JP4054608B2 - 板ブラシシール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸と相対変位する相対部品との間をシールする板ブラシシールに関する。更に詳しくは、例えば、航空機、ガスタービン等の回転軸と相対変位する相対部品との間をシールする板ブラシシールの改良技術に係わるものである。
【0002】
【従来技術】
本発明に関する先行技術には、図7に示すブラシシール装置100が存在する。
図7は、回転軸120が貫通するケーシング110との間に取り付けられたブラシシール装置100の断面図である。このケーシング110は、蒸気タービンやガスタービン等の固定側の部品となるものである。そして、ブラシシール装置100はケーシング110に取り付けられて回転軸120との間を仕切って被密封流体をシールしている。
【0003】
図7において、ブラシシール装置100は、リング状に形成されて、ケーシング110の取付溝部112に取り付けられる。このブラシシール装置100の主要な構成は、ブラシシール109と背板102と支持板103である。このブラシシール109は、剛毛101が円周に沿ってある厚さに束ねられて壁状に配列され、一端部が結合されて取付部104を形成している。又、ブラシシール109の自由端面105は回転軸120に対向して配置される。この剛毛101の線径は、一般に、0.02mmから0.5mmのものが用いられている。そして、その本数は何万、何十万本となる場合もある。
【0004】
このブラシシール109の側面には、環状に形成された背板102が側面108をブラシシール109と接触状態にして配置されおり、この背板102は被密封流体の圧力を受けて剛毛101が変形しないように支持している。
又、ブラシシール109の他方の面には、保持板103がリング板に形成されて背板102との間でブラシシール109の取付部104側を狭持している。この保持板103は、ブラシシール109の自由端側が弾性変形しやすいように径方向の幅が狭くされてブラシシール109を被密封流体側に露出させている。
そして、背板102とブラシシール109の取付部104と保持板103とは、一端が溶接されて結合部106を成している。
【0005】
図7の直線状の剛毛101は、回転軸120の径方向に対して回転軸120の回転する方向へ傾斜している。このブラシシール109の正常状態は、図7の実線で示すように回転軸120が自由端面105に接触又は近接している。
【0006】
又、ブラシシール109は、剛毛101がある厚さの束にされて周方向に沿って配列されている。そして、ブラシシール109の自由端面105は、回転軸に嵌合するようにワイヤ放電加工機などにより精密仕上げ加工されている。しかし、剛毛101は変形しやすいので、この加工が極めて困難になっている。
【0007】
上述のごとく構成されたブラシシール装置100は、回転軸120が振動や揺動などにより、ブラシシール109に接触すると、ブラシシール109は、回転軸120と圧接された状態になりながら回転方向へ傾斜した傾斜角度も増加する。
この状態で、被密封流体の圧力が高圧P1の場合には、低圧P2との差圧(P1−P2)が大きくなるから、ブラシシール109の直線状の剛毛101は、弾性変形して曲がり、各剛毛101間にランダムな間隙が生じることになる。
【0008】
図8は、図7のブラシシール109の内径側自由端面105から見た正面図である。
この図8に於いて、直線状の剛毛101間に被密封流体が侵入すると内周面側から見て束ねられた各剛毛101は、剛毛101間の間隙が図8に示すように被密封流体により押し分けられて大きな間隙となるので、この分けられた間隙から被密封流体が漏洩することになる。
この作用は、更に、傾斜した状態の剛毛101が圧力により分けられると、分けられた一方側が、設定された傾斜角度よりも小さくするように変位しようとするので、剛毛101の先端部は、回転軸120とますます接触状態を強めるから圧接力を更に増加させて摩耗することになる。
この剛毛101の自由端面105が摩耗すると、この摩耗した自由端面105と回転軸120との間から被密封流体が漏洩することになる。
【0009】
又、この様な状態で、回転軸120が揺動すると、ブラシシール101の回転軸120に圧接した位置に対して軸心を通り径方向反対側は、剛毛101の自由端面105と回転軸120との隙間Cが大きくなるので、この間隙Cから被密封流体の漏れが惹起する。
このように、剛毛101による被密封流体のシールには解決しなければならない問題が存在する。
【0010】
更に、他の従来技術として、図9に示すブラシシール装置が存在する。この図9は、薄板の板シール209を回転軸120の周方向に積層状態に重ねて高圧側領域P1と低圧側領域P2をシールするものである。
そして、板シール209の外周部はろう付けされて取付部104に形成されていると共に、このろう付けされた取付部104を介してケーシング110の溝部に取り付けられる。又、板シール209の低圧側領域P2の側面には背板102が配置されていると共に、高圧領域側P1の側面には保持板103が配置されており、この両板102,103により板シール209の両側を支持している。
【0011】
しかし、この様に形成された板シール209に対し、回転軸120が偏心して圧接したときに、円弧状を成すのみの板シール209は、弾性変形が容易でないから、弾性変形に対応するバネ常数が大きくなるので、回転軸60の偏心に対して追随することが困難になる問題を惹起している。このために板シール209の自由端面とロータ120の外周面との間隔を大きくとっているので、被密封流体をシールする能力に問題が生じる。
【0012】
更に、被密封流体の圧力が作用する方向に接合して重ねられた板シール209は、単なる平板のみであるために、その平板の接合面間方向に作用する圧力の被密封流体が容易に平板の接合隙間から流出し、被密封流体の漏れを防止するシール能力に問題が生じてくる。更に又、可撓性が阻害される構成の積層構造は、板シール209の自由端面(図7の符号105と同じ面)を早期に摩耗させる結果となっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その技術的課題は、板ブラシシールに可撓性を付与すると共に、シール能力を向上させることにある。
更に、対向部品からの押圧力に対する板ブラシシールの弾性変形能力を向上させると共に、被密封流体に対するシール能力を向上させ、且つ板ブラシシールが対向部品により摩耗させられるのを低減することにある。
又、板ブラシシールの対向部品との接触力と変動に対応する追随性を良好にし動力のエネルギーの低減を図ると共に、変動に対してもシール能力を向上させることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述のような課題を解決するために成されたものであって、その課題を解決するための技術的手段は以下のように構成されている。
【0015】
請求項1に係わる本発明の板ブラシシールは、間隙を有して相対移動する部品間の一方の前記部品に取付けられて他方の前記部品との間をシールする板ブラシシールであって、
前記一方の部品に取り付けられる板状の第1基部を有するとともに前記他方の部品側に細梁の第1ブラシ部分と第1スリットとが交互に配列された第1板ブラシ単部を有する第1ブラシシール単板と、前記第1ブラシシール単板に隣接して配置され、ほぼ同形状に形成されて前記第1基部と接合される第2基部を有するとともに、前記第1ブラシ部分に対して挿入可能に形成される第2スリットと、前記第1スリットに対して挿入可能に形成される第2ブラシ部分とが交互に配列された第2板ブラシ単部とを有する第2ブラシシール単板と、前記第1ブラシシール単板と前記第2ブラシシール単板とを交互に配列した配列層の一端側の前記ブラシシール単板の側面を支持する背板部と、前記背板部との間で前記配列層の前記ブラシシール単板の側面を挟持する保持板とを具備し、前記背板部又は/及び保持板には前記第1ブラシ部分を第2スリットに挿入させるとともに第2ブラシ部分を第1スリットに挿入させる押圧部が側面より対向する前記板ブラシ部側へ凸状に形成されているものである。
【0016】
この請求項1に係わる本発明の板ブラシシールでは、ブラシシール板が一対の第1及び第2ブラシシール単板をブラシ部分とスリットとが背板部の押圧部と保持板部の押圧部により押圧されて自由端部側に向かって互いに噛み合う深さが深くなるので、各ブラシ部分の側面の間隙が密接し、シール能力を飛躍的に向上させることが可能になる。その上、板ブラシ部は積層基部側がかみ合い深さが浅いから弾性変形力を有し、他方部品の当接に対して摩擦を和らげて摩耗するのを効果的に防止する。
【0017】
この板ブラシ部は、積層基部側が背板部により被密封流体が仕切られているから、背板部により被密封流体はシールされる。このために、板ブラシ部の各ブラシ部分の噛み合う互いの接触深さが浅い積層基部側は、シール能力よりも弾性変形が付与されている。そして、板ブラシ部の自由端部側は各ブラシ部分の互いに噛み合う深さが深くされてシール能力を向上させている。その結果、板ブラシシールは、シール能力と共に可撓性が発揮されて当接部品との接蝕による摩耗が効果的に防止される。
【0018】
請求項2に係わる本発明の板ブラシシールは、前記背板部又は/及び保持板の前記押圧部は各前記ブラシシール単板の前記第1板ブラシ単部と前記第2板ブラシ単部との互いに対向する方向へ係合する深さが自由端部に向かって徐々に深く係合させる寸法に突出しているものである。
【0019】
この請求項2に係わる本発明の板ブラシシールでは、第1板ブラシ部と第2板ブラシ部とを自由端部に向かって徐々に噛み合い深さが互いに深くなるように構成されているので、板ブラシシールの自由端部側が隙間のないブラシ部に形成されてシール能力が向上している。そして、ブラシ部の積層基部側は各ブラシ部分の噛み合い深さが浅いから弾性変形力が付与されて対向部品との当接に対して柔らかく接触し摩耗が効果的に防止される。
【0020】
請求項3に係わる本発明の板ブラシシールは、各前記ブラシシール単板は前記第1ブラシ部分の配列方向の第1係合面と対向する前記第2ブラシ部分の第2係合面の配列方向の接合面間に対して次に隣接する第3ブラシ部分の第3係合面が配列方向へ千鳥形に配列されているものである。
【0021】
この請求項3に係わる本発明の板ブラシシールでは、各ブラシシール板を積層するときに隣接するブラシ部分とスリットとの接合面間を積層方向に連通しないようにずらして積層すると、更にシール能力を向上させることが可能になる。
【0022】
請求項4に係わる本発明の板ブラシシールは、前記背板部又は/及び前記保持板の前記ブラシシール単板と接合する面に固体潤滑材が塗布されているものである。
【0023】
請求項4に係わる本発明の板ブラシシールでは、背板部又は/及び保持板のブラシシール板と接合する面に個体潤滑材が塗布されているので、ブラシシール板は背板部又は/及び保持板に圧接しているが、潤滑材の効果によりブラシ部の対向部品との当接に対する弾性変形が容易になる。このために、対向部品と摩擦しても摩耗させられるのを効果的に防止できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる実施の形態についての板ブラシシールを図面に基づいて詳述する。尚、以下の図面は特許図面としての概念図ではなく、設計図である。
【0025】
図1は、第1実施の形態を示す、ガスタービンのケーシングの段部51付の内周面内にロータ60が嵌通した両部品間の間隙を高圧P1側と低圧P2側とに仕切る板ブラシシール装置1の半断面図である。
又、図2は、図1に示す板ブラシシールの背板部と保持板とにより挟持される前の組立状態の半断面図である。
図3は、本発明に係わる第1実施例を示す板ブラシシール2の半断面図である。更に、図4は、本発明に係わる第2実施例を示す板ブラシシール2の半断面図である。図5は、本発明の第3実施例の板ブラシシール2の平面図である。図6は、本発明の第4実施例のブラシシール単板4の平面図である。
【0026】
図1において、1は板ブラシシール装置(図1ではメカニカルシール装置とも言う)である。この板ブラシシール装置1は、図1に示すケーシングとロータ60との間に取付られた全体の構造を言う。板ブラシシール装置1の固定部20は、構成部品の一方の部品(ケーシング)の内周面に設けられた段部51にスナップリング12を介して取り付けられている。尚、固定部20の形状は種々のものがあり、部品を組み合わせた一方の部品の内周面に設けられた段部51に取り付けることもできる。又、板ブラシシール2の内周側の自由端部5は他方の部品であるロータ(以下、回転軸とも言う)60の外周面と対向して接面又は近接した状態に配置されている。そして、板ブラシシール2により高圧P1側の被密封流体をシールする。
【0027】
図1に於いて、板ブラシシール2は、ブラシシール板3を積層した両側に背板部6と保持部10とを取り付けた構成から成る。この背板部6及び保持部10は板ブラシシール2の補助部品である。
この板ブラシシール2は、一般に、ブラシシール板3の複数枚の積層構造であるが、シール構造に応じて被密封流体の圧力が小さいときは、1枚構造でもシールが機能する。
【0028】
この板ブラシシール2は、1対のブラシシール板3の6枚を積層状態に配置し、ある厚さの環状体に形成されている。そして、ブラシシール板3の環状を成す内周側がロータ60の回転方向へ傾斜した列状の細梁によりブラシ部2Aを構成している。又、板ブラシシール2の内周側は、下記に説明するブラシ単部3Aの積層構造である。又、ブラシシール板3の外周の積層基部3Bを積層して板ブラシシール2の取付部2Bを構成する。この取付部2Bの外周面は溶接等により一体化される。
【0029】
以下は、図5と6も参照して説明する。1対にされてブラシシール板3を構成するうちの一方の第1ブラシシール単板4は、第1板ブラシ単部4Aと第1基部4Bとから構成されている。第1板ブラシ単部4Aは、環状の薄板の内周が並列に形成された第1スリット4A2により第1スリット4A2間が各々一本の細梁状の第1ブラシ部分4A1に形成されたものである。この細梁の第1ブラシ部分4A1は、断面が長方形状又は正方形状に形成されている。
第1ブラシシール単板4の第1ブラシ部分4A1と第1スリット4A2との全体形状は、第1基部4Bから板の縦方向の自由端部5へ向かって多数の第1スリット4A2をほぼ等間隔に形成し、板の横方向へ1列の自由端部5から見て凹凸に構成している。又、外周は板状の第1基部4Bに形成されている。
【0030】
更に、第2ブラシシール単板4も第1ブラシシール単板4と同様に形成されている。この第2ブラシシール単板4にも環状の薄板の内周側が第2ブラシ部分4A1と第2スリット4A2とが板方向へ自由端部5から見て凹凸状に形成されて第2板ブラシ単部4Aを構成している。又、第2板ブラシ単部4Aと反対には第2基部4Bが板状に形成されている。
この第2ブラシ部分4A1の細梁は、断面が長方形状又は正方形状に形成されている。しかし、この形状は、図6に示すように、ブラシシール単板4のリング状の大きさによっては、第1ブラシ部分4A1と第2ブラシ部分4A1とが必ずしも平面から見て同一形状に成らない場合がある。
【0031】
1対のブラシシール板3は、第1ブラシシール単板4と第2ブラシシール単板4とを積層して一対に形成される。この第1ブラシシール単板4と第2ブラシシール単板4との積層は、第1板ブラシ単部4Aと第2板ブラシ単部4Aとが、それぞれの第2スリット4A2と第1スリット4A2を介して噛み合わされる。
そして、板ブラシシール2は,このブラシシール板3の単数層又は複数層により構成される。
【0032】
図2は、板ブラシシール2を形成する前工程の組み付け状態である。この実施例では、前述のブラシシール板3を6層にして両側からリング状を成す背板部6と保持板10により挟持し、図1の板ブラシシール2を形成する。
図2において、背板部6の側面6Bと保持板10の側面10Bには、リング状の内周側に向かって突出方向へ傾斜した形状の押圧部6A、10Aが形成されている。この背板部6と保持板10とをブラシシール板3の外周面を略同一にして両側から対向挟持すると、背板部6と保持板10のそれぞれの押圧部6A、10Aは、第1板ブラシ単部4Aと第2板ブラシ単部4Aとを第2及び第1スリット4A2、4A2を介して噛み合わせることになる。
この押圧部6A、10Aは、背板部6と保持板10との内周側に凸状に形成されているから、背板部6と保持板10によりブラシシール板3を挟持すると、第1板ブラシ単部4Aと第2板ブラシ単部4Aとは、第2スリット4A2と第1スリット4A2を介して内周側ほど深く噛み合うことになる。
【0033】
この板ブラシシール2の自由端部5の軸方向の寸法は、板ブラシシール2の取付部2Bの同方向の長さの1/2に接合されている。この板ブラシシール2の自由端部5側は、各ブラシ部分4A1、4A1の噛み合う深さが1枚の板状になるまで完全に噛み合うので、各々のブラシ部分4A1、4A1の接合面間に隙間が少なくなる。又、ブラシ部2Aの取付部2B側は、積層基部3Bによりほとんど噛み合わない状態である。このため、このブラシ部2Aの全体の断面形状は台形状になる。
その結果、ブラシ部2Aは、自由端部5側がブラシ部分4A1の接合状態が密になるから被密封流体を仕切るシール能力が向上する。反対に、ブラシ部2Aの積層基部2B側はブラシ部分4A1の接合状態が疎であるから、弾性変形能力が付与される。このために、ブラシ部2Aのシールする部所のシール能力が向上すると共に、この自由端部5側のシールする部所を保持する積層基部2B側が弾性変形能力を付与されて可撓性が発揮される。
【0034】
図3に示す板ブラシシール2は、図2に示すブラシシール板3と同様に複数枚が積層されて環状体を成している。このブラシシール板3は、図2に示すようにして挟持される。この背板部6と保持板10とは、図1のそれとは異なり、押圧部6A、10Aが背板部6の側面6Bと保持板10の側面10B(図2を参照)との内周端に凸部状に形成されている。 この背板部6と保持板10によりブラシシール板3を挟持して組み合わせると、図1に示す板ブラシシール2と同様に構成される。図3の板ブラシシール2のその他の構成は、図1に説明した構成と同様である。
【0035】
図4に示す板ブラシシール2は、背板部6と保持板10との外径と内径が略同一に形成されたものである。そして、保持板10の側面10B(図2を参照)の中程に押圧部10Aが凸部状に形成されている。また、背板6の側面6Bの内周端に凸部状の押圧部6Aが形成されている。その他の構成は、図3の板ブラシシール2と略同一である。
【0036】
この背板部6と保持板10とのブラシシール板3と接合する側面6B,10B(図2を参照)には、固体潤滑材がコーテングされている。このために、図1に示す板ブラシシール2はブラシシール板3が背板部6と保持板10により挟持されていても、ブラシシール板3の可撓性が発揮される。
又、図3及び図4に示す板ブラシシール2は、背板部6と保持板10の各側面6B、10Bに設けた押圧部6A、10Aが凸状に突出しているから、ブラシシール板3との接触面積が少なくなり、ブラシ部2Aの弾性変形能力が向上する。このために板ブラシシール2が他方の部品60と当接しても摩耗させられるのが減少する。
【0037】
図5は、板ブラシシール2をロータ60に取り付けた平面図である。又、その断面図は、図1のようになる。
このブラシシール単板4は、環状板が板ブラシシール分割片4Cに分割された両端面の係合部12を介して結合し、環状板に連結したものである。そして、このブラシシール単板4は軸方向へ積層されている。この積層状態は、背板部6と保持板10の押圧部6A、10Aにより1対の第1及び第2ブラシシール単板4の第1ブラシ部分4A1と第2ブラシ部分4A1は、図1のブラシシール板3と同様に、互いに自由端部5に向かって噛み合い深さを深めながら1対に組み合っている。
この板ブラシシール分割片4Cは、分割片であるために薄板から多数製作することができる。このため、大径の板ブラシシール2であっても材料の歩留まりが向上するために、各ブラシシール単板4として採用される。
この他の構成は図1と同様に構成されている。そして、この板ブラシシール2は大径の形状の場合に採用される。尚、板ブラシシール分割片4Cは、薄板からエッチング加工、ワイヤ放電加工、レーザ加工、電子ビーム加工等の微細加工により容易に製作できる。
【0038】
図6は、ブラシシール板3の一方の第1ブラシシール単板4の平面図である。この第1ブラシシール単板4は薄板からエッチング加工、ワイヤ放電加工、レーザ加工、電子ビーム加工等の微細加工によりリング板に製作する。
そして、第2ブラシシール単板4も第1ブラシシール単板4と略同様に形成される。この第1ブラシシール単板4と第2ブラシシール単板4とを1対に組み合わせてブラシシール板3に構成する。更に、このブラシシール板3を積層状態に組み合わせて図2に示すように両側から背板部6と保持板10とにより挟持すると第1及び第2ブラシ部分4A1、4A1は噛み合わされて図1及び図5に示すような板ブラシシール2に構成される。尚、第2ブラシ部分4A1は、図5及び図6では、平面から見てブラシシール板3に積層したときに台形状の第1スリット4A2と嵌り合う平面形状に形成される。
【0039】
上述した実施例のブラシシール単板4の積層した厚さは0.5〜5mmの範囲にされているが、この積層した厚さは、被密封流体の圧力により決められるものである。更に、板ブラシシール単板3の材質は、鋼、ステンレス、ニッケル基の合金、セラミック材等が用いられる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の板ブラシシールによれば、ブラシシール板が1対の第1及び第2ブラシシール単板をブラシ部分とスリットとが背板部の押圧部と保持板部の押圧部により押圧されて互いに噛み合うので、第1ブラシ部分と第2ブラシ部分とが自由端部側に向かって互いに噛み合う。このために各ブラシ部分の接合面の間隙が密接し、シール能力を飛躍的に向上させることが可能になる。その上、板ブラシ部は積層基部側がかみ合い深さが浅いから弾性変形能力を発揮し、他方の部品の当接に対して摩擦を和らげて摩耗するのを効果的に防止する。
【0041】
この板ブラシ部は、積層基部側が背板部により被密封流体を遮断しているから、背板部により被密封流体がシールされる。このために、板ブラシ部の各ブラシ部分の噛み合う互いの接触深さが浅い積層基部側は、シール能力よりも弾性変形が付与されている。
そして、ブラシ部の自由端部側は各ブラシ部分の互いに噛み合う深さを背板部と保持板の押圧部の突出する高さにより任意に設定でき、必要に応じたシール能力を向上させることができる。特に、自由端部に向かってブラシ部分の噛み合い深さを深くするとシール効果が更に向上する。その結果、板ブラシシールは、シール能力と共に可撓性が発揮されて当接する他方の部品との接蝕による摩耗が効果的に防止される。
【0042】
更に、板ブラシシールはブラシ部の各ブラシ部分の接合する面が被密封流体の作用方向へ千鳥形に構成できるから、被密封流体のシール効果が向上する。
又、背板部又は/及び保持板のブラシシール板と接する面に固体潤滑材をコーテングすることによりブラシシール板が他方の部品に当接しても弾性変形し、更には、当接に対する応答性を向上させることが可能になる。このために、ブラシ部の摩耗を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる第1実施の形態を示す板ブラシシール装置の半断面図である。
【図2】 図1に示す板ブラシシールの前工程における組立る状態の半断面図である。
【図3】 本発明に係わる第1実施例を示す板ブラシシールの半断面図である。
【図4】 本発明に係わる第2実施例を示す板ブラシシールの半断面図である。
【図5】 本発明に係わる第3実施例を示す板ブラシシールの平面図である。
【図6】 本発明に係わる第4実施例を示すブラシシール単板の平面図である。
【図7】 従来のブラシシール装置の半断面図である。
【図8】 図7に示すブラシシール装置に被密封流体が作用した状態の内周から見たブラシシールの平面図である。
【図9】 従来の他のブラシシール装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 板ブラシシール装置(メカニカルシール装置)
2 板ブラシシール
2A ブラシ部
2B 取付部
3 ブラシシール板
3A ブラシ単部
3B 積層基部
4 第1及び第2ブラシシール単板
4A 第1及び第2板ブラシ単部
4A1 第1及び第2ブラシ部分
4A2 第1及び第2スリット
4B 第1及び第2基部
4C 板ブラシシール分割片
5 自由端部
6 背板部
6A、10A 押圧部
10 保持部
12 係合部
20 固定部
51 一方の部品の内周面に設けられた段部
60 他方の部品(ロータ)
Claims (4)
- 間隙を有して相対移動する部品間の一方の前記部品に取付けられて他方の前記部品との間をシールする板ブラシシールであって、
前記一方の部品に取り付けられる板状の第1基部を有するとともに前記他方の部品側に細梁の第1ブラシ部分と第1スリットとが交互に配列された第1板ブラシ部を有する第1ブラシシール単板と、
前記第1ブラシシール単板に隣接して配置され、ほぼ同形状に形成されて前記第1基部と接合される第2基部を有するとともに、前記第1ブラシ部分に対して挿入可能に形成される第2スリットと、前記第1スリットに対して挿入可能に形成される第2ブラシ部分とが交互に配列された第2板ブラシ部とを有する第2ブラシシール単板と、
前記第1ブラシシール単板と前記第2ブラシシール単板とを交互に配列した配列層の一端側の前記ブラシシール単板の側面を支持する背板部と、前記背板部との間で前記配列層の前記ブラシシール単板の側面を挟持する保持板とを具備し、
前記背板部又は/及び保持板には前記第1ブラシ部分を第2スリットに挿入させるとともに第2ブラシ部分を第1スリットに挿入させる押圧部が側面より対向する前記板ブラシ部側へ凸状に形成されていることを特徴とする板ブラシシール。 - 前記背板部又は/及び保持板の前記押圧部は各前記ブラシシール単板の前記第1板ブラシ単部と前記第2板ブラシ単部との互いに対向する方向へ係合する深さが自由端部に向かって徐々に深く係合させる寸法に突出していることを特徴とする請求項1に記載の板ブラシシール。
- 各前記ブラシシール単板は前記第1ブラシ部分の配列方向の第1係合面と対向する前記第2ブラシ部分の第2係合面の配列方向の接合面間に対して次に隣接する第3ブラシ部分の第3係合面が配列方向へ千鳥形に配列されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板ブラシシール。
- 前記背板部又は/及び前記保持板の前記ブラシシール単板と接合する面に固体潤滑材が塗布されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の板ブラシシール。
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