JP4132306B2 - 化粧品又は医薬品容器 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は化粧品又は医薬品容器に関する。更に詳しくは特定のポリエステル組成物からなる透明性、紫外線遮断性、成形性及び耐薬品性が良好な化粧品又は医薬品容器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ジュース、炭酸飲料、水、油、調味料、アルコール飲料、洗剤などを充填する容器や化粧品及び医薬品容器等にポリエチレンテレフタレート（以下、ＰＥＴと略記することがある）が広く利用されてきた。
【０００３】
しかし、近年の検討では、ＰＥＴでは紫外線遮断性が不十分で内容物が品質劣化を起こす可能性がある。また化粧品又は医薬品容器の耐薬品性が悪いと液量減少、透明性低下の問題がある。
【０００４】
このため透明性に優れると共に紫外線遮断性、および成形性が良好で、含有アセトアルデヒド量が少ないポリエステル製化粧品又は医薬品容器の出現が望まれている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明性、紫外線遮断性、成形性及び耐薬品性が良好な化粧品又は医薬品容器を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、下記ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）及び下記ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）からなるポリエステル組成物であり、相溶化度が０．１５〜０．５０であり、該ポリエステル組成物中の２，６−ナフタレンジカルボン酸単位の含有量が酸成分に対して３０モル％以上で、融点（Ｔｍ（℃））が下記式（１）−ａ及び（１）−ｂを満足するポリエステル組成物からなる化粧品又は医薬品容器である。
Ｚ≦５０のとき：Ｔｍ≦２５４−２８×（Ｚ／１００） （１）−ａ
Ｚ＞５０のとき：Ｔｍ≦２６７−５４×（１００−Ｚ）／１００） （１）−ｂ
（但し、式中Ｚは、ポリエステル組成物中のエチレンナフタレンジカルボキシレート単位（ＥＮ）の含有量（モル％）を表わす。）
【０００７】
（Ａ）酸成分が、９４〜８０モル％のナフタレンジカルボン酸単位及び６〜２０モル％のテレフタル酸単位からなり、グリコール成分がエチレングリコール単位及びジエチレングリコール単位からなるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、ジエチレングリコール単位の含有量が０．８〜２．５重量％であり、カルボキシル基末端数が４０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以下で、全末端数が８０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以上であり、かつ含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレート
（Ｂ）主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位であり、ジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％含有し、カルボキシル基末端数が３０ｅｑ／Ｔ以下であり、含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下で、固有粘度が０．７０以上であり、かつ溶融温度が２５０℃以下であるポリエチレンテレフタレート
以下、本発明について詳細に説明する。
【０００８】
（相溶化度）
本発明の化粧品又は医薬品容器を構成するポリエステル組成物の相溶化度（相溶化度＝ＰNT＋ＰTN）は次式で定義される。
【０００９】
相溶化度＝ＰNT＋ＰTN
ＰNT；ＱＡ単位に隣接するＴＡ単位の存在確率
ＰNT＝(ＩTEN／２)／(Ｉ NEN ＋(ＩTEN／２))
ＰTN；ＴＡ単位に隣接するＱＡ単位の存在確率
ＰTN＝(ＩTEN／２)／(Ｉ TET ＋(ＩTEN／２))
ＩTET；ＴＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩNEN；ＱＡ−ＥＧ−ＱＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩTEN；ＱＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ここで、ＱＡはナフタレンジカルボン酸単位、ＴＡはテレフタル酸単位、ＥＧはエチレングリコール単位である。
【００１０】
ポリエステル組成物の相溶化度は０．１５〜０．５０、好ましくは０．２〜０．４０である。相溶化度が０．１５未満であるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の相溶化が不十分であり、透明性が損なわれ、０．５０を超えると非晶性が強くなり機械強度が低下する。
【００１１】
（２，６−ナフタレンジカルボン酸単位）
ポリエステル組成物中の２，６−ナフタレンジカルボン酸単位の含有量はポリエステル組成物中の酸成分当たり３０モル％以上がこの好ましく、これを達成する為にはポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は３７重量％以上添加する必要がある。更に好ましくは４０モル％以上であり、これを達成する為にはポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は５０重量％以上添加する必要がある。ポリエステル組成物中の２，６−エチレンナフタレート単位の含有量が酸成分当たり３０モル％未満であると、耐薬品性が不足し好ましくない。
【００１２】
（融点）
ポリエステル組成物の融点は、以下の式で表わすことができる。
Ｚ≦５０のとき：Ｔｍ≦２５４−２８×Ｚ／１００）
Ｚ＞５０のとき：Ｔｍ≦２６７−５４×（１００−Ｚ）／１００）
但し、式中Ｚは、ポリエステル組成物中のエチレンナフタレンジカルボキシレート（ＥＮ）単位の含有量（モル％）を表わす。
Ｔｍが上記式の範囲を超えるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の相溶化が不十分であり、透明性が損なわれる。
【００１３】
（固有粘度）
ポリエステル組成物の固有粘度（ＩＶ）は下記式で示される範囲であることが好ましく、更に好ましくは０．５０〜０．７５の範囲が好ましい。
０．４５≦ＩＶ≦０．８
ＩＶが０．４５より下回ると強度が低下し、好ましくなく、０．８を超えると流動性が悪化し成形性が悪化する。固有粘度はテトラクロロエタン：フェノール＝４：６の混合溶媒にて３５℃で測定した値から算出した数値である。
【００１４】
（ヘーズ）
ポリエステル組成物のヘーズは好ましくは１０％以下、更に好ましくは５％以下である。ヘーズが１０％を超えると透明性が悪く外観不良であり好ましくない。ここで、ヘーズは化粧品及び医薬品容器の胴部について、厚さ１ｍｍのサンプルで算出した数値である。
【００１５】
（ポリエステル組成物中の元素）
ポリエステル組成物中に存在するゲルマニウム（Ｇｅ）およびアンチモン（Ｓｂ）元素の量は下記式（３）を満足することが好ましい。
５３≦（１／２）Ｓｂ＋Ｇｅ≦１５０・・・（３）
（Ｓｂはアンチモンの含有量（ｐｐｍ）、Ｇｅはゲルマニウムの含有量（ｐｐｍ）、Ｐはリン元素の含有量（ｐｐｍ）を表わす。）
ポリエステル組成物中のゲルマニウムおよびアンチモンの量（（１／２）Ｓｂ＋Ｇｅ）が上記式の５３ｐｐｍ未満であるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化速度が遅く、１５０ｐｐｍを超えると分解速度が速くなり再生アセトアルデヒド量が多く、ＩＶ劣化も大きく、好ましくない。
【００１６】
化粧品及び医薬品容器を構成するポリエステル組成物中に存在するリン（Ｐ）元素の量は下記式（４）を満足することが好ましい。
２５≦Ｐ≦７０・・・（４）
（ただし、Ｐはリン元素の含有量（ｐｐｍ）を表わす。）リン元素の存在量が２５ｐｐｍより低くても７０ｐｐｍより高くても熱安定性が悪化し好ましくない。
【００１７】
（耐薬品性）
耐薬品性は容器胴部を常温でアセトンに浸せきし、前後の重量増加を測定することによって測定する。アセトン浸せき後の重量増加が６．０重量％／３０日以下であることが好ましい。これを超えると内容物の液面低下及び容器の透明性も低下し好ましくない。
【００１８】
（ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ））
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（以下、ＰＥＮと略記することがある）（Ａ）は、酸成分が、９４〜８０モル％のナフタレンジカルボン酸単位及び６〜２０モル％のテレフタル酸単位からなり、グリコール成分がエチレングリコール単位及びジエチレングリコール単位からなるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、ジエチレングリコール単位の含有量が０．８〜２．５重量％であり、カルボキシル基末端数が４０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以下で、全末端数が８０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以上であり、かつ含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである。
【００１９】
ナフタレンジカルボン酸単位が酸成分中９４モル％を超えるとポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化が遅く化粧品及び医薬品容器品質が低下し、８０モル％未満であると非晶性が強くなり乾燥での融着が顕著になる。テレフタル酸単位が酸成分中６モル％未満であるとポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化が遅く化粧品及び医薬品容器品質が低下し、２０モル％を超えると非晶性が強くなり乾燥での融着が顕著になる。
【００２０】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）のジエチレングリコール単位含有量は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）あたり０．８〜２．５重量％、好ましくは０．８〜１．２重量％である。０．８重量％未満であると靭性が低く割れやすい。２．５重量％を超えると非晶性が強くなり乾燥等で融着の原因となる。
【００２１】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）のカルボキシル末端数は、４０ｅｑ／Ｔ以下、好ましくは３０ｅｑ／Ｔ以下である。カルボキシル末端数が４０ｅｑ／Ｔを超えるとポリマー主鎖の分解が促進される。ここで、Ｔはトン（１０6ｇ）である。
【００２２】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は、本発明で定義するポリマー全末端数が８０ｅｑ／Ｔ以上、好ましくは８５ｅｑ／Ｔ以上、さらに好ましくは１０５ｑ／Ｔ以上である。全末端が８０ｅｑ／Ｔを未満であるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート末端の作用が低下し、ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化速度が低下する。
【００２３】
本発明において全末端数の定義は下記式、
全末端数＝（２×１０6）／（ＤＰ×２４４．２＋６２．０７）
である。なお、
ＤＰ＝（３．８×１０4×ＩＶ1.18−６２．０７）／２４２．２
であり、ＩＶは固有粘度である。
【００２４】
本発明においてポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）を、チップとして化粧品及び医薬品容器の成形に用いる場合には、チップはＡＳＴＭ標準篩４〜１０meshの範囲にチップの９０％以上存在するチップであることが好ましい。このときポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化が促進され好ましい。
【００２５】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）の固有粘度は好ましくは０．７０以下、更に好ましくは０．６５以下、特に好ましくは０．６０以下である。固有粘度はテトラクロロエタン：フェノ−ル＝４：６の混合溶媒中、３５℃での測定値から算出した値である。
【００２６】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）には、エチレンテレフタレート単位（以下、ＥＴ単位と称することがある）以外の共重合成分を共重合することができる。このような共重合成分が存在する場合、共重合成分の量は全ジカルボン酸成分あたり０〜１４モル％である。この範囲で共重合成分を１種類または２種類以上共重合することができる。
【００２７】
共重合できるジカルボン酸成分として例えば、２,７−、１,５−、１,７−その他のナフタレンジカルボン酸の異性体；イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸；ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の如き脂環属族ジカルボン酸；アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。
【００２８】
共重合できるグリコール成分として例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、１,１−シクロヘキサンジメタノール、１,４−シクロヘキサンジメタノール、２,２−ビス（４’−β−ヒドロキシフェニル）プロパン、ビス（４’−β−ヒドロキシエトキシフェニル）スルホン酸を例示することができる。
【００２９】
共重合できる多官能化合物成分として例えば、ｐ−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等の如きオキシ酸を例示することができる。
【００３０】
（ポリエチレンテレフタレート（Ｂ））
本発明におけるポリエチレンテレフタレート（以下、ＰＥＴと略記することがある）（Ｂ）は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位であり、ジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％含有し、カルボキシル基末端数が３０ｅｑ／Ｔ以下、含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下、固有粘度が０．７０以上かつ溶融温度が２５０℃以下であるポリエチレンテレフタレートである。
【００３１】
主たる繰り返し単位とは全繰り返し単位あたり通常８０モル％以上、好ましくは９０モル％以上の繰り返し単位である。エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位あたり８０モル％未満であると非晶性が強くなり乾燥での融着が顕著となる。
【００３２】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）はジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％、好ましくは１．３〜１．８重量％含有する。１．２重量％未満であると流動性が低下し、成形性が悪化し、２．４重量％を超えると化粧品及び医薬品容器の強度が低下する。
【００３３】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）のカルボキシル基末端数は３０ｅｑ／Ｔ以下、好ましくは２５ｅｑ／Ｔ以下である。３０ｅｑ／Ｔを超えるとカルボキシル基末端によるポリエステル主鎖の切断が多い。
【００３４】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の固有粘度は０．４７以上である。固有粘度が０．４７未満であると化粧品及び医薬品容器の強度が低下する。固有粘度はテトラクロロエタン：フェノ−ル＝４：６の混合溶媒中、３５℃での測定値から算出した値である。
【００３５】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の溶融温度（示差走査型熱量計で測定される結晶融解温度、昇温速度は２０℃／ｍｉｎ．）は２５０℃以下、さらに好ましくは２４４℃以下である。溶融温度が２５０℃を超えるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）との溶融混練での相溶化において溶融開始が遅くなり、相溶化反応時間が長くなる。
【００３６】
本発明においてポリエチレンテレフタレート（Ｂ）は、チップとして化粧品及び医薬品容器の成形に用いる場合には、チップはＡＳＴＭ標準篩４〜１０meshの範囲にチップの９０％以上存在するチップであることが好ましい。このときポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）との相溶化が促進され好ましい。
【００３７】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）には、エチレンテレフタレート単位（以下、ＥＴ単位と称することがある）以外の共重合成分を共重合することができる。このような共重合成分が存在する場合、共重合成分の量は全ジカルボン酸成分あたり０〜２０モル％である。この範囲で共重合成分を１種類または２種類以上共重合することができる。
【００３８】
共重合できるジカルボン酸成分として例えば、２,６ーナフタレンジカルボン酸、２,７−、１,５−、１,７−その他のナフタレンジカルボン酸の異性体；フタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸；ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の如き脂環属族ジカルボン酸；アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。
【００３９】
共重合できるグリコール成分として例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、１,１−シクロヘキサンジメタノール、１,４−シクロヘキサンジメタノール、２,２−ビス（４‘−β−ヒドロキシフェニル）プロパン、ビス（４’−β−ヒドロキシエトキシフェニル）スルホン酸を例示することができる。
【００４０】
共重合できる多官能化合物成分として例えば、ｐ−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等の如きオキシ酸例示することができる。
【００４１】
さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物を全ジカルボン酸成分あたり２モル％以下共重合することができる。
【００４２】
（ポリエステルの製造方法）
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は、公知の方法にてエステル化またはエステル交換反応を行い製造することができる。この際のエステル交換反応触媒としては、コバルト・マンガン化合物等を用いるのが好ましい。この場合、コバルト（Ｃｏ）原子とマンガン（Ｍｎ）原子の量は下記式
６０≦Ｃｏ＋Ｍｎ≦１６５ｐｐｍ
の範囲が好ましい。
【００４３】
引き続き、ゲルマニウムまたはアンチモン触媒の存在下、リン化合物を共存させて重縮合反応を行い、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを得ることができる。
ゲルマニウム（Ｇｅ）、アンチモン（Ｓｂ）原子の量は下記式
５０≦Ｇｅ＋１／２Ｓｂ≦１５０ｐｐｍ
の範囲が好ましい。
【００４４】
リン化合物としては例えば、正リン酸、次亜リン酸、亜リン酸等の無機リン酸；トリメチルホスフェート等の有機リン酸を例示することができる。
【００４５】
これらはエチレングリコール溶液として用いられることが好ましい。
【００４６】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は、さらに常法に従って結晶化または固相重合されたものでもよい。
【００４７】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）は公知の方法によって製造することができる。エステル交換反応または直接エステル化の後、ゲルマニウムおよび／またはアンチモン触媒によって重合することができる。さらに固相重合することが好ましい。固相重合は公知の方法で行うことができる。固相重合の反応温度は２２０℃以下、反応時間は５時間以上であることが好ましい。反応温度が２２０℃を超えると固相ポリマーの溶融温度が２５０℃を超え好ましくない。
【００４８】
本発明の化粧品又は医薬品容器は、一般の成形法、例えば射出ブロー成形、配向ブロー、押出ブロー法により成形することができる。配向ブロー法の適当な例としてはまず、本発明に記載のポリエステルポリマーを用い、射出成形を行いプリフォームを成形する。引き続き、そのプリフォームを加熱し二軸延伸ブロー成形し中空容器を形成する。冷却ブローによるヒートセットを実施しても良い。ホットパリソンによる１ステージ延伸ブロー成形を実施しても良い。
【００４９】
また、一軸または二軸押出機にてポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）を溶融混合にてプレブレンドし、ペレット化し、それを用いて化粧品及び医薬品容器を成形してもよい。
【００５０】
相溶化度および融点を本発明の範囲にするためには、成形温度は２６５〜３２０℃の範囲にすることが好ましい。化粧品及び医薬品容器の成形において、成形温度が低すぎると、成形での流動性が低下し好ましくなく、成形温度が高すぎると熱劣化が大きく好ましくない。
【００５１】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。重量部を部と略記することがある。
【００５２】
（１）固有粘度（ＩＶ）：
テトラクロロエタン：フェノ−ル＝４：６の混合溶媒中、３５℃での測定値から算出した値である。
【００５３】
（２）成形：
化粧品及び医薬品容器は名機製作所製M100DM成形機にて成形した。透明な成形体が得られるときの成形温度および滞留時間の値で成形性を評価した。成形性良好とは、低温および短時間の滞留時間で成形できることである。
【００５４】
（３）カルボキシル基末端：
ベンジルアルコールにサンプルを溶解し、フェノールレッド指示薬を添加し、水酸化ナトリウムにて中和滴定した。
【００５５】
（４）溶融温度および融点：
ポリエチレンテレフタレートの溶融温度は、示差走査型熱量計（ＤＳＣ）で測定し、昇温速度２０℃／ｍｉｎ．の条件での結晶融解温度をもって溶融温度とした。
化粧品及び医薬品容器の融点は、化粧品及び医薬品容器口部からサンプルを切り出し、示差走査型熱量計（ＤＳＣ）で昇温速度５℃／ｍｉｎ．の条件で測定した。
【００５６】
（５）ヘーズ：
化粧品及び医薬品容器胴部のヘーズを日本電色工業社製濁度計にて測定した。サンプルは厚み１ｍである。
【００５７】
（６）ジエチレングリコール（以下、ＤＥＧと略記することがある）量：
サンプルをヒドラジン分解し、ガスクロマトグラフィーにて測定した。
【００５８】
（７）相溶化度：
６００ＭＨｚのＮＭＲにて、エチレングリコールを構成する各水素の積分強度を測定し、次式にて計算した。
相溶化度＝ＰNT＋ＰTN
ＰNT；ＱＡ単位に隣接するＴＡ単位の存在確率
ＰNT＝(ＩTEN／２)／(Ｉ NEN ＋(ＩTEN／２))
ＰTN；ＴＡ単位に隣接するＱＡ単位の存在確率
ＰTN＝(ＩTEN／２)／(Ｉ TET ＋(ＩTEN／２))
ＩTET；ＴＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩNEN；ＱＡ−ＥＧ−ＱＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩTEN；ＱＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ここで、ＱＡはナフタレンジカルボン酸単位、ＴＡはテレフタル酸単位、ＥＧはエチレングリコール単位である。
【００５９】
（８）紫外線遮断性：
化粧品及び医薬品容器胴部を切り出し、厚さ１ｍｍのサンプルについて、紫外可視吸光光度計にて各波長での透過率を測定し透過率０％の波長で最も長波長の波長を紫外線遮断波長（表中、ＵＶカット波長）とした。
【００６０】
（９）アセトアルデヒド含有量：
ＰＥＮ，ＰＥＴポリマーサンプルを凍結粉砕した後、ガスクロマトグラフィにてポリマー中のアセトアルデヒド量を測定する。
【００６１】
（１０）耐薬品性：
化粧品及び医薬品容器胴部を切り出し、厚さ１ｍｍのサンプルを常温で３０日間、アセトンに浸せきしたのち風乾し、処理前後の重量増加量を測定、及び透明性を目視で確認する。
【００６２】
［参考例１］（ＰＥＮ１の製造）
２，６−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル８８重量部およびジメチルテレフタレート９．６部ならびにエチレングリコール（以下、ＥＧと略記することがある）５１部を、酢酸コバルト四水塩０．０１部および酢酸マンガン四水塩０．０３部をエステル交換触媒として用いて、常法に従ってエステル交換反応させ、三酸化アンチモンのＥＧ２．７４％溶液１．０部添加したのち、トリメチルホスフェートの４．３％エチレングリコール溶液０．５４部を添加し、エステル交換反応を終了せしめた。
【００６３】
引き続き常法通り高温高真空下で重縮合反応を６０分関行い、その後ストランド型のチップとした。得られたチップ状のポリマーの固有粘度は０．４０であった。詳細は表１のとおりであった。
【００６４】
[参考例２〜７]（ＰＥＮ２〜７の製造）
同様にして、チップ状のＰＥＮポリマー（ＰＥＮ２〜７）を得た。詳細は表１のとおりであった。
【００６５】
【表１】
【００６６】
［参考例８］（ＰＥＴ１の製造）
テレフタル酸１００部およびエチレングリコール５１部をエステル化反応させた後、ゲルマニウムの１％ＥＧ溶液を０．９３部添加し、トリメチルホスフェートの４．３％エチレングリコール溶液０．４２部を添加した。引き続き常法通り高温高真空下で重縮合反応を行い、その後ストランド型のチップ状のポリマーを得た。
【００６７】
［参考例９〜１３］（ＰＥＴ２〜６の製造）
同様にして、チップ状のＰＥＴポリマー（ＰＥＴ２〜６）を得た。詳細は表２のとおりであった。
【００６８】
【表２】
【００６９】
［実施例１〜１６および比較例１］
実施例１〜１５および比較例１は、参考例で準備したチップ状のＰＥＮポリマーおよびＰＥＴポリマーを１７０℃で６時間乾燥の後、それぞれを用い表３記載の各ブレンド比にて名機社Ｍ１００ＤＭ射出成形機、コーポプラスト社ＬＢ０１ブロー成形機を使用して表３記載の条件で化粧品及び医薬品容器を成形した。
【００７０】
実施例１６は、ＰＥＮ、ＰＥＴポリマーを二軸押出機にて２９５℃の成形温度で溶融混合しペレット化した。これを用いて上記同様に化粧品及び医薬品容器を成形した。化粧品及び医薬品容器成形性及び物性を表３、４及び５に示した。
【００７１】
【表３】
【００７２】
【表４】
【００７３】
【表５】
【００７４】
【発明の効果】
本発明によれば、透明性、紫外線遮断性、および成形性が良好で、含有アセトアルデヒド量が少ない化粧品及び医薬品容器を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は化粧品又は医薬品容器に関する。更に詳しくは特定のポリエステル組成物からなる透明性、紫外線遮断性、成形性及び耐薬品性が良好な化粧品又は医薬品容器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ジュース、炭酸飲料、水、油、調味料、アルコール飲料、洗剤などを充填する容器や化粧品及び医薬品容器等にポリエチレンテレフタレート（以下、ＰＥＴと略記することがある）が広く利用されてきた。
【０００３】
しかし、近年の検討では、ＰＥＴでは紫外線遮断性が不十分で内容物が品質劣化を起こす可能性がある。また化粧品又は医薬品容器の耐薬品性が悪いと液量減少、透明性低下の問題がある。
【０００４】
このため透明性に優れると共に紫外線遮断性、および成形性が良好で、含有アセトアルデヒド量が少ないポリエステル製化粧品又は医薬品容器の出現が望まれている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明性、紫外線遮断性、成形性及び耐薬品性が良好な化粧品又は医薬品容器を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、下記ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）及び下記ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）からなるポリエステル組成物であり、相溶化度が０．１５〜０．５０であり、該ポリエステル組成物中の２，６−ナフタレンジカルボン酸単位の含有量が酸成分に対して３０モル％以上で、融点（Ｔｍ（℃））が下記式（１）−ａ及び（１）−ｂを満足するポリエステル組成物からなる化粧品又は医薬品容器である。
Ｚ≦５０のとき：Ｔｍ≦２５４−２８×（Ｚ／１００） （１）−ａ
Ｚ＞５０のとき：Ｔｍ≦２６７−５４×（１００−Ｚ）／１００） （１）−ｂ
（但し、式中Ｚは、ポリエステル組成物中のエチレンナフタレンジカルボキシレート単位（ＥＮ）の含有量（モル％）を表わす。）
【０００７】
（Ａ）酸成分が、９４〜８０モル％のナフタレンジカルボン酸単位及び６〜２０モル％のテレフタル酸単位からなり、グリコール成分がエチレングリコール単位及びジエチレングリコール単位からなるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、ジエチレングリコール単位の含有量が０．８〜２．５重量％であり、カルボキシル基末端数が４０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以下で、全末端数が８０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以上であり、かつ含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレート
（Ｂ）主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位であり、ジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％含有し、カルボキシル基末端数が３０ｅｑ／Ｔ以下であり、含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下で、固有粘度が０．７０以上であり、かつ溶融温度が２５０℃以下であるポリエチレンテレフタレート
以下、本発明について詳細に説明する。
【０００８】
（相溶化度）
本発明の化粧品又は医薬品容器を構成するポリエステル組成物の相溶化度（相溶化度＝ＰNT＋ＰTN）は次式で定義される。
【０００９】
相溶化度＝ＰNT＋ＰTN
ＰNT；ＱＡ単位に隣接するＴＡ単位の存在確率
ＰNT＝(ＩTEN／２)／(Ｉ NEN ＋(ＩTEN／２))
ＰTN；ＴＡ単位に隣接するＱＡ単位の存在確率
ＰTN＝(ＩTEN／２)／(Ｉ TET ＋(ＩTEN／２))
ＩTET；ＴＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩNEN；ＱＡ−ＥＧ−ＱＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩTEN；ＱＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ここで、ＱＡはナフタレンジカルボン酸単位、ＴＡはテレフタル酸単位、ＥＧはエチレングリコール単位である。
【００１０】
ポリエステル組成物の相溶化度は０．１５〜０．５０、好ましくは０．２〜０．４０である。相溶化度が０．１５未満であるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の相溶化が不十分であり、透明性が損なわれ、０．５０を超えると非晶性が強くなり機械強度が低下する。
【００１１】
（２，６−ナフタレンジカルボン酸単位）
ポリエステル組成物中の２，６−ナフタレンジカルボン酸単位の含有量はポリエステル組成物中の酸成分当たり３０モル％以上がこの好ましく、これを達成する為にはポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は３７重量％以上添加する必要がある。更に好ましくは４０モル％以上であり、これを達成する為にはポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は５０重量％以上添加する必要がある。ポリエステル組成物中の２，６−エチレンナフタレート単位の含有量が酸成分当たり３０モル％未満であると、耐薬品性が不足し好ましくない。
【００１２】
（融点）
ポリエステル組成物の融点は、以下の式で表わすことができる。
Ｚ≦５０のとき：Ｔｍ≦２５４−２８×Ｚ／１００）
Ｚ＞５０のとき：Ｔｍ≦２６７−５４×（１００−Ｚ）／１００）
但し、式中Ｚは、ポリエステル組成物中のエチレンナフタレンジカルボキシレート（ＥＮ）単位の含有量（モル％）を表わす。
Ｔｍが上記式の範囲を超えるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の相溶化が不十分であり、透明性が損なわれる。
【００１３】
（固有粘度）
ポリエステル組成物の固有粘度（ＩＶ）は下記式で示される範囲であることが好ましく、更に好ましくは０．５０〜０．７５の範囲が好ましい。
０．４５≦ＩＶ≦０．８
ＩＶが０．４５より下回ると強度が低下し、好ましくなく、０．８を超えると流動性が悪化し成形性が悪化する。固有粘度はテトラクロロエタン：フェノール＝４：６の混合溶媒にて３５℃で測定した値から算出した数値である。
【００１４】
（ヘーズ）
ポリエステル組成物のヘーズは好ましくは１０％以下、更に好ましくは５％以下である。ヘーズが１０％を超えると透明性が悪く外観不良であり好ましくない。ここで、ヘーズは化粧品及び医薬品容器の胴部について、厚さ１ｍｍのサンプルで算出した数値である。
【００１５】
（ポリエステル組成物中の元素）
ポリエステル組成物中に存在するゲルマニウム（Ｇｅ）およびアンチモン（Ｓｂ）元素の量は下記式（３）を満足することが好ましい。
５３≦（１／２）Ｓｂ＋Ｇｅ≦１５０・・・（３）
（Ｓｂはアンチモンの含有量（ｐｐｍ）、Ｇｅはゲルマニウムの含有量（ｐｐｍ）、Ｐはリン元素の含有量（ｐｐｍ）を表わす。）
ポリエステル組成物中のゲルマニウムおよびアンチモンの量（（１／２）Ｓｂ＋Ｇｅ）が上記式の５３ｐｐｍ未満であるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化速度が遅く、１５０ｐｐｍを超えると分解速度が速くなり再生アセトアルデヒド量が多く、ＩＶ劣化も大きく、好ましくない。
【００１６】
化粧品及び医薬品容器を構成するポリエステル組成物中に存在するリン（Ｐ）元素の量は下記式（４）を満足することが好ましい。
２５≦Ｐ≦７０・・・（４）
（ただし、Ｐはリン元素の含有量（ｐｐｍ）を表わす。）リン元素の存在量が２５ｐｐｍより低くても７０ｐｐｍより高くても熱安定性が悪化し好ましくない。
【００１７】
（耐薬品性）
耐薬品性は容器胴部を常温でアセトンに浸せきし、前後の重量増加を測定することによって測定する。アセトン浸せき後の重量増加が６．０重量％／３０日以下であることが好ましい。これを超えると内容物の液面低下及び容器の透明性も低下し好ましくない。
【００１８】
（ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ））
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（以下、ＰＥＮと略記することがある）（Ａ）は、酸成分が、９４〜８０モル％のナフタレンジカルボン酸単位及び６〜２０モル％のテレフタル酸単位からなり、グリコール成分がエチレングリコール単位及びジエチレングリコール単位からなるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、ジエチレングリコール単位の含有量が０．８〜２．５重量％であり、カルボキシル基末端数が４０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以下で、全末端数が８０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以上であり、かつ含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである。
【００１９】
ナフタレンジカルボン酸単位が酸成分中９４モル％を超えるとポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化が遅く化粧品及び医薬品容器品質が低下し、８０モル％未満であると非晶性が強くなり乾燥での融着が顕著になる。テレフタル酸単位が酸成分中６モル％未満であるとポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化が遅く化粧品及び医薬品容器品質が低下し、２０モル％を超えると非晶性が強くなり乾燥での融着が顕著になる。
【００２０】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）のジエチレングリコール単位含有量は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）あたり０．８〜２．５重量％、好ましくは０．８〜１．２重量％である。０．８重量％未満であると靭性が低く割れやすい。２．５重量％を超えると非晶性が強くなり乾燥等で融着の原因となる。
【００２１】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）のカルボキシル末端数は、４０ｅｑ／Ｔ以下、好ましくは３０ｅｑ／Ｔ以下である。カルボキシル末端数が４０ｅｑ／Ｔを超えるとポリマー主鎖の分解が促進される。ここで、Ｔはトン（１０6ｇ）である。
【００２２】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は、本発明で定義するポリマー全末端数が８０ｅｑ／Ｔ以上、好ましくは８５ｅｑ／Ｔ以上、さらに好ましくは１０５ｑ／Ｔ以上である。全末端が８０ｅｑ／Ｔを未満であるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート末端の作用が低下し、ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化速度が低下する。
【００２３】
本発明において全末端数の定義は下記式、
全末端数＝（２×１０6）／（ＤＰ×２４４．２＋６２．０７）
である。なお、
ＤＰ＝（３．８×１０4×ＩＶ1.18−６２．０７）／２４２．２
であり、ＩＶは固有粘度である。
【００２４】
本発明においてポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）を、チップとして化粧品及び医薬品容器の成形に用いる場合には、チップはＡＳＴＭ標準篩４〜１０meshの範囲にチップの９０％以上存在するチップであることが好ましい。このときポリエチレンテレフタレート（Ｂ）との相溶化が促進され好ましい。
【００２５】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）の固有粘度は好ましくは０．７０以下、更に好ましくは０．６５以下、特に好ましくは０．６０以下である。固有粘度はテトラクロロエタン：フェノ−ル＝４：６の混合溶媒中、３５℃での測定値から算出した値である。
【００２６】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）には、エチレンテレフタレート単位（以下、ＥＴ単位と称することがある）以外の共重合成分を共重合することができる。このような共重合成分が存在する場合、共重合成分の量は全ジカルボン酸成分あたり０〜１４モル％である。この範囲で共重合成分を１種類または２種類以上共重合することができる。
【００２７】
共重合できるジカルボン酸成分として例えば、２,７−、１,５−、１,７−その他のナフタレンジカルボン酸の異性体；イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸；ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の如き脂環属族ジカルボン酸；アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。
【００２８】
共重合できるグリコール成分として例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、１,１−シクロヘキサンジメタノール、１,４−シクロヘキサンジメタノール、２,２−ビス（４’−β−ヒドロキシフェニル）プロパン、ビス（４’−β−ヒドロキシエトキシフェニル）スルホン酸を例示することができる。
【００２９】
共重合できる多官能化合物成分として例えば、ｐ−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等の如きオキシ酸を例示することができる。
【００３０】
（ポリエチレンテレフタレート（Ｂ））
本発明におけるポリエチレンテレフタレート（以下、ＰＥＴと略記することがある）（Ｂ）は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位であり、ジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％含有し、カルボキシル基末端数が３０ｅｑ／Ｔ以下、含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下、固有粘度が０．７０以上かつ溶融温度が２５０℃以下であるポリエチレンテレフタレートである。
【００３１】
主たる繰り返し単位とは全繰り返し単位あたり通常８０モル％以上、好ましくは９０モル％以上の繰り返し単位である。エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位あたり８０モル％未満であると非晶性が強くなり乾燥での融着が顕著となる。
【００３２】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）はジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％、好ましくは１．３〜１．８重量％含有する。１．２重量％未満であると流動性が低下し、成形性が悪化し、２．４重量％を超えると化粧品及び医薬品容器の強度が低下する。
【００３３】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）のカルボキシル基末端数は３０ｅｑ／Ｔ以下、好ましくは２５ｅｑ／Ｔ以下である。３０ｅｑ／Ｔを超えるとカルボキシル基末端によるポリエステル主鎖の切断が多い。
【００３４】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の固有粘度は０．４７以上である。固有粘度が０．４７未満であると化粧品及び医薬品容器の強度が低下する。固有粘度はテトラクロロエタン：フェノ−ル＝４：６の混合溶媒中、３５℃での測定値から算出した値である。
【００３５】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）の溶融温度（示差走査型熱量計で測定される結晶融解温度、昇温速度は２０℃／ｍｉｎ．）は２５０℃以下、さらに好ましくは２４４℃以下である。溶融温度が２５０℃を超えるとポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）との溶融混練での相溶化において溶融開始が遅くなり、相溶化反応時間が長くなる。
【００３６】
本発明においてポリエチレンテレフタレート（Ｂ）は、チップとして化粧品及び医薬品容器の成形に用いる場合には、チップはＡＳＴＭ標準篩４〜１０meshの範囲にチップの９０％以上存在するチップであることが好ましい。このときポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）との相溶化が促進され好ましい。
【００３７】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）には、エチレンテレフタレート単位（以下、ＥＴ単位と称することがある）以外の共重合成分を共重合することができる。このような共重合成分が存在する場合、共重合成分の量は全ジカルボン酸成分あたり０〜２０モル％である。この範囲で共重合成分を１種類または２種類以上共重合することができる。
【００３８】
共重合できるジカルボン酸成分として例えば、２,６ーナフタレンジカルボン酸、２,７−、１,５−、１,７−その他のナフタレンジカルボン酸の異性体；フタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸；ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の如き脂環属族ジカルボン酸；アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。
【００３９】
共重合できるグリコール成分として例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、１,１−シクロヘキサンジメタノール、１,４−シクロヘキサンジメタノール、２,２−ビス（４‘−β−ヒドロキシフェニル）プロパン、ビス（４’−β−ヒドロキシエトキシフェニル）スルホン酸を例示することができる。
【００４０】
共重合できる多官能化合物成分として例えば、ｐ−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等の如きオキシ酸例示することができる。
【００４１】
さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物を全ジカルボン酸成分あたり２モル％以下共重合することができる。
【００４２】
（ポリエステルの製造方法）
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は、公知の方法にてエステル化またはエステル交換反応を行い製造することができる。この際のエステル交換反応触媒としては、コバルト・マンガン化合物等を用いるのが好ましい。この場合、コバルト（Ｃｏ）原子とマンガン（Ｍｎ）原子の量は下記式
６０≦Ｃｏ＋Ｍｎ≦１６５ｐｐｍ
の範囲が好ましい。
【００４３】
引き続き、ゲルマニウムまたはアンチモン触媒の存在下、リン化合物を共存させて重縮合反応を行い、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを得ることができる。
ゲルマニウム（Ｇｅ）、アンチモン（Ｓｂ）原子の量は下記式
５０≦Ｇｅ＋１／２Ｓｂ≦１５０ｐｐｍ
の範囲が好ましい。
【００４４】
リン化合物としては例えば、正リン酸、次亜リン酸、亜リン酸等の無機リン酸；トリメチルホスフェート等の有機リン酸を例示することができる。
【００４５】
これらはエチレングリコール溶液として用いられることが好ましい。
【００４６】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）は、さらに常法に従って結晶化または固相重合されたものでもよい。
【００４７】
ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）は公知の方法によって製造することができる。エステル交換反応または直接エステル化の後、ゲルマニウムおよび／またはアンチモン触媒によって重合することができる。さらに固相重合することが好ましい。固相重合は公知の方法で行うことができる。固相重合の反応温度は２２０℃以下、反応時間は５時間以上であることが好ましい。反応温度が２２０℃を超えると固相ポリマーの溶融温度が２５０℃を超え好ましくない。
【００４８】
本発明の化粧品又は医薬品容器は、一般の成形法、例えば射出ブロー成形、配向ブロー、押出ブロー法により成形することができる。配向ブロー法の適当な例としてはまず、本発明に記載のポリエステルポリマーを用い、射出成形を行いプリフォームを成形する。引き続き、そのプリフォームを加熱し二軸延伸ブロー成形し中空容器を形成する。冷却ブローによるヒートセットを実施しても良い。ホットパリソンによる１ステージ延伸ブロー成形を実施しても良い。
【００４９】
また、一軸または二軸押出機にてポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）とポリエチレンテレフタレート（Ｂ）を溶融混合にてプレブレンドし、ペレット化し、それを用いて化粧品及び医薬品容器を成形してもよい。
【００５０】
相溶化度および融点を本発明の範囲にするためには、成形温度は２６５〜３２０℃の範囲にすることが好ましい。化粧品及び医薬品容器の成形において、成形温度が低すぎると、成形での流動性が低下し好ましくなく、成形温度が高すぎると熱劣化が大きく好ましくない。
【００５１】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。重量部を部と略記することがある。
【００５２】
（１）固有粘度（ＩＶ）：
テトラクロロエタン：フェノ−ル＝４：６の混合溶媒中、３５℃での測定値から算出した値である。
【００５３】
（２）成形：
化粧品及び医薬品容器は名機製作所製M100DM成形機にて成形した。透明な成形体が得られるときの成形温度および滞留時間の値で成形性を評価した。成形性良好とは、低温および短時間の滞留時間で成形できることである。
【００５４】
（３）カルボキシル基末端：
ベンジルアルコールにサンプルを溶解し、フェノールレッド指示薬を添加し、水酸化ナトリウムにて中和滴定した。
【００５５】
（４）溶融温度および融点：
ポリエチレンテレフタレートの溶融温度は、示差走査型熱量計（ＤＳＣ）で測定し、昇温速度２０℃／ｍｉｎ．の条件での結晶融解温度をもって溶融温度とした。
化粧品及び医薬品容器の融点は、化粧品及び医薬品容器口部からサンプルを切り出し、示差走査型熱量計（ＤＳＣ）で昇温速度５℃／ｍｉｎ．の条件で測定した。
【００５６】
（５）ヘーズ：
化粧品及び医薬品容器胴部のヘーズを日本電色工業社製濁度計にて測定した。サンプルは厚み１ｍである。
【００５７】
（６）ジエチレングリコール（以下、ＤＥＧと略記することがある）量：
サンプルをヒドラジン分解し、ガスクロマトグラフィーにて測定した。
【００５８】
（７）相溶化度：
６００ＭＨｚのＮＭＲにて、エチレングリコールを構成する各水素の積分強度を測定し、次式にて計算した。
相溶化度＝ＰNT＋ＰTN
ＰNT；ＱＡ単位に隣接するＴＡ単位の存在確率
ＰNT＝(ＩTEN／２)／(Ｉ NEN ＋(ＩTEN／２))
ＰTN；ＴＡ単位に隣接するＱＡ単位の存在確率
ＰTN＝(ＩTEN／２)／(Ｉ TET ＋(ＩTEN／２))
ＩTET；ＴＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩNEN；ＱＡ−ＥＧ−ＱＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ＩTEN；ＱＡ−ＥＧ−ＴＡにおけるＥＧ上の水素の積分強度（ＮＭＲにて測定）
ここで、ＱＡはナフタレンジカルボン酸単位、ＴＡはテレフタル酸単位、ＥＧはエチレングリコール単位である。
【００５９】
（８）紫外線遮断性：
化粧品及び医薬品容器胴部を切り出し、厚さ１ｍｍのサンプルについて、紫外可視吸光光度計にて各波長での透過率を測定し透過率０％の波長で最も長波長の波長を紫外線遮断波長（表中、ＵＶカット波長）とした。
【００６０】
（９）アセトアルデヒド含有量：
ＰＥＮ，ＰＥＴポリマーサンプルを凍結粉砕した後、ガスクロマトグラフィにてポリマー中のアセトアルデヒド量を測定する。
【００６１】
（１０）耐薬品性：
化粧品及び医薬品容器胴部を切り出し、厚さ１ｍｍのサンプルを常温で３０日間、アセトンに浸せきしたのち風乾し、処理前後の重量増加量を測定、及び透明性を目視で確認する。
【００６２】
［参考例１］（ＰＥＮ１の製造）
２，６−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル８８重量部およびジメチルテレフタレート９．６部ならびにエチレングリコール（以下、ＥＧと略記することがある）５１部を、酢酸コバルト四水塩０．０１部および酢酸マンガン四水塩０．０３部をエステル交換触媒として用いて、常法に従ってエステル交換反応させ、三酸化アンチモンのＥＧ２．７４％溶液１．０部添加したのち、トリメチルホスフェートの４．３％エチレングリコール溶液０．５４部を添加し、エステル交換反応を終了せしめた。
【００６３】
引き続き常法通り高温高真空下で重縮合反応を６０分関行い、その後ストランド型のチップとした。得られたチップ状のポリマーの固有粘度は０．４０であった。詳細は表１のとおりであった。
【００６４】
[参考例２〜７]（ＰＥＮ２〜７の製造）
同様にして、チップ状のＰＥＮポリマー（ＰＥＮ２〜７）を得た。詳細は表１のとおりであった。
【００６５】
【表１】
［参考例８］（ＰＥＴ１の製造）
テレフタル酸１００部およびエチレングリコール５１部をエステル化反応させた後、ゲルマニウムの１％ＥＧ溶液を０．９３部添加し、トリメチルホスフェートの４．３％エチレングリコール溶液０．４２部を添加した。引き続き常法通り高温高真空下で重縮合反応を行い、その後ストランド型のチップ状のポリマーを得た。
【００６７】
［参考例９〜１３］（ＰＥＴ２〜６の製造）
同様にして、チップ状のＰＥＴポリマー（ＰＥＴ２〜６）を得た。詳細は表２のとおりであった。
【００６８】
【表２】
［実施例１〜１６および比較例１］
実施例１〜１５および比較例１は、参考例で準備したチップ状のＰＥＮポリマーおよびＰＥＴポリマーを１７０℃で６時間乾燥の後、それぞれを用い表３記載の各ブレンド比にて名機社Ｍ１００ＤＭ射出成形機、コーポプラスト社ＬＢ０１ブロー成形機を使用して表３記載の条件で化粧品及び医薬品容器を成形した。
【００７０】
実施例１６は、ＰＥＮ、ＰＥＴポリマーを二軸押出機にて２９５℃の成形温度で溶融混合しペレット化した。これを用いて上記同様に化粧品及び医薬品容器を成形した。化粧品及び医薬品容器成形性及び物性を表３、４及び５に示した。
【００７１】
【表３】
【表４】
【表５】
【発明の効果】
本発明によれば、透明性、紫外線遮断性、および成形性が良好で、含有アセトアルデヒド量が少ない化粧品及び医薬品容器を提供することができる。
Claims (5)
- 下記ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート（Ａ）及び下記ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）からなるポリエステル組成物であり、相溶化度が０．１５〜０．５０であり、該ポリエステル組成物中の２，６−ナフタレンジカルボン酸単位の含有量が酸成分に対して３０モル％以上で、融点（Ｔｍ（℃））が下記式（１）−ａ及び（１）−ｂを満足するポリエステル組成物からなる化粧品又は医薬品容器。
Ｚ≦５０のとき：Ｔｍ≦２５４−２８×（Ｚ／１００） （１）−ａ
Ｚ＞５０のとき：Ｔｍ≦２６７−５４×（１００−Ｚ）／１００） （１）−ｂ
（但し、式中Ｚは、ポリエステル組成物中のエチレンナフタレンジカルボキシレート（ＥＮ）単位の含有量（モル％）を表わす。）
（Ａ）酸成分が、９４〜８０モル％のナフタレンジカルボン酸単位及び６〜２０モル％のテレフタル酸単位からなり、グリコール成分がエチレングリコール単位及びジエチレングリコール単位からなるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、ジエチレングリコール単位の含有量が０．８〜２．５重量％であり、カルボキシル基末端数が４０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以下で、全末端数が８０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以上であり、かつ含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下であるポリエチレンナフタレンジカルボキシレート
（Ｂ）主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位であり、ジエチレングリコール単位を全ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）あたり１．２〜２．４重量％含有し、カルボキシル基末端数が３０ｅｑ／Ｔ（１０6ｇ）以下であり、含有アセトアルデヒド量が２０ｐｐｍ以下で、固有粘度が０．７０以上であり、かつ溶融温度が２５０℃以下であるポリエチレンテレフタレート - ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）が、全繰り返し単位あたり８０モル％以上のエチレンテレフタレート単位からなる請求項１記載の化粧品又は医薬品容器。
- ポリエステル組成物の固有粘度が下記式（２）を満足する請求項１記載の化粧品又は医薬品容器。
０．４５≦ＩＶ≦０．８・・・（２）
（ただし、ＩＶは固有粘度である） - ヘーズが１０％以下であり、アンチモン、ゲルマニウムおよびリン元素の含有量が式（３）および（４）を満足する請求項１記載の化粧品又は医薬品容器。
５３≦（１／２）Ｓｂ＋Ｇｅ≦１５０・・・（３）
２５≦Ｐ≦７０・・・（４）
（Ｓｂはアンチモンの含有量（ｐｐｍ）、Ｇｅはゲルマニウムの含有量（ｐｐｍ）、Ｐはリン元素の含有量（ｐｐｍ）を表わす。） - アセトン浸せき後の重量増加が６．０重量％／３０日以下である請求項１記載の化粧品及び医薬品容器。
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