JP3727144B2 - 結晶化抑制型ポリエステル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は成形品の白化や曇りを抑制したり、紡糸性を良くすることが可能な、結晶性をコントロールされたポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある)に関し、さらに詳しくは、イソフタル酸(以下、IAと略することがある)、シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMと略することがある)等の共重合成分を実質的に含まないポリエステルであり、安価なSb系化合物を触媒に用いて得られるPETであって、既存のホモPET生産設備で生産可能なPETに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは力学特性、耐熱性、耐候性、耐電気絶縁性、耐薬品性に優れ、繊維、ボトル、フィルムその他の成形品として広く使用されている。
【0003】
かかるポリエステルはその用途によって要求される特性が異なる。
繊維、フィルム用途においては配向結晶化が抑制され、高強度で、製糸性、製膜性に優れたポリエステルが求められている。
【0004】
包装用フィルム、ボトル用途においては曇りがなく透明性に優れたポリエステルが強く求められている。
【0005】
樹脂から成形された成形品は一般に強度の向上が課題とされている。強度の向上を困難にしている原因の一つは、延伸成形時に充分な分子配向が起こる前に、樹脂が結晶化してしまうことにある。
【0006】
フィルムやボトルに曇りを発生させる原因の一つは、成形時にポリエステルが結晶化するためであり、結晶化を抑制するようにポリマーをコントロールすることが重要である。
【0007】
例えば、ボトル用ポリエステルについてはポリエステル中で結晶核になり難く透明性良好なGeO2触媒を使用することが日本国内では一般的である。
【0008】
しかし、最近の市場では高品質でありながらより安価な素材が求められる傾向がいっそう強くなっており、高価なGeO2の使用はポリマーの国際競争力を低下させる原因となっており、安価な金属化合物を重合触媒として使いこなす方法が求められている。
【0009】
Ge系触媒の他、ポリエステルの重合活性を持つ金属として例えばSb、Ti、Sn系触媒が知られている。
【0010】
Sb2O3は重合触媒としてよく使用されているが、重合中に還元されてSb金属を生成し、これがポリエステルに黒っぽい着色を与える他、樹脂を結晶化し易くし、強度の低下、曇りの発生をもたらす。
【0011】
Ti、Sn系の触媒は一般に重合活性が高いが、反面、副反応生成物の発生割合が高くポリマーの着色が発生する。このため、透明性や色相が良好であることが特に求められる用途に使用することは困難である。
【0012】
特開昭61−78828号公報、特開平4−57692号公報にはSb化合物を重合触媒として用い、Mg又はMn化合物とアルカリ化合物を所定量添加して得た曇りのないボトル用のポリエステルが開示されている。しかし、発明者等の検討ではこのポリエステルには低曇り性の付与や結晶化抑制の効果はほとんど認められない。
【0013】
Sb系触媒を用いながらポリエステルに低曇り性を付与し、結晶化を抑制する方法の一つとしてイソフタル酸(IA)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、アルキルジカルボン酸や過剰のジエチレングリコール(以下、DEGと略することがある)を共重合する方法が知られている。この方法によれば、確かに低曇り性の付与、結晶化抑制の効果がある。しかし、共重合成分の存在により分子配向に乱れが生じ強度が低くなってしまう点で、強度を必要とする用途では問題が認められる。
【0014】
また、このような共重合PETを使用すると、充填物によっては匂いやフレーバー性が大きく変わってしまう場合があり、ボトルや食品包装用フィルム用途においては問題がある。
【0015】
【発明の解決するべき課題】
本発明の課題は上述の問題を解決することであり、触媒として安価なSb系触媒を用いながらも結晶化特性の抑制されたPETを得ることを課題とするものである。更に詳しくは、DEG以外の共重合成分を実質的に含有すること無く、曇り、白化の少ない、結晶化特性の抑制されたPETを得ることを課題とする。ここで結晶化特性の抑制とは結晶化速度を低く抑制することである。
本発明の他の課題はボトル用プリフォームとしたときに白化が少なく、ボトルとしたときに曇りが少ない、結晶化特性の抑制されたPETを得ることである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、包装用材料、例えばボトル用材料として、好ましい低曇り性、低白化性を備えた結晶化特性の抑制されたPETは、示差走査型熱量計(以下、DSCと略することがある)による測定においてポリマーの非晶状態からの昇温時に検出される発熱ピーク(以下、Tciと称する場合がある)と溶融状態からの降温時に検出される発熱ピーク(以下、tcdと称する場合がある)の値が特定の条件を満たすPETであることを見出した。
【0017】
本発明者等の知見によれば本発明のポリエステルは特定の調製法によりSb2O3から調製された重縮合触媒化合物を所定量用いてPETを重合することにより得ることができる。
【0018】
本発明は、テレフタール酸を全酸成分に対して95モル%以上の酸成分、エチレングリコールを全グリコール成分に対して95モル%以上のグリコール成分とするポリエステルであり、該ポリエステル中に存在するSb元素の量がポリエステル全量に対して60ppm〜380ppmであり、該ポリエステルはその熱特性について下記式(1)、(2)を満足し、該ポリエステルは極限粘度数について下記式(3)を満足することを特徴とする結晶化抑制型ポリエステルである。
24.6/[η]+130.0≦Tcd≦24.6/[η]+142.0 (1)
34.5×[η]+130.0≦Tci≦34.5×[η]+142.0 (2)
[TcdはDSCによる降温時の結晶化発熱ピーク温度(℃)であり、TciはDSCによる昇温時の結晶化発熱ピーク温度(℃)である。]
0.50≦[η]≦1.10 (3)
[[η]は極限粘度数を表わし、[η]は、フェノール/テトラクロロエタン(=3/2の成分比)の溶媒を用いて35℃で測定した溶液粘度から算出する値である。]
以下に本発明について詳細に説明する。
【0019】
[ポリエステル]
本発明のポリエステルはテレフタール酸を全酸成分に対して95モル%以上、好ましくは97モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上、特に好ましくは99.5モル%以上の酸成分とし、エチレングリコールを全グリコール成分に対して95モル%以上、好ましくは96モル%以上のグリコール成分とするPETである。
【0020】
第三成分として、テレフタール酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール以外の成分を3モル%以下、好ましくは1モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下の範囲で含有することができるが、含有量は本発明の目的を損なわない範囲であることを要する。ジエチレングリコール以外の第三成分は共重合されないことが特に好ましい。
【0021】
ジエチレングリコール以外の第三成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪酸ジカルボン酸;トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール;ナフタレンジオール、ビスフェノールA、レゾルシンなどの芳香族ジオール;p―オキシ安息香酸、m―オキシ安息香酸、サリチル酸、マンデル酸、ヒドロアクリル酸、グリコール酸、3―オキシプロピオン酸、アシアチン酸、キノバ酸などオキシカルボン酸を例示することができる。
【0022】
なお、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能基化合物、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、没食子酸などの成分が共重合されていてもよく、要すれば単官能基化合物、たとえばo―ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸が少量割合、例えば1モル%以下の割合で共重合成分として含有されていてもよい。
【0023】
[Sb元素量]
本発明においては、ポリエステル重合触媒としてSb系触媒、好ましくはSb2O3が用いられる。
【0024】
本発明のポリエステル中に存在するSb元素の量はポリエステル全量に対して60ppm〜380ppm、好ましくは90ppm〜300ppmである。Sb元素の量が60ppm未満だと重合活性が小さく、溶融重合時間がかかりすぎ、現実的な生産性が得られない。Sb元素の量が380ppmを超えるとポリマーの色相が悪化するばかりか、本発明に開示した方法で用意したSb系重合触媒を用いても、TciやTcdをコントロールできなくなり、結晶化の速いポリマーしか得られなくなる。
【0025】
[Tcd、Tci]
本発明のポリエステルはその熱特性について下記式(1)及び(2)を満足する。
24.6/[η]+130.0≦Tcd≦24.6/[η]+142.0 (1)
34.5×[η]+130.0≦Tci≦34.5×[η]+142.0 (2)
但し、TcdはDSCによる測定において降温時の結晶化発熱ピーク温度(℃)であり、TciはDSCによる測定において昇温時の結晶化発熱ピーク温度(℃)である。
【0026】
Tcdが本発明の範囲より高いPETは、溶融状態のPETが冷却される段階で結晶化し易く成形時に急激な結晶化が起こり、配向結晶化を抑制し曇りを抑制することが困難となる。曇りの抑制は、特にボトル、フィルム用途において重要である。
【0027】
Tcdが本発明の範囲より低いPETは非晶性が強すぎ、過度に柔軟なPETとなり、ボトル、フィルム、工業用繊維用途には適さない。
【0028】
Tciが本発明の範囲より高いPETは延伸される段階で結晶化し難い。成形品に適度な結晶状態を付与するためには、その結晶化温度にあわせて高めの温度雰囲気下で延伸が行われることが必要とされるが、延伸工程は一般に空気存在下で行われることから、高温での延伸はPETの劣化の原因となる。
【0029】
Tciが本発明の範囲より低いPETは、延伸工程で結晶化が起こり、結晶化抑制や曇りのコントロールが難しく、曇りの少ないPETが得られない。
【0030】
本発明のPETはSb系触媒を使いながら、このTcd、Tciで表現される結晶性を備えたPETである。従来のPETであってもポリマー全量に対して2.5重量%を超えるジエチレングリコール(DEG)を共重合することにより、Tci、Tcdについて、本発明と同様の数値を達成することもできるが、DEGをポリマー全量に対して2.5重量%を超えて共重合したPETでは強伸度、収縮性、保香性、ガスバリア性が低下する。
【0031】
[極限粘度数]
極限粘度数に関しては各用途によってそれぞれ最適な範囲があるが、極限粘度が0.5以下のポリマーではフィルム、フィラメント用途でも成形品の強度が不足し製品としてユーザーに受け入れられない。極限粘度数が1.10以上であると成形工程での粘度が高くなり、設備に負荷がかかるばかりか、剪断発熱が大きくなりポリマーの劣化が目立ち品質上問題が生ずる。
【0032】
本発明のポリエステルは衣料用フィラメントとして好ましく用いられるが、この場合好ましい極限粘度数は0.55〜0.68である。極限粘度数がこれより低いと強度が不足し、高いと衣料としたときの着心地が悪くなる。
【0033】
本発明のポリエステルはタイヤコード用工業繊維として好ましく用いられるが、この場合好ましい極限粘度数は0.90〜1.10である。極限粘度数がこれより低いと強度が不足し、高いと安定して紡糸することが困難になる。
【0034】
本発明のポリエステルは飲料用ボトルとして好ましく用いられるが、この場合好ましい極限粘度数は0.65〜0.90である。極限粘度数がこれより低いと強度が不足し、高いと成形性が低下する。
【0035】
本発明のポリエステルはフィルムとして好ましく用いられるが、この場合好ましい極限粘度数は0.55〜0.68である。極限粘度数がこれより低いと強度が不足し、高いと成形性が低下する。
【0036】
[DEG]
本発明において、ポリエステル中のジエチレングリコール(DEG)成分の存在量はポリマー全量に対して2.5重量%以下である。DEG成分の存在量が2.5重量%を超える場合ポリエステル成形物の強伸度、収縮性等の物性の変化が激しく、強伸度、収縮性、保香性、ガスバリア性が低下する。特に包装用途では充填物の匂いやフレーバー性が変わってしまったり、ガスバリア性が低下したりと悪影響が懸念される。
【0037】
[触媒]
本発明においては、ポリエステル中に2価の金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が存在し、その存在量は、好ましくはポリエステル中のSb元素に対するモル比として下記式(5)の条件を満たす。
0.05≦M/Sb≦5.0 (5)
[Mは2価の金属及び/又はアルカリ土類金属を表わす。]
【0038】
このモル比が0.05未満では本発明の範囲のTciやTcdをもつポリマーは得られない。このモル比が5.0を超えると耐熱性が低下すると同時にポリマー中の異物が多くなり、過剰の添加はPETとしての物性を損なう結果となる。
【0039】
本発明のポリエステル中には2価の金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素、好ましくはアルカリ土類金属元素が上記の条件を満たして存在する。
【0040】
アルカリ土類金属はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Raである。アルカリ土類金属の中では特にMgが好ましい。
【0041】
2価の金属の中では、周期律表で第3周期又は第4周期の2A族から1B族に属する金属が好ましく、すなわち、Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuが好ましく、特にMnが好ましい。
【0042】
2価の金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素は触媒に由来し、触媒は有機酸塩であることが好ましい。触媒の有機酸塩として酢酸塩が特に好ましい。
【0043】
[製造方法]
本発明のポリエステルはテレフタール酸とエチレングリコールとを直接エステル化した後、Sb系重縮合触媒と2価の金属の塩及び/又はアルカリ土類金属塩とを調製して得た触媒溶液を添加し、続いて溶融重縮合することにより得ることができる。
【0044】
本願発明においてはこの触媒溶液の調製が肝要であり、触媒溶液の調製は以下のように行なう。
【0045】
Sb系重合触媒を予めエチレングリコールに均一に溶解し、2価の金属の塩及び/又はアルカリ土類金属塩を粉体または均一なエチレングリコール溶液として添加し、これらの混合物を60℃〜140℃、好ましくは60℃〜120℃、特に好ましくは70℃〜100℃で、20分間〜24時間、好ましくは30分間〜12時間、特に好ましくは、1時間〜6時間加熱撹袢して触媒溶液を得る。加熱撹袢の温度が60℃未満では得られるPETのTcdを本発明の範囲内にまで下げることができず、PETの結晶化を抑制することができない。加熱撹袢の温度が140℃以上では反応系の底に析出化合物が生じたり溶液面に浮遊物が生じたりと触媒溶液の安定性が低くなり、調製工程に備え付けられるフィルター寿命を低下させるおそれがある。
【0046】
Sb系重合触媒と2価の金属の塩及び/又はアルカリ土類金属塩は上述のように一緒に調製され同時に反応系に添加される。一緒に調製され同時に添加されないとTcdを本発明の範囲にまで下げることができず、PETの結晶化を抑制することができない。
【0047】
[添加剤等]
溶融重縮合の際には安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。具体的な添加量は反応装置により異なるため、適宜調製されるべきである。
【0048】
必要に応じて他の添加剤、例えば整色剤、着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0049】
溶融重縮合終了後は、例えば溶融押し出しし、適当な冷媒、例えば水中で冷却して適当な大きさに切断してチップ化する。チップは直方体でも、シリンダー状でも、サイコロ状でも、球状でもよい。
【0050】
本発明のPETは溶融重縮合の後、固相重合を施し、所望の極限粘度数のPETとするこもできる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳説する。
なお、実施例中「部」は、重量部を意味する。また実施例中で用いた特性の測定法を以下に示す。
【0052】
1)極限粘度数[η]:
フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)の混合溶媒を用い、35℃で測定した溶液粘度から算出した。
【0053】
2)ジエチレングリコール(DEG)共重合割合:
ポリマー200gと抱水ヒドラジン(ヒドラジン1水和物)10mlを混合し、150℃で10分の条件で完全にポリマーを分解した。その溶液をガスクロマトグラフィーで分析してその検出濃度からポリマー中に共重合しているジエチレングリコールの割合を求めた。ガスクロマトグラフィーには日立製作所社製ガスクロ263型を用いた。
【0054】
3)熱特性:DSC(示差走査熱量計)分析
TAインスツルメンツ社製サーマルアナリシス2200型示差走査熱量計を用いて測定を行った。ポリマーチップサンプル10.0mgをアルミパンの中にいれ、20℃/minの昇温スピードで300℃まで加熱し、300℃に達してから2分間保持した後、素速く、氷浴につけ込まれた試験管の中で、直接水に接触しないようにクエンチした。その後再び20℃/minで昇温し、結晶化温度Tci、融点Tmを求め、300℃に達した時点で2分間そのまま保持し、その後10℃/minで降温した。その際降温時の結晶化ピークをTcdとした。Tci、Tm、Tcdはそれぞれピークの最大点を読みとった。
【0055】
4)色相:
ポリマーを140℃で60分間乾燥機中で熱処理して乾燥させたポリマーをカラーマシン社製CMー7500型カラーマシンで測定した。
【0056】
5)金属量測定:
蛍光X線(理学電気工業株式会社製蛍光X線3270型)によって所定の方法にてポリマー中の金属量(単位ppm)を測定した。
【0057】
6)フィルムの成形及び品質評価:
ポリマーを160℃で乾燥し、280℃で溶融押し出し、40℃に保持したキャスティングドラム上に急冷固化せしめて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを縦延伸倍率3.5倍、横延伸倍率4.0倍の条件で逐次2軸延伸を施し、更に熱処理温度215℃の条件で厚さ25μmの2軸配向フィルムを得た。
【0058】
7)ボトルの成形及び品質評価:
ポリマーを160℃、5時間乾燥した後、名機製作所製、射出成形機ダイナメルターM―100DMを用い、シリンダー温度285℃で50gのプリフォームを成形し、これをブロー延伸して、軸方向延伸倍率 約3倍、内容積1.5リットル、胴部肉厚0.3mmのボトルとした。
【0059】
ブロー成形機はシンシナティー社製ミラクロンを使用し、その加熱条件は1から9ある加熱ヒーターの目盛りを1 : 50%、 2〜4 : 45%、 5〜8 : 48%、 9 : 70%にダイヤルを合わせ、ヘーズが最低になるような加熱時間を選んでブロー成形を行った。
【0060】
透明性の評価は、この直胴部を切取り、ヘーズメーターによってボトル胴部のヘーズを測定し、ボトルのヘーズとした。ヘーズメーターには日本電色工業社製カラーアンドカラーディフェレンスメタルモデル1001DP型を用いた。
【0061】
耐圧強度はボトルに水を水圧ポンプを利用して送り込み、10kg/分で昇圧し、ボトルが破裂した時の圧力値を示す。
【0062】
座屈強度はオートグラフ(島津製作所社製 AGー100B型)プロスヘッドにボトルを直立に挟み込み500mm/分の速度でプロスヘッドの幅を狭めてボトルに荷重を加えた。その時、ボトルが大きく変形するまでの間に計測された最大荷重の値を示す。
【0063】
成形幅とは、上記の加熱条件にダイヤルを合わせボトルをブロー成形したとき、成形されたボトル胴部のヘーズが1%以下になる最長の加熱時間と最短の加熱時間の差(単位:秒)である。成形幅の時間が大きいほど白化が抑制されたボトル用ポリマーと言える。
【0064】
8)紡糸及び品質評価:
ポリマーを160℃、5時間乾燥した後、紡糸温度300℃、冷却風線速度15m/分(26℃、相対湿度70%)引取速度3000m/分で75デニール、36フィラメントの糸を紡糸した。このときのポリマー1Tあたりの断糸数を観測した。この断糸数は結晶化抑制による曳糸性向上の効果を反映する。この紡糸条件のまま引取速度のみを200m/分の割合で加速していき完全に糸が断糸したときの引取速度を全破断巻取速度として記録した。
【0065】
9)製糸性:
製糸性は直径0.3mmの紡糸孔30個を有する紡糸口金を使用して吐出量80g/min、吐出温度285℃、巻取り速度1200m/minで7日間溶融紡糸した時の紡糸孔外周辺のSb金属を含んだ異物の高さ、及び、その間のペンディングの発生状態を観察して、ポリマーの製糸性を評価した。
口金面異物の高さが低いほど製糸性が良好であり、ペンディングの発生が少ないほど製糸性が良好である。
【0066】
[実施例1]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マグネシウム・4水和物0.01モルとをエチレングリコール326g中に存在させ、80℃で2時間加熱混合して透明な触媒溶液を調製した。
【0067】
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込み、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部を添加して、その10分後に予め調製しておいた透明な触媒溶液を添加した。
【0068】
引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を2.5時間実施して極限粘度数0.641のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの品質は表1に示す通り、熱特性(DSCによる測定)や色相は表2に示す通りで、フィルムとしての物性は表3に示すとおりであった。
【0069】
[比較例1]
三酸化アンチモン0.01モルをエチレングリコール221gに添加し、155℃、2時間加熱混合して透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を実施例1の三酸化アンチモンと酢酸マグネシウム・4水和物の混合触媒溶液に代えて使用する以外は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの品質は表1の通り、熱特性(DSCによる測定)や色相は表2に示す通りで、フィルムとしての物性は表3に示すとおりであった。
【0070】
[実施例2]
実施例1と同様に透明な触媒溶液を調製した。
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込み、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部とDEGを表1に示した量になるように添加して、その10分後に更に先に調製しておいた透明な触媒溶液を添加した。
【0071】
引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を約1.8時間実施して極限粘度数 約0.56のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーを更に0.5mmHgのN2雰囲気下で、210℃で固相重合してポリマーの極限粘度数を約0.86まで高めた。
【0072】
この固相重合後のポリマーの品質を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0073】
[実施例3]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マグネシウム・4水和物0.005モル(モル比1:0.5)とをエチレングリコール274g中に存在せしめて、80℃で2時間加熱混合して透明な触媒溶液を調製した。
【0074】
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マグネシウム・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例2と同様にして、極限粘度を約0.86のポリマーを得た。
この固相重合後のポリマーの品質を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0075】
[実施例4]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸カルシウム・水和物0.01モルとをエチレングリコール307g中に存在せしめ、80℃で2時間加熱混合し透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マグネシウム・4水和物の等モル量をエチレングリコールに溶解した触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例2と同様に極限粘度を約0.86のポリマーを得た。このポリマーの物性を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相は表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0076】
[比較例2]
比較例1と同様に透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マグネシウム・4水和物の混合触媒溶液に代えて使用する以外は実施例2と同様にして、ポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの物性を表1に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0077】
[比較例3]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マグネシウム・4水和物0.10モルを1:10のモル比量でエチレングリコール1272g中に存在せしめ、80℃、2時間加熱混合して透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を用いる以外は実施例2と同様にポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの物性を表1に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0078】
[比較例4]
実施例1と同様に透明な触媒溶液を調製した。
実施例2の触媒溶液に代えてこの触媒溶液を用いる他は実施例2と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの物性を表1に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0079】
[比較例5]
実施例1と同様に透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を添加する直前に、酢酸カリウム0.201部を5%のエチレングリコール溶液として反応系に添加する以外は実施例2と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの物性を表1に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0080】
[比較例6]
三酸化アンチモン0.01モルをエチレングリコール221gに溶解し、155℃、2時間加熱混合して触媒溶液を調製した。
酢酸マグネシウム・4水和物0.01モルをエチレングリコール107gに溶解し、35℃、2時間加熱混合して触媒溶液を調製した。
【0081】
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込む際、酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を添加し、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部とDEGを表1に示した量になるように添加して、その10分後に更に予め調製しておいて三酸化アンチモンのエチレングリコールである触媒溶液を添加した。この添加は添加するマグネシウム及びアンチモンの量が表1に示す量になるように行った。
【0082】
引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を1.8時間実施して極限粘度数約0.56のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーを更に0.5mmHgのN2雰囲気下で、210℃で固相重合してポリマーの極限粘度数を約0.86まで高めた。
【0083】
この固相重合後のポリマーの品質を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表4に示す。
【0084】
[実施例5]
実施例1と同様に透明な触媒溶液を調製した。
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込み、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部とDEGを表1に示す量になるように添加して、その10分後に更に先に調製しておいた透明な触媒溶液を添加した。引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を約2.5時間実施して極限粘度数 約0.64のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーを更に0.5mmHgのN2雰囲気下で、210℃で固相重合してポリマーの極限粘度数を約0.99まで高めた。
【0085】
この固相重合後のポリマーの品質を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて紡糸した繊維の品質と曳糸性を表5に示す。
【0086】
[実施例6]
実施例4と同様に透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マグネシウム・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例5と同様にして極限粘度を約0.99のポリマーを得た。
【0087】
この固相重合後のポリマーの品質を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて紡糸した繊維の品質と曳糸性を表5に示す。
【0088】
[比較例7]
比較例1と同様に触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マグネシウム・4水和物の混合触媒溶液に代えて使用する以外は実施例5と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの物性を表1に示す。
【0089】
この固相重合後のポリマーの物性を表1に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表2に示す。このポリマーを用いて紡糸した繊維の品質と曳糸性を表5に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
[実施例7]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マンガン・4水和物0.01モルを311gのエチレングリコールに存在せしめて80℃で2時間加熱混合して紫色透明な触媒溶液を調製した。
【0096】
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込み、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部を添加して、その10分後に表6に示すアンチモン量とマンガン量になるように先に調製しておいた透明な触媒溶液を添加した。引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を2.5時間実施して極限粘度数0.645のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0097】
このポリマーの品質を表6に、熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。フィルムとしての物性を表8に示す。
【0098】
[実施例8]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マグネシウム・4水和物0.01モルを326gのエチレングリコール中に存在せしめて、80℃で2時間加熱混合して透明な触媒溶液を調製した。
この透明な触媒溶液を、三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例7と同様にして極限粘度数0.641のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの品質を表6に、熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。フィルムとしての物性を表8に示す。
【0099】
[実施例9]
三酸化アンチモン0.01モル、酢酸マンガン・4水和物0.005モル及び酢酸マグネシウム・4水和物0.005モルを318gのエチレングリコール中に存在せしめて、80℃で2時間加熱混合して薄い紫色透明な触媒溶液を調製した。
【0100】
この透明な触媒溶液を、三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例7と同様にして極限粘度数0.640のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0101】
このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。フィルムとしての物性を表8に示す。
【0102】
[比較例8]
三酸化アンチモン0.01モルをエチレングリコール221gに添加し、155℃で2時間加熱混合して透明な溶液を調製した。
【0103】
この触媒溶液を、実施例7の三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の混合処理溶液に代えて使用する以外は実施例7と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。ポリマーの物性を表6に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。フィルムとしての物性を表8に示す。
【0104】
[実施例10]
実施例7と同様に紫色透明な触媒溶液を調製した。
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込み、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部とDEGを表6に示した量になるように添加して、その10分後に更に表6に示すアンチモン量とマンガン量になるように先に調製しておいた透明な触媒溶液を添加した。引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を約1.8時間実施して極限粘度数 約0.56のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーを更に0.5mmHgのN2雰囲気下で、210℃で固相重合してポリマーの極限粘度数を約0.86まで高めた。
【0105】
この固相重合後のポリマーの品質を表6に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表9に示す。
【0106】
[実施例11]
実施例8と同様に透明な触媒溶液を調製した。
この透明な触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例10と同様の実験をして極限粘度を約0.86のポリマーを得た。
【0107】
このポリマーの品質を表6に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表9に示す。
【0108】
[実施例12]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マンガン・4水和物0.005モルをエチレングリコール266g中に存在せしめて、80℃で2時間加熱混合して薄い紫色の透明な触媒溶液を調整した。
【0109】
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例10と同様にして極限粘度数を約0.86のポリマーを得た。
【0110】
このポリマーの品質は表6に、熱特性(DSC)や色相は表7に示す通りで、このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表9に示す。
【0111】
[実施例13]
三酸化アンチモン0.01モル、酢酸マンガン・4水和物0.005モル及び酢酸マグネシウム・4水和物0.005モルをエチレングリコール318g中に存在せしめ、80℃、2時間加熱混合して、薄い紫色透明な触媒溶液を調整した。
【0112】
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例10と同様にして極限粘度数約0.86のポリマーを得た。
【0113】
このポリマーの品質は表6に、熱特性(DSC)や色相は表7に示す通りで、このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表9に示す。
【0114】
[比較例9]
比較例8と同様に触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の混合触媒溶液に代えて使用する以外は実施例10と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。品質を表6に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質は表9に示す。
【0115】
[比較例10]
三酸化アンチモン0.01モルと酢酸マンガン・4水和物0.10モルをエチレングリコール1122g中に存在せしめて、80℃で2時間加熱混合して濃紫色不透明な触媒溶液を得た。
【0116】
触媒溶液としてこの溶液を用いる以外は実施例10と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。ポリマーの品質を表6に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質は表9に示す。
【0117】
[比較例11]
実施例7と同様に紫色透明な触媒溶液を調製した。
触媒溶液としてこの溶液を用いる以外は実施例10と同様にしてポリエチレンテレフタレートを得た。ポリマーの品質を表6に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質は表9に示す。
【0118】
[比較例12]
三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物から得た触媒溶液を添加する直前に酢酸カリウム0.201部を5%のエチレングリコール溶液として反応系に添加する以外は実施例10と同様にしてポリエチレンテレフタレート得た。このポリマーのポリマーの品質を表6に示す。このポリマーの熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質は表9に示す。
【0119】
[比較例13]
三酸化アンチモン0.01モルをエチレングリコール221gに添加して155℃で2時間加熱混合して調製した触媒溶液と、酢酸マンガン・4水和物0.01モルをエチレングリコール90gに添加して80℃で2時間加熱混合して触媒溶液を別々に調製した。
【0120】
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込む際、予め調製しておいた酢酸マンガンのエチレングリコール溶液である触媒溶液を添加し、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部とDEGを表6に示した量になるように添加して、その10分後に更に予め調製しておいた三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を重縮合触媒として添加した。添加するマンガン及びアンチモンの量は表6に示す量になるように添加した。
【0121】
引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を約1.8時間実施して極限粘度数 約0.56のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーを更に0.5mmHgのN2雰囲気下で、210℃で固相重合してポリマーの極限粘度数を約0.86まで高めた。
【0122】
この固相重合後のポリマーの品質を表6に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて成形したボトルの品質を表9に示す。
【0123】
[実施例14]
実施例7と同様に紫色透明な触媒溶液を調製した。
次に、テレフタル酸3600部とエチレングリコール2100部とを常温でスラリー化し、撹拌機付オートクレーブに仕込み、3kg/cm2の加圧下270℃にて反応させた。留出水量が600部となった時点で放圧し、更に常圧にて270℃で反応させた。更に留出水量が740部以上となった時点で正燐酸を0.21部とDEGを表1に示した量になるように添加して、その10分後に更に表6に示すアンチモン量とマンガン量になるように予め調製しておいた透明な触媒溶液を添加した。引き続き285℃にて0.1mmHgの減圧下で重縮合反応を約2.5時間実施して極限粘度数 約0.64のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーを更に0.5mmHgのN2雰囲気下で、210℃で固相重合してポリマーの極限粘度数を約0.99まで高めた。
【0124】
この固相重合後のポリマーの品質を表6に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて紡糸した繊維の品質と曳糸性を表10に示す。
【0125】
[実施例15]
実施例8と同様に透明な触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の等モル量をエチレングリコールに解かした触媒溶液の代わりに使用する以外は実施例14と同様にして極限粘度を約0.99のポリマーを得た。
【0126】
この固相重合後のポリマーの品質を表6に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて紡糸した繊維の品質と曳糸性を表10に示す。
【0127】
[比較例14]
三酸化アンチモン0.01モルをエチレングリコール221gに添加し、155℃で2時間加熱混合して触媒溶液を調製した。この触媒溶液を、三酸化アンチモンと酢酸マンガン・4水和物の混合溶液に代えて使用する以外は実施例14と同様にして極限粘度数約0.99のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0128】
この固相重合後のポリマーの品質を表6に示す。熱特性(DSCによる測定)と色相を表7に示す。このポリマーを用いて紡糸した繊維の品質と曳糸性を表14に示す。
【0129】
【表6】
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
【表9】
【0133】
【表10】
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒として安価なSb系触媒を用いながらも結晶化の抑制されたPETを得ることができ、共重合成分を実質的に含有すること無く、曇り、白化の少ない結晶化の抑制されたPETを得ることができる。
Claims (13)
- テレフタール酸を全酸成分に対して95モル%以上の酸成分、エチレングリコールを全グリコール成分に対して95モル%以上のグリコール成分とするポリエステルであり、該ポリエステル中に存在するSb元素の量がポリエステル全量に対して60ppm〜380ppmであり、該ポリエステルはその熱特性について下記式(1)、(2)を満足し、該ポリエステルは極限粘度数について下記式(3)を満足することを特徴とする結晶化抑制型ポリエステル。
24.6/[η]+130.0≦Tcd≦24.6/[η]+142.0 (1)
34.5×[η]+130.0≦Tci≦34.5×[η]+142.0 (2)
[TcdはDSCによる降温時の結晶化発熱ピーク温度(℃)であり、TciはDSCによる昇温時の結晶化発熱ピーク温度(℃)である。]
0.50≦[η]≦1.10 (3)
[[η]は極限粘度数を表わし、[η]は、フェノール/テトラクロロエタン(=3/2の成分比)の溶媒を用いて35℃で測定した溶液粘度から算出する値である。] - ポリエステルの構成成分としてのジエチレングリコール成分について下記式(4)を満足する請求項1に記載のポリエステル。
DEG≦2.50wt% (4)
[但し、DEGはジエチレングリコール成分を表わし、数値はポリマー全量を基準とする。] - Sb元素がポリエステル重合触媒として用いられたSb化合物に由来する請求項1に記載のポリエステル。
- ポリエステル中に2価の金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素が存在し、その存在量がポリエステル中に存在するSb元素に対するモル比として下記式(5)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル。
0.05≦M/Sb≦5.0 (5)
[Mは2価の金属及び/又はアルカリ土類金属を表わす。] - 2価の金属及び/又はアルカリ土類金属がアルカリ土類金属である請求項4に記載のポリエステル。
- 2価の金属が周期律表で第3周期又は第4周期の2A族から1B族に属する金属である請求項4に記載のポリエステル。
- 2価の金属がMnである請求項6に記載のポリエステル。
- ポリエステルを構成するジオール成分がエチレングリコール及びジエチレングリコールであり、エチレングリコール及びジエチレングリコールがポリエステルを構成する全ジオール成分に対して99.5モル%以上である請求項2に記載のポリエステル。
- ポリエステルの極限粘度数[η]が0.55〜0.68である請求項1に記載のポリエステルからなる衣料用フィラメント。
- ポリエステルの極限粘度数[η]が0.90〜1.10である請求項1に記載のポリエステルからなるタイヤコード用工業繊維。
- ポリエステルの極限粘度数[η]が0.65〜0.90である請求項1に記載のポリエステルからなるボトル。
- ポリエステルの極限粘度数[η]が0.55〜0.68である請求項1に記載のポリエステルからなるフィルム。
- 溶融重合後さらに固相重合を行って得られた請求項1に記載のポリエステル。
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