JP2021070597A - カーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents

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侑規 矢吹
Yukinori Yabuki
侑規 矢吹
田中 直樹
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Abstract

【課題】高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することを可能にするカーボンナノチューブの製造方法を提供する。【解決手段】基材と該基材上に設けられた触媒層とを備えるカーボンナノチューブ生成用基材を用いて、カーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブの製造方法であって、前記触媒層上にカーボンナノチューブを形成する第1の形成工程(A)と、前記触媒層上に形成されたカーボンナノチューブを剥離する剥離工程(B)と、カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層上にカーボンナノチューブを再度形成する第2の形成工程(C)と、を含み、前記剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満である、カーボンナノチューブの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関し、特には、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造する方法に関するものである。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)は、力学的強度、光学特性、電気特性、熱特性、分子吸着能等の各種特性に優れており、電子デバイス材料、光学素子材料、導電性材料等の機能性材料としての展開が期待されている。
ここで、CNTの製造方法の一つとして、化学気相成長法(以下、「CVD法」と称することがある。)が知られている。このCVD法は、高温雰囲気下で原料となる炭素化合物を金属微粒子よりなる触媒と接触させてCNTを合成することを特徴としている。そして、CVD法は、CNTの製造条件(例えば、触媒の種類または配置、炭素化合物の種類、或いは、反応条件など)の自由度が高く、また、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とのいずれも製造可能である製造方法として注目されている。
また、CVD法を用いたCNTの製造方法の中でも、CNT合成用触媒からなる触媒層を担持した基材(以下、「CNT生成用基材」と称することがある。)を用いてCNTを合成する方法は、CNT生成用基材に対して垂直に配向した多数のCNTを大量に製造することができるため、特に注目されている。そのため、CNT生成用基材を使用してCVD法によりCNTを製造する方法に関し、製造コストの低減などを目的とした様々な提案がなされている。
具体的には、例えば特許文献1,2では、CNT生成用基材上に形成したCNTを回収した後、使用済みのCNT生成用基材をCNTの合成に再利用することによりCNTの製造コストを低減する技術が提案されている。
特開2006−27948号公報 特開2007−91485号公報
しかし、使用済みのCNT生成用基材の再利用を繰り返しつつCNTを製造する上記従来のCNTの製造方法には、高品質なCNTを効率的に製造し得るようにするという点において改善の余地があった。
そこで、本発明は、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することを可能にするカーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者らは、カーボンナノチューブ生成用基材における触媒層上にカーボンナノチューブを形成する第1の形成工程(A)と、触媒層上に形成されたカーボンナノチューブを剥離する剥離工程(B)と、カーボンナノチューブが剥離された触媒層上にカーボンナノチューブを再度形成する第2の形成工程(C)とを経てCNTを製造するに際し、剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された触媒層の表面の炭素原子濃度が所定値未満であれば、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、基材と該基材上に設けられた触媒層とを備えるカーボンナノチューブ生成用基材を用いて、カーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブの製造方法であって、前記触媒層上にカーボンナノチューブを形成する第1の形成工程(A)と、前記触媒層上に形成されたカーボンナノチューブを剥離する剥離工程(B)と、カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層上にカーボンナノチューブを再度形成する第2の形成工程(C)と、を含み、前記剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満であることを特徴とする。剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満であれば、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
なお、本発明において、「カーボンナノチューブ生成用基材」は、「1回もCNT形成を行っていない使用前CNT生成用基材」および「使用前CNT生成用基材に対してCNT形成を行った後の使用済みCNT生成用基材(使用済みCNT生成用基材に対してさらにCNT形成を行った後の使用済みCNT生成用基材を含む。)」のいずれかを意味する。
なお、本発明において、「炭素原子濃度」は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
ここで、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記第1の形成工程(A)と前記第2の形成工程(C)の少なくとも一方において、カーボンナノチューブの原料ガスと水素とを含む混合ガスを用いてカーボンナノチューブを形成することが好ましい。第1の形成工程(A)および/または第2の形成工程(C)において、カーボンナノチューブの原料ガスと水素とを含む混合ガスを用いてカーボンナノチューブを形成すると、高品質なカーボンナノチューブを一層効率的に製造することができる。
更に、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記剥離工程(B)において、カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層を洗浄する洗浄工程(D)をさらに含むことが好ましい。カーボンナノチューブが剥離された触媒層を洗浄すれば、より高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記剥離工程(B)において、カーボンナノチューブを剥離された前記触媒層を酸化処理する酸化処理工程(E)をさらに含むことが好ましい。カーボンナノチューブが剥離された触媒層を酸化処理すれば、より高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記剥離工程(B)において、カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層を研磨処理する研磨処理工程をさらに含むことが好ましい。かかる研磨処理工程は、前記洗浄工程(D)の後に実施することが好ましい。カーボンナノチューブが剥離された触媒層を研磨処理すれば、より高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、基材と、基材上に設けられた触媒層とを備えるカーボンナノチューブ生成用基材の触媒層上でカーボンナノチューブ(CNT)を合成し、合成したCNTを触媒層から剥離することによりCNTを得る。本発明のCNTの製造方法では、低コストでCNTを製造する観点から、使用済みCNT生成用基材(以下、「使用済み基材」と称することがある。)が再利用される。
具体的には、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、基材上に触媒層が形成されたCNT生成用基材を用いて、CNTを製造するCNTの製造方法であって、前記触媒層上にCNTを形成する第1の形成工程(A)と、前記触媒層上に形成されたCNTを剥離する剥離工程(B)と、CNTが剥離された前記触媒層上にCNTを再度形成する第2の形成工程(C)とを含み、所望により、剥離工程(B)において、CNTが剥離された前記触媒層を洗浄する洗浄工程(D)および/またはCNTが剥離された前記触媒層を酸化処理する酸化処理工程(E)をさらに含む。そして、本発明のCNTの製造方法では、CNTの形成と剥離を繰り返して実施することにより、使用済み基材を再利用しつつCNTを効率的に製造することができる。
<CNT生成用基材>
本発明における「CNT生成用基材」は、上述した通り「使用前CNT生成用基材」および「使用済みCNT生成用基材」のいずれであってもよい。
使用前CNT生成用基材は、CNTの合成に使用される前の基材(「バージン基材」ということもある)上に触媒層を形成することにより得られる。なお、基材と触媒層との間には、浸炭防止層、触媒担持層等の下地層が設けられていてもよい。換言すると、触媒層は、基材上に任意の層を介して形成されていてもよく、即ち、基材の表面に形成されてもよいし、下地層などの任意の層の表面に形成されてもよい。
[基材]
ここで、基材としては、その表面にCNT合成用の触媒を担持することが可能であれば任意の基材が用いられる。具体的には、基材としては、CNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。基材は、400℃以上の高温でも形状を維持できることが好ましい。
基材の材質としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウムおよびアンチモンなどの金属、並びに、これらの金属を含む合金および酸化物、或いは、シリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイトおよびダイヤモンドなどの非金属、並びに、セラミックなどが挙げられる。これらの中でも、金属は、シリコンおよびセラミックと比較して、低コスト且つ加工が容易であるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金などは好適である。
基材の形状としては、平板状、薄膜状、ブロック状または粒子状などが挙げられ、CNTを大量に製造する観点からは、体積の割に表面積を大きくとれる平板状および粒子状が特に有利である。
ここで、平板状の基材を使用する場合、基材の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。好ましくは、基材の厚さは0.05mm以上3mm以下である。基材の厚さが3mm以下であれば、CNTを合成する際に基材を十分に加熱することができ、CNTの成長不良の発生を抑制することができる。また、基材のコストを低減できる。一方、基材の厚さが0.05mm以上であれば、CNT合成時の浸炭による基材の変形を抑制することができ、また、基材自体のたわみが起こり難いため、基材の搬送や再利用に有利である。なお、本明細書にいう「浸炭」とは、基材に炭素成分が浸透することをいう。
また、平板状の基材の形状および大きさに特に制限はないが、形状としては、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。また、基材の一辺の長さに特に制限はないが、CNTの量産性の観点からは、一辺の長さは長いほど望ましい。
[浸炭防止層]
ここで、特に、平板状の基材を使用する場合、基材は、表面上および裏面上の少なくとも一方に、下地層としての浸炭防止層を有していてもよく、基材は、表面上および裏面上の両方に浸炭防止層を有していることが好ましい。浸炭防止層は、CNTを合成する際に基材が浸炭されて変形してしまうことを防止するための保護層である。
そして、浸炭防止層は、金属またはセラミック材料によって構成されることが好ましく、特に浸炭防止効果の高いセラミック材料で構成されることが好ましい。金属としては、銅、アルミニウム等を例示できる。セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の酸化物、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素等の窒化物を例示できる。これらの中でも、浸炭防止効果が高いことから、浸炭防止層を構成する材料としては、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が好ましい。
浸炭防止層の厚さは、0.01μm以上1.0μm以下が望ましい。浸炭防止層の厚さが0.01μm以上であると、浸炭防止効果を充分に得ることができる。一方、浸炭防止層の厚さが1.0μm以下であると、基材の熱伝導性が変化するのを抑制し、CNT合成時に基材を十分に加熱してCNTを良好に成長させることができる。浸炭防止層の層形成(コーティング)の方法としては、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的方法、CVD、塗布等の方法を用いることができる。
[触媒担持層]
触媒担持層は、浸炭防止層以外の下地層であって、CNT合成用触媒の下地となる層である。そして、触媒担持層の材料としては、CNT合成用触媒の下地となるものであればさまざまな材料を用いることができ、例えば、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンなどのセラミック材料が好適に用いられる。中でも、触媒担持層の材料としては、セラミック材料を用いることが好ましい。セラミック材料の方が、基材を再利用してCNTを合成したときにCNTが良好に成長するからである。
なお、触媒担持層の厚みは、CNTの成長が安定して歩留まりが向上する観点からは10nm以上であることが好ましく、生産効率の観点からは30nm以下であることが好ましい。
[触媒層]
上述した基材上に設けられる触媒層は、例えば金属等のCNT合成用触媒を含む層である。CNT合成用触媒は、CNT合成を行う前に、水素等による還元処理(後述するフォーメーション工程)を行うことにより、前記CNT合成用触媒の微粒子を含むことが好ましい。触媒層は、例えば、CNT合成用触媒溶液を塗布することにより形成することができる。ここで、触媒層を構成するCNT合成用触媒としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデン、並びに、これらの塩化物および合金等をCNT合成用触媒として例示することができる。ここで、触媒層の形成に使用するCNT合成用触媒の量は、例えば、これまでのCNTの製造に実績のある量を使用することができる。
また、基材上への触媒層の形成方法としては、ウェットプロセスまたはドライプロセスのいずれを用いてもよい。具体的には、スパッタリング蒸着法や、金属微粒子を適宜な溶媒に分散させた液体の塗布・焼成法などを適用することができる。また、周知のフォトリソグラフィーまたはナノインプリンティングなどを適用したパターニングを併用して、触媒層を任意の形状とすることもできる。基材上に形成する触媒層の形状およびCNTの成長時間の調整により、薄膜状、円柱状、角柱状などの様々な形状のCNT配向集合体を得ることができる。
なお、触媒層は、平板状の基材を使用する場合、基材の表面側および裏面側の両側に形成してもよいし、何れか一方側のみに形成してもよい。基材の表面側および裏面側の両側に触媒層を形成すれば、CNTを基材の表面側および裏面側の両側において成長させることができるので、生産効率を向上させることができる。もちろん、生産コストや生産工程上の都合等に応じて、触媒層を基材の片面のみに設けることは可能である。
触媒層の厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上10nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上3.0nm以下が特に好ましい。
<第1の形成工程(A)>
第1の形成工程(A)では、触媒層上にカーボンナノチューブを形成する。ここで、第1の形成工程(A)では、1回もCNT形成を行っていない使用前CNT生成用基材の触媒層上にCNTを形成してもよく、また、少なくとも1回のCNT形成を行った使用済みCNT生成用基材の触媒層上にCNTを形成してもよい。なお、使用済みCNT生成用基材(使用済み基材)を再利用してCNTを製造する場合には、後述する触媒層形成工程により使用済み基材が有する触媒層(使用済みの触媒層)の上に触媒層を新たに形成してもよく、また、新たに触媒層を形成することなく、使用済み基材が有する触媒層(使用済みの触媒層)をそのまま触媒層として用いてもよい。
触媒層上へのCNTの形成方法は、特に限定されないが、CNT生成用基材の周囲環境をCNTの原料ガスと水素とを含む混合ガスが存在する環境とした状態で当該CNT生成用基材および混合ガスのうち少なくとも一方を加熱し、化学気相成長によりCNTを成長させる方法(CVD法)が好ましい。この方法によれば、CNT生成用基材上に高効率でCNTを成長させることができ、触媒から成長した多数のCNTが特定の方向に配向したCNT配向集合体を容易に形成することができる。
またここで、上述したように、CNTの原料ガスに加えて水素を含む混合ガスを用いてCNTを形成することにより、形成したCNTを剥離した後の触媒層表面の炭素原子濃度を低減させることができる。
より具体的には、第1の形成工程(A)における触媒層上へのCNTの形成は、特に限定されることなく、触媒層のCNT合成用触媒を還元するフォーメーション工程と、触媒層上でCNTを成長させる成長工程と、CNTが成長した基材を冷却する冷却工程とを順次実施することにより行うことができる。
[フォーメーション工程]
フォーメーション工程では、CNTを形成するCNT生成用基材の周囲環境を還元ガスを含む環境とした後、CNT生成用基材および還元ガスのうち少なくとも一方を加熱して、触媒層のCNT合成用触媒を還元および微粒子化する。このフォーメーション工程により、CNT合成用触媒の還元、CNT合成用触媒の微粒子化の促進、およびCNT合成用触媒の活性向上のうち少なくとも一つの効果が現れる。フォーメーション工程におけるCNT生成用基材および/または還元ガスの温度は、好ましくは400℃以上1100℃以下である。また、フォーメーション工程の実施時間は、3分以上30分以下が好ましく、3分以上8分以下がより好ましい。フォーメーション工程の実施時間がこの範囲であれば、触媒粒子の粗大化が防止され、多層CNTの生成を抑制することができる。
なお、還元ガスとしては、例えば、水素ガス、アンモニアガス、水蒸気およびそれらの混合ガスを用いることができる。また、還元ガスは、これらのガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、一般的には、フォーメーション工程で用いるが、適宜成長工程に用いてもよい。
[成長工程]
成長工程では、CNT生成用基材の周囲環境をCNTの原料ガスと水素とを含む混合ガスが存在する環境とした後、CNT生成用基材および混合ガスのうち少なくとも一方を加熱して、化学気相成長により、還元化され微粒子化した触媒上にCNTを成長させる。
ここで、前記混合ガスにおけるCNTの原料ガスとしては、CNTの原料となる物質を含むガス、例えば、CNTを成長させる温度において原料炭素源を有するガスが用いられる。中でも、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレンおよびアセチレンなどの炭化水素のガスが好適である。この他にも、メタノール、エタノールなどの低級アルコールのガスでもよい。これらの混合物も使用可能である。
前記混合ガスにおける水素の混合比(水素の体積流量/混合ガス全体の体積流量)としては、1体積%以上30体積%以下であることが好ましく、5体積%以上15体積%以下であることが特に好ましい。
前記混合ガスにおける水素の混合比が、上記範囲内であれば、形成したCNTを剥離した後の触媒層表面の炭素原子濃度を低減させることができ、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができる。
また、前記混合ガスは、不活性ガスにより希釈されていてもよい。前記不活性ガスは、CNTが成長する温度で不活性であり、触媒の活性を低下させず、且つ、成長するCNTと反応しないガスである。例えば、窒素ガス;ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガスおよびクリプトンガスなどの希ガス;並びにこれらの混合ガスを例示でき、特に窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスおよびこれらの混合ガスが好適である。
また、成長工程におけるカーボンナノチューブ生成用基材の周囲環境は、触媒の活性を高め且つ触媒の活性寿命を延長させる作用(触媒賦活作用)を有する触媒賦活物質をさらに含むことがより好ましい。触媒賦活物質の添加によって、CNTの生産効率や純度をより一層改善することができる。触媒賦活物質としては、例えば酸素を含む物質であって、CNTの成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質が好ましい。具体的には、触媒賦活物質としては、例えば、水、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素および二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物;エタノール、メタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;アルデヒド類;エステル類;並びにこれらの混合物が有効である。この中でも、水、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、エーテル類が好ましく、特に水および二酸化炭素が好適である。
なお、一酸化炭素やアルコール類など、炭素と酸素の両方を含む物質は、原料ガスと触媒賦活物質との両方の機能を有する場合がある。例えば一酸化炭素は、エチレンなどのより反応性の高い原料ガスと組み合わせれば触媒賦活物質として作用し、水などの微量でも大きな触媒賦活作用を示す触媒賦活物質と組み合わせれば原料ガスとして作用する。
CNT生成用基材および混合ガスのうち少なくとも一方を加熱する温度は、CNTの成長が可能な温度であればよいが、好ましくは400℃以上1100℃以下である。400℃以上とすることで触媒賦活物質の効果が良好に発現され、1100℃以下とすることで触媒賦活物質がCNTと反応することを抑制できる。
[冷却工程]
冷却工程では、CNTが成長したCNT生成用基材を不活性ガス環境下において冷却し、成長工程後の高温状態にあるCNTおよびCNT生成用基材が酸素存在環境下に置かれて酸化するのを抑制する。ここで、不活性ガスとしては、成長工程で使用し得る不活性ガスと同様の不活性ガスを使用し得る。また、冷却工程では、CNTが成長したCNT生成用基材の温度は、好ましくは400℃以下、さらに好ましくは200℃以下まで低下させる。
[CNTの性状]
第1の形成工程(A)または後述する第2の形成工程(C)においてCNT生成用基材の触媒層上には、通常、CNTはCNT配向集合体として形成され、例えば以下の性状を有していることが好ましい。
即ち、CNT配向集合体の好ましいBET比表面積は、CNTが主として未開口のものにあっては、800m2/g以上であり、より好ましくは、1000m2/g以上である。BET比表面積が高いほど、金属や炭素などの不純物の量をCNTの質量の数十パーセント(40%程度)より低く抑えることができる。また、BET比表面積の大きいCNTは、触媒の担持体やエネルギー・物質貯蔵材として有効であり、スーパーキャパシタやアクチュエータなどの用途に好適である。なお、BET比表面積の上限としては通常、2500m2/g程度である。
また、CNT配向集合体の重量密度は、0.002g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。重量密度が0.2g/cm3以下であれば、CNT配向集合体を構成するCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT配向集合体を溶媒などに攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。また、重量密度が0.002g/cm3以上であれば、CNT配向集合体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取扱いが容易になる。
更に、特定の方向に配向したCNT配向集合体は、高い配向度を有していることが好ましい。ここで、高い配向度を有するとは、以下の1.から3.の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを指す。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ、第1方向からの反射強度が第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在する。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現する。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1以下、より好ましくは0.25以上1未満である。
また、CNT配向集合体は、前述のX線回折において、単層CNT間のパッキングに起因する(CP)回折ピークおよび(002)ピークの回折強度と、単層CNTを構成する炭素六員環構造に起因する(100)、(110)ピークの平行(第1方向)と垂直(第2方向)との各入射方向の回折ピーク強度との度合いが互いに異なることも好ましい。
更に、CNT配向集合体が高い配向性および高いBET比表面積を示すためには、CNT配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向性が向上する。また高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき、BET比表面積を向上できる。
また、CNTのG/D比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である。また、CNTのG/D比は、100以下とすることができ、10以下とすることもできる。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm-1付近)とDバンド(1350cm-1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
そして、このCNTの製造方法では、第1の形成工程(A)においてCNT生成用基材上に形成したCNTを、次の剥離工程(B)で剥離し、基材を再利用する。
<剥離工程(B)>
剥離工程(B)では、触媒層上に形成されたCNTをCNT生成用基材から剥離して回収する。ここで、形成したCNTをCNT生成用基材から剥離する方法としては、物理的、化学的あるいは機械的な剥離方法を例示できる。具体的には、例えば、電場、磁場、遠心力、表面張力等を用いて触媒層から剥離する方法、機械的に触媒層から直接剥ぎ取る方法、並びに、圧力または熱を用いて触媒層から剥離する方法等が適用可能である。また、真空ポンプを用いてCNTを吸引し、触媒層から剥ぎ取ることも可能である。なお、簡単でCNTを損傷させ難い剥離方法としては、CNTをピンセットで直接つまんで触媒層から剥がす方法や、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを触媒層から剥ぎ取る方法が挙げられる。中でも、剥離方法としては、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを触媒層から剥ぎ取る方法が好適である。
前記剥離工程(B)において、CNTが剥離された前記触媒層を洗浄する洗浄工程(D)および/またはCNTが剥離された前記触媒層を酸化処理する酸化処理工程(E)をさらに含んでもよい。本発明のCNTの製造方法では、前記剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満であることを必要とするが、当該炭素原子濃度は、洗浄工程(D)および/または酸化処理工程(E)を実施しない場合は、CNTが剥離された直後の前記触媒層の表面を測定することにより、洗浄工程(D)および/または酸化処理工程(E)を実施する場合は、CNTが剥離され、それらの工程を実施した直後の前記触媒層の表面を測定することにより、求めることができる。ここで「直後」とは、その前の工程と炭素原子濃度の測定との間に他の工程を含まないとの意味である。本発明のCNTの製造方法では、前記剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満であることから、第2の形成工程(C)において、CNTが剥離された前記触媒層上にカーボンナノチューブを再度形成しても、高品質なCNTが得られる。
<洗浄工程(D)>
洗浄工程(D)では、剥離工程(B)においてCNTが剥離された後の触媒層(使用済み基材の触媒層)を洗浄する。なお、触媒層に対する洗浄処理は、複数回繰り返して実施してもよい。
そして、触媒層を洗浄する方法としては、特に限定されることなく、使用済み基材の触媒層を水洗し、布により拭き取る方法、使用済み基材の触媒層を硝酸、塩酸、ふっ酸等の酸と接触させる方法、酸素プラズマリアクターやUVオゾンクリーナー等を用いて使用済み基材の触媒層上の不純物を灰化させる方法、使用済み基材の触媒層を平均気泡径が50μm以下の微細気泡を含有する液体と接触させる方法、等を挙げることができる。
また、洗浄工程(D)の後に、洗浄工程(D)とは別の工程として、研磨処理工程を実施してもよい。研磨処理工程としては、使用済み基材に液体を衝突させて触媒層を研磨する方法を用いることが好ましく、研磨材を分散媒中に分散させてなるウェットブラスト処理用スラリーを使用済み基材の触媒層の表面に対して衝突させて使用済み基材の触媒層を物理的に研磨する方法を用いることがより好ましい。ここで、ウェットブラスト処理を行った使用済み基材の表面を水洗して、布により拭き取ったり、エアーを吹きつけて乾燥してもよい。
また、上記の研磨処理工程を行った使用済み基材上には、触媒層が残存していてもよいし、ウェットブラスト処理により除去されていてもよい。なお、触媒層が除去されていても、後述の触媒形成工程により触媒層を再び形成すれば、その後のCNTの生成に悪影響を及ぼすことはない。
ここで、ウェットブラスト処理用スラリーに含有させる研磨材としては、アルミナ、炭化珪素、樹脂、ガラス、ジルコニア、ステンレス、および、これらの組み合わせなどが挙げられる。これらの中でもアルミナが好ましい。なお、研磨材の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
平均粒子径が1μm以上であれば、使用済み基材上に残存した炭素成分などの不純物を効率よく除去することができ、30μm以下であれば、ウェットブラスト処理後における使用済み基材の表面が過度に荒れることもない。
なお、本発明において研磨材の「平均粒子径」は、JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に準じて測定された累積高さ50%の粒子径(dS−50値)をいう。
また、ウェットブラスト処理用スラリーの分散媒としては、研磨材を分散可能であれば特に限定されないが、例えば水を用いることができる。
そして、ウェットブラスト処理用スラリー中の研磨材の濃度は、5体積%以上であることが好ましく、7.5体積%以上であることがより好ましく、10体積%以上であることが更に好ましく、25体積%以下であることが好ましく、22.5体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましい。スラリー中の研磨材の濃度が5体積%以上であれば、使用済み基材上に残存した炭素成分などの不純物を効率よく除去することができ、25体積%以下であれば、研磨材同士の衝突による処理効率の低下を抑制することができる。
そして、ウェットブラスト処理用スラリーは、例えば投射ガンを用いて圧縮空気により加速させてから、使用済み基材の触媒層に衝突させることができる。
ここで圧縮空気の圧力は特に限定されないが、0.03MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることがより好ましく、0.3MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以下であることがより好ましい。圧縮空気の圧力が上述の範囲内であれば、研磨材を含むスラリーを均一に霧化して、使用済み基材表面を均一に処理することができる。
また、投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離は、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることが更に好ましく、50mm以下であることが好ましく、45mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることが更に好ましい。投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離が上述の範囲内であれば、使用済み基材表面を効率よくかつ均一に処理することができる。
また、ウェットブラスト処理用スラリーの投射角度φ(使用済み基材表面に対する角度、0°≦φ≦90°)は、80°以上が好ましく、85°以上がより好ましく、90°(すなわち、使用済み基材表面と垂直であること)が更に好ましい。投射角度φが80°以上であれば、使用済み基材表面を効率よくかつ均一に処理することができる。
そして、ウェットブラスト処理に用いる投射ガンの種類は特に限定されず、ノズル、幅広スリットなどの投射ガンを挙げることができる。
また、投射ガンを用いたウェットブラスト処理の具体的な態様は特に限定されないが、例えば、使用済み基材を水平方向に搬送し、その上側に固定された投射ガンから、搬送されている使用済み基材に対してウェットブラスト処理用スラリーを噴射する態様が好ましい。なお、使用済み基材の搬送速度は特に限定されないが、10〜100mm/秒程度が好ましい。
<酸化処理工程(E)>
酸化処理工程(E)では、剥離工程(B)においてCNTが剥離された後の触媒層(使用済み基材の触媒層)を酸化処理する。なお、触媒層に対する酸化処理は、複数回繰り返して実施してもよい。
そして、触媒層を酸化処理する方法としては、特に限定されることなく、例えば、使用済み基材の触媒層を加熱しながら酸素源(酸化性ガス)を導入して、使用済み基材の触媒層表面に存在する炭素を二酸化炭素に変換する方法、などが挙げられる。
<第2の形成工程(C)>
第2の形成工程(C)では、CNTが剥離された触媒層上にCNTを形成する。即ち、第2の形成工程(C)では、少なくとも1回のCNT合成が行われた使用済みCNT生成用基材の触媒層上にCNTを形成する。なお、触媒層上へのCNTの形成方法は、上述した第1の形成工程(A)と同様である。
ここで、CNTが剥離された触媒層上にCNTを形成する前に、CNTが剥離された触媒層上に触媒担持層を新たに形成する触媒担持層形成工程を含んでいてもよく、CNTが剥離された触媒層または新たに形成された触媒担持層上に触媒層を新たに形成する触媒層形成工程を含んでいてもよい。
[触媒担持層形成工程]
CNTが剥離された触媒層上への触媒担持層の形成には、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより触媒担持層を形成する場合について説明する。
触媒担持層を形成するウェットプロセスは、触媒担持層となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解してなる塗工液Aを基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。塗工液Aには金属有機化合物および金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
ここで、例えば、アルミナ膜を触媒担持層として用いる場合、アルミナ膜を形成するための金属有機化合物および/または金属塩としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを用いることができる。アルミナ膜を形成するための金属有機化合物としては他に、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)などの錯体が挙げられる。金属塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらのなかでも、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
安定剤としては、β−ジケトン類およびアルカノールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。β−ジケトン類としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオルアセトン、フロイルアセトンおよびトリフルオルアセチルアセトンなどを用いることができるが、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルを用いることが好ましい。アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどを用いることができるが、第2級または第3級アルカノールアミンを用いることが好ましい。
有機溶剤としては、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル類、炭化水素類等種々の有機溶剤が使用できるが、金属有機化合物および金属塩の溶解性が良いことから、アルコールまたはグリコールを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが、取り扱い性、保存安定性といった点で好ましい。
塗工液A中の金属有機化合物および/または金属塩の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.5g以上であり、好ましくは30g以下、より好ましくは5g以下である。
また、塗工液A中の安定剤の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.01g以上、より好ましくは0.1g以上であり、好ましくは20g以下、より好ましくは3g以下である。
塗工液Aの塗布方法としては、スプレー、ハケ塗り等により塗布する方法、スピンコーティング、ディップコーティング等のいずれの方法を用いてもよいが、生産性および膜厚制御の観点からは、ディップコーティングが好ましい。
塗工液Aを塗布した後の加熱は、触媒担持層の種類に応じ、50℃以上400℃以下の温度範囲で、5分以上3時間以下の時間に亘って行なうことができる。加熱することで塗布された金属有機化合物および/または金属塩の加水分解および縮重合反応が開始され、金属水酸化物および/または金属酸化物を含む硬化皮膜(触媒担持層)が、CNTが剥離された触媒層の表面に形成される。
[触媒層形成工程]
触媒層の形成には、触媒担持層と同様に、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより触媒層を形成する場合について説明する。
触媒層を形成するウェットプロセスは、CNT合成用触媒となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解してなる塗工液Bを基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。塗工液Bには金属有機化合物および金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
ここで、例えば、鉄をCNT合成用触媒として用いる場合、触媒層となる鉄薄膜を形成するための金属有機化合物および/または金属塩としては、鉄ペンタカルボニル、フェロセン、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(II)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(III)等を用いることができる。金属塩としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄等の有機酸鉄等が挙げられる。これらのなかでも、有機酸鉄を用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
なお、塗工液Bの安定剤および有機溶剤としては、上述の塗工液Aと同様のものを用いることができる。また、それらの含有量も、塗工液Aと同様の量とすることができる。
更に、塗工液Bの塗布方法としては、塗工液Aと同様の方法を用いることができる。また、塗工液Bを塗布した後の加熱も、塗工液Aと同様にして行なうことができる。
この触媒層形成工程により、触媒層が表面に新たに形成されてなる使用済み基材が形成される。
新たに形成する触媒担持層と触媒層との合計厚さは、5.0nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
また、基材上に形成された触媒担持層と触媒層との合計総厚み(使用済み基材を再利用して使用済みの触媒層の上に新たに触媒担持層と触媒層とを形成した場合には、使用済みの触媒担持層と触媒層との合計厚みと、新たに形成した触媒担持層と触媒層との合計厚みとの合計)は、10nm超であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。また、触媒担持層と触媒層との合計総厚みは3μm以下とすることができる。
<炭素原子濃度>
第1の形成工程(A)においてCNTを形成する前の触媒層表面の炭素原子濃度は、50原子%未満であることが好ましく、40%原子以下であることがより好ましく、25%原子以下であることが特に好ましい。炭素原子濃度が好ましい範囲であると、得られるCNTの品質および収率をより向上させることができる。
第1の形成工程(A)の後の、剥離工程(B)においてCNTが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度は、50原子%未満である必要があり、48原子%以下であることが好ましく、45原子%以下であることがより好ましい。炭素原子濃度が好ましい範囲であると、得られるCNTの品質および収率をより向上させることができる。
なお、「1回もCNT形成を行っていない使用前CNT生成用基材の触媒層表面の炭素原子濃度」を「A0」(例えば、後述する実施例1における「A0」)とし、「n回目に形成したCNTが剥離された後の使用済みCNT生成用基材の触媒層表面の炭素原子濃度」を「An」(例えば、後述する実施例1における「A1〜A3」)としたときに、炭素原子濃度の比(An/A0)は、2未満であることが好ましい。炭素原子濃度の比(An/A0)が上記範囲内であれば、得られるカーボンナノチューブの品質および収率を良好に保つことができる。
「1回もCNT形成を行っていない使用前CNT生成用基材の触媒層表面の炭素原子濃度A0」(CNT形成前の触媒層表面の炭素原子濃度A0)は、50原子%未満であることが好ましく、40%原子以下であることがより好ましく、25%原子以下であることが特に好ましい。「1回もCNT形成を行っていない使用前CNT生成用基材の触媒層表面の炭素原子濃度A0」が上記範囲内であれば、得られるCNTの品質および収率をより向上させることができる。
<CNTの連続製造>
そして、使用済み基材を再利用しつつCNTを製造する場合には、CNTの形成と剥離を繰り返して実施する。このように、使用済み基材をCNTの形成に再利用すれば、CNTの製造コストを更に低減することができる。
ここで、CNTの形成と剥離を繰り返して実施する場合、X回目(但し、Xは2以上の整数)のCNTの形成をする際の触媒層を新たに形成する部分の表面の炭素原子濃度は、通常、剥離工程(B)において洗浄工程(D)等を行うことを考慮すると、X−1回目のCNTの形成および剥離を実施した後の触媒層表面の炭素原子濃度と概ね等しくなる。例えば、2回目のCNTの形成をする際の触媒層を新たに形成する部分の表面の炭素原子濃度は、通常、1回目のCNTの形成および剥離を実施した後の触媒層表面の炭素原子濃度と概ね等しくなる。
そして、CNTの形成と剥離を繰り返して実施する回数、即ち、CNT生成用基材を再利用する回数は、低コスト化を図る観点からは、50回以上であることが好ましく、より多い方が好ましいので、特に制限はないが、通常、100回以下である。CNT生成用基材を再利用する回数が100回以下であれば、CNT生成用基材の変形を抑制してCNT生成用基材の搬送性(ハンドリング性)を向上させることができる。
<CNTの収量>
CNTの収量は、1.0mg/cm2以上であることが好ましく、1.2mg/cm2以上であることがより好ましく、1.5mg/cm2以上であることが特に好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、CNTのBET比表面積、および、炭素原子濃度は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
<BET比表面積>
BET比表面積測定装置((株)マウンテック製、HM model−1210)を用いて測定した。
<炭素原子濃度>
炭素原子濃度の測定は、表面近傍数ナノメートルに存在する元素の詳細情報が得られるX線光電子分光法(XPS)(Ulvac−PHI製、PHI−5000 VersaP
robeII)を用いて行った。X線は単色化Al−Kα、ビーム径100μm、ビーム出力25W−15kVとした。CNT合成に使用した基材(50cm×50cm:厚み0.6mm)より1cm×1cmを3枚切り出して測定サンプルとし、サンプル1枚について異なる2点でワイド及びナロースペクトルを取得した。対象限度は表面近傍に存在するC、O、N、Al、Feとし、取得したスペクトルについて、帯電補正キャリブレート、バックグラウンド処理及びピークスムージング処理を行い、相対感度係数を考慮した積分値比較による半定量法を用い対象元素の相対炭素原子濃度を算出し、その6回測定平均値を基材表面の炭素原子濃度(原子%)とした。
(実施例1)
<1回目のCNTの合成>
[未使用のCNT生成用基材の調製]
アルミニウム化合物であるアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを、有機溶剤である2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤であるトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、塗工液Aを調製した。
また、鉄化合物である酢酸鉄174mgを有機溶剤である2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤であるトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、塗工液Bを調製した。
基板としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、50cm×50cm、厚さ0.3mm、Cr18%)を準備した。
そして、準備した基板の表面に、室温25℃、相対湿度50%の環境下でディップコーティングにより、上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、基板を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で基板を引き上げた。その後、5分間風乾し、300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、基板上に、下地層である触媒担持層としての膜厚14nmのアルミナ薄膜を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、基板上に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、基板上にアルミナ薄膜を備える基板を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える基板を引き上げた。その後、5分間風乾(乾燥温度45℃)することにより、基板上に、触媒層としての膜厚1nmの鉄薄膜を形成して、未使用のCNT生成用基材を得た。
そして、未使用のCNT生成用基材(CNT形成前の基材)の表面上に形成された触媒層表面の炭素原子濃度(A0)を測定した。炭素原子濃度(A0)は23.44(原子%)であった。
[CNTの形成]
次に、作製した未使用のCNT生成用基材を、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×105Paに保持されたCVD装置の反応チャンバ内に設置し、この反応チャンバ内に、He:100sccm、H2:900sccmを6分間導入した。これにより、CNT合成用触媒(鉄)は還元されて微粒子化が促進され、CNTの成長に適した状態(ナノメートルサイズの触媒微粒子が多数形成された状態)となった(フォーメーション工程)。なお、このときの触媒微粒子の密度は、1×1012〜1×1014個/cm2に調整した。その後、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×105Paに保持された状態の反応チャンバ内に、He:800sccm、C24:100sccm、H2:100sccm、H2O:H2O濃度が200ppmとなる量を10分間供給した。これにより、単層CNTがCNT生成用基材の表面における各触媒微粒子から成長した(CNT成長工程)。
そして、CNT成長工程の終了後、反応チャンバ内にHe:1000sccmのみを供給し、残余の混合ガス(原料ガス+水素ガス)や触媒賦活物質を排除した。これにより、CNT生成用基材の表面上に形成された触媒層表面上にCNT配向集合体が形成された(CNT形成工程)。
[CNTの回収]
その後、CNT生成用基材の表面から、触媒層上に成長したCNT配向集合体を剥離した。具体的には、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラを使用し、CNT配向集合体を剥離した。剥離時には、ヘラの鋭利部をCNT配向集合体と基材との境界に当て、CNT生成用基材からCNT配向集合体をそぎ取るように、CNT生成用基材面に沿って鋭利部を動かした。これにより、CNT配向集合体をCNT生成用基材から剥ぎ取り、使用済み基材を得た(剥離工程(B))。
得られたCNTの収量および比表面積を測定した。表1に示すように、収量が1.48(mg/cm2)であり、比表面積が1502(m2/g)であった。
[使用済み基材の洗浄]
得られた使用済み基材に対し、水洗洗浄を行い(洗浄工程(D))、水洗洗浄後の使用済み基材の表面上の炭素原子濃度(A1)を測定した。表1に示すように、炭素原子濃度(A1)は41.44(原子%)であり、50(原子%)を下回っていた。
その後、得られた使用済み基材に対し、幅広スリット式投射ガンを備えたウェットブラスト装置(マコー(株)社製、PFE300)を用いてウェットブラスト処理による研磨処理を行った(研磨処理工程)。
なお、ウェットブラスト処理に用いるウェットブラスト処理用スラリーとしては、平均粒子径が7μm(JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に規定された粒度♯2000に相当)であるアルミナからなる研磨材(砥粒)を、分散媒としての水中に分散させて調製したものを用いた。なお、研磨材の濃度は15体積%であった。またウェットブラスト処理は、投射ガンの下を50mm/秒で水平方向に搬送される使用済み基材に対して、以下の条件で1回行った。
投射ガンの圧縮空気圧力:0.09MPa
投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離:30mm
投射角度φ:90°
<2回目のCNTの合成>
[触媒層の形成]
洗浄済みの使用済み基材の表面に形成された触媒層(1回目のCNTの合成で形成された触媒層)の上に、それぞれ1回目のCNTの合成と同様にして、膜厚14nmの触媒担持層(アルミナ薄膜)を形成し(触媒担持層形成工程)、膜厚1nmの触媒層(鉄薄膜)を形成した(触媒層形成工程)(使用済み基材の再利用回数:1回)。その結果、触媒担持層および触媒層の合計総厚みは30nmになった。
[CNTの形成]
1回目のCNTの合成と同様にして、洗浄済みの使用済み基材の表面上に形成された触媒層(鉄薄膜)上にCNTを形成した(CNT形成工程)。
[CNTの回収]
1回目のCNTの合成と同様にして、CNTが形成された洗浄済みの使用済み基材の表面から、CNT配向集合体を剥ぎ取り、使用済み基材を得た(剥離工程(B))。
そして、得られたCNTの収量および比表面積を測定した。表1に示すように、収量が1.73(mg/cm2)であり、比表面積が1351(m2/g)であった。
[使用済み基材の洗浄]
1回目のCNTの合成と同様にして使用済み基材の洗浄を行った(洗浄工程(D))。
そして、洗浄工程(D)後(水洗洗浄後であって、かつウェットブラスト処理前)の使用済み基材の表面上に形成された触媒層表面の炭素原子濃度(A2)を測定した。表1に示すように、炭素原子濃度(A2)は35.89(原子%)であった。
<3回目のCNTの合成>
[触媒層の形成]
洗浄済みの使用済み基材の表面に形成された触媒層(2回目のCNTの合成で形成された触媒層)の上に、それぞれ1回目のCNTの合成と同様にして、膜厚14nmの触媒担持層(アルミナ薄膜)を形成し(触媒担持層形成工程)、膜厚1nmの触媒層(鉄薄膜)を形成した(触媒層形成工程)(使用済み基材の再利用回数:2回)。その結果、触媒担持層および触媒層の総厚みは45nmになった。
[CNTの形成]
1回目のCNTの合成と同様にして、洗浄済みの使用済み基材の表面上に形成された触媒層(鉄薄膜)上にCNTを形成した(CNT形成工程)。
[CNTの回収]
1回目のCNTの合成と同様にして、CNTが形成された洗浄済みの使用済み基材の表面から、CNT配向集合体を剥ぎ取り、使用済み基材を得た(剥離工程(B))。
そして、得られたCNTの収量および比表面積を測定した。表1に示すように、収量が1.76(mg/cm2)であり、比表面積が1364(m2/g)であった。
[使用済み基材の洗浄]
1回目のCNTの合成と同様にして使用済み基材の洗浄を行った(洗浄工程(D))。
そして、洗浄工程(D)後(水洗洗浄後であって、ウェットブラスト処理前)の使用済み基材の表面上に形成された触媒層表面の炭素原子濃度(A3)を測定した。表1に示すように、炭素原子濃度(A3)は43.32(原子%)であった。
(実施例2)
<1回目のCNTの合成>
CNTの形成において水素を含む混合ガスを用いる代わりに、原料ガスのみ用いたこと(水素を用いなかったこと)以外は、実施例1の1回目のCNTの合成と同様にして、触媒担持層、触媒層およびCNTの形成、CNTの回収、使用済み基材の洗浄、CNTの収量および比表面積、並びに、未使用のCNT生成用基材(CNT形成前の基材)の表面上に形成された触媒層表面の炭素原子濃度(A0)の測定を行った。炭素原子濃度(A0)は、25.61(原子%)であった。また、表2に示すように、CNT収量が1.96(mg/cm2)であり、比表面積が1310(m2/g)であった。
[洗浄済み基材の酸化処理]
次に、洗浄済み基材を、酸化性ガス:1%のO2を含むN2、槽内温度:400℃の条件で、恒温槽に1時間設置し、酸化処理を行い(酸化処理工程(E))、酸化処理済み基材の表面の炭素原子濃度(A1)の測定を行った。表2に示すように、炭素原子濃度(A1)は40.87(原子%)であった。
<2回目のCNTの合成>
CNTの形成において水素を含む混合ガスを用いる代わりに、原料ガスのみ用いたこと(水素を用いなかったこと)以外は、実施例1の2回目のCNTの合成と同様にして、触媒担持層、触媒層およびCNTの形成、CNTの回収、使用済み基材の洗浄、CNTの収量および比表面積の測定を行った。表2に示すように、CNT収量が1.91(mg/cm2)であり、比表面積が1285(m2/g)であった。
[洗浄済み基材の酸化処理]
1回目のCNTの合成と同様に、洗浄済み基材を酸化処理し、酸化処理済み基材の表面の炭素原子濃度(A2)の測定を行った。表2に示すように、炭素原子濃度(A2)は46.32(原子%)であった。
<3回目のCNTの合成>
CNTの形成において水素を含む混合ガスを用いる代わりに、原料ガスのみ用いたこと(水素を用いなかったこと)以外は、実施例1の3回目のCNTの合成と同様にして、触媒担持層、触媒層およびCNTの形成、CNTの回収、使用済み基材の洗浄、CNTの収量および比表面積の測定を行った。表2に示すように、CNT収量が1.88(mg/cm2)であり、比表面積が1244(m2/g)であった。
[洗浄済み基材の酸化処理]
1回目のCNTの合成と同様に、洗浄済み基材を酸化処理し、酸化処理済み基材の表面の炭素原子濃度(A3)の測定を行った。表2に示すように、炭素原子濃度(A3)は46.79(原子%)であった。
(比較例1)
<1回目のCNTの合成>
CNTの形成において水素を含む混合ガスを用いる代わりに、原料ガスのみ用いたこと(水素を用いなかったこと)以外は、実施例1の1回目のCNTの合成と同様にして、触媒担持層、触媒層およびCNTの形成、CNTの回収、使用済み基材の洗浄、CNTの収量および比表面積の測定、並びに、未使用のCNT生成用基材(CNT形成前の基材)の表面上に形成された触媒層表面の炭素原子濃度(A0)および洗浄工程(D)後(水洗洗浄後であって、ウェットブラスト処理前)の使用済み基材の表面の炭素原子濃度(A1)の測定を行った。炭素原子濃度(A0)は23.44(原子%)であった。また表3に示すように、CNT収量が1.65(mg/cm2)であり、比表面積が1411(m2/g)であった。
<2回目のCNTの合成>
CNTの形成において水素を含む混合ガスを用いる代わりに、原料ガスのみ用いたこと(水素を用いなかったこと)以外は、実施例1の2回目のCNTの合成と同様にして、触媒担持層、触媒層およびCNTの形成、CNTの回収、使用済み基材の洗浄、CNTの収量および比表面積の測定を行った。表3に示すように、CNT収量が0.53(mg/cm2)であり、比表面積が635(m2/g)であった。
Figure 2021070597
Figure 2021070597
Figure 2021070597
表1,表2に示すように、実施例1および2では、2回目および3回目のCNTの合成におけるCNT形成において、剥離工程(B)の後の、使用済み基材の表面上の使用済み触媒層表面の炭素原子濃度(A1およびA2)がいずれも50原子%未満であり、800m2/g以上の比表面積のCNTが1.0g/cm2以上の収量で得られた。
一方、表3に示すように、比較例1では、2回目のCNTの合成におけるCNT形成において、剥離工程(B)の後の、使用済み基材の表面上の使用済み触媒層表面の炭素原子濃度(A1)が50原子%以上であり、得られたCNTの比表面積が800m2/g未満となっているとともに、CNTの収量が1.0g/cm2未満であった。
表1、2および3の結果より、CNTを形成後、CNTが剥離された使用済み触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満であれば、高品質なCNTを効率的に製造することができることが分かる。
本発明のCNTの製造方法によれば、高品質なCNTを効率的に製造することができる。

Claims (4)

  1. 基材と該基材上に設けられた触媒層とを備えるカーボンナノチューブ生成用基材を用いて、カーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブの製造方法であって、
    前記触媒層上にカーボンナノチューブを形成する第1の形成工程(A)と、
    前記触媒層上に形成されたカーボンナノチューブを剥離する剥離工程(B)と、
    カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層上にカーボンナノチューブを再度形成する第2の形成工程(C)と、を含み、
    前記剥離工程(B)においてカーボンナノチューブが剥離された前記触媒層の表面の炭素原子濃度が50原子%未満である、カーボンナノチューブの製造方法。
  2. 前記第1の形成工程(A)と前記第2の形成工程(C)の少なくとも一方において、カーボンナノチューブの原料ガスと水素とを含む混合ガスを用いてカーボンナノチューブを形成する、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  3. 前記剥離工程(B)において、カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層を洗浄する洗浄工程(D)をさらに含む、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  4. 前記剥離工程(B)において、カーボンナノチューブが剥離された前記触媒層を酸化処理する酸化処理工程(E)をさらに含む、請求項1〜3の何れかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
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