JP4448247B2 - タイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法 - Google Patents

タイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精度良くタイヤのハイドロプレーニング発生速度を予測するのに役立つタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水膜で覆われた路面を自動車が高速走行した際に、タイヤと路面との間に水膜が進入しタイヤを路面から押し上げる現象は、一般にハイドロプレーニング現象として知られている。このようなハイドロプレーニング現象は、タイヤと水とが衝突することにより水圧が上昇し、水圧がタイヤと路面との間の接地圧よりも高くなることにより生じる。そしてこの現象が生じると、舵取りや制動を不能とし自動車の走行安定性を著しく損ねるため、従来より、ハイドロプレーニング現象とタイヤの内部構造、トレッドパターンなどとの関係が種々研究されている。
【0003】
従来、タイヤのハイドロプレーニング性能の評価は、タイヤを実際に試作しかつ実験することによって行われてきた。具体的な実験方法としては、実車にタイヤを装着し水膜で覆われた路面を走行してタイヤのスリップ率を測定する方法や、台上試験による方法などが挙げられる。しかしながら、これらの方法では、試作品を製造するため又試験を行なうために多大の時間、費用、労力を必要とし、開発効率の上では大きな問題となっている。
【0004】
そこで近年では、かかる問題を克服するため、コンピュータを用いたハイドロプレーニングシミュレーション方法がいくつか開発されつつある。この方法は、例えば有限要素法、有限体積法などを用いてタイヤ、水膜、路面をそれぞれタイヤモデル、流体モデル、路面モデルにモデリングし、所定の境界条件に基づいてタイヤモデルを流体モデルを表面に有する路面モデル上で走行シミュレーションを行うものである。そして、このシミュレーションから必要な情報を計算、出力しタイヤモデルのハイドロプレーニング発生速度などを予測することが考えられている。
【0005】
しかしながら、このようなタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法にあっても、種々の条件の設定の仕方により、コンピュータによる計算に多大の時間を必要としたり、またハイドロプレーニング発生速度の予測精度においても十分でないことがあり、さらなる改善の余地が残されている。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、精度良くタイヤのハイドロプレーニング発生速度などを予測するのに役立つタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法を提供することを目的としている。また請求項2記載の発明では、コンピュータの計算時間を削減するのに役立つタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、水膜で覆われた路面を走行するタイヤの走行シミューレーションをコンピュータを用いて行うことにより、ハイドロプレーニング発生速度を予測するタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法であって、有限要素法で取り扱い可能な複数の要素からなるタイヤモデルを設定するステップと、水膜を複数の要素で分割してモデル化した流体モデルを表面に有する路面モデルを設定するステップと、入力された境界条件に基づきタイヤモデルを前記路面モデル上で走行させるステップとを含むとともに、一定時間の定速走行と一定時間の加速走行とを交互に繰り返しながら前記タイヤモデルの走行速度を徐々に上昇させてタイヤモデルと路面モデルとの間の接地力を逐次計算して出力するステップと、前記接地力とタイヤモデルの走行速度との関係に基づいてハイドロプレーニング発生速度を求めるステップとを含むことを特徴としている。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記タイヤモデルは、座標上に固定された仮想のタイヤ回転軸の回りに回転自在に設定され、前記路面モデルは、路面と平行に移動することにより前記タイヤモデルを回転させるとともに、前記流体モデルは、路面モデルの前記移動速度と等しい速度となる加速度が与えられることを特徴とする請求項1記載のタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法である。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記流体モデルを構成する任意の要素の速度からタイヤモデルの表面の移動速度を差し引くことにより、前記要素のタイヤモデルに対する相対速度を計算するステップと、前記計算された流体モデルの要素の速度をベクトルを含む可視情報によって表示するステップとを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
本実施形態では、例えば図1に示すような構造を有する乗用車用ラジアルタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)Tのハイドロプレーニング発生速度をシミュレーションするものを例示している。タイヤTは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の回りで折り返されかつコードをタイヤ周方向に対して略90度で傾けたカーカスプライ6aからなるカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されるベルト層7とを含むコード補強材Fを具えている。
【0011】
前記ベルト層7は、本例ではタイヤ周方向に対して20度の角度で並列された内、外2枚のベルトプライ7A、7Bが前記コードを交差する向きに積層して構成される。前記カーカスプライ6Aは、例えばポリエステルなどの有機繊維コードを、またベルトプライ7A、7Bはスチールコードを、それぞれシート状のトッピングゴムにより被覆されて構成されている。なおベルト層7の外側には、有機繊維コードをタイヤ周方向に実質的に平行に配列したバンド層9を具えている。
【0012】
またタイヤTは、前記各コード補強材Fの外側に、トレッドゴム2G、サイドウォールゴム3G、ビードゴム4Gなどを配している。前記トレッドゴム2Gは、本例では前記バンド層9の外側に配され、タイヤ子午断面において縦溝G1の溝底ラインの内側近傍を通りトレッド部2の表面に略沿ってのびるベースゴム部2G1と、その外側に配され路面と接触しうるキャップゴム部2G2とから構成された2層構造を例示する。
【0013】
前記サイドウォールゴム3Gは、タイヤの転動時に大きく屈曲する部分であり、路面の縁石と接触したときでもタイヤTの側部を保護するもので、例えば前記トレッドゴム2Gよりも複素弾性率が小さい柔軟なゴムが用いられる。また前記ビードゴム4Gは、タイヤが装着されるリムのフランジと接触する嵌合部付近に配されるため、例えば比較的弾性率の大きくかつ耐摩耗性に優れたゴムから構成される。また、トレッド部2の外表面には、例えばタイヤ周方向にのびる縦溝G1と、この縦溝G1に交わる向きにのびる横溝G2などにより所定のトレッドパターンが形成されている。このトレッドパターンは、タイヤ性能、とりわけハイドロプレーニングに影響を与える。
【0014】
次に本シミュレーション方法を行う装置としては、例えば図2に示すようなコンピュータ10が使用される。コンピュータ10は、演算処理装置であるCPUと、このCPUの処理手順などが予め記憶されるROMと、CPUの作業用メモリであるRAMと、入出力ポートと、これらを結ぶデータバスとを含んで構成されている。前記入出力ポートには、本例では所定の情報を入力、設定するためのキーボード、マウス等の入力手段Iと、入力結果やシミュレーション結果を表示しうるディスプレイ、プリンタなどの出力手段Oと、磁気ディスク、光磁気ディスクなどの外部記憶装置Dとが接続される。また前記外部記憶装置Dには、シミュレーションの処理手順、その他、所定のプログラム、データを記憶しうる。
【0015】
本実施形態では、上記コンピュータ10を用いて水膜で覆われた路面でタイヤの走行シミューレーションを行う。そして、解析しようとするタイヤの大凡のハイドロプレーニング発生速度を予測するものである。先ず本実施形態のタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法では、解析しようとうするタイヤに基づき、図3に示すように、有限要素法で取り扱い可能な複数の要素e1、e2…からなるタイヤモデル11を設定するステップを含む。
【0016】
前記タイヤモデル11は、本例ではボディモデル11Aと、パターンモデル11Bとから構成されたものを例示している。タイヤTは、図1に示したように、タイヤ周方向について実質的に同じ材料でかつ同じ断面形状が連続する部分を具えており、本例ではトレッドゴム2Gのキャップゴム部2G2を除いた部分をタイヤボディ部Taとし、このタイヤボディ部Taを有限要素法に基づき複数の要素に分割して図4に示すような前記ボディモデル11Aを得ている。なお前記タイヤボディ部Taは、具体的には前記カーカス6、ベルト層7、バンド層9を含むコード補強材Fと、トレッドゴム2Gのベースゴム部2G1、サイドウォールゴム3G、ビードゴム4Gを含むゴム部と、ビードコア5とを含むものを例示する。
【0017】
前記ボディモデル11Aを構成する各要素eA1、eA2、…には、例えば2次元平面では四辺形要素、3次元要素としては、4面体ソリッド要素、5面体ソリッド要素、6面体ソリッド要素など、いずれもコンピュータで処理可能な要素が用いられる。本例では前記コード補強材F(例えばベルト層7)の任意の微小領域は、一枚の平面シェル要素としてモデル化しているが、例えば図5に示すように、コードcについては四辺形膜要素20a、20bにモデル化され、またコードcを被覆しているトッピングゴムtについては前記四辺形膜要素を覆う六面体ソリッド要素20c、20d、20eでモデル化し、これらを厚さ方向に順番に積層した複合シェル要素でモデル化しても良い。
【0018】
また前記コードcをモデル化した前記四辺形膜要素20a、20bの材料定義は、その厚さを例えばコードcの直径とし、コードcの配列方向とこれと直交する方向とにおいて剛性の異なる直交異方性材料とし、また各方向の剛性は均質化しているものとして取り扱うことが望ましい。またコード補強材Fのトッピングゴムtを表す六面体ソリッド要素20c、20d、20eは、他のゴム部材と同様に超粘弾性材料として定義して取り扱うことができる。このように、コード補強材Fを、コード材c、トッピングゴムtというように、それぞれ材質の特性に応じてモデル化したときには、実際の製品により近い状態をシミュレーションしうる。
【0019】
また、ボディ部1Bのベースゴム部2G1、サイドウォールゴム3G、ビードゴム4G、ビードコア5については、例えば六面体ソリッド要素または五面体ソリッド要素でモデル化する。このようなモデル化は、前記入力手段Iを用いて行うこともできる。またボディモデル11Aは、タイヤの回転軸を含む子午線断面において先に2次元形状を特定し、これを仮想のタイヤ回転軸の回りに周方向に回転させ所定の周方向長さで単位化して要素分割することにより、比較的簡単にモデリングを行うことができる。また、各ゴム部材、コード補強材F、ビードコア5を有限要素にモデル化する際には、各ゴム、コードの複素弾性率、ビードコアの弾性率などに基づき材料、剛性を定義しうる。また例えばビードコア5は、その外周面だけを4角形剛表面要素でモデル化しているが、その全てを6面体ソリッド要素でモデル化しても良い。
【0020】
また前記パターンモデル11Bは、図6に示すように、タイヤTの前記キャップゴム部2G2により形成されるトレッドパターン部1Aをタイヤ周方向の全周に亘り有限個の多数の要素eB1、eB2、…に分割して構成されている。このパターンモデル11Bは、前記キャップゴム部2G2を例えば多数の四面体、五面体又は六面体要素、さらにはこれらの組み合わせでモデル化したものでタイヤ全周にわたって構成されたリング状をなす。またこのパターンモデル11Bは、前記ボディモデル11Aとは別個に設定された後、図7に示すように、前記ボディモデル11Aに結合される。なお結合後は、パターンモデル11Bの内側の面または節点は、ボディモデル11Aの面または節点に対してその相対位置が変わらないように強制変位し一体化する。
【0021】
次に本実施形態のシミュレーション方法では、図8、図9に示すように、路面を覆う水膜を複数の要素eC1、eC2、…で分割してモデル化した流体モデル13を表面に有する路面モデル14を設定するステップを行う。先ず路面モデル14は、例えば4角形剛表面要素でモデル化する。また前記タイヤモデル11と流体モデル13とは、物体とともに変形、移動することができるラグランジェ要素にてモデル化される。
【0022】
また前記流体モデル13は、有限体積法にて取り扱うことができる多数の要素でモデル化される、本例では空間に固定され変形、移動しないオイラー要素でモデル化され、例えば6面体要素が用いられる。ただし、5面体要素又は4面体要素、さらにはこれらの組み合わせでモデル化しても良い。そして流体モデル13の全厚さが水膜の厚さに相当する。また流体モデル13の上部には空間(ボイド)をモデル化した空間モデル15を定義しておく。この空間モデル15には計算初期段階では何も存在しないが、外部からこの空間モデル15に流体が進入した場合にはその要素で満たされうる。このため、流体モデル13及び空間モデル15を用いて水膜の飛散の様子を解析することも可能となる。
【0023】
また水膜、又は空間を要素にモデル化する際には、前記タイヤモデル11の縦溝、横溝の溝巾以下でかつできるだけ小さな要素に分割することが解析精度を高める上では望ましい。しかし、全ての水膜又は空間を一律に小さな要素でモデル化していくと、コンピュータの計算に多くの時間を要してしまうというう問題がある。このため本実施形態では、図8に示したように、X軸側の細分化領域XaとY軸側の細分化領域Yaとの交差部Aを、タイヤモデル11と流体モデル13とが干渉する領域として小さい要素によりモデル化している。さらに、流体モデル13、空間モデル15のZ軸方向については、均等に分割しても良く、また路面モデル14側に細分化領域を設け、上に向かって徐々に大きくなるように分割しても良い。なおX軸側の領域XbとY軸側の領域Ybとが交差する交差部Bは、タイヤモデル11と干渉しないため大きな要素でモデル化することにより、コンピュータによる計算時間の増大を抑制しつつ精度の良い計算を可能としている。
【0024】
また上述のような流体モデル13を用いるために、本実施形態では、モデルの座標系を空間上に固定するのではなく、タイヤモデル11と共に並進運動する座標系から観察する方法を用いている。例えば図9(A)に示すように、流体モデル13、路面モデル14を空間上に固定し、タイヤモデル11が路面モデル14上を転動しながら流体モデル13(即ち水膜)に突入するように転動シミュレーションを行うことは可能である。しかしながら、この方法では、流体モデル13で覆われた路面モデル14をタイヤモデル11が長い距離に亘って走行するため、図9(B)に示す如く、タイヤモデル11の進行方向となる流体モデル13のY軸方向は、広範囲に亘って小さな要素で流体モデル13、空間モデル15を設定しておく必要があり、シミュレーション時間と必要メモリが増大してしまう。
【0025】
本実施形態では、流体モデル13を空間(座標上)に固定し、路面モデル14を空間内を路面と平行に移動させる。またタイヤモデル11は仮想のタイヤ回転軸を空間(座標上)に固定されており、路面モデル14が移動する際の摩擦力によって回転するよう定義される。また流体モデル13は、その流入面での速度が路面モデル14の前記移動速度と等しい速度となるように全流体モデルに対して加速度が与えられ移動しない。これにより、流体モデル13は、タイヤモデル11と接触する領域周辺の狭い領域Aだけを小さな要素で構成しうる結果、コンピュータによる計算時間を小としつつ精度の良い解析を可能としている。
【0026】
次に本実施形態のタイヤのシミュレーション方法にあっては、入力された境界条件に基づきタイヤモデル11を前記路面モデル14上で走行させるステップを行う。入力される境界条件としては、リム組み、内圧充填、仮想のタイヤ回転軸に作用する軸荷重、路面摩擦係数、スリップ角、キャンバー角などをシミューレートする条件を含むことができる。
【0027】
前記リム組みをタイヤモデル11で再現するためには、剛表面でモデル化したタイヤモデル11のビードコアを、ビード巾Wがリム巾に等しくなるように強制変位させるか、もしくは図10に示すように、タイヤモデル11のリム接触域4b、4bを拘束してタイヤモデル11のビード部の巾Wをリム巾に等しく強制変位させる。このときタイヤモデル11の仮想のタイヤ回転軸CLは、タイヤモデル11のビードコアに回転に関する境界条件を与えることによってタイヤモデル11のリム接触域との相対距離rが常に一定となるように仮想的に設定される。また前記内圧充填をタイヤモデル11に再現するためには、タイヤモデル11のタイヤ内腔側の内側面にタイヤ内圧に相当する等分布荷重ωを作用させることにより設定できる。同様に、軸荷重を負荷するには、仮想のタイヤ回転軸CL又は路面モデル14から路面と垂直な垂直荷重Fを作用させる。また、タイヤモデル11と路面モデル14との間には、摩擦係数を定義する。
【0028】
次に路面モデル14を所定の方向に路面と平行移動させる。この際、路面モデル14の移動方向は、路面モデル14の表面と平行である。またスリップ角αが設定されている場合には、図11のようには、路面モデル14の移動方向Sと、タイヤモデル11のタイヤ赤道を通る中心線CYとの角度をαに調節する。タイヤモデル11は、仮想のタイヤ回転軸CLの回りで自由支持となるように設定されているため、路面モデル14との接触による摩擦力により転動し所定の走行速度を持つ。なお加速度が過大となって回転がタイヤ内部まで伝達されない場合には、タイヤモデル11のビードコアに相応のトルクを与えるようにしても良い。また流体モデル13は、前記の如く流入面での流体速度が路面モデル14の移動速度と同じ速度になるように、加速度が与えられる。また流体モデル13は、タイヤモデル11への流入面での流体速度が路面速度と同じになるように速度を設定しても良い。このように解析したい状況に応じて、種々の境界条件(リム、内圧、軸荷重、スリップ角、キャンバー角、制駆動力等)を設定しシミュレーションを行う。
【0029】
本実施形態では流体モデル13及び空間15を含む流体部と、タイヤモデル11及び路面モデル14を含む構造部とを連成してシミュレーションする。例えば前記流体部には有限体積法を用い、前記構造部には有限要素法を用いる。それぞれが対象とする方程式は、流体部については、オイラー方程式、すなわち下記式(1)〜(3)に示される質量保存式、運動量保存式、エネルギー保存式の連立方程式となる。
【0030】
【数1】
Figure 0004448247
【0031】
また構造部については、下記式(4)で示される運動方程式を用いる。
【数2】
Figure 0004448247
【0032】
解法としては、例えば陽解法を用い、上記方程式を微小時間dt毎に逐次計算することによって時間発展させる。またハイドロプレーニング現象はタイヤが水膜によって浮き上がるため、そのシミュレーションではタイヤモデル11が流体モデル13に進入する課程において流体モデル13、タイヤモデル11の境界条件が刻々と変化し計算が非常に煩雑となる。本例では上述のように流体部と構造部とをそれぞれ別々に独立させて計算を行い、それらの計算が終了した後にお互いに必要なデータを受け渡すことによって構造部と流体部とを連成し比較的短時間で計算を行うことを可能としている。例えば構造部と流体部とを連成する際、受け渡すデータとしては、流体部側から構造部側へは、構造部との境界面における流体モデル13の流体力を、構造部側の境界条件として与える。逆に構造部側から流体部側へは、タイヤモデル11の境界面の位置データを、流体側の境界条件として与える。これにより流体モデル13の流体力がタイヤモデル11のトレッドに伝えられ、ハイドロプレーニングシミュレーションが行なえる。なおこれらの処理はコンピュータにより行われ、その計算手順は例えば一般に知られている有限要素法解析プログラムなどを用いて自動計算しうる。
【0033】
そしてこの処理では、例えばタイヤモデル11から、時間の経過とともに変化する各要素の位置、応力、歪、エネルギーなどが取得できる。そして、例えばタイヤモデル11の路面モデル14と接触している各要素の表面に作用している力を計算し、これを積算することにより任意のタイヤモデル11の走行速度の状態におけるタイヤモデル11の接地力を計算しうる。また流体モデル13からは、時間の経過とともに変化する各要素の所定のデータ、例えば速度、圧力、密度、エネルギー、その要素の体積に占める流体の割合などのデータが取得できる。なお流体モデル13は、圧縮性の流体として取り扱っている。
【0034】
また本実施形態では、タイヤモデル11は、図12(A)に示すように、一定時間P1の定速走行と一定時間P2の加速走行とを交互に繰り返しながら走行速度を徐々に上昇させている。そしてタイヤモデル11と路面モデル13との間の接地力をこの過程中、逐次計算して出力するとともに、図13に示すように、この接地力とタイヤモデル11の走行速度との関係に基づいてハイドロプレーニング発生速度を求める。図13は、本シミュレーションにより得られた結果として、縦軸にタイヤモデル11と路面モデル14との間の接地力を、横軸にタイヤモデル11の走行速度をとったグラフを示しており、タイヤモデル11の走行速度の上昇に伴い接地力が徐々に減少していることが分かる。そして最終的にはタイヤモデル11が流体モデル13(水膜)により押し上げられ路面モデル14から完全に浮き上がって接地力が0となる状態が観察される。ハイドロプレーニング発生速度をどのように定義するかは、いくつかの考えた方があるが、本実施形態では、タイヤモデル11の接地力が0となる速度V1としている。ただし、タイヤモデルの走行速度が十分に小さい値、例えば初期接地力K2の10%の接地力K1となる速度V2を選ぶこともできる。
【0035】
またタイヤモデル11の走行速度は、図12(B)に示すように、一定加速度で変化させることもできる。しかしながら、この方法では、任意の速度における接地力は、その速度において得られる安定した接地力とは異なることがあり、精度の良いハイドロプレーニング発生速度を予測することができない。すなわち、一定加速度で速度を上昇させながら、ハイドロプレーニングの解析を行なう場合、タイヤモデル11、流体モデル13の双方に、常に加速度が負荷されているため、ある任意の速度におけるタイヤモデル11の変形、流体モデル13の流れは、その速度が一定に保たれた状態で転動している時とは異なったものとなる。
【0036】
これに対して、本発明のように一定時間P1の定速走行を行う部分を持ちつつ速度上昇をさせる場合、例えば図14に示すように、一定速度Vaの区間a、bにおいて、接地力はFaから減少(又は増加)し、その値がほぼ一定となるFbに近づいていく。そして、この一定となる接地力Fbを安定解とし、各一定速度域で得られる安定した接地力を補間(1次、2次、スプライン等)することにより、精度良く接地力を得ることができ、ひいてはより正確なハイドロプレーニング発生速度を予測することが可能となる。なお前記定速走行を行う解析時間P1は、例えばタイヤモデル11が少なくとも1/60×360(度)程度回転する時間、より好ましくは1/2×360(度)回転する時間とすることが望ましい。
【0037】
またシミュレーション結果を可視化して評価する場合、本シミュレーションでは流体モデル13から水膜の流れを表す流線やベクトル図を容易に作成することができる。このとき、各モデルをタイヤモデル11と共に並進運動する座標系から観察しているため、流体モデル13の要素の速度から路面モデル14の速度を差し引いた相対速度を用いる。これにより、タイヤモデルと共に並進運動する座標系から観察したシミュレーションでありながら、空間に固定された座標系から観察した場合の流体の流れを把握することが可能となる。また、流体モデル13の任意の要素の速度から、タイヤモデル11の表面の移動速度を差し引き、前記要素のタイヤモデル11に対する相対速度を計算し、この相対速度を用いたベクトルにて流体の流れを示す流線を表示することにより、タイヤ周囲やトレッドパターンでの水の流れも評価することができる。図15にはタイヤモデル11のトレッドパターンを、図16にはそれを用いて流体モデルのいくつかの要素の速度ベクトルを表した平面図を夫々示す。
【0038】
【実施例】
今回シミュレーションを行ったタイヤは、235/45ZR17LM701(住友ゴム工業株式会社製)である。このタイヤモデルは、節点数は35000、要素数は55963とした。図17には、接地力と走行速度とのシミュレーション結果を示している。図から明らかなように、速度の上昇に伴い接地力が徐々に減少している結果がシミュレーションされていることが確認できた。なお条件は次の通りとした。
内圧 220kPa
軸荷重 4.5kN
水膜の厚さ 5mm
スリップ角 0゜
キャンバー角 0゜
静摩擦係数 1.2
動摩擦係数 1.2
【0039】
【発明の効果】
上述したように、請求項1及び2記載の発明では、実際の走行試験を行わずにタイヤのハイドロプレーニング発生速度を精度良く予測することができる。またタイヤモデルのタイヤ回転軸を固定して路面モデルを移動させるたときには、流体モデルの要素を小さくする箇所を最小限に抑えることができるため、コンピュータの計算時間を抑えるのに役立つ。また請求項3記載の発明では、ベクトルにより流体の流れを可視することにより、トレッドパターンと流体の流れとの関係を解析するのに役立ち開発ないし設計効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤの断面図である。
【図2】本発明のシミュレーション方法を実施する装置のブロック図である。
【図3】本発明のタイヤモデルの斜視図である。
【図4】ボディモデルの斜視図である。
【図5】コード補強材の要素モデル化を示す概念図である。
【図6】パターンモデルの斜視図である。
【図7】タイヤモデルの変形を例示する線図である。
【図8】流体モデルを例示する斜視図である。
【図9】(A)はタイヤモデル、流体モデル、路面モデルの関係を示す概念図、(B)は流体モデルの部分斜視図である。
【図10】タイヤモデルに境界条件を与え路面モデルに接地させた状態を示す略図である。
【図11】タイヤモデル、流体モデル、路面モデルの関係を示す概念図である。
【図12】(A)、(B)は走行速度と解析時間との関係を示すグラフである。
【図13】接地力と走行速度との関係を示すグラフである。
【図14】接地力と走行速度との関係を示すグラフである。
【図15】タイヤモデルのトレッド面を示す平面図である。
【図16】その接地面での流体の流れをベクトルで示した線図である。
【図17】本シミュレーション結果を示すグラフである。
【符号の説明】
T タイヤ
11 タイヤモデル
13 流体モデル
14 路面モデル

Claims (3)

  1. 水膜で覆われた路面を走行するタイヤの走行シミューレーションをコンピュータを用いて行うことにより、ハイドロプレーニング発生速度を予測するタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法であって、
    有限要素法で取り扱い可能な複数の要素からなるタイヤモデルを設定するステップと、
    水膜を複数の要素で分割してモデル化した流体モデルを表面に有する路面モデルを設定するステップと、
    入力された境界条件に基づきタイヤモデルを前記路面モデル上で走行させるステップとを含むとともに、
    一定時間の定速走行と一定時間の加速走行とを交互に繰り返しながら前記タイヤモデルの走行速度を徐々に上昇させてタイヤモデルと路面モデルとの間の接地力を逐次計算して出力するステップと、
    前記接地力とタイヤモデルの走行速度との関係に基づいてハイドロプレーニング発生速度を求めるステップとを含むことを特徴とするタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法。
  2. 前記タイヤモデルは、座標上に固定された仮想のタイヤ回転軸の回りに回転自在に設定され、
    前記路面モデルは、路面と平行に移動することにより前記タイヤモデルを回転させるとともに、
    前記流体モデルは、路面モデルの前記移動速度と等しい速度となる加速度が与えられることを特徴とする請求項1記載のタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法。
  3. 前記流体モデルを構成する任意の要素の速度からタイヤモデルの表面の移動速度を差し引くことにより、前記要素のタイヤモデルに対する相対速度を計算するステップと、前記計算された流体モデルの要素の速度をベクトルを含む可視情報によって表示するステップとを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤのハイドロプレーニングシミュレーション方法。
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