JP6376009B2 - 再利用基材の製造方法、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法およびカーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents

再利用基材の製造方法、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法およびカーボンナノチューブの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、再利用基材の製造方法、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法およびカーボンナノチューブの製造方法に関し、特には、カーボンナノチューブ合成用触媒を担持させる基材として好適に用いられる再利用基材の製造方法、当該再利用基材を用いたカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法、および当該再利用基材を用いたカーボンナノチューブの製造方法に関するものである。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)は、力学的強度、光学特性、電気特性、熱特性、分子吸着能等の各種特性に優れており、電子デバイス材料、光学素子材料、導電性材料等の機能性材料としての展開が期待されている。
ここで、CNTの製造方法の一つとして、化学気相成長法(以下、「CVD法」と称することがある。)が知られている。このCVD法は、高温雰囲気下で原料となる炭素化合物を金属微粒子よりなる触媒と接触させてCNTを合成することを特徴としている。そして、CVD法は、CNTの製造条件(例えば、触媒の種類または配置、炭素化合物の種類、或いは、反応条件など)の自由度が高く、また、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とのいずれも製造可能である製造方法として注目されている。
また、CVD法を用いたCNTの製造方法の中でも、CNT合成用触媒を担持した基材(以下、「触媒基材」と称することがある。)を用いてCNTを合成する方法は、触媒基材に対して垂直に配向した多数のCNTを大量に製造することができるため、特に注目されている。そのため、触媒基材を使用してCVD法によりCNTを製造する方法に関し、製造コストの低減などを目的とした様々な提案がなされている。
具体的には、例えば特許文献1では、触媒基材上で形成したCNTを回収した後、使用済みの触媒基材を焼成し、そして焼成した触媒基材をCNTの合成にそのまま再使用することにより、CNTの製造コストを低減することが提案されている。
また、例えば特許文献2では、触媒基材上に形成したCNTを特定の方法で触媒基材から剥離して回収した後、使用済みの触媒基材について、触媒基材上の炭素成分を燃やして灰化させるアッシング処理や、触媒基材上の触媒成分を除去する酸洗浄を実施してからCNTの合成に再使用することにより、CNTの製造コストを低減することが提案されている。
特開2006−27948号公報 特開2007−91485号公報
しかし、特許文献1に記載の技術では、600〜750℃の高温下で焼成した触媒基材を再利用しているため、CNTの合成を繰り返すと、CNT合成用触媒自体やCNT合成用触媒を担持している基材が劣化し、製造されるCNTの品質が低下する虞があった。
また、特許文献2に記載の技術においても、触媒基材の再利用に際し、高温下でのアッシング処理や、硝酸、塩酸またはフッ酸などを使用した酸洗浄を実施しているため、CNTの合成を繰り返すと、CNT合成用触媒を担持している基材が劣化し、製造されるCNTの品質が低下する虞があった。
一方で、焼成、アッシング処理または酸洗浄などを実施することなく触媒基材の再利用を繰り返すと、基材の表面に残存した炭素成分などの不純物の影響によりCNTの合成不良が発生し、製造されるCNTの品質が低下する虞がある。
即ち、上記従来の技術には、基材の再利用によるCNTの製造コストの低減と、高品質なCNTの安定的な製造とを両立することができないという問題点があった。
そこで、本発明は、高品質なCNTを低コストで安定的に製造することを可能にする技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、CNTの製造に使用した触媒基材を再利用してCVD法によりCNTを繰り返し合成する際に、ウェットブラスト処理による物理的な洗浄方法を用いて基材を洗浄することで、基材の劣化を抑制しつつ基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の再利用基材の製造方法は、表面からカーボンナノチューブが剥離された使用済み基材を用いた再利用基材の製造方法であって、前記使用済み基材の前記表面を洗浄する初期化工程を含み、前記洗浄が、ウェットブラスト処理による洗浄であることを特徴とする。このように、使用済み基材に対してウェットブラスト処理による洗浄を実施すれば、基材の劣化を抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去することができる。従って、この製造方法を用いて製造した再利用基材にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させて形成した触媒基材をカーボンナノチューブの合成に使用すれば、使用済み基材の再利用によるコストの削減と、高品質なカーボンナノチューブの安定的な製造とを両立することができる。
ここで、本発明の再利用基材の製造方法は、前記初期化工程の後に、前記表面を清掃する清掃工程を更に含むことが好ましい。初期化工程の後に清掃工程を実施すれば、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物が十分に除去された再利用基材を製造することができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法は、上述した再利用基材の製造方法の何れかにより得られた再利用基材の前記表面側にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させ、前記再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を含むことを特徴とする。このように、上述した再利用基材の製造方法を用いて得られた再利用基材の表面に触媒層を形成してカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造すれば、使用済み基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することが可能な触媒基材を提供できる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、上述した再利用基材の製造方法の何れかにより得られた再利用基材を用いることを特徴とする。このように、上述した再利用基材の製造方法を用いて得られた再利用基材を使用すれば、高品質なカーボンナノチューブを低コストで安定的に製造することがてきる。
本発明の再利用基材の製造方法によれば、基材の劣化を抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去した再利用基材を製造することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法によれば、使用済み基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することが可能な触媒基材を提供することができる。さらに、本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、使用済みの基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができる。
従って、本発明によれば、使用済み基材の再利用によるコストの削減と、高品質なカーボンナノチューブの安定的な製造とを両立することができる。
基材を再利用しつつカーボンナノチューブを繰り返し合成する本発明のカーボンナノチューブの製造方法の一例のフローチャートである。 本発明の再利用基材の製造方法の一例を用いて製造される再利用基材の構成を模式的に示す図である。 (a)は、初期化工程を実施する前の使用済み基材の状態を模式的に示す図であり、(b)は、初期化工程を実施した後の使用済み基材の状態を模式的に示す図である。 本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例を用いて製造されるカーボンナノチューブ生成用触媒基材の構成を模式的に示す図である。 図4に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用してカーボンナノチューブを合成した後に基材からカーボンナノチューブを剥離して得られる使用済み基材の構成を模式的に示す図である。 本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例を用いて製造されるカーボンナノチューブ生成用触媒基材の別の構成を模式的に示す図である。 カーボンナノチューブ生産装置の一例の構成を模式的に示す図である。 初期化工程におけるウェットブラスト処理の回数に対して、生成したカーボンナノチューブのG/D比(5回の繰り返し合成により得られた値の平均値)をプロットした散布図である。 初期化工程を実施する前の使用済み基材表面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。 初期化工程(ウェットブラスト処理1回)を実施した後の使用済み基材表面のSEM画像である。 初期化工程(ウェットブラスト処理6回)を実施した後の使用済み基材表面のSEM画像である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の再利用基材の製造方法は、カーボンナノチューブ(CNT)の合成に使用された使用済み基材を原材料として使用し、表面にCNT合成用触媒を担持させることでCNTの合成に再び使用することができる再利用基材を製造する際に用いられる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法は、本発明の再利用基材の製造方法を用いて製造した再利用基材を使用し、化学気相成長法(CVD法)を用いたCNTの合成に良好に使用し得るカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際に用いられる。
さらに、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、本発明の再利用基材の製造方法を用いて得られた再利用基材を使用してCVD法によりCNTを製造する方法である。そして本発明のカーボンナノチューブの製造方法の好適な態様として、例えば図1に示すような、基材を再利用しつつCNTを繰り返し合成するCNTの製造方法が挙げられる。
(カーボンナノチューブの製造方法)
ここで、図1に示すカーボンナノチューブの製造方法は、基材上に形成したCNTを基材から剥離するCNT剥離工程と、CNT剥離工程において基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材を使用し、本発明の再利用基材の製造方法を用いて再利用基材を製造する工程(再利用基材製造工程)と、得られた再利用基材を使用し、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法を用いてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する工程(触媒基材製造工程)と、得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用し、CVD法によりカーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTを合成するCNT成長工程とを含む。そして、カーボンナノチューブの製造方法では、これらの工程を繰り返し実施し、基材を再利用しつつ低コストでCNTを繰り返し製造する。
<CNT剥離工程>
CNT剥離工程では、表面にCNTが形成された基材からCNTを剥離し、表面からCNTが剥離された使用済み基材を得る。
ここで、CNT剥離工程においてCNTを基材から剥離する方法としては、物理的、化学的あるいは機械的な剥離方法を例示できる。具体的には、例えば、電場、磁場、遠心力、表面張力等を用いて剥離する方法、機械的に直接基材から剥ぎ取る方法、並びに、圧力または熱を用いて基材から剥離する方法等が適用可能である。また、真空ポンプを用いてCNTを吸引し、基材から剥ぎ取ることも可能である。なお、簡単でCNTを損傷させ難い剥離方法としては、CNTをピンセットで直接つまんで基材から剥がす方法や、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が挙げられる。中でも、剥離方法としては、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が好適である。
<再利用基材製造工程>
再利用基材製造工程において再利用基材を製造する際に使用する本発明の再利用基材の製造方法の一例は、使用済み基材を洗浄する初期化工程を含み、任意に、初期化工程を経た使用済み基材を清掃する清掃工程を更に含む。
[使用済み基材]
CNT剥離工程において基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材は、一例としてCNTの製造を一度のみ実施した基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材の構成を図3(a)に示すように、例えば、基材10と、基材10の両面に設けられた浸炭防止層11と、基材10の主表面側(図3では上側)に位置する浸炭防止層11の上に設けられた下地層12と、下地層12の基材10側とは反対側の表面に設けられた触媒層13とを備えている。そして、使用済み基材の、少なくとも触媒層13側の表面(即ち、CNTが形成されていた側の表面)には、CNTの合成時に付着した炭素成分やCNTの剥離時に残存した炭素成分などの不純物14が残存している。具体的には、使用済み基材の表面には、CNTの剥離時に取りきれずに残ったCNT、グラファイト状またはアモルファス状のナノ粒子、薄片状物質等の炭素化合物が残存していると推察される。因みに、使用済み基材の、不純物14以外の構成、即ち、基材10、浸炭防止層11、下地層12および触媒層13は、CNT剥離工程において基材から剥離されたCNTを合成した際に使用されたものである。従って、例えば触媒層13は、CNTの剥離時に剥離されずに残存した微粒子状のCNT合成用触媒で構成されている。
なお、使用済み基材は、浸炭防止層を備えていなくてもよい。また、使用済み基材は、下地層を備えていなくてもよい。
[[基材]]
ここで、CNTの合成に使用された後に使用済み基材の一部を構成する基材10としては、その表面にCNT合成用の触媒を担持することが可能であり、後述するウェットブラスト処理による洗浄に対する耐性を有している基材であれば任意の基材が用いられる。具体的には、基材10としては、CNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。なお、基材10は、500℃以上の高温でも形状を維持できることが好ましい。
ここで、基材10の材質としては、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウムおよびアンチモンなどの金属、並びに、これらの金属を含む合金および酸化物、或いは、シリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイトおよびダイヤモンドなどの非金属、並びに、セラミックなどを例示できる。これらの中でも、金属は、シリコンおよびセラミックと比較して、低コスト且つ加工が容易であるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金などは好適である。
基材10の形状としては、平板状、薄膜状、ブロック状または粒子状などが挙げられ、CNTを大量に製造する観点からは、体積の割に表面積を大きくとれる平板状および粒子状が特に有利である。
ここで、基材10が合金からなる場合、特に形状が平板状のものには、その圧延工程に由来するヘアライン状の凹凸が全面に存在しており、この凹凸部に付着した汚れは一般に除去されにくいと予想される。しかし、本発明ではウェットブラスト処理による洗浄を行うことから、該凹凸部に存在する汚れを効率的に除去できると考えられ、本発明による効果をより顕著に得ることが可能である。
なお、平板状の基材10を使用する場合、基材10の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。好ましくは、基材10の厚さは0.05mm以上3mm以下である。基材10の厚さが3mm以下であれば、CNTを合成する際に基材10を十分に加熱することができ、CNTの成長不良の発生を抑制することができる。また、基材10のコストを低減できる。一方、基材10の厚さが0.05mm以上であれば、CNT合成時の浸炭による基材10の変形を抑制することができ、また、基材自体のたわみが起こりにくいため、基材10の搬送や再利用に有利である。なお、本明細書にいう「浸炭」とは、基材10に炭素成分が浸透することをいう。
また、平板状の基材10の形状および大きさに特に制限はないが、形状としては、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。また、基材10の一辺の長さに特に制限はないが、CNTの量産性の観点からは、一辺の長さは長いほど望ましい。
[[浸炭防止層]]
浸炭防止層11は、CNTを合成する際に基材10が浸炭されて変形してしまうことを防止するための保護層である。浸炭防止層11は、基材10の表面および裏面のいずれか一方のみに形成してもよいが、基材10の両面に形成することが望ましい。
浸炭防止層11は、金属またはセラミック材料によって構成されることが好ましく、特に浸炭防止効果の高いセラミック材料で構成されることが好ましい。金属としては、銅、アルミニウム等を例示できる。セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の酸化物、窒化アルミニウム、及び、窒化ケイ素等の窒化物を例示できる。これらの中でも、浸炭防止効果が高いことから、浸炭防止層11を構成する材料としては、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が好ましい。
なお、浸炭防止層11上には下地層12または触媒層13を形成するが、浸炭防止層の材質と下地層12または触媒層13の材質とが共通する場合には、浸炭防止層11を設けることなく、下地層12や触媒層13を浸炭防止層11として機能させてもよい。
浸炭防止層11の厚さは、0.01μm以上1.0μm以下が望ましい。浸炭防止層の厚さが0.01μm以上であると、浸炭防止効果を充分に得ることができる。一方、浸炭防止層の厚さが1.0μm以下であると、基材10の熱伝導性が変化するのを抑制し、CNT合成時に基材10を十分に加熱してCNTを良好に成長させることができる。浸炭防止層11の層形成(コーティング)の方法としては、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的方法、CVD、塗布等の方法を用いることができる。
[[下地層]]
下地層12は、「触媒担持層」とも称されるものであり、CNT合成用触媒の下地となる層である。そして、下地層12の材料としては、CNT合成用触媒の下地となるものであればさまざまな材料を用いることができ、例えば、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンなどのセラミック材料が好適に用いられる。中でも、下地層12の材料としては、セラミック材料を用いることが好ましい。セラミック材料の方が、基材10を再利用してCNTを合成したときにCNTが良好に成長するからである。
なお、下地層12の厚みは、CNTの成長が安定して歩留まりが向上する観点からは10nm以上であることが好ましく、生産効率の観点からは30nm以下であることが好ましい。
[[触媒層]]
触媒層13は、CNT合成用触媒の微粒子を含む層である。ここで、触媒層13を構成するCNT合成用触媒としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデン、並びに、これらの塩化物および合金等をCNT合成用触媒として例示することができる。
なお、触媒層13の形成に使用するCNT合成用触媒の量は、例えば、これまでのCNTの製造に実績のある量を使用することができる。具体的には、例えばCNT合成用触媒として鉄を用いる場合には、触媒層13の厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
因みに、触媒層13は、基材10の表面側および裏面側の両面に形成してもよい。基材10の両面に触媒層13を形成すれば、CNTを基材10の両面において成長させることができるので、生産効率を向上させることができる。もちろん、生産コストや生産工程上の都合等に応じて、触媒層13を基材10の片面のみに設けることは可能である。
ここで、上述した下地層12および触媒層13の組み合わせとしては、例えば、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、および、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜などを例示することができる。
なお、例えば、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜などの形態でもCNTの合成は可能であるが、基材の再利用を行なう場合、下地層12の形成に使用する材料は、セラミック材料の方が好ましい。セラミック材料は、金属材料に比べてCVD法を用いたCNTの合成中に劣化し難いため、セラミック材料を使用すれば、CVD法を用いたCNTの合成を2度以上行なった場合でも、CNTが良好に成長するからある。
ここで、上述した基材10、浸炭防止層11および触媒層12は、それぞれ、その表面の算術平均粗さRaが3μm以下であることが望ましい。表面の算術平均粗さRaが3μm以下であれば、使用済み基材の表面への炭素成分の付着が防止または抑制され、さらに浸炭されにくくなる。従って、基材を再利用してCNTを合成した際に、高品質のCNTを安定的に高効率で生産することが可能となる。
なお、算術平均粗さRaは、JIS B0601(2001)に記載の通り、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけ抜き取って、この抜き取り部分の平均線方向にX軸、直交する縦倍率の方向にY軸をとったときの表面プロファイルをy=f(x)で表したときに、次式(1)によって求められる。
[初期化工程]
初期化工程においては、CNTが剥離された使用済み基材に対し、ウェットブラスト処理による洗浄を実施する。具体的には、初期化工程では、使用済み基材の表面のうち、少なくともCNTが剥離された側の表面に対して、ウェットブラスト処理による洗浄を実施する。そして、図3(a)に初期化工程を実施する前の使用済み基材の状態を示し、図3(b)に初期化工程を実施した後の使用済み基材の状態を示すように、初期化工程においては、使用済み基材の表面(図示例では触媒層13の表面)に残存していた炭素成分などの不純物14が、ウェットブラスト処理による洗浄により除去される。
なお、初期化工程後の基材上には、図3(b)に示すように下地層12および触媒層13が残存していてもよいし、使用済み基材の下地層12および触媒層13は、ウェットブラスト処理による炭素成分の除去に伴って除去されていてもよい。なお、初期化工程において下地層12および触媒層13が除去されても、後述する下地層形成工程および触媒層形成工程において下地層および触媒層を再び形成すれば、その後のCNTの生成に悪影響を及ぼすことはない。一方で、初期化工程で炭素成分の除去が不十分であると、その上に下地層および触媒層を形成したとしても、その後のCNTの生成においてCNTの生産量や品質が低下することがある。
ここで、「ウェットブラスト処理による洗浄」とは、研磨材を分散媒中に分散させてなるウェットブラスト処理用スラリーを被洗浄物である使用済み基材の表面に対して衝突させて、使用済み基材の表面を物理的に洗浄する方法である。
[[ウェットブラスト処理用スラリー]]
ウェットブラスト処理用スラリーに用いる研磨材としては、アルミナ、炭化珪素、樹脂、ガラス、ジルコニアおよびステンレスなどが挙げられる。これらの中でもアルミナが好ましい。そしてこれらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
研磨材の形状は特に限定されないが、略球状であることが好ましい。そして研磨材の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径が1μm以上であれば、使用済み基材上に残存した炭素成分などの不純物を効率よく除去することができ、30μm以下であれば、ウェットブラスト処理後における使用済み基材の表面が過度に荒れることもない。
なお、本発明において研磨材の「平均粒子径」は、JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に準じて測定された累積高さ50%の粒子径(dS−50値)をいう。
ウェットブラスト処理用スラリーに用いる分散媒としては、研磨材を分散可能であれば特に限定されないが、水を含むことが好ましい。
そして、ウェットブラスト処理用スラリー中の研磨材の濃度は、5体積%以上であることが好ましく、7.5体積%以上であることがより好ましく、10体積%以上であることが更に好ましく、25体積%以下であることが好ましく、22.5体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましい。スラリー中の研磨材の濃度が5体積%以上であれば、使用済み基材上に残存した炭素成分などの不純物を効率よく除去することができ、25体積%以下であれば、研磨材同士の衝突による処理効率の低下を抑制することができる。
[[スラリーの使用済み基材表面への衝突]]
上述したウェットブラスト処理用スラリーを、例えば投射ガンを用いて圧縮空気により加速させて、使用済み基材表面に衝突させる。
ここで圧縮空気の圧力は特に限定されないが、0.03MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることがより好ましく、0.3MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以下であることがより好ましい。圧縮空気の圧力が上述の範囲内であれば、研磨材を含むスラリーを均一に霧化して、使用済み基材表面を均一に処理することができる。
また、投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離は、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることが更に好ましく、50mm以下であることが好ましく、45mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることが更に好ましい。投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離が上述の範囲内であれば、使用済み基材表面を効率よくかつ均一に処理することができる。
また、ウェットブラスト処理用スラリーの投射角度φ(使用済み基材表面に対する角度、0°≦φ≦90°)は、80°以上が好ましく、85°以上がより好ましく、90°(すなわち、使用済み基材表面と垂直であること)が更に好ましい。投射角度φが80°以上であれば、使用済み基材表面を効率よくかつ均一に処理することができる。
そして、ウェットブラスト処理に用いる投射ガンの種類は特に限定されず、ノズル、幅広スリットなどの投射ガンを挙げることができる。
また、投射ガンを用いたウェットブラスト処理の具体的な態様は特に限定されないが、例えば、使用済み基材を水平方向に搬送し、その上側に固定された投射ガンから、搬送されている使用済み基材に対してウェットブラスト処理用スラリーを噴射する態様が好ましい。なお、使用済み基材の搬送速度は特に限定されないが、10〜100mm/秒程度が好ましい。そしてウェットブラスト処理は3回以上行うことが好ましく、6回以上行うことがより好ましく、10回以上行うことが更に好ましい。ウェットブラスト処理を3回以上行えば、生成されるCNTのG/D比を高めることができる。
[清掃工程]
清掃工程においては、初期化工程後の基材上を清掃して、図2に示すような、使用済み基材から炭素成分等の不純物が除去された再利用基材20を得る。清掃工程では、初期化工程において用いた洗浄方法とは異なる方法、例えば、基材表面を水洗し、布により拭き取る方法や、基材表面を水洗し、エアーを吹き付けて乾燥する方法等により、基材上を清掃する。ウェットブラスト処理による洗浄を実施した後の基材表面には、炭素成分などの不純物が除去しきれずに残存している場合があるが、初期化工程後に基材を清掃することによって、残存する炭素成分などの不純物を十分に取り除くことができる。なお、基材表面に残存する炭素成分等と基材との接着力は、初期化工程におけるウェットブラスト処理による洗浄により低下している。従って、清掃工程では、水洗、拭き取り等によって容易に炭素成分等を取り除くことができる。
なお、清掃工程後の基材上には、図2に示すように下地層12および触媒層13が残存していてもよいし、下地層12および触媒層13は、基材表面の清掃に伴って除去されていてもよい。なお、清掃工程において下地層12および触媒層13が除去されても、後述する下地層形成工程および触媒層形成工程において、下地層および触媒層を形成すれば、その後のCNTの生成に悪影響を及ぼすことはない。
[再利用基材]
そして、上述した再利用基材製造工程において使用済み基材に対して初期化工程と任意の清掃工程とを実施して得られる再利用基材は、例えば図2に示すような、使用済み基材から炭素成分等の不純物が除去された構成を有している。具体的には、図2に示す再利用基材20は、基材10と、基材10の両面に設けられた浸炭防止層11と、基材10の主表面側(図2では上側)に位置する浸炭防止層11の上に設けられた下地層12と、下地層12の基材10側とは反対側の表面に設けられた触媒層13とを備えている。なお、下地層12や触媒層13が前述した初期化工程および清掃工程において除去された場合には、再利用基材は下地層12や触媒層13を有さない構成となる。
ここで、この再利用基材20の表面からは、前述した初期化工程および清掃工程において炭素成分等が除去されている。従って、再利用基材20は、後に詳細に説明する触媒基材製造工程において下地層や触媒層を形成してカーボンナノチューブ生成用触媒基材とした後、CNTの製造に再度使用することができる。即ち、再利用基材20は、後に詳細に説明する触媒基材製造工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際の原料基材として用いることができる。
なお、再利用基材20をCNTの製造に再度使用する場合、再利用基材20が炭素成分等の不純物を含んでいると、CNTの成長が不安定になる、或いは、生成されるCNTの品質が低下する可能性がある。しかし、再利用基材20を製造する際には、前述した初期化工程および清掃工程において炭素成分等を十分に除去しているので、再利用基材20を使用すれば、CNTの成長を安定化することができると共に、高品質なCNTを繰り返し生成することができる。
ここで、基材に付着した炭素成分などの除去方法としては、高温で加熱して蒸発または灰化させる方法や、酸洗浄する方法等が考えられる。しかし、高温で基材を加熱すると、基材の損傷、基材の反り等の問題が生じ、再利用時にCNTの成長に悪影響を及ぼす場合がある。また、基材を酸洗浄すると、特に基材が金属材料よりなる場合に、基材が腐食され、再利用時にCNTの成長に悪影響を及ぼす可能性がある。
これに対して、前述した初期化工程では、分散媒(液体)を主成分とするスラリーを用いたウェットブラスト処理による洗浄で炭素成分等を除去しているので、洗浄時の基材の劣化(例えば、損傷、反りおよび腐食の発生など)を抑制することができる。従って、再利用基材20を使用すれば、CNTの成長を安定化させ、高品質なCNTを繰り返し生成することができる。
なお、基材の腐食を十分に抑制する観点からは、ウェットブラスト処理による洗浄において使用する水を含む分散媒のpHは、4以上10以下であることが好ましい。
[[再利用基材の性状]]
ここで、上述したとおり、再利用基材20からは炭素成分等が十分に除去されていることが好ましく、再利用基材20は炭素成分等が表面に残存していないことが特に好ましい。ここで、再利用基材20から炭素成分が除去されていることは、例えば基材表面のラマンスペクトル測定により評価することが可能である。ラマンスペクトルにおいて、炭素成分は、1593cm-1付近のグラファイトの振動モード、または、1350cm-1付近の結晶性の低いアモルファス炭素化合物の振動モードとして検出することが可能である。従って、再利用基材20は、これらのピークが観測されないことが好ましい。
また、この再利用基材20は、表面(触媒層13側の表面)の水に対する接触角が80°以下であることが好ましく、77°以下であることが更に好ましい。再利用基材20の表面の接触角が大きい場合、CNTの製造に再度使用した際にCNTの成長に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
なお、接触角は、再利用基材の触媒層側の表面に純水を2マイクロリットル滴下し、5秒後の液滴から、θ/2法を用いて算出することができる。
<触媒基材製造工程>
再利用基材製造工程で得られた再利用基材を使用し、触媒基材製造工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際に使用する本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例は、再利用基材の表面にCNT合成用触媒を担持させ、再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を少なくとも含む。なお、触媒基材製造工程は、任意に、CNT合成用触媒の下地となる下地層を再利用基材の表面に形成する下地層形成工程を触媒層形成工程の前に含んでいてもよい。
ここで、再利用基材をCNTの合成に使用する場合、触媒層13が最表面にある再利用基材20をそのまま用いて2度目のCNTの合成を行なうことも考えられる。しかし、再利用基材20をそのまま用いた場合、CNTの成長が不安定になったり、生成されるCNTの品質が低下したりする場合がある。考えられる原因としては、触媒層13中の触媒微粒子の密度や直径が、1度目のCNT合成時とは異なる状態なっていることや、初期化工程や清掃工程において触媒層13中の触媒微粒子が除去されたこと等が挙げられる。
そのため、触媒基材製造工程では、再利用基材の表面にCNT合成用触媒を再び担持させ、再利用基材上に触媒層を再び形成する。なお、触媒層を再び形成する前に再利用基材上に下地層を形成すれば、使用済みの触媒層と、次のCNTの合成に使用する触媒層とを下地層で分離し、触媒層を良好に形成することができる。従って、触媒基材製造工程では、下地層形成工程を実施することが好ましい。
なお、当業者であれば、再利用基材の表面に下地層や触媒層を新たに設けるのであれば、使用済み基材に対して初期化工程や清掃工程を実施することなく、使用済み基材をそのまま用いてもよいと考えるであろう。しかし、本発明者らは、初期化工程を行わずに使用済み基材を再利用した場合、CNTが生成しない場合があることを見出した。このことから、使用済み基材の再利用にあたり、初期化工程は、CNTの成長の安定性を向上させる役割、若しくは、CNTの成長を促進する役割があることを見出し、本発明に至ったのである。
[下地層形成工程]
再利用基材20の触媒層13上への下地層の形成には、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより下地層を形成する場合について説明する。
下地層を形成するウェットプロセスは、下地層となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解してなる塗工液Aを基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。塗工液Aには金属有機化合物および金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
ここで、例えば、アルミナ膜を下地層として用いる場合、アルミナ膜を形成するための金属有機化合物および/または金属塩としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを用いることができる。アルミナ膜を形成するための金属有機化合物としては他に、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)などの錯体が挙げられる。金属塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらのなかでも、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
安定剤としては、β−ジケトン類およびアルカノールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。β−ジケトン類としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオルアセトン、フロイルアセトンおよびトリフルオルアセチルアセトンなどを用いることができるが、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルを用いることが好ましい。アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどを用いることができるが、第2級または第3級アルカノールアミンを用いることが好ましい。
有機溶剤としては、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル類、炭化水素類等種々の有機溶剤が使用できるが、金属有機化合物および金属塩の溶解性が良いことから、アルコールまたはグリコールを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが、取り扱い性、保存安定性といった点で好ましい。
塗工液A中の金属有機化合物および/または金属塩の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.5g以上であり、好ましくは30g以下、より好ましくは5g以下である。
また、塗工液A中の安定剤の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.01g以上、より好ましくは0.1g以上であり、好ましくは20g以下、より好ましくは3g以下である。
塗工液Aの塗布方法としては、スプレー、ハケ塗り等により塗布する方法、スピンコーティング、ディップコーティング等のいずれの方法を用いてもよいが、生産性および膜厚制御の観点からは、ディップコーティングが好ましい。
塗工液Aを塗布した後の加熱は、下地層の種類に応じ、50℃以上400℃以下の温度範囲で、5分以上3時間以下の時間に亘って行なうことができる。加熱することで塗布された金属有機化合物および/または金属塩の加水分解および縮重合反応が開始され、金属水酸化物および/または金属酸化物を含む硬化皮膜(下地層)が再利用基材の表面に形成される。
[触媒層形成工程]
触媒層の形成には、下地層と同様に、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより触媒層を形成する場合について説明する。
触媒層を形成するウェットプロセスは、CNT合成用触媒となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解してなる塗工液Bを基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。塗工液Bには金属有機化合物および金属塩の過度な縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
ここで、例えば、鉄をCNT合成用触媒として用いる場合、触媒層となる鉄薄膜を形成するための金属有機化合物および/または金属塩としては、鉄ペンタカルボニル、フェロセン、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(II)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(III)等を用いることができる。金属塩としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄等の有機酸鉄等が挙げられる。これらのなかでも、有機酸鉄を用いることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
なお、塗工液Bの安定剤および有機溶剤としては、上述の塗工液Aと同様のものを用いることができる。また、それらの含有量も、塗工液Aと同様の量とすることができる。
更に、塗工液Bの塗布方法としては、塗工液Aと同様の方法を用いることができる。また、塗工液Bを塗布した後の加熱も、塗工液Aと同様にして行なうことができる。
この触媒層形成工程により、触媒層が再利用基材の表面に形成されてなるカーボンナノチューブ生成用触媒基材が形成される。
[カーボンナノチューブ生成用触媒基材]
そして、上述した触媒基材製造工程において再利用基材20に対して下地層形成工程と触媒層形成工程とを実施して得られるカーボンナノチューブ生成用触媒基材は、例えば図4に示すような、再利用基材20の触媒層13側に新たな下地層22および触媒層23が順次積層された構成を有している。具体的には、図4に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1は、基材10、浸炭防止層11、下地層12および触媒層13を有する再利用基材20と、再利用基材20の触媒層13側の表面に新たに設けられた下地層22と、下地層22の再利用基材20側とは反対側の表面に新たに設けられた触媒層23とを備えている。
このカーボンナノチューブ生成用触媒基材1は、再利用基材20の上に下地層22および触媒層23を新たに形成しているので、以下に詳細に説明するCNT成長工程においてCNTを合成する際に好適に用いることができる。
<CNT成長工程>
CNT成長工程では、触媒基材製造工程において得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用し、CVD法等の既知の手法を用いてカーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTを合成する。なお、CNT成長工程では、再利用基材の上に下地層や触媒層を新たに形成してなるカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用しているので、高品質のCNTを安定的に合成することができる。
具体的には、CNT成長工程では、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ生成用触媒基材上のCNT合成用触媒を還元するフォーメーション工程と、CNTを成長させる成長工程と、CNTが成長した基材を冷却する冷却工程とを順次実施して、カーボンナノチューブ生成用触媒基材上にCNTを成長させることができる。
[CNT生産装置]
なお、CNT成長工程は、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ生成用触媒基材を受容する合成炉(反応チャンバ)および加熱手段を備える既知のCNT生産装置を用いて実施することができる。具体的には、例えば、熱CVD炉、熱加熱炉、電気炉、乾燥炉、恒温槽、雰囲気炉、ガス置換炉、マッフル炉、オーブン、真空加熱炉、プラズマ反応炉、マイクロプラズマ反応炉、RFプラズマ反応炉、電磁波加熱反応炉、マイクロ波照射反応炉、赤外線照射加熱炉、紫外線加熱反応炉、MBE反応炉、MOCVD反応炉、レーザ加熱装置等の、公知のCNT生産装置をいずれも使用できる。このような生産装置の例として、図7に示すCVD装置が挙げられる。
図7に示すCVD装置は、カーボンナノチューブ生成用触媒基材110を受容する、石英ガラスからなる管状の反応チャンバ120と、反応チャンバ120を囲んで設けられた加熱コイル130と、原料ガス140並びに雰囲気ガス150を供給すべく反応チャンバ120の一端に接続された供給管と、反応チャンバ120の他端に接続された排気管160と、触媒賦活剤170を供給すべく供給管の中間部に接続された触媒賦活剤供給管180とを備えている。
また、このCVD装置は、極めて微量の触媒賦活剤を高精度に制御して供給するために、原料ガス140および雰囲気ガス150の供給管に、原料ガス140および雰囲気ガス150から触媒賦活剤を除去するための純化装置190を備えている。さらに図示していないが、CVD装置には、流量制御弁や圧力制御弁などを含む制御装置が適所に付設されている。
そして、CNT成長工程では、カーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTが合成され、多数のCNTが特定の方向(通常は、基材に垂直な方向)に配向してなるCNT配向集合体がカーボンナノチューブ生成用触媒基材上に形成される。
[CNT配向集合体の性状]
なお、形成されるCNT配向集合体は、例えば以下の性状を有していることが好ましい。
即ち、CNT配向集合体の好ましいBET比表面積は、CNTが主として未開口のものにあっては、600m2/g以上であり、より好ましくは、800m2/g以上である。BET比表面積が高いほど、金属や炭素などの不純物の量をCNTの質量の数十パーセント(40%程度)より低く抑えることができる。
また、CNT配向集合体の重量密度は0.002g/cm3以上、0.2g/cm3以下であることが好ましい。重量密度が0.2g/cm3以下であれば、CNT配向集合体を構成するCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT配向集合体を溶媒などに攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。つまり、重量密度を0.2g/cm3以下とすることで、均質な分散液を得ることが容易となる。また、重量密度が0.002g/cm3以上であれば、CNT配向集合体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取扱いが容易になる。
更に、特定方向に配向したCNT配向集合体は、高い配向度を有していることが好ましい。ここで、高い配向度を有するとは、以下の1.から3.の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを指す。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ、第1方向からの反射強度が第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在する。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現する。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1以下、より好ましくは0.25以上、1未満である。
なお、CNT配向集合体は、前述のX線回折において、単層CNT間のパッキングに起因する(CP)回折ピーク及び(002)ピークの回折強度と、単層CNTを構成する炭素六員環構造に起因する(100)、(110)ピークの平行(第1方向)と垂直(第2方向)との各入射方向の回折ピーク強度との度合いが互いに異なることも好ましい。
更に、CNT配向集合体が高い配向性および高いBET比表面積を示すためには、CNT配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上、10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向性が向上する。また高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき、BET比表面積を向上できる。
また、CNTのG/D比は好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm-1付近)とDバンド(1350cm-1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
そして、このカーボンナノチューブの製造方法では、図1に示すように、CNT成長工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材上に形成したCNTを、次のCNT剥離工程で剥離し、基材を再利用する。
ここで、図4に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1の上に形成したCNTをCNT剥離工程で剥離した場合、得られる使用済み基材は、図5に示すような構成となる。この使用済み基材は、CNTを合成する際のフォーメーション工程の実施などにより触媒層23を構成するCNT合成用触媒の微粒子化が進んでいる点、および、触媒層23の表面(即ち、CNTが形成されていた側の表面)にCNTの合成時に付着した炭素成分やCNTの剥離時に残存した炭素成分などの不純物24が残存している点を除き、図4に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1と同様の構成を有している。
そして、このカーボンナノチューブの製造方法では、前述したようにして使用済み基材の再利用を繰り返し、低コストで高品質のCNTを繰り返し製造する。なお、使用済み基材の再利用を繰り返した場合、カーボンナノチューブ生成用触媒基材は、積層された下地層および触媒層の一部を省略して図6に示すように、両面に浸炭防止層11が設けられた基材の上に下地層および触媒層が繰り返し積層された構成となる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、G/D比、BET比表面積および算術平均粗さは、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
<G/D比>
CNT配向集合体を試料とし、顕微レーザラマンシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、NicoletAlmega XR)を用い、基材中心部付近のCNTについて測定した。
<BET比表面積>
BET比表面積測定装置((株)マウンテック製、HM model−1210)を用いて測定した。
<算術平均粗さ>
レーザ顕微鏡(キーエンス製、VK−9700)を用いて、対物倍率50倍で測定した。
(実施例1)
<使用済み基材の準備>
アルミニウム化合物としてのアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを、有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてのトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、塗工液Aを調製した。
また、鉄化合物としての酢酸鉄174mgを有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてのトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、塗工液Bを調製した。
基材としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、40mm×100mm、厚さ0.3mm、Cr18%、算術平均粗さRa≒0.59μm)の表面に、室温25℃、相対湿度50%の環境下でディップコーティングにより、上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、基材を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ薄膜(下地層)を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、基材に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、アルミナ薄膜を備える基材を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える基材を引き上げた。その後、5分間風乾(乾燥温度45℃)することにより、膜厚3nmの鉄薄膜(触媒層)を形成した。
次に、図7に示すCVD装置(反応チャンバのサイズ:直径30mm、加熱長360mm)を用いて基材上にCNT配向集合体を形成した。具体的には、作製した基材を、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×105Paに保持されたCVD装置の反応チャンバ内に設置し、この反応チャンバ内に、He:100sccm、H2:900sccmを6分間導入した。これにより、CNT合成用触媒(鉄)は還元されて微粒子化が促進され、単層CNTの成長に適した状態(下地層上にナノメートルサイズの触媒微粒子が多数形成された状態)となった(フォーメーション工程)。なお、このときの触媒微粒子の密度は、1×1012〜1×1014個/cm2に調整した。その後、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×105Paに保持された状態の反応チャンバ内に、He:850sccm、C24:59sccm、H2O:H2O濃度が300ppmとなる量を5分間供給した。これにより、単層CNTが各触媒微粒子から成長した(CNT成長工程)。
そして、CNT成長工程の終了後、反応チャンバ内にHe:1000sccmのみを供給し、残余の原料ガスや触媒賦活剤を排除した。これにより、カーボンナノチューブ配向集合体が表面に形成された基材が得られた。
その後、得られた基材の表面から、基材上に成長したCNT配向集合体を剥離した。具体的には、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラを使用し、CNT配向集合体を剥離した。剥離時には、ヘラの鋭利部をCNT配向集合体と基材との境界に当て、基材からCNT配向集合体をそぎ取るように、基材面に沿って鋭利部を動かした。これにより、CNT配向集合体を基材から剥ぎ取り、使用済み基材を得た。
<再利用基材の調製>
次に、得られた使用済み基材に対し、幅広スリット式投射ガンを備えたウェットブラスト装置(マコー(株)社製PFE300)を用いてウェットブラスト処理による洗浄を行い、再利用基材を得た(初期化工程)。
ここで、ウェットブラスト処理に用いるウェットブラスト処理用スラリーは、平均粒子径が7μm(JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に規定された粒度♯2000に相当)であるアルミナからなる研磨材(砥粒)を、分散媒としての水中に分散させて調製した。なお、研磨材の濃度は15体積%であった。またウェットブラスト処理は、投射ガンの下を50mm/秒で水平方向に搬送される使用済み基材に対して、以下の条件で1回行った。
投射ガンの圧縮空気圧力:0.09MPa
投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離:30mm
投射角度φ:90°
その後、ウェットブラスト処理後の基材の表面を水洗して、更にエアーを吹きつけて乾燥した(清掃工程)。そして、洗浄を実施する前後での基材の表面の水に対する接触角を協和界面化学社製自動接触角計DMs−601にて測定したところ、洗浄前は80°であったのに対し、洗浄後は75°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
なお、清掃工程後の使用済み基材の算術平均粗さRaは0.59μmであった。
<カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製>
再利用基材の表面に、上記と同様の条件で、ディップコーティングにより厚さ40nmのアルミナ薄膜(下地層)と、厚さ3.0nmの鉄薄膜(触媒層)を製膜してカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造した。
<CNTの繰り返し合成>
得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用して、CVD装置によるCNT配向集合体の成長、CNT配向集合体の剥離、再利用基材の調製、及び、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製を、5回繰り返した。
その結果、5回生成したCNT配向集合体はいずれも、G/D比が3〜4、BET比表面積が850〜950m2/gの範囲内であった。このように、CNTを剥離した後にウェットブラスト処理を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
(実施例2〜4)
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理の処理回数を1回からそれぞれ3、6、10回に変更した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、実施例2〜4において5回生成したCNT配合集合体のG/D比およびBET比表面積は、それぞれ以下の範囲内であり、ウェットブラスト処理を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
実施例2:G/D比:3〜5、BET比表面積900〜1000m2/g
実施例3:G/D比:4〜5、BET比表面積900〜1000m2/g
実施例4:G/D比:5〜6、BET比表面積950〜1050m2/g
ここで、図8に、実施例1〜4におけるウェットブラスト処理の処理回数に対して、得られるCNTのG/D比(5回の繰り返し合成により得られた値の平均値)をプロットした散布図を示す。この図から、初期化工程におけるウェットブラスト処理の回数を増やすほどG/D比が向上し、即ち結晶性の高いCNTが得られることがわかる。
また、図9〜11に、ウェットブラスト処理による初期化工程を実施する前の使用済み基材、ウェットブラスト処理(1回)による初期化工程を実施した後の使用済み基材(実施例1)、およびウェットブラスト処理(6回)による初期化工程を実施した後の使用済み基材(実施例3)のそれぞれの表面を、SEMにより観察して得られる画像を示す。これらの画像から、ウェットブラスト処理による初期化工程を実施して再利用基材を製造することで、基材表面がCNT合成に適した状態に粗面化されていることがわかる。
(比較例1)
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理による洗浄に替えて、水中において使用済み基材をロールブラシ(材質ナイロン、繊維径0.2mm)でブラッシングする洗浄を1分間実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は80°となっており、接触角の変化はみられなかった。
CNTの繰り返し合成の結果、生成されたCNTは、G/D比が0.5〜1.5(平均値:1.1)、BET比表面積が600〜700m2/g(平均値:650m2/g)であり、実施例1〜4と比較してG/D比およびBET比表面積の大幅な低下が見られた。
(比較例2)
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理による洗浄に替えて、2%塩酸水溶液中に使用済み基材を1時間浸漬する酸洗浄を実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は73°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、生成されたCNTは、G/D比が0.5〜1.5(平均値:1.1)、BET比表面積が600〜700m2/g(平均値:640m2/g)であり、実施例1〜4と比較してG/D比およびBET比表面積の大幅な低下が見られた。
(比較例3)
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理による洗浄に替えて、空気雰囲気下、約800℃の温度で5分間使用済み基材を熱処理した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に熱処理前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、熱処理前は79°であったのに対し、熱処理後は72°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
CNTの繰り返し合成の結果、生成されたCNTは、G/D比が0.5〜1.2(平均値:0.9)、BET比表面積が400〜500m2/g(平均値:450m2/g)であり、実施例1〜4と比較してG/D比およびBET比表面積の大幅な低下が見られた。
本発明の再利用基材の製造方法によれば、基材の劣化を抑制しつつ、基材の表面に残存している炭素成分などの不純物を良好に除去した再利用基材を製造することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法によれば、使用済み基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することが可能な触媒基材を提供することができる。さらに、本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、使用済みの基材を再利用しつつ、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができる。
10 基材
11 浸炭防止層
12,22,92 下地層
13,23,93 触媒層
14,24 不純物
20 再利用基材
110 カーボンナノチューブ生成用触媒基材
120 反応チャンバ
130 加熱コイル
140 原料ガス
150 雰囲気ガス
160 排気管
170 触媒賦活剤
180 触媒賦活剤供給管
190 純化装置

Claims (4)

  1. 表面からカーボンナノチューブが剥離された使用済み基材を用いた再利用基材の製造方法であって、
    前記使用済み基材の前記表面を洗浄する初期化工程を含み、
    前記洗浄が、ウェットブラスト処理による洗浄である、再利用基材の製造方法。
  2. 前記初期化工程の後に、前記表面を清掃する清掃工程を更に含む、請求項1に記載の再利用基材の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の再利用基材の製造方法により得られた再利用基材の前記表面側にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させ、前記再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を含む、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法。
  4. 請求項1また2に記載の再利用基材の製造方法により得られた再利用基材を用いる、カーボンナノチューブの製造方法。
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