JP2006204106A - 農作物の殺菌方法及び殺菌装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 オゾンを用いた殺菌方法において、その殺菌効果を向上する方法及びそのような殺菌方法を実施するのに好適な殺菌装置の提供を目的とする。
【解決手段】 殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物に対してオゾンを供給するステップ(b)と、を備えることを特徴とする農作物の殺菌方法。本発明は、殺菌対象物が、種子又は球根である場合に顕著な効果を得ることができる。また。ステップ(a)において、殺菌対象物が収容された雰囲気を100torr以下、さらには50torr以下とすることが本発明にとって好ましい。
【選択図】図2
【解決手段】 殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物に対してオゾンを供給するステップ(b)と、を備えることを特徴とする農作物の殺菌方法。本発明は、殺菌対象物が、種子又は球根である場合に顕著な効果を得ることができる。また。ステップ(a)において、殺菌対象物が収容された雰囲気を100torr以下、さらには50torr以下とすることが本発明にとって好ましい。
【選択図】図2
Description
本発明は、種籾等の種子、球根、野菜、果物等の農作物の殺菌方法に関し、特にオゾン水を用いた高効率な殺菌方法及び装置に関するものである。
水稲及び野菜の主要病害は種子伝染するので、水稲の箱育苗では種子消毒が不可欠となっている。種子消毒では細菌病、糸状菌病、線虫の病害予防に、数種類の薬剤を混合使用するが、同一系統の薬剤を連用すると耐性菌が発生し、病害予防に効かなくなっている。更に、薬液の廃液処理にかなりの処理コストがかかり、薬剤を使用しない、省力的な殺菌方法の開発が望まれている。
この対策として、種籾について温湯殺菌法が開発された。
この温湯殺菌法は、まず、塩水選を行う。この塩水選は、比重1.13以上の塩水中で浮遊する不良種子を選別排除する。これは、病気の伝染予防にもなる。
次に水洗い、水切りを行う。塩害を防ぐため、種籾をよく水洗いして、種籾から塩分を取り除く。
続いて、風乾を行う。風乾は、十分に水切りした後、種籾を天日に広げて水分約15%位まで完全に乾かす。温湯処理する場合、種籾を乾燥させなければ、殺菌効果が非常に低下するためである。
次に、袋詰めをする。乾燥された種籾をアミ袋に入れるが、入れ過ぎは袋内部まで均一に温度が上がらず、殺菌効果の低下や発芽むらの原因になるので注意を要する。
袋詰めされた状態で、種籾を温湯中、例えば60℃で10分間浸漬することにより殺菌を行う。温度を上げすぎると、発芽障害を引き起こし、又、温度が低いと殺菌効果がなくなる。
最後に、湯温殺菌後は種籾をすぐに水道水で冷却する。さもないと、蒸しご飯状となり、種籾として使えなくなるからである。
この温湯殺菌法は、まず、塩水選を行う。この塩水選は、比重1.13以上の塩水中で浮遊する不良種子を選別排除する。これは、病気の伝染予防にもなる。
次に水洗い、水切りを行う。塩害を防ぐため、種籾をよく水洗いして、種籾から塩分を取り除く。
続いて、風乾を行う。風乾は、十分に水切りした後、種籾を天日に広げて水分約15%位まで完全に乾かす。温湯処理する場合、種籾を乾燥させなければ、殺菌効果が非常に低下するためである。
次に、袋詰めをする。乾燥された種籾をアミ袋に入れるが、入れ過ぎは袋内部まで均一に温度が上がらず、殺菌効果の低下や発芽むらの原因になるので注意を要する。
袋詰めされた状態で、種籾を温湯中、例えば60℃で10分間浸漬することにより殺菌を行う。温度を上げすぎると、発芽障害を引き起こし、又、温度が低いと殺菌効果がなくなる。
最後に、湯温殺菌後は種籾をすぐに水道水で冷却する。さもないと、蒸しご飯状となり、種籾として使えなくなるからである。
温湯殺菌は加温制御が非常に難しく、かつ温湯殺菌の殺菌率は60%程度であり、十分に高い殺菌率が得られないため、近時、オゾン水を用いた殺菌方法が提案されている。例えば、特許文献1(特開平5−211808号公報)、特許文献2(特表平9−510081号公報)である。
特許文献1は、オゾン濃度が5ppm以上のオゾン水に種子を浸漬させることを提案している。また、特許文献2は、種子又は球根の残存水分量を、種子又は球根の重量に対して5〜60%の範囲に調節した後にオゾン水で殺菌処理することを提案している。
特許文献1は、オゾン濃度が5ppm以上のオゾン水に種子を浸漬させることを提案している。また、特許文献2は、種子又は球根の残存水分量を、種子又は球根の重量に対して5〜60%の範囲に調節した後にオゾン水で殺菌処理することを提案している。
上述したように、特許文献1、特許文献2に開示されているオゾン水を用いた殺菌方法による殺菌効果をさらに向上させることが求められている。本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、オゾンを用いた殺菌方法において、その殺菌効果を向上する方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、そのような殺菌方法を実施するのに好適な殺菌装置の提供を目的とする。
種籾に存在する病原性菌は表皮である籾殻と果皮との間の空隙部に99.9%以上存在すると言われている。残りの菌もその果皮の表面に近い肉質に存在する。本発明者らの検討によると、この空隙部には空気が存在するため、オゾン水中に浸漬したとしても、当該空隙部にオゾン水が浸入することが困難である。したがって、オゾン水中に浸漬したのみでは、十分な殺菌効果を得ることができない。また、籾殻の外皮表面は凹凸があるために、オゾン水中に種籾を浸漬したとしても、当該凹凸に空気が巻き込まれるため、その表面はあたかも撥水性を有するようになる。したがって、やはり、オゾン水中に浸漬したのみでは、十分な殺菌効果を得ることができない。その結果として、単にオゾン水に浸漬しただけの殺菌処理では殺菌率が数十%程度である。
そこで本発明者らは、籾殻と果皮との間の空隙部にオゾン水を十分に浸漬すること、さらに籾殻表面の撥水性を取り除くことを目的として、種籾を減圧雰囲気下に晒すことを検討した。そして、種籾を減圧雰囲気下に晒した後に、その減圧雰囲気下にオゾン水を供給してみたところ、殺菌効率を格段に向上できることを知見した。また、この効果はオゾン水に限らず、オゾンガスを用いた場合にも当然期待できる。
本発明は以上の知見に基づくものであり、殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物にオゾンを供給するステップ(b)と、を備える農作物の殺菌方法である。本発明において、種子又は球根が殺菌対象物である場合に、殺菌率向上の効果を得やすい。種子又は球根は、農作物の中でも、オゾンガス又はオゾンが浸入しにくい部位を有しているからである。
本発明は以上の知見に基づくものであり、殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物にオゾンを供給するステップ(b)と、を備える農作物の殺菌方法である。本発明において、種子又は球根が殺菌対象物である場合に、殺菌率向上の効果を得やすい。種子又は球根は、農作物の中でも、オゾンガス又はオゾンが浸入しにくい部位を有しているからである。
本発明のステップ(a)において、殺菌対象物が収容された雰囲気を100torr以下の真空度、さらには50torr以下の真空度とすることが好ましい。このような雰囲気とすることにより、殺菌の効果が向上する。
本発明のステップ(b)において、オゾンとしてオゾン濃度が0.5〜40ppmのオゾン水を供給し、オゾン水中のオゾンガスの気泡径を50μm以下とすることが好ましい。また、本発明のステップ(b)において、殺菌対象物をオゾン水中に1分以上浸漬することが好ましい。さらに、本発明のステップ(b)において、殺菌対象物を浸漬しているオゾン水を攪拌することが好ましい。
本発明は以上の殺菌方法を実施する以下の殺菌装置を提供する。この農作物の殺菌装置は、殺菌対象物の収容空間を有するとともに収容空間内で殺菌対象物の殺菌処理が行われる処理容器と、収容空間を減圧雰囲気とする減圧部と、処理容器内にオゾン水を供給するオゾン水供給部と、を備えることを特徴とする。
この殺菌装置は、減圧部により収容空間内が所定の減圧状態となった後に、オゾン水供給部により処理容器内にオゾン水を供給すればよい。
この殺菌装置は、減圧部により収容空間内が所定の減圧状態となった後に、オゾン水供給部により処理容器内にオゾン水を供給すればよい。
本発明のオゾン水供給部は、オゾン水中のオゾンガスの気泡を微細化する気泡微細化部を備えることが好ましい。また、処理容器は、オゾン水を撹拌する撹拌部を備えることが好ましい。
従来の薬液殺菌弊害の為、温湯処理が開発されてきたが、その殺菌率は60%程度である。また、オゾン水に単に浸漬するのみでは殺菌率は90%程度であるが、本発明を適用することにより、殺菌率を99.9%以上にすることが可能となった。
以下、殺菌対象物に対してオゾン水からオゾンを供給することを前提として本発明の実施の形態について説明する。
<殺菌方法>
本発明は、殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物に対してオゾンを供給するステップ(b)と、を備える。
本発明がステップ(a)において殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するのは、オゾン水による殺菌効果を向上するためである。より具体的には、前述したように、種籾の場合、籾殻と果皮との間の空隙部にオゾン水を十分に浸入させること、さらに籾殻表面の撥水性を取り除くことができるからである。ここでは種籾を例にしたが、表皮と肉質とを有する種子及び球根に対しても同様の効果を得ることができる。種子としては、トウモロコシ、インゲンマメ、オオムギ、ヒマワリ等、種々のものに適用できる。また、球根としては、アイリス、チューリップ、グラジオラス、ヒヤシンス等、種々のものに適用できる。
<殺菌方法>
本発明は、殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物に対してオゾンを供給するステップ(b)と、を備える。
本発明がステップ(a)において殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するのは、オゾン水による殺菌効果を向上するためである。より具体的には、前述したように、種籾の場合、籾殻と果皮との間の空隙部にオゾン水を十分に浸入させること、さらに籾殻表面の撥水性を取り除くことができるからである。ここでは種籾を例にしたが、表皮と肉質とを有する種子及び球根に対しても同様の効果を得ることができる。種子としては、トウモロコシ、インゲンマメ、オオムギ、ヒマワリ等、種々のものに適用できる。また、球根としては、アイリス、チューリップ、グラジオラス、ヒヤシンス等、種々のものに適用できる。
図1は、下記条件で種籾をオゾン水に浸漬したときの、浸漬前後の菌の生存率(生菌率)を測定したときの、真空度(torr)と生菌率(−)の関係を示すグラフである。図1に示すように、大気圧(760torr)から減圧していくにつれて生菌率が低くなることがわかる。特に、種籾の収容雰囲気を100torr以下の真空度とすることにより生菌率の低減が顕著となることがわかる。また、種籾の収容雰囲気を50torr以下の真空度とすることにより、生菌率を10-3以下(殺菌率99.9%)にすることができる。
以上の図1に示す結果より、殺菌対象物が収容された雰囲気が減圧されていれば、本発明の効果を享受することができるが、好ましくは殺菌対象物が収容された雰囲気を100torr以下の真空度とする。また、さらに好ましくは殺菌対象物が収容された雰囲気を50torr以下の真空度とする。ただし、殺菌対象物(例えば種籾)が収容された雰囲気を20torr以下の真空度にすると、殺菌対象物が乾燥して発芽障害を起こす可能性が出てくる。したがって、乾燥による障害が懸念される殺菌対象物の場合には、殺菌対象物(例えば種籾)が収容された雰囲気を20torr以上の真空度とすることが好ましい。
条件:稲苗立枯病汚染種籾50gを容積10Lの殺菌槽に入れた。殺菌槽内を真空度760torr(大気圧)、100torr及び20torrとした後に、濃度10ppmのオゾン水を殺菌槽に5L供給して、そのまま20分静置した。20分経過後、種籾を取り出し、培養法で残存菌数を測定した。初期菌数(個数/g)に対する残存菌数の割合を生菌率(−)とし、真空度との関係を図1に示している。
本発明は、ステップ(a)の後に、減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物にオゾン水を供給するステップ(b)を実施する。
オゾン水が供給された雰囲気が減圧、好ましくは100torr以下の真空度、さらに好ましくは50torr以下の真空度となっている。したがって、種籾を例にすると、籾殻と果皮との間の空隙部の空気及び籾殻表面の空気は除去されている。したがって、オゾン水は、籾殻と果皮との間及び籾殻表面に容易に接触、浸入することができるので、高い殺菌効果を得ることができる。さらに、玄米細胞の気孔を通して、オゾン水は玄米内部まで浸透し、種籾内部の病原性細菌を殺菌し、種子内部の殺菌効果を高める。また、種籾以外の殺菌対象物の場合も、殺菌対象物の表面の空気層を除去することができるため、当該表面へのオゾン水の接触が緊密になり、殺菌効果を向上することができる。
オゾン水が供給された雰囲気が減圧、好ましくは100torr以下の真空度、さらに好ましくは50torr以下の真空度となっている。したがって、種籾を例にすると、籾殻と果皮との間の空隙部の空気及び籾殻表面の空気は除去されている。したがって、オゾン水は、籾殻と果皮との間及び籾殻表面に容易に接触、浸入することができるので、高い殺菌効果を得ることができる。さらに、玄米細胞の気孔を通して、オゾン水は玄米内部まで浸透し、種籾内部の病原性細菌を殺菌し、種子内部の殺菌効果を高める。また、種籾以外の殺菌対象物の場合も、殺菌対象物の表面の空気層を除去することができるため、当該表面へのオゾン水の接触が緊密になり、殺菌効果を向上することができる。
ステップ(b)におけるオゾン水の供給方法は問わない。典型的には、殺菌対象物を浸漬できるようにオゾン水を供給すればよいが、本発明の効果が得られるのであれば、この形態に限定されない。例えば、オゾン水をシャワー状にして殺菌対象物に連続的に散布してもよい。
減圧された雰囲気に収容された殺菌対象物にオゾン水を供給した後も、殺菌処理が完了するまでは、当該雰囲気の減圧状態を維持することが好ましい。本発明による殺菌率の向上という効果を得るためである。ただし、殺菌処理の途中で当該雰囲気を大気圧にもどしても、単にオゾン水中に殺菌対象物を浸漬する方法に比べて殺菌率を向上できることは言うまでもない。
本発明で用いるオゾン水は、含有されるオゾンガスの気泡径が50μ以下と微細であることが好ましい。オゾンガスの気泡径が小さいと殺菌対象物、例えば種籾中を拡散するのが容易となり、殺菌効果が向上するからである。より好ましいオゾンの気泡径は40μm以下、さらに好ましいオゾンの気泡径は30μm以下である。
オゾンの気泡径が小さなオゾン水を得るためには、オゾンガス発生装置で生成されたオゾンガスを微細気泡発生装置で水に溶解させればよい。その際、気泡径をナノオーダーまで微細化すると、水と同様の浸透性を得ることができる。
なお、オゾンガスが水中に完全に固溶している場合には気泡は存在せず、そのようなオゾン水を用いることが本発明の効果を得る上で最も好ましい。
オゾンの気泡径が小さなオゾン水を得るためには、オゾンガス発生装置で生成されたオゾンガスを微細気泡発生装置で水に溶解させればよい。その際、気泡径をナノオーダーまで微細化すると、水と同様の浸透性を得ることができる。
なお、オゾンガスが水中に完全に固溶している場合には気泡は存在せず、そのようなオゾン水を用いることが本発明の効果を得る上で最も好ましい。
本発明は、上記ステップ(a)の後に殺菌対象物に対してオゾン水を供給するので、濃度の低いオゾン水であっても所定の殺菌効果を得ることができる。したがって、本発明ではオゾン水濃度を限定するものではないが、0.5ppm以上の濃度とすることが好ましい。0.5ppm未満では短い殺菌処理時間で高い殺菌率を得ることが困難となるからである。さらに好ましいオゾン水の濃度は3ppm以上、より好ましいオゾン水の濃度は5ppm以上である。オゾン水の濃度の上限は特に限定されるものではなく、製造可能な例えば40ppm程度の濃度のオゾン水までを使用することができる。ただし、本発明はこのような高濃度のオゾン水を用いることなく高い殺菌率を得ることができるため、オゾン水の生成コストも考慮すると、30ppm以下、さらには20ppm以下の濃度とすることが好ましい。
オゾン水の濃度は、得たい殺菌率に応じて定めることができる。つまり、高い殺菌率を得たい場合には高濃度のオゾン水を用い、殺菌率が低くて足りる場合には、低濃度のオゾン水を用いればよい。また、オゾン水の濃度は、殺菌対象物の種類によって定めることができる。つまり、野菜のように殺菌効果を比較的得易いものを殺菌対象とする場合には、低濃度のオゾン水を用い、種子、球根のように殺菌効果が得にくいものを殺菌対象とする場合には、高濃度のオゾン水を用いることになる。さらに、後述するように殺菌対象物をオゾン水に浸漬することのできる時間に応じてオゾン水の濃度を定めることができる。
ステップ(b)において、殺菌対象物をオゾン水で処理、典型的にはオゾン水中に浸漬する時間(以下、処理時間)は、用いるオゾン水の濃度に影響される。つまり、濃度の低いオゾン水を用いる場合には処理時間を長くする必要があり、濃度の高いオゾン水を用いる場合には処理時間を短くすることができる。また、処理時間は、殺菌対象物の種類によって定めることができる。つまり、殺菌効果を比較的得易いものを殺菌対象物とする場合には処理時間を短くし、殺菌効果が得にくいものを殺菌対象物とする場合には処理時間を長くする必要がある。例えば、いもち病や苗立ち枯れ病を考慮した殺菌ではオゾン水濃度0.5ppm以上で5分浸漬し、馬鹿苗病については2ppm以上で1分以上浸漬することが好ましい。
本発明の場合、ステップ(a)を設けていることにより、単にオゾン水に殺菌対象物に浸漬する場合に比べて、所定の殺菌効果を得るための処理時間を大幅に短縮することができる。その具体例を図2に基づいて説明する。図2は、以下の条件で測定した処理時間と付着菌数の関係を示すグラフである。図2に示すように、オゾン水に浸漬したのみでは到底得られない付着菌数の低減の効果を、予め減圧された雰囲気に殺菌対象物を晒しておくことにより得ることができる。また、処理(浸漬)時間が5分程度で殺菌効果は十分に得ることができ、10分程度の処理(浸漬)時間で殺菌効果はほぼ飽和することが図2より理解することができる。
条件:稲苗立枯病汚染種籾50gを容積10Lの殺菌槽に入れた。殺菌槽を真空度20torrまで真空引きし、その後、濃度10ppmのオゾン水を殺菌槽に5L供給した後の経過(処理)時間と付着菌数を測定し、処理時間と付着菌数との関係を図2に示している。
本発明において、殺菌対象物をオゾン水に浸漬している間、オゾン水を撹拌することが好ましい。浸漬対象物に対してフレッシュなオゾン水が接触するのを促進するためである。撹拌は、撹拌用の翼を用いてもよいし、オゾン水を連続的に供給、排水することにより水流を形成することによって行うことができる。もちろん、他の方法を用いてもよい。また、撹拌することなく新たなオゾン水を連続的に供給することにより、フレッシュなオゾン水を殺菌対象物と接触させることもできる。
図3は、真空度20torrの雰囲気に種籾を晒したときの殺菌率と、殺菌処理(浸漬)時間とオゾン水濃度との相関関係を示している。ここで、図3中、「D」の表示は殺菌率90%、「2D」の表示は殺菌率99%、「3D」の表示は殺菌率99.9%を意味する。殺菌効果として、育苗時、病気発生率が0.1%以下であることが要求されるものとすると、本発明を適用して種籾を殺菌する場合には、図3の3D(99.9%殺菌)曲線より右上の条件範囲で殺菌すればよいことがわかる。
稲苗立枯病汚染籾を用いて種籾の育苗試験を行い、その時の病気発生率を調べた結果を図4に示す。育苗試験期間は30日間である。オゾン水濃度は20ppmであり、オゾン水供給前の真空度を20torrとし、殺菌の処理(浸漬)時間を20分とした。比較として、殺菌処理を行わない種籾(図4、無処理)、大気圧において濃度20ppmのオゾン水に20分間浸漬した種籾(図4、オゾン水浸漬のみ)の場合を比較とした。その結果、図4に示すように、殺菌処理を行わない場合は50%弱、オゾン水に浸漬したのみでは10%弱の稲が発病した。これに対して、オゾン水供給前に減圧雰囲気に晒した種籾については病気発生が確認できなかった。また、発芽障害も確認できなかった。
<装置>
次に、以上の本発明による殺菌方法を実施するのに好適な殺菌装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本実施の形態による殺菌装置100の構成を示す図である。
図5に示すように、本実施の形態による殺菌装置100は、種籾Rを収容して殺菌処理を施す殺菌槽1と、殺菌槽1の上部に取り付けられ殺菌槽1の上端開口部を開閉する投入蓋2とを備える。
殺菌槽1には、吸気配管31を介して真空ポンプ3が接続され、かつ吸気配管31上にはバルブ4が配設されている。投入蓋2を閉じ、かつバルブ4を開いた状態で真空ポンプ3を作動させることにより、殺菌槽1を所定の真空度とすることができる。
次に、以上の本発明による殺菌方法を実施するのに好適な殺菌装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本実施の形態による殺菌装置100の構成を示す図である。
図5に示すように、本実施の形態による殺菌装置100は、種籾Rを収容して殺菌処理を施す殺菌槽1と、殺菌槽1の上部に取り付けられ殺菌槽1の上端開口部を開閉する投入蓋2とを備える。
殺菌槽1には、吸気配管31を介して真空ポンプ3が接続され、かつ吸気配管31上にはバルブ4が配設されている。投入蓋2を閉じ、かつバルブ4を開いた状態で真空ポンプ3を作動させることにより、殺菌槽1を所定の真空度とすることができる。
殺菌槽1には、オゾン水供給配管9を介してオゾン水貯蔵槽5が接続されている。オゾン水供給配管9上には、オゾン水貯蔵槽5から殺菌槽1へのオゾン水Oの供給を制御するバルブ10が配設されている。
オゾン水貯蔵槽5には、原料水供給配管6が接続されている。原料水供給配管6には、図示しない原料水供給源が接続されており、原料水供給配管6を介してオゾン水Oの原料となる水をオゾン水貯蔵槽5に供給することができる。
また、オゾン水貯蔵槽5には、オゾンガス発生装置7が接続されている。オゾンガス発生装置7で生成されたオゾンガスは、オゾン水貯蔵槽5に供給された原料水中に供給される。オゾンガスの生成方法としては、放電法、電解法及び紫外線ランプ法の3種類がよく知られている。この中で、放電法は生産コストが最も安価である。電解法は、特に高濃度のオゾンガスを生成する場合に用いられる。紫外線ランプ法は、オゾン濃度は低いものの、簡易にオゾンガスを生成することができる利点がある。本実施の形態によるオゾンガス発生装置7は、いずれの方法によるものであってもよい。
また、オゾン水貯蔵槽5には、オゾンガス発生装置7が接続されている。オゾンガス発生装置7で生成されたオゾンガスは、オゾン水貯蔵槽5に供給された原料水中に供給される。オゾンガスの生成方法としては、放電法、電解法及び紫外線ランプ法の3種類がよく知られている。この中で、放電法は生産コストが最も安価である。電解法は、特に高濃度のオゾンガスを生成する場合に用いられる。紫外線ランプ法は、オゾン濃度は低いものの、簡易にオゾンガスを生成することができる利点がある。本実施の形態によるオゾンガス発生装置7は、いずれの方法によるものであってもよい。
本実施の形態では、オゾン水Oの生成方法として気泡溶解法を用いている。すなわち、オゾン水貯蔵槽5には、微細気泡溶解装置8が配設されており、微細気泡溶解装置8の回転翼81に向けてオゾンガス発生装置7で生成されたオゾンガスが供給される。供給されたオゾンガスは原料水とともに回転翼81により撹拌されることにより、オゾンガスは気泡となりかつ原料水に溶解されてオゾン水Oが生成される。このときの撹拌を調整することにより、オゾンガスの気泡を前述したような粒径に微細化することが好ましい。
オゾンガスからのオゾン水Oの生成方法は、上述した気泡溶解法の他に、多孔質の四フッ化エチレン膜に原料水を流し、その外側にオゾンガスを流して水中にオゾンガスを吸収させてオゾン水Oを生成する隔膜溶解法を採用することができる。また、充填層の上部から水を流し、下部からオゾンガスを流して、充填層内で気液向流式にオゾンガスを溶解する充填層溶解法によってオゾン水Oを生成することもできる。
殺菌槽1には、殺菌処理が終了した後に、殺菌対象物である種籾R及びオゾン水Oを排出する排出配管11が接続されている。この排出配管11上には、殺菌槽1内の種籾R及びオゾン水Oの外部への排出を制御するバルブ12が配設されている。
排出配管11の排出口には、内部に回収バケット14が配設される廃液槽13が配設されている。回収バケット14は、例えばメッシュから構成されており、排出配管11から排出された種籾Rを回収するが、オゾン水Oは廃液槽13へ通過することができる。廃液槽13には排出配管15が接続されており、廃液槽13に排出されたオゾン水Oはこの排出配管15を介して外部に排出される。なおこの段階で、オゾン水O中のオゾンは消失しているが、説明の便宜上、オゾン水Oと称した。
さて、以上の殺菌装置100を用いて種籾を殺菌する手順を図6〜図8に基づき説明する。
図6に示すように、殺菌対象物である種籾Rを殺菌槽1に収容する。このとき、吸気配管31上のバルブ4は開いているが、オゾン水供給配管9上のバルブ10及び排出配管11上のバルブ12は閉じている。
殺菌槽1への種籾Rの収容が完了した後に、真空ポンプ3を作動させる。殺菌槽1の内部が所定の真空度に達したならば、真空ポンプ3の作動を停止するとともに、バルブ4を閉じる。このとき、殺菌対象物である種籾Rが収容された殺菌層1内は、所定の真空度の減圧雰囲気をなす。
図6に示すように、殺菌対象物である種籾Rを殺菌槽1に収容する。このとき、吸気配管31上のバルブ4は開いているが、オゾン水供給配管9上のバルブ10及び排出配管11上のバルブ12は閉じている。
殺菌槽1への種籾Rの収容が完了した後に、真空ポンプ3を作動させる。殺菌槽1の内部が所定の真空度に達したならば、真空ポンプ3の作動を停止するとともに、バルブ4を閉じる。このとき、殺菌対象物である種籾Rが収容された殺菌層1内は、所定の真空度の減圧雰囲気をなす。
なお、種籾Rを収容した後に、殺菌槽1内部の雰囲気が所定の真空度に達するまでに、オゾン水貯蔵槽5にはオゾン水Oが生成、貯蔵されている必要がある。ここで、オゾンガスの半減期が短いことを考慮してオゾン水Oの生成を行う必要がある。生成された後に長時間にわたってオゾン水貯蔵槽5にオゾン水Oを貯蔵しているとオゾン水Oの濃度が低下するためである。
殺菌槽1内部の雰囲気が所定の真空度に達した後に、オゾン水供給配管9上のバルブ10を開く。そうすると、図7に示すように、オゾン水貯蔵槽5のオゾン水Oはオゾン水供給配管9を介して殺菌槽1に流入する。殺菌槽1は所定の真空度の減圧雰囲気となっていたため、供給手段を用いることなく、オゾン水Oは殺菌槽1内へ容易に流入する。所定量のオゾン水Oが殺菌槽1内に流入したならば、オゾン水供給配管9上のバルブ10を閉じる。これで、殺菌槽1へのオゾン水Oの供給は完了する。なお、この後、例えば、バルブ4を開いて殺菌槽1内部を大気に開放してもよいが、殺菌処理が終了するまで減圧状態を維持する方が高い殺菌率を得る上で好ましい。
その後、オゾン水O中に種籾Rが浸漬した状態を所定時間維持することにより、種籾Rを殺菌処理する。本実施の形態では、種籾Rを減圧雰囲気に晒し、その状態でオゾン水Oを種籾Rに対して供給する。したがって、種籾Rの表面は勿論、種籾Rの表皮と果皮との間にもオゾン水Oが十分に浸入することができるため、殺菌効果を向上することができる。
殺菌処理を所定時間行った後に、排出配管11上のバルブ12を開くと、図8に示すように、殺菌処理された種籾R及びオゾン水Oは、排出配管11を介して殺菌槽1の外部に排出される。種籾Rは回収バケット14で回収される。また、オゾン水Oは、廃液槽13を通り、排出配管15に流れる。回収バケット14に回収された種籾Rは、その後乾燥等の所定の処理を施した後に、植え付けられる。
1…殺菌槽、2…投入蓋、3…真空ポンプ、4,10,12…バルブ、5…オゾン水貯蔵槽、6…原料水供給配管、7…オゾンガス発生装置、8…微細気泡溶解装置、9…オゾン水供給配管、11,15…排出配管、13…廃液槽、14…回収バケット、R…種籾、O…オゾン水、100…殺菌装置
Claims (10)
- 殺菌対象物が収容された雰囲気を減圧するステップ(a)と、
減圧された前記雰囲気に収容された前記殺菌対象物に対してオゾンを供給するステップ(b)と、
を備えることを特徴とする農作物の殺菌方法。 - 前記殺菌対象物が、種子又は球根であることを特徴とする請求項1に記載の農作物の殺菌方法。
- 前記ステップ(a)において、前記殺菌対象物が収容された雰囲気を100torr以下の真空度とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の農作物の殺菌方法。
- 前記ステップ(a)において、前記殺菌対象物が収容された雰囲気を50torr以下の真空度とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農作物の殺菌方法。
- 前記ステップ(b)において、前記オゾンとしてオゾン濃度が0.5〜40ppmのオゾン水を供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農作物の殺菌方法。
- 前記ステップ(b)において、前記オゾン水中のオゾンガスの気泡径を50μm以下とすることを特徴とする請求項5に記載の農作物の殺菌方法。
- 前記ステップ(b)において、前記殺菌対象物を前記オゾン水中に1分以上浸漬することを特徴とする請求項6に記載の農作物の殺菌方法。
- 殺菌対象物の収容空間を有するとともに前記収容空間内で前記殺菌対象物の殺菌処理が行われる処理容器と、
前記収容空間を減圧雰囲気とする減圧部と、
前記処理容器内にオゾン水を供給するオゾン水供給部と、
を備えることを特徴とする農作物の殺菌装置。 - 前記減圧部により前記収容空間内が所定の減圧状態となった後に、
前記オゾン水供給部により前記処理容器内に前記オゾン水を供給することを特徴とする請求項8に記載の農作物の殺菌装置。 - 前記オゾン水供給部は、オゾンガスの気泡を微細化する気泡微細化部を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の農作物の殺菌装置。
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