JP6673337B2 - 炭素ナノ構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素ナノ構造体の製造方法に関する。
炭素ナノ構造体がナノテクノロジーの中核物質として注目を集めている。本発明において「炭素ナノ構造体」とは、炭素原子から構成されるナノサイズの物質であり、例えば、コイル状のカーボンナノコイル、チューブ状のカーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する。)、CNTが捩れを有したカーボンナノツイスト、CNTにビーズが形成されたビーズ付CNT、CNTが多数林立したカーボンナノブラシ、球殻状のフラーレン、グラフェン、ダイヤモンドライクカーボン薄膜などがある。これら炭素ナノ構造体は、化学気相成長法を用いて金属(触媒)表面上にsp2混成軌道からなる炭素を含むナノ構造体を析出させるという観点において共通しており、製造方法には多くのアナロジーが適応できる。
これまでに、原料ガスを触媒に供給し、化学気相成長法(以下、「CVD法」とも称する。)によって炭素ナノ構造体を成長させる方法が知られている。この方法では、約500℃〜1000℃の高温雰囲気下で炭素化合物を含む原料ガスを触媒の金属微粒子に供給する。当該方法において、触媒の種類及び配置、原料ガスの種類、反応条件などを様々に変化させることで、種々の炭素ナノ構造体を製造することができる。
たとえば、特許文献1には、原料ガスとしてメタン(CH)やエチレン(C)を用い、触媒と接触するガスにアルキンを含む条件にて、CVD法によりCNTを製造する方法が記載されている。また、特許文献2には、原料ガスとしてメタン、エチレン、アセチレン(C)等の炭化水素ガスを用い、原料ガスを触媒に吹き付けてCVD法によりCNTを製造する方法が記載されている。
CVD法によるCNTの製造技術は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とのいずれも製造可能である上、触媒を担持した基板を用いることで、基板面に垂直に配向した多数のCNTを製造することができる、という利点を備えている。また、原料ガスと共に水等の触媒賦活物質を触媒に接触させるスーパーグロース法が開発されて以降、CNTの大量生産に適したものとして注目されている。
ところで、CVD法によるCNT合成の化学反応メカニズムについて、その全容は未だ明確になっていないが、アセチレン(アルキン類)がCNT合成に有効な分子(すなわち、実際にCNT前駆体として機能する分子)であるとの研究結果が複数報告されている。
特表2012−530663号公報 国際公開第05/118473号
しかしながら、CVD法によるCNTの製造において、触媒に供給するアセチレンの体積濃度を増加させてもある濃度(0.5〜1.5%程度)以上では、合成されるCNT収量はほぼ飽和してしまうことが知られていた。また、合成されるCNTの収量と品質(比表面積や後述のG/D)とは逆相関の関係にあり、収量を高くしようと飽和体積濃度以上のアセチレンを触媒に供給しても、収量はあまり上がらずに、比表面積及びG/Dは急激に低下するという問題があった。そのため、品質を維持しつつ収量を上げることが可能なCVD法による製造技術が望まれており、この点において、CNT合成に有効な分子としてアセチレンを単に含むガスを触媒に供給する従来技術は不十分であった。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、高品質な炭素ナノ構造体を高効率に製造可能な炭素ナノ構造体の製造方法を提供することを目的とする。
この目的を達成すべく本発明者は鋭意検討の結果、以下の知見を得た。すなわち、本発明者は、原料ガスではなく実際に触媒に接触するガス(以下、単に「接触ガス」とも称する。)の組成に着目した。具体的には、CVD法において、従来用いられている原料ガスの一種であるエチレンが熱分解されることで生成する多数の炭化水素ガスの中から、アセチレン以外のCNT前駆体を新規に特定した。さらに、それらのCNT前駆体をそれぞれ所定の体積濃度で混合したガスを触媒に接触させることでCNT合成の効率を大きく向上できることを見出した。具体的には、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Aと、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Bと、を、所定の体積濃度で含む混合ガスが有効であることを見出した。
また、接触ガス中の上記CNT前駆体のガス成分をそれぞれ所定の体積濃度以上とすることができる原料ガスの組成をも特定した。以上の知見から、高品質な炭素ナノ構造体を高効率に製造できる方法を確立し、本発明を完成するに至った。
このように本発明は、従来のCNT製造における触媒と接触するガスの組成を単に規定したものではない。本発明において用いられる原料ガスは、特許文献1、2とは異なり、接触ガスも特許文献1とは異なる。特許文献2は、何ら接触ガスに着目するものではない。
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
本発明は、
原料ガスを触媒に供給し、化学気相成長法によって炭素ナノ構造体を成長させる炭素ナノ構造体の製造方法であって、
前記原料ガスに由来し、前記触媒に接触するガスXが、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Aと、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Bと、を含み、
前記炭化水素Aの合計体積濃度[A]が0.1%超過、前記炭化水素Bの合計体積濃度[B]が0.28%以上であることを特徴とする。
本発明において、前記ガスXは、0.1≦[A]/[B]≦8を満たすことが好ましい。
本発明において、前記ガスXが、触媒賦活物質及び/又は水素分子をさらに含むことが好ましい。
本発明において、前記ガスXが、シクロペンタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Cをさらに含むことが好ましい。
また、本発明は、
原料ガスを触媒に供給し、化学気相成長法によって炭素ナノ構造体を成長させる炭素ナノ構造体の製造方法であって、
前記原料ガスが、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素A’と、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素B’と、を含むことを特徴とする。
本発明において、前記炭化水素A’の合計体積濃度を[A’]、前記炭化水素B’の合計体積濃度を[B’]としたときに、前記原料ガスが、0.1≦[A’]/[B’]≦6を満たすことが好ましい。
本発明において、前記原料ガスが、触媒賦活物質及び/又は水素分子をさらに含むことが好ましい。
本発明において、前記原料ガスが、炭素数5の炭素環を少なくとも1つ有する炭化水素C’をさらに含むことが好ましい。
本発明において、前記触媒が基材表面に担持されており、前記原料ガスをガスシャワーによって前記触媒に供給することが好ましい。
本発明において、前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブであることが好ましい。
本発明の炭素ナノ構造体の製造方法によれば、高品質な炭素ナノ構造体を高効率に製造することができる。
本発明に適用可能なCNT製造装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明に適用可能なCNT製造装置の構成の別の一例を示す模式図である。 本発明に適用可能なCNT製造装置の構成の更に別の一例を示す模式図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の炭素ナノ構造体の製造方法の実施形態を説明する。本実施形態の製造方法では、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」という。)に原料ガスを供給し、化学気相成長法によって触媒層上にCNTを成長させる。触媒層上には多数のCNTが基材に略垂直な方向に配向して集合体を形成する。本発明において、これを「CNT配向集合体」という。
(基材)
触媒基材に用いる基材は、例えば平板状の部材であり、500℃以上の高温でも形状を維持できるものが好ましい。具体的には、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、及びアンチモン等の金属、並びにこれらの金属を含む合金及び酸化物、又はシリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイト、及びダイヤモンド等の非金属、並びにセラミック等が挙げられる。金属材料はシリコン及びセラミックと比較して、低コスト且つ加工が容易であるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金等は好適である。
基材の形態は、平板状、薄膜状、ブロック状、ワイヤー状、メッシュ状あるいは粒子・微粒子・粉末状等が挙げられ、特に体積の割に表面積を大きくとれる形状がCNTを大量に製造する場合において有利である。平板状の基材の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。平板状の基材の厚さとしては、好ましくは、0.05mm以上且つ3mm以下である。
(触媒)
触媒基材において、基材上(基材上に浸炭防止層を備える場合には当該浸炭防止層の上)には、触媒層が形成されている。触媒としては、CNTの製造が可能であればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、及び、これらの塩化物及び合金が挙げられる。これらの複数が複合化あるいは層状になっていてもよく、これらが、さらにアルミニウム、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンと複合化あるいは層状になっていてもよい。例えば、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、及びアルミナ−鉄−モリブデン薄膜、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜等を例示することができる。触媒の存在量としては、CNTの製造が可能な範囲であればよく、例えば、鉄を用いる場合、製膜厚さは、0.1nm以上且つ100nm以下が好ましく、0.5nm以上且つ5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上且つ2nm以下が特に好ましい。
基材表面への触媒層の形成は、ウェットプロセス又はドライプロセス(スパッタリング蒸着法等)のいずれを適用してもよい。成膜装置の簡便さ(真空プロセスを要しない)、スループットの速さ、原材料費の安さ等の観点から、ウェットプロセスを適用するのが好ましい。
(触媒形成ウェットプロセス)
触媒層を形成するウェットプロセスは、触媒となる元素を含んだ金属有機化合物及び/又は金属塩を有機溶剤に溶解したコーティング剤を基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。コーティング剤には金属有機化合物及び金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
塗布工程としては、スプレー、ハケ塗り等により塗布する方法、スピンコーティング、及びディップコーティング等、いずれの方法を用いてもよいが、生産性及び膜厚制御の観点からディップコーティングが好ましい。
塗布工程の後に加熱工程を行なうことが好ましい。加熱することで金属有機化合物及び金属塩の加水分解及び縮重合反応が開始され、金属水酸化物及び/又は金属酸化物を含む硬化皮膜が基材表面に形成される。加熱温度はおよそ50℃以上且つ400℃以下の範囲で、加熱時間は5分以上且つ3時間以下の範囲で、形成する触媒薄膜の種類によって適宜調整することが好ましい。
例えば、触媒としてアルミナ−鉄薄膜を形成する場合、アルミナ膜を形成した後に鉄薄膜を形成する。
アルミナ薄膜を形成するための金属有機化合物としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシドが挙げられる。アルミニウムを含む金属有機化合物としては他に、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)等の錯体が挙げられる。また、アルミナ薄膜を形成するための金属塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらのなかでも、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
鉄薄膜を形成するための金属有機化合物としては、鉄ペンタカルボニル、フェロセン、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(II)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(III)等が挙げられる。また、鉄薄膜を形成するための金属塩としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄等の有機酸鉄等が挙げられる。これらのなかでも、有機酸鉄を用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
安定剤としては、β−ジケトン類及びアルカノールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。β−ジケトン類ではアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオルアセトン、フロイルアセトン、及びトリフルオルアセチルアセトン等があるが、特にアセチルアセトン及びアセト酢酸エチルを用いることが好ましい。アルカノールアミン類ではモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等があるが、第2級又は第3級アルカノールアミンであることが好ましい。
有機溶剤としては、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル類、炭化水素類等の種々の有機溶剤が使用できるが、金属有機化合物及び金属塩の溶解性が良いことから、アルコール又はグリコールを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が、取り扱い性、保存安定性といった点で好ましい。
前記コーティング剤中の前記金属有機化合物及び/又は金属塩の含有量としては、通常、0.05質量%以上且つ0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以上且つ0.5質量%以下である。
(フォーメーション工程)
本発明の製造方法では、成長工程の前にフォーメーション工程を行なうことが好ましい。フォーメーション工程とは、触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒及び還元ガスの少なくとも一方を加熱する工程である。この工程により、触媒の還元、CNTの成長に適合した状態としての触媒の微粒子化促進、触媒の活性向上の少なくとも1つの効果が現れる。例えば、触媒がアルミナ−鉄薄膜である場合、鉄触媒は還元されて微粒子化し、アルミナ層上にナノメートルサイズの鉄微粒子が多数形成される。これにより触媒はCNT配向集合体の製造に好適な状態となる。この工程を省略してもCNTを製造することは可能であるが、この工程を行なうことでCNT配向集合体の製造量及び品質を飛躍的に向上させることができる。
還元性を有するガス(還元ガス)としては、CNTの製造が可能なものを用いればよく、例えば水素ガス、アンモニア、及び水蒸気、並びにそれらの混合ガスを適用することができる。また、水素ガスをヘリウムガス、アルゴンガス、及び窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、フォーメーション工程の他、適宜成長工程に用いてもよい。
(成長工程)
成長工程とは、触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱することにより、触媒上にCNT配向集合体を成長させる工程である。高品質なCNTを成長させる観点からは、少なくとも触媒を加熱することが好ましい。加熱の温度は、400℃以上且つ1100℃以下が好ましい。成長工程は、触媒基材を収容するCNT成長炉内に、不活性ガスと、随意に還元ガス及び/又は触媒賦活物質と、を含む原料ガスを導入して行う。
<接触ガス>
本発明は、成長工程で触媒に接触するガスXに1つの大きな特徴を有する。当該ガスXは、原料ガスが分解された各種炭化水素ガスと、分解されることなく触媒に到達した原料ガスと、不活性ガスと、随意に含まれる還元ガス及び/又は触媒賦活物質とからなる。
本発明においてガスXは、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Aと、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Bと、を含み、炭化水素Aの合計体積濃度[A]が0.1超過、炭化水素Bの合計体積濃度[B]が0.28%以上とすることが肝要である。ガスX内に、炭化水素A及び炭化水素Bを併存させ、かつ、体積濃度を上記のとおりとすることにより、CNTの品質を維持しつつ収量を上げることができる。
なお、本明細書において、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素を「アセチレン類」と、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素を「1,3−ブタジエン類」と、いう場合がある。
アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Aとしては、例えば、アセチレン、メチルアセチレン(プロピン)、ビニルアセチレン、1−ブチン(エチルアセチレン)、2−ブチン、ジアセチレン、イソプロピルアセチレン、イソプロペニルアセチレン、1−ペンチン、2−ペンチン、イソペンチン、シクロプロペニルアセチレン、メチルビニルアセチレン、プロペニルアセチレン、フェニルアセチレン、ヘキシン類、及びヘキサジイン類、並びにそれらのラジカルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ただし、CNT成長温度における構造安定性の観点から、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、2−ブチン、及びフェニルアセチレンが好ましい。
1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Bとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、c−ピペリレン、及びt−ピペリレン、並びにそれらのラジカルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ただし、CNT製造効率の観点から、1,3−ブタジエンが好ましい。
本発明では、触媒に接触するガスX中の炭化水素Aの合計体積濃度[A]は0.1%超過である。CNTの品質を維持しつつ収量をより上げる効果として、[A]は、より好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.5%以上である。[A]の上限濃度は炉内に設置する触媒の空間密度に比例する傾向があり、88%まで上げることが可能である。触媒基材として平板を用いた場合、通常は10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。触媒密度に対して炭化水素Aの濃度が過剰であると、アモルファスカーボンなど炭素不純物の生成量が多くなり、用途によってはそれら不純物が無視できなくなってくる。
ガスX中の炭化水素Bの合計体積濃度[B]は0.28%以上である。CNTの品質を維持しつつ収量をより上げる効果として、[B]は、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.6%以上である。[B]の上限濃度は炉内に設置する触媒の空間密度に比例する傾向があり、90%まで上げることが可能である。触媒基材として平板を用いた場合、通常は10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。触媒密度に対して炭化水素Bの濃度が過剰であると、アモルファスカーボンなど炭素不純物の生成量が多くなり、用途によってはそれら不純物が無視できなくなってくる。
本発明の効果をより十分に得る観点から、[A]/[B]は、0.1以上且つ8以下であることが好ましい。より好ましくは、0.2以上且つ6以下、さらに好ましくは、0.5以上且つ2以下である。
ガスXは、シクロペンタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Cをさらに含むことが好ましい。該炭化水素Cとしては、例えば、シクロペンタジエン、インデン、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、トリメチルシクロペンタジエン、テトラメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、及びエチルシクロペンタジエン、並びにそれらのラジカルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ただし、CNT成長温度における構造安定性の観点から、シクロペンタジエン及びメチルシクロペンタジエンが好ましい。ガスXが炭化水素Cを含むことによって、CNTの収量および品質を維持しつつ、必要な炭化水素Aを低減することが可能になる。アセチレン類は化学反応性が高いため、他のガスと比較して取扱や安全性に課題があり運用コストが増加する傾向がある。それゆえ、炭化水素Aの使用量を可能な限り低減することが好ましい。
ガスX中の炭化水素Cの合計体積濃度[C]は、上記効果を十分に得る観点から、0.06%以上であることが好ましく、より好ましくは、0.2%以上、さらに好ましくは、0.3%以上である。また、ガスX中の炭化水素Cの合計体積濃度[C]は、炉内に設置する触媒の空間密度に比例する傾向があり、99%まで上げることが可能である。アモルファスカーボンなど炭素不純物の生成を抑える観点から、触媒基材として平板を用いた場合、通常は10%以下が好ましく、より好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、2%以下である。
なお、本明細書において、シクロペンタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素を「シクロペンタジエン類」という場合がある。
なお、本発明において、接触ガスの同定及び体積濃度の測定は、基材設置位置近傍のガスを所定量吸引サンプリングして、ガスクロマトグラフィー(GC)によりガス分析することで行うものとする。サンプリングにおいて、ガスは熱分解が進行しない温度(約200℃)まで短時間に急冷された後に、直ちにGCへ導入される。これによって、サンプルガスの化学変化を防止し、触媒に接触しているガスの組成を正しく測定することが可能になる。
<原料ガス>
ガスXを上記のようにするために、原料ガスは、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素A’と、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素B’と、を含むことが好ましい。
炭化水素A’は、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、イソプロピルアセチレン及びイソプロペニルアセチレンからなる群から選択される少なくとも1種とすることが好ましい。原料ガス中、炭化水素A’の合計体積濃度[A’]は、0.1%以上であることが好ましく、より好ましくは、0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上である。また、[A’]は86%まで上げることが可能であり、通常は10%以下であることが好ましく、より好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、2%以下である。炭化水素A’の濃度が低すぎると本発明の効果が得にくく、高すぎるとアモルファスカーボン等の炭素不純物が生成し、用途によってはそれら不純物が無視できなくなる傾向がある。
炭化水素B’は、1,3−ブタジエン、イソプレン、c−ピペリレン、及びt−ピペリレンからなる群から選択される少なくとも1種とすることが好ましい。原料ガス中、炭化水素B’の合計体積濃度[B’]は、0.3%以上であることが好ましく、より好ましくは、0.4%以上、さらに好ましくは、0.5%以上である。また、[B’]は90%まで上げることが可能であり、通常は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。炭化水素B’の濃度が低すぎると本発明の効果が得にくく、高すぎるとアモルファスカーボン等の炭素不純物が生成し、用途によってはそれら不純物が無視できなくなる傾向がある。
また、[A’]/[B’]は、0.1以上且つ6以下であることが好ましい。より好ましくは、0.2以上且つ3以下、さらに好ましくは、0.3以上且つ2以下である。この範囲内とすることにより、ガスXをより確実に本発明の範囲に設定することができる。
さらに、原料ガスは、炭素数5の炭素環を少なくとも1つ有する炭化水素C’を含むことが好ましい。
炭化水素C’は、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン及びシクロペンタンからなる群から選択される少なくとも1種とすることが好ましい。上記効果を十分に得る観点から、原料ガス中、炭化水素C’の合計体積濃度[C’]は0.1%以上であることが好ましく、より好ましくは、0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上である。炭化水素C’の濃度が低すぎると本発明の効果が得にくく、高すぎるとアモルファスカーボンなど炭素不純物が生成し、用途によってはそれら不純物が無視できなくなる傾向がある。また、原料ガス中、炭化水素C’の合計体積濃度[C’]は、炉内に設置する触媒の空間密度に比例する傾向があり、99%まで上げることが可能である。アモルファスカーボンなど炭素不純物の生成を抑える観点から、触媒基材として平板を用いた場合、通常は10%以下が好ましく、より好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、2%以下である。
<不活性ガス>
原料ガスは、通常、不活性ガスで希釈されることになる。不活性ガスとしては、CNTが成長する温度で不活性であり、且つ成長するCNTと反応しないガスであればよく、触媒の活性を低下させないものが好ましい。例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、及びクリプトン等の希ガス、窒素、水素、並びにこれらの混合ガスを例示できる。
また、不活性ガスを用いずに、炉内全体を減圧し、各種ガス濃度の分圧を減らすことで、不活性ガス希釈と同等の効果を得ることも可能である。
<触媒賦活物質>
CNTの成長工程において、触媒賦活物質を添加してもよい。触媒賦活物質の添加によって、CNTの生産効率や純度をより一層改善することができる。ここで用いる触媒賦活物質としては、一般には酸素を含む物質であり、成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質であることが好ましい。例えば、水、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素、及び二酸化炭素等の低炭素数の含酸素化合物;エタノール、メタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン等のケトン類;アルデヒド類;エステル類;並びにこれらの混合物が有効である。この中でも、水、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、及びエーテル類が好ましく、特に水、一酸化炭素、二酸化炭素、並びにこれらの混合物が好適である。
触媒賦活物質の体積濃度は、特に限定されないが微量でよく、例えば水の場合、炉内に導入される原料ガス中、その含有量は、通常、0.001%以上且つ1%以下、好ましくは0.005%以上且つ0.1%以下とする。この場合、ガスXにおいては、通常、0.001%以上且つ1%以下、好ましくは0.005%以上且つ0.1%以下となる。触媒賦活物質が二酸化炭素の場合、炉内に導入される原料ガス中、その含有量は、通常、0.5%以上且つ20%以下、好ましくは2%以上且つ8%以下とする。この場合、ガスXにおいては、通常、0.5%以上且つ20%以下、好ましくは2%以上且つ8%以下となる。
本発明においてガスXとしては、本発明の効果をより充分に得る観点から、触媒賦活物質及び/又は還元ガスとして水素分子からなる水素ガスをさらに含むことが好ましい。
なお、一般的にCVD法における反応速度に影響を与えるのは、反応に関与する成分の分圧(体積分率×全圧)であることが知られている。一方、全圧は直接に影響を与えないので、広い範囲で変更することが可能である。よって、CVD条件においてガス成分濃度を規定する単位としては分圧を用いることが正確であるが、本発明においては、原料ガス及び接触ガスのガス成分濃度を、成長炉内全圧が1気圧の前提の下での体積分率で記述することとする。よって、成長炉内全圧が1気圧以外の場合に本発明を適用する際は、原料ガス及び接触ガスのガス成分濃度として、その環境下、前記前提の下での分圧に等しい分圧を示しうるように修正した体積分率を用いなければならない。成長炉内全圧が1気圧以外の場合におけるそのような修正は当業者にとって明らかであり、従って、かかる場合も本発明の範囲に包含される。
<その他の条件>
成長工程における反応炉内の圧力、処理時間は、他の条件を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、圧力は10Pa以上且つ10Pa以下、処理時間は0.1分以上且つ120分以下程度とすることができる。炉内に導入される原料ガスの流量については、例えば、後述する実施例を参照して適宜設定することができる。
(冷却工程)
冷却工程とは、成長工程後にCNT配向集合体、触媒、基材を冷却ガス下に冷却する工程である。成長工程後のCNT配向集合体、触媒、基材は高温状態にあるため、酸素存在環境下に置かれると酸化してしまうおそれがある。それを防ぐために冷却ガス環境下でCNT配向集合体、触媒、基材を例えば400℃以下、更に好ましくは200℃以下に冷却する。冷却ガスとしては不活性ガスが好ましく、特に安全性、コスト等の点から窒素であることが好ましい。
(製造装置)
本発明の実施に用いる製造装置は、触媒基材を受容する成長炉(反応チャンバ)を備え、CVD法によりCNTを成長させることができるものであれば、特に限定されず、熱CVD炉、MOCVD反応炉等の装置を使用できる。CNTの製造効率を高める観点からは、還元ガス及び原料ガスをガスシャワーによって触媒基材上の触媒に供給することが好ましく、以下、触媒基材に対し概ね直交するようにガス流を噴出可能なシャワーヘッドを備えた装置の例も挙げて説明する。
<バッチ式製造装置の一例>
本発明に適用されるCNT製造装置100を図1に模式的に示す。この装置100は、石英からなる反応炉102と、反応炉102を外囲するように設けられた例えば抵抗発熱コイル等からなる加熱器104と、還元ガス及び原料ガスを供給すべく反応炉102の一端に接続されたガス供給口106と、反応炉102の他端に接続された排気口108と、基材を固定する石英からなるホルダー110とを含んで構成される。さらに図示していないが、還元ガス及び原料ガスの流量を制御するため、流量制御弁及び圧力制御弁等を含む制御装置を適所に付設してなる。
<バッチ式製造装置の他の例>
本発明に適用されるCNT製造装置200を図2に模式的に示す。この装置200は、還元ガス、原料ガス、触媒賦活物質等を噴射するシャワーヘッド112を用いる以外は、図1に示す装置と同じ構成である。
シャワーヘッド112は、各噴出孔の噴射軸線が基材の触媒被膜形成面に概ね直交する向きとなるように配置される。つまりシャワーヘッドに設けられた噴出孔から噴出するガス流の方向が、基材に概ね直交する。
シャワーヘッド112を用いて還元ガスを噴射すると、還元ガスを基材上に均一に散布することができ、効率良く触媒を還元することができる。結果、基材上に成長するCNT配向集合体の均一性を高めることができ、且つ還元ガスの消費量を削減することもできる。このようなシャワーヘッドを用いて原料ガスを噴射すると、原料ガスを基材上に均一に散布することができ、効率良く原料ガスを消費することができる。結果、基材上に成長するCNT配向集合体の均一性を高めることができ、且つ原料ガスの消費量を削減することもできる。このようなシャワーヘッドを用いて触媒賦活物質を噴射すると、触媒賦活物質を基板上に均一に散布することができ、触媒の活性が高まると共に寿命が延長するので、配向CNTの成長を長時間継続させることが可能となる。
<連続製造装置の一例>
本発明に適用されるCNT製造装置300を図3に模式的に示す。
図3に示すように、製造装置300は、入口パージ部1、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、冷却ユニット4、出口パージ部5、搬送ユニット6、接続部7、8、9、及びガス混入防止手段11、12、13を有する。
〔入口パージ部1〕
入口パージ部1は、触媒基材10の入口から炉内へ外気が混入することを防止するための装置一式である。製造装置300内に搬送された触媒基材10の周囲環境を窒素等の不活性パージガスで置換する機能を有する。具体的には、パージガスを保持するためのチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部等を有する。
〔フォーメーションユニット2〕
フォーメーションユニット2は、フォーメーション工程を実現するための装置一式である。具体的には、還元ガスを保持するためのフォーメーション炉2A、還元ガスを噴射するための還元ガス噴射部2B、並びに触媒及び還元ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター2Cなどを有する。
〔成長ユニット3〕
成長ユニット3は、成長工程を実現するための装置一式である。具体的には、成長炉3A、原料ガスを触媒基材10上に噴射するための原料ガス噴射部3B、並びに触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター3Cを含んでいる。成長ユニット3の上部には排気口3Dが設けられている。
〔冷却ユニット4〕
冷却ユニット4は、CNT配向集合体が成長した触媒基材10を冷却する冷却工程を実現する装置一式である。具体的には、冷却ガスを保持するための冷却炉4A、水冷式の場合は冷却炉内空間を囲むように配置した水冷冷却管4C、空冷式の場合は冷却炉内に冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射部4Bを有する。
〔出口パージ部5〕
出口パージ部5は、触媒基材10の出口から炉内へ外気が混入することを防止するための装置一式である。触媒基材10の周囲環境を窒素等の不活性パージガス環境にする機能を有する。具体的には、パージガスを保持するためのチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部等を有する。
〔搬送ユニット6〕
搬送ユニット6は、製造装置の炉内に触媒基材10を搬送するための装置一式である。具体的には、ベルトコンベア方式におけるメッシュベルト6A、減速機付き電動モータを用いたベルト駆動部6B等を有する。
〔接続部7、8、9〕
接続部7、8、9は、各ユニットの炉内空間を空間的に接続する装置一式である。具体的には、触媒基材10の周囲環境と外気を遮断し、触媒基材10をユニットからユニットへ通過させることができる炉又はチャンバ等が挙げられる。
〔ガス混入防止手段11、12、13〕
ガス混入防止手段11、12、13は、製造装置300内の隣接する炉(フォーメーション炉2A、成長炉3A、冷却炉4A)間でガス同士が相互に混入することを防止するための装置一式であり、接続部7、8、9に設置される。ガス混入防止手段11、12、13は、各炉における触媒基材10の入口及び出口の開口面に沿って窒素等のシールガスを噴出するシールガス噴射部11B、12B、13Bと、主に噴射されたシールガスを外部に排気する排気部11A、12A、13Aとを、それぞれ有する。
メッシュベルト6Aに載置された触媒基材10は装置入口から入口パージ部1の炉内へと搬送され、以降、各炉内で処理を受けた後、出口パージ部5から装置出口を介して装置外部に搬送される。
(炭素ナノ構造体)
本発明の製造方法によれば、上述のようにして高品質なCNTを高効率に製造可能であるが、CNTに限られず、公知文献を参照して適宜製造条件を設定することにより、カーボンナノコイル等その他、CVD法により触媒表面上に成長させることが可能な、sp2混成軌道からなる炭素を含む、種々の炭素ナノ構造体を製造することができる。前記公知文献としては、例えば、特開2009−127059号公報(ダイヤモンドライクカーボン)、特開2013−86993号公報(グラフェン)、特開2001−192204号公報(コイル・ツイスト)、及び特開2003−277029号公報(フラーレン)等が挙げられる。
以下、本発明の製造方法により得られる炭素ナノ構造体の一例として、本発明の製造方法により得られるCNTについて説明する。なお、CNTは、本発明の製造方法により直接的にはCNT配向集合体として得られる。当該集合体を、例えば、物理的、化学的又は機械的な剥離方法、具体的には、電場、磁場、遠心力又は表面張力を用いて剥離する方法や、ピンセットやカッターブレードを用いて機械的に直接剥ぎ取る方法や、真空ポンプによる吸引等の圧力や熱により剥離する方法等により、触媒基材から剥離することで、バルク状態のCNTや、粉体状態のCNTを得ることができる。
本発明の製造方法によるCNTの収量は、2.4mg/cm以上であることが好ましく、2.8mg/cm以上であることが更に好ましい。なお、本発明において収量は以下の式により算出するものとする。
(収量)=(CNT製造前後での基材重量差)/(基材の触媒担持面積)
本発明の製造方法において、炭素変換効率は、1.6%以上であることが好ましく、2.8%以上であることが更に好ましい。なお、本発明において「炭素変換効率」とは、(製造されたCNT重量)/(炉内に導入した全炭素重量)×100[%]を意味し、「炉内に導入した全炭素重量」は、理想気体近似の仮定のもと、ガス流量、原料ガスの炭素濃度及び成長時間の、以上3つの値から算出することができる。
なお、本発明において炭素濃度は、ガスに含まれる炭素原子濃度を示し、ガス中の各炭化水素ガス種(i=1、2、・・・)に対して、濃度(vol%)をD1、D2、・・・、分子1つに含まれる炭素原子数をC1、C2、・・・として下記数式で計算している。
(炭素濃度)=ΣDiCi
原料ガス中の炭素濃度は、本発明の効果をより十分に得る観点から、好ましくは1.3%以上、より好ましくは2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上とする。炭素濃度の上限は炉内の触媒密度に比例する傾向があり、380%まで上げることが可能である。触媒基材として平板を用いた場合、炭素濃度は、通常は60%以下が好ましく、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。触媒密度の量に対して炭素濃度が過剰であるとアモルファスカーボンなど炭素不純物が生成し、用途によってはそれら不純物が無視できなくなってくる。
CNTは、単層カーボンナノチューブであっても良いし、多層カーボンナノチューブであってもよいが、本発明の製造方法によれば単層カーボンナノチューブをより好適に製造することができる。
CNTの平均直径(Av)としては、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。カーボンナノチューブの平均直径(Av)は、通常、透過型電子顕微鏡を用いてカーボンナノチューブを100本測定して求める。
CNTは、本発明の製造方法によりCNT配向集合体として得られるが、その比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることが更に好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1400m/g以下であることが更に好ましい。更に、CNTが主として開口したものにあっては、比表面積が1300m/g以上であることが好ましい。なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定したBET比表面積を指す。
CNT配向集合体としての重量密度は0.002g/cm以上、0.2g/cm以下であることが好ましい。重量密度が0.2g/cm以下であれば、CNT配向集合体を構成するCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT配向集合体を溶媒等に攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。また、重量密度が0.002g/cm以上であれば、CNT配向集合体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取扱いが容易になる。
CNT配向集合体は高い配向度を有していることが好ましい。高い配向度を有するか否かは、以下の1.から3.の少なくともいずれか1つの方法によって評価することができる。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が、第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、かつ第1方向からの反射強度が、第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在すること。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現すること。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1より小さいこと、より好ましくは0.25以上且つ1以下であること。
CNT配向集合体の高さ(長さ)としては、10μm以上且つ10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向度が向上する。また高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき、比表面積を向上できる。
CNT配向集合体のG/D比は好ましくは2以上、更に好ましくは4以上である。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm−1付近)とDバンド(1350cm−1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
また、CNT配向集合体は、精製処理を行わなくても、その純度は、通常、98質量%以上、好ましくは99.9質量%以上である。本発明の製造方法により得られるCNT配向集合体には不純物が殆ど混入しておらず、CNT本来の諸特性を充分に発揮することができる。なお、純度は、蛍光X線を用いた元素分析により求めることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(基材)
縦500mm×横500mm、厚さ0.6mmのFe−Cr合金SUS430(JFEスチール株式会社製、Cr:18質量%)の平板を用意した。レーザ顕微鏡を用いて複数個所の表面粗さを測定したところ、算術平均粗さRa≒0.063μmであった。
(触媒の形成)
上記の基材上に以下のような方法で触媒を形成した。まず、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを2−プロパノール100mL(78g)に溶解させ、安定剤としてトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、アルミナ膜形成用コーティング剤を調製した。ディップコーティングにより、室温25℃、相対湿度50%の環境下で基材上に上述のアルミナ膜形成用コーティング剤を塗布した。塗布条件としては、基材を浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で基板を引き上げた後、5分間風乾した。次に、300℃の空気環境下で30分間加熱した後、室温まで冷却した。これにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ膜を形成した。
続いて、酢酸鉄174mgを2−プロパノール100mLに溶解させ、安定剤としてトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、鉄膜コーティング剤を調製した。ディップコーティングにより、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、アルミナ膜が成膜された基材上に鉄膜コーティング剤を塗布した。塗布条件としては、基材を浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度で基板を引き上げた後、5分間風乾した。次に、100℃の空気環境下で、30分加熱した後、室温まで冷却した。これにより、膜厚3nmの触媒生成膜を形成した。
以下、全ての実験例において、このように触媒が形成された基材を用いた。
(実験例1)
図1に示すようなバッチ式成長炉内でフォーメーション工程と成長工程とを順次行うことでCNTを製造した。前述の触媒基材を縦40mm×横40mmの大きさに切り出したものを触媒基材として用い、フォーメーション工程、成長工程を順次行なって基材表面にCNTを製造した。各工程におけるガス流量、ガスの組成、加熱器の設定温度、及び処理時間を表1に示す。
Figure 0006673337
触媒基材を設置する位置を変更することで原料ガス加熱時間を調整し、製造されるCNTの収量及び比表面積のバランスが最も良い基材位置を決定した。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表2に示す。
なお、「原料ガス加熱時間」とは、原料ガスが炉内加熱領域に入ってから触媒基材に到達するまでの概算平均時間であり、以下の式により求められる。
原料ガス加熱時間[min]=(基材より上流側の加熱領域体積[mL])/{(ガス流量[sccm])×(炉温度[K])×1/(273[K])}
Figure 0006673337
表2中、CPDはシクロペンタジエン、pCはメチルアセチレン(プロピン)、VAはビニルアセチレン、2Bは2−ブチン、aCはプロパジエン(アレン)、13BDは1,3−ブタジエン、t−PPLはt−ピペリレン、C10はナフタレンを意味する。以下の表においても同様である。表2以外の成分として、アセチレン類としては1−ブチン、ジアセチレン、フェニルアセチレンが、1,3−ブタジエン類としてはイソプレン、c−ピペリレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、アレン類としては1,2−ブタジエンが、排気タール主成分のPAHsとしてはアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが、それぞれ微量(10ppm以下)検出された。また、その他の成分として、水素、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、スチレンなどが検出された。この実験例は、炭化水素Bの合計体積濃度[B]が0.28%未満であるため、「比較例1」とする。
上記条件で得られたCNTの特性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0006673337
以下、比較例1の収量および炭素変換効率を基準として各実験例の収量および炭素変換効率を評価した。
(実験例2)
実験例1と同様の製造装置を用い、成長工程における原料ガスの組成を表4のように変更してCNTを製造した。表4に記載しない諸条件は実験例1と同様とした。
Figure 0006673337
各条件において、原料ガスのCと13BDの濃度比([A’]/[B’])を一定(0.4)とし、原料ガスに含まれる炭素原子濃度(以下、「炭素濃度」と呼ぶ。)を変えて実験を行った。また、各条件において、原料ガスに添加する水素Hおよび触媒賦活物質HOの濃度は、炭素濃度に比例するように変更した。
触媒基材を設置する位置を変更することで原料ガス加熱時間を調整した。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表5に示す。
Figure 0006673337
表5中、IPはイソプレン、c−PPLはc−ピペリレン、12BDは1,2−ブタジエンを意味する。以下の表においても同様である。表5以外の成分として、アセチレン類としてはジアセチレン、メチルビニルアセチレン、フェニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ極微量(数ppm以下)検出された。排気タール主成分のPAHsとしてはナフタレンが最も多く数10ppm以下、その他成分はアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが微量(10ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、プロピレン、アセトン、ベンゼン、トルエン、スチレン等が検出された。
各条件で得られたCNTの特性を評価した。結果を表6に示す。
Figure 0006673337
接触ガスにおけるC濃度(炭化水素Aの濃度[A])が0.1%超過、且つ13BD濃度(炭化水素Bの濃度[B])が0.28%以上の実施例2−1〜実施例2−4では、比表面積を1000m/g以上に維持しつつ、比較例1と比較して、収量が約1.4倍〜2.5倍に増加することが示された。また、炭素変換効率も約1.7倍〜2.8倍に向上することが示された。
(実験例3)
実験例1と同様の製造装置を用い、成長工程における原料ガスの組成を表7のように変更してCNTを製造した。表7に記載しない諸条件は実験例2と同様とした。
Figure 0006673337
各条件において、炭素濃度を一定(6.0%)とし、原料ガスのCと13BD濃度比([A’]/[B’])を表7に示す通りに変えて製造を行った。また、各条件において、原料ガスに添加する水素Hの濃度は2.00%で一定とし、触媒賦活物質HOの濃度は0.02%で一定とした。
触媒基材を設置する位置は実験例2と同じとした。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表8に示す。
Figure 0006673337
表8以外の成分として、アセチレン類としてはジアセチレン、フェニルアセチレン、メチルビニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ極微量(数ppm以下)検出された。排気タール主成分のPAHsとしてはナフタレンが最も多く数10ppm以下、その他成分はアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが極微量(数ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、アセトン、ベンゼン等が検出された。
各条件で得られたCNTの特性を評価した。結果を表9に示す。
Figure 0006673337
[A]が0.1%超過且つ[B]が0.28%以上である実施例3−1〜実施例3−6では、比較例1よりも収量が1.2〜2.0倍ほど増加し、且つ比表面積を900m/g以上に維持できることが示された。また、炭素変換効率も約1.6〜2.7倍に向上することが示された。さらに、[A]/[B]が0.1〜8の範囲では特にこの傾向が顕著であった。
(実験例4)
実験例1と同様の製造装置を用い、成長工程における原料ガスの組成を表10のように、1,3−ブタジエン類(炭化水素B’)としてIPを用いてCNTを製造した。表10に記載しない諸条件は実験例1と同様とした。
Figure 0006673337
炭素濃度は6.0%とし、原料ガスのCとIPの濃度比([A’]/[B’])は0.4として製造を行った。
触媒基材を設置する位置は実験例2と同じとした。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表11に示す。
Figure 0006673337
表11以外の成分として、アセチレン類としては1−ブチン、メチルビニルアセチレン、フェニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ微量(10ppm以下)検出された。排気タール主成分のPAHsとしてはナフタレンが最も多く数10ppm以下、その他成分はアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが極微量(数ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエンなどが検出された。
得られたCNTの特性を評価した。結果を表12に示す。
Figure 0006673337
原料ガスの炭化水素B’をIPに変えても、比較例1と比較して収量が1.7倍に増加し、且つ比表面積を1000m/g以上に維持できることが示された。また、炭素変換効率も2.3倍に向上することが示された。
(実験例5)
実験例1と同様の製造装置を用い、成長工程における原料ガスの組成を表13のように、アセチレン類(炭化水素A’)としてpC、1,3−ブタジエン類(炭化水素B’)としてIPを用いてCNTを製造した。表13に記載しない諸条件は実験例1と同様とした。
Figure 0006673337
原料ガス中の炭素濃度を6.0%とし、原料ガスのpCとIPの濃度比([A’]/[B’])を0.4として製造を行った。
触媒基材を設置する位置は実験例2と同じとした。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表14に示す。
Figure 0006673337
表14以外の成分として、アセチレン類としては1−ブチン、メチルビニルアセチレン、フェニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ微量(10ppm以下)検出された。排気タール主成分のPAHsとしてはナフタレンが最も多く数10ppm以下、その他成分はアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが極微量(数ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエンなどが検出された。
得られたCNTの特性を評価した。結果を表15に示す。
Figure 0006673337
原料ガスの炭化水素A’をpC、炭化水素B’をIPに変えても、比較例1と比較して収量が1.4倍に増加し、且つ比表面積を1000m/g以上に維持できることが示された。また、炭素変換効率も1.8倍に向上することが示された。
(実験例6)
実験例1と同様の製造装置を用い、成長工程における原料ガスの組成を表16のように変更してCNTを製造した。表16に記載しない諸条件は実験例1と同様とした。
Figure 0006673337
各条件において、炭素濃度を一定(4.0%)とし、原料ガスのCの体積濃度[A’]と13BDの体積濃度[B’]の比[A’]/[B’]を表16に示す通りに変えて製造を行った。また、各条件において、原料ガスに添加する水素Hの濃度は1.33%で一定とし、触媒賦活物質HOの濃度は0.01%で一定とした。
触媒基材を設置する位置は実験例2と同じとした。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表17に示す。
Figure 0006673337
表17以外の成分として、アセチレン類としてはジアセチレン、フェニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ極微量(数ppm以下)検出された。排気タール主成分PAHsのその他成分としてはアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが極微量(数ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、ベンゼンなどが検出された。
各条件で得られたCNTの特性を評価した。結果を表18に示す。
Figure 0006673337
原料ガスがエチレンの場合(比較例1)とで比較して、[A’]/[B’]が0.1〜6の範囲になる実施例6−1〜実施例6−4では、比表面積、G/D、収量のいずれもほぼ同等以上を維持しつつ、炭素変換効率が1.8倍〜2.8倍に向上しつつ、排気タール主成分であるナフタレン濃度が比較例1の約1/20以下に低減していることが示された。
(実験例7)
実験例1と同様の製造装置を用い、成長工程における原料ガスの組成を表19のように、Cと13BDの他に炭化水素C’としてシクロペンテン(CPE)を添加してCNTを製造した。表19に記載しない諸条件は実験例1と同様とした。
Figure 0006673337
各条件において、原料ガス中の炭素濃度を一定(6.0%)とし、原料ガスのCと13BDの濃度比([A’]/[B’])及びCPEの濃度を表19に示す通りに変えて製造を行った。
触媒基材を設置する位置は実験例2と同じとした。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表20に示す。
Figure 0006673337
表20以外の成分として、アセチレン類としてはジアセチレン、フェニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ微量(10ppm以下)検出された。排気タール主成分PAHsのその他成分としてはアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが極微量(数ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、シクロペンテン、ベンゼン等が検出された。
得られたCNTの特性を評価した。結果を表21に示す。
Figure 0006673337
原料ガスに炭化水素C’を添加することで、比較例1と比較して、収量が2.1倍以上に増加し、且つ比表面積を800m/g以上に維持できることが示された。また、比較例1と比較して、炭素変換効率も2.7倍以上に向上することが示された。また、排気タール主成分であるナフタレン濃度が比較例1の約1/16以下に低減していることが示された。
(実験例8)
図2に示すようなバッチ式成長炉内でフォーメーション工程と成長工程とを順次行うことでCNTを製造した。前述の触媒基材を縦40mm×横120mmの大きさに切り出したものを触媒基材として用い、フォーメーション工程、成長工程を順次行なって基材表面にCNTを製造した。各工程におけるガス流量、ガスの組成、加熱器の設定温度、および処理時間を表22に示す。
Figure 0006673337
炭素濃度は6.0%とし、原料ガスのCと13BDの濃度比([A’]/[B’])は0.4として製造を行った。
触媒基材を設置する位置を変更することで原料ガス加熱時間を調整した。まず始めに、触媒基材を設置しないで成長工程を実施し、基材設置位置近傍のガスを約200sccm吸引サンプリングしてガス分析を実施した。分析結果を表23に示す。
Figure 0006673337
表23以外の成分として、アセチレン類としてはジアセチレン、メチルビニルアセチレン、フェニルアセチレンが、シクロペンタジエン類としてはメチルシクロペンタジエンが、それぞれ極微量(数ppm以下)検出され、排気タール主成分のPAHsとしてはナフタレンが最も多く数10ppm以下、その他成分はアセナフチレン、ビフェニル、フルオレン、フェナントレン、アントラセンが極微量(数ppm以下)検出された。また、その他成分として、水素、メタン、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエンなどが検出された。
上記条件で得られたCNTの特性を評価した。結果を表24に示す。
Figure 0006673337
比較例1と比較して収量が1.8倍ほど増加し、且つ比表面積を1000m/g以上に維持し、炭素変換効率においては約17倍に向上することが示された。
(実験例9)
図3に示すような連続式成長炉内で、フォーメーション工程と成長工程を含む工程を連続的に行なうことでCNT配向集合体を製造した。前述の触媒基材をそのまま(縦500mm×横500mm)製造装置のメッシュベルト上に載置し、メッシュベルトの搬送速度を変更しながら基材上にCNT配向集合体を製造した。製造装置の各部の条件を表25に示す。
Figure 0006673337
成長ユニット3内、触媒基材が通過する位置近傍にガスサンプリングのためのプローブを設置し、触媒基材を通過させないこと以外は、CNT配向集合体を製造する場合と同様の条件で装置を作動させて空炉のまま炉内を加熱し、前記プローブでガスをサンプリングし、得られたガスのガス分析を行った結果、接触ガスの組成は実施例8とほぼ同等の結果であり、500mm×500mmの大型基材上に実験例8とほぼ同等のCNTが均一に製造できることが確認できた。
本発明の炭素ナノ構造体の製造方法によれば、高品質な炭素ナノ構造体を高効率に製造することができる。
100、200、300 CNT製造装置
102 反応炉
104 加熱器
106 ガス供給口
108 排気口
110 ホルダー
112 シャワーヘッド
1 入り口パージ部
2 フォーメーションユニット
2A フォーメーション炉
2B 還元ガス噴射部
2C ヒーター
3 成長ユニット
3A 成長炉
3B 原料ガス噴射部
3C ヒーター
3D 排気口
4 冷却ユニット
4A 冷却炉
4B 冷却ガス噴射部
4C 水冷冷却管
5 出口パージ部
6 搬送ユニット
6A メッシュベルト
6B ベルト駆動部
7、8、9 接続部
10 触媒基材
11、12、13 ガス混入防止手段
11A、12A、13A 排気部
11B、12B、13B シールガス噴射部

Claims (10)

  1. 原料ガスを触媒に供給し、化学気相成長法によって炭素ナノ構造体を成長させる炭素ナノ構造体の製造方法であって、
    前記原料ガスに由来し、前記触媒に接触するガスXが、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Aと、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Bと、を含み、
    前記炭化水素Aの合計体積濃度[A]が0.1%超過、前記炭化水素Bの合計体積濃度[B]が0.28%以上である
    ことを特徴とする炭素ナノ構造体の製造方法。
  2. 前記ガスXが、
    0.1≦[A]/[B]≦8
    を満たす請求項1に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  3. 前記ガスXが、触媒賦活物質及び/又は水素分子をさらに含む請求項1又は2に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  4. 前記ガスXが、シクロペンタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素Cをさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  5. 原料ガスを触媒に供給し、化学気相成長法によって炭素ナノ構造体を成長させる炭素ナノ構造体の製造方法であって、
    前記原料ガスが、アセチレン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素A’と、1,3−ブタジエン骨格を少なくとも1つ有する炭化水素B’と、を含む
    ことを特徴とする炭素ナノ構造体の製造方法。
  6. 前記炭化水素A’の合計体積濃度を[A’]、前記炭化水素B’の合計体積濃度を[B’]としたときに、前記原料ガスが、
    0.1≦[A’]/[B’]≦6
    を満たす請求項5に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  7. 前記原料ガスが、触媒賦活物質及び/又は水素分子をさらに含む請求項5又は6に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  8. 前記原料ガスが、炭素数5の炭素環を少なくとも1つ有する炭化水素C’をさらに含む請求項5〜7のいずれか1項に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  9. 前記触媒が基材表面に担持されており、前記原料ガスをガスシャワーによって前記触媒に供給する請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
  10. 前記炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブである請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
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