JP2954216B2 - 高強度部品用鋼 - Google Patents
高強度部品用鋼Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【発明の目的】
(産業上の利用分野)
本発明は、高強度であってしかも耐遅れ破壊性に優れ
た高強度部品、例えばチェーンピン,ロックピン,スタ
ッドボルト,六角ボルトなどの高強度部品を製造する際
にその素材として利用される高強度部品用鋼に関するも
のである。 (従来の技術) 近年、橋梁,建築物および機械構造物等の大型化に伴
って高強度ボルトが多量に使用されるようになってきて
いる。また、自動車の軽量化の要求に伴って各種部品の
高強度化および小型化がはかられるようになってきてい
る。 そして、特に強度が120Kgf/mm2を超える高強度部品に
おいては、耐遅れ破壊性が著しく劣化することが知られ
ており、安定した耐遅れ破壊性を有していることが必須
条件である。 遅れ破壊は、主として湿潤環境で使用された場合にお
いて、水素の侵入・拡散によって生ずる水素脆化現象で
あり、静的負荷を受けた部材が突然に脆性的に破壊する
現象である。そして、引張強度が120〜140Kgf/mm2であ
るような焼もどしマルテンサイト鋼においては、旧オー
ステナイト粒界に沿ってクラックが発生しそれが伝播す
ることが知られている。これは、粒界がP,S等の不純物
偏析あるいは炭化物の析出によって脆化し、さらに使用
環境中より侵入する水素に起因する脆化が重なって発生
する現象であるとされている。 (発明が解決しようとする問題点) このように、高強度部品において、強度が120Kgf/mm2
を超えると、耐遅れ破壊性が著しく劣化するという問題
点があった。 (発明の目的) 本発明は、このような問題点にかんがみてなされたも
ので、強度クラス12.9(強度120〜140Kgf/mm2級)ない
し14.9(強度140〜160Kgf/mm2級)の高強度であってし
かも耐遅れ破壊性に優れた高強度部品、例えばチェーン
ピン,ロックピン,スタッドボルト,六角ボルトなどを
得ることが可能である高強度部品用鋼を提供することを
目的としている。 【発明の構成】 (問題点を解決するための手段) 本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた高強度部品用鋼
は、重量%で、C:0.26超過〜0.35%、Si:0.15%未満、M
n:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:0.5
0〜2.00%、Mo:0.70超過〜2.00%、V:0.05〜1.50%、A
l:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03%、O:0.0015%以下、
および必要に応じて、Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Z
r:0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以上、
残部Feおよび不純物からなることを特徴としているもの
であり、低C含有量の2次硬化型とし、所定の強度が得
られる焼もどし温度を600℃以上として耐遅れ破壊性の
向上が実現できるようにしたことを特徴としているもの
である。 そして、本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた高強度部
品用鋼を素材として高強度部品を製造するに際しては、
上記鋼素材を熱間,温間あるいは冷間加工によって所望
部品の粗形状に成形した後焼入れを施し、転造や圧造な
どの冷間塑性加工を行って所望の部品形状に加工した後
に焼もどしを施すようになすことができ、通常の例えば
転造→焼入れ→焼もどしの工程に代えて、焼入れ→転造
→焼もどしの工程を採用することによって、転造後に当
該転造部分を加工硬化させると共に残留応力を付与し、
疲労強度の著しい向上をもたらすことができるようにす
ることもよい。 以下、本発明に係る高強度部品用鋼の成分範囲(重量
%)の限定理由について説明する。 C:0.26超過〜0.35% Cは熱処理によって所要の強度を得るために有効な元
素であり、このような効果を得るために0.26%超過含有
させることが必要である。しかし、0.35%を超えて含有
するととくに高強度部品の耐遅れ破壊性が劣化するので
0.35%以下とする必要がある。 Si:0.15%未満」 Siはオーステナイト化時の高温加熱による粒界酸化を
助長する元素であり、遅れ破壊の起点となりうるもので
あるため耐遅れ破壊性を劣化させる。そのため、Si量は
低い方が望ましく、特に0.05%以下とすることがより好
ましいが、ここではこの上限を0.15%未満とした。 Mn:0.40%以下 Mnは溶製時の脱酸剤として有効であると共に焼入れ性
の向上に寄与する元素であるが、MnはSiとともに焼入れ
時の粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性を劣化させるの
で、低いほど好ましく、特に0.30%以下とすることがよ
り好ましいが、ここではその上限を0.40%とした。 P:0.015%以下 Pはオーステナイト化時の高温加熱によってオーステ
ナイト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて耐遅れ破壊
性を劣化させるので、0.015%以下とした。 S:0.005%以下、 SはPと同様にオーステナイト化時の高温加熱によっ
てオーステナイト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて
耐遅れ破壊性を劣化させると共に、MnSを形成して耐遅
れ破壊性を劣化させるので、0.005%以下とした。 Cr:0.50〜2.00% Crは焼入れ性の向上に寄与する元素であるので、高強
度部品の寸法等に応じてその添加量を調整するのが良
く、これによってボルトの焼入れ性を確保する。そし
て、このような観点からはCr含有量を0.50%以上とし
た。しかし、Crの添加は、通常の機械構造用高強度部品
を対象とした寸法では、2.00%まで添加することによっ
て焼入れ性の向上は十分であり、むしろ添加しすぎると
SiおよびMnと同様に粒界酸化を助長して耐遅れ破壊性を
劣化させるので、0.50〜2.00%の範囲とする必要があ
る。また、焼入れを施したのちに転造等の冷間塑性加工
を行う工程を採用する場合には、焼入れ後の硬さが大き
くなりすぎて冷間塑性加工が困難になることのないよう
にするために、1.50%以下とするのがよい。 Mo:0.70超過〜2.00% Moは焼入れ性の向上に寄与すると共に、結晶粒の微細
化およびオーステナイト粒界の強度向上に寄与する元素
であり、さらには焼もどし時に十分な2次硬化を得るこ
とができるようにし、引張強さ120Kgf/mm2以上の高強度
を得るための焼もどし温度が600℃を上回るようにする
ために、0.70%超過とした。しかし多く添加しても効果
は飽和するのみならず、巨大な1次炭化物が晶出してく
るようになり、焼入れ時に残存して靱性が低下するの
で、その上限を2.00%とした。また、焼入れを施したの
ちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用する場合に
は、焼入れ後の硬さが大きくなりすぎて冷間塑性加工が
困難になることのないようにするために、1.50%以下と
するのがよい。 V:0.05〜1.50% Vは焼もどし時に十分な2次硬化を得ることができる
ようにするのに有効な元素であるので、このような効果
を得るために0.05%以上とした。しかし、多すぎると巨
大な一次炭化物が晶出し、焼入れ時に残存して靱性が低
下するので、その上限を1.50%とした。また、焼入れを
施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用す
る場合には、焼入れ後の冷間塑性加工が容易にできるよ
うにするために、その上限を0.50%とするのがよい。 Al:0.01〜0.06% AlはNと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靱性
の向上をはかるのに有効な元素であり、このような効果
を得るために0.01%以上とした。しかし、多すぎると地
疵となる大型介在物を生成し、Al2O3が疲労の起点とな
るため0.06%以下とした。 N:0.005〜0.03% NはAlと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靱性
の向上をはかるのに有効な元素であるので、このような
効果を得るために0.005%以上とした。そして、Nの添
加量はAlの添加量のおよそ1/2とすることが望ましい
が、多すぎると地疵となる大型介在物を生成するので0.
03%以下とした。 O:0.0015%以下 O含有量が多すぎるとAl2O3系の介在物を生成して悪
影響を及ぼすのでその上限を0.0015%とした。 Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Zr:0.20%以下のうちか
ら選ばれる1種または2種以上 Nb,Ti,Zrはいずれも微細な炭化物を形成し、結晶粒の
微細化に効果があり、耐遅れ破壊性の向上に寄与する元
素であるので、必要に応じてこれらの1種または2種以
上を添加するのもよい。しかし、各元素について0.20%
を超えて添加しても効果の向上は大きくないので、添加
するとしても各々0.20%以下とするのがよい。 このような高強度部品用鋼を素材として高強度部品を
製造するに際しては、鋼を高強度部品の粗形状に熱間,
温間,冷間加工等により成形した後焼入れを施し、次い
で転造,圧造等の冷間塑性加工を行って所定の高強度部
品の形状に成形したのち焼もどしを行うようにすること
ができる。このように焼入れ後に冷間塑性加工を行った
のち焼もどしを施すようにするのは、冷間塑性加工の際
の加工硬化および残留応力の付与を焼もどし後にも維持
されるようにし、高強度部品の疲労強度をより一層向上
させるようにするためであり、このような疲労強度の向
上は、低C含有量でかつMo,Vの炭化物形成による2次析
出硬化型の鋼を素材とすることにより可能となる。 (実施例) 第1表に示す化学成分の本発明例および参考例による
鋼A〜Fおよび比較例の鋼G(SCM 440H)をそれぞれ
溶製したのち造魂し、各鋼を直径8mmの線材に圧延し
た。 次いで、各線材に焼なましを施したのち引張試験片お
よび遅れ破壊試験片に加工し、各試験片に対し、引張強
度が120〜160Kgf/mm2となるように調質した。 次いで、各供試片を用いて引張特性および遅れ破壊特
性を調べた。このとき、引張特性の試験に際しては縮少
JIS 4号試験片を使用した。その結果を第2表および
第1図に示す。 また、遅れ破壊特性の試験に際しては第2図に示す曲
げ型促進試験片(l1=20mm,d1=6mm,d2=4mm,R=0.1m
m)を使用し、片持曲げ荷重を負荷して行った。また、
試験環境は0.1N−HClとし、これを試験片の切欠部に滴
下しながら曲げ応力を加えた。そして、各供試材の遅れ
破壊特性は、静曲げ応力(σSB)に対する遅れ破壊試験
30時間後における強度(σ30hr)との比、すなわち遅れ
破壊強度比σ30hr/σSBで表わした。この結果を同じく
第2表に示す。 第2表に示すように、本発明例および参考例の鋼A〜
Fは、引張強度120〜160kgf/mm2に調質したときにおい
て、伸びおよび絞りが良好な値を示しており、特に30時
間強度比は比較例の鋼Gよりもかなり高い値を示してい
る。 次に、高強度部品の一例としてボルトを転造加工によ
り製造するにあたり、転造加工を焼入れ・焼もどし前に
行う通常の工程(第3表のA,B,D,F,Gと、焼入れ後に転
造加工を行ってこの転造加工後に焼もどしを行う工程
(第3表のA′,B′,D′,F′)とを採用した場合におけ
る疲労特性への影響を調べた。 この場合、ボルトに対して平均応力81kgf/mm2を加え
る実体疲労試験を行って、3×106回後で破断しない応
力振幅を調べた。この結果を第3表に示す。 第3表に示す結果より明らかなように、焼入れ後に転
造加工を行ったのち焼もどしを施すことによって、転造
加工の際の加工硬化および残留応力の付与による効果を
ボルトに活用することが可能となり、疲労強度を大幅に
向上させることができた。 【発明の効果】 以上説明してきたように、本発明に係る高強度部品用
鋼は、重量%で、C:0.26超過〜0.35%、Si:0.15%未
満、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.005%以下、C
r:0.50〜2.00%、Mo:0.70超過〜2.00%、V:0.05〜1.50
%、Al:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03%、O:0.0015%以
下、および必要に応じて、Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以
下,Zr:0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以
上、残部Feおよび不純物からなるものであるから、強度
120〜160kgf/mm2級の高強度が得られ、しかも靱延性が
良好であるうえに、耐遅れ破壊性に著しく優れた高強度
部品を得ることが可能である高強度部品用鋼であるとい
う非常に優れた効果をもたらしうるものである。
た高強度部品、例えばチェーンピン,ロックピン,スタ
ッドボルト,六角ボルトなどの高強度部品を製造する際
にその素材として利用される高強度部品用鋼に関するも
のである。 (従来の技術) 近年、橋梁,建築物および機械構造物等の大型化に伴
って高強度ボルトが多量に使用されるようになってきて
いる。また、自動車の軽量化の要求に伴って各種部品の
高強度化および小型化がはかられるようになってきてい
る。 そして、特に強度が120Kgf/mm2を超える高強度部品に
おいては、耐遅れ破壊性が著しく劣化することが知られ
ており、安定した耐遅れ破壊性を有していることが必須
条件である。 遅れ破壊は、主として湿潤環境で使用された場合にお
いて、水素の侵入・拡散によって生ずる水素脆化現象で
あり、静的負荷を受けた部材が突然に脆性的に破壊する
現象である。そして、引張強度が120〜140Kgf/mm2であ
るような焼もどしマルテンサイト鋼においては、旧オー
ステナイト粒界に沿ってクラックが発生しそれが伝播す
ることが知られている。これは、粒界がP,S等の不純物
偏析あるいは炭化物の析出によって脆化し、さらに使用
環境中より侵入する水素に起因する脆化が重なって発生
する現象であるとされている。 (発明が解決しようとする問題点) このように、高強度部品において、強度が120Kgf/mm2
を超えると、耐遅れ破壊性が著しく劣化するという問題
点があった。 (発明の目的) 本発明は、このような問題点にかんがみてなされたも
ので、強度クラス12.9(強度120〜140Kgf/mm2級)ない
し14.9(強度140〜160Kgf/mm2級)の高強度であってし
かも耐遅れ破壊性に優れた高強度部品、例えばチェーン
ピン,ロックピン,スタッドボルト,六角ボルトなどを
得ることが可能である高強度部品用鋼を提供することを
目的としている。 【発明の構成】 (問題点を解決するための手段) 本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた高強度部品用鋼
は、重量%で、C:0.26超過〜0.35%、Si:0.15%未満、M
n:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:0.5
0〜2.00%、Mo:0.70超過〜2.00%、V:0.05〜1.50%、A
l:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03%、O:0.0015%以下、
および必要に応じて、Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Z
r:0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以上、
残部Feおよび不純物からなることを特徴としているもの
であり、低C含有量の2次硬化型とし、所定の強度が得
られる焼もどし温度を600℃以上として耐遅れ破壊性の
向上が実現できるようにしたことを特徴としているもの
である。 そして、本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた高強度部
品用鋼を素材として高強度部品を製造するに際しては、
上記鋼素材を熱間,温間あるいは冷間加工によって所望
部品の粗形状に成形した後焼入れを施し、転造や圧造な
どの冷間塑性加工を行って所望の部品形状に加工した後
に焼もどしを施すようになすことができ、通常の例えば
転造→焼入れ→焼もどしの工程に代えて、焼入れ→転造
→焼もどしの工程を採用することによって、転造後に当
該転造部分を加工硬化させると共に残留応力を付与し、
疲労強度の著しい向上をもたらすことができるようにす
ることもよい。 以下、本発明に係る高強度部品用鋼の成分範囲(重量
%)の限定理由について説明する。 C:0.26超過〜0.35% Cは熱処理によって所要の強度を得るために有効な元
素であり、このような効果を得るために0.26%超過含有
させることが必要である。しかし、0.35%を超えて含有
するととくに高強度部品の耐遅れ破壊性が劣化するので
0.35%以下とする必要がある。 Si:0.15%未満」 Siはオーステナイト化時の高温加熱による粒界酸化を
助長する元素であり、遅れ破壊の起点となりうるもので
あるため耐遅れ破壊性を劣化させる。そのため、Si量は
低い方が望ましく、特に0.05%以下とすることがより好
ましいが、ここではこの上限を0.15%未満とした。 Mn:0.40%以下 Mnは溶製時の脱酸剤として有効であると共に焼入れ性
の向上に寄与する元素であるが、MnはSiとともに焼入れ
時の粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性を劣化させるの
で、低いほど好ましく、特に0.30%以下とすることがよ
り好ましいが、ここではその上限を0.40%とした。 P:0.015%以下 Pはオーステナイト化時の高温加熱によってオーステ
ナイト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて耐遅れ破壊
性を劣化させるので、0.015%以下とした。 S:0.005%以下、 SはPと同様にオーステナイト化時の高温加熱によっ
てオーステナイト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて
耐遅れ破壊性を劣化させると共に、MnSを形成して耐遅
れ破壊性を劣化させるので、0.005%以下とした。 Cr:0.50〜2.00% Crは焼入れ性の向上に寄与する元素であるので、高強
度部品の寸法等に応じてその添加量を調整するのが良
く、これによってボルトの焼入れ性を確保する。そし
て、このような観点からはCr含有量を0.50%以上とし
た。しかし、Crの添加は、通常の機械構造用高強度部品
を対象とした寸法では、2.00%まで添加することによっ
て焼入れ性の向上は十分であり、むしろ添加しすぎると
SiおよびMnと同様に粒界酸化を助長して耐遅れ破壊性を
劣化させるので、0.50〜2.00%の範囲とする必要があ
る。また、焼入れを施したのちに転造等の冷間塑性加工
を行う工程を採用する場合には、焼入れ後の硬さが大き
くなりすぎて冷間塑性加工が困難になることのないよう
にするために、1.50%以下とするのがよい。 Mo:0.70超過〜2.00% Moは焼入れ性の向上に寄与すると共に、結晶粒の微細
化およびオーステナイト粒界の強度向上に寄与する元素
であり、さらには焼もどし時に十分な2次硬化を得るこ
とができるようにし、引張強さ120Kgf/mm2以上の高強度
を得るための焼もどし温度が600℃を上回るようにする
ために、0.70%超過とした。しかし多く添加しても効果
は飽和するのみならず、巨大な1次炭化物が晶出してく
るようになり、焼入れ時に残存して靱性が低下するの
で、その上限を2.00%とした。また、焼入れを施したの
ちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用する場合に
は、焼入れ後の硬さが大きくなりすぎて冷間塑性加工が
困難になることのないようにするために、1.50%以下と
するのがよい。 V:0.05〜1.50% Vは焼もどし時に十分な2次硬化を得ることができる
ようにするのに有効な元素であるので、このような効果
を得るために0.05%以上とした。しかし、多すぎると巨
大な一次炭化物が晶出し、焼入れ時に残存して靱性が低
下するので、その上限を1.50%とした。また、焼入れを
施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用す
る場合には、焼入れ後の冷間塑性加工が容易にできるよ
うにするために、その上限を0.50%とするのがよい。 Al:0.01〜0.06% AlはNと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靱性
の向上をはかるのに有効な元素であり、このような効果
を得るために0.01%以上とした。しかし、多すぎると地
疵となる大型介在物を生成し、Al2O3が疲労の起点とな
るため0.06%以下とした。 N:0.005〜0.03% NはAlと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靱性
の向上をはかるのに有効な元素であるので、このような
効果を得るために0.005%以上とした。そして、Nの添
加量はAlの添加量のおよそ1/2とすることが望ましい
が、多すぎると地疵となる大型介在物を生成するので0.
03%以下とした。 O:0.0015%以下 O含有量が多すぎるとAl2O3系の介在物を生成して悪
影響を及ぼすのでその上限を0.0015%とした。 Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Zr:0.20%以下のうちか
ら選ばれる1種または2種以上 Nb,Ti,Zrはいずれも微細な炭化物を形成し、結晶粒の
微細化に効果があり、耐遅れ破壊性の向上に寄与する元
素であるので、必要に応じてこれらの1種または2種以
上を添加するのもよい。しかし、各元素について0.20%
を超えて添加しても効果の向上は大きくないので、添加
するとしても各々0.20%以下とするのがよい。 このような高強度部品用鋼を素材として高強度部品を
製造するに際しては、鋼を高強度部品の粗形状に熱間,
温間,冷間加工等により成形した後焼入れを施し、次い
で転造,圧造等の冷間塑性加工を行って所定の高強度部
品の形状に成形したのち焼もどしを行うようにすること
ができる。このように焼入れ後に冷間塑性加工を行った
のち焼もどしを施すようにするのは、冷間塑性加工の際
の加工硬化および残留応力の付与を焼もどし後にも維持
されるようにし、高強度部品の疲労強度をより一層向上
させるようにするためであり、このような疲労強度の向
上は、低C含有量でかつMo,Vの炭化物形成による2次析
出硬化型の鋼を素材とすることにより可能となる。 (実施例) 第1表に示す化学成分の本発明例および参考例による
鋼A〜Fおよび比較例の鋼G(SCM 440H)をそれぞれ
溶製したのち造魂し、各鋼を直径8mmの線材に圧延し
た。 次いで、各線材に焼なましを施したのち引張試験片お
よび遅れ破壊試験片に加工し、各試験片に対し、引張強
度が120〜160Kgf/mm2となるように調質した。 次いで、各供試片を用いて引張特性および遅れ破壊特
性を調べた。このとき、引張特性の試験に際しては縮少
JIS 4号試験片を使用した。その結果を第2表および
第1図に示す。 また、遅れ破壊特性の試験に際しては第2図に示す曲
げ型促進試験片(l1=20mm,d1=6mm,d2=4mm,R=0.1m
m)を使用し、片持曲げ荷重を負荷して行った。また、
試験環境は0.1N−HClとし、これを試験片の切欠部に滴
下しながら曲げ応力を加えた。そして、各供試材の遅れ
破壊特性は、静曲げ応力(σSB)に対する遅れ破壊試験
30時間後における強度(σ30hr)との比、すなわち遅れ
破壊強度比σ30hr/σSBで表わした。この結果を同じく
第2表に示す。 第2表に示すように、本発明例および参考例の鋼A〜
Fは、引張強度120〜160kgf/mm2に調質したときにおい
て、伸びおよび絞りが良好な値を示しており、特に30時
間強度比は比較例の鋼Gよりもかなり高い値を示してい
る。 次に、高強度部品の一例としてボルトを転造加工によ
り製造するにあたり、転造加工を焼入れ・焼もどし前に
行う通常の工程(第3表のA,B,D,F,Gと、焼入れ後に転
造加工を行ってこの転造加工後に焼もどしを行う工程
(第3表のA′,B′,D′,F′)とを採用した場合におけ
る疲労特性への影響を調べた。 この場合、ボルトに対して平均応力81kgf/mm2を加え
る実体疲労試験を行って、3×106回後で破断しない応
力振幅を調べた。この結果を第3表に示す。 第3表に示す結果より明らかなように、焼入れ後に転
造加工を行ったのち焼もどしを施すことによって、転造
加工の際の加工硬化および残留応力の付与による効果を
ボルトに活用することが可能となり、疲労強度を大幅に
向上させることができた。 【発明の効果】 以上説明してきたように、本発明に係る高強度部品用
鋼は、重量%で、C:0.26超過〜0.35%、Si:0.15%未
満、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.005%以下、C
r:0.50〜2.00%、Mo:0.70超過〜2.00%、V:0.05〜1.50
%、Al:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03%、O:0.0015%以
下、および必要に応じて、Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以
下,Zr:0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以
上、残部Feおよび不純物からなるものであるから、強度
120〜160kgf/mm2級の高強度が得られ、しかも靱延性が
良好であるうえに、耐遅れ破壊性に著しく優れた高強度
部品を得ることが可能である高強度部品用鋼であるとい
う非常に優れた効果をもたらしうるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は各供試鋼の焼もどし温度による硬さおよび引張
特性を調べた結果を示すグラフ、第2図は遅れ破壊特性
の試験に使用した試験片の説明図である。
特性を調べた結果を示すグラフ、第2図は遅れ破壊特性
の試験に使用した試験片の説明図である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量%で、 C:0.26超過〜0.35%、 Si:0.15%未満、 Mn:0.40%以下、 P:0.015%以下、 S:0.005%以下、 Cr:0.50〜2.00%、 Mo:0.70超過〜2.00%、 V:0.05〜1.50%、 Al:0.01〜0.06%、 N:0.005〜0.03%、 O:0.0015%以下、 残部Feおよび不純物からなることを特徴とする耐遅れ破
壊性に優れた高強度部品用鋼。 2.重量%で、 C:0.26超過〜0.35%、 Si:0.15%未満、 Mn:0.40%以下、 P:0.015%以下、 S:0.005%以下、 Cr:0.50〜2.00%、 Mo:0.70超過〜2.00%、 V:0.05〜1.50%、 Al:0.01〜0.06%、 N:0.005〜0.03%、 O:0.0015%以下、 およびNb:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Zr:0.20%以下の
うちから選ばれる1種または2種以上、 残部Feおよび不純物からなることを特徴とする耐遅れ破
壊性に優れた高強度部品用鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62204132A JP2954216B2 (ja) | 1987-08-19 | 1987-08-19 | 高強度部品用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62204132A JP2954216B2 (ja) | 1987-08-19 | 1987-08-19 | 高強度部品用鋼 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8132273A Division JP2728084B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | 高強度部品の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6447835A JPS6447835A (en) | 1989-02-22 |
JP2954216B2 true JP2954216B2 (ja) | 1999-09-27 |
Family
ID=16485366
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62204132A Expired - Lifetime JP2954216B2 (ja) | 1987-08-19 | 1987-08-19 | 高強度部品用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2954216B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
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Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS5949284B2 (ja) * | 1980-08-11 | 1984-12-01 | 住友金属工業株式会社 | 耐遅れ破壊性のすぐれた高強度油井用鋼の製造方法 |
JPS61130456A (ja) * | 1984-11-29 | 1986-06-18 | Honda Motor Co Ltd | 高強度ボルト及びその製造方法 |
JPS6254060A (ja) * | 1985-09-02 | 1987-03-09 | Nippon Kokan Kk <Nkk> | 耐遅れ破壊性の優れた高強度油井用鋼管 |
-
1987
- 1987-08-19 JP JP62204132A patent/JP2954216B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6447835A (en) | 1989-02-22 |
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