JP3681268B2 - ポジ型感光性組成物及び感光性平版印刷版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性平版印刷版、簡易校正印刷用プルーフ、配線板、グラビア用銅エッチングレジスト、フラットディスプレイ製造に使用されるカラーフィルター用レジスト、LSI製造用フォトレジストなどに用いられる紫外から近赤外の波長域の光に対する新規なポジ型感光性組成物に関する。特に半導体レーザーやYAGレーザー等を用いた直接製版に好適なポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光あるいはサーマルヘッド等により、直接レジスト画像を形成する感光または感熱ダイレクト製版システムが注目されている。
【0003】
特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザーを用いる、高解像度のレーザー感光ダイレクト製版システムは、小型化、製版作業時の環境光や版材コストの面から、その実現が強く望まれていた。
一方、従来より、レーザー感光または感熱を利用した画像形成方法としては、昇華転写色素を利用し色材画像を形成する方法ならびに平版を作成する方法などが知られている。後者においては、例えば、ジアゾ化合物の架橋反応を利用し、平版印刷版を作成する方法(例えば、特開昭52−151024号、特公平2−51732号、特開昭50−15603号、特公平3−34051号、特公昭61−21831号、特公昭60−12939号、米国特許第3664737号等参照)、ニトロセルロースの分解反応を利用し、平版印刷版を作製する方法(例えば、特開昭50−102403号、特開昭50−102401号等の公報参照)等が知られている。
【0004】
近年、化学増幅型のフォトレジストに長波長光線吸収色素を組み合せた技術が散見される様になった。例えば特開平6−43633号明細書には特定のスクアリリウム色素に光酸発生剤およびバインダー等を組合せた感光材料が開示されている。
また、更にこれに類する技法として赤外線吸収色素、潜伏性ブレンステッド酸、レゾール樹脂およびノボラック樹脂を含む感光層を半導体レーザー等により像状に露光し平版印刷版を作製する技術が提案されており(特開平7−20629号)、更に、前記潜伏性ブレンステッド酸に代えs−トリアジン化合物を用いる技術も知らされている(特開平7−271029号)。
【0005】
また、特開平9−43847号には、赤外線の照射により加熱して感光材の結晶性を変化させるレジスト材およびそれを利用したパターン形成方法が開示されている。
しかしながら、本発明者等の検討によれば、これら従来の技術は実用上、その特性が必ずしも充分ではなかった。例えば、露光後、加熱処理を要する感光材の場合はその処理条件の振れに起因して、得られる画像の品質安定性は必ずしも満足されなかった。一方、その様な露光後の加熱処理を要しないタイプの感光材の場合は露光部、未露光部におけるコントラストが不充分であり、その結果、非画線部が充分に除去されなかったり、画線部の残膜率が充分保持されなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の諸問題に鑑みなされたものであり、即ち、本発明の目的は、コントラストに優れかつ画線部の残膜率が充分な新規ポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討を重ね、塩基により発色する色素を用いることにより上記問題を解決し得ることを知り、本発明を達成した。すなわち、本発明の要旨はフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質及び少くとも塩基で発色する性質を有する塩基発色性色素を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物及びこれを用いたポジ型感光性平版印刷板に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明組成物は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性高分子物質及び塩基の作用で発色する色素(以下、発色性色素と称する)を含有するものであり、該塩基発色性色素と該フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質とが水素結合を介してマトリックス構造を形成し、その結果、フェノース性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質のアルカリ水溶液を主とするアルカリ現像液に対する高い溶解抑制効果を発生させる。かかるマトリックス構造形成の1例を下式に示す。
【0009】
【化2】
【0010】
かかるマトリックス構造は、光照射時に、マトリックス構造を構成している塩基発色性色素の光化学的変化或いは、光吸収により発生した熱による変化により水素結合が解離し、高い溶解抑制効果が消失すること、更に、該マトリックスの水素結合が解離し単独になった塩基発色性色素が、現像処理時、現像液に接触すると、塩基(OH- )が色素の−OHや−NH−基のプロトンを引き抜き、カルボニル基やイミノ基を生成させ、ラクトン環を開環させて該色素が発色すると共に現像液に対する溶解性が高くなるため、コントラストの高いポジ画像を形成することが可能となる。色素の発色機構の例を下記に示す。
【0011】
【化3】
【0012】
本発明組成物に使用されるフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性の水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体等が挙げられる。これらのうちノボラック樹脂、レゾール樹脂またはポリビニルフェノール樹脂が好ましい。特に好ましくは、ノボラック樹脂またはポリビニルフェノール樹脂である。
【0013】
ノボラック樹脂としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシン、ピロガロール、ビスフェノール、ビスフェノール−A、トリスフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール等の芳香族炭化水素類の少なくとも1種を酸性触媒下、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類及び、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類から選ばれた少なくとも1種のアルデヒド類又はケトン類と重縮合させたものが挙げられる。
【0014】
ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの代わりに、それぞれパラホルムアルデヒド及びパラアルデヒドを使用してもよい。ノボラック樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)測定によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、GPC測定による重量平均分子量をMwと略す)が好ましくは1,000〜15,000、特に好ましくは1,500〜10,000のものが用いられる。
【0015】
ノボラック樹脂の芳香族炭化水素類としては、より好ましくは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、及び3,5−キシレノール、レゾルシンから選ばれる少なくとも1種のフェノール類をホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類の中から選ばれる少なくとも1種と重縮合したノボラック樹脂が挙げられる。
【0016】
中でも、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシンの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20のフェノール類または、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。アルデヒド類の中でも、特にホルムアルデヒドが好ましい。尚、本発明の感光性組成物は、更に溶剤抑止剤を含んでいても良く、その場合、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシンの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20のフェノール類または、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40のフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック樹脂が好ましい。
【0017】
ポリビニルフェノール樹脂としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレンなどのヒドロキシスチレン類の単独または2種以上の(共)重合体が挙げられる。ヒドロキシスチレン類は芳香環に塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンあるいはC1 〜C4 のアルキル基等の置換基を有していてもよく、従ってポリビニルフェノール類としては、芳香環にハロゲン又はC1 〜C4 のアルキル基を有していても良いポリビニルフェノールを包含する。
【0018】
ポリビニルフェノール樹脂は、通常、置換基を有していてもよいヒドロキシスチレン類を単独で又は2種以上をラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤の存在下で重合することにより得られる。かかるポリビニルフェノール樹脂は、一部水素添加を行なったものでもよい。
又、t−ブトキシカルボニル基、ピラニル基、フラニル基などでポリビニルフェノール類の一部のOH基を保護した樹脂でもよい。ポリビニルフェノール樹脂のMwは、好ましくは1,000〜100,000、特に好ましくは1,500〜50,000のものが用いられる。
【0019】
ポリビニルフェノール樹脂としては、より好ましくは、芳香環に炭素数C1 〜C4 のアルキル置換基を有していてもよいポリビニルフェノールが挙げられ、未置換のポリビニルフェノールが特に好ましい。
以上のノボラック樹脂またはポリビニルフェノール樹脂のMwが、上記範囲よりも小さいと十分な塗膜が得られず、この範囲よりも大きいと未露光部分のアルカリ現像液に対する溶解性が小さくなり、パターンが得られない傾向にある。
【0020】
また、レゾール樹脂はノボラック樹脂合成において酸触媒を用いる替わりにアルカリ触媒を用いる以外他は同様にして得ることができ、ノボラック樹脂と同様の好ましい分子量、縮重合モノマー組成のものが好ましい。
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質の配合率は、本発明の感光性組成物中の全固形分に対して2〜98重量%、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは10〜90重量%である。
【0021】
本発明組成物に使用される塩基発色性色素は、塩基の作用により発色する機能を有する色素であれば特に限定されるものではない。
好ましくは構造中に(チオ)ラクトンまたはスルホラクトン骨格を有し、pH3以上、特に好ましくはpH5以上の水素イオン濃度領域において、先に図示した如く、色素中の(チオ)ラクトン或いはスルホラクトン骨格が開環して発色する色素が挙げられる。なお(チオ)ラクトンは、ラクトンまたはチオラクトンを表す。塩基発色性色素として、より具体的には下記一般式(A)で示される、塩基で発色する性質を有する色素が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
(式中、Wはカルボニル基、チオカルボニル基又はスルホニル基を表し、環A、環B、環Cは、それぞれ独立して、1〜3環の芳香族炭化水素基又は1〜3環の芳香族複素環基を表す。Ru1〜Ru12 は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、トリメチルシリルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、イソシアナト基又はチオイソシアナト基を表す。また、環B及び環Cは結合基を介して互いに結合していてもよい。)
【0024】
一般式(A)において、好ましくは環Aはベンゼン環であり、環B及び環Cはベンゼン環、ナフタレン環又はインドール環である。Ru1〜Ru12 がアミノ基の場合は、置換基として炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、アミノカルボニル基を有していても良く、これらは更に置換基を有していても良い。Ru1〜Ru12 で示されるアルキル基、アルコキシ基、及びアミノ基の置換基のアルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、更に好ましくは1〜5である。Ru1〜Ru12 がアシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基の場合の炭素数は2〜10が好ましく、アミノ基の置換基のアリール基の炭素数は6〜10が好ましい。また、好ましいRu1〜Ru4としては、水素原子、水酸基、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基(これらアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基は、更に、置換基を有していてもよい)であり、Ru 5〜Ru12 が、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基(アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい)、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、アミノ基、置換アミノ基、水酸基、ニトロ基である。また、環BとCが結合する際には、好ましくは0−位で結合され、6員環を形成し、好ましい結合基としては、酸素原子、イオウ原子である。
【0025】
また特に好ましくは、Ru1〜Ru4が水素原子、臭素原子、塩素原子、アルキル基でありRu5〜Ru12 が水素原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、置換アミノ基、臭素原子、塩素原子であり、Wがカルボニル基又はスルホニル基である。就中、Ru5〜Ru12 のうちの少くとも1つが、塩基によりプロトンが引き抜かれ、カルボニル基又はイミノ基を形成する水酸基又はアミノ基であることが好ましい。
【0026】
以下に、本発明の塩基発色性色素について、表−1に具体例を挙げるが、本発明の塩基発色性色素は、具体例に限定されることはない。尚、下記式中WAはカルボニル基又はスルホニル基を表わす。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
また塩基発色性色素は2つ以上が直接或いは結合基を介して結合した複数の色素を有する化合物でもよい。
本発明組成物中の塩基発色性色素の配合量は、該色素が高分子の場合は、組成物の全固形分中の1〜98重量%、好ましくは3〜80重量%、更に好ましくは5〜70重量%である。また、色素が高分子でない場合は、全固形分中の1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。
【0030】
本発明のポジ型感光性組成物は、光照射により、アルカリ可溶性有機高分子物質または塩基で発色する色素、或いはプロトン移動錯体が光を吸収し、光化学反応、或いは、光吸収で発生する熱の作用により前述のプロトン移動錯体構造及びそれを中心としたアルカリ可溶性有機高分子物質のマトリックス構造を破壊し、光照射部分のアルカリ水溶液に対する溶解性を著しく向上させることにより高いコントラストのポジ様の画像を得ることが可能であるが、さらに、この光化学反応、或いは光吸収で発生する熱による上記溶解性向上効果を高める目的で、該ポジ型感光性組成物中に光熱変換物質或いは光化学反応の作用によりポジ型の画像を形成させるポジ型光反応性化合物を配合させることが出来る。
【0031】
本発明のポジ型感光性組成物に用いられる光熱変換物質は、光照射により熱を発生する物質であれば特に限定されないが、より具体的には、波長域650〜1300nmの一部又は全部に吸収帯を有する有機または無機の顔料、有機色素、金属などが挙げられる。具体的には、例えば、カーボンブラック;黒鉛;チタン、クロム等の金属;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化タングステン等の金属酸化物;チタンカーバイド等の金属炭化物;金属ホウ化物;特開平4−322219号公報に記載されている無機黒色顔料、アゾ系のブラック顔料、「リオノールグリーン2YS」、「緑色顔料7」等の黒または緑の有機顔料が挙げられる。そして、上記のカーボンブラックとしては、三菱化学社の商品である「MA−7」、「MA−100」、「MA−220」、「#5」、「#10」、「#40」、デグッサ社の商品である「カラーブラックFW2」、「FW20」、「プリンテックスV」等が挙げられる。
【0032】
また、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、「機能性色素の化学」(檜垣編集、1981年、(株)シーエムシー発行)、「色素ハンドブック」(大河・平嶋・松岡・北尾編集、講談社発行)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ等に記載の近赤外領域に吸収を有する色素が挙げられる。
【0033】
更には、特開平2−2074号、同2075、同2076、特開平3−97590号、同97591号、同63185号、同26593号、同97589号の各公報に記載された有機色素や日本化薬社の商品「IR820B」等が挙げられる。光熱変換物質として、近赤外領域に吸収を有する色素および顔料の代表例を表−2に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
【表12】
【0044】
【表13】
【0045】
【表14】
【0046】
【表15】
【0047】
【表16】
【0048】
【表17】
【0049】
【表18】
【0050】
【表19】
【0051】
これらの内、シアニン色素、ポリメチン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素が好ましい、更に、シアニン色素、ポリメチン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素がより好ましい。
これらの内、特に好ましい色素は、下記一般式〔I〕で表されるシアニン色素、一般式〔II〕で表されるポリメチン色素、または下記一般式〔III 〕で表わされるピリリウム色素もしくはチオピリリウム色素である。
【0052】
【化5】
【0053】
〔式中、R1 、R2 は置換基を有していても良いC8 以下のアルキル基であり、該置換基は、フェニル基、フェノキシ基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基であり;Q1 は置換基を有していてもよいヘプタメチン基であり、該置換基は、C6 以下のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基であるか、該ヘプタメチン基がその2つのメチン炭素上の置換基が相互に結合して形成された置換基を有していても良いシクロヘキセン環またはシクロペンテン環を含むものであっても良く、該置換基はC6 以下のアルキル基またはハロゲン原子であり;m1 、m2 は各々が0または1であり;Z1 、Z2 は含窒素複素環を形成するに必要な原子群であり;X- は対アニオンを示す。〕
【0054】
【化6】
【0055】
〔式中、R3 〜R6 はC8 以下のアルキル基であり;Z4 、Z5 は置換基を有していてもよいアリール基であり、該アリール基は、フェニル基、ナフチル基、フリル基またはチエニル基であり、該置換基はC4 以下のアルキル基、C8 以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、C8 以下のアルコキシ基およびハロゲン原子である。Q2 はトリメチン基またはペンタメチン基を示し;X- は対アニオンを示す。〕
【0056】
【化7】
【0057】
〔式中、Y1 、Y2 は酸素原子または硫黄原子であり;R7 、R8 、R15およびR16は置換基を有していてももよいフェニル基またはナフチル基であり、該置換基はC8 以下のアルキル基もしくはC8 以下のアルコキシ基であり;l1 とl2 は各々独立に0または1を示し;R9 〜R14は水素原子またはC8 以下のアルキル基を示すかあるいは各々独立にR9 とR10、R11とR12またはR13とR14とが相互に結合して
【0058】
【化8】
【0059】
(但しR17〜R19は水素原子またはC6 以下のアルキル基であり、nは0または1を示す。)の連結基を形成しても良く;Z3 はハロゲン原子または水素原子、Xは対アニオンを示す。〕
以上の〔I〕、〔II〕および〔III 〕式における対アニオンX- は、例えば、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4 - 、BF4 - 、PF6 - 等の無機酸アニオン、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、酢酸、有機ホウ酸の様な有機酸のアニオンを挙げることができる。
【0060】
特に、有機ホウ酸アニオンを対イオンに有する色素は、塗布溶剤に対する溶解性に優れる為、塗布溶液の製造が容易になると共に、低沸点の溶剤を使用可能なため、未乾燥感光性層の塗布ラインローラー等への貼り付き等の発生を抑制出来、高速塗布が可能となり、高い生産性を得ることができる。
これらの光熱変換物質の本発明の感光性組成物の全固型分中の配合率は、0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%である。
具体的にこのような、有機ホウ酸アニオンとしては、下記式(L)で示されるものが挙げられる。
【0061】
【化9】
【0062】
(式中、RQ1〜RQ4はそれぞれ水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数4〜15の複素環基を表わす。)
さらに具体的にはRQ1〜RQ4がそれぞれ、−CH3 、−C2 H5 、−C3 H7 、−C4 H9 、−C4 H9 −t、
【0063】
【化10】
【0064】
等を挙げることができる。
また、感光性層中には、必要に応じ、光熱変換物質以外の着色材料を含有させることが出来る。着色材料としては、顔料または染料が使用され、例えば、ビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、ファーストブラックHB(26150)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッドB4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)等が挙げられる。なお、上記の( )内の数字はカラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0065】
該着色材料を含む場合、その配合率は全感光性層組成物の固形分中1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%である。
次に、本発明組成物の光化学反応の作用によりポジ型の画像を形成させるポジ型光反応性化合物としては、特開平60−175046に記載のオニウム塩化合物、米国特許3666473、同4115128、同4173470、特開平9−127690、特開平9−106070、L.F.Thompson「Introduction to Microlithography」ACS出版、No.2、19号、P112〜121等に記載のナフトキノンジアジド化合物、及び特開昭48−89003、同51−120714、同53−133429、同55−12995、同55−126236、同56−17345、同60−3625、同60−10247、同60−37549、同60−121446、同59−45439、同60−3625、同62−229242、同63−27829、同63−36240、同63−250642等に記載されている露光により酸を発生する化合物及び該酸発生化合物とその酸により解離し、溶解性を増大させる化合物等を挙げることが出来る。これらポジ型光反応性化合物の配合率は感光性組成物の全固形分中、0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0〜20重量%である。
【0066】
本発明の感光性組成物は、通常、上記各成分を適当な溶媒に溶解して用いられる。溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与える溶媒であれば特に制限はないが、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール系溶媒、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの高極性溶媒、あるいはこれらの混合溶媒、さらにはこれらに芳香族炭化水素を添加したものなどが挙げられる。溶媒の使用割合は、感光性組成物の総量に対して通常重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0067】
なお、本発明の感光性組成物は、その性能を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば塗布性改良剤、現像改良剤、密着性改良剤、感度改良剤、感脂化剤等を含有することも可能である。
本発明の感光性組成物は支持体上に塗設して感光性平版印刷版として有利に使用できる。支持体表面に感光性層を設ける際に用いる塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布及びカーテン塗布等を用いることが可能である。その乾燥温度または加熱温度としては、例えば20〜170℃、好ましくは30〜150℃が採用される。
【0068】
感光性層の膜厚は、通常0.3〜7μm、好ましくは0.5〜5μm、更に好ましくは1.0〜3μmである。
本発明の感光性組成物を用いた感光層を設ける支持体としては、アルミニウム、亜鉛、鋼、銅等の金属板、並びにクロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等がメッキ又は蒸着された金属板、紙、プラスチックフィルム及びガラス板、樹脂が塗布された紙、アルミニウム等の金属箔が張られた紙、親水化処理したプラスチックフィルム等のシート等が挙げられる。感光性平版印刷版用の支持体としては、塩酸または硝酸溶液中での電解エッチングまたはブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶媒中での陽極酸化処理および必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されているアルミニウム板を用いることがより好ましい。
【0069】
支持体表面の粗面度に関しては、一般的に、表面粗さRaの値で示される。これは表面粗度計を用いて測定することができる。本発明において用いられる支持体としてはその平均粗さRaが0.3〜1.0μmのアルミニウム板が好ましく、更に、0.4〜0.8μmのものがより好ましい。
本支持体は、必要に応じ、更に有機酸化合物による表面処理を施して用いることができる。
【0070】
本発明の感光性組成物を画像露光する光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等のランプ光源、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられ、特に、光を吸収し、発生した熱により画像形成させる場合には、650〜1300nmの近赤外レーザー等の光線を発生する光源が好ましく、例えばルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、LED、その他の固体レーザー等を挙げることが出来、特に小型で長寿命の半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。これらのレーザー光源により、通常、走査露光後、現像液にて現像し画像を得ることができる。
【0071】
また、レーザー光源は、通常、レンズにより集光された高強度の光線(ビーム)として感光材表面を走査するが、それに感応する本発明のポジ型平版印刷版の感度特性(mJ/cm2 )は感光材表面で受光するレーザービームの光強度(mJ/s・cm2 )に依存することがある。ここで、レーザービームの光強度(mJ/s・cm2 )は、版面上でのレーザービームの単位時間当たりのエネルギー量(mJ/s)を光パワーメーターにより測定し、また感光材表面におけるビーム径(照射面積;cm2 )を測定し、単位時間当たりのエネルギー量を照射面積で除することにより求めることができる。レーザービームの照射面積は、通常、レーザーピーク強度の1/e2 強度を超える部分の面積で定義されるが、簡易的には相反則を示す感光材を感光させて測定することもできる。
【0072】
本発明に用いられる光源の光強度としては、2.0×106 mJ/s・cm2 以上であることが好ましく、1.0×107 mJ/s・cm2 以上であることが更に好ましい。光強度が上記の範囲であれば、本発明のポジ型感光性組成物の感度特性が向上し、走査露光時間を短くすることができ実用的に大きな利点が得られる。
【0073】
本発明の感光性組成物の現像に用いる現像液としては特にアルカリ水溶液を主体とするアルカリ現像液が好ましい。
上記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩の水溶液が挙げられる。アルカリ金属塩の濃度は0.1〜20重量%が好ましい。又、該現像液中に必要に応じアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0074】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
〔アルミニウム板の作製〕
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理を行なった後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中において、温度28℃、電流密度60A/dm2 、処理時間40秒の条件で電解エッチング処理を行なった。次いで4重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、12秒間のデスマット処理を施した後、20重量%硫酸溶液中で、温度20℃、電流密度3.5A/dm2 、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行なった。更に、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行ない、平版印刷版用支持体のアルミニウム板を作製した。この板の平均粗さRaの値は0.60μmであった。
このRa値は表面粗度計SE−3DH(小坂研究所社製)を用い、スキャン長さ4mm、高域カットオフ無し、低域カットオフ0.8mmの条件で測定した。
【0075】
〔感光層の塗膜量の測定法〕
支持体上に以下の実施例にて示した条件で感光液を塗布、乾燥、加熱処理して得られた感光性平版印刷版を10cm角の大きさに切り取り、試料とした。試料片の重量を測定後、アセトンにより感光層を溶解除去し、再度、重量を測定してその減量分を求め、その値から1m2 当りの重量として塗膜量を求めた。
【0076】
〔残膜率〕
残膜率は実施例及び比較例に記載の方法で現像後の非画線部の残存塗膜量を上記と同様な方法で求め、初期塗膜量との比から求め下記基準で判定した。
A:残膜が90重量%以上残存している。
B:残膜が70重量%以上90重量%未満残存している。
C:残膜が50重量%以上70重量%未満残存している。
D:残膜が50重量%未満残存している。
【0077】
実施例1〜10及び比較例1〜3
下記成分よりなる感光液を前述の方法で作製したアルミニウム板上にワイヤーバーで塗布し、90℃にて2分間乾燥させた後、55℃で16時間加熱処理し平版印刷版を得た。塗膜量は2.8g/m2 であった。
【0078】
【0079】
次に、上記試料を830nmの半導体レーザーを光源とする感光性平版印刷版露光装置(クレオ社製Trend Setter 3244T.)を用いて各種の露光エネルギーで212線、3〜97%の網点画像を画像露光し、次いでアルカリ性現像液(コニカ社製SDR−1を7倍に希釈したもの)を用い、28℃で現像を行った。3%の網点画像が再現する露光量を用いて、感度の評価を行った。露光量が低い程、高い感度を示している。結果を表−Aに示す。
【0080】
【表20】
【0081】
*1;使用した色素は以下のものである。
〔塩基発色性色素〕
【0082】
【化11】
【0083】
【化12】
【0084】
〔塩基発色性でない色素〕
【0085】
【化13】
【0086】
*2;S−53、S−54、S−57は対応する表−2の化合物を使用した。カーボンブラックは三菱化学社製、MA220;一酸化チタンは三菱マテリアル社製、チタンブラック12Sを使用した。
*3;「F」は感度の場合、全面溶解し画像を形成しなかったことを示し、残膜率の場合は、評価しなかったことを示す。
【0087】
【発明の効果】
本発明による塩基発色性色素を含有する感光性組成物は、830nmの露光に対し、優れた感度を有し、画線部の残膜率も優れている。
Claims (11)
- 画像露光後にアルカリ現像液により現像されるポジ型感光性組成物であって、
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質、及び、
少なくとも塩基で発色する性質を有する、OH基又はNH基を有する塩基発色性色素を含有し、
非露光部では前記アルカリ可溶性有機高分子物質及び前記塩基発色性色素が水素結合を介してマトリックス構造を形成して前記アルカリ可溶性有機高分子物質の前記アルカリ現像液に対する溶解性を抑制し、
露光部では前記水素結合が解離して、前記アルカリ可溶性有機高分子物質の前記アルカリ現像液に対する溶解性が増大し、
現像時に前記塩基発色性色素が前記アルカリ現像液との接触により発色する
ことを特徴とするポジ型感光性組成物。 - 塩基発色性色素が、pH3以上の水素イオン濃度で発色する色素であることを特徴とする請求項1記載のポジ型感光性組成物。
- フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質が、ノボラック樹脂、レゾール樹脂及びポリビニルフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のポジ型感光性組成物。
- 塩基発色性色素が、ラクトン骨格又はチオラクトン骨格を有する構造の色素であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のポジ型感光性組成物。
- 塩基発色性色素が、スルホラクトン骨格を有する構造の色素であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のポジ型感光性組成物。
- 塩基発色性色素が、下記一般式(A)で示される、塩基で発色する性質を有する色素であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のポジ型感光性組成物。
- 更に、画像露光光源の光を吸収し、熱に変換する光熱変換物質を含有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のポジ型感光性組成物。
- 光熱変換物質が、近赤外吸収色素であることを特徴とする請求項7記載のポジ型感光性組成物。
- 近赤外吸収色素が、有機ホウ酸アニオンを対イオンとして有することを特徴とする請求項8記載のポジ型感光性組成物。
- 光熱変換物質が、カーボンブラック又はチタンブラックであることを特徴とする請求項7に記載のポジ型感光性組成物。
- 支持体上に請求項1乃至10の何れかに記載のポジ型感光性組成物からなる層を有することを特徴とするポジ型感光性平版印刷版。
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