JP4286390B2 - ドライブユニットの潤滑装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライブユニットの潤滑装置に係り、特にインホイールタイプのドライブユニットに用いて好適な潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、電気モータを有するドライブユニットを駆動輪の中に収めた、インホイールタイプの電気自動車が提案されており、該インホイールタイプのドライブユニットは、車体内にドライブユニットのための空間を確保する必要がなく、車内有効スペースが増えること、及びディファレンシャル装置等の伝動系による効率低下や重量増がない利点を有する反面、ドライブユニットを、駆動車輪内に収めるための小型化及び単純化が要求される。
【0003】
反面、電気モータの冷却や、更に該モータを小型化すべく減速機構を用いる場合にはギヤやベアリング等の潤滑も必要となってくるため、これら潤滑・冷却を効率良く行なうように内部にオイルを備えたドライブユニットが提案されている。
【0004】
ここで、オイル引き摺りによるロス低減のためオイルポンプ等の装置を用いたり、ドライブユニット内の回転部材の回転を利用して、ドライブユニット内に溜められたオイルを掻き上げて、必要箇所を潤滑する方式等が考えられるが、上記インホイールタイプに要求される小型化、単純化や低コスト性を考慮すると、後者の方式が好ましい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記ドライブユニットの潤滑装置は、低速回転においてもオイル掻き上げ量を確保して確実に潤滑するためにオイルレベルを上げて調整しているが、反面、高(中)速回転時には、上記高いオイルレベルに起因して必要以上にオイルを掻き上げることになり、オイルの撹拌ロスが増加して、ドライブユニットの効率を低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、オイルレベルを自動的に調整することにより、低速回転時には充分なオイル掻き上げ量を確保すると共に、高(中)速回転時にオイル撹拌ロスが増加することを防止した、ドライブユニットの潤滑装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明は、回転部材(15)をケース(3)に収納し、該ケースの下方に設けられたオイル溜り(B)のオイルを前記回転部材にて掻き上げて潤滑してなる、ドライブユニットの潤滑装置において、
前記ケースの一側面(3a)に、前記回転部材(15)の中心軸を中心とした所定半径上の少なくとも下方部分を内方に突出する鍔部(29,29′)を形成し、該鍔部先端に蓋板(30,60)を固定して、前記鍔部及び前記蓋部にて囲まれる前記ケース側空部の下方にて、上方に開口を有すると共に下部に排出路(39)を有するオイルリザーバ室(A)を形成し、
前記掻き上げられたオイルを前記オイルリザーバ室(A)に一時的に溜めて、前記オイル溜り(B)のオイルレベルを変化することを特徴とする、
ドライブユニットの潤滑装置にある。
【0008】
そして、前記ドライブユニット(l1,l2,l3)は、ケース(3)内に電気モータ(5)及びプラネタリギヤユニット(6)を収納し、かつ駆動車輪の内方に配置されるインホイールタイプであって、
前記電気モータのロータ(15)の回転にて前記オイル溜り(B)のオイルを掻き上げてなる。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記プラネタリギヤユニット(6,61)は、前記電気モータ(5)のロータ(15)の内径側に配置され、かつそのサンギヤ(S…)を前記電気モータのロータ(15)に連結し、そのキャリヤ(CR…)を前記駆動車輪(2)に連結し、そのリングギヤ(R…)を前記ケース(3)に連結して、減速機構を構成し、
前記ケースに形成された鍔部(29)が、上方に開口(37a)(37b)を有する略々環状の部材からなり、また前記蓋板が、前記環状の鍔部先端に固定される環状の円板(30)からなり、
該円板に前記リングギヤを固定すると共に、前記鍔部(29)及び前記円板(30)にて囲まれる前記ケース側の空部(C)の下方にて前記オイルリザーバ室(A)を構成してなる、
請求項1記載のドライブユニットの潤滑装置にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記ケース(3a)は、前記環状の鍔部(29)の外径側の少なくともその上部に斜めに拡がる放射状のリブ(36b,36c)を有し、
該リブの前記環状の鍔部における接続部分に前記開口(37a,37b)を形成し、また該環状の鍔部の下部に前記排出路となる小開口(39)を形成してなる、
請求項2記載のドライブユニットの潤滑装置にある。
【0011】
請求項4に係る本発明は(図1及び図2参照)、前記プラネタリギヤユニット(6)は、2個のシンプルプラネタリギヤ(6a)(6b)を軸方向に並べて配置して、2段の減速機構を構成してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のドライブユニットの潤滑装置にある。
【0012】
請求項5に係る本発明は(図5又は図6参照)、前記プラネタリギヤユニット(61)は、1個のシンプルプラネタリギヤ(6a)からなる1段の減速機構を構成してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のドライブユニットの潤滑装置にある。
【0013】
[作用]
上記構成に基づき、車輌の走行開始時にあっては、オイルリザーバ室(A)は、オイルが排出路(39)から排出されて空になっており、従ってその分オイル溜り(B)のオイルレベルが高くなっている(例えば図2、図3のレベルL2 参照)。この状態で、回転部材、例えば電気モータ(5)のロータ(15)が回転して始動する。該始動時にあって回転部材(15)の回転速度は低いが、上述したようにオイル溜り(B)のオイルレベルは高く、充分な量のオイルを掻き上げて、潤滑(又は冷却)必要箇所に供給し得る。
【0014】
上記回転部材にて掻き上げられたオイルの一部は、飛散されて開口(37a,37b)からオイルリザーバ室(A)に導入される。この際、オイルリザーバ室(A)のオイルは、上記開口から導入される量が排出路(39)から排出される量より多く、該リサーバ室(A)に溜められるオイル量が増加し、その分メインのオイル溜り(B)のオイルレベルが低下する(例えば図2、図3のレベルL1 )。この状態では、回転部材(15)は、中速から高速回転になっているが、上述したようにオイル溜り(B)のオイルレベルは低く、大きなオイルの撹拌ロスを伴うことなく、該高い回転に基づき必要量のオイルが掻き上げられ、潤滑必要箇所に供給される。
【0015】
そして、車輌が停止して、回転部材(15)も停止すると、該回転部材によるオイル掻き上げが停止されて、オイルリザーバ室(A)へのオイル導入がなくなる。従って、オイルリザーバ室(A)のオイルは、排出路(39)から徐々に排出されて空になり、その分オイル溜り(B)のオイルレベルを上昇して、次の車輌走行開始に備える。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は図面と対照するためのものであるが、便宜的なものであって、特許請求の範囲の構成に何等影響を与えるものではない。
【0017】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明によると、回転部材である電気モータのロータの回転開始直後の低回転状態にあっては、オイル溜りのオイルレベルが高く、該低回転にあっても充分な量のオイルを掻き上げて、確実に潤滑又は冷却を行うことができるものでありながら、回転部材が中速から高速になると、オイル溜りのオイルレベルが自動的に低くなるように調整され、これによりオイル撹拌によるロスを低減すると共に、該高い回転数による必要量のオイル掻き上げを確保することができる。更に、オイルリザーバ室は、ケースの一側に突出する、回転部材の中心軸を中心とした所定半径上に形成される鍔部及び蓋板からなるので、簡単な構成からなると共に、該オイルリザーバ室用の特別なスペースが不用であり、ドライブユニットをコンパクトに維持することができる。
【0018】
そして、インホイールタイプのドライブユニットに適用して、コンパクトで単純な構成を保持すると共に、潤滑性能を維持しつつ、オイル撹拌ロスを低減して伝達効率を向上することができる。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、プラネタリギヤユニットのリングギヤをケースに固定するための環状の鍔部及び円板によりオイルリザーバ室を構成したので、オイルリザーバ室のための特別な構造及びスペースを必要とせず、コストアップを伴うことなくかつコンパクトに構成することができる。更に、オイルリザーバ室からオーバフローしたオイルはリングギヤに供給され、プラネタリギヤの歯面の潤滑性能を向上することができる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、環状の鍔部の外径側上方で拡がるリブにより、回転部材(ロータ)で掻き上げられて飛散されたオイルを収集して開口に導くことができ、素早くオイルをオイルリザーバ室に導入して溜めることができ、比較的短時間にてオイル溜りのオイルレベルを下げて、オイル撹拌ロスを減少することができる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、プラネタリギヤを2個並べて2段の減速機構としたので、電気モータのトルクを増大して駆動車輪で伝達して、大きい駆動力を必要とする車輌、例えば起伏の多い場所を走行するゴルフカートに用いて好適である。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、プラネタリギヤを1個用いた1段の減速機構としたので、コンパクトに構成でき、都市等の通常の道路走行に用いる車輌、例えば発進、停止が繰返される宅配用車輌に用いて好適である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1ないし図4は、ゴルフカート用電気自動車に用いて好適なインホイールタイプのドライブユニットを示す図であり、図1に示すように、ドライブユニット11 は、駆動車輪2のホイールリム2a内に収められている。
【0024】
該ドライブユニット11 は、2つ割ケース3a,3bからなる一体ケース3内に収納された電気モータ(電気回転手段)5及びプラネタリギヤユニット6を有しており、上記一体ケース3は、懸架装置7を介して車体9に懸架されている。また、外側ケース3aには出力軸10がベアリング11を介して回転自在に支持されてケース外に突出しており、該出力軸10にホイールリム2a固定用のハブ12がスプライン係合してナット14により抜止め・固定されている。
【0025】
上記電気モータ5は、図2に詳示するように、ブラシレスDCモータからなり、内側ケース3bに固定されているステータ13と、該ステータ13と微小間隔を存して回転自在に支持されているロータ15とを有している。なお、該電気モータ(電気回転手段)5は、モータとして回転力を出力すると共に、回生ブレーキとしても機能し、上記ブラシレスDCモータに限らず、他の同期式又は誘導式の交流モータ、更には直流モータでもよい。更に、内側ケース3bには多穴形シールコネクタ16のための開口17が穿設されており、車体内のコントローラ及びバッテリと電気的(電力的及び信号的)に連通している。前記ロータ15は、希土類磁石等の永久磁石を埋込んだ積層板15a…を支持するハブ19を有しており、該ハブは、その内側端にフランジ部19aを有している。
【0026】
該フランジ部19aはシャフト20に固定されており、該シャフトは、その両端部にてそれぞれベアリング21,22を介して前記出力軸10及び内側ケース3bに支持されている。また、ハブ19には内側方向に突出して環状の凹溝を形成する2条の鍔部19b,19bが一体に設けられており、これら鍔部の間には前記内側ケース3bの外方から回転位置センサ21の検出部21aが嵌挿されて、ロータの回転位置を検出している。なお、該回転位置センサ21は、ホール素子からなるものが好ましいが、シャフトエンコーダ等の光電式、磁気式回転センサ、レゾルバ等の他の回転変位センサでもよい。
【0027】
一方、前記フランジ部19aの外側(図面左側)におけるハブ19内には前記プラネタリギヤユニット6が収納されている。該ギヤユニット6は、軸方向に並べられた2個のシンプルプラネタリギヤ6a,6bからなり、内側プラネタリギヤ6bのキャリヤCR1が外側プラネタリギヤ6aのサンギヤS2に連結していると共に、リングギヤR1,R2が一体に構成されている。また、内側サンギヤS1は前記シャフト20に一体に形成されて、入力部材を構成しており、外側サンギヤS2はシャフト20にニードルベアリング23を介して回転自在に支持されており、そして外側キャリヤCR2が前記出力軸10に一体に構成されている。なお、各キャリヤCR1,CR2はそれぞれニードルベアリング24,25を介して複数のピニオンP1,P2を回転自在に支持しており、また図中26はスラストベアリングである。
【0028】
そして、前記リングギヤR1,R2は、ドラム状部材27の内周面に形成された歯数の異なる内歯ギヤからなり、該ドラム状部材27の外側外周面にはスプライン27aが形成されている。また、外側ケース3aの内面には、図3に詳示するように、ロータ15の中心軸を中心とした所定半径上において環状に軸方向内方に突出する鍔部29が一体に形成されており、該鍔部29には蓋板となる環状の円板30がボルト31(図2)により固定されている。該円板30の内周面にはスプライン30aが形成されており、該スプラインが前記ドラム状部材27のスプライン27aに係合してスナップリング28により抜止めされて、ドラム状部材27従ってリングギヤR1,R2がケース3aに一体に(回転不能に)支持されている。なお、図中33は、外側ケース3aの前記出力軸用ボス部、35は、該ボス部と前記鍔部29のボルト孔部29aを連結するリブである。
【0029】
上記ドラム状部材27固定用の環状円板30が、前記環状の鍔部29の先端に密接して固定されることにより、該円板30、外側ケース3a及びその環状鍔部29の間で環状の空部Cが形成され、その底部分、即ちドラム状部材27の内周面より下方部分が、オイルを溜め得るオイルリザーバ室Aとなる。また、上記環状の鍔部29と外側ケース3aの外周部分の間に多数のリブ36…が放射状に形成されており、これらリブの内の最上方のリブ36aの両側のリブ36b,36cが掻き上げたオイルを導くオイルガイドを構成している。更に、前記環状の鍔部29における上記リブ36b,36cに接続する部分が一部切欠かれて開口37a,37bを形成しており、これにより上記オイルガイドとなるリブ36b,36cに導かれたオイルが上記開口37a,37bから前記空部Cに導入され、前記オイルを一時的に溜めるリサーバ室Aに溜められる。
【0030】
更に、前記環状の鍔部29の最下部分に幅狭の切溝(小開口)39が形成されており、該切溝39は、上記オイルリザーバ室Aに溜められたオイルを所定量ずつ絞って排出する排出路を構成している。一方、一体ケース3の下部はオイル溜りBが形成されており、該オイル溜りBは下方が小面積となるテーパ形状、特に内側ケース3bがテーパ部40となっており、ロータ15の端面とケース壁面との隙間を少なくして、オイルを連れまわし易い構造となっている。そして、該オイル溜りBのオイルレベルは、前記オイルリザーバ室Aに溜められるオイル量により変化し、例えばロータ15の外周面が僅かに浸る位置L1 と、ハブ19の外周側環状鍔部19bが浸る位置L2 等の間で変化し得る。
【0031】
一方、内側ケース3bの内面側は、図4に示すように、その中心部分に前記シャフト20を支持するベアリング22用のボス41が形成されており、該ボス41はその上部が一部切欠かれてオイル導入用の開口41aが形成されている。また、該開口41aから左右方向に拡がるようにオイルガイド用のリブ42,42が形成されており、これらリブは、シャフト中心Oを通る水平線l−lからリブ先端までの高さhができるだけ低くなるように、かつ登降坂時に車体が傾斜してもオイルが開口41aに導かれるように、所定勾配aに設定されていると共に、ロータの回転が正逆に切換えられた場合でもオイルを導入できるように、左右対称に形成されている。また、前記ボス41内は、前記シャフト20の端面との間で油溜りDとなっているが、該油溜りはシャフト20に形成される潤滑孔43に素早くオイルを導入するため、比較的小さく形成されていると共に、その下方はベアリング22からオイルが逃げないように、ケース壁がベアリングのインナレースに近接した構造となっている。
【0032】
更に、内側ケース3bにおける外径部分にて、前記電気モータのステータ13を収納すべく幅狭になっている部分45の上方部分には、所定間隔で2本のリブ46,46が放射状に形成されており、これらリブは、ロータの正転時及び逆転時において、該ロータに連れ回されたオイルを当てて、前記導入用リブ42に滴下する。同様に、前記ケース3bの扇状の貫通孔47を通って内部に突出している回転位置センサ21の検出部21aも、上記ロータに連れ回されたオイルを当てて、前記導入用リブ42に滴下する。なお、図中49は、上記回転位置センサ21固定用ボルト50のためのボルト孔部である。また、上記開口41a、リブ42,46は、切削等の機械加工によらず、すべてケース3bを金型による鋳造加工により形成されており、ケース3a,3bに油孔、油溝の加工をせずに、コストダウンを図っている。
【0033】
一方、シャフト20には中心部を貫通する前記潤滑孔43の外に、該潤滑孔から所定必要箇所に向って貫通する放射状の油孔43…が多数形成されており、またピニオンP2を支持する軸51にも潤滑孔52が形成されている。
【0034】
ついで、上述した実施例の作用について説明する。運転者のアクセルペダルの踏込みに基づき、コントローラからの信号により電気モータのロータ15が回転する。該ロータ15の回転は、ハブ19及びシャフト20を介して内側サンギヤS1に伝達され、内側リングギヤR1が固定されていることにより、内側キャリヤCR1が減速して同方向に回転する。更に、該内側キャリヤCR1は外側サンギヤS2を一体に回転し、外側リングギヤR2が固定されていることにより、同様に外側キャリヤCR2が減速して回転し、出力軸10に伝達される。即ち、上記ロータ15の回転は、内側プラネタリギヤ6b及び外側プラネタリギヤ6aの2段にて減速されて出力軸10に伝達され、駆動車輪2を走行駆動する。
【0035】
これにより、ゴルフコース等の起伏の多い道であっても、上記2段減速による大きなトルクにより、かつ運転者のアクセルペダル踏量に基づき、電気モータ5は、始動時の低速回転から、中速、高速回転まで制御されて、ゴルフカートは所望速度で走行する。また、操縦者のブレーキ操作により、電気モータ5は回生ブレーキとして機能すると共に、図示しない摩擦ブレーキの作用により、カートは停止する。
【0036】
そして、上記カートの始動時にあっては、停止中にオイルリザーバ室A内のオイルは小開口39から絞られた状態で滴下して、略々空状態にあり、ケース3下部のオイル溜りBは、例えばレベルL2 に示すように、比較的高いオイルレベルにある。この状態で、電気モータのロータ15が回転すると、ロータ積層板15a、外周側鍔部19a等により、ロータ15の低回転に拘らず比較的大量のオイルが掻き上げられ、該掻き上げられたオイルは、始動時の必要とされる大きなトルク及びそれに伴う大電流に対応して、電気モータ5を充分に冷却する。
【0037】
更に、該掻き上げられたオイルの右方に飛散されたオイルは、内ケース3bのリブ46又は回転位置センサの検出部21aの端面に当てられて、オイルガイド用リブ42上に滴下する。そして、該ガイド用リブ42に案内されて開口41aからボス41にて形成されるオイル溜りDに導かれ、更にその一部がベアリング22,26を潤滑すると共に、該オイル溜りDのオイルの大部分は潤滑孔43から各油孔43a…を通って、ベアリング21,26,23、そしてプラネタリギヤユニット6の各歯面に供給される。この際、各ギヤ等は、大きい駆動トルクに伴う充分な潤滑が必要であるが、上述した高いオイルレベルL2 に伴う大量のオイルの掻き上げ、及び低回転時に拘らず、上記低い高さhのリブ42による効率のよいオイルの収集、更に比較的小さい容量の油溜りDによる素早い潤滑孔43への供給等が相俟って、効率よく充分なオイルを各歯面等の潤滑必要箇所に供給する。
【0038】
一方、上記掻き上げられたオイルの左方に飛散されたオイルは、外側ケース3aのリブ36b又は36cにガイドされて、開口37a又は37bから環状鍔部29内の空部Cに導入される。そして、その一部はボス31等に沿って出力軸10用ベアリング11を潤滑し、また油孔52からピニオン軸51のベアリング23等を潤滑すると共に、その大部分は空部下方のオイルリザーバ室Aに溜められる。該オイルリザーバ室A内のオイルは、一般に、排出路である小開口39から排出される量より上述した供給される量の方が多く、その量を増加する。この際、前記リブ36b,36cにガイドされて、比較的大量のオイルがオイルリザーバ室Aに導入されるので、該リザーバ室Aのオイル量は、比較的短時間で増加する。
【0039】
従って、上記電気モータロータ15の低速回転による始動時から、ロータの回転が中速、そして高速になる所定時間に伴い、オイルリザーバ室Aのオイル量は増加し、これに伴い、メインのオイル溜りBのオイルレベルは、例えばレベルL1 に示すように低下する。この状態では、上述したようにロータ15が中速そして高速回転しているが、上記オイルレベルの低下によりオイルの撹拌ロスが少なく、かつ高いロータ回転数により必要な量のオイルが掻き上げられ、上述したように、モータ5を冷却すると共に各潤滑必要箇所を充分に潤滑する。更に、オイルリザーバ室Aからオーバフローしたオイルは、ドラム状部材27の内周面を通って、両リングギヤR2,R1に導かれ、ピニオンP2,P1の噛合に伴い各歯面を潤滑する。
【0040】
そして、ブレーキが踏まれて、カートが停止すると、この状態では電気モータ5も停止してロータによるオイルの掻き上げも停止されるので、オイルリザーバ室Aへのオイル供給も中止される。従って、オイルリザーバ室Aのオイルは、排出路39から徐々に排出されることによりその量を減少し、これに伴いメインのオイル溜りBのオイルレベルが上昇する。カートの所定時間の停止時により、オイルリザーバ室A内のオイルは空になり、その分オイル溜りBのオイルレベルが例えばレベルL2 に上昇して、上述した始動回転に備える。
【0041】
ついで、図5に沿って、一部変更した実施例について説明する。本実施例は、宅配用等の小型の4輪電気自動車に適用して好適なドライブユニットl2 であり、プラネタリギヤユニットが1段である点を除き、基本的に前述した実施例と同様であるので、該同様な部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
プラネタリギヤユニット61 は1個のシンプルプラネタリギヤ6aからなり、サンギヤS1がロータハブ19に連結されているシャフト20に形成され、リングギヤR1がケース3に固定されているドラム状部材27に形成され、キャリヤCR1が出力軸10に連結されている。従って、電気モータロータ15の回転は、サンギヤS1から減速されてキャリヤCR1に伝達され、該1段減速による回転が出力軸10、そして駆動車輪2に伝達される。
【0043】
外側ケース3aには、前述実施例と同様に、上部に開口を有する環状の鍔部29が形成されており、該鍔部に環状円板30が固定されて、該円板30に前記ドラム状部材27が連結・固定されている。そして、上記鍔部29及び円板30により形成される空部Cの下部がオイルリザーバ室Aとなり、かつ該室の下部に排出路39が形成されている。
【0044】
従って、前記実施例と同様に、オイルリザーバ室Aのオイル量によりメインのオイル溜りBのオイルレベルが変化し、停止状態からの始動・低速時にあっては、オイル溜りBのオイルレベルが高く、また中速・高速時にあっては、オイルリザーバ室Aにオイルが溜められて、オイル溜りBのオイルレベルが低下する。
【0045】
図6は、更に一部変更した実施例によるドライブユニットl3 を示す図で、オイルリザーバ室Aを、前記リングギヤ固定用の円板30ではなく、別個のプレート60にて形成したものである。即ち、外側ケース3aのボス31に環状の円板30を固定して、該円板に、リングギヤR1用のドラム状部材27を連結・固定している。一方、外側ケース3aの少なくとも下方部分に、ロータ15の中心軸を中心とした所定半径上にて半環状の鍔部29′を形成し、該鍔部先端に蓋板となるプレート60を固定し、該鍔部29′とプレート60によりオイルリザーバ室Aを構成すると共に、その下部に排出路39を設けている。
【0046】
従って、本実施例も、先の実施例と同様に、オイルリザーバ室Aのオイル量により、メインのオイル溜りBのオイルレベルが自動的に調整される。
【0047】
なお、上述実施例は、4輪のすべてに又はその内の2輪(後輪又は前輪)に配置したインホイールタイプのドライブユニットについて説明した。また、上述した実施例では、オイルを掻き上げることのみによる潤滑・冷却について説明したが、これは、オイル掻き上げと共に、補助的にオイルポンプを用いてベアリング等を潤滑するものにも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るドライブユニットを示す正面断面図。
【図2】その拡大した断面図。
【図3】その一方のケース(外側ケース)を示す側面図。
【図4】その他方のケース(内側ケース)を示す側面図。
【図5】他の実施例に係るドライブユニットを示す正面断面図。
【図6】更に変更した実施例に係るドライブユニットを示す正面断面図。
【符号の説明】
l1 ,l2 ,l3 ドライブユニット
2 駆動車輪
3,3a,3b ケース(一体ケース、外側ケース、内側ケース)
5 電気モータ
6,61 プラネタリギヤユニット
6a,6b プラネタリギヤ
13 ステータ
15 ロータ
29 環状の鍔部
30 環状の円板
36a,36b リブ
37a,37b 開口
39 排出路(小開口)
A オイルリザーバ室
B オイル溜り
C 空部
Claims (5)
- ケース内に電気モータ及びプラネタリギヤユニットを収納し、かつ駆動車輪の内方に配置されるインホイールタイプであって、
前記ケースの下方に設けられたオイル溜りのオイルを前記電気モータのロータの回転にて掻き上げて潤滑してなる、ドライブユニットの潤滑装置において、
前記ケースの一側面に、前記電気モータのロータの中心軸を中心とした所定半径上の少なくとも下方部分を内方に突出する鍔部を形成し、該鍔部先端に蓋板を固定して、前記鍔部及び前記蓋部にて囲まれる前記ケース側空部の下方にて、上方に開口を有すると共に下部に排出路を有するオイルリザーバ室を形成し、
前記掻き上げられたオイルを前記オイルリザーバ室に一時的に溜めて、前記オイル溜りのオイルレベルを変化することを特徴とする、
ドライブユニットの潤滑装置。 - 前記プラネタリギヤユニットは、前記電気モータのロータの内径側に配置され、かつそのサンギヤを前記電気モータのロータに連結し、そのキャリヤを前記駆動車輪に連結し、そのリングギヤを前記ケースに連結して、減速機構を構成し、
前記ケースに形成された鍔部が、上方に開口を有する略々環状の部材からなり、また前記蓋板が、前記環状の鍔部先端に固定される環状の円板からなり、
該円板に前記リングギヤを固定すると共に、前記鍔部及び前記円板にて囲まれる前記ケース側の空部の下方にて前記オイルリザーバ室を構成してなる、
請求項1記載のドライブユニットの潤滑装置。 - 前記ケースは、前記環状の鍔部の外径側の少なくともその上部に斜めに拡がる放射状のリブを有し、
該リブの前記環状の鍔部における接続部分に前記開口を形成し、また該環状の鍔部の下部に前記排出路となる小開口を形成してなる、
請求項2記載のドライブユニットの潤滑装置。 - 前記プラネタリギヤユニットは、2個のシンプルプラネタリギヤを軸方向に並べて配置して、2段の減速機構を構成してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のドライブユニットの潤滑装置。 - 前記プラネタリギヤユニットは、1個のシンプルプラネタリギヤからなる1段の減速機構を構成してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のドライブユニットの潤滑装置。
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