JP4232441B2 - 光重合性液晶組成物およびそれを用いた光学素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光重合開始剤を添加することなく、電磁波により重合する組成物とそれから得られる共重合体、およびそれらを用いた光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合性を有する液晶化合物を、液晶状態で配向させ、重合させると、均一な液晶の配向状態が固定化され、光学異方性を有する高分子体が得られることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。この方法を利用した位相差板などの光学補償フィルムの製造が提案されている。重合性を有する液晶材料に求められる特性として、1)紫外線などの光により短時間で重合すること。2)熱重合による配向の乱れを起こりにくくするために、液晶相の温度下限が10℃〜100℃以内にあること、の2点が必要である。この特性を満たす材料として、アクリレート化合物が一般に用いられている(例えば、特許文献1、2参照。)。液晶性のアクリレート化合物は単独でも用いることができる。液晶相の温度範囲、重合体の屈折率、重合の反応性を調整するために複数の液晶性アクリレート化合物からなる組成物に光重合開始剤を添加した使用が一般的である。
【0003】
液晶性のアクリレート化合物以外の重合性を有する液晶化合物には、液晶性のビニルエーテル化合物(例えば、非特許文献2参照。)が知られている。ビニルエーテル化合物は液晶骨格が同じ場合、液晶相の温度範囲が対応するアクリレート化合物より広く、優れた液晶性を有するが、光で重合するには光カチオン重合開始剤の添加が必要である。
【0004】
【非特許文献1】
D. J. Broer, H. Finkelmann, K. Kondo, Makromol. Chem. 189, 185−194 (1988)
【特許文献1】
特開平7−17910号公報
【特許文献2】
特開平9−316032号公報
【非特許文献2】
R. A. M. Hikmet, J. Lub, J. A. Higgins, Polymer, Volume 34, Number 8, 1736-1740 (1993)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光重合性液晶組成物を光学素子に用いる場合、透明度などの光学特性、素子内での耐熱性、化学的な安定性を兼ね備えたものである必要がある。前述した液晶性アクリレート化合物または液晶性ビニルエーテル化合物は光重合開始剤を添加すれば数十秒で重合し、配向した液晶相を固定化できる。ところが、光重合開始剤は液晶にとって不純物であり、液晶相構造を乱し、種類によらず相転移温度を低下させる働きがある。また重合後、重合体内に開始剤の分解物が残ることで、重合体からのブルーミングにより他部材の汚染が起こったり、分解物による光散乱による光学特性の低下が生じる。特に液晶性ビニルエーテル化合物の重合に用いる光カチオン重合開始剤は、光分解によって生じた酸によりITOあるいは金属電極などの汚染の原因となることから、その用途が限定される。
そこで、光重合開始剤を使用しない光重合性液晶組成物が、望まれていた。
【0006】
【問題を解決するための手段】
本発明の第1は不純物となりうる光重合開始剤を添加することなく、高い光重合反応性を示し、かつ、熱重合が起こりにくい比較的低温度域に液晶相を有する組成物である。第2は配向した本発明の組成物を紫外線などの光の照射により、その液晶相を固定化する光学異方性フィルムの製造法である。
【0007】
本発明は、下記の1)〜20)で構成される。
1) 式(A)で表される化合物を少なくとも1つと式(B1)または式(B2)で表される化合物を少なくとも1つとを含有する組成物。
【0008】
【0009】
式(A)、式(B1)、および式(B2)において、R1およびR2は独立して、水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、または−CO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;A1、A2、A3、A4、A5、およびA6は独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり;A7およびA9は独立して、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンまたはメチルで置き換えられた1,4−フェニレンまたはピリジン−2,5−ジイルであり;A8は1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンまたはメチルで置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、ビフェニレン−4,4’−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、9−クロロフルオレン−2,7−ジイルまたは9、9−ジフルオロフルオレン−2,7−ジイル;Z1、Z2、Z4、Z5、Z6、およびZ7は独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、または−C≡C−であり;Z3は単結合、−COO−、−OCO−、または−O−であり;mおよびoは独立して、1または0であり、n、p、qおよびrは独立して1〜20の整数であり;Mはマレイミドまたはフェニルマレイミドである。
【0010】
2) 項1の式(A)で表される化合物および式(B1)で表される化合物からなる組成物。
3) 項1の式(A)で表される化合物および式(B2)で表される化合物からなる組成物。
4) 項1の式(A)で表される化合物、式(B1)で表される化合物および式(B2)で表される化合物からなる組成物。
【0011】
5) 項1の式(A)で表される化合物の含有量が3〜50重量%であり、式(B1)で表される化合物および式(B2)で表される化合物の合計の含有量が50〜97重量%である組成物。
6) 式(A)においてmが0である、項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
7) 式(A)においてmが1である、項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【0012】
8) 項1の式(A)で表される化合物が、式(a)〜(f)で表される化合物である、項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【0013】
これらの式において、R1およびR2は独立して、水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、または−CO−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;A1、A2、A3およびA4は独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり;Z1、Z2は独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、または−C≡C−であり;Z3は単結合、−COO−、−OCO−、または−O−であり;nは1〜20の整数である。
【0014】
9) 式(A)においてnが3〜11である、項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
10) 項1の式(B1)においてoが0である、項1、2および4〜9のいずれか1項記載の組成物。
11) 項1の式(B1)においてoが1である、項1、2および4〜9のいずれか1項記載の組成物。
【0015】
12) 項1の式(B1)においてpが3〜11である、項1、2および4〜9のいずれか1項記載の組成物。
13) 項1の式(B2)においてpおよびrが3〜11である、項1および3〜9のいずれか1項記載の組成物。
14) 項1〜13のいずれか1項記載の組成物を、重合させて得られる共重合体。
【0016】
15) 項14記載の共重合体からなる配向フィルム。
16) 項1〜13のいずれか1項記載の組成物に、電磁波を照射して得られる配向フィルム。
17) 項1〜13の組成物を配向処理した後、電磁波の照射により液晶相の配向を固定化した配向フィルム。
【0017】
18) 照射した電磁波が電子線(EB)または紫外線(UV)である項16または17記載の配向フィルム。
19) 電磁波により固定化した液晶の配向が、ハイブリッド配向である請求項15〜18のいずれか1項記載の配向フィルム。
20) 項1〜13のいずれか1項記載の組成物に、電磁波を照射して得られる配向フィルムの製造方法。
【0018】
21) 項1〜13のいづれか1項記載の組成物を配向処理した後、電磁波の照射により液晶相の配向を固定化する配向フィルムの製造方法。
22) 照射した電磁波が、電子線(EB)または紫外線(UV)である項20または21記載の配向フィルムの製造方法。
23) 電磁波により固定化した液晶の配向が、ハイブリッド配向である項20〜22のいずれか1項記載の配向フィルムの製造方法。
【0019】
【発明の実施形態】
液晶性化合物の用語は、液晶相を有する化合物および液晶相を有さないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称として用いる。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と表記することがある。式(A)、式(B1)および式(B2)で表わされる化合物をそれぞれ化合物(A)、化合物(B1)および化合物(B2)と表記することがある。
【0020】
「アルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−などで置き換えられてもよい」の句の意味を一例で示す。C4H9−において任意の−CH2−を−O−または−CH=CH−で置き換えた基の一部は、C3H7O−、CH3−O−(CH2)2−、CH3−O−CH2−O−、H2C=CH−(CH2)3−、CH3−CH=CH−(CH2)2−、およびCH3−CH=CH−CH2−O−である。このように「任意の」語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接したCH3−O−O−CH2−よりも、酸素と酸素とが隣接しないCH3−O−CH2−O−の方が好ましい。
以下の説明において、下記の液晶骨格をMG1、MG2、MG3と定義する。
【0021】
【0022】
式(A)で表される化合物は、メチレン鎖によって、液晶骨格MG1と重合性の基であるマレイミドまたはフェニルマレイミドとを結合させたマレイミド誘導体である。その中でもM1〜M4に示した液晶骨格MG1と重合性基M、連結基Z3の組み合わせが、式(B1)や式(B2)の化合物との共重合性に優れている点と、相溶性に優れている点で特に好ましい。
【0023】
【0024】
液晶骨格MG1はモノマーの液晶性に重要な役割をはたす。m=0である液晶骨格MG1は式(A)の化合物の融点を低くする効果が期待できる。式(A)において、A1、A2、Z1が好ましい組み合わせの具体的な構造を有する。構造式中、中央から伸びたLを持った6角形は、環上の水素がハロゲンで置き換えられてもいい1,4−フェニレンであり、R1の意味は、前記と同じである。
【0025】
【0026】
式(A)の化合物において、m=1である液晶骨格MG1はm=0のである液晶骨格MG1よりも液晶性を示しやすい。式(A)において、好ましいA1、A2、A3、Z1、Z2の組み合わせを示す。
【0027】
【0028】
式(B1)で表される化合物は、メチレン鎖によって、液晶骨格MG2と重合性の基であるビニルエーテル基とが結合したモノビニルエーテル誘導体である。その液晶骨格MG2の式(B1)においての好ましいA4、A5、A6、Z4、Z5の組み合わせは、前記した液晶骨格MG1における好ましいA1、A2、A3、Z1、Z2の組み合わせのR1をR2に置き換えた構造である。
【0029】
式(B2)で表される化合物は、メチレン鎖によって、液晶骨格MG3と重合性の基であるビニルエーテル基2つとを結合させたジビニルエーテル誘導体である。式(B2)の好ましいA7、A8、A9、Z6、Z7の組み合わせ構造を示す。
【0030】
【0031】
式(A)、式(B1)のそれぞれの化合物のR1、R2は水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、または−CO−で置き換えられてもよい。その中でも、ネマチック液晶性を発現しやすい末端基として−CN、炭素数1から10のアルキルまたはアルコキシが好ましい。具体的に特に好ましい基として−CN、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシがあげられる。
【0032】
組成物がネマチック相を呈するためには、式(A)、式(B1)、式(B2)中のn、p、qまたはrは1〜20の整数であることが好ましい。より好ましいn、p、qまたはrは3〜11である。そして、それぞれの化合物中の構造に1,4−シクロへキシレンを有する場合には、その立体配置はシス型よりトランス型が好ましい。化合物の物性に大きな差異がないので、組成物および共重合体は、2H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0033】
<モノマーの製造>
式(A)で表される化合物は、文献(Gangadhara, C. Noel, M. Tomas, D. Reyx, J. Polym. Sci: PartA, Vol 36, 2531-2546 (1998))、 あるいは本発明者が開示した特願2002−115270、特願2002−259344の方法により簡便に製造できる。本発明に好適に使用できる(A1)の化合物の構造を示す。
【0034】
【0035】
【0036】
式(B1)で表される化合物は、文献(S. G. Kostromin, Ngo Duy Cuong, E. S. Garina, V. P. Shibaev, Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol 193, 177−184 (1990))あるいは文献(V. Percec, M. Lee, J. Macromol. Sci.−Chem., A28(7), 651-672 (1991))、特開2001−302578公報の方法により製造できる。本発明に好適に使用できる式(B1)の化合物の構造を示す。
【0037】
【0038】
【0039】
式(B2)で表される化合物は、文献(R. A. M. Hikmet, J. Lub, J. A. Higgins, Polymer, Vol 34, 8, (1993))、あるいは本発明者が開示した特願2001−378508の方法により簡便に製造できる。本発明に好適に使用できる式(B2)の化合物の構造を示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
本発明の組成物の基本構成は、式(A)から選ばれる化合物と式(B1)から選ばれる化合物を混合した組成物(MIX1)、式(A)から選ばれるモノマーと式(B2)から選ばれる化合物を混合した組成物(MIX2)、式(A)から選ばれる化合物、式(B1)から選ばれる化合物および式(B2)から選ばれる化合部を混合した組成物(MIX3)からなる。各化合物は単一でもよく、2種以上でもよい。
(A)+(B1) (MIX1)
(A)+(B2) (MIX2)
(A)+(B1)+(B2) (MIX3)
【0046】
組成物(MIX1)の光重合により得られるフィルムは柔軟である。組成物(MIX2)から得られるフィルムは式(B2)の化合物が架橋成分としての役割を果たすので、強靱で耐熱性の高いフィルムが得られる。組成物(MIX3)から得られるフィルムは、フィルムとしての柔軟性と耐熱性とのバランスのとれたフィルムを製造するのに適している。物性を改善する目的で、それぞれ組成物(MIX1)、組成物(MIX2)および組成物(MIX3)の各組成物に、他の成分として式(A)、式(B1)及び式(B2)で表される化合物以外の化合物を添加してもよい。他の成分は重合性を有しても、有さなくともよい。目的を達成するものであればいかなる構造のものでもよい。これらの化合物は公知のものを好適に活用できる。
【0047】
組成物中、式(A)の化合物成分が重要な役割を果たしている。本発明の組成物におけるこれらの化合物の含有量は任意に設定が可能であるが、3〜50重量%が好ましい。式(A)成分は3重量%以下であると光に対する感度が低下して光重合が進行しにくくなる。ところが、式(A)で表される化合物の多くは液晶相がなく、融点のみを有する化合物なので、50重量%以上添加すると組成物の液晶相の温度範囲が狭くなり、最適な温度での光重合が困難となりやすい。一方、式(B1)および式(B2)の化合物の添加量は任意に設定が可能であるが、組成物の液晶温度範囲を保つのに好適な量としては式(B1)成分と式(B2)成分の合計の含有量は50〜97重量%が好ましい。
【0048】
本発明の液晶フィルムは、本発明の光重合性組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成させ、その塗膜中の組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を光の照射により固定化する方法により製造することができる。支持基板には、その表面に液晶組成物の塗膜が形成できるもので、例えば、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを用いることができる。その他の具体的な商品名ではJSR(株)製の「アートン」、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」および「ゼオノア」、三井化学(株)製の「アペル」などを用いる。これらの支持体は一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムであってもよい。プラスチックフィルムのかわりに表面にスリット状に溝をつけたアルミニウム、鉄、銅などの金属基板や、スリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板等を用いることができる。
【0049】
本発明の液晶配向フィルムの製造には、支持基板にトリアセチルセルロースフィルムを使用することが特に望ましい。トリアセチルセルロースフィルムは、これをそのまま支持基板として用いることができるが、必要に応じて、このフィルムに鹸化処理、コロナ放電処理、UV−オゾン処理等の表面処理を行って用いることもできる。
【0050】
塗膜の形成には、光重合性液晶組成物を適当な溶媒に溶かして塗布することもできる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどを単独溶媒あるいは複数の混合溶媒として用いることができる。
【0051】
また塗布溶液には、塗布を容易にするために界面活性剤などを本発明の効果を損なわない範囲で加えてもよい。界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第1級あるいは第2級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ウラリル硫酸ナトリウム、ウラリル硫酸アンモニウム、ウラリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ウラリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ウレタンがあげられる。上記界面活性剤の添加量は界面活性剤の種類、光重合性液晶組成物の組成比などにより異なるが、光重合性液晶組成物の重量に対して、100ppmから5%、さらに好ましくは0.1ppmから1%の範囲である。
【0052】
本発明の組成物はラジカル重合開始剤の添加を特に必要としないが、通常の光ラジカル重合開始剤を添加して使用することもできる。光ラジカル重合開始剤の例は、チバ・スペシャリティー・ケミカル(株)の製品のうちから、ダロキュアー1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)、イルガキュアー184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュアー651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、ダロキュアー4265、イルガキュアー784などである。
【0053】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などである。
【0054】
光重合性液晶組成物の塗布方法は、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコード、デップコート、スプレーコート、メニスカスコートや流延成膜法などの方法で薄膜展開し、それを乾燥処理して溶媒を除去する方法などにより行うことができる。
【0055】
基盤の表面を配向処理する好ましい方法は、例えば一般に用いられるポリイミドやポリビニルアルコールなどからなる薄膜を形成して、それをレーヨン布などでラビング処理したものや、酸化ケイ素を斜方蒸着したもの、延伸フィルム、あるいは偏光紫外線配向膜やイオンビームなどを用いたラビングフリー配向である。
【0056】
配向処理を終えた液晶層は、紫外線または電子線等の電磁波を照射することにより配向の固定を行う。紫外線を用いるには組成物の吸収のない300nmより長波長が好ましく。電子線を用いる場合は、照射量が多すぎると共重合体が崩壊するので1〜200Mradが好ましい。電磁波照射の際の温度は、組成物が液晶状態である温度であればよいが、100℃以上の場合、熱による重合が起こり、配向がくずれるので100℃以下の温度が好ましい。
【0057】
配向を固定した薄膜の厚さは所望の位相差値により異なり、その位相差値は光学異方性薄膜の複屈折率により異なる。好ましい位相差値は0.05〜50μmの範囲であり、より好ましい位相差値は0.1〜20μmの範囲である。そして、さらに好ましい位相差値は0.5〜10μmの範囲である。光学異方性薄膜のヘイズ値は、1.5%以下、より好ましくは1.0%以下であり、透過率で80%以上、より好ましくは85%以上である。可視光領域で透過率がこれらの割合を満たすことが好ましい。ヘイズ値の範囲1.5%以下は、偏光性能に問題を生じさせないために好ましい条件である。透過率の範囲80%以上は、この光学異方性薄膜を液晶表示素子に用いるとき、明るさを維持するために好ましい条件である。
【0058】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例中に記載した相転移温度は、偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱して測定した。Cは結晶、SmX1,SmX2は未同定のスメクチック相、Nはネマチック相、Iは等方性液体を示す。NI点は、ネマチック相の上限温度を示し、NからIへの転移温度である。C 50 N 63 Iは、50℃でCからNへ転移し、63℃でNからIへ転移することを示す。
【0059】
鉛筆硬度はJIS規格「JIS−K−5400 8.4 鉛筆引掻試験」の方法に従って求めた。
【0060】
実施例1((MIX1)の組成例)
式(A)の化合物成分としてマレイミド誘導体(MA3)10重量%、及び式(B1)の化合物成分としてビニルエーテル(VE6)90重量%を混合して、ネマチック液晶組成物(CL1)を調製した。この組成物の相転移温度はC 63 N 76 Iであった。
【0061】
【0062】
実施例2((MIX2)の組成例1)
式(A)の成分としてマレイミド誘導体(MA3)30重量%、及び式(B1)成分としてジビニルエーテル(DV7)70重量%を混合して、ネマチック液晶組成物(CL2)を調製した。この組成物の相転移温度はC 73 N 117 Iであった。
【0063】
【0064】
実施例3((MIX2)の組成例2)
以下の組成のネマチック液晶組成物(CL3)を調製した。
【0065】
このネマチック液晶組成物の融点は50℃であった。NI点120℃付近で固化したので、相転移温度は測定できなかった。
【0066】
実施例4((MIX3)の組成例1)
以下の組成のネマチック液晶組成物(CL4)を調製した。
【0067】
このネマチック液晶組成物の相転移温度は、NI点が113℃、室温で液晶状態であった。
【0068】
実施例5((MIX3)の組成例2)
以下の組成のネマチック液晶組成物(CL5)を調製した。
【0069】
このネマチック液晶組成物の相転移温度はNI点が112℃、室温で液晶状態であった。
【0070】
実施例6((MIX3)の組成例3)
以下の組成のネマチック液晶組成物(CL6)を調製した。
【0071】
このネマチック液晶組成物の相転移温度はC 65 N 97 Iであった。
【0072】
実施例1〜6の結果が示すように、本発明の液晶組成物は熱による重合が起こらない100℃以下にネマチック液晶相がある。
【0073】
実施例7(紫外線照射による配向フィルムの製造)
組成物(CL4)10gを、表面をレーヨン布によりラビングしたアセチル化度2.9のトリアセチルセルロースフィルムに、マイクログラビヤコーターを用いて塗布した。塗布後、70℃に設定したオーブン中で15分熱処理することにより、液晶層を配向させた。同温度を保ったまま、高圧水銀灯(120W/cm)によって紫外線を10秒間照射した。照射後、液晶層は重合しており、その表面硬度は鉛筆硬度にして2Hであった。温度変化(20〜100℃)による液晶相の配向の乱れはなく耐熱性の高いフィルムが得られた。
【0074】
組成物(CL1)〜(CL3)、組成物(CL5)、(CL6)を用いて同様の方法により液晶配向フィルムを作製した。すべての組成物が良好な配向性と紫外線による重合性を有した。組成物(CL1)のフィルムが鉛筆硬度はHを示した以外は、すべて2H程度を示した。組成物(CL2)〜(CL6)から製造したフィルムはすべて、温度変化(20〜100℃)による液晶相の配向の乱れはなく耐熱性の高いフィルムであった。
【0075】
実施例8(電子線による配向フィルムの製造)
組成物(CL4)10gをN−メチルピロリドン50gに溶かして溶液とした。この溶液に界面活性剤S−383(旭硝子(株)製)を8mg添加し、表面をレーヨン布によりラビングしたポリエチレンナフタレートフィルム(三菱ダイヤホイル(株)製)上にバーコーターを用いて塗布した。塗布後、60℃に設定したオーブンにより乾燥した後、70℃に設定したオーブン中で5分熱処理することにより、液晶層を配向させた。室温で電子線(EB)を照射した(加速電圧30kV)。照射後、液晶層は固定化しており、その表面硬度は鉛筆硬度にして2H程度であった。フィルム中のポリエチレンナフタレートフィルムを取り除き液晶が配向したフィルム得た。このフィルムの配向はネマチックハイブリッド配向であった。
ネマチックハイブリッド配向の確認は、フィルムの屈折率(アッベ屈折計)と配向ダイレクター(エリプソメータ)の測定により確認した。
【0076】
【発明の効果】
液晶性のビニルエーテル化合物とマレイミド誘導体からなる本発明の液晶組成物は高い光重合反応性を有する。光ラジカル重合開始剤あるいは酸を発生する光カチオン重合開始剤などの重合開始剤を添加しなくても容易に重合反応が進行する。また、熱による重合が起こりにくい温度域で高い液晶性を有することから、配向が容易である。配向した本発明の液晶組成物に紫外線などの光を照射することにより、その液晶相を固定化することができるので簡便に高純度の液晶配向フィルムが製造できる。
Claims (15)
- 式(A)で表される化合物と式(B1)または式(B2)で表される化合物とからなる組成物。
式(A)において、R1は、−CNまたは炭素数3〜9のアルキルであり;A1、A2およびA3は独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z1およびZ2は単結合、−OCO−、または−C≡C−であり;Z3は単結合であり;mは、1または0であり、nは3〜8の整数である。Mはマレイミドである。
式(B1)において、R2は−CNであり;、A4およびA5は1,4−フェニレンであり;Z4は単結合であり;oは0であり;pは3〜8の整数である。
式(B2)において、A7およびA9は1,4−フェニレンであり;A8は、1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、または9−メチルフルオレン−2,7ジイルであり;Z6およびZ7は独立して、−COO−または−OCO−であり;qおよびrは独立して3〜8の整数である。 - 請求項1の式(A)で表される化合物および式(B1)で表される化合物からなる組成物。
- 請求項1の式(A)で表される化合物および式(B2)で表される化合物からなる組成物。
- 請求項1の式(A)で表される化合物、式(B1)で表される化合物および式(B2)で表される化合物からなる組成物。
- 請求項1の式(A)で表される化合物の含有量が3〜50重量%であり、式(B1)で表される化合物および式(B2)で表される化合物の合計の含有量が50〜97重量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
- 式(A)においてmが0である、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
- 式(A)においてmが1である、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を、重合させて得られる共重合体。
- 請求項8記載の共重合体からなる配向フィルム。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を配向処理した後、電磁波の照射により液晶相の配向を固定化した配向フィルム。
- 照射した電磁波が電子線(EB)または紫外線(UV)である請求項10記載の配向フィルム。
- 電磁波により固定化した液晶の配向が、ハイブリッド配向である請求項9〜11のいずれか1項記載の配向フィルム。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を配向処理した後、電磁波の照射により液晶相の配向を固定化する配向フィルムの製造方法。
- 照射した電磁波が、電子線(EB)または紫外線(UV)である請求項13記載の配向フィルムの製造方法。
- 電磁波により固定化した液晶の配向が、ハイブリッド配向である請求項13または14記載の配向フィルムの製造方法。
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