JP3631015B2 - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

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    • HELECTRICITY
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    • H01J1/02Main electrodes
    • H01J1/30Cold cathodes, e.g. field-emissive cathode

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子及びその製造法法に関し、特に、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層した電子放出素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子は、大別して、熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子の2種類が知られている。そして、冷陰極電子放出素子には、電界放出型(FE型)、金属/絶縁層/金属型(MIM型)や、表面伝導型電子放出素子等がある。
【0003】
FE型は、たとえば、W.P.Dyke&W.W.Dolan,“Field emission”,Advance in Electron Physics,8,8,9(1956)又はC.A.Spindt,“PHYSICAL Properties of thin−film field emission cathodes with molybdenium cones”,J.Apply.Phys.,47,5248(1976)に開示されている。
【0004】
電界放出型電子放出素子の電子放出体の先端は、3次元的に鋭くとがった形状をしているコーンとも呼ばれるものであり、コーン上に設置された開口部をもつゲート電極と電子放出部間に強い電界を印加することによって、コーン先端から電子ビームが引き出される。
【0005】
又、前記電界放出素子の製造方法での問題点、すなわち、電子放出形成用の凹部形成に複雑な工程が必要なことや高価や装置が必要なことに対応して、ゲート電極の開口部をアルミニウムの陽極酸化膜の孔を用い、陽極酸化膜の孔内に電子放出部を形成した例として特開平5−198252号公報や特開平5−211029号公報があげられる。この従来例を、図32、33を用いて説明する。
【0006】
図32は、特開平5−198252号公報における電子放出素子の断面図である。又、図33は、特開平5−211029号公報における電子放出素子の断面図である。図32において、161は、絶縁基板、162は、導電層、163は、絶縁膜、164は、貫通孔、165は、ゲート電極、166は、カソードである。絶縁膜163は、アルミニウム陽極酸化膜を用い、カソード166の先端は、電界放出素子の電子放出体同様、コーン形状である。又、図33において、171は、金属層、172は、Al陽極酸化膜、172aは、微細孔、173は円柱状電極である。図33において、円柱状電極173とゲート電極との距離、又は、針状電極とアノード電極との距離を一定にすることができ、電子放出効率を一定化することができる、と記載されている。
【0007】
MIM型は、たとえば、C.A.Mead,“Operaion of Tunnel−Emission Devices”,J.Apply.Phys.,32,646(1961)に開示されている。
【0008】
又、MIM型においては、最近、Toshiaki. Kusunoki,“Fluctuation−free electron emission from non−formed metal−insulator−metal(MIM)cathodes Fabricated by low current Anodic oxidation”,Jpn.J.Appl.Phys.vol.32(1993)pp.L1695,Mutsumi Suzuki et al“An MIM(c)athode Array for Cathode luminescent Displays”,IDW’96,(1996)P529等の研究がなされている。
【0009】
上記のKusunoki、Suzuki等によるMIM型の電子放出素子を、図34を用いて説明する。図34は、MIM型の電子放出素子の断面模式図であり、同図において、1は基板、2は下部電極、3は絶縁層、4は上部電極である。又、その製造方法は、まず、Si基板にスパッタリングでSiO を形成し、下部電極としてAlを、さらに、エチレングリコール(ethylene glycol),酒石酸(tartaric acid)の溶液を用いて、酸化速度を抑制し、高品質の陽極酸化膜を5.5nmの膜厚で形成した後、上部電極のAuを9nmの膜厚で形成する。このようにして形成した上部電極を陽極、下部電極を陰極として、電圧を印加することで、良好な電子放出特性を得たとしている。すなわち、Kusunoki等によれば、素子に印加する電圧に対して、流れる素子電流に負性抵抗が現われない。ここで負性抵抗とは、素子電圧の増加にともない、素子電流が減少する現象である。又、放出電流にゆらぎが発生しない。ここで、ゆらぎとは、放出電流の時間的変化である。又、絶縁層の厚みに依存して、放出電流の素子電圧への依存性が変化し、絶縁層が厚い程、素子電圧を高く印加する必要があることも示している。さらに、酸化速度を高速にした陽極酸化膜においては、電子放出特性に、負性抵抗が現われ、ゆらぎが大きいことが、示されている。
【0010】
又、表面伝導型電子放出素子の電子放出特性を改善した例としては、特開平9−82214号公報があげられる。これを、図35を用いて説明する。同図において、191は、基板、192は、電子放出部、193は、導電性膜、194は、陰極側素子電極、195は、陽極側素子電極、196は、亀裂、197は、電界補正電極である。本例では、表面伝導型電子放出素子においては、放出された電子が、陰極と陽極で作れる電場内を運動し、陽極素子電極上の電場の特異点によって、アノード電極に到達する電子の割合、すなわち、電子放出効率が左右される。前記電子放出効率を改善するために、素子電極の外側に電界補正電極を設置した例である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のFE型の電子放出素子では、Spindt等の検討によれば、電子ビームが広がり、高精細化を行う上で問題であった。又、陽極酸化膜の孔をゲート電極の開口部に応用した例では、電子放出部のコーンの形成の再現性の問題が残り、問題であった。一方、柱状に電子放出部を形成したものでも、電子放出特性の再現性や駆動電圧が高いという問題であった。又、前記補正電極を配設した表面伝導型電子放出素子においては、電子放出効率は、向上するものの、補正電極電位が高く、駆動上問題があった。
【0012】
又、従来のMIM型電子放出素子では、第1に、絶縁層の厚みが、数nmと薄く、かつ、その厚みが、電子放出特性に大きな影響を与え、多数素子を配置した電子源においては、絶縁層の厚みのばらつきが、放出電流のばらつきに直結し、ばらつきの抑制が困難である。又、該電子源を用いて撮像装置や画像形成装置を構成した場合においては、画像品位の低下の問題を発生する。又、第2に、絶縁層の質が、電子放出特性のみならず、素子電流に影響を及ぼし、多数素子を配置した電子源においては、絶縁層の質のばらつきが、放出電流のばらつきに直結し、特に、大面積の場合は、ばらつきの抑制が困難である。又、該電子源を用いた撮像装置や画像形成装置においては、画像品位の低下の問題を発生する。第3に、素子電流の負性抵抗の発生と揺らぎの発生が、再現性に乏しく、その抑制が困難である。
【0013】
又、前記補正電極を配設した従来の表面伝導型電子放出素子では、電子放出効率は、向上するものの、補正電極電位が高く、駆動上問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、電子放出効率が高く、高精細化が可能で、駆動電圧が低く、安定で、ばらつきの少ない電子放出特性の電子放出素子を提供することを課題としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明は、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層した電子放出素子であって、前記細孔中に、炭素堆積物を有している。
また、本発明は、基板上に配置された下部電極と、該下部電極上に配置された細孔を有する絶縁層と、該絶縁層上に配置された上部電極とを備える電子放出素子であって、前記細孔中に、導電性の炭素堆積物を備えており、前記下部電極と前記炭素堆積物との間に絶縁体が配置されていることを特徴とする。
【0016】
又、本発明は、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層した電子放出素子であって、前記細孔中に電子放出部を有し、前記電子放出部は、前記下部電極と上部電極間の微小間隙よりなり、前記微小間隙は、前記細孔内壁に沿って形成された周縁状導電性体と上部電極によるものである。又、本発明は、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層した電子放出素子であって、前記細孔中に、電子放出体を有し、前記上部電極の厚みt、前記細孔の長さL、前記上部電極の電子透過の平均自由行程(ミーンフリーパス)をλとしたとき、 0.5×L ≦ t <2λを満足するようにしている。
また、本発明は、基板上に配置された下部電極と、該下部電極上に配置された細孔を有する絶縁層と、該絶縁層上に配置された上部電極とを備える電子放出素子であって、前記細孔中に、導電性の炭素堆積物を備えており、前記炭素堆積物は、前記上部電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
又、本発明は、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層し、前記細孔中に電子放出部を有する電子放出素子において、
前記電子放出部が前記下部電極と上部電極間の微小間隙よりなり、かつ微小間隙から上部電極の上面までの距離が200nm以下としている。
【0018】
又、本発明は、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層し、前記細孔中に、炭素堆積物を有する電子放出素子の製造方法であって、前記基板上に金属又は半導体の前記下部電極を形成する工程と、前記下部電極表面に陽極酸化層を形成する工程と、有機材料の存在下で、電圧を印加して前記陽極酸化層の細孔内に前記炭素堆積物を生成する工程と、上部電極を形成する工程とを含んでいる。
【0019】
又、本発明は、基板上に、下部電極と、細孔を有する絶縁層と、上部電極とをこの順に積層し、前記細孔中に、炭素堆積物を有する電子放出素子の製造方法であって、前記基板上に金属又は半導体の前記下部電極を形成する工程と、前記下部電極表面に陽極酸化層を形成する工程と、前記陽極酸化した前記下部電極上に、前記上部電極を形成する工程と、有機材料の存在下で、前記上部電極及び前記下部電極に電圧を印加して前記陽極酸化層の前記細孔内に炭素堆積物を生成する工程とを含んでいる。
【0020】
すなわち、本発明の電子放出素子においては、陽極酸化された酸化膜などの絶縁層に多孔質の孔が形成されており、該多孔質の孔には、少なくとも、電子放出体である炭素堆積物が形成されており、下部電極と上部電極間に、間隙を有するので、上部電極が高電位になるように、下部電極、上部電極間に電圧を印加すると、下部電極上に形成された炭素と上部電極間の間隙を、下部電極から注入された電子は、真空中にトンネリングし、電子が放出される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の電子放出素子の1例を示す模式的な断面図である。図1(b)は、図1(a)のA部の部分拡大模式図である。図1(a)において、1は基板、2は下部電極、3は陽極酸化層、4は上部電極である。図1(b)において、5は多孔質の細孔、6は下部電極と電気的に接続された炭素である。
【0023】
基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiO を積層したガラス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板、SiO を積層したSi基板等を用いることができる。特に、基板1を半導体基板とした場合には、電子放出素子の駆動用のドライバー等を同時に設置することもできる。
【0024】
下部電極2としては、陽極酸化可能であるAl,Ta,Nb,Ti,Zr,Hf,Si等の金属、半導体が用いられる。下部電極2の膜厚は、陽極酸化層の膜厚、下部電極としての電気抵抗等によって適宜設定される。
【0025】
陽極酸化層3は、下部電極の一部を陽極酸化し、形成される。陽極酸化層3には、規則的、又は、不規則的な細孔5が存在する。これを、本明細書では、多孔質と呼ぶ場合もある。規則的、不規則的な細孔5の形成は、下部電極2の材料に応じて、陽極酸化浴の組成、浴温、電圧、時間等の陽極酸化条件を選択することで得られる。好ましくは、規則的細孔が、選択される。細孔の径は、数十nmから数百nmであり、その深さは、数十nmから数百nmである。細孔の密度は、10〜10個/cmであり、電子放出点の密度に対応する。ここで、電子放出点とは、電子放出が行われる微小な面積を指すこととする。細孔5には、下部電極2と電気的に接続された電子放出体である炭素6が、その孔壁に堆積されるか、細孔の一部を埋めた支柱状に形成される。又、上部電極4側から、同様に炭素が形成されていても構わない。
【0026】
下部電極2上に形成された炭素と上部電極との間、又は、上部電極4側からも炭素が形成されている場合には、この上部電極4側からの炭素と下部電極2上に形成された炭素との間には、間隙が形成されており、該間隙は、好ましくは数nm〜数十nmであり、後述の有機材料の存在下で行なわれる、該上部電極および下部電極に電圧を印加する工程の時間、印加する電圧等によって、適宜設定される。
【0027】
上部電極は、陽極酸化層上に形成され、電子透過特性に優れた金属が好ましく、例えば、Al等が用いられる。
【0028】
上記本発明の電子放出素子の構造例を図2の模式的断面図を用いて説明する。図2において、図1と同じ部位には、同じ符号を付けた。図2には4種類の構造を示したが、これに限るわけでなく、他の構造でも良い。又、以下において、上部電極及び下部電極として金属を用いて説明しているが、半導体でも良い。図2(a)の構造は、金属(下部電極)2/金属酸化層3/電子放出体6を有する細孔/真空/金属(上部電極)4のようになっている。又、図2(b)の構造は、金属(下部電極)2/電子放出体6を有する細孔/真空/金属(上部電極)4のようになっている。又、図2(c)の構造は、金属(下部電極)2/金属酸化層3/電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4のようになっている。又、図2(d)の構造は、金属(下部電極)2/電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4のようになっている。
【0029】
図2(a)、図2(c)の構造における金属酸化層3は、下部電極を陽極酸化した際に得られるが、陽極酸化条件によって、この金属酸化層3に、細孔を持たない緻密な膜構造領域と、細孔を有する膜構造領域の両構造領域を得ることができる。図2(a)、図2(c)のように、下部電極2と細孔内の電子放出体6との間に、上記金属酸化層の緻密な膜構造領域が形成されていることは、金属/絶縁体/電子放出体(炭素)の非線形素子を形成するため、電流制限の働きを付与することができ、本発明の電子放出素子を駆動した際、放電等での電流変動を防ぎ、電子放出素子の損傷を防ぐことができる。上記金属酸化層の具体的な製造方法は後述するが、たとえば、多孔質の金属酸化物形成条件下で、金属酸化層を形成後、細孔のワイドニング工程で、緻密な間句構造領域の厚みが調整される。
【0030】
又、図2(b)、図2(d)の構造は、細孔を持たない金属酸化層がなく、直接下部電極と細孔内の電子放出体(炭素)が電気的に接続された場合を示している。このような構造は、下部電極を陽極酸化した後、後述する細孔のワイドニング工程を充分に行い、更に、この細孔内に、電子放出体(炭素)を形成することで、下部電極と電子放出体とが電気的に接続された状態となる。又は、後述する陽極酸化層の細孔内に電子放出体(炭素)を形成する工程において印加されるパルス電圧によって、下部電極と細孔を有する金属酸化層との間に存在する細孔を持たない金属酸化層が、電気的に破壊され、その結果、下部電極と電子放出体とが電気的に接続された状態となる。図2(b)、図2(d)の場合においても、電子放出体/真空間のトンネリングによる非線形特性を有する電子放出素子とすることができる。上記真空とは、電子放出素子を形成した基板の設置された真空雰囲気と同等のものである。
【0031】
又、上部電極4が、図2(a),図2(b)に示される様に、細孔上にある場合には、細孔中に形成された電子放出体は、上部電極を介して、真空に接している。一方、図2(c),図2(d)に示される様に、上部電極4が細孔上にない場合には、細孔中に形成された電子放出体は、直接真空に接している。
【0032】
又、本発明の電子放出素子の耐熱性、電子放出特性の安定性、再現性の向上等の点を考慮すると、電子放出体を構成する炭素堆積物は、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボンのうちの一つ以上であることが好ましい。
【0033】
上述の電子放出素子の製造方法としては様々な方法があるが、その一例を図3の工程図に模式的に示す。以下、図2(c)、図2(d)の構造を作成する第1製造方法について説明する。
【0034】
第1工程は、基板上に、金属又は半導体の下部電極を形成する工程である。基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により下部電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板上に下部電極2を形成する。尚、下部電極をメッキにより形成しても良い。
【0035】
第2工程は、下部電極を陽極酸化する工程である。ここで、陽極酸化装置の概念図を、図4を用いて説明する。図4において、1は基板、31は陽極酸化槽、32は陽極酸化電解液、33は電極、34は電源、35はOリングである。陽極酸化電解液32は、Al等の金属では、硫酸、スルファミン酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の有機酸、の水溶液であるが、さらに、溶媒として加えられる物質としては、エチレングリコール、グリセリン、デキストリン等の多価アルコールがある。一方、Siの場合は、HF水溶液が、用いられる。又、熱酸化等の酸化プロセスが更に追加されてもよい。電極33は、Pt等の金属を用いる。下部電極の陽極酸化は、電極33を陰極、基板1を陽極にして、電源34より通電を行うことでなされる。陽極酸化層の幾何学構造は、作成条件で制御できる。即ち、細孔間の間隔は、陽極酸化電圧により、又細孔の深さは、陽極酸化時間により、又孔径は、電解液組成、電圧、電流等の条件で制御できる。又、規則的細孔、不規則細孔の制御もこれらの条件の制御で行なう。次に、陽極酸化層を形成した基板を、ワイドニング工程と呼ばれる、陽極酸化電解液に浸漬し、細孔の径及び緻密な金属酸化膜の厚みを調整する工程を経た後、十分に水洗し、真空中で、乾燥を行う。
【0036】
第3工程は、陽極酸化した金属又は半導体の上に上部電極を形成する工程である。上部電極を数nm〜数十nmの膜厚で、上記陽極酸化層上に、上述の下部電極と同様にして形成する。
【0037】
第4工程は、陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程である。本工程は、気体状の有機材料の存在下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程である。本工程で形成される炭素には、グラファイトがある。ここに、グラファイトには、いわゆるHOPG,PG,GCがある。HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200オングストローム程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20オングストローム程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。又、非結晶カーボンがある。ここに、非結晶カーボン二は、アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンとグラファイトの微結晶の混合物藻含まれる。
【0038】
ここで、図5を参照して、第4工程で用いる真空処理装置について説明する。図5において、図1、2に示した部位と同じ部位には同一の符号を付している。図5において、55は真空容器であり、56は排気ポンプであり、57は、本発明の電子放出素子の陽極酸化層の細孔内において、炭素を形成する際に用いられる有機ガスの供給源である。真空容器55内には本発明の電子放出素子が配されている。即ち、1は基板、2は下部電極、3は陽極酸化層、4は上部電極である。又、51は電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、50は下部電極2、上部電極4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、54は素子より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極である。53はアノード電極54に電圧を印加するための高圧電源、52は電子放出素子より放出される放出電流Ieを測定するための電流計である。一例として、アノード電極の電圧を0〜10kVの範囲として、アノード電極と電子放出素子との距離Hを100μm〜8mmの範囲として測定を行うことができる。真空容器55内には、不図示の真空計等の真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになっている。排気ポンプ56は、ターボポンプ、ロータリーポンプからなる通常の高真空装置系と、更に、イオンポンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されている。ここに示した真空処理装置の全体は、不図示のヒーターにより350℃まで加熱できる。
【0039】
真空容器に基板1を設置し、排気して真空雰囲気にした後、有機ガスの供給源57より有機ガスを真空容器55に導入し、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。電圧波形は、パルス波形で繰り返し印加される。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図6(a)に示した方法やパルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する図6(b)に示した方法がある。
【0040】
又、パルス電圧の印加方向を、上部電極又は下部電極の一方を高電位、他の一方を低電位に固定し印加する方法(図6(a))では、上部電極を下部電極に比べ、低電位にした場合、主に、炭素は、高電位側である下部電極側に形成される。又、上部電極と下部電極に交互に高電位を印加する方法(図6(b))では、上部電極、下部電極双方に炭素が形成される。
【0041】
図6(a)におけるT1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1マイクロ秒〜10ミリ秒、T2は、10マイクロ秒〜100ミリ秒の範囲で設定される。三角波の波高値は、電子放出素子形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、数分から数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波など所望の波形を採用することができる。又、図6(b)におけるT1及びT2は、図6(a)に示したものと同様とすることができる。三角波の波高値は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させることができる。
【0042】
上記炭素を形成する際の好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどC2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどC2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。又、有機ガスは、陽極酸化層に形成され細孔の径に応じても、選択される。すなわち、有機ガスの吸着は、細孔の径にも、依存するからである。
【0043】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素が陽極酸化層内の細孔に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。
【0044】
第4工程の終了判定は、素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら行う。尚、図2のc、dに示される、細孔上の、上部電極4の開口部は、本工程における上述の電圧パルスの印加初期において形成される。
【0045】
第5工程は、安定化工程である。すなわち、第4工程までで作成された電子放出素子の特性の安定化を行なう工程である。第5工程は、陽極酸化層の細孔内の炭素において、有機材料の中間生成物および基板等に吸着された有機ガス、水、酸素等を除去することで、素子電流、放出電流が、素子への印加電圧に対して、あるしきい値以上では、単調増加する特性を付与することができる。本工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程であり、真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。
【0046】
真空排気装置内の有機成分の分圧は、新たに炭素及び炭素化合物がほぼ堆積しない分圧で1×10−8Torr以下が好ましく、さらには1×10−10 Torr以下が特に好ましい。さらに真空装置内を排気するときには、真空装置全体を加熱して、真空装置内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、150〜300℃で数時間以上が望ましいが、特にこの条件に限るものではない。
【0047】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分な特性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
【0048】
次に、第2製造方法、すなわち、液体中で、炭素又は、ダイアモンドライクカーボンを形成する場合を図3の工程図を参照しながら説明する。以下、図2(a),図2(b)を作成する場合について説明する。
【0049】
第1工程は、基板上に、金属又は半導体の下部電極を形成する工程であり、第1製造方法の第1工程で述べた方法と同様に行なう。
【0050】
第2工程は、下部電極を陽極酸化する工程であり、第1製造方法の第2工程で述べた方法と同様であるが、陽極酸化、ワイドニング後、陽極酸化層を形成した基板を水洗し、工程3の電解槽に供する。
【0051】
第3工程は、液体有機材料の存在下で、陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程である。本工程は、液体状の有機材料の存在下で、図4の電極33および下部電極に電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程である。図4と同様の装置で、電解液をアルコールにして、下部電極側を陽極として、図4の33を陰極として電解し、ダイヤモンドライクカーボンを陽極酸化した細孔中に下部電極側から析出することができる。ダイヤモンドライクカーボンは、電解時間にともない、細孔内に柱状に成長堆積する。
【0052】
第4工程は、陽極酸化した金属又は半導体の上に、上部電極を形成する工程であり、上部電極を数nm〜数十nmの膜厚で、上記陽極酸化層上に、上述の下部電極と同様にして、形成する。
【0053】
第5工程は、安定化工程であり、第1製造方法の第5工程で述べた安定化工程と同様に行なう。
【0054】
[第1実施形態の実施例1]
図7(a)は、本発明の電子放出素子を5個配置した基板の平面図であり、図7(b)は、図7(a)のAA′の模式的断面図である。
【0055】
図7において、1は基板、73は陽極酸化層、71は下部電極の引き出し配線、72は上部電極の引き出し配線、74は下部電極の引き出し配線71と上部電極の引き出し配線72の交差部であり、本発明の電子放出素子が配設されている。
【0056】
本実施例では、図2(a),(b),(c),(d)の4種類の構成の電子放出素子を各々5個ずつ形成したそれぞれの基板を、基板A,B,C,Dと呼ぶこととする。
【0057】
本実施例の製造方法を、具体的に説明する。
【0058】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成する工程)
石英ガラスの基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、スパッタ法によりAl下部電極材料を200nmの厚みで堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極配線71をストライプ状に形成した。又、下部引き出し配線71の一部を端子とするため、公知の鍍金用マスク樹脂で覆った。
【0059】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
図4に示した陽極酸化装置を用いて、工程1で作成したAl製の下部電極を陽極酸化した。基板B,Dについては、陽極酸化電解液(図4の32)は、シュウ酸30g/lの水溶液とした。電極(図4の33)は、Pt電極を用いた。陽極酸化は、電極(図4の33)を陰極、基板1に設けられた下部配線(図7の71)を陽極にして、電源(図4の34)より定電圧で45Vで行った。この際、初期の電流密度は、400mA/cm であったが、陽極酸化の進行にともない減少した。次に、陽極酸化層を形成した基板を、リン酸水溶液に浸漬し、更に、十分に水洗した後、真空中で、乾燥を行った。なお、前記陽極酸化層には、以上の陽極酸化工程により細孔が形成される。又、基板A,Cについては、基板B,Dと同様の陽極酸化条件で細孔を有する陽極酸化層を形成した後、更に、リン酸水溶液中に、基板B,Dよりも短時間して、緻密な金属酸化層の膜厚を制御した。
【0060】
(工程3:該陽極酸化した金属又は半導体上に、上部電極を形成する工程)
基板A,B,C,Dのそれぞれの上記陽極酸化層上に、上部電極72を10nmの膜厚で、上述の下部電極と同様にして、形成した。
【0061】
(工程4:陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下))
測定装置を兼ねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−1Paアセトンのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。電圧波形は、図6(a)のパルス波形でパルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を30分間印加した。又、同時に素子の電流をモニターした。電圧は、基板A,B,C,Dにおいて、10Vとした。尚、本工程における上記電圧パルスの印加により、細孔上の上部電極に開口部が形成される。
【0062】
(工程5:安定化工程)
次に、アセトンガスを十分に排気した後、250℃で加熱しながら、10時間排気した。
【0063】
(工程6:再度上部電極を形成する工程)
基板A,Bにおいては、再度、上記と同様にして、上部電極を形成して、図2に示す構造a,bとした。
【0064】
[比較例]
基板Bの作成条件で、(工程1)〜(工程4)を行い、(工程5:安定化工程)を行わない基板を別途作成した。これを基板Eと呼ぶこととする。
【0065】
[結果]
次に基板A,B,C,D,Eを図5の真空処理装置に設置し、超高真空下で各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。図8に電流/電圧特性を示す。同時に、素子電圧をゆっくり掃引し、電圧負性抵抗(VCNR特性)が発生するかどうか確認した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。次に、測定後、こうして形成したサンプルを電子顕微鏡、平面TEM等で観察した。
【0066】
図8の電流/電圧特性に示される様に、基板A,B,C,Dの素子電流、放出電流とも、しきい値以上では、単調増加特性を示す。しきい値(Vthと呼ぶ)以下では、無視できる電流であった。これらより素子電流、放出電流とも非線形特性を示す非線形素子であることがわかった。一方、比較例の基板Eにおいては、放出電流は、電圧負性抵抗特性(VCNR特性)でないが、素子電流は、電圧負性抵抗特性(VCNR特性)を示すことがわかる。
【0067】
又、基板A,Cでは、下部電極上に、緻密な陽極酸化層/細孔を有する陽極酸化層が形成され、これにより、基板B,Dに比べ、素子電圧が高い方向にVthがシフトしているのがわかる。又、アノード電極で観察された電子ビーム径は、上部電極と下部電極の重なり部分とほぼ等しかった。
【0068】
電子顕微鏡で、観察すると、陽極酸化層において、いずれも図1(b)に示された様な規則的な細孔が観察された。細孔の径は200nm、細孔密度は、3×10 個/cm であった。
【0069】
又、上部電極は、基板A,Bにおいては、細孔の上に存在するが、基板C,Dにおいては、細孔の周辺に存在するが、孔の上部には存在しない。これは、基板C,Dでは、電子放出体形成工程でのパルス電圧をかけた際に、細孔上の上部電極が除かれる。
【0070】
更に、平面TEMサンプルを作成し観察すると、いずれも細孔の中に、グラファイト質の炭素の存在が確認された。又、基板Eにおいては、細孔の中に炭素が多く堆積している様だった。又、グラファイト以外の有機物も含有していた。
【0071】
本実施例により実証されることは、第1に、金属を陽極酸化し、その細孔中にグラファイト質の炭素が形成できるということである。又、第2に、電子放出素子として、機能できる。又、第3に、安定化工程によって、電圧負性抵抗特性(VCNR特性)が発生せず、素子電流、放出電流とも、単調増加特性を示す。又、第4に、陽極酸化層として、絶縁層として機能する緻密な陽極酸化層及び細孔を有する陽極酸化層がある場合は、電流、電圧特性は、素子電圧が高電圧側にシフトする。又、第5に、アノード電極で観察された電子ビーム径は、上部電極と下部電極の重なり部分とほぼ等しく、ビームの発散は少ない。
【0072】
[第1実施形態の実施例2]
本実施例は、液体中で、絶縁層の細孔内に、ダイアモンドライクカーボンを形成する場合である。本実施例の製造方法を、再び図3を参照して、具体的に説明する。
【0073】
(工程1:下部電極を形成する工程)
基板として、P型Siウエファーを用いた。ここでは、P型ウエファー基板が下部電極の役割を果たす。
【0074】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
図4の装置で、HF水溶液中でP型Siウエファーを陽極、Ptを陰極(図4の33)として陽極酸化処理を行った後、水洗を行い、工程3の電解槽に供した。
【0075】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程(液体状有機材料存在下))
本工程は、液体状の有機材料の存在下で、電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程である。図4と同様の装置で、電解液をエチルアルコールにして、素子の下部電極側を陽極として、陰極Pt(図4の電極33)との間に電圧を印加して1時間電解した。尚、電解中は、液温度は、不図示のヒーターで加熱し60℃とした。次に、陽極酸化層を形成した基板を、十分に水洗した後、真空中で、乾燥を行う。
【0076】
(工程4:上部電極を形成する工程)
上部電極を10nmの膜厚で、Pt膜をスパッタリングで成膜した。
【0077】
(工程5:安定化工程)
上記実施例1と同様に安定化工程を行った。
【0078】
最後に、実施例1と同様に図5の真空処理装置に上記サンプルを設置し、下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。同時に素子電圧をゆっくり掃引し、電圧負性抵抗特性(VCNR特性)が発生するかどうか確認した。又、測定後、こうして形成したサンプルを電子顕微鏡、平面TEM等で観察した。
【0079】
電流/電圧特性は、実施例1と同様に素子電流、放出電流とも、しきい値以上では、単調増加特性を示し、しきい値以下では、無視できる電流であった。これらより素子電流、放出電流とも非線形特性を示す非線形素子であることがわかった。又、放出電流は、実施例1の素子と比べ、5倍であった。これは、細孔内の炭素の仕事関数の低下又は、形状の影響と考えられる。
【0080】
電子顕微鏡で、観察すると、多孔質性の孔が観察された。更に、ラマン及び平面TEMサンプルを作成し観察すると、孔の中に、ダイアモンドライクカーボンの存在が確認された。
【0081】
[第1実施形態の実施例3]
本実施例は、実施例1と同様の方法で作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、撮像装置に用いた例である。図9に本発明の撮像装置の模式図を示す。図9(a)は、本発明の撮像管の断面図、図9(b)は、電子放出素子を配置した基板の平面図である。図9(a),9(b)において、91は電子放出素子基板(電子源基板)、92は下部電極(配線)、93は陽極酸化層、94は上部電極(配線)、95は光導電部材、96は透明電極、97は光導電部材基板、98は素子電圧印加電源、99は光導電部材印加電源である。尚、図9(a)において、電子放出素子基板、光導電部材基板は、不図示の支持枠によって、接着され、気密容器が構成され、その内部は高真空に維持される。又図9(a)において、上部電極の一部が、素子電圧印加電源と接続されているが、全ての上部電極が、素子電圧印加電源と接続されている。
【0082】
次に、本実施例の撮像装置の原理を説明する。本実施例の撮像装置は、その動作は、従来の撮像管と同様であるが、2次元状に配置された電子放出素子からの電子ビームで読み出しを行うことと、電子ビームの収束系を有していないことが、従来と異なる。光導電部材95に光が入力されると、光導電部材97においては、入射光によって生成されたホールが、光導電部材95に印加された電界によって、電子放出素子基板91方向に加速され、アバランシェ増倍される。一方、電子放出素子基板91から発生した電子ビームは、光導電部材95に蓄積されたホールに対応した分の電子注入が起こり、それ以上の電子ビームは、電子放出素子基板91方向にもどり、上部配線94に流れる。こうして、入射光に対応して発生したホールに対応した信号電流が、信号電流増幅器より出力される。
【0083】
次に、本実施例の撮像装置の構成を説明する。電子放出素子基板91は、下部電極配線92上の配線の引き出し部を除いて、陽極酸化層93が形成されており、下部電極配線92と直交する上部配線94が形成されている。下部電極配線92と上部配線94の交点部分が、図1と同様の電子放出部を構成する。電子放出素子の大きさは、50μm□である。又、光導電部材95は、Seを用い、その厚さは、4μmである。電子放出素子基板91と光導電部材95基板の間隔は1mmとした。
【0084】
次に本実施例の撮像装置の製造方法について説明する。電子放出素子基板91においては、実施例と同様に作成した。又、光導電部材97は、Seを抵抗加熱蒸着法によって、堆積した。こうして作成された電子放出素子基板、光導電部材基板は、不図示の支持枠によって、接着し、不図示の排気管より排気した後、気密容器を構成した。次に、こうして作成した撮像装置を先に説明した動作原理に基づき動作させたところ、電子放出素子の大きさに1:1に対応した信号電流が得られ動作が確認された。
【0085】
[第1実施形態の実施例4]
本実施例は、実施例2と同様の方法で作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、表示装置を構成した例である。図10に本発明の表示装置の模式図を示す。図10(a)は、本発明の表示装置の断面模式図、図10(b)は、電子放出素子を配置した基板の平面図である。図10(a),10(b)において、100はリアプレート、101は電子放出素子基板(電子源基板)、102は下部電極(配線)、103は陽極酸化層、104は上部電極(配線)、105はメタルバック、106は蛍光体、107はフェイスプレート、108は素子電圧印加電源、109はアノード用の高圧電源である。尚、図10(a)において、電子放出素子基板、フェイスプレートは、不図示の支持枠によって接着され、気密容器が構成され、その内部は高真空に維持される。又図10(a)において、上部電極の一部が、素子電圧印加電源と接続されているが、全ての上部電極が、素子電圧印加電源と接続されている。又、蛍光体106は、不図示のR(赤)G(緑)B(青)の蛍光体が、ブラックストライプで区切られ、ストライプ状に形成されている。
【0086】
次に、本実施例の表示装置の原理を説明する。本実施例の表示装置は、2次元状に配置された電子放出素子列が外部からの走査信号により選択され、外部からの変調信号により選択された電子放出素子列の素子によって変調され、電子ビームが発生する。発生した電子ビームは、本発明の電子放出素子においては、発散しないので、電子ビームの収束系を用いずとも、加速され、メタルバック/蛍光体に入射し、発光する。こうして、画像が表示される。
【0087】
次に、本実施例の表示装置の構成を説明する。電子放出素子基板101は、下部電極配線102上に配線の引き出し部を除いて、陽極酸化層103が形成されており、下部電極配線102と直交する上部配線104が形成されている。下部電極配線102と上部配線104の交点部分が、図1と同様の電子放出素子を構成する。200×(160×3(注.R,G,B))の電子放出素子で構成した。尚、図10は、その一部を示すものである。電子放出素子の大きさは、40μm□である。又、蛍光体106は、CRT用の高加速蛍光体P22を用いた。電子放出素子基板101とフェイスプレート107の間隔は2mmとした。メタルバック105には、5kV印加した。
【0088】
次に本実施例の表示装置の製造方法を説明する。
【0089】
(工程1:基板101上に、金属又は半導体の下部電極を形成する工程)
基板として、n型Siウエハーを用いた。ここでは、n型SiウエハーにP型の部分をストライプ状に複数本作成した。ストライプ状のP型部分が、下部電極の役割を果たす。
【0090】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
図4の装置で、HF水溶液中でSiウエハーのP型部を陽極、Ptを陰極としての陽極酸化処理を行なった後、水洗を行ない、工程3の電解槽に供した。尚、陽極酸化層は、ストライプ状のP型部分に選択的に形成された。
【0091】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程(液体状有機材料存在下))
本工程は、液体状の有機材料の存在下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程である。図4と同様の装置で、電解液をエチルアルコールにして、下部電極側を陰極として、陽極間で1時間電解した。尚、電解中は、液温度は、不図示のヒーターで加熱し60℃とした。次に、陽極酸化層を形成した基板を、十分に水洗した後、真空中で、乾燥を行う。
【0092】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極を10nmの膜厚で、Ptをスパッタで形成した。
【0093】
(工程5:安定化工程)
上記実施例1と同様に安定化工程を行なった。
【0094】
又、フェイスプレート107は、R,G,Bの蛍光体をストライプ上に形成し、フィルミング後、メタルバック105を蒸着によって堆積した。こうして作成された電子放出素子基板101をリアプレート100に設置し、フェイスプレート107は、不図示の支持枠によって、接着し、不図示の排気管より排気した後、気密容器を構成した。
【0095】
次に、こうして作成した表示装置を先に説明した動作原理に基づき動作させたところ、高精細で明るい画像が表示された。
【0096】
[第2実施形態]
図11(a)は、第2実施形態の断面図である。又、図11(b)は、図11(a)の断面図のAの部分拡大の模式図である。絶縁層に陽極酸化層を用いた場合である。 図11(a)において、符号は、図1と同様に付してある。
【0097】
基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiOを積層したガラス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板、SiOを積層したSi基板等を用いることができる。特に、基板1を半導体基板とした場合には、電子放出素子の駆動用のドライバー等を同時に設置することもできる。
【0098】
下部電極2としては、陽極酸化可能であるAl、Ta、Nb、Ti、Zr、Hf、Si等の金属、半導体が用いられる。下部電極2の膜厚は、陽極酸化層の膜厚、下部電極としての電気抵抗等によって適宜設定される。尚、下部電極材料は、陽極酸化可能な金属のみならず、陽極酸化ができない金属と陽極酸化できる金属との積層形態でも良い。
【0099】
陽極酸化層3は、下部電極の一部を陽極酸化し、形成される。陽極酸化層3には、規則的、又は、不規則な細孔5が存在する。これを、本明細書では、多孔質層と呼ぶ場合もある。規則的、不規則的な細孔5の形成は、下部電極2の材料に応じて、陽極酸化浴の組成、浴温、電圧、時間等の陽極酸化条件を選択することで得られる。好ましくは、規則的細孔が、選択される。細孔の径は、数十nmから数百nmであり、その深さは、数十nmから数千nmである。細孔の密度は、10 〜1012個/cmである。尚、細孔の形状は、円に限らず、楕円、四角等でも本発明の電子放出素子においては、適用できる。種々の形状の場合は、フォーカスイオンビーム等を用いて形成することもできる。従って、本発明においては、細孔の径に対応して細孔の長さという表現を用いる場合もある。各細孔5には、下部電極2と電気的に接続された炭素6が、細孔の内壁に沿って周縁状に形成される。尚、電子の放出は、前記各細孔内の内壁の周縁部から行われ、前記細孔に対応して、各細孔より線状の電子放出が行われる。
【0100】
又、上部電極4側より、同様に炭素が形成されていても構わない。
【0101】
下部電極2上に形成された炭素と、上部電極との間、又は、上部電極4側から炭素が形成された場合には、この上部電極4側からの炭素と下部電極2上に形成された炭素の間には、間隙が形成されており、該間隙は、好ましくは、数nmから数十nmであり、後述の有機材料の存在下で行われる、該上部電極及び下部電極に電圧を印加する工程の時間、印加する電圧等によって、適宜設定される。
【0102】
上部電極は、陽極酸化層上に形成され、好ましくは、Pt、W、Mo、Hf等高融点の材料が用いられる。
【0103】
上記本発明の電子放出素子の構造例を図12の模式的断面図を用いて説明する。図12において、図11と同じ部位には、同じ符号をつけた。図中7は、金属等の導電性体、8は上部電極と電子放出体間の微小間隙である。図12には、(a)〜(d)の4種類の構造を示したが、これに限るわけでなく、他の構造でも良い。又、以下において、上部電極及び下部電極として金属を用いて説明しているが、半導体でもよい。
【0104】
図12(a)の構造は、金属(下部電極)/金属酸化層/細孔内壁に沿った周縁状電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4となっている。又、図12(b)の構造は、金属(下部電極)/細孔内壁に沿った周縁状電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4となっている。図12(c)の構造は、金属(下部電極)/金属酸化層/支柱状導電性体と細孔内壁に沿った周縁状電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4となっている。又、図12(d)の構造は、金属(下部電極)/支柱状導電性体と細孔内壁に沿った周縁状電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4となっている。
【0105】
図12(a)(c)の構造における金属酸化層3は、下部電極を陽極酸化した際にえられるが、陽極酸化条件によって、この金属酸化層3に、細孔をもたない緻密な膜構造領域と細孔を有する膜構造領域の両構造領域を得ることができる。図12(a)(c)の様に、下部電極2と細孔内の電子放出体6との間に、上記金属酸化層の緻密な膜構造領域が形成されていることは、金属/絶縁層/周縁状電子放出体の非線形素子を形成するため、電流制限の働きを付与することができ、本発明の電子放出素子を駆動した際、放電等での電流変動を防ぎ、電子放出素子の損傷を防ぐことができる。上記金属酸化層の具体的な製造方法は後述するが、例えばまず多孔質の金属酸化物形成条件で形成後、後述する細孔のワイドニング工程で、緻密な膜構造領域の厚みが調整される。
【0106】
又、図12(b)(d)の構造は、細孔をもたない金属酸化層がなく、直接下部電極と細孔内の電子放出体(炭素)が電気的に接続された場合を示している。このような構造は、下部電極を陽極酸化した後、後述する細孔のワイドニング工程を十分に行い、更に、細孔内に電子放出体(炭素)を形成することで、下部電極と電子放出体が電気的に接続された状態となる。この際、後述する陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程において印加されるパルス電圧によって、下部電極と細孔を有する金属酸化層との間に存在する細孔を持たない金属酸化層が、電気的に破壊され、その結果、下部電極と電子放出体が電気的に接続された状態となる場合もある。
【0107】
以上、図12(b)(d)の場合においても、電子放出体/真空間のトンネリングによる非線形特性を有する電子放出素子である。又、(c),(d)においては、細孔内に支柱状の導電性体及び細孔内壁に沿った周縁状の電子放出体がある場合である。これらの場合は、導電性体があるために、下部電極から電子放出体までの抵抗値が低減できるために、絶縁層の厚みが大きくとれ、下部電極及び上部電極間の容量の低下ができるために、駆動上有利である。
【0108】
又、従来から良く知られた陽極酸化膜の発色法で、陽極酸化膜細孔中に金属を析出させる際に、交流で行うことで緻密な陽極酸化膜中に細孔内析出金属がマイグレーションし下部電極と電気的接続を行うこともできる。上記真空とは、電子放出素子を形成した基板の設置された真空雰囲気と同等のものである。
【0109】
又、以上述べた本発明の電子放出素子においては、前述した通り、特に耐熱性や、電子放出特性の安定、再現性の向上という点で、電子放出体を構成する炭素は、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボンのうちひとつ以上であることが好ましい。
【0110】
次に、図12の構造例における本発明の電子放出素子の電子放出機構について説明する。前述した従来技術であげた表面伝導型電子放出素子においては、特開平9−82214号公報によれば、表面伝導型電子放出素子の亀裂部において、亀裂部の陽極側(高電位側ともいう)のある位置から一旦、陽極の外部の真空中に電子が放出される。又、一旦放出された電子は、陰極(低電位側ともいう)と陽極で作られる電場内を運動し、陽極側素子電極(又は陽極側の導電性膜)上を、電場の特異点(以降よどみ点と呼ぶ)よりも遠くに飛来した電子はアノード板に印加した電圧による電界によって、アノード板に引き寄せられる。又、電場の特異点に到達しない電子は陽極に落下し、一部の電子はここで散乱されて向きを変えられ、再び真空中へ放出される。この散乱を繰り返して電場の特異点を越えた電子はアノード板に到達する。
【0111】
ここで、電子放出効率を大幅に上げるためには、上記の電子放出の機構において、一旦放出された電子の大部分が陽極に落下する事無く、アノード板に引き寄せられるような電場条件に設定すればよいことが判る、と記載されており、前記従来技術においては、電界補正電極を素子電極の外側に配設し、素子に電子放出を行うために印加する電圧に対して、充分な高電圧を印加することで、電子放出効率をあげることが可能であることが示されている。
【0112】
一方、本発明の電子放出素子においては、上部電極に高電位、下部電極に上部電極に比べ低電位が印加されると、上部電極4と電子放出体6間の微小間隙8に、その電位差が印加され、電子放出体から真空中に電子が放出され、真空に放出された電子は、前記従来技術の亀裂に相当する微小間隙に大きな電界が印加されているために先に従来技術であげた表面伝導型電子放出素子と同様に、電子放出体6から放出した電子は、上部電極4に衝突散乱する。しかしながら、本発明の電子放出素子によれば、散乱を繰り返さずにも電場の特異点を越え、電子は、アノード板に到達すると推定される。
【0113】
図13は、本発明の電子放出素子の原理図である。図13は、図12の模式的断面図である。図13において、図12と同一の符号のものは、同一のものである。又、図上、hは、電子放出素子とアノード電極間の距離、dは、細孔の長さ、Vaは、アノード電極の電位である。
【0114】
一方の電子放出体6から放出した電子に注目して説明する。微小間隙に印加された電界によって、電子放出体6から真空に放出した電子は、上部電極4に衝突してまず等方に散乱する。等方に散乱した電子は、非常に近い距離に存在する上部電極34からの強い電界によって、前述したよどみ点が、従来の表面伝導型電子放出素子に比べ著しく縮小されている。繰り返し散乱が起こらず、主に、1回の散乱のみで、アノード板に電子が到達する。一方、上部電極4の膜厚が薄い場合も、繰り返し散乱が起こらず、主に、1回の散乱のみで、アノード板に電子が到達する。以上の様な理由で、電子放出効率が増加すると考えられる。
【0115】
上部電極4に対向する上部電極の電界の効果は、開口部の径が重要となり、微小間隙に電子放出のためには、導電性の電子放出体の仕事関数を4〜5.5eVとすると10 V/cm以上であるので、前記従来技術で定義された電場の特異点であるよどみ点を従来技術の電子放出素子及び本発明に適用すると、34がない場合のよどみ点の距離Xsは、
Xs=h・Vf/(π・Va)
であらわされ、一方、34がある場合のよどみ点Xs′は、
Xs′=h・Vf/{π・Va+h・Vf/(π・d)}
で表されるために、開口部の径が小さければ小さい程、よどみ点が縮小する。特に、上部電極電圧が数十Vにおいても、よどみ点の縮小効果が期待されるために、開口部の径は、0.5μm以下が好ましく、更に、開口部の径が、0.2μm以下なら好ましい。更に、細孔内壁に沿って、導電性の電子放出体が存在するために、細孔内の壁が、同一の電位となり、前記よどみ点が更に縮小するため、電子放出効率が増加する。
【0116】
周縁状の電子放出体を形成することで、同電位を示す細孔の深さは、細孔径に対して、略同等までは、電子放出効率に対して、効果が期待される。
【0117】
又、上部電極の厚みは、繰り返し散乱を抑制するうえで、薄いことが好ましく、実施例からは、0.2μm以下が、効率の観点から好ましい。尚、上部電極の厚みで規定できる場合は、電子の放出に寄与する微小間隙が、上部電極の際にある場合であり、繰り返し散乱の抑制の観点から考えれば、微小間隙と上部電極の上面までの距離に対応する。
【0118】
又、駆動電圧は、微小間隙であるので、低駆動電圧であり、又、電子を引き出す電圧方向が、アノード板と一致しているために、比較的、等方散乱したにもかかわらず、電子ビームの広がりは抑制される。
【0119】
上述の電子放出素子の製造方法としては様々な方法があるが、その一例を図14の工程図を参照して、説明する。
【0120】
(工程1)基板上に、金属又は半導体の下部電極の形成工程
基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により下部電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極2を形成する。尚、下部電極を電析により形成しても良い。
【0121】
(工程2)下部電極を陽極酸化する工程
陽極酸化装置の概念図を図5を用いて、まず説明する。51は、陽極酸化槽、52は、陽極酸化電解液、53は電極、54は、陽極酸化電源、55は、陽極酸化電解液52の温度調節を行うための温調機、56は、温調機を循環する水用の容器、57は、温調用の循環水である。
【0122】
陽極酸化電解液52は、Al等の金属では、硫酸、スルファミン酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の有機酸、の水溶液であるが、さらに、溶媒として加えられる物質としては、エチレングリコール、グリセリン、デキストリン等の多価アルコールがある。一方、Siの場合は、HF水溶液が、用いられる。又、熱酸化等の酸化プロセスが更に、追加されても良い。
【0123】
電極53は、Pt等の金属が用いられる。下部電極の陽極酸化は、電極53を、陰極、下部電極等を形成した基板1を陽極にして、電源55より通電を行うことでなされる。陽極酸化層の幾何学構造は、作成条件で制御できる。細孔間の間隔は、陽極酸化電圧、細孔の深さは、陽極酸化時間、孔径は、電解液組成、電圧、電流等の条件で制御できる。又、規則的細孔、不規則細孔の制御もこれらの条件の制御でおこなう。
【0124】
次に、陽極酸化層を形成した基板を、陽極酸化電解液等に浸漬し、細孔の径及び緻密な酸化膜の厚みが調整される。(尚、この工程をワイドニングと呼ぶ。)十分に水洗した後、真空中で、乾燥を行う。
【0125】
(工程3)該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程
上部電極を200nm以下の膜厚で、下部電極と同様にして、形成する。
【0126】
(工程4)陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程(気体状有機材料存在下)
本工程は、気体状の有機材料の存在下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程である。本工程で形成される炭素とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含する。HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)である。
【0127】
[第2実施形態の実施例1]
図7と同様の構造の、電子放出素子を作成した。
【0128】
本実施例の製造工程を図14を参照して具体的に説明する。
【0129】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
青板ガラスにSiOを1μm堆積した基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、スパッタ法によりAl下部電極材料を500nmの厚みで堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極配線71をストライプ状に形成した。又、下部引き出し配線71の一部を端子とするため、公知の鍍金用マスク樹脂で覆った。
【0130】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
陽極酸化は、図15の装置を用いて、(工程1)で作成したAl製の下部電極の一部を陽極酸化した。陽極酸化電解液52は、シュウ酸30g/lの水溶液である。電極53は、Pt電極を用いた。陽極酸化は、電極53を、陰極、基板1に設けられた下部配線71を陽極にして、電源55より定電圧で40V、5℃で5分間行った。初期の電流密度は、300mA/cmであったが、陽極酸化の進行にともない減少し、その後、一旦増加し飽和した。次に、陽極酸化層を形成した基板を、燐酸水溶液中に30分間、浸漬し、緻密な陽極酸化層を除去した後、十分に水洗した。
【0131】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状金属を形成する工程)
細孔内への柱状金属の形成は、図9を用いておこなった。
【0132】
図16において、図5と同一の符号のものは、同様のものをさす。91は、金属電解析出用の対向電極で、カーボン、Pt等不活性電極や電析金属と同一材料金属を用いた対向電極である。92は、金属電解析出液用の容器、93は、電解析出用の電源、94は、金属を含む電解析出溶液である。
【0133】
本工程では、対向電極91にPt電極、金属を含む電解析出溶液94に5%NiSO、4%HBOを用いて、1mA/cmの電流密度で定電流でNiを電析した。柱状Niの電析量は、時間で制御し、各細孔内に柱状Niを形成した。電析時間は、100秒とした。
【0134】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極72を10nmの膜厚で、下部電極と同様にして、形成した。
【0135】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下)
測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−4Paベンゾニトリルのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。工程5において、5素子のうち3素子は、電圧波形は、図6(a)パルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を20分間、下部電極側を高電位にし、印加した。その後、上部電極を高電位側にし、20分間電圧を印加した。又、同時に素子の電流をモニターした。電圧は、17Vとした。5素子のうちの残りの2素子については、図6(b)のパルス波形で同様に、電圧17Vで20分間印加した。
【0136】
(工程6:安定化工程)
次に、ベンゾニトリルガスを十分に排気した後、300℃で加熱しながら、2時間排気した。
【0137】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。次に、測定後、こうして形成したサンプルを電子顕微鏡、TEM等で観察した。
【0138】
各素子の素子電流、放出電流とも、しきい値以上では、単調増加特性を示す。しきい値(Vthと呼ぶ)以下では、無視できる電流であった。放出電流の値は、図6(a)のパルスを印加した素子が、図6(b)のパルスを印加した素子と同等であり、従って、放出効率も同等であった。
【0139】
電子顕微鏡で、観察すると、陽極酸化層において、規則的な細孔が観察された。細孔密度は、1×10 個/cmであった。
【0140】
更に、断面サンプルを作成し細孔内を観察すると、図17に示すものであった。図17において、図12と同一の符号は、同様のものを示す。図17(a)は、工程5において、図6(a)のパルスを印加し、炭素を形成したものであり、図17(b)は、図6(b)のパルスを印加し炭素を形成したものである。111は、上部電極側に形成された炭素である。
【0141】
図17(a)に示される様に、図6(a)のパルスを印加し炭素を形成した場合は、Alの下部電極2よりNi金属が、細孔内を柱状に110nm成長し、更に、柱状のNiの上面で細孔内壁に沿って形成された周縁状アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極4側にも同様に、アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極4側と下部電極2側の炭素間には、微小な間隙8が形成されており、又、上部電極の際に、間隙は形成しており、数nmの間隙であった。尚、陽極酸化膜の厚さは、150nmであった。
【0142】
一方、図17(b)に示される様に、図6(b)のパルスを印加し炭素を形成した場合は、Alの下部電極2にNi金属が、細孔内を柱状に成長し、更に、柱状のNiの上面で細孔内壁に沿って形成された周縁状アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極4側にも同様に、アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極の下面より20nmの位置まで炭素が形成されており、炭素間には、微小な間隙が形成されており、数nmの間隙であった。
【0143】
以上より判明することは、第1に、金属を陽極酸化し、細孔内に柱状の金属を形成した上面で、低分圧下で堆積速度を抑制したので、前記細孔内壁に沿って形成された周縁状炭素が形成されるということである。第2に、上部電極側、下部電極側の炭素間には、数nmの微小な間隙が形成される。第3に、上部電極の下面より、20nmの範囲での位置での微小な間隙が、配設された場合は、放出電流、電子放出効率とも同等であることが示された。上部電極側の厚みを含めても、両例とも、間隙より、上部電極の上面までの距離が30nmであるために、下部電極側より放出された電子が、細孔内でロスする確率が小さいことによると推定される。第4に、安定化工程によって、電圧負性抵抗特性、すなわち、VCNR特性が発生せず、素子電流、放出電流とも、単調増加特性を示す。
【0144】
[第2実施形態の実施例2]
本実施例では、第2実施例の実施例1と同様の素子配置の基板を構成した。上部電極の厚みを種々形成しその影響を検討した。実施例1と工程1より工程3、工程6は同様に行った。工程1より工程3、工程6の説明は省略し、工程4、5についてのみ詳細に説明する。
【0145】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
【0146】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
【0147】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状金属を形成する工程)
実施例1の工程3と同様に行った。
【0148】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極72を5、10、100、500nmの4種類の膜厚で、下部電極と同様にして、4基板を形成した。
【0149】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下)
測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−4Paベンゾトリルのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。5素子のうち3素子は、電圧波形は、図6(a)のパルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を15分間、下部電極側を高電位にし、印加した。その後、上部電極を高電位側にし、5分間電圧を印加した。又、同時に素子の電流をモニターした。電圧は、15Vとした。
【0150】
(工程6:安定化工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
【0151】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。
【0152】
図18に、上部電極厚と放出電流の関係を示す。図18に示される様に、電子放出効率は、約200nmまで減少が少なく、200nmを越えると上部電極の厚みの増加に伴い減少した。尚、電子放出効率とは、放出電流と素子電流比である。又、ビームサイズも減少した。
【0153】
尚、上部電極の形態の観察をすると特に上部電極の厚みを厚くしたものは、細孔の径に比べ大きい膜厚の場合、細孔内部にも、一部被覆していた。又、断面TEMによって、微小間隙を観察すると、いずれも、実施例1と同様に、上部電極の下面際に形成されていた。
【0154】
以上より、次の様なことが示された。第1に、上部電極の厚みによらず、上部電極の際に微小な間隙が、形成された。第2に、上部電極の厚みに依存して、放出電流、電子放出効率が低下する。下部電極側より放出された電子が、細孔状の上部電極でロスする確率が高いことによると推定される。
【0155】
[第2実施形態の実施例3]
本実施例では、第2実施形態の実施例1と同様の素子配置の基板を構成した。本実施例では、実施例1のアルミニウムの陽極酸化膜にかわり、絶縁層としてSiOを用いた。以下、本実施例の製造工程を具体的に説明する。
【0156】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
青板ガラスにSiOを1μm堆積した基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、スパッタ法によりPtを下部電極材料として、500nmの厚みで堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極配線71をストライプ状に形成した。
【0157】
(工程2:絶縁層を形成する工程)
次に、SiOをスパッタ法により、50nm積層した。
【0158】
(工程3:該絶縁層の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極72をPt10nmの膜厚で、下部電極と同様にして、形成した。
【0159】
(工程4:絶縁層に細孔を形成する工程)
上述の下部電極/SiO/上部電極の積層構造に、フォーカスイオンビーム法を用いて、(細孔の径50nm、ピッチ100nm)、(細孔の径200nm、ピッチ400nm)、(細孔の径500nm、ピッチ1000nm)、(細孔の径1000nm、ピッチ2000nm)の4種類を形成した。尚、ここで、ピッチとは、隣接する細孔の中心間の距離である。
【0160】
(工程5:絶縁層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下)
測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−4Paベンゾニトリルのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。電圧波形は、図6(a)のパルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を15分間、下部電極側を高電位にし、5分間印加した。
【0161】
(工程6:安定化工程)
次に、ベンゾニトリルガスを十分に排気した後、300℃で加熱しながら、2時間排気した。
【0162】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。
【0163】
電子放出効率は、図19に示される様に、細孔の径に依存しており、細孔の径が小さい程、電子放出効率が増加した。
【0164】
[第2実施形態の実施例4]
本実施例は、第2実施形態の実施例1と同様の方法で作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、既に説明した図9の撮像装置に用いた例である。 本実施例の撮像装置の製造方法は、第1実施形態と同様である。こうして作成した撮像装置を先に説明した動作原理にもとづき動作させたところ電子放出素子の大きさに1:1に対応した信号電流が得られ動作が確認された。
【0165】
[第2実施形態の実施例5]
本実施例は、第2実施形態の実施例1と同様の方法により作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、既に説明した図10の表示装置を構成した例である。本実施例の表示装置の製造方法は、第1実施形態と同様である。こうして作成した表示装置を先に説明した動作原理にもとづき動作させたところ、高精細で明るい画像が表示された。
【0166】
[第3実施形態]
図20(a)は、本実施形態の電子放出素子の断面図である。図20(b)は、図20(a)の断面図のAの部分拡大の模式図である。絶縁層に陽極酸化層を用いた場合である。図21は、種々の電子放出体を有する電子放出素子の説明をする。図22は、別な構造例である。
【0167】
図20、図21において、1は、基板、2は、下部電極、3は、陽極酸化層、4は、上部電極、5は、多孔質の細孔、6は、電子放出体、207は微小間隙、8は、柱状の導電性体である。
【0168】
基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiOを積層したガラス基板及びアルミナ等にセラミックス及びSi基板、SiOを積層したSi基板等を用いることができる。特に、基板1を半導体基板として場合には、電子放出素子の駆動用のドライバー等を同時に設置することもできる。
【0169】
下部電極2としては、陽極酸化可能であるAl,Ta,Nb,Ti,Zr,Hf,Si等の金属、半導体が用いられる。下部電極2の膜厚は、陽極酸化層の膜厚、下部電極としての電気抵抗等によって適宜設定される。尚、下部電極材料は、陽極酸化可能な金属のみならず、陽極酸化ができない金属と陽極酸化できる金属との積層形態でも良い。
【0170】
陽極酸化層3は、下部電極の一部を陽極酸化し、形成される。陽極酸化層3には、規則的、又は、不規則な細孔5が存在する。これを、本明細では、多孔質層と呼ぶ場合もある。規則的、不規則的な細孔5の形成は、下部電極2の材料に応じて、陽極酸化浴の組成、浴温、電圧、時間等の陽極酸化条件を選択することで得られる。好ましくは、規則的細孔が、選択される。細孔の径は、数十nmから数百nmであり、その深さは、数十nmから数千nmである。細孔の密度は、10 〜1012個/cmである。尚、細孔の形状は、円に限らず、楕円、四角等でも本発明の電子放出素子においては、適用できる。種々の形状の場合は、フォーカスイオンビーム等を用いて形成することもできる。従って、本発明においては、細孔の径に対応して細孔の長さという表現を用いる場合もある。各細孔5には、下部電極2と電気的に接続された電子放出体炭素6を有する。
【0171】
電子放出体は種々の形態をとることができる。上部電極4を下部電極2に対して高電位にすることによって、電子放出体に局部的高電界を発生させ電子放出体より電子を真空にトンネリングさせる。尚、上記真空とは、電子放出素子を形成した基板の設置された真空雰囲気と同等のものである。
【0172】
図21(a)は、針状電極を細孔内に配設した例である。針状電極は、前述したSpindt型と呼ばれるものと同等のものである。
【0173】
図21(b)は、微粒子を細孔内に配設した例である。微粒子の粒が、図2−aの針状電極の先端に対応する。
【0174】
図21(a),(b)の電子放出体では、局部電界が大きく、真空部分の厚みが大きくとれるために、下述する図21(c),(d)の構造に比べ、容量が低下できる。
【0175】
図21(c)は、前記細孔内壁に沿って形成された周縁状導電性体と上部電極間の微小間隙207に高電界を発生させ、電子を放出させるものであり、細孔内壁にそった周縁状すなわち線状の電子放出体となるために、図21(a)に比べ、電子を放出できうる面積が大幅に増加できるために、電子放出電流が大きく得ることができる。
【0176】
図21(d)は、前記細孔内に形成した柱状導電性体を電子放出体6として、柱状導電性体6と上部電極間の微小間隙207に高電界を発生させ、電子を放出させるものであり、細孔内壁にそった周縁状すなわち線状の電子放出体となるために、図21(a)に比べ、電子を放出できうる面積が大幅に増加できるために、電子放出電流が大きく得ることができる。
【0177】
上部電極は、陽極酸化層上に形成され、細孔上の電子透過部分は、電子透過特性、耐熱性に優れた導電性材料が好ましく、特に好ましくは、炭素等が用いられる。尚、ここで、炭素とは、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボンのいずれかひとつ以上を有する炭素材料である。
【0178】
上部電極厚は、上部電極は、細孔の開口部を覆うことができる様に、細孔の長さlに対して、0.51以上とする。
【0179】
又、上部電極厚は、効率良く透過するために、電子透過の平均自由行程()ミーンフリーパス)をλとすると、2λ以下である。一般に、電子透過率Tは、
T=Aexp(−t/λ)
で表される。Aは、定数、tは、上部電極厚みである。上式より、上部電極の厚みが2λ以下であれば、注入電子の10%以上の透過率が期待できる。又、上式より、ミーンフリーパスλは、放出電流の上部電極膜厚依存性から算出することができる。
【0180】
例えば、本発明で特に好ましい材料とした炭素では、以上の要件から、好ましい範囲は、上部電極の厚みと細孔の長さが同時に設定され、上部電極厚50nmとして、細孔の長さは100nm以下が設定される。
【0181】
又、絶縁層上の上部電極厚みと細孔上の電子透過がされる上部電極部分の厚みは相違しても良く、製法上の問題等から適宜設定される。
【0182】
上記本発明の電子放出素子の別な構造例を図22の模式的断面図を用いて説明する。電子放出体6の構造は、図21(a)を例としてとりあげるが、これに限るわけでなく、図21(b)、(c)、(d)等の電子放出体を用いることができる。
【0183】
図22(a)は、細孔内に柱状の導電性体8及び電子放出体6を配設した場合である。これらの場合は、導電性体8があるために、下部電極から電子放出体までの抵抗値が低減できるために、絶縁層の厚みが大きくとれ、下部電極及び上部電極間の容量の低下ができるために、駆動上有利である。
【0184】
図22(b)は、下部電極2と細孔内の電子放出体6との間に、トンネリング可能な厚みの絶縁層を配設することで、金属/絶縁層/炭素の非線形素子を形成するため、電流制限の働きを付与することができ、本発明の電子放出素子を駆動した際、放電等での電流変動を防ぎ、電子放出素子の損傷が防ぐことができる。上記トンネリング可能な厚みの絶縁金属酸化層の具体的な製造方法は後述する。
【0185】
上述の電子放出素子の製造方法としては様々な方法があるが、その一例を図23の製造工程図に模式的に示す。以下、図23を参照して図21(d)の電子放出素子製造方法の一例について説明する。
【0186】
(工程1)基板上に、金属又は半導体の下部電極を形成工程
基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により下部電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極2を形成する。尚、下部電極を電析により形成しても良い。
【0187】
(工程2)下部電極を陽極酸化する工程
陽極酸化装置の概念図を図15を用いて、まず説明する。51は、陽極酸化漕、52は、陽極酸化電解液、53は、電極、54は、陽極酸化電源、55は、陽極酸化電解液52の温度調節を行うための温調機、56は、温調機を循環する水用の容器、57は、温調用の循環水である。
【0188】
陽極酸化電解液52は、Al等の金属では、硫酸、スルファミン酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の有機酸、の水溶液であるが、さらに、溶媒として加えられる物質としては、エチレングリコール、グリセリン、デキストリン等の多価アルコールがある。一方、Siの場合は、HF水溶液が、用いられる。又、熱酸化等の酸化プロセスが更に、追加されても良い。
【0189】
電極53は、Pt等の金属を用いられる。下部電極の陽極酸化は、電極53を、陰極、基板1を陽極にして、電源55より通電を行うことでなされる。陽極酸化層の幾何学構造は、作成条件で制御できる。細孔間の間隔は、陽極酸化電圧、細孔の深さは、陽極酸時間、孔径は、電解液組成、電圧、電流等の条件で制御できる。又、規則的細孔、不規則細孔の制御もこれらの条件の制御でおこなう。
【0190】
次に、陽極酸化層を形成した基板を、陽極酸化電解液等に浸漬し、細孔の径及び緻密な酸化膜の厚みが調整される。(尚、この工程をワイドニング工程と呼ぶ。)十分に水洗した後、真空中で、乾燥を行う。
【0191】
(工程3)該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程
上部電極を数nm〜数十nmの膜厚で、下部電極と同様にして、形成する。
【0192】
(工程4)陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程(気体状有機材料存在下)
本工程は、気体状の有機材料の存在下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程である。本工程で形成される炭素とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含する、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)である。従って、前記、上部電極と同様の炭素となる。
【0193】
上記炭素を形成する際の好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどC2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどC2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。
【0194】
又、有機ガスは、陽極酸化層に形成された細孔の径に応じても、選択される。すなわち、有機ガスの吸着は、細孔の径にも、依存するからである。
【0195】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素が陽極酸化層内の細孔に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。
【0196】
本工程の終了判定は、素子電流If、放出電流Ieのいずれか一方又はその双方を測定しながら、行う。
【0197】
尚、細孔上の、上部電極4の開口部は、本工程における上述の電圧パルスの印加初期においても形成される。
【0198】
(工程5)安定化工程
こうして作成した電子放出素子の特性の安定化をおこなう工程である。本工程は、特に電子放出体の形成が上述の工程4)で行った場合必要である。上記工程で陽極酸化層の細孔内の炭素において、有機材料の中間生成物および基板等に吸着された有機ガス、水、酸素等を除去することで、素子電流、放出電流が、素子への印加電圧に対して、あるしきい値以上では、単調増加する特性を付与することができる。本工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。
【0199】
真空排気装置内の有機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1×10−8Torr以下が好ましく、さらには1×10−10 Torr以下が特に好ましい。さらに真空装置内を排気するときには、真空装置全体を加熱して、真空装置内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、150〜300℃で数時間以上が望ましいが、特にこの条件に限るものではない。
【0200】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することが出来る。
【0201】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
【0202】
(工程6)上部電極4を形成する工程
グラファイト、アモルファスカーボン等をターゲットにして、スパッタ法等により、細孔上及び上部電極4のうえに、グラファイト、アモルファスカーボン等を堆積する。
【0203】
尚、更に、工程5の安定化工程を行うことで、上記工程5の目的が更に、達成される。
【0204】
[第3実施形態の実施例1]
図7と同様の構造の電子放出素子を作成した。以下、本実施例の製造工程を具体的に説明する。
【0205】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
青板ガラスにSiOを1μm堆積した基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、スパッタ法によりAl下部電極材料を500nmの厚みで堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極配線81をストライプ状に形成した。又、下部引き出し配線81の一部を端子とするため、公知の鍍金用マスク樹脂で覆った。
【0206】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
陽極酸化は、図5を用いて、(工程1)で作成したAl製の下部電極の一部を陽極酸化した。
【0207】
陽極酸化電解液52は、シュウ酸30g/lの水溶液である。電極53は、Pt電極を用いた。陽極酸化は、電極53を、陰極、基板1に設けられた下部配線81を陽極にして、電源55より定電圧で40V、5℃で5分間行った。陽極酸化膜の厚みはこの際、初期の電流密度は、300mA/cmであったが、陽極酸化の進行にともない減少し、その後、一旦増加し飽和した。次に、陽極酸化層を形成した基板を、燐酸水溶液中に30分間、浸漬し、緻密な陽極酸化層を除去した後、十分に水洗した。
【0208】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状金属を形成する工程)
細孔内への柱状金属の形成は、図16の装置を用いておこなった。図16において、図15と同一の符号のものは、同様のものをさす。91は、金属電解析出用の対向電極で、カーボン、Pt等不活性電極や電析金属と同一材料金属を用いた対向電極である。92は、金属電解析出液用の容器、93は、電解析出用の電源、94は、金属を含む電解析出溶液である。
【0209】
本工程では、対向電極91にPt電極、金属を含む電解析出溶液94に5%NiSO4、4%H3BO3を用いて、1mA/cmの電流密度で定電流でNiを電析した。柱状Niの電析量は、時間で制御し、各細孔内に柱状Niを形成した。電析時間は、100秒とした。
【0210】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極82をPtを用い、10nmの膜厚で、下部電極と同様にして、形成した。
【0211】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下))
測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−1Paアセトンのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。工程3において、電圧波形は、図6(a)のパルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を20分間、下部電極側を高電位にし、印加した。その後、上部電極を高電位側にし、20分間電圧を印加した。その後、排気を行い、基板を取り出した。
【0212】
(工程6:安定化工程)
次に、基板をスパッタ装置の真空チャンバー内に設置し、十分に排気した後、300℃で加熱しながら、2時間排気した。
【0213】
(工程7:上部電極の形成工程)
次に、グラファイトをターゲットにして、スパッタ法で、45nmの炭素を堆積し、上部電極とした。
【0214】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。次に、測定後、こうして形成したサンプルを電子顕微鏡、TEM等で観察した。
【0215】
[比較例]
比較例として、MIM型電子放出素子を作成した。
【0216】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)を行った。工程1、4は実施例と同様であるが、工程2の陽極酸化条件を変更した。陽極酸化溶液として、酒石酸アンモン溶液で500μA/cm2 で定電流陽極酸化を行い、絶縁層の厚さを6nmとした。
【0217】
各素子とも、素子電流放出電流とも、しきい値以上では、単調増加特性を示す。しきい値(Vthと呼ぶ)以下では、無視できる電流であった。電子ビームを蛍光体の発光より観察すると、比較例のMIM電子放出素子と同等であった。電子放出効率は、比較例が、0.1%に対して、実施例は、平均5%であった。同時に電子放出電流が、効率に対応して増加した。
【0218】
電子顕微鏡で、断面を観察すると、陽極酸化層において、規則的な細孔が観察された。細孔の径は、80nmであった。又細孔内には、支柱状のNi金属及び炭素が積層され、上部電極とは、5〜10nmの微小間隙を有していた。
【0219】
以上の結果、電子ビームの広がりがMIM電子放出素子と同等で、電子放出効率及び放出電流の高い電子放出素子であった。又、安定化工程によって、電圧負性抵抗特性、すなわち、VCNR特性が発生せず、素子電流、放出電流とも、しきい値Vthを有する単調増加特性を示した。
【0220】
[第3実施形態の実施例2]
本実施例では、第3実施形態の実施例1と同様の素子配置の基板を構成した。本実施例では、実施例1のアルミニウムの陽極酸化条件を変え、細孔の径を変え、その影響を検討した。
【0221】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
実施例1の工程1と同様に行った。
【0222】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
実施例1の工程1と同様に行った。
【0223】
次に、陽極酸化層を形成した基板を、燐酸水溶液中に浸漬する時間を変更し、細孔の径を変えた。細孔の径は、20、30、40、50、80nmとした。
【0224】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状金属を形成する工程)
細孔内への柱状金属の形成は、図16を用いておこなった。本工程では、対向電極91にPt電極、金属を含む電解析出溶液94に5%NiSO 、4%HBOを用いて、1mA/cmの電流密度で交流60HZでNiを電析した。柱状Niの電析量は、時間で制御し、各細孔内に柱状Niを形成した。尚、陽極酸化の細孔底部の緻密な酸化層にもNiがマイグレーションし、下部電極と柱状のNiは、電気的に接続された。
【0225】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
この工程は実施しない。
【0226】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程)
スパッタ法によって、Wを7nm堆積した後、水素ガス中で還元凝集し、微粒子を形成した。微粒子の粒径は、10nmであった。
【0227】
(工程6:安定化工程)
次に、基板をスパッタ装置の真空チャンバー内に設置し、十分に排気した。
【0228】
(工程7:上部電極の形成工程)
次に、グラファイトをターゲットにして、スパッタ法で、20nmの炭素を堆積し、上部電極とした。
【0229】
電子顕微鏡で観察すると細孔の径が40nmまでは、細孔上も覆うことができ、50nm以上の細孔の径では、細孔上の炭素は、一部、又は、全個所覆い切れなかった。これより、細孔の長さLに対して、上部電極厚みtは、
0.5×L ≦ t
を満足する必要があることがわかった。
【0230】
又、実施例と同様にして、細孔径40nm以下のものについては、ビーム広がりが、前記比較例と同等な電子放出を確認した。
【0231】
[第3実施形態の実施例3]
本実施例では、第3実施形態の実施例1と同様の素子配置の基板を構成した。図21(b)の構造の素子で、上部電極の厚みを種々形成し、その影響を検討した。実施例1と工程5、7以外は、同様に行った。
【0232】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
実施例1の工程1と同様に行った。
【0233】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状金属を形成する工程)
実施例1の工程3と同様に行った。
【0234】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
実施例1の工程4と同様に行った。
【0235】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程)
スパッタ法によって、Wを7nm堆積した後、水素ガス中で還元凝集し、微粒子を形成した。
【0236】
(工程6:安定化工程)
次に、基板をスパッタ装置の真空チャンバー内に設置し、十分に排気した後、300℃で加熱しながら、2時間排気した。
【0237】
(工程7:上部電極の形成工程)
次に、グラファイトをターゲットにして、スパッタ法で、10、35、50、65、80、200nmの炭素を堆積し、上部電極とした。
【0238】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。
【0239】
電子ビームは、10nmの厚みでは、比較例と比べ広がっていた。35、50nm,65、80nmの厚みのものは、比較例と同等であった。200nmの厚みのものは、放出電流が小さく測定困難であった。
【0240】
図24に示すように、電子放出電流は、上部電極厚10nmでは、非常に高く、35、50nm,65、80nmでは、指数関数的依存性を示した。200nmの厚みでは、ノイズレベルであった。これより、炭素のミーンフリーパスが算出された。
【0241】
尚、上部電極の形態の観察をすると、10、35nmの厚みのものは、細孔上を上部電極が覆いきれず、上部電極に穴が見受けられた。50、65、80nmの厚みのものは、細孔上に穴が見受けられなかった。
【0242】
以上の結果、細孔の径に対して、上部電極の厚みの最適値が存在し、又、上部電極が、極端に薄いと上部電極が、細孔を覆うことができず、電子ビームは、広がり、又最適範囲では、ビームの広がりは、低減され、膜厚に依存して放出電流が減少することが分かった。。又、前述の2λ以下の膜厚の上部電極であれば、充分な放出電流が得られることがわかった。
【0243】
[第3実施形態の実施例4]
本実施例は、第3実施形態の実施例1と同様の方法で作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、既に説明した図9の撮像装置に用いた例である。本実施例の撮像装置の製造方法は、第1実施形態と同様である。こうして作成した撮像装置を先に説明した動作原理にもとづき動作させたところ電子放出素子の大きさに1:1に対応した信号電流が得られ動作が確認された。
【0244】
[第3実施形態の実施例5]
本実施例は、第3実施形態の実施例1と同様の方法により作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、既に説明した図10の表示装置を構成した例である。本実施例の表示装置の製造方法は、第1実施形態と同様である。こうして作成した表示装置を先に説明した動作原理にもとづき動作させたところ、高精細で明るい画像が表示された。
【0245】
[第4実施形態]
図25(a)は、第4実施形態の電子放出素子の断面図である。図25(b)は、図25(a)の断面図のAの部分拡大の模式図である。
【0246】
基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等により形成したSiOを積層したガラス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板、SiOを積層したSi基板等を用いることができる。特に、基板1を半導体基板とした場合には、電子放出素子の駆動用のドライバー等を同時に設置することもできる。
【0247】
下部電極2としては、陽極酸化可能であるAl,Ta,Nb,Ti,Zr,Hf,Si等の金属、半導体が用いられる。下部電極2の膜厚は、陽極酸化層の膜厚、下部電極としての電気抵抗等によって適宜設定される。尚、下部電極材料は、陽極酸化可能な金属のみならず、陽極酸化ができない金属と陽極酸化できる金属との積層形態でも良い。
【0248】
陽極酸化層3は、下部電極の一部を陽極酸化し、形成される。陽極酸化層3には、規則的、又は、不規則な細孔5が存在する。これを、本明細では、多孔質層と呼ぶ場合もある。規則的、不規則的な細孔5の形成は、下部電極2の材料に応じて、陽極酸化浴の組成、浴温、電圧、時間等の陽極酸化条件を選択することで得られる。好ましくは、規則的細孔が、選択される。細孔の径は、数十nmから数百nmであり、その深さは、数十nmから数千nmである。細孔の密度は、10 〜1012個/cm2である。尚、細孔の形状は、円に限らず、楕円、四角等でも本発明の電子放出素子においては、適用できる。種々の形状の場合は、フォーカスイオンビーム等を用いて形成することもできる。従って、本発明においては、細孔の径に対応して細孔の長さという表現を用いる場合もある。各細孔5には、下部電極2と電気的に接続された炭素6が、細孔の一部を埋めた支柱状に形成される。尚、電子の放出は、前記各細孔内の支柱の周縁部又は、前記支柱の上面の領域から行われ、支柱の形状及び陽極酸化層上の上部電極の形状から設定される。従って、前記細孔に対応して、各細孔より線状又は線状及び面状の電子放出が行われる。
【0249】
又、上部電極4側より、同様に炭素が形成されていても構わない。
【0250】
下部電極2上に形成された炭素と上部電極又は、上部電極との間、又は、上部電極4側から炭素が形成された場合には、この上部電極4側からの炭素と下部電極2上に形成された炭素の間には、間隙が形成されており、該間隙は、好ましくは、数nmから数十nmであり、後述の有機材料の存在下で行われる、該上部電極および下部電極に電圧を印加する工程の時間、印加する電圧等によって、適宜設定される。
【0251】
上部電極は、陽極酸化層上に形成され、好ましくは、Pt,W,Mo,Hf等高融点の材料が用いられる。
【0252】
上記本発明の電子放出素子の構造例を図26の模式的断面図を用いて説明する。図26おいて、7は微少間隙であり、図26と同じ部位には、同じ符号をつけた。図26には、(a)、(b)の2種類の構造を示したが、これに限るわけでなく、他の構造でも良い。又、以下において、上部電極及び下部電極として金属を用いて説明しているが、半導体でもよい。
【0253】
図26(a)の構造は、金属(下部電極)/金属酸化層/炭素電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4、のようになっている。又、図26(b)の構造は、金属(下部電極)/電子放出体6を有する細孔/真空/細孔上を除いて形成された金属(上部電極)4、のようになっている。
【0254】
図26(a)の構造における金属酸化層3は、下部電極を陽極酸化した際にえられるが、陽極酸化条件によって、この金属酸化層3に、細孔をもたない緻密な膜構造領域と細孔を有する膜構造領域の両構造領域を得ることができる。図26(a)の様に、下部電極2と細孔内の電子放出体6との間に、上記金属酸化層の緻密な膜構造領域が形成されていることは、金属/絶縁層/炭素の非線形素子を形成するため、電流制限の働きを付与することができ、本発明の電子放出素子を駆動した際、放電等での電流変動を防ぎ、電子放出素子の損傷を防ぐことができる。上記金属酸化層の具体的な製造方法は後述するが、例えばまず多孔質の金属酸化物形成条件で形成後、後述する細孔のワイドニング工程で、緻密な膜構造領域の厚みが調整される。
【0255】
図26(b)の構造は、細孔をもたない金属酸化層がなく、直接下部電極と細孔内の電子放出体(炭素)が電気的に接続された場合を示している。このような構造は、下部電極を陽極酸化した後、後述する細孔のワイドニング工程を十分に行い、更に、細孔内に電子放出体(炭素)を形成することで、下部電極と電子放出体が電気的に接続された状態となる場合もある。この際、後述する陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程において印加されるパルス電圧によって、下部電極と細孔を有する金属酸化層との間に存在する細孔を持たない金属酸化層が、電気的に破壊され、その結果、下部電極と電子放出体が電気的に接続された状態となる。以上、図26(b)の場合においても、電子放出体/真空間のトンネリングによる非線形特性を有する電子放出素子である。又、従来から良く知られた陽極酸化膜の発色法で、陽極酸化膜細孔中に金属を析出させる際に、交流で行うことで緻密な陽極酸化膜中に細孔内析出金属がマイグレーションし下部電極と電気的接続を行うこともできる。上記真空とは、電子放出素子を形成した基板の設置された真空雰囲気と同等のものである。
【0256】
又、以上述べた本発明の電子放出素子においては、前述した通り、特に耐熱性や、電子放出特性の安定、再現性の向上という点で、電子放出体を構成する炭素は、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドドライカーボンのうちひとつ以上であることが好ましい。
【0257】
次に、図26の構造例における本発明の電子放出素子の電子放出機構について説明する。
【0258】
前述した従来技術であげた表面伝導型電子放出素子においては、特開平09−082214号公報によれば、表面伝導型電子放出素子の亀裂部において、亀裂部の陽極側(高電位側ともいう)のある位置から一旦、陽極の外部の真空中に電子が放出される。又、一旦放出された電子は、陰極(低電位側)と陽極で作られる電場内を運動し、陽極側素子電極(又は陽極側の導電性膜)上を、電場の特異点(以降よどみ点と呼ぶ)よりも遠くに飛来した電子は電子放出素子と真空を挟んで対向して設置されたアノード板に印加した電圧による電界によって、アノード板に引き寄せられる。又、電場の特異点に到達しない電子は陽極に落下し、一部の電子はここで散乱されて向きを変えられ、再び真空中へ放出される。この散乱を繰り返して電場の特異点を越えた電子はアノード板に到達する。
【0259】
ここで、電子放出効率を大幅に上げるためには、上記の電子放出の機構において、一旦放出された電子の大部分が陽極に落下する事無く、アノード板に引き寄せられるような電場条件に設定すればよいことが判る。と記載されており、前記従来技術においては、電界補正電極を素子電極の外側に配設し、素子に電子放出を行うために印加する電圧に対して、充分な高電圧を印加することで、電子放出効率をあげることが可能であることが示されている。
【0260】
一方、本発明の電子放出素子においては、上部電極に高電位、下部電極に上部電極に比べ低電位が印加されると、上部電極4と電子放出体6間の微小間隙に、その電位差が印加され、電子放出体から真空中に電子が放出され、真空に放出された電子は、前記従来技術の亀裂に相当する微小間隙に大きな電界が印加されているために先に従来技術であげた表面伝導型電子放出素子と同様に、電子放出体6から放出した電子は、上部電極4に衝突散乱する。しかしながら、本発明の電子放出素子によれば、散乱を繰り返さずにも電場の特異点を越え、電子は、アノード板に到達すると推定される。
【0261】
そこで、本発明の電子放出素子の原理を図27を用いて説明する。図27は、本発明の電子放出素子の原理説明図である。図中、hは電子放出素子とアノード電極間の距離、dは、細孔の長さ、Vaは、アノード電極の電位である。
【0262】
ここで、電子放出体6の上部電極4側から放出した電子に注目して説明する。尚、電子は電子放出体6より細孔の周縁に沿って放出されるので、上部電極4に対向する上部電極からも放出される。微小間隙に印加された電界によって、電子放出体6から真空に放出した電子は、上部電極4に衝突してまず等方に散乱する。等方に散乱した電子は、非常に近い距離に存在する対向上部電極からの強い電界によって、前述したよどみ点が、従来の表面伝導型電子放出素子に比べ著しく縮小されている。繰り返し散乱が起こらず、主に、1回の散乱のみで、アノード板に電子が到達する。一方、上部電極4の膜厚が薄い場合も、繰り返し散乱が起こらず、主に、1回の散乱のみで、アノード板に電子が到達する。以上の様な理由で、電子放出効率が増加すると考えられる。他方、細孔の周縁状に形成された電子放出部を有する電子放出体6について、同様なことがいえるために、電子放出効率が増加すると考えられる。
【0263】
対向上部電極の電界の効果は、開口部の径が重要となり、微小間隙に電子放出のためには、電子放出体の仕事関数を4〜5.5eVとすると10V/cm以上であるので、前記従来技術で定義された電場の特異点であるよどみ点を従来技術の電子放出素子及び本発明に適用すると、34がない場合のよどみ点の距離Xsは、
Xs=h・Vf/(π・Va)
であらわされ、一方、34がある場合のよどみ点Xs′は、
Xs′=h・Vf/{π・Va+h・Vf/(π・d)}
で表されるために、開口部の径が小さければ小さい程、よどみ点が縮小する。特に、上部電極電圧が数十Vにおいても、よどみ点の縮小効果が期待されるために、開口部の径は、0.5μm以下が好ましく、更に、開口部の径が、0.2μm以下なら好ましい。又、上部電極の厚みは、繰り返し散乱を抑制するうえで、薄いことが好ましく、実施例からは、0.2μm以下が、効率の観点から好ましい。尚、上部電極の厚みで規定できる場合は、電子の放出に寄与する微小間隙が、上部電極の際にある場合であり、繰り返し散乱の抑制の観点から考えれば、微小間隙と上部電極の上面までの距離に対応する。
【0264】
又、駆動電圧は、微小間隙であるので、低駆動電圧であり、又、電子を引き出す電圧方向が、アノード板と一致しているために、比較的、等方散乱したにもかかわらず、電子ビームの広がりは抑制される。
【0265】
上述の電子放出素子の製造方法としては様々な方法があるが、第1製造方法を図28の製造工程図を参照して説明する。
【0266】
(工程1)基板上に、金属又は半導体の下部電極を形成工程
基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により下部電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極2を形成する。尚、下部電極を電析により形成しても良い。
【0267】
(工程2)下部電極を陽極酸化する工程
陽極酸化装置の概念図は既に図15を参照して説明してある。電極3は、Pt等の金属を用いられる。下部電極の陽極酸化は、電極5を、陰極、下部電極等を形成した基板1を陽極にして、電源55より通電を行うことでなされる。陽極酸化層の幾何学構造は、作成条件で制御できる。細孔間の間隔は陽極酸化電圧、細孔の深さは陽極酸化時間、孔径は電解液組成、電圧、電流等の条件で制御できる。又、規則的細孔、不規則細孔の制御もこれらの条件の制御でおこなう。
【0268】
次に、陽極酸化層を形成した基板を、陽極酸化電解液等に浸漬し、細孔の径及び緻密な酸化膜の厚みが調整される。(尚、この工程をワイドニング工程と呼ぶ。)十分に水洗した後、真空中で乾燥を行う。
【0269】
(工程3)該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程
上部電極を200nm以下の膜厚で、下部電極と同様にして、形成する。
【0270】
(工程4)陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程(気体状有機材料存在下)
本工程は、気体状の有機材料の存在下で、該上部電極および下部電極に電圧を印加する。よって、前記陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程である。本工程で形成される炭素とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含する、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)である。本工程で用いる真空処理装置は既に図6を参照して説明した。
【0271】
特に、電子放出体である炭素を下部電極より堆積し、上部電極と一定の間隙を形成する場合は、上部電極を低電位、下部電極を高電位として、電圧を印加することで形成できる。又、更に、上記上部電極を低電位、下部電極を高電位として、電圧を印加した後、上部電極を高電位、下部電極を低電位として、電圧印加することで、電子放出体である炭素を下部電極より堆積し、一定の間隙を形成した後、上部電極に炭素が堆積されるので、上部電極より一定の間隙で形成される。尚、前記間隙の位置は、前述した様に、電子放出特性に影響を与えるために、この下部電極から堆積させ、上部電極より一定の間隙を形成するのが好ましい。
【0272】
上記炭素を形成する際の好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどC2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどC2n等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。又、有機ガスは、陽極酸化層に形成された細孔の径に応じても、選択される。すなわち、有機ガスの吸着は、細孔の径にも、依存するからである。
【0273】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素が陽極酸化層内の細孔に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。
【0274】
本工程の終了判定は、素子電流If、放出電流Ieのいずれか一方又はその双方を測定しながら行う。
【0275】
尚、図26に示される、細孔上の、上部電極4の開口部は、本工程における上述の電圧パルスの印加初期においても形成される。
【0276】
(工程5)安定化工程
こうして作成した電子放出素子の特性の安定化を行う工程である。本工程は、上記工程で陽極酸化層の細孔内の炭素において、有機材料の中間生成物および基板等に吸着された有機ガス、水、酸素等を除去することで、素子電流、放出電流が、素子への印加電圧に対して、あるしきい値以上では、単調増加する特性を付与することができる。本工程は、真空容器内の有機物質排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。
【0277】
真空排気装置内の有機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で1×10−8Torr以下が好ましく、さらには1×10−10Torr以下が特に好ましい。さらに真空装置内を排気するときには、真空装置全体を加熱して、真空装置内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、150〜300℃で数時間以上が望ましいが、特にこの条件に限るものではない。
【0278】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することができる。
【0279】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
【0280】
次に、液体中で炭素又は、ダイアモンドライクカーボンを形成する場合の第2製造方法を説明する。素子の構造としては、図26(a),(b)を作成する場合について、説明する。
【0281】
(工程1)基板上に、金属又は半導体の下部電極を形成工程
第1製造方法の工程1で述べた方法と同様に行う。
【0282】
(工程2)下部電極を陽極酸化する工程
第1造方法の工程1で述べた方法と同様上記方法であるが、陽極酸化、ワイドニング後、陽極酸化した基板を水洗し、(工程3)の電解漕に供する。
【0283】
(工程3)陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程(液体状有機材料存在下)
本工程は、液体状の有機材料の存在下で、図15の電極53及び下部電極に電圧を印加することによって、前記陽極酸化層の細孔内に電子放出体を形成する工程である。
【0284】
図15と同様の装置で、電解液をアルコールにして、下部電極側を陰極として、陽極間で電解し、ダイアモンドライクカーボンを陽極酸化した細孔中に下部電極側から析出することができる。
【0285】
ダイアモンドライクカーボンは、電解時間にともない、細孔内に柱状に成長堆積する。
【0286】
(工程4)陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程
上部電極を20nm以下の膜厚で、下部電極と同様にして、形成する。
【0287】
(工程5)安定化工程
第1製造方法の工程5で述べた安定化工程と同様に行う。
【0288】
[第4実施形態の実施例1]
図7と同様の構造のの電子放出素子を作成した。以下、本実施例の製造工程を具体的に説明する。
【0289】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
青板ガラスにSiOを1μm堆積した基板1を洗剤、純水及び有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、スパッタ法によりAl下部電極材料を500nm厚みで堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極配線71をストライプ状に形成した。又、下部引き出し配線81の一部を端子とするため、公知の鍍金用マスク樹脂で覆った。
【0290】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
陽極酸化は、図15の装置を用いて、(工程1)で作成したAl製の下部電極の一部を陽極酸化した。
【0291】
陽極酸化電解液52は、シュウ酸30g/lの水溶液である。電極53は、Pt電極を用いた。陽極酸化は、電極53を、陰極、基板1に設けられた下部配線81を陽極にして、電源55より定電圧で40V、5℃で5分間行った。陽極酸化膜の厚みはこの際、初期の電流密度は、300mA/cmであったが、陽極酸化の進行にともない減少し、その後、一旦増加し飽和した。次に、陽極酸化層を形成した基板を、燐酸水溶液中に30分間、浸漬し、緻密な陽極酸化層を除去した後、十分に水洗した。
【0292】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状金属を形成する工程)
細孔内への柱状金属の形成は、図16の装置を用いて行った。本工程では、対向電極91にPt電極、金属を含む電解析出溶液94に5%NiSO、4%HBOを用いて、1mA/cmの電流密度で定電流でNiを電析した。柱状Niの電析量は、時間で制御し、各細孔内に柱状Niを形成した。電析時間は、100秒とした。
【0293】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極72を10nmの膜厚で、下部電極と同様にして、形成した。
【0294】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下))
測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−1Paアセトンのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極及び下部電極に電圧を印加する。工程3において、5素子のうち3素子は、電圧波形は、図6(a)のパルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を15分間、下部電極側を高電位にし、印加した。その後、上部電極を高電位側にし、5分間電圧を印加した。又、同時に素子の電流をモニターした。電圧は、17Vとした。5素子のうちの残りの2素子については、図6(b)のパルス波形で同様に、電圧17Vで20分間印加した。
【0295】
(工程6:安定化工程)
次に、アセトンガスを十分に排気した後、300℃で加熱しながら、2時間排気した。
【0296】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。次に、測定後、こうして形成したサンプルを電子顕微鏡、TEM等で観察した。
【0297】
各素子とも、素子電流、放出電流とも、しきい値以上では、単調増加特性を示す。しきい値(Vthと呼ぶ)以下では、無視できる電流であった。放出電流の値は、図6(a)のパルスを印加した素子が、図6(b)のパルスを印加した素子は同等であり、従って、放出効率も同等であった。
【0298】
電子顕微鏡で、観察すると、陽極酸化層において、いずれも規則的な細孔が観察されていた。細孔密度は、1×10個/cmであった。
【0299】
更に、断面サンプルを作成し細孔内を観察すると、図29に示すものであった。図29において、図26と同一の符号は、同様のものを示す。図29(a)は、工程5において、図6(a)のパルスを印加し、炭素を形成したものであり、図29(b)は、図6(b)のパルスを印加し炭素を形成したものである。111は柱状金属Niであり、112は細孔内の柱状に形成された炭素であり、113は上部電極側に形成された炭素であり、114は微小間隙である。
【0300】
図29(a)に示される様に、図6(a)のパルスを印加し炭素を形成した場合は、Alの下部電極2よりNi金属が、細孔内を柱状に110nm成長し、更に、柱状のNiの上面で細孔の中には、柱状にアモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極4側にも同様に、アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極4側と下部電極2側の炭素間には、微小な間隙が形成されており、又、上部電極の際に、間隙は形成されており、数nmの間隙であった。尚、陽極酸化膜の厚さは、150nmであった。
【0301】
一方、図29(b)に示される様に、図6(b)のパルスを印加し炭素を形成した場合は、Alの下部電極2にNi金属が、細孔内を柱状に成長し、更に、柱状のNiの上面で細孔の中に、柱状アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極4側にも同様に、アモルファスカーボンが形成されていた。又、上部電極の下面より20nmの位置まで炭素が形成されており、炭素間には、微小な間隙が形成されており、数nmの間隙であった。
【0302】
以上の結果をまとめると、第1に、金属を陽極酸化し、細孔内に柱状の金属を形成した上面で、前記細孔の内に、柱状炭素が形成される。第2に、上部電極側、下部電極側の炭素間には、数nmの微小な間隙が形成される。第3に、上部電極の下面より、20nmの範囲での位置での微小な間隙が、配設された場合は、放出電流、電子放出効率とも同等であることが示された。上部電極側の厚みを含めても、両例とも、間隙より、上部電極の上面までの距離が30nm以下であるために、下部電極側より放出された電子が、細孔内でロスする確率が小さいことによると推定される。第4に、安定化工程によって、電圧負性抵抗特性、すなわち、VCNR特性が発生せず、素子電流、放出電流とも、単調増加特性を示す。
【0303】
[第4実施形態の実施例2]
本実施例では、第4実施形態の実施例1と同様の素子配置の基板を構成した。上部電極の厚みを種々形成しその影響を検討した。実施例1と工程1より工程3、工程6は同様に行った。工程1より工程3、工程6の説明は省略し、工程4,5についてのみ詳細に説明する。
【0304】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
【0305】
(工程2:下部電極を陽極酸化する工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
【0306】
(工程3:陽極酸化層の細孔内に柱状態金属を形成する工程)
実施例1の工程3と同様に行った。
【0307】
(工程4:該陽極酸化した金属又は、半導体の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極72を5,10,100,500nmの4種類の膜厚で、下部電極と同様にして、4基板を形成した。
【0308】
(工程5:陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下))
測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−2Paアセトンのガスを含有する雰囲気下で、該上部電極及び下部電極に電圧を印加する。5素子のうち3素子は、電圧波形は、図6(a)のパルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を15分間、下部電極側を高電位にし、印加した。その後、上部電極を高電位側にし、5分間電圧を印加した。又、同時に素子の電流をモニターした。電圧は、17Vとした。
【0309】
(工程6:安定化工程)
実施例1の工程2と同様に行った。
【0310】
次に基板を図5の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。又、電子ビームをアノードに設置した蛍光体の発光により観察した。
【0311】
図30に、上部電極厚と放出電流の関係を示す。図30に示される様に、電子放出効率は、約200nmまで減少が少なく、200nmを越えると上部電極の厚みの増加に伴い減少した。尚、電子放出効率とは、放出電流と素子電流比である。又、ビームサイズも減少した。
【0312】
尚、上部電極の形態の観察をすると特に上部電極の厚みを厚くしたものは、細孔の径に比べ大きい膜厚の場合、細孔内部にも、一部被覆していた。又、断面TEMによって、微小間隙を観察すると、いずれも、実施例1と同様に、上部電極の下面際に形成されていた。
【0313】
以上の結果をまとめると、第1に、上部電極の厚みによらず、上部電極の際に微小な間隙が、形成された。第2に、上部電極の厚みに依存して、放出電流、電子放出効率が低下する。下部電極側より放出された電子が、細孔状の上部電極でロスする確率が高いことによると推定される。
【0314】
[第4実施形態の実施例3]
本実施例では、第4実施形態の実施例1と同様の素子配置の基板を構成した。本実施例では、実施例1のアルミニウムの陽極酸化膜にかわり、絶縁層として、SiOを用いた。以下、本実施例の製造工程を具体的に説明する。
【0315】
(工程1:基板上に、金属の下部電極を形成工程)
青板ガラスにSiOを1μm堆積した基板1を洗剤、純水及び有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、スパッタ法によりPtを下部電極材料として、500nmの厚みで堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に下部電極配線71をストライプ状に形成した。
【0316】
(工程2:絶縁層を形成する工程)
次に、SiOをスパッタ法により、50nm積層した。
【0317】
(工程3:該絶縁層の上に、上部電極を形成する工程)
上部電極72をPt10nmの膜厚で、下部電極と同様にして、形成した。
【0318】
(工程4:絶縁層に細孔を形成する工程)
上述の下部電極/SiO/上部電極の積層構造に、フォーカスイオンビーム法を用いて、(細孔の径50nm,ピッチ100nm)(細孔の径200nm,ピッチ400nm)、(細孔の径500nm,ピッチ1000nm)、(細孔の径1000nm,ピッチ2000nm)の4種類を形成した。尚、ここで、ピッチとは、隣接する細孔の中心間の距離である。
【0319】
(工程5:絶縁層の細孔内に炭素を形成する工程(気体状有機材料存在下))測定装置をかねる真空チャンバーに基板1を設置し、10−2Paのアセトンガスを含有する雰囲気下で、該上部電極及び下部電極に電圧を印加する。電圧波形は、図6(a)のパルス波形で、パルス幅T1を1ms、パルス間隔T2を10msの矩形波を15分間、下部電極側を高電位にし、5分間印加した。
【0320】
(工程6:安定化工程)
次に、アセトンガスを十分に排気した後、300℃で加熱しながら、2時間排気した。
【0321】
次に基板を図6の真空処理装置に設置し、各素子の下部電極、上部電極、及びアノード電極に電圧を印加して、電流(素子電流、放出電流)、素子電圧特性を測定した。
【0322】
電子放出効率は、図32に示される様に、細孔の径に依存しており、細孔の径が小さい程、電子放出効率が増加した。
【0323】
[第4実施形態の実施例4]
本実施例は、第4実施形態の実施例1と同様の方法で作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、既に説明した図9の撮像装置に用いた例である。本実施例の撮像装置の製造方法は、第1実施形態と同様である。こうして作成した撮像装置を先に説明した動作原理にもとづき動作させたところ電子放出素子の大きさに1:1に対応した信号電流が得られ動作が確認された。
【0324】
[第4実施形態の実施例5]
本実施例は、第4実施形態の実施例1と同様の方法により作成した複数の電子放出素子を2次元状に基板に配置し、既に説明した図10の表示装置を構成した例である。本実施例の表示装置の製造方法は、第1実施形態と同様である。こうして作成した表示装置を先に説明した動作原理にもとづき動作させたところ、高精細で明るい画像が表示された。
【0325】
【発明の効果】
以上説明した第1実施形態の本発明によれば、下部電極上に、陽極酸化などにより形成された細孔を有する絶縁層を有し、更に、該細孔内には、少なくとも、炭素が形成され、該炭素と上部電極間に、間隙を有するので、上部電極が高電位になるように、下部電極、上部電極間に電圧を印加すると、下部電極から注入された電子は、真空中にトンネリングし、電子が放出される。又、下部電極より形成された炭素と上部電極との間隙の距離は、略一定の間隙を有するため、従来のMIM型電子放出素子の様に、絶縁層の厚みに、駆動電圧が依存したりすることなく、ばらつきが少ない電子放出素子特性が、得られる。又、下部電極側から成長した電子放出体が、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボンのいずれか一つ以上からなることは、耐熱性に優れ、安定な電子放出特性が、再現性良く作成される。又、細孔は、高密度で更に規則的に形成できるために、大きな放出電流で効率の良い電子放出素子が得られる。又、本発明の電子放出素子によれば、電子ビームの広がりは低減され、電子放出素子の形成領域と同等の電子ビームが形成される。又、本発明の電子放出素子を複数配置した電子源によれば、上記理由より、ばらつきが少なく安定な電子源が、提供される。又、該複数配置された電子放出素子は、上部電極と電気的に接続された上部配線と下部電極と電気的に接続された下部配線の交点部に配設され、かつ、該上部配線と該下部配線は、略直交する様に形成した電子源によれば、上部配線と下部配線に印加する電圧によって、複数の電子放出素子より、特定の電子放出素子を選択し、変調できる。又、上記電子源と、該電子源と対向して設けられた光導電性部材を構成することで、ばらつきが少なく、高解像度で均一性に優れた撮像素子が提供できる。又、上記本発明の電子源と、該電子源と対向して設けられた画像形成部材を構成することで、ばらつきが少なく、高精細で均一性に優れた表示装置を提供できる。
【0326】
又、第2実施形態の本発明によれば、基板上に、下部電極、細孔を有する絶縁層、上部電極の順に積層され、前記絶縁層に細孔を有し、前記細孔中に、電子放出部を有する電子放出素子において、前記電子放出部が前記下部電極と上部電極間の微小間隙よりなり、かつ前記微小間隙が、前記細孔内壁に沿って形成された導電性体と上部電極によるものであることを特徴とする電子放出素子であるので、上部電極が高電位になるように、下部電極、上部電極間に電圧を印加すると、下部電極から電子は、上部電極間の間隙を、真空中にトンネリングし、細孔内壁に沿って形成された導電性体の電位の影響を受け、効率良く、電子が放出される。又、更に、微小間隙から上部電極の上面までの距離が200nm以下であるので、上部電極に衝突散乱した電子は、くりかえし散乱を起こさないために、電子放出効率が向上する。又、前記細孔の長さが、500nm以下であるので、低電圧の上部電極の電位においても、電場の特異点を縮小し、電子放出効率が向上する。又、下部電極上に細孔内壁に沿って形成された導電性体と上部電極との間隙の距離は、形成された炭素材料と印加した電圧によって、決定され、略一定の間隙を有するため、従来のMIM型電子放出素子の様に、絶縁層の厚みに、駆動電圧が依存したりすることなく、ばらつきが少ない電子放出素子特性が、得られる。又、下部電極側から成長した導電性体の電子放出体は、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボンのいずれかひとつ以上であることは、耐熱性に優れ、安定な電子放出特性が、再現性良く作成される。又、導電性体は、予め細孔内に支柱状金属等の導電性体を形成し、更に、支柱状金属上に、細孔内壁に沿って形成された周縁状炭素を積層したもので構成しても良い。この場合は、前記絶縁層が厚くても良いために、上部電極、下部電極間の絶縁層の容量低下がなされ、電子放出素子の駆動上有利である。又、細孔は、高密度で更に規則的に形成できるために、大きな放出電流で効率の良い電子放出素子がえられる。又、細孔中に形成された導電性の電子放出体からの電子放出は、周縁状の線状の電子放出体から主に行われるために、電子放出領域が、従来の電界放出素子がコーン先端の微小領域であるのに対して、大幅に増加できる。又、従来の表面伝導型電子放出素子が、1次元の線状であるのに対して、電子放出領域が、2次元に形成できるために、大幅に増加できる。従って、放出電流密度(放出電流と電子放出面積の比)が低減されるために、電子放出素子の特性劣化が抑制することができる。
【0327】
又、従来の電界放出素子と比べて、電子ビームの広がりは低減され、条件によっては、電子放出素子の形成領域と同等の電子ビームが形成される。又、本発明の電子放出素子を複数配置した電子源によれば、上記理由より、ばらつきが少なく安定な電子源が、提供される。又、該複数配置された電子放出素子は、上部電極と電気的に接続された上部配線と下部電極と電気的に接続された下部配線の交点部に配設され、又は、交点部毎に、交点近傍に、配設され、かつ、該上部配線と該下部配線は、略直交する様に形成した電子源によれば、上部配線と下部配線に印加する電圧によって、複数の電子放出素子より、特定の電子放出素子を選択し、変調できる。又、電子放出素子を上部配線と下部配線の交点部でなく、交点部の近傍に形成した場合、配線及び素子の設計に対する自由度が増加する。すなわち、必要な放出電子量に適合して、素子のサイズが選択できる。又、配線の交点での容量を低減するためにも、素子の必要電子放出量から設計される素子サイズから分離されるために、設計自由度が増加する。上記電子源と、該電子源と対向して設けられた光導電性部材を構成することで、ばらつきが少なく、高解像度で均一性に優れた撮像素子が提供できる。上記本発明の電子源と、該電子源と対向して設けられた画像形成部材を構成することで、ばらつきが少なく、高精細で均一性に優れた画像形成装置を提供できる。
【0328】
又、第3実施形態の本発明によれば、基板上に、下部電極、細孔を有する絶縁層、上部電極の順に積層され前記絶縁層に細孔を有し、前記細孔中に、電子放出体を有する電子放出素子において、前記上部電極の厚みt、前記細孔の長さL、前記上部電極の電子透過のミーンフリーパスλとしたとき、 0.5×L<=t<2λ を満足することを特徴とする電子放出素子であるので、上部電極が高電位になるように、下部電極、上部電極間に電圧を印加すると、下部電極から注入された電子は、電子放出体より、真空中にトンネリングし、更に、上部電極を透過し、アノード電極に向かう。上部電極厚が、細孔の長さlに対して、0.51以上であるので、上部電極は、細孔の開口部を覆うことができる。又、上部電極厚が、上部電極の電子透過のミーンフリーパスλの2λ以下であるので、放出電子は上部電極を効率良く透過し、アノード電極に到達することができる。又、電子放出体と上部電極間は、誘電率の小さい真空であるので、絶縁層を配設するMIMに比べ、絶縁層による電子散乱がないために、放出電子のロスが低減され、又、電気容量が大幅に低下するために、消費電力等電子放出素子の駆動上有利である。前記上部電極の電子透過部分が、電子透過のミーンフリーパスが大きく、電子透過性に優れるグラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボンのいずれかひとつ以上を有する炭素材料であるので、放出電子は上部電極を効率良く透過し、アノード電極に到達することができる。又、炭素は、耐熱性が高い材料であるので、電子放出素子の駆動中の劣化が少なく、安定性が向上する。又、炭素材料は、共有結合であるので、金属電極と比べ、細孔上を覆う上部電極の形状を実現しやすい。又、前記電子放出体を、前記下部電極上に積層された針状電極、前記下部電極上に積層された微粒子とした本発明の電子放出素子は、局部電界が大きく、かつ、細孔であるので、駆動電圧が低下され、消費電力が低下する。又、前記電子放出体が、前記細孔内壁に沿って形成された周縁状導電性体又は、前記細孔内に形成された柱状態導電性体からなり、前記電子放出体と上部電極間の微小間隙を有する本発明の電子放出素子は、微小間隙であるので、駆動電圧が低く、又、真空であるので、容量が低下する。更に、前記電子放出体と下部電極間に支柱状の導電性体を配設すると、前記絶縁層厚が、電子放出電界と分離できるために、絶縁層の厚みが大きくとれるために、上部電極と下部電極間の容量が低下し、駆動上有利である。又、細孔は、高密度で更に規則的に形成できるために、大きな放出電流で効率の良い電子放出素子がえられる。実駆動においては、低放出電流密度(放出電流と電子放出面積の比)で駆動されるために、電子放出素子の特性劣化が抑制することができる。又、本発明の電子放出素子によれば、細孔上の上部電極に開口部を有する従来の電界放出素子と比べて、細孔上にも上部電極を有するために、電子ビームの広がりは低減され、MIM素子と同様の電子ビームが形成される。又、本発明の電子放出素子を複数配置した電子源によれば、上記理由より、高い精細度で安定な電子源が、提供される。又、該複数配置された電子放出素子は、上部電極と電気的に接続された上部配線と下部電極と電気的に接続された下部配線の交点部に配設され、又は、交点部毎に、交点近傍に、配設され、かつ、該上部配線と該下部配線は、略直交する様に形成した電子源によれば、上部配線と下部配線に印加する電圧によって、複数の電子放出素子より、特定の電子放出素子を選択し、変調できる。又、電子放出素子を上部配線と下部配線の交点部でなく、交点部の近傍に形成した場合、配線及び素子の設計に対する自由度が増加する。すなわち、必要な放出電子量に適合して、素子のサイズが選択できる。又、配線の交点での容量を低減するためにも、素子の必要電子放出量から設計される素子サイズから分離されるために、設計自由度が増加する。上記電子源と、該電子源と対向して設けられた光導電性部材を構成することで、ばらつきが少なく、高解像度で均一性に優れた撮像装置が提供できる。
【0329】
上記本発明の電子源と、該電子源と対向して設けられた画像形成部材を構成することで、ばらつきが少なく、高精細で均一性に優れた画像形成装置を提供できる。
【0330】
又、第4実施形態の本発明によれば、基板上に、下部電極、細孔を有する絶縁層、上部電極の順に積層され、前記絶縁層に細孔を有し、前記細孔中に、電子放出部を有する電子放出素子において、前記電子放出部が前記下部電極と上部電極間の微小間隙よりなり、かつ微小間隙から上部電極の上面までの距離が200nm以下であるので、上部電極が高電位になるように、下部電極、上部電極間に電圧を印加すると、下部電極から注入された電子は、上部電極間の間隙を、真空中にトンネリングし、電子が放出され、更に、上部電極に衝突散乱した電子は、くりかえし散乱を起こさないために、電子放出効率が向上する。又、前記細孔の長さが、500nm以下であるので、低電圧の上部電極の電位においても、電場の特異点を縮小し、電子放出効率が向上する。又、下部電極上に形成された導電性体と上部電極との間隙の距離は、形成された炭素材料と印加した電圧によって、決定され、略一定の間隙を有するため、従来のMIM型電子放出素子の様に、絶縁層の厚みに、駆動電圧が依存したりすることなく、ばらつきが少ない電子放出素子特性が得られる。又、下部電極から成長した支柱状の導電性体の電子放出体は、グラファイト、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボンのいずれかひとつ以上であることは、耐熱性に優れ、安定な電子放出特性が、再現性良く作成される。又、導電性体は、予め細孔内に金属を形成し、更に、炭素を形成した支柱状金属と炭素を積層したもので構成しても良い。この場合は、絶縁層が厚くても良いために、上部電極、下部電極間の絶縁層の容量低下がなされ、電子放出素子の駆動上有利である。又、細孔は、高密度で更に規則的に形成できるために、大きな放出電流で効率の良い電子放出素子が得られる。又、細孔中に形成された電子放出体からの電子放出は、柱状の電子放出体の周縁から主に行われるために、電子放出領域が、従来の電界放出素子がコーン先端の微小領域であるのに対して、大幅に増加できる。又、従来の表面伝導型電子放出素子が、電子放出領域が、2次元に形成できるために、大幅に増加できる。従って、放出電流密度(放出電流と電子放出面積の比)が低減されるために、電子放出素子の特性劣化が抑制することができる。又、本発明の電子放出素子によれば、従来の電界放出素子と比べて、電子ビームの広がりは低減される。又、本発明の電子放出素子を複数配置した電子源によれば、上記理由より、ばらつきが少なく安定な電子源が提供される。又、該複数配置された電子放出素子は、上部電極と電気的に接続された上部配線と下部電極と電気的に接続された下部配線の交点部に配設され、又は、交点部毎に、交点近傍に、配設され、かつ、該上部配線と該下部配線は、略直交する様に形成した電子源によれば、上部配線と下部配線に印加する電圧によって、複数の電子放出素子より、特定の電子放出素子を選択し、変調できる。又、電子放出素子を上部配線と下部配線の交点部でなく、交点部の近傍に形成した場合、配線及び素子の設計に対する自由度が増加する。すなわち、必要な放出電子量に適合して、素子のサイズが選択できる。又、配線の交点での容量を低減するためにも、素子の必要電子放出量から設計される素子サイズから分離されるために、設計自由度が増加する。上記電子源と、該電子源と対向して設けられた光導電性部材を構成することで、ばらつきが少なく、高解像度で均一性に優れた撮像装置が提供できる。上記本発明の電子源と、該電子源と対向して設けられた画像形成部材を構成することで、ばらつきが少なく、高精細で均一性に優れた画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の電子放出素子の断面図及び斜視図
【図2】第1実施形態の電子放出素子の構造を説明するための断面図
【図3】第1実施形態の電子放出素子の製造行程のフローチャート
【図4】電子放出素子の製造に用いる陽極酸化装置の断面図
【図5】電子放出素子の製造に用いる真空処理装置の断面図
【図6】陽極酸化層の細孔内に炭素を形成する工程で印加する電圧パルスの波形図
【図7】第1実施形態の実施例1の電子放出素子の平面図及び断面図
【図8】第1実施形態の実施例1の電子放出素子の特性を表わすグラフ
【図9】第1実施形態の実施例3の撮像装置の断面図及び平面図
【図10】第1実施形態の実施例4の表示装置の断面図及び平面図
【図11】本発明の第2実施形態の電子放出素子の断面図及び斜視図
【図12】第2実施形態の電子放出素子の構造を説明するための断面図
【図13】第2実施形態の電子放出素子の動作原理を説明するための断面図
【図14】第2実施形態の電子放出素子の製造行程のフローチャート
【図15】電子放出素子の製造に用いる他の陽極酸化装置の断面図
【図16】電子放出素子の製造に用いる柱状金属形成装置の断面図
【図17】第2実施形態の電子放出素子の断面形状を説明するための断面図
【図18】第2実施形態の電子放出素子の電子放出効率と上部電極圧の関係を示すグラフ
【図19】第2実施形態の電子放出素子の電子放出効率と開口部径の関係を示すグラフ
【図20】本発明の第3実施形態の電子放出素子の断面図及び斜視図
【図21】第3実施形態の電子放出素子の構造を説明するための断面図
【図22】第3実施形態の電子放出素子の他の構造を説明するための断面図
【図23】第3実施形態の電子放出素子の製造行程のフローチャート
【図24】第3実施形態の電子放出電流と上部電極圧の関係を示すグラフ
【図25】本発明の第4実施形態の電子放出素子の断面図及び斜視図
【図26】第4実施形態の電子放出素子の構造を説明するための断面図
【図27】第4実施形態の電子放出素子の動作原理を説明するための断面図
【図28】第4実施形態の電子放出素子の製造行程のフローチャート
【図29】第4実施形態の電子放出素子の形状を説明するための断面図
【図30】第4実施形態の電子放出素子の電子放出効率と上部電極圧の関係を示すグラフ
【図31】第4実施形態の電子放出素子の電子放出効率と開口部径の関係を示すグラフ
【図32】従来のFE型電子放出素子の断面図
【図33】従来の他のFE型電子放出素子の断面図
【図34】従来のMIM型電子放出素子の断面図
【図35】従来の表面伝導型電子放出素子の平面図及び断面図
【符号の説明】
1 基板
2 下部電極
3 陽極酸化層
4 上部電極
5 細孔
6 細孔内壁に沿って形成された周縁状炭素
7 柱状導電性体
8 微小間隙
51 陽極酸化槽
52 陽極酸化電解液
53 電極
54 電源
55 陽極酸化電解液52の温度調節を行うための温調機
56 温調機を循環する水用の容器
57 温調用の循環水
60 素子への印加電源
61 下部電極・上部電極関の素子電流Ifを測定するための電流計
62 放出電流Ieを測定するための電流計
63 高圧電源
64 放出電源Ieを捕捉するためのアノード電極
65 真空容器
66 排気ポンプ
67 有機ガスの供給源
81 下部電極の引き出し配線
82 上部電極の引き出し配線
83 本発明の電子放出素子
91 金属電解析出用の対向電極
92 金属電解析出液用の容器
93 電解析出用の電源
94 金属を含む電解析出溶液
111 上部電極側に形成炭素
141 電子放出素子基板
142 下部電極(配線)
143 陽極酸化層
144 上部電極(配線)
145 光導電部材
146 透明電極
147 光導電部材基板
148 素子電圧印加電源
149 光導電ターゲット印加電源
150 リアプレート
151 電子放出素子基板
152 下部電極(配線)
153 陽極酸化層
154 上部電極(配線)
155 メタルバック
156 蛍光体
157 フェイスプレート
158 素子電圧印加電源
159 アノード用の高圧電源
207 微少間隙

Claims (11)

  1. 基板上に配置された下部電極と、該下部電極上に配置された細孔を有する絶縁層と、該絶縁層上に配置された上部電極とを備える電子放出素子であって、
    前記細孔中に、導電性の炭素堆積物を備えており、前記下部電極と前記炭素堆積物との間に絶縁体が配置されていることを特徴とする電子放出素子。
  2. 前記炭素堆積物と前記上部電極との間に間隙が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
  3. 基板上に配置された下部電極と、該下部電極上に配置された細孔を有する絶縁層と、該絶縁層上に配置された上部電極とを備える電子放出素子であって、
    前記細孔中に、導電性の炭素堆積物を備えており、前記炭素堆積物は、前記上部電極と電気的に接続されていることを特徴とする電子放出素子。
  4. 前記電子放出素子はさらに前記下部電極に接続された炭素堆積物を備えており、
    前記下部電極に接続された前記炭素堆積物と、前記上部電極に接続された前記炭素堆積物との間に間隙が設けられていることを特徴とする請求項3記載の電子放出素子。
  5. 前記下部電極に接続された前記炭素堆積物は、前記細孔の内壁に沿って周縁状に配置されてなることを特徴とする請求項4記載の電子放出素子。
  6. 記間隙から前記上部電極の上面までの距離が200nm以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の電子放出素子。
  7. 前記細孔の長さが、500nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子放出素子。
  8. 記間隙が、20nm以下であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の電子放出素子。
  9. 前記炭素堆積物は、グラファイト又はダイアモンドライクカーボンであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載された電子放出素子。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一つに記載された電子放出素子を複数配置したことを特徴とする電子源。
  11. 請求項10に記載された電子源と、前記電子源と対向して設けられた画像形成部材を有することを特徴とする表示装置。
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