JP4350272B2 - 穀物粒の液体含浸処理方法及び液体含浸処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、穀物粒の液体含浸処理方法及び液体含浸処理装置に関する。本発明によれば、穀物粒の割れを防止し、しかも歩留まり率を向上させることができる。
【0002】
【従来の技術】
穀類(例えば、米、小麦、大豆、及びソバ等)の食品加工の前段階として、穀物粒の洗浄又は剥皮、あるいは、穀物粒の表面又は内部に存在する有害物質又はタンパク質を除去するために、溶液への含浸処理は有効である。また、穀類の加工処理方法の1つとして、蒸煮操作が一般的に行われるが、本処理に先立って蒸煮に用いる溶液によって穀物粒を含浸処理することは、蒸煮の時間短縮又は食味向上に有効であることが知られている。
前記含浸処理は、対象となる穀物粒を溶液に浸け、放置することで実施することができる。しかしながら、工業的に大量の穀物粒を効率よく含浸処理する装置は従来知られておらず、従って、時間短縮、効率のよい作業、あるいは、歩留まり率の向上等の種々の要求を満足する含浸処理装置が望まれている。
【0003】
一方、米、小麦、大豆、及びソバ等には、食物アレルギー患者が摂食することでアレルギー症状を引き起こす有害物質、すなわち、アレルゲン分子が含まれることが知られており、穀類からアレルゲン分子を除去したアレルゲン除去処理穀物粒が、食物アレルギー患者の治療や食事に用いられている。
また、腎臓病で食事療法が必要な患者は、推定で全国に20万人といわれ、現在も増加の一途をたどっている。これらの患者では、低タンパク質化した穀類の摂取がタンパク質摂取量の抑制につながることから、腎臓病患者用として社会的ニーズが高い。
【0004】
これらの要求に対する解決手段として、例えば、米粒にタンパク質分解酵素を含浸処理することでアレルゲン分子を含むタンパク質を除去する、穀物粒アレルギー患者用のアレルゲン低減化穀物粒の製造方法が特公平6−9472号公報に開示されている。同様に、腎臓病患者用の低タンパク質米を得る方法が特開平9−182号公報に開示されている。その他、穀類からのアレルゲン分子の除去方法又は穀粒の低タンパク質化として、アルカリ溶液を利用する方法が特開平7−115920号公報に、そして、塩溶液を利用する方法が特開平5−292904号公報にそれぞれ開示されている。これらの製造方法にて効率よく目的の米粒を得るための装置が、特開平8−187053号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来公知のアレルゲン低減化米又は低タンパク質米の製造方法では、いずれの方法においても、高い生産効率と、米粒の破砕及び/又は粉末化の発生の抑制とを、同時に満足することができないという問題点があった。すなわち、これらの従来法では、容器に溶液と米粒とを入れて撹拌装置で撹拌したり、あるいは、容器ごと回転させたりして実施するので、反応が効率よく進むという利点はあるが、酵素反応を行う過程で米粒同士がぶつかり合い、機械的な作用によって米粒が破砕又は粉末化してしまう問題点があった。米粒の破砕又は粉末化を防止するためには、米粒を静置することが有効であるが、この場合には、効率よく反応が進まないという欠点があった。
【0006】
また、酵素溶液を用いた低タンパク質米やアレルゲン低減化米の製造方法、あるいは、その他溶液を用いた同処理米の製造方法では、一定量の米に2〜10倍程度の溶液を加えて処理することが必要である。従って、実際の製造工程では、処理槽に米粒と処理溶液とを充填して一定時間処理することになるので、反応槽の容積に対して充填可能な米粒の量は1/2以下となってしまい、非効率という問題点がある。例えば、特開平8−187053号公報に開示の装置では、本発明者が実施したところによれば、酵素溶液は米粒の4倍以上の容積が必要であり、反応槽に充填可能な米粒は、反応槽の容量の1/4以下となっている。
【0007】
本発明者は、穀物粒を、その粒形を保持したまま、液体にて効率よく含浸処理することのできる方法及び装置について、鋭意研究を重ねた結果、穀物粒を静置させて含浸処理を行なう際に、少なくとも1回以上、穀物粒を含浸処理用液体と非接触の状態にする(好ましくは、穀物粒と液体との接触及び非接触を複数回繰り返す)と、穀物粒と液体とを単に接触させたまま反応させた場合に比較して、効率よく反応が進み、しかも、穀物粒の粒形を保持することができることを新たに見出した。
従って、本発明の課題は、穀物粒を、その粒形を保持したまま、液体にて効率よく含浸処理することのできる方法及び装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本明細書は、アルカリ水溶液、酸水溶液、タンパク質分解酵素溶液、及び塩溶液からなる群から選択されるアレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液中に穀物粒を静置する含浸処理の開始から終了までの間に、少なくとも1回以上、前記穀物粒を前記処理用溶液と非接触の状態にすることを特徴とする、穀物粒のアレルゲン低減化又は低タンパク質化処理方法であって、前記非接触の状態を、複数の比較的長い時間の接触工程のそれぞれの間に、(1)0.5分間〜1時間の比較的長い時間の非接触工程、又は(2)5〜25秒の比較的短い時間の非接触工程、及び5〜25秒の比較的短い時間の接触工程との組合せを複数回繰り返す工程、を挿入することによって行なう、前記アレルゲン低減化又は低タンパク質化処理方法を開示する。
【0009】
また、本明細書は、(1)アルカリ水溶液、酸水溶液、タンパク質分解酵素溶液、及び塩溶液からなる群から選択されるアレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液の流入及び流出が可能な穀物粒収容部を有する穀物粒収容手段;
(2)前記アレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液を貯留可能であり、前記穀物粒収容手段の穀物粒収容部を静置状態で収容可能であり、しかも、前記穀物粒の含浸処理が可能な液体貯留反応槽;
(3)前記の穀物粒収容手段及び/又は前記の液体貯留反応槽を移動させることにより、
(イ)前記穀物粒収容手段の穀物粒収容部が、前記の液体貯留反応槽内部に収容され、その液体貯留反応槽内に充填された前記アレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液に浸漬された接触状態
と、
(ロ)前記穀物粒収容手段の穀物粒収容部が、前記の液体貯留反応槽に充填された前記アレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液と分離された非接触状態
とを相互に変更することのできる移動手段;及び
(4)前記の液体貯留反応槽内にて、前記アレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液中で、前記穀物粒収容手段の穀物粒収容部中の穀物粒を静置させた前記接触状態で実施する含浸処理の開始から終了までの間に、少なくとも1回以上、前記穀物粒と前記アレルゲン低減化又は低タンパク質化処理用溶液とを分離させて前記の非接触状態にし、再度、前記の接触状態に復帰させる前記移動手段の動作を制御する制御手段;
を含み、前記制御手段における前記移動手段の動作制御において、前記非接触状態を、複数の比較的長い時間の接触工程のそれぞれの間に、
(イ)0.5分間〜1時間の比較的長い時間の非接触工程、又は
(ロ)5〜25秒の比較的短い時間の非接触工程、及び5〜25秒の比較的短い時間の接触工程との組合せを複数回繰り返す工程、
を挿入することによって行なうことを特徴とする、穀物粒のアレルゲン低減化又は低タンパク質化処理装置(以下、本発明による第1の装置と称することがある)を開示する。
更に、本発明は、含浸処理用液体を貯留可能であり、しかも、前記穀物粒の含浸処理が可能な穀物粒収容反応槽に備えた穀物粒収容部に、穀物粒を静置状態で収容し、
液体供給充填手段によって、前記穀物粒収容部に、含浸処理用液体を供給することによって、その穀物粒収容部内に含浸処理用液体を充填して、前記穀物粒収容部内の穀物粒が含浸処理用液体に浸漬された接触状態にし、そして液体排出手段によって、前記の穀物粒収容部から、含浸処理用液体を排出し、前記穀物粒収容部内の穀物粒が前記含浸処理用液体と接触しない非接触状態にする、
ことを含む、穀物粒の液体含浸処理方法であって、
前記穀物粒収容部中の穀物粒を静置させた前記接触状態で実施する含浸処理の開始から終了までの間に、少なくとも1回以上、前記液体排出手段によって前記含浸処理用液体を前記穀物粒収容部から排除し、再度、液体供給充填手段によって前記の接触状態に復帰させることを特徴とする、前記穀物粒の液体含浸処理方法にも関する。
【0010】
更に、本発明は、(1)穀物粒を静置状態で収容可能な穀物粒収容部を有し、含浸処理用液体を貯留可能であり、しかも、前記穀物粒の含浸処理が可能な穀物粒収容反応槽;
(2)前記の穀物粒収容部に含浸処理用液体を供給し、その穀物粒収容部内に含浸処理用液体を充填し、前記穀物粒収容部内の穀物粒が含浸処理用液体に浸漬された接触状態にすることのできる液体供給充填手段;
(3)前記の穀物粒収容部から、含浸処理用液体を排出し、前記穀物粒収容部内の穀物粒が前記含浸処理用液体と接触しない非接触状態にすることのできる液体排出手段;
(4)前記の穀物粒収容反応槽内にて、前記の液体供給充填手段によって充填され、含浸処理用液体中で、前記穀物粒収容部中の穀物粒を静置させた前記接触状態で実施する含浸処理の開始から終了までの間に、少なくとも1回以上、前記液体排出手段によって前記含浸処理用液体を前記穀物粒収容部から排除し、再度、液体供給充填手段によって前記の接触状態に復帰させる動作を制御する制御手段;
を含むことを特徴とする、穀物粒の液体含浸処理装置(以下、本発明による第2の装置と称することがある)にも関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の処理方法及び処理装置は、含浸処理用液体による穀物粒の含浸処理を、その粒形を保持したまま、効率よく実施することのできる方法及び装置である。
前記処理の対象となる穀物粒は、特に限定されるものではないが、例えば、食品加工に使用される種々の穀類、例えば、イネ科植物、タデ科植物、又は豆科植物の種子又はその一部を挙げることができる。より具体的には、イネ科植物としては、例えば、小麦、大麦、ライ麦、若しくはオーツ麦等の麦類、餅米、粳米、若しくはインディカ米等の米類、餅種若しくは粳種のヒエ、キビ、若しくはアワ等の雑穀物粒、又はトウモロコシ若しくはモロコシを挙げることができ、タデ科植物としては、例えば、ソバ又はアマランサスを挙げることができ、豆科植物としては、例えば、大豆、小豆、ヒヨク豆、緑豆、シカク豆、又はソラマメを挙げることができる。
【0012】
また、前記処理に使用する含浸処理用液体は、処理対象である穀物粒の種類及びその処理の内容に応じて、適宜選択することができる。例えば、穀物粒のアレルゲン低減化処理又は低タンパク質化処理を実施する場合には、前記アレルゲン低減化処理又は低タンパク質化処理に使用することのできる種々の溶液、例えば、水、アルカリ水溶液、酸水溶液、タンパク質分解酵素溶液、又は塩溶液を挙げることができる。本発明による処理方法及び処理装置は、アレルゲン低減化処理又は低タンパク質化処理に特に適した方法及び装置であり、アレルギー患者用のアレルゲン低減化穀物粒、又は腎臓病患者用の低タンパク質穀物粒の製造に特に適した方法及び装置である。
【0013】
本発明の処理方法では、含浸処理の開始から終了までの間に(すなわち、途中に)、少なくとも1回以上、穀物粒を含浸処理用液体と非接触の状態にする。
本明細書において、「接触状態」、すなわち、穀物粒が含浸処理用液体と「接触」している状態とは、処理対象である穀物粒の全部が含浸処理用液体中に完全に沈んだ状態、すなわち、穀物粒の全部が、含浸処理用液体の水面下に位置する状態を意味する。
一方、本明細書において、「非接触状態」、すなわち、穀物粒が含浸処理用液体と「非接触」である状態とは、処理対象である穀物粒の全部が含浸処理用液体の外部(例えば、大気中)にある状態を意味する。なお、含浸処理用液体中に沈んだ状態の穀物粒を、前記含浸処理用液体から取り出した直後には、前記穀物粒の表面は含浸処理用液体で濡れた状態になっているが、この状態も、前記「非接触状態」に含まれる。
【0014】
本発明の処理方法においては、(1)比較的長い時間の接触工程、(2)比較的長い時間の非接触工程、(3)比較的短い時間の接触工程、及び/又は(4)比較的短い時間の非接触工程を任意に組み合わせて実施することができる。
【0015】
前記の「比較的長い時間の接触工程」では、穀物粒に含浸処理用液体が実質的に含浸するのに充分な時間に亘って、穀物粒を含浸処理用液体中に静置することができる。「穀物粒に含浸処理用液体が実質的に含浸するのに充分な時間」は、例えば、処理対象である穀物粒の種類や実施する含浸処理の種類などに応じて変動するので、一義的に定義することはできないが、例えば、米粒をアルカリ処理又は酵素処理する場合には、通常、10分間〜4時間(好ましくは20分間〜2時間、より好ましくは20分間〜40分間)である。
なお、本工程における前記「静置」とは、含浸処理を実施する反応槽に対して、処理対象である穀物粒を静置させることを意味し、含浸処理用液体に対して、穀物粒を静置させることを必ずしも意味しない。例えば、本発明方法においては、処理対象である穀物粒の粒形への影響を排除するために、通常、含浸処理用液体を静止させた状態で本工程を実施するが、所望により、含浸処理液体をゆっくりと(すなわち、穀物粒の粒形の保持に影響を与えない程度の低い速度で)撹拌又は循環させた状態でも本工程を実施することができる。後者の場合には、処理対象である穀物粒は、含浸処理を実施する反応槽に対して静置しているものの、含浸処理用液体に対しては静置していない。
【0016】
前記の「比較的長い時間の非接触工程」の継続時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5分間〜1時間、より好ましくは0.5分間〜10分間、更に好ましくは0.5分間〜2分間であることができる。
【0017】
前記の「比較的短い時間の接触工程」は、その直前の液体非接触工程と、その直後の液体非接触工程との間に実施する短期的且つ遷移的な接触工程である。本工程の継続時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは5秒間〜25秒間、より好ましくは10秒間〜20秒間であることができる。
【0018】
前記の「比較的短い時間の非接触工程」は、その直前の液体接触工程と、その直後の液体接触工程との間に実施する短期的且つ遷移的な接触工程である。本工程の継続時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは5秒間〜25秒間、より好ましくは10秒間〜20秒間であることができる。
【0019】
本発明の処理方法においては、複数の「比較的長い時間の接触工程」のそれぞれの間に、(1)「比較的長い時間の接触工程」、及び/又は(2)「比較的短い時間の接触工程」と「比較的短い時間の非接触工程」とからなる組合せを1サイクルとし、そのサイクルを複数回繰り返す工程を、任意に挿入することができる。
【0020】
本発明の処理方法における接触工程及び非接触工程の実施パターンは、これに限定されるものではないが、例えば、
(A)比較的長い時間の接触工程(好ましくは20分間〜40分間)と比較的長い時間の非接触工程(好ましくは0.5分間〜2分間)とからなる組合せを1サイクルとし、そのサイクルを複数回繰り返した後、最後に、比較的長い時間の接触工程(好ましくは20分間〜40分間)を実施するパターン(例えば、後述する実施例1及び実施例3);又は
(B)比較的長い時間の接触工程(好ましくは20分間〜40分間)と、比較的短い時間の非接触工程(好ましくは10秒間〜20秒間)及び比較的短い時間の接触工程(好ましくは10秒間〜20秒間)からなる組合せを1サイクルとし、そのサイクルを複数回(好ましくは3回〜5回)繰り返す工程とを、相互に繰り返した後、最後に、比較的長い時間の接触工程(好ましくは20分間〜40分間)を実施するパターン(例えば、後述する実施例2)
を挙げることができる。
【0021】
本発明の処理方法において、液体接触工程から液体非接触工程への移行方法、及び液体非接触工程から液体接触工程への移行方法は、処理対象である穀物粒の粒形を保持したまま(すなわち、穀物粒の破砕又は粉末化を発生させることなく)移行可能である限り、特に限定されるものでない。以下、本発明による第1の装置を用いて実施する本発明方法、及び本発明による第2の装置を用いて実施する本発明方法について、図面に基づいて更に説明する。
【0022】
図1は、本発明による第1の装置の一態様を模式的に示す説明図である。本発明による第1の装置10は、穀物粒収容手段としての穀物粒収容槽11と、前記穀物粒収容槽11の下方に位置する液体貯留反応槽12と、前記穀物粒収容槽11を上下に(図1中の矢印Aの方向)移動することのできる移動手段13と、この移動手段13の上下運動を制御することのできる制御手段14とを含む。
【0023】
前記穀物粒収容槽11の材質及び形状は、含浸処理用液体2を貯留した液体貯留反応槽12内に移動した際に、含浸処理用液体2が、穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aの内部に流入し、逆に、液体貯留反応槽12の外へ移動した際に、含浸処理用液体2が穀物粒収容部11aから完全に排出されるように流出可能である限り、特に限定されるものでなく、例えば、網状、かご状、又は袋状の形状を挙げることができる。内部に充填した穀物粒の破砕又は粉末化を防止することができる点で、形状が変化しないことが好ましい。
【0024】
前記液体貯留反応槽12は、含浸処理用液体2を貯留可能であり、しかも、穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aを静止状態で収容可能である。穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11a内に収容した状態の穀物粒1を、含浸処理用液体2により液体貯留反応槽12内で含浸処理することが可能である。なお、含浸処理用液体2は、供給管17により液体貯留反応槽12に供給され、排出管18により液体貯留反応槽12から排出される。
【0025】
前記移動手段13は、穀物粒収容槽11の上部に着脱可能に連結されたワイヤー15と、そのワイヤー15の巻き上げ及び巻き戻しを行なうことのできるウインチ16とからなる。前記ウインチ16により前記ワイヤー15の巻き上げ及び巻き戻しを行なうことにより、穀物粒収容槽11を上下に移動することができる。例えば、ウインチ16によりワイヤー15を巻き上げると、液体貯留反応槽12内の含浸処理用液体2中に、穀物粒1を充填した穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aを沈めることができる(この状態を図1において破線11’で示す)。また、ウインチ16によりワイヤー15を巻き戻すと、前記含浸処理用液体2中から前記穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aを取り出すことができる。
【0026】
本発明による第1の装置に用いることのできる移動手段は、穀物粒収容槽の穀物粒収容部を、液体貯留反応槽の内部に搬入し、含浸処理用液体に浸漬された接触状態にすることができ、しかも、液体貯留反応槽の内部から液体貯留反応槽の外部へ搬出し、含浸処理用液体と分離された非接触状態にすることができる限り、特に限定されるものではなく、図1に示すような穀物粒収容槽11を上下に移動する移動手段13以外にも、例えば、図1に示すように穀物粒収容槽11の下方に液体貯留反応槽が位置する場合には、液体貯留反応槽を上下に移動する移動手段であることができる。あるいは、穀物粒収容槽又は液体貯留反応槽のいずれか一方のみを移動させることのできるこれらの移動手段を併用することにより、穀物粒収容槽及び液体貯留反応槽の両方を移動させることもできる。
【0027】
図1に示す本発明による第1の装置10では、例えば、以下に示す手順により、本発明の処理方法を実施することができる。
すなわち、穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aに、処理対象である穀物粒1を充填した後、移動手段13により穀物粒収容槽11を下方へ移動させ、含浸処理用液体2を満たした液体貯留反応槽12内に、穀物粒収容部11aを完全に沈め、その状態で静置する。所定時間が経過した後、移動手段13により穀物粒収容槽11を上方へ移動させ、液体貯留反応槽12から穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aを取り出す。所定時間が経過した後、再び、移動手段13により穀物粒収容槽11を下方へ移動させ、液体貯留反応槽12内に穀物粒収容部11aを沈め、所定時間が経過した後、移動手段13により穀物粒収容槽11を上方へ移動させ、液体貯留反応槽12から穀物粒収容槽11の穀物粒収容部11aを取り出す。以下、必要な回数だけ、穀物粒収容槽11の下方移動による、液体貯留反応槽12内への搬入と、穀物粒収容槽11の上方移動による、液体貯留反応槽12からの搬出とを繰り返した後、最後に再び、移動手段13により穀物粒収容槽11を下方へ移動させ、液体貯留反応槽12内に穀物粒収容部11aを沈め、その状態で静置する。所定時間が経過したところで、本発明の処理方法が完了する。
処理後の穀物粒1は、そのまま次工程(例えば、洗浄工程)へ使用可能である。
【0028】
なお、この場合、液体貯留反応槽12内の含浸処理用液体2として、前記処理の全工程に亘って、同一液体のみを使用することもできるし、あるいは、複数種の液体(例えば、アルカリ水溶液、酸水溶液、タンパク質分解酵素溶液、又は塩溶液)を使用することもできる。また、同一液体又は複数の液体により含浸処理を実施した後、続いて、洗浄用液体(例えば、水)を使用することにより、単一の液体貯留反応槽において前記含浸処理及び洗浄処理の両方を行なうことができる。
また、液体貯留反応槽12内の液体に適宜、溶質を添加し、溶液量を変化させることなく、溶質の濃度を変えて反応を制御(例えば、促進又は抑制)することができる。
更には、複数個の液体貯留反応槽を用意し、穀物粒収容槽を移動させることによって、複数の液体との反応を連続的に実施することができる。
【0029】
本発明による第1の装置においては、処理後の穀物粒を洗浄するために、液体貯留反応槽に洗浄水を供給し、オーバーフローにて洗浄水を排出することができるように、液体貯留反応槽には、洗浄水を供給する供給管と、洗浄水を排出するオーバーフロー排出管とを装着することが好ましい。前記の洗浄水供給管は、含浸処理用液体用の供給管17と兼用することができる。
また、液体貯留反応槽に、含浸処理しやすい温度に制御することのできる加温装置及び/又は冷却装置を内装することもできる。また、液体貯留反応槽に、含浸処理用液体を混合させるため、槽内を撹拌する回転翼、あるいは、槽内の含浸処理用液体を循環させる循環手段を内装することもできる。なお、前記回転翼は、含浸処理を実施している穀物粒の形状の保持に影響を与えない程度の低い回転速度で撹拌を実施可能であることが必要である。また、前記循環手段は、含浸処理を実施している穀物粒の形状の保持に影響を与えない程度の水流速度で循環を実施可能であることが必要である。
【0030】
図2は、本発明による第2の装置の一態様を模式的に示す説明図である。本発明による第2の装置20は、穀物粒収容反応槽21と、含浸処理用液体2を貯液することのできる貯液槽22と、前記穀物粒収容反応槽21と前記貯液槽22との間をそれぞれ連結する供給管23a及び排出管23bと、前記供給管23a及び前記排出管23bの途中にそれぞれ設けられた送液ポンプ24a,24bと、前記供給管23a及び排出管23bに設けられた各バルブ(図示していない)並びに前記送液ポンプ24a,24bを制御することのできる制御手段25とを含む。
【0031】
図2に示す本発明による第2の装置20では、貯液槽22、供給管23a、及び送液ポンプ24aが、液体供給充填手段として機能する。すなわち、制御手段25の制御により、前記供給管23aを介して貯液槽22から穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21aへ、貯液槽22内の含浸処理用液体2を供給することができる。
一方、貯液槽22、排出管23b、及び送液ポンプ24bが、液体排出手段として機能する。すなわち、制御手段25の制御により、前記排出管23bを介して穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21aから貯液槽22へ、穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21a内の含浸処理用液体2を排出することができる。
【0032】
穀物粒収容反応槽21及び貯液槽22の材質としては、穀物粒の液体含浸処理用の反応槽に一般に使用される材質、例えば、金属又はプラスチックを用いることができる。穀物粒収容反応槽21の底部には、含浸処理用液体2の排出を効率よく進行させるために、図2に示すように、含浸処理用液体2が通過可能であり、且つ穀物粒1が落下しない程度の細孔を有する隔壁26(例えば、網又は板)を設け、排液室27となっていることが好ましい。
【0033】
図2に示す本発明による第2の装置20では、例えば、以下に示す手順により、本発明の処理方法を実施することができる。
すなわち、穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21aに、処理対象である穀物粒1を充填した後、含浸処理用液体2を貯液している貯液槽22から穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21a内へ、供給管23aを介して、含浸処理用液体2を注液する。穀物粒1の全部が含浸処理用液体2の水面下となるまで、前記注液を行ない、注液完了後、その状態で静置する。所定時間が経過した後、排出管23bを介して、穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21aから貯液槽22へ含浸処理用液体2を完全に排出する。所定時間が経過した後、再び、供給管23aを介して、貯液槽22から穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21a内へ含浸処理用液体2を注液し、所定時間が経過した後、排出管23bを介して、穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21aから貯液槽22へ含浸処理用液体2を排出する。以下、必要な回数だけ、含浸処理用液体2の供給と含浸処理用液体2の排出とを繰り返した後、最後に再び、供給管23aを介して、貯液槽22から穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21a内へ含浸処理用液体2を注液し、注液完了後、その状態で静置する。所定時間が経過したところで、本発明の処理方法が完了する。
処理後の穀物粒1は、そのまま次工程(例えば、洗浄工程)へ使用可能である。
【0034】
本発明による第2の装置においては、図2に示すように、穀物粒収容反応槽21から貯液槽22へ含浸処理用液体2を送液可能な排出管23bを設けることにより、穀物粒収容反応槽21内に一度供給した含浸処理用液体2を、一時的に貯液し、再び、穀物粒収容反応槽21内に供給する(すなわち、含浸処理用液体を繰り返して再利用する)ことのできる貯液槽22を設けることが、含浸処理用液体のコストの点で好ましいが、穀物粒収容反応槽21から排出管23bにより送液される含浸処理用液体2を、装置外(例えば、廃液処理系)に排出することもできる。
【0035】
本発明による第2の装置においては、穀物粒収容反応槽と貯液槽との間の含浸処理用液体の移送手段として、図2に示す供給管23a及び排出管23bのように別々に設けることもできるし、あるいは、穀物粒収容反応槽と貯液槽との間を両方向に移送可能な供給及び排出兼用管を設けることもできる。
また、貯液槽から穀物粒収容反応槽への送液は、図2に示すように、穀物粒収容反応槽21の上部に設けた散水管28から含浸処理用液体2を供給することもできるし、あるいは、底部又は側面部から供給することもできる。
更に、含浸処理によって穀物粒から剥離した物質が、穀物粒収容反応槽の底部に集積することから、排出管23bは、穀物粒収容反応槽21の底面以外と接続していることが好ましい。例えば、排出管23bの吸入口29は、図2に示すように、穀物粒収容反応槽21の底面から離れた位置に設けることが好ましい。なお、穀物粒収容反応槽から含浸処理用液体を完全に排出した際に、穀物粒収容反応槽に充填された穀物粒の全部が含浸処理用液体と非接触状態にあることが必要であるので、排出管23bの吸入口29は、穀物粒収容反応槽に充填した際に最も下方に位置する穀物粒よりも下の位置に設ける必要がある。
【0036】
本発明による第2の装置においては、処理後の穀物粒を洗浄するために、穀物粒収容反応槽から貯液槽に含浸処理用液体を回収した後、穀物粒収容反応槽に洗浄水を供給し、オーバーフローにて洗浄水を排出することができるように、穀物粒収容反応槽には、洗浄水を供給する供給管と、洗浄水を排出するオーバーフロー排出管とを装着することが好ましい。前記の洗浄水供給管は、含浸処理用液体用の供給管23aと兼用することができる。
また、穀物粒収容反応槽及び/又は貯液槽に、含浸処理しやすい温度に制御することのできる加温装置及び/又は冷却装置を内装することもできる。
また、穀物粒収容反応槽及び/又は貯液槽に、含浸処理用液体を混合させるため、槽内を撹拌する回転翼、あるいは、槽内の含浸処理用液体を循環させる循環手段を内装することもできる。なお、前記回転翼は、含浸処理を実施している穀物粒の形状の保持に影響を与えない程度の低い回転速度で撹拌を実施可能であることが必要である。また、前記循環手段は、含浸処理を実施している穀物粒の形状の保持に影響を与えない程度の水流速度で循環を実施可能であることが必要である。
更に、穀物粒収容反応槽及び/又は貯液槽に、含浸処理しやすい圧力に制御することのできる減圧装置を内装することもできる。減圧装置を設ける場合には、穀物粒収容反応槽、貯液槽、並びに含浸処理用液体の供給管及び排出管が、含浸処理しやすい圧力を保持できるように、密閉可能であることが必要である。
【0037】
本発明による第2の装置においては、貯液槽の容積は、穀物粒収容反応槽の容積の10%〜10倍、好ましくは20%〜8倍、更に好ましくは1倍〜6倍であることができる。
また、処理後の穀物粒の取り出しを容易とするため、穀物粒収容反応槽が90°の角度まで傾けられるか、あるいは、底部が開放型となっていて処理穀物粒を取り出しやすい構造とすることが好ましい。あるいは、処理する穀物粒を、含浸処理用液体が自由に出入り可能なカゴ状の容器に充填し、これを穀物粒収容反応槽に挿入して処理し、反応及び洗浄終了後、穀物粒収容反応槽より処理カゴを引き上げる方法で処理物を取り出すこともできる。
更には、処理中に貯液槽の液体に適宜、溶質を添加し、溶液量を変化させることなく、溶質の濃度を変えて反応を制御(例えば、促進又は抑制)することができる。
【0038】
これまで説明したとおり、本発明の装置(本発明による第1の装置及び本発明による第2の装置を含む)は、含浸処理対象である穀物粒と、その処理に用いる含浸処理用液体とを分離することができ、少なくとも1回以上、穀物粒を含浸処理用液体と非接触の状態にする(好ましくは、穀物粒に対する含浸処理用液体の接触及び非接触を複数回繰り返す)ことにより、効率よく含浸処理穀物粒を得ることを特徴とする。
アレルゲン低減化処理又は低タンパク質化処理では、効率よくタンパク質除去反応を進める目的と、穀物粒表面の損傷や溶解を防止する目的とから、通常、酵素又はその他処理に用いる薬剤の濃度を比較的低く保つ必要があり、処理する穀物粒の容量に対して用いる含浸処理用液体の容量は倍以上の容量が必要となる。従って、従来装置の場合、例えば、穀物粒収容反応槽に穀物粒と含浸処理用液体とを入れて容器を撹拌するか、あるいは、内部撹拌装置で撹拌するか、あるいは、穀物粒を静置したまま溶液を循環させるかのいずれの場合においても、処理可能な穀物粒の量は反応容器の1/2以下と効率の悪いものであった。
【0039】
それに対して、本発明の装置(本発明による第1の装置及び本発明による第2の装置を含む)は、処理対象である穀物粒と、処理に用いる含浸処理用液体とを分離することを特徴としており、収容槽の容積とほぼ同じ量の穀物粒を、収容槽に収納して含浸処理することが可能である。但し、吸水膨潤により穀物粒の体積が増加することを考慮する必要があるので、例えば、収容槽の容積に対して、収納する穀物量を70〜95%とすることが必要である。
従って、本発明装置によれば、従来装置よりも効率よく一度に大量の処理穀物粒を得ることができ、本発明装置は、酵素溶液、酸、又はアルカリ溶液を用いたアレルゲン低減化処理又は低タンパク質化処理に特に適した装置である。
【0040】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
本実施例では、本発明による第2の装置を使用する本発明方法により、アルカリ処理アレルゲン低減化米を製造した。なお、本実施例に用いた第2の装置は、(イ)穀物粒収容反応槽21に直接、穀物粒1を収容する代わりに、穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21aに収容可能であり、しかも、含浸処理用液体の流入及び流出が可能な「処理かご」に穀物粒1を収容した状態で、穀物粒収容反応槽21に収容すること、及び(ロ)穀物粒収容反応槽21が、その内部の気密性を保持することのできる上蓋を備えていること以外は、図2に示す本発明による第2の装置20と基本的に同一の構成からなる。
【0041】
具体的には、処理かごにコシヒカリ生米粒8kgを入れ、容積が10Lである穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21a内に配置し、穀物粒収容反応槽21の蓋を閉めた。コシヒカリ生米粒の量は、穀物粒収容反応槽21の容積の80%であった。一方、貯液槽22にて100mmol/L水酸化カリウム溶液40Lを処理溶液として調製し、温度を40℃に加温した。前記処理溶液を穀物粒収容反応槽21へ送液し、穀物粒収容反応槽21を処理溶液で満たすことにより、穀物粒収容反応槽21内のコシヒカリ米粒を処理溶液と接触状態とし、脱気を30分間行なった。続いて、処理溶液を穀物粒収容反応槽21から貯液槽22へ送液し、穀物粒収容反応槽21内のコシヒカリ米粒を処理溶液と非接触状態とした。非接触状態となってから1分間経過した後、再び貯液槽22から穀物粒収容反応槽21へ処理溶液を送液し、穀物粒収容反応槽21を溶液で満たして接触状態とし、30分間放置した。米粒と処理溶液との接触時間が、合計4時間となるまで、これらの操作(すなわち、穀物粒収容反応槽21から貯液槽22への送液操作、及び貯液槽22から穀物粒収容反応槽21への送液操作)を繰り返した。次に、水道水にて処理米粒を一昼夜(24時間)水洗した後、乾燥することにより、乾燥させた処理米(以下、「処理米A1」と称する)を得た。
【0042】
【実施例2】
本実施例では、本発明による第1の装置を使用する本発明方法により、アルカリ処理アレルゲン低減化米を製造した。なお、本実施例に用いた第1の装置は、穀物粒収容反応槽21が、その内部の気密性を保持することのできる上蓋を備えていること以外は、図1に示す本発明による第1の装置10と基本的に同一の構成からなる。
【0043】
すなわち、穀物粒収容槽11に、コシヒカリ精白米粒2kgを入れた後、移動手段13により液体貯留反応槽12内に配置し、液体貯留反応槽12の蓋を閉めた。一方、貯液槽(図1には図示されていない)にて100mmol/L水酸化カリウム溶液10Lを処理溶液として調製し、温度を40℃に加温した。前記処理溶液を供給管17を介して液体貯留反応槽12へ送液し、液体貯留反応槽12を処理溶液で満たすことにより、液体貯留反応槽12内のコシヒカリ米粒を処理溶液と接触状態とし、脱気を30分間行なった後、液体貯留反応槽12の蓋を開放した。続いて、移動手段13による穀物粒収容槽11の持ち上げ(すなわち、コシヒカリ米粒を処理溶液と非接触状態にする)と、移動手段13による穀物粒収容槽11の降下(すなわち、再び、コシヒカリ米粒を処理溶液と接触状態にする)とからなるサイクルを、2分間、複数回繰り返した。この2分間におけるサイクル数は、4回であった。続いて、移動手段13により穀物粒収容槽11を液体貯留反応槽12へ戻し、溶液との接触状態を30分間保った。米粒と処理溶液との接触時間が、合計2時間となるまで、前記サイクルの繰り返し(2分間)と溶液との接触工程(30分間)とを繰り返した。次に、水道水にて処理米粒を一昼夜(24時間)水洗した後、乾燥することにより、乾燥させた処理米(以下、「処理米A2」と称する)を得た。
【0044】
【実施例3】
本実施例では、前記実施例1で使用したのと同じ本発明による第2の装置を使用する本発明方法により、酵素処理低タンパク質米を製造した。
すなわち、処理かごにコシヒカリ精白米粒8kgを入れ、穀物粒収容反応槽21の穀物粒収容部21a内に配置し、穀物粒収容反応槽21の蓋を閉めた。一方、貯液槽22にて酵素溶液16Lを処理溶液として調製した。酵素溶液は、水道水16Lに、プロテアーゼS(天野製薬社製)を0.1%となるように加え、pHを9.0に調整することにより調製した後、温度を55℃に加温した。前記処理溶液を穀物粒収容反応槽21へ送液し、穀物粒収容反応槽21を処理溶液で満たすことにより、穀物粒収容反応槽21内のコシヒカリ米粒を処理溶液と接触状態とし、脱気を30分間行なった。続いて、処理溶液を穀物粒収容反応槽21から貯液槽22へ送液し、穀物粒収容反応槽21内のコシヒカリ米粒を処理溶液と非接触状態とした。非接触状態となってから1分間経過した後、再び貯液槽22から穀物粒収容反応槽21へ処理溶液を送液し、穀物粒収容反応槽21を溶液で満たして接触状態とし、30分間放置した。米粒と処理溶液との接触時間が、合計20時間となるまで、これらの操作(すなわち、穀物粒収容反応槽21から貯液槽22への送液操作、及び貯液槽22から穀物粒収容反応槽21への送液操作)を繰り返した。次に、水道水にて処理米粒を一昼夜(24時間)水洗した後、乾燥することにより、乾燥させた処理米(以下、「処理米E1」と称する)を得た。
【0045】
【比較例1】
本比較例では、処理かごの持ち上げと降下とからなるサイクルを実施しないこと以外は、実施例2の操作を繰り返すことにより、アルカリ処理アレルゲン低減化米を製造した。
すなわち、穀物粒収容槽11に、コシヒカリ精白米粒2kgを入れ、移動手段13により液体貯留反応槽12内に配置し、液体貯留反応槽12の蓋を閉めた。一方、貯液槽(図1には図示されていない)にて100mmol/L水酸化カリウム溶液10Lを処理溶液として調製し、温度を40℃に加温した。前記処理溶液を液体貯留反応槽12へ送液し、液体貯留反応槽12を処理溶液で満たすことにより、液体貯留反応槽12内のコシヒカリ米粒を処理溶液と接触状態とし、脱気を30分間行なった。液体貯留反応槽12の蓋を開放して、そのまま40℃にて1.5時間放置(米粒と溶液との合計接触時間=2時間)した。次に、水道水にて処理米粒を一昼夜(24時間)水洗した後、乾燥することにより、乾燥させた処理米(以下、「処理米T1」と称する)を得た。
【0046】
【評価】
(1)タンパク質量の測定
前記実施例1〜3で得られた処理米A1、処理米A2、及び処理米E1、前記比較例1で得られた処理米T1、並びに処理前のコシヒカリ米(コントロール)について、各米粒を粉砕し、ケルダール法により、無水物に換算した全重量に対する全タンパク質量の割合(%)を測定した。結果を表1に示す。
処理前のコシヒカリは6.89%であり、処理米E1はタンパク質量が1/2以下であり、本発明の装置で製造した低タンパク質米の有効性が確認されたと考えられる。
【0047】
(2)アレルゲン性の評価
特開平10−179059号公報に記載の方法に基づいて、前記実施例1〜3で得られた処理米A1及び処理米A2、前記比較例1で得られた処理米T1、並びに処理前のコシヒカリ米(コントロール)について、塩可溶性画分を調製し、米アレルギー患者血清中のIgE抗体を一次抗体として用いるELISA法によりアレルゲン性を評価した。
すなわち、各米粒を粉砕し、得られた粉砕米1gを精秤した後、10容量倍量の抽出液[500mmol/L塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝溶液(PBS)(pH7.0)]を加え、2時間スターラーで撹拌した後、遠心分離(10000rpm,10分間)して上清を得た。得られた上清をPBSで2倍に希釈した希釈液を、ELISA法のサンプルとして使用した。ELISA法における二次抗体としては、ビオチンを結合したヒツジ抗ヒトIgE抗体を使用し、発色系としては、アビジン結合ペルオキシダーゼ及びオルトフェニレンジアミンを使用した。発色の程度は、490nmのO.D.値により測定した。
【0048】
結果を表1に示す。なお、表1における記号「−」は、アレルゲン性の評価を実施しなかったことを示す。処理米A1及び処理米A2の塩可溶性画分のIgE結合性は、0.001以下と検出限界以下であった。処理米T1では、0.295とIgE結合性が認められ、アレルゲン活性の残存が認められた。
【0049】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、従来法よりも効率よく、穀物粒の液体含浸処理を実施することができる。また、本発明によれば、穀物粒の粒形を保持したまま、前記処理を実施することができるので、従来法に比較して、穀物粒の割れを防止することができ、しかも、歩留まり率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の装置の一態様を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明による第2の装置の一態様を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・穀物粒;2・・・含浸処理用液体;
10・・・本発明による第1の装置;11,11’・・・穀物粒収容槽;
11a・・・穀物粒収容部;12・・・液体貯留反応槽;13・・・移動手段;
14・・・制御手段;15・・・ワイヤー;16・・・ウインチ;
17・・・供給管;18・・・排出管;
20・・・本発明による第2の装置;21・・・穀物粒収容反応槽;
21a・・・穀物粒収容部;22・・・貯液槽;23a・・・供給管;
23b・・・排出管;24a,24b・・・送液ポンプ;25・・・制御手段;
26・・・隔壁;27・・・排液室;28・・・散水管;29・・・吸入口。
Claims (2)
- (1)穀物粒を静置状態で収容可能な穀物粒収容部を有し、含浸処理用液体を貯留可能であり、しかも、前記穀物粒の含浸処理が可能な穀物粒収容反応槽;
(2)前記の穀物粒収容部に含浸処理用液体を供給し、その穀物粒収容部内に含浸処理用液体を充填し、前記穀物粒収容部内の穀物粒が含浸処理用液体に浸漬された接触状態にすることのできる液体供給充填手段;
(3)前記の穀物粒収容部から、含浸処理用液体を排出し、前記穀物粒収容部内の穀物粒が前記含浸処理用液体と接触しない非接触状態にすることのできる液体排出手段;
(4)前記の穀物粒収容反応槽内にて、前記の液体供給充填手段によって充填され、含浸処理用液体中で、前記穀物粒収容部中の穀物粒を静置させた前記接触状態で実施する含浸処理の開始から終了までの間に、少なくとも1回以上、前記液体排出手段によって前記含浸処理用液体を前記穀物粒収容部から排除し、再度、液体供給充填手段によって前記の接触状態に復帰させる動作を制御する制御手段;
を含むことを特徴とする、穀物粒の液体含浸処理装置。 - 含浸処理用液体を貯留可能であり、しかも、前記穀物粒の含浸処理が可能な穀物粒収容反応槽に備えた穀物粒収容部に、穀物粒を静置状態で収容し、
液体供給充填手段によって、前記穀物粒収容部に、含浸処理用液体を供給することによって、その穀物粒収容部内に含浸処理用液体を充填して、前記穀物粒収容部内の穀物粒が含浸処理用液体に浸漬された接触状態にし、そして液体排出手段によって、前記の穀物粒収容部から、含浸処理用液体を排出し、前記穀物粒収容部内の穀物粒が前記含浸処理用液体と接触しない非接触状態にする、
ことを含む、穀物粒の液体含浸処理方法であって、
前記穀物粒収容部中の穀物粒を静置させた前記接触状態で実施する含浸処理の開始から終了までの間に、少なくとも1回以上、前記液体排出手段によって前記含浸処理用液体を前記穀物粒収容部から排除し、再度、液体供給充填手段によって前記の接触状態に復帰させることを特徴とする、前記穀物粒の液体含浸処理方法。
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