが好ましく、メラミン骨格を有する化合物が好ましい。具体的は、例えば、かかる熱架橋性化合物としては、特開平11−202481号公報に記載の熱架橋性化合物等が挙げられる。
【0059】
なお、本発明の感光性組成物は、その性能を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば染料、顔料、塗布性改良剤、現像改良剤、密着性改良剤、感度改良剤、感脂化剤等を含有することも可能である。又、発色の原因がカチオンまたはアニオンの非極在化によるイオン性色素を含むことも可能であり、具体的にはシアニン色素、アズレニウム色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、オキサジン色素、アジン色素、ピリリウム色素、チオピリウム色素、ピオローゲン色素、キサンテン色素、ローダシアニン色素、スチリル色素等が挙げられる。尚、かかるイオン性色素としては、光熱変換物質として使用されうる色素とは区別されるものであり吸収極大(λmax)が700nm以下にある色素である。これらのうち好ましいものはその構造中にトリフェニルメチル基を部分構造として有するトリフェニルメタン色素であり、具体的にはC.I.No.で表わすと、C.I.BasicViolt3、C.I.BasicBlue5、C.I.BasicGreen1、C.I.BasicBlue26、C.I.AcidBlue1、C.I.solventBlue2、C.I.BasicBlue7等が挙げられ、東京化成(株)製クリスタルバイオレット、住友化学(株)製PrimocyanineBxconc.、保土谷化学(株)製AizenDiamondGreenGH、AizenVictoriaBlueBH、AizenBrilliantAcidPureBlueVH、アイゼンビクトリアピアブルーBOH、BASF製VictoriaBlue4RBase等が挙げられる。
【0060】
本発明の感光性平版印刷版は、上記成分(A)の光熱変換物質、成分(B)のアルカリ可溶性樹脂及び成分(C)のHLBが10未満の界面活性剤、(D)のHLBが10以上の界面活性剤、更には、必要に応じて、溶解抑止剤、その他の添加剤を適当な溶媒に溶解し、支持体上に塗布・乾燥することにより得られる。溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与える溶媒であれば特に制限はないが、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール系溶媒、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの高極性溶媒、あるいはこれらの混合溶媒、さらにはこれらに芳香族炭化水素を添加したものなどが挙げられる。溶媒の使用割合は、感光性組成物の総量に対して通常重量比として1〜20倍程度の範囲である。
【0061】
本発明に使用する感光性組成物を支持体表面に設ける際に用いる塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布及びカーテン塗布等を用いることが可能である。
感光層の膜厚は、1〜3μm、重量膜厚で13〜30mg/dm2が好ましく、更に好ましくは1〜2μm、16〜28mg/dm2が好ましい。
【0062】
上述の様にして得られたのポジ型感光性平版印刷版は、レーザー光によって画像露光した後、アルカリ現像液で現像してポジ画像を形成する。
ここで、ポジ型感光性平版印刷版を画像露光する光源としては、主として、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられるが、特に、光を吸収して発生した熱により画像形成させる場合には、波長域650〜1,300nmの範囲の近赤外レーザー光線を発生する光源が好ましく、例えば、ルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、LED等の固体レーザーを挙げることができ、特に、小型で長寿命な半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。
【0063】
尚、レーザー光源は、通常、レンズにより集光された高強度の光線(ビーム)として感光性組成物層表面を走査するが、それに感応する本発明での感光性組成物層の感度特性(mJ/cm2)は受光するレーザービームの光強度(mJ/s・cm2)に依存することがある。ここで、レーザービームの光強度は、光パワーメーターにより測定したレーザービームの単位時間当たりのエネルギー量(mJ/s)を感光性組成物層表面におけるレーザービームの照射面積(cm2)で除することにより求めることができる。レーザービームの照射面積は、通常、レーザーピーク強度の1/e2強度を越える部分の面積で定義されるが、簡易的には相反則を示す感光性組成物を感光させて測定することもできる。
【0064】
本発明の感光性平版印刷版の露光にあたっては、光源の光強度として、2.0×106 mJ/s・cm2以上とすることが好ましく、1.0×107mJ/s・cm2以上とすることが特に好ましい。光強度が前記範囲であれば、本発明でのポジ型感光性組成物層の感度特性を向上させ得、走査露光時間を短くすることができ実用的に大きな利点となる。
【0065】
次に、本発明の感光性平版印刷版の現像に用いられる現像液としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物の0.1〜5重量%程度の水溶液からなるアルカリ現像液が用いられる。
【0066】
以上の中で、現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、及び、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等のアルカリ金属の珪酸塩を含有するアルカリ現像液が好ましい。
【0067】
又、現像液としては、そのアルカリ金属の珪酸塩が、二酸化珪素としての含有量で0.5〜10重量%であり、且つ、アルカリ金属のモル濃度(〔M〕)に対する二酸化珪素のモル濃度(〔SiO2 〕)の比(〔SiO2 〕/〔M〕)が0.1〜1.5であるのが好ましく、二酸化珪素としての含有量で1〜8重量%であり、且つ、アルカリ金属のモル濃度に対する二酸化珪素のモル濃度の比で0.3〜1であるのが特に好ましい。
【0068】
アルカリ金属の珪酸塩の二酸化珪素としての含有量が前記範囲未満、及び、アルカリ金属のモル濃度に対する二酸化珪素のモル濃度の比が前記範囲未満では、経時により、及び、現像処理数の増加に伴って、現像液中にアルカリ金属塩の析出が発生し易い傾向となり、一方、アルカリ金属の珪酸塩の二酸化珪素としての含有量が前記範囲超過、及び、アルカリ金属のモル濃度に対する二酸化珪素のモル濃度の比が前記範囲超過では、非画像部の溶解性が低下してその抜け性が不十分となる傾向となる。
尚、現像液のpHは、非画像部の抜け性の面から、12.0〜14.0であるのが好ましい。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1
アルミニウム板(厚さ0.24mm)を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理を行った後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中で、温度28℃、電流密度60A/dm2、処理時間40秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで水洗後、4重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、12秒間のデスマット処理を施し、水洗後、20重量%硫酸溶液中で、温度20℃、電流密度3.5A/dm2、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。更に、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行い、水洗、乾燥して平版印刷版支持体用のアルミニウム板を作製した。表面粗度計(小坂研究所社製「SE−3DH」)によるこの板表面の平均粗さRa は0.6μmであった。
【0070】
得られたアルミニウム板支持体表面に、下記の組成を有する塗布液を、ホワラーを用いて塗布し、90℃で2分間乾燥させた後、55℃で16時間の後加熱処理を施すことにより、乾燥膜厚が2.1g/m2のポジ型感光性組成物の層を有するポジ型感光性平版印刷版を作製した。
【0071】
【表1】
【0072】
【化17】
【0073】
上記の各ポジ型感光性平版印刷版につき、波長830nmの半導体レーザーを光源とする露光装置(クレオ社製、「Trend Setter 3244T」)を用いて、113mJ/cm2の強度で露光し、次いで、下記組成の現像液(新液)で28℃にて現像した。
[現像液組成]
KOH 3.1重量部
Aケイ酸カリ 21重量部
アモーゲンK 0.3重量部
DLP−10 0.2重量部
A15 0.07重量部
脱塩水 76重量部
但し、アモーゲンK:ベタイン型両性界面活性剤(第一工業製薬社製「アモーゲンK」)、DLP−10:リン酸エステル化合物(日光ケミカルズ社製「NIKKOL DLP10」)、A15:オレイン酸高度硫酸化油(竹本油脂社製「パイオニンA15」)。
【0074】
(残膜率評価:未露光部の残膜率90%への到達時間:t1)
得られた各平版印刷版につき、画像部における現像前後の反射濃度を反射濃度計(マクベス社製「RD−514」)を用いて測定して、以下の式に基づいて画像部の残膜率を算出し、以下の基準で評価した。
残膜率(%)=〔(現像後の画像部の反射濃度−支持体表面の反射濃度)/(現像前の版面の反射濃度−支持体表面の反射濃度)〕×100
そして、未露光部の残膜率が90%になるまでの到達時間(現像時間)を算出した。
【0075】
(抜け性評価:露光部の残膜率3%への到達時間:t2)
上記の残膜率評価ど同様な方法で、露光部の残膜率が3%になるまでの到達時間を算出した。
(現像ラチチュード評価:現ラチ指数)
上記の残膜率評価(t1)と抜け性評価(t2)から、(t1−t2)/t1の値を現像ラチチュードの指数として求めた。この現像ラチチュード指数が、大きいほど現像ラチチュードが大きく優れていることを示している。
各評価結果を下記第1表に示すが、いずれの印刷版も、新しい現像液では、ほぼ同じ現像ラチチュードを有することがわかる。
【0076】
【表2】
但し、MYS−25:モノステアリン酸ポリエチレングリコール(日光ケミカルズ社製「MYS−25」;HLB=15.0)、MYS−10:モノステアリン酸ポリエチレングリコール(日光ケミカルズ社製「MYS−10」;HLB=11.0)。
【0077】
(ランニング適正評価)
次に、それぞれの版について、1.4m2/Lとなるように、下記組成の現像液にて現像処理を行い、それぞれの版についての疲労現像液を作製した。
得られた疲労現像液を用いて、それぞれの版を28℃にて現像した。
[現像液組成]
KOH 3.1重量部
Aケイ酸カリ 21重量部
アモーゲンK 0.3重量部
DLP−10 0.2重量部
A15 0.07重量部
脱塩水 76重量部
結果を第2表に示すが、第2表からわかる通り、親水性界面活性剤を配合しない印刷版(比較例1)は、疲労現像液で処理した場合に現像ラチチュードが狭くなるのに対し、親水性界面活性剤を配合した印刷版(実施例1〜3)では疲労現像液で処理した場合でも、新液で処理した場合の現像ラチチュードが比較的維持されている。
【0078】
【表3】
【0079】
【発明の効果】
本発明により、現像ラチチュードが大きく、且つ処理安定性に優れたポジ型感光性平版印刷版を提供することができる。
Claims (7)
- 支持体上に、(A)光熱変換物質、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)HLB10未満の界面活性剤、及び(D)HLB10以上の界面活性剤を含有するポジ型感光性組成物層を有する感光性平版印刷版。
- 支持体上に、(A)光熱変換物質、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)HLB9以下の界面活性剤、及び(D)HLB11以上の界面活性剤を含有するポジ型感光性組成物層を有する感光性平版印刷版。
- HLB10未満の界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルである請求項1に記載のポジ型感光性平版印刷版。
- HLB10以上の界面活性剤が、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルである請求項1に記載のポジ型感光性平版印刷版。
- アルカリ可溶性樹脂がノボラック樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポジ型感光性平版印刷版。
- 感光性組成物層が、紫外光に対して実質的に感受性を有さない請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性平版印刷版。
- 光熱変換物質が波長域650〜1300nmの近赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性平版印刷版。
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