JP4487582B2 - タイヤのシミュレーションモデル作成方法 - Google Patents
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Description
有限要素モデルとして作成されるタイヤのシミュレーションモデルでは、ベルト部、サイド部およびビード部を有するトロイダル形状を成したタイヤケース本体部を再現したケース本体モデルと、タイヤケース本体部の外周表面に設けられるトレッドパターンを備えたトレッド部を再現したトレッドモデルとを有する。
そして、ケース本体モデルおよびトレッドモデルは互いに節点が共有するように作成される。
当該公報では、ケース本体モデルに該当するタイヤボディ部要素モデルとトレッドモデルに該当するトレッドパターン部要素モデルを別々に作成し、しかも、トレッドパターン部要素モデルをタイヤボディ部要素モデルに比べて詳細にモデル化し、この後、トレッドパターン部要素モデルとタイヤボディ部要素モデルを結合する際、互いに結合する結合面同士の節点の相対位置が変わらないように定義して接合する。具体的には、作成したトレッドパターンの要素モデルをタイヤボディ部要素モデルに接合する際、節点の相対位置が変わらないように強制変位させるように定義して接合される(特許文献1中の[0008]、[0028])。しかし、この強制変位をどのように与えるかについて、特許文献1では一切開示がない。
前記タイヤケース本体部を複数の有限要素で再現したケース本体モデルと、前記トレッド部を複数の有限要素で再現したトレッドモデルとを別々に作成するステップと、
前記ケース本体モデルの外周表面に前記トレッドモデルを配置したときの、前記ケース本体モデルの有限要素の境界面上に位置する前記トレッドモデルの境界節点を求めるステップと、
前記境界節点の位置座標に基づいて、前記ケース本体モデルの有限要素の節点に対する重み付け係数を求めるステップと、
前記境界節点が位置する前記境界面を形成する前記ケース本体モデルの有限要素の節点の物理量と前記重み付け係数とを用いて、前記境界節点の挙動を規制する拘束条件を定めるステップと、
前記拘束条件により前記トレッドモデルの前記境界節点の挙動を拘束することにより、前記ケース本体モデルに前記トレッドモデルを結合して、前記タイヤケース本体部と前記トレッド部とが結合されたタイヤのシミュレーションモデルを作成するステップと、を有し、
前記境界節点を求めるステップにおいて、前記トレッドモデルの前記ケース本体モデルと結合すべき内周面の節点のうち、前記ケース本体モデルと当接していない非当接節点を、前記非当接節点を通り前記タイヤケース本体部のトロイダル形状の中心軸と直交する直線と前記ケース本体モデルの外周表面との交点に移動して前記ケース本体モデルの外周面と当接する前記境界節点を定めることを特徴とするタイヤのシミュレーションモデルの作成方法を提供する。
例えば、前記第1形状は台形形状であり、前記対応点の位置情報はこの台形形状の形状寸法とこの台形形状内における前記境界節点の位置情報とを用いて求められる。
その際、前記拘束条件は、前記境界面を有する前記ケース本体モデルの有限要素の節点の物理量に前記重み付け係数を乗算して規定した多項式で表される。
また、前記多項式は記憶保存されるのが好ましい。
また、前記多項式は記憶保存されるのが好ましい。
トレッドモデル12は、トレッドパターンを備えるトレッド部を複数の6面体ソリッド要素や5面体ソリッド要素等の有限要素で構成した3次元モデルである。また、トレッドモデル12の有限要素として4面体ソリッド要素を用いてもよい。
タイヤケース本体モデル12は、サイド部、ベルト部およびビード部等を有するタイヤケース本体部を複数の6面体ソリッド要素や5面体ソリッド要素等のソリッド要素、およびシェル要素や膜要素等で構成された3次元モデルである。
図3(a)に示すように、ケース本体モデル14はタイヤ回転軸を中心軸とするトロイダル形状を成しており、外周面はトレッドモデル12と結合することができるように滑らかな曲面で形成されている。また、ケース本体モデル14は、サイド部やアンダートレッド部等が複数の6面体ソリッド要素や5面体ソリッド要素等の有限要素で構成されている。ケース本体モデル14は、タイヤ回転軸と直交するタイヤ周方向(図3(a)中のA方向)に沿ってメッシュ分割され、またタイヤ回転軸を含む平面で切断するようにタイヤ幅方向(図3(a)中のB方向)に沿ってメッシュ分割されて有限要素が設定されている。したがって、ケース本体モデル14のトレッドモデル12と結合するソリッド要素の境界面は正方形および長方形を含む台形形状を成している。タイヤは、タイヤ幅方向の位置によってタイヤの外径が異なり、トレッドのタイヤ幅方向の中心位置からショルダー部に向かうにつれて外径が小さくなるトロイダル形状を成している。このため、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向に沿ってメッシュ分割した有限要素の境界面は正方形または長方形を含む台形形状となっている。
図4は、タイヤのシミュレーションモデル10を作成してシミュレーション演算を行なって性能予測を行なう演算装置20のブロック図である。
演算装置20は、条件設定部22、モデル作成部24、モデル結合部26、シミュレーション演算部28および性能予測部30がそれぞれサブルーチンとしてモジュール化されて構成されている。この他、上記各部分の処理を実質的に行なうCPU32および各部分で得られた処理結果を記憶するメモリ34を有する。
これらのモデルは有限要素モデルであるので、モデルの作成によって、各モデルの節点の位置座標、各有限要素を構成する番号化された節点の番号の組、各有限要素毎の材料定数等が少なくとも1つのファイルとなってメモリ34に記憶される。
算出された特性物理量は、予測結果の指標として図示されないディスプレイやプリンタに出力される。
図5は、タイヤのシミュレーションモデル10の作成方法を示すフローチャートである。
まず、タイヤの、ベルト部およびカーカス部を有して構成される補強層とサイド部等のゴム部材とをソリッド要素やシェル要素や膜要素でモデル化してトロイダル形状を成したケース本体モデル14が作成される(ステップS10)。
同様に、トレッドパターンを備えるトレッド部をソリッド要素でモデル化したトレッドモデル12が同時に作成される(ステップS12)。
トレッドモデル12およびケース本体モデル14の作成は特に制限されず、公知の方法で作成されればよい。例えば、予めタイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときのタイヤ断面形状を作成し、これをタイヤ周方向に展開して3次元輪郭形状を作成した後、メッシュ分割を行なって作成する。
次に、トレッドモデル12の結合すべき表面の節点を境界節点として設定する(ステップS16)。
トレッドモデル12とケース本体モデル14とは別々に作成しているので、ケース本体モデル14の外周面にトレッドモデル12の内周面にぴったりと一致しない場合がある。
例えば、トレッドモデル12はトレッドパターンを再現するためにケース本体モデル14に比べて細かくメッシュ分割する場合が多い。このため、ケース本体モデル14の外周面はトレッドモデル12の結合すべき内周面に比べて角張る場合が多い。
X = (X1/Z1)・Z , Y=Y1 (1)
一方、ケース本体モデル14における外周面上の当接すべき有限要素の境界面は下記式(2)で表される。
A・X + B・Y + C・Z =0 (2)
(A,B,Cは定数)
したがって、式(1)および式(2)から直線Lと境界面との交点を求めることができ、この交点を境界節点Qとする。
こうして、有限要素の節点を非当接節点Pから境界節点Qに移動し、図6(b)に示すようにトレッドモデル12を再構成する。
ここで重み係数wi(iは自然数)は以下のようにして求められる。
図8は、重み係数wiを算出する際に用いる変換Tを説明する図である。この変換Tは、ケース本体モデル14の有限要素の節点1,2,3,4とこれらの節点間を結ぶ線分によって形成される物理空間上の台形(台形高さH,底辺の長さL1、上辺の長さL2とする)はパラメトリック空間上の一辺の長さが2の正方形に変換されるものであり、節点1,2,3,4は正方形の各頂点に、台形の各辺は正方形の各辺に、台形の内部領域は正方形の内部領域に写像される。また、この逆変換T−1により正方形は台形に変換され、正方形の内部領域は台形の内部領域に、正方形の各頂点は台形の各節点に、正方形の各辺は台形の各辺に写像される。すなわち、変換Tは、x−y座標空間(物理空間)におけるケース本体モデルの有限要素の台形形状を成した境界面をR−S座標空間(パラメトリック空間)における正方形に一対一に写像する。
したがって、ケース本体モデル14の境界面を有する有限要素毎にこの有限要素の境界面上に位置するトレッドモデル12の境界節点に対して、変換Tにより正方形上の対応点を求めることができる。
より具体的には、図9(a)〜(d)に示す形状関数N1(r,s),N2(r,s),N3(r,s),N4(r,s)を用いて、x−y座標空間における位置座標(x,y)を下記式(3)を用いて位置座標(r、s)と対応づけることができる。ここで、x1,y1,x2,y2,x3,y3,x4,y4は、それぞれ、ケース本体モデル14の有限要素の境界面における節点1,2,3,4の位置座標である。
このようにトレッドモデル12の境界節点に作用する物理量を、この境界節点が位置する境界面を持つケース本体モデル14の有限要素の節点の物理量で表すことで、トレッドモデル12の有限要素の挙動を規制することができる。
モデルの結合は種々の公知のシミュレーションに用いることができる。
例えば、シミュレーションモデル10の変形挙動を動的に算出する、すなわち動的解析を行なう場合、所定の時間ステップ毎に以下の計算を行なう陽解法を行なう。ある時間ステップにおいて、トレッドモデル12の境界節点(拘束される点)に作用する力とこの境界節点の質量を、ケース本体モデル14の節点(拘束する節点)に、重み係数wiに応じた分配を行なって、これらの節点(ケース本体モデル14の拘束する節点)の質量および作用する力を修正する。この場合、トレッドモデル12の拘束される境界節点すべてに対して上記分配を行なった後、トレッドモデル12の拘束される境界節点を除いたトレッドモデル12の節点とケース本体モデル14の節点の加速度を計算する。この後、ケース本体モデル14の拘束する節点の加速度は、重み係数wiを用いてトレッドモデル12の境界節点に振り分けられる。こうして、トレッドモデル12における境界節点の加速度を求めることができる。求められた境界節点における加速度とこの境界節点における質量とを用いてこの境界節点に加わる力を求める。こうして、次の時間ステップにおいて作用する力を求める。勿論外力として次の時間ステップにおいて境界節点に力が付加された場合、この力も加算される。このような陽解法は、タイヤの挙動を動的に再現するシミュレーション演算に好適である。
例えば、上記拘束式からトレッドモデル12の境界節点の自由度を消去したモデルのマトリクスを作成する。この方法は、タイヤの挙動を静的に再現するシミュレーション演算に好適であり、境界節点の自由度を消去してマトリクス全体における自由度を少なくするので解析に要する演算時間を短縮することができる。
また、別の方法として拘束式から節点の自由度を消去する方法に替えて、モデル全体のマトリクス中、拘束されるトレッドモデルの境界節点と拘束するケース本体モデルの節点との対角成分に同じ値のぺナルティ数を加算し、交差成分に同じ値のペナルティ数を減算することで、修正したモデルのマトリクスを作成する。
また、下記式(9)に示すように、マトリクス中のu2とu3に対応する対角成分k22,k33にペナルティ係数Kを加算し、マトリクス中のu2とu3の交差成分k23,k32から同じ値のペナルティ係数Kを減算する。ここで、ペナルティ係数Kは例えば、マトリクス中のu2とu3の対角成分k22,k33の大きい方に1010倍した、極めて大きな値である。
本実施形態では拘束条件を表す拘束式が一旦設定されると、この拘束式を記憶保存するので、動的解析や静的解析等の解析方法を変えても同じ拘束式を用いてトレッドモデル12を結合することができる。また、市販されている多くの商用有限要素プログラムの場合、拘束式を設定入力する項目を備えているので、商用有限要素プログラム上で上記拘束式を設定入力することで、商用有限要素プログラム上で2つのモデルが結合したタイヤのシミュレーションモデルを自在に作成することができる。
例えば、作成されたタイヤのシミュレーションモデル10に対して、設定されたシミュレーション演算の条件に従ってシミュレーション演算が行なわれる。より具体的には、タイヤのシミュレーションモデル10に別途作成した図示されないリムモデルが装着され、シミュレーションモデル10の内周面に一定の荷重を負荷することによって内圧充填を再現するように内圧充填処理が施される。さらに、この内圧充填処理後のシミュレーションモデル10は、図示されない剛体の路面モデルに設定された負荷荷重で接地され、接地状態のシミュレーションモデル10が作成される。さらに、この接地状態のシミュレーションモデル10に並進速度と回転角速度を付与して路面上をタイヤが走行する状態を再現した走行状態のシミュレーションモデル10が作成される。
算出された特性物理量は、図示されないディスプレイやプリンタに出力され、タイヤの性能予測の指標とされる。
12 トレッドモデル
14 ケース本体モデル
20 演算装置
Claims (9)
- ベルト部、サイド部およびビード部を有するトロイダル形状を成したタイヤケース本体部と、このタイヤケース本体部の外周表面に設けられるトレッド部とを有するタイヤのシミュレーションモデルの作成を、コンピュータを用いた演算装置が実行する方法であって、
前記タイヤケース本体部を複数の有限要素で再現したケース本体モデルと、前記トレッド部を複数の有限要素で再現したトレッドモデルとを別々に作成するステップと、
前記ケース本体モデルの外周表面に前記トレッドモデルを配置したときの、前記ケース本体モデルの有限要素の境界面上に位置する前記トレッドモデルの境界節点を求めるステップと、
前記境界節点の位置座標に基づいて、前記ケース本体モデルの有限要素の節点に対する重み付け係数を求めるステップと、
前記境界節点が位置する前記境界面を形成する前記ケース本体モデルの有限要素の節点の物理量と前記重み付け係数とを用いて、前記境界節点の挙動を規制する拘束条件を定めるステップと、
前記拘束条件により前記トレッドモデルの前記境界節点の挙動を拘束することにより、前記ケース本体モデルに前記トレッドモデルを結合して、前記タイヤケース本体部と前記トレッド部とが結合されたタイヤのシミュレーションモデルを作成するステップと、を有し、
前記境界節点を求めるステップにおいて、前記トレッドモデルの前記ケース本体モデルと結合すべき内周面の節点のうち、前記ケース本体モデルと当接していない非当接節点を、前記非当接節点を通り前記タイヤケース本体部のトロイダル形状の中心軸と直交する直線と前記ケース本体モデルの外周表面との交点に移動して前記ケース本体モデルの外周面と当接する前記境界節点を定めることを特徴とするタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。 - 前記重み付け係数を求めるステップにおいて、物理空間における第1形状の座標位置とパラメトリック空間における第2形状の位置座標とを一対一に対応付ける形状関数を用いて、前記ケース本体モデルの有限要素の境界面の前記第1形状の位置座標を、前記第2形状の位置座標に変換したものとして定めることにより、前記トレッドモデルの前記境界節点の位置座標から前記第2形状内における対応点の位置座標を求め、前記対応点の位置座標および前記形状関数を用いて前記重み付け係数を求める請求項1に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
- 前記第1形状は台形形状であり、前記対応点の位置情報はこの台形形状の形状寸法とこの台形形状内における前記境界節点の位置情報とを用いて求められる請求項2に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
- 前記拘束条件は、前記境界面を有する前記ケース本体モデルの有限要素の節点の物理量に前記重み付け係数を乗算して規定した多項式で表される請求項2または3に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
- 前記多項式は記憶保存される請求項4に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
- ベルト部、サイド部およびビード部を有するトロイダル形状を成したタイヤケース本体部と、このタイヤケース本体部の外周表面に設けられるトレッド部とを有するタイヤのシミュレーションモデルの作成を、コンピュータを用いた演算装置が実行する方法であって、
前記タイヤケース本体部を複数の有限要素で再現したケース本体モデルと、前記トレッド部を複数の有限要素で再現したトレッドモデルとを別々に作成するステップと、
前記ケース本体モデルの外周表面に前記トレッドモデルを結合する際、前記トレッドモデルの前記ケース本体モデルと結合すべき表面の節点のうち、前記ケース本体モデルの外周表面と当接しない非当接節点に対して、この非当接節点を通り前記タイヤケース本体部のトロイダル形状の中心軸に向かい、かつこの中心軸と直交する直線を仮想し、この直線が前記ケース本体モデルの外周表面と交わる交点に前記非当接節点を移動して前記ケース本体モデルの外周表面と当接する境界節点を定めるステップと、
定められた境界節点を用いて前記トレッドモデルを再構成して、前記ケース本体モデルに前記トレッドモデルを結合するステップと、を有することを特徴とするタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。 - 前記ケース本体モデルに前記トレッドモデルを結合するステップにおいて、前記ケース本体モデルの外周表面に前記トレッドモデルを配置したときの、前記ケース本体モデルの有限要素の境界面上に位置する前記トレッドモデルの境界節点を求め、前記境界節点の位置座標に基づいて、前記ケース本体モデルの有限要素の節点に対する重み付け係数を求め、前記境界節点が位置する前記境界面を形成する前記ケース本体モデルの有限要素の節点の物理量と前記重み付け係数とを用いて、前記境界節点の挙動を規制する拘束条件を定め、この拘束条件により前記トレッドモデルの前記境界節点の挙動を拘束することにより、前記ケース本体モデルに前記トレッドモデルを結合して、前記タイヤケース本体部に前記トレッド部が結合したタイヤのシミュレーションモデルを作成する請求項6に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
- 前記拘束条件は、前記境界面を有する前記ケース本体モデルの有限要素の節点の物理量に前記重み付け係数を乗算して規定した多項式で表される請求項7に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
- 前記多項式は記憶保存される請求項8に記載のタイヤのシミュレーションモデルの作成方法。
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