JP4764566B2 - 板ブラシシール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、航空機、ガスタービン等の回転軸と相対移動する相手部品との間をシールする薄板をブラシ状に加工した板ブラシシール装置に関する。特に、相対移動する二部品間で一方部品が微少な変動をしても板ブラシシールが一方部品の変動に追随して変形すると共に、両部品間をブラシにより効果的にシールするようにした板ブラシシール装置の技術分野に係わるものである。
【0002】
【従来技術】
本発明に関する先行技術には、図9に示すブラシシール装置100が存在する。
図9は、回転軸120が貫通するケーシング110との間に取り付けられたブラシシール装置100の断面図である。そして、このケーシング110は、蒸気タービンやガスタービンの部品であって、 ブラシシール装置100がケーシング110と回転軸120との間を仕切るようにして被密封流体をシールしているものである。
【0003】
図9において、ブラシシール装置100は、リング状に形成されて、ケーシング110の溝部112に取り付けられている。このブラシシール装置100の主要な構成は、ブラシシール109と背板102と支持板103である。このブラシシール109は、剛毛101が円周に沿って壁状に配列され、一端部が結合されて取付部104を形成している。そして、ブラシシール109の自由端面105は回転軸120に対向する。この剛毛101の線形は、一般に、0.02mmから0.5mmのものが用いられている。そして、その本数は何万、何十万本と用いられている。
【0004】
このブラシシール109の側面には、環状をした背板102が側面108をブラシシール109と接触状態にして配置され、被密封流体の圧力の作用に対して剛毛101を支持している。
又、ブラシシール109の他方の面には、保持板103がリング板に形成されて背板102との間でブラシシール109の取付部104側を狭持するごとく一体に配置されている。この保持板103は、被密封流体がブラシシール109の側面に作用できるように径方向の幅が狭くされてブラシシール109を露出させている。
そして、背板102とブラシシール109の取付部104と保持板103とは、一端が溶接されて結合部106に形成されている。
【0005】
このブラシシール装置100は、図9の実線で示すように、ブラシシール109と回転軸120とが揺動しない正常に嵌合した状態であって、剛毛101は、直線状を成して回転軸120の径方向に対して回転する方向へ傾斜している。このブラシシール109の正常状態は、回転軸120が自由端面105に接触又は近接しているものである。このために自由端面105は、ブラシシール109に完成後回転軸に嵌合するように精密仕上げ加工されている。この加工も困難な加工の1つである。
【0006】
更に、他の従来技術として特開平10−196801号公報には図11に示す板シール装置が開示されている。この図11には、板シール209として薄板を回転軸120の周方向に重ねて高圧側領域P1と低圧側領域P2をシールするものである。
そして、板シール209の外周部はろう付けされて取付部104に形成されていると共に、このろう付けされた取付部104を介してケーシング110の溝部に取り付けられる。又、板シール209の低圧側領域P2の側面には背板102が配置されていると共に、高圧領域側P1の側面には保持板103が配置され、この両板102,103により板シール209の両側を支持している。
【0007】
しかし、この様に形成された板シール209に対し、回転軸120が偏心して圧接したときに、重ねられて環状体を成す板シール209は、弾性変形する逃げ場を失って、弾性変形に対応するバネ常数が大きくなるので、回転軸120の偏心に対して追随することが困難になる問題を生じている。
更に、被密封流体の圧力が作用する方向に接合して重ねられた板シール209は、その接合面間が軸方向に高圧領域側P1と低圧領域側P2とに連通しており、被密封流体の圧力を受けると隙間が生じるから、被密封流体の漏れに対してシール能力に問題が生じてくる。
更に、板シール209の環状の内周長さと外周長さとは、その周長さが異なるから、外周側にスペーサを設けなければ成らず、接合面間に間隙が生じることになる。この点からもシール能力の問題が存する。更に又、可撓性が阻害される構成の積層状態は、板シール209の自由端面105を早期に摩耗させる結果となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のごとく構成されたブラシシール装置100は、回転軸120が振動や揺動などにより、ブラシシール109に接触すると、ブラシシール109は、回転軸120と圧接された状態になりながら傾斜角度も増加させる。
【0009】
この状態で、被密封流体の圧力が高圧P1の場合には、低圧P2との差圧(P1−P2)が大きくなるから、ブラシシール109の直線状の剛毛101は、全体が板の様な状態で撓みにくくなり、回転軸120に対して追随性を悪化させる。
図10(a)と図10(b)は、ブラシシール109の内径側から見た一部の平面図である。
この図10(a)と図10(b)に於いて、直線状の剛毛101間に被密封流体が侵入すると内周面側から見て図10(a)の様に配列されている各剛毛101は、図10(b)に示すように剛毛101間が開くように押し分けられるので、この分けられた間隙から被密封流体が漏洩することになる。この作用は更に、傾斜した状態の剛毛101が圧力により分けられると、分けられた一方側が、傾斜角度を小さくするように変位しようとするので、径方向の長さが長い状態になり、回転軸120との圧接状態を更に増加させて摩耗することになる。
【0010】
この様な状態と共に、ブラシシール101の回転軸120に圧接した位置に対し軸心の径方向反対側は、図9の仮想線で示す回転軸120の位置に揺動するために剛毛101の自由端面105と回転軸120との隙間Cが大きく開くことになる。そして、この間隙Cから被密封流体の漏れが惹起する。
【0011】
又、板シール209に於いても、被密封流体が作用する方向に薄板が接合しているので、被密封流体が作用すると、図10(b)と同様に薄板の接合面間が分けられるので、被密封流体が漏洩することになる。更に、板シール209の自由端部105は可撓性が阻害されるから、摩耗を早めることになる。
【0012】
本発明は、上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その技術的課題は、ブラシシール装置の剛毛間から被密封流体が漏洩するのを防止することにある。
又、ブラシシールの回転軸の変動に対応する外周面との追随性を良好にしてシール能力を向上させることにある。
更に、薄板を短冊状にしたブラシシールを可能にして追随性のある弾性変形を可能にすると共に、シール能力を向上させることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述のような課題を解決するために成されたものであって、その課題を解決するための技術的手段は以下のように構成されている。
【0014】
請求項1に係わる本発明の板ブラシシールは、間隙を有して相対回動する構成部品間の一方の部品に取付けられて他方の部品との間をシールする板ブラシシール装置であって、
薄板の前記他方の部品の相対面側にスリット(9)と前記スリット(9)間に断面が角形状を成すブラシ部分(8)とを設けて短冊状に形成された板ブラシ部(2a)を有すると共に、前記板ブラシ部(2a)と反対側に前記一方の部品に固着される基部から成る取付部(3)を有する板ブラシシール単板(2P)を積層した板ブラシシールと、
前記板ブラシシール(2)の取付部(3)と結合して前記板ブラシシール(2)の側面が支持される支持面(7)を有する背板部(6)と、
前記板ブラシシール(2)の前記取付部(3)を前記背板部(6)との間で保持する保持部(10)とを具備し、
前記板ブラシシール(2)は被密封流体の圧力方向へ前記板ブラシシール単板(2P)を積層して構成されており、前記板ブラシシール単板(2P)の前記各スリット(9)は、隣接する前記板ブラシシール単板(2P)の前記ブラシ部分(8)に接合して前記スリット(9)の間隔が塞がれるように周方向にずらして配列されているものである。
【0015】
請求項1に係わる本発明の板ブラシシールでは、薄板の一方側が短冊状に加工されてその自由端部が他方の部品の相対面と対向する板ブラシシール単板を被密封流体の圧力作用方向へ積層に重ねられており、この積層が各スリットを交差するように周方向にずらして配列されているものである。このために、板ブラシシールの各スリットは隣接するブラシ部分に接合してスリットの間隔が塞がれたようになるから、被密封流体を効果的に密封することが可能になる。
【0016】
しかも。従来の剛毛より成るブラシシールは、数十万本から成るために取付部を保持することが困難であったが、ブラシ部分を固定した薄板の基部から構成される取付部は、ブラシ部分が横づれするのを防止するから、ブラシ部分を正確に保持して効果的にシールする。又、数枚で構成される板ブラシシールは内径面を再加工することなく内径の精度を保持することが可能になるので、密封能力を向上させることができる。
【0017】
請求項2に係わる本発明の板ブラシシールは、前記ブラシ部分(8)の断面が長方形状に形成されているものである。
【0018】
請求項2に係わる本発明の板ブラシシールでは、ブラシ部分が長方形状に形成されているので、ブラシ部分が隣接するスリットの間隔を塞ぐことが可能になる。そして、薄板の幅方向に長い長方形状に形成されたブラシ部分は、幅広によりスリットの間隔を塞ぐ効果が向上するから、被密封流体を密封するシール能力が発揮される。更に、板ブラシ部の多数の幅広により被密封流体を密封するシール効果も発揮される。
更に、ブラシ部分の断面長方形の1辺の長さが被密封流体が作用する方向に長くされたブラシ部分は、被密封流体の圧力に対して耐圧に構成することが可能になる。そして、ブラシ部分の他辺をロータの回転方向には薄く形成できるから、ロータとの当接に対してばね常数の小さな馴染みやすい作用を発揮させることができる。
【0019】
請求項3に係わる本発明の板ブラシシールは、ブラシ部分(8)の被密封流体が作用する方向と直交する方向の幅が異なるものを交互に積層されているものである。
【0020】
請求項3に係わる本発明の板ブラシシールでは、前記板ブラシシールのブラシ部分の被密封流体が作用する方向と直交する方向の幅が異なるものを交互に積層されているので、幅の広いブラシ部分により被密封流体を密封する能力を向上させることが可能になる。そして、幅の大きいブラシ部分の厚さを薄くすると全体的にロータの当接に対して追随性を向上させることが可能になる。
同時に、ブラシ部分の被密封流体が作用する方向へ幅広くしたものも混在するから、被密封流体の圧力に対し耐圧性も発揮される。
【0021】
請求項4に係わる本発明の板ブラシシールは、円弧状に形成された板ブラシシール分割片(4)の各分割面(11)を周方向組み合わせて全体を環状に形成した前記板ブラシシール単板(2P)に形成すると共に、当該板ブラシシール単板(2P)が軸方向に積層されて形成されており、前記各板ブラシシール分割片(4)の前記分割面(11)は、前記積層に配列するとき各隣接する前記板ブラシシール分割片(4)間で互いに周方向にずれているものである。
【0022】
請求項4に係わる本発明の板ブラシシールでは、板ブラシシール単板が積層されていると共に各板ブラシシール分割片が互いに周方向にずれているので、被密封流体をシールする能力に優れた構成にすることが可能になる。更にスリットの間隔も隣接するブラシ部分が互いに接合して塞ぐので、シール効果が発揮される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる実施の形態についての板ブラシシール装置を図面に基づいて詳述する。尚、以下の図面は不正確な概念図ではなく、形状が正確な寸法の設計図である。
【0024】
図1は、ガスタービンのケーシング50とロータ60との間隙を高圧P1側と低圧P2側とに仕切る板ブラシシール装置1の半断面図である。又、図2は、内径側から見た図1に示す板ブラシシールの正面図である。更に、図3は、板ブラシシール単体2Pの平面図である。
【0025】
図1において、1は板ブラシシール装置である。この板ブラシシール装置1の外周側の固定部20は、構成部品の一方の部品であるケーシング50の内周面に設けられた段部51に側板12を介して取り付けられている。尚、固定部20は側板12の代わりにスナップリング等により取り付けることできる。又、板ブラシシール装置1の内周側の自由端部5は他方の部品であるロータ60の外周面と対向して接面又は近接した状態に配置されている。そして、板ブラシシール装置1により高圧P1側の被密封流体をシールする。
【0026】
板ブラシシール装置1は、板ブラシシール2、背板部6及び保持部10が主要な構成である。
このうちの板ブラシシール2は、図3に示すように、環状を成す薄板の内周側がロータ60の回転方向へ傾斜させるスリット9により傾斜した短冊状に形成されており、このスリット9により内周板が板ブラシ部2aに構成されていると共に、外周板の基部2bが取付部3を構成する。
この板ブラシ部2aは、環状の薄板の内径側が細かい短冊状に形成されて断面が軸方向へ長方形状を成してブラシ8に形成されているものである。そして、ロータ(回転軸)60の軸方向へ板ブラシシール単板2Pを複数枚重ねることにより積層状態に配置して壁を形成している。又、薄板基部の外周端部が溶接により一体化されて取付部3を形成している。
【0027】
板ブラシシール2は、一実施例として、リング状を成す薄板の内周側に三角形状の間隙を成すスリット9を設けてブラシ部分8の断面が角形状(矩形又は正方形)に形成されていると共に、その角形状の断面寸法の1辺は、0.2〜0.005×0.3〜0.008mm、好ましくは0.15〜0.008×0.2〜0.01mmである。又、長さは5〜50mmの範囲である。更に、壁の厚さは0.5〜5mmの範囲にしたが、この厚さは、被密封流体の圧力により決められるものである。
更に、板ブラシシール2の材質は、鋼、ステンレス、ニッケル基の合金、セラミック材等が用いられる。
【0028】
図3は、板ブラシシール単板2Pの平面図である。板ブラシシール2は、被密封流体の圧力の大きさに応じて、単数だけでなく複数の板ブラシシール単板2Pを積層に重ね合わせて構成するものである。そして、板ブラシシール2単板2Pは、環状を成す薄板の内周側をイッチング処理加工、プレス加工、放電加工等の方法によりスリット9に加工して短冊状に形成した板ブラシ部2aが形成されている。又、外周側はスリットのない薄板基部4bに形成されて板ブラシ部2aが一体化されている。
又、各スリット9は内径側が小さくなる寸法の三角形状をした間隙に形成されている。このスリット9の形状は必要に応じて平行な間隙に形成しても良し、狭い間隔に形成しても良い。更に、このスリット9は、ロータ60の回転する方向に傾斜してブラシ部分8に形成されているが、この傾斜角度はロータ60の回転数などから決定される。又、正逆両用回転としてブラシ部分8を径方向に形成することも可能である。
【0029】
背板部6は、板ブラシシール2の取付部3を保持する固着部6Aと板ブラシシール2に被密封流体の圧力が作用して極端に曲げられないように支持する支持面7とを設けている。そして、板ブラシシール2と支持面7との間は、図1のように接合させても良いし、離間する形に形成しても良い。
【0030】
板ブラシシール2は、回転軸60が大きく振れると自由端部5が回転軸60と接触するが、板ブラシ部2aは微細な角状板のブラシ部分8に形成されているから、ばね常数が小さく、ロータ60の揺動による当接に対して弾性的に追随する。このために、板ブラシシール2は、ロータ60に当接してもロータ60の変動に応じて弾性的に変形して追随することができる。つまり、ロータ60に振れが生じても板ブラシシール2に設定されたばね常数に応じて当接が弾性的に和らげられる。更に、ロータ60がそれより少し触れ回りが大きく揺動しても、角状板の板ブラシシール2に有するブラシ部分8は、接触圧力を更に減少させるから摩耗するのが更に防止される。
【0031】
板ブラシシール2は、背板部6と保持板部10とにより取付部3が電子ビーム等の歪みが小さい溶接により一体に結合され、この三部品の溶接部は固定部20を形成する。そして、保持部10は、リング状に形成されて、背板部6より径方向幅が小さい寸法に形成されている。尚、図1では、保持部10が固定部20を形成する長さであるが、背板部6に近い径方向の長さに形成することも可能である。そして、この長さの長い保持部10の場合には、板ブラシシール2と保持板部10の側面との間に被密封流体が流入できる空間部に形成される。
【0032】
背板部6と保持部10は、ケーシング50の線膨張係数に合わせて材質を選定することが好ましい。例えば、ニッケル基の合金、鉄、鋼、ステンレスその他非鉄金属で製作される。更には、被密封流体の種類、温度、又は、その他の適用分野の条件によって種々の材質が選定されている。
【0033】
図4(a)は、板ブラシシール装置1の内径側から見た1部の正面図である。又、図4(b)は図4(a)のC部の拡大図である。この図4は、本発明に係わる第2の実施の形態を示す板ブラシシール装置1である。
図4(a)において、板ブラシシール2は、板ブラシシール単板2Pが8層に積層されている。そして、図4(b)に拡大して示すように、ブラシ部分8は断面が正方形状に形成されているとともに、スリット9は被密封流体の圧力が作用する方向に1列にならないように互いにずらして交差した状態に配置されている。この様に配列することにより全てのスリット8は、隣接接合するブラシ部分8により両端が塞がれたようになるから、被密封流体の漏れは防止されて、シール能力が向上する。この断面が正方形のブラシ部分8は方向性が無くロータ60の当接に対してしなやかなタッチで弾性的追随性が発揮される。
【0034】
図5(a)は、板ブラシシール装置1の内径側から見た1部の正面図である。又、図5(b)は、図5(a)のD部の拡大図である。この図5は、本発明に係わる第3の実施の形態を示す板ブラシシール装置1である。
図5(a)において、板ブラシシール2は、板ブラシシール単板2Pが4層に積層されている。そして、図(b)に拡大して示すように、ブラシ部分8は断面が被密封流体の圧力が作用する方向に長手の長方形状に形成されているとともに、スリット9が被密封流体の圧力が作用する方向に1列にならないように互いにづらして交差した状態に配置され、スリット9の両側が隣接接合するブラシ部分8により塞がれる。この様なブラシ部分8の断面形状の配列によりシール能力が向上すると共に、ブラシ部分8の弾性変形能力を向上させることが可能になる。
そして、ブラシ部分8は、被密封流体の圧力が作用する方向に長方形状に形成されているから、被密封流体の圧力に対抗するので板ブラシシール単板2Pを少なくした構成にすることが可能になる。
【0035】
図6(a)は、図4(b)に類似の断面が正方形のブラシ部分8の斜視図である。
従来の断面が円形の線形ブラシの場合には、ブラシシールに作用する被密封流体の圧力が大きくなれば、それに応じて線径も太くして圧力に対向しなければならない。線径を太くすれば線径の径方向の剛性も上昇するから、線形の長さを長くしなければならない。例えば、剛毛4の線径を2倍にすると線径の長さは2.5倍にしなければならなく成る。
一方、この図6(a)に示す断面の1辺がa×bの正方形を成すブラシ部分8の長さがLのものに対して図6(b)に示すように被密封流体が作用する方向に2×aの幅に成るように二倍にすると、同一条件の材質で、ブラシ部分8の長さLを1.3倍にしただけで同一剛性にすることができる。
【0036】
つまり、断面が四角形のブラシ部分8の場合には、被密封流体の圧力に応じて耐圧性を持たせるために四角形の1辺の長さを大きくしてもその割にブラシ部分8の長さを長くしなくとも同一機能を発揮することが可能になる。一般に、シールする二部品間の間隙は狭い場合が多いから、この間隙が狭く耐圧性を必要とする場合に本発明のブラシ部分8は、耐圧性やシール能力を発揮させる上で優れた効果を奏することが出来る。更に、ロータ60の当接に対しても線径の剛毛より成るブラシシール装置に比較して弾性的な追随性に優れている。
【0037】
図7は、図1に示す板ブラシシール装置1に於ける板ブラシシール2の軸方向の一部を示す正面図である。
この板ブラシシール2は、ロータ60に接合した状態図である。このロータ60が揺動や振動により板ブラシシール2に圧接すると、ブラシ部分8は四角状に形成されているから、傾斜角度を大きくして摩擦力を低減する。つまり、断面が四角状のブラシ部分は座屈方向に対し、ばね常数が線径のものに比べて小さくすることができる。
【0038】
図7(b)は、図1の板ブラシ部2aのA部を拡大したものである。この断面が四角状のブラシ部分8を設けた板ブラシ部2aに被密封流体の高圧P1の圧力が作用した状態の内径から見た正面図であ。四角状のブラシ部分8を設けた板ブラシ部2aに流体圧力が作用してもスリット9は図7(b)に示すように若干開いても閉鎖されており、被密封流体をシールすることが可能になる。このための線径の剛毛を設けたブラシシール装置に比較してシール能力に優れた効果を発揮する。
【0039】
図8は、本発明に係わる第4の実施の形態の板ブラシシール装置1の平面図である。この板ブラシシール単板2Pは円弧状に形成された板ブラシシール分割片4の分割面11を互いに組み合わせて全体を環状に形成するものである。この板ブラシシール分割片4は、円弧状を成す薄板の内周面にスリット9を加工して板ブラシシール分割片4を形成したものである。そして、スリット9はロータ60の回転方向に傾斜している。つまり、ブラシ部分8もスリット9と同様に同角度で傾斜している。又、内周端には自由端部5が設けられてロータ60に嵌合する。更に、外周のスリット9が設けられていない薄板の基部により取付部3に形成される。
【0040】
又、この板ブラシシール分割片4は積層に配列するとき各隣接する分割面11をずらして配列することにより分割面11間の開口する間隙が突き抜けに成らずに隣接する板ブラシシール2に接合して塞がれるから被密封流体が漏洩するのを効果的に防止することが可能になる。
又、スリット9についても同様に各スリット9を交差するように板ブラシシール分割片4をづらして配置するものである。その結果、図7(b)に示すようにスリットの間隔は塞がれ、板ブラシシール装置は、シール能力に優れた効果を発揮する。
この様な板ブラシシール分割片4の組合せによるブラシシール装置1の構成は、大径の板ブラシシール装置1を製作するのにコストの面からも、組立の面からも効果的である。
【0041】
【発明の効果】
請求項1に係わる本発明の板ブラシシール装置によれば、薄板の一方側がスリットの加工により短冊状に形成された断面四角状のブラシ部分を有する板ブラシ部が積層されていると共に、角スリットが交差するように配置されているので、スリットは各々隣接するブラシ部分により閉塞されて可撓性のある板状になる。
このために板ブラシシールは板状と同様な機能を発揮して被密封流体をシールする効果を奏する。又、板ブラシシール装置は板ブラシシール単板を被密封流体の圧力に応じて被密封流体の圧力作用方向へ積層に重ねることができるので、被密封流体の圧力が大きい場合には、この圧力に応じて複数枚積層にすればよいから、従来のように数十万本の剛毛の取付部を一体化してブラシシールを製作するものに比較すると、耐圧能力と共にシール能力を向上させることが期待できる。
更に、薄板から短冊状に形成するので製作コストも飛躍的に低減することが可能になる。
【0042】
しかも。従来の剛毛より成るブラシシールは数十万本から成るために内周面をワイヤー放電加工等で円形に加工しなければならなかったが、外周が板の基部によりブラシ部分は固定されており、この数枚の薄板から構成される板ブラシシールは内径面を加工することなく内径の精度が向上している。このため、板ブラシシール装置の自由端部をロータに嵌合しても近接できるから、スリットの閉塞による効果と共に、ロータ側の被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。
【0043】
請求項2に係わる本発明の板ブラシシールによれば、ブラシ部分が断面長方形状に形成されているから、被密封流体の作用方向に長手に形成すれば被密封流体の圧力に対向して高圧力に対してもシールする効果が期待できる。又、被密封流体の圧力と直交する方向に長手に形成すれば、各スリットをより確実に閉塞することができるから、シール能力を向上させることが可能になる。
【0044】
請求項3に係わる本発明の板ブラシシールによれば、異なる幅のブラシ部分を交互に配置することにより、長手の幅によりスリットの開口間隙を閉塞できると共に、狭い幅によりロータとの当接に対しても弾性的に追随して接合することが可能になる。そして、ブラシ部分の大きさの異なる混合により全体が複合して弾性的になり、ロータに対する追随性と共に、シール能力が優れた効果を奏する。
【0045】
請求項4に係わる本発明の板ブラシシールによれば、板ブラシシール分割片を組み合わせて成る板ブラシシール単板が積層されていると共に、各板ブラシシール分割片の分割面の間隔が互いに周方向にずれて連通しないように構成されており、更に、スリットの間隔も連通しないように交差しているので、この各間隙が閉鎖されることになる。このため、板ブラシシール装置として被密封流体をシールする優れた効果を奏する。又、設定に応じて板ブラシシール分割片組み合わせて行けば、必要とする大径の板ブラシシールを形成することが可能になるので、大型の製作困難なブラシシール装置の製作コストを低減する効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる第1実施の形態を示す板ブラシシール装置の半断面図である。
【図2】図1の内径側から板ブラシシール装置を見た正面図である。
【図3】図2に示す板ブラシシール単板の平面図である。
【図4】(a)は本発明に係わる第2実施の形態を示す板ブラシシール装置の内径から見た1部の正面図、(b)は図4(a)のC部の拡大図である。
【図5】(a)は本発明に係わる第3の実施の形態を示す板ブラシシール装置の内径から見た1部の正面図、(b)は図5(a)のD部の拡大図である。
【図6】(a)は本発明に係わる正方形をしたブラシ部分の斜視図、(b)は本発明に係わる長方形をしたブラシ部分の斜視図である。
【図7】(a)は本発明に係わる板ブラシシールの正面図、(b)は図7(a)に示す板ブラシシール装置に被密封流体が作用した状態で板ブラシ部を自由端部から見た正面図である。
【図8】本発明に係わる第4の実施の形態を示す板ブラシシール装置の正面図である。
【図9】従来例のブラシシール装置の半断面図である。
【図10】(a)は図9の板ブラシ部を自由端部側から見た正面図、(b)は図9の板ブラシに被密封流体が作用して剛毛間が開いた状態の内径側から見た正面図である。
【図11】従来例の他の板シール装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 板ブラシシール装置
2 板ブラシシール
2a 板ブラシ部
2b 基部
2P 板ブラシシール単体
3 取付部
4 板ブラシシール分割片
5 自由端部
6 背板部
6A 固着部
7 支持面
8 ブラシ部分
9 スリット
10 保持部
11 分割面
12 側板
20 固定部
50 一方の部品(ケーシング)
51 段部
60 他方の部品(ロータ)
Claims (4)
- 間隙を有して相対回動する構成部品間の一方の部品に取付けられて他方の部品との間をシールする板ブラシシール装置であって、
薄板の前記他方の部品の相対面側にスリットと前記スリット間に断面が角形状を成すブラシ部分とを有して短冊状に形成された板ブラシ部を有すると共に、前記板ブラシ部と反対側に前記一方の部品に固着される基部から成る取付部を有する板ブラシシール単板が積層された板ブラシシールと、
前記板ブラシシールの取付部と結合して前記板ブラシシールの側面が支持される支持面を有する背板部と、
前記板ブラシシールの前記取付部を前記背板部との間で保持する保持部とを具備し、
前記板ブラシシールは被密封流体の圧力方向へ前記板ブラシシール単板を積層して構成されており、前記板ブラシシール単板の前記各スリットは、隣接する前記板ブラシシール単板の前記ブラシ部分に接合して前記スリットの間隔が塞がれるように周方向にずらして配列されていることを特徴とする板ブラシシール装置。 - 前記ブラシ部分の断面が矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の板ブラシシール装置。
- 前記板ブラシシールは、ブラシ部分の被密封流体が作用する方向と直交する方向の幅が異なるものを交互に積層されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板ブラシシール装置。
- 前記板ブラシシールは、円弧状に形成された板ブラシシール分割片の各分割面を周方向に組み合わせて全体を環状に形成した前記板ブラシシール単板が軸方向に積層されて形成されており、前記板ブラシシール分割片の前記分割面は、前記積層に配列するとき各隣接する前記板ブラシシール分割片間で互いに周方向にずれていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の板ブラシシール装置。
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-
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- 2001-06-29 JP JP2001199206A patent/JP4764566B2/ja not_active Expired - Lifetime
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