JP6376009B2 - 再利用基材の製造方法、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法およびカーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents
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Description
また、例えば特許文献2では、触媒基材上に形成したCNTを特定の方法で触媒基材から剥離して回収した後、使用済みの触媒基材について、触媒基材上の炭素成分を燃やして灰化させるアッシング処理や、触媒基材上の触媒成分を除去する酸洗浄を実施してからCNTの合成に再使用することにより、CNTの製造コストを低減することが提案されている。
また、特許文献2に記載の技術においても、触媒基材の再利用に際し、高温下でのアッシング処理や、硝酸、塩酸またはフッ酸などを使用した酸洗浄を実施しているため、CNTの合成を繰り返すと、CNT合成用触媒を担持している基材が劣化し、製造されるCNTの品質が低下する虞があった。
一方で、焼成、アッシング処理または酸洗浄などを実施することなく触媒基材の再利用を繰り返すと、基材の表面に残存した炭素成分などの不純物の影響によりCNTの合成不良が発生し、製造されるCNTの品質が低下する虞がある。
従って、本発明によれば、使用済み基材の再利用によるコストの削減と、高品質なカーボンナノチューブの安定的な製造とを両立することができる。
ここで、本発明の再利用基材の製造方法は、カーボンナノチューブ(CNT)の合成に使用された使用済み基材を原材料として使用し、表面にCNT合成用触媒を担持させることでCNTの合成に再び使用することができる再利用基材を製造する際に用いられる。また、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法は、本発明の再利用基材の製造方法を用いて製造した再利用基材を使用し、化学気相成長法(CVD法)を用いたCNTの合成に良好に使用し得るカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際に用いられる。
ここで、図1に示すカーボンナノチューブの製造方法は、基材上に形成したCNTを基材から剥離するCNT剥離工程と、CNT剥離工程において基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材を使用し、本発明の再利用基材の製造方法を用いて再利用基材を製造する工程(再利用基材製造工程)と、得られた再利用基材を使用し、本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法を用いてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する工程(触媒基材製造工程)と、得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用し、CVD法によりカーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTを合成するCNT成長工程とを含む。そして、カーボンナノチューブの製造方法では、これらの工程を繰り返し実施し、基材を再利用しつつ低コストでCNTを繰り返し製造する。
CNT剥離工程では、表面にCNTが形成された基材からCNTを剥離し、表面からCNTが剥離された使用済み基材を得る。
ここで、CNT剥離工程においてCNTを基材から剥離する方法としては、物理的、化学的あるいは機械的な剥離方法を例示できる。具体的には、例えば、電場、磁場、遠心力、表面張力等を用いて剥離する方法、機械的に直接基材から剥ぎ取る方法、並びに、圧力または熱を用いて基材から剥離する方法等が適用可能である。また、真空ポンプを用いてCNTを吸引し、基材から剥ぎ取ることも可能である。なお、簡単でCNTを損傷させ難い剥離方法としては、CNTをピンセットで直接つまんで基材から剥がす方法や、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が挙げられる。中でも、剥離方法としては、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が好適である。
再利用基材製造工程において再利用基材を製造する際に使用する本発明の再利用基材の製造方法の一例は、使用済み基材を洗浄する初期化工程を含み、任意に、初期化工程を経た使用済み基材を清掃する清掃工程を更に含む。
CNT剥離工程において基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材は、一例としてCNTの製造を一度のみ実施した基材からCNTを剥離して得られる使用済み基材の構成を図3(a)に示すように、例えば、基材10と、基材10の両面に設けられた浸炭防止層11と、基材10の主表面側(図3では上側)に位置する浸炭防止層11の上に設けられた下地層12と、下地層12の基材10側とは反対側の表面に設けられた触媒層13とを備えている。そして、使用済み基材の、少なくとも触媒層13側の表面(即ち、CNTが形成されていた側の表面)には、CNTの合成時に付着した炭素成分やCNTの剥離時に残存した炭素成分などの不純物14が残存している。具体的には、使用済み基材の表面には、CNTの剥離時に取りきれずに残ったCNT、グラファイト状またはアモルファス状のナノ粒子、薄片状物質等の炭素化合物が残存していると推察される。因みに、使用済み基材の、不純物14以外の構成、即ち、基材10、浸炭防止層11、下地層12および触媒層13は、CNT剥離工程において基材から剥離されたCNTを合成した際に使用されたものである。従って、例えば触媒層13は、CNTの剥離時に剥離されずに残存した微粒子状のCNT合成用触媒で構成されている。
なお、使用済み基材は、浸炭防止層を備えていなくてもよい。また、使用済み基材は、下地層を備えていなくてもよい。
ここで、CNTの合成に使用された後に使用済み基材の一部を構成する基材10としては、その表面にCNT合成用の触媒を担持することが可能であり、後述するウェットブラスト処理による洗浄に対する耐性を有している基材であれば任意の基材が用いられる。具体的には、基材10としては、CNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。なお、基材10は、500℃以上の高温でも形状を維持できることが好ましい。
ここで、基材10が合金からなる場合、特に形状が平板状のものには、その圧延工程に由来するヘアライン状の凹凸が全面に存在しており、この凹凸部に付着した汚れは一般に除去されにくいと予想される。しかし、本発明ではウェットブラスト処理による洗浄を行うことから、該凹凸部に存在する汚れを効率的に除去できると考えられ、本発明による効果をより顕著に得ることが可能である。
また、平板状の基材10の形状および大きさに特に制限はないが、形状としては、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。また、基材10の一辺の長さに特に制限はないが、CNTの量産性の観点からは、一辺の長さは長いほど望ましい。
浸炭防止層11は、CNTを合成する際に基材10が浸炭されて変形してしまうことを防止するための保護層である。浸炭防止層11は、基材10の表面および裏面のいずれか一方のみに形成してもよいが、基材10の両面に形成することが望ましい。
下地層12は、「触媒担持層」とも称されるものであり、CNT合成用触媒の下地となる層である。そして、下地層12の材料としては、CNT合成用触媒の下地となるものであればさまざまな材料を用いることができ、例えば、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンなどのセラミック材料が好適に用いられる。中でも、下地層12の材料としては、セラミック材料を用いることが好ましい。セラミック材料の方が、基材10を再利用してCNTを合成したときにCNTが良好に成長するからである。
触媒層13は、CNT合成用触媒の微粒子を含む層である。ここで、触媒層13を構成するCNT合成用触媒としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデン、並びに、これらの塩化物および合金等をCNT合成用触媒として例示することができる。
初期化工程においては、CNTが剥離された使用済み基材に対し、ウェットブラスト処理による洗浄を実施する。具体的には、初期化工程では、使用済み基材の表面のうち、少なくともCNTが剥離された側の表面に対して、ウェットブラスト処理による洗浄を実施する。そして、図3(a)に初期化工程を実施する前の使用済み基材の状態を示し、図3(b)に初期化工程を実施した後の使用済み基材の状態を示すように、初期化工程においては、使用済み基材の表面(図示例では触媒層13の表面)に残存していた炭素成分などの不純物14が、ウェットブラスト処理による洗浄により除去される。
ウェットブラスト処理用スラリーに用いる研磨材としては、アルミナ、炭化珪素、樹脂、ガラス、ジルコニアおよびステンレスなどが挙げられる。これらの中でもアルミナが好ましい。そしてこれらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
研磨材の形状は特に限定されないが、略球状であることが好ましい。そして研磨材の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径が1μm以上であれば、使用済み基材上に残存した炭素成分などの不純物を効率よく除去することができ、30μm以下であれば、ウェットブラスト処理後における使用済み基材の表面が過度に荒れることもない。
なお、本発明において研磨材の「平均粒子径」は、JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に準じて測定された累積高さ50%の粒子径(dS−50値)をいう。
そして、ウェットブラスト処理用スラリー中の研磨材の濃度は、5体積%以上であることが好ましく、7.5体積%以上であることがより好ましく、10体積%以上であることが更に好ましく、25体積%以下であることが好ましく、22.5体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましい。スラリー中の研磨材の濃度が5体積%以上であれば、使用済み基材上に残存した炭素成分などの不純物を効率よく除去することができ、25体積%以下であれば、研磨材同士の衝突による処理効率の低下を抑制することができる。
上述したウェットブラスト処理用スラリーを、例えば投射ガンを用いて圧縮空気により加速させて、使用済み基材表面に衝突させる。
ここで圧縮空気の圧力は特に限定されないが、0.03MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることがより好ましく、0.3MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以下であることがより好ましい。圧縮空気の圧力が上述の範囲内であれば、研磨材を含むスラリーを均一に霧化して、使用済み基材表面を均一に処理することができる。
また、投射ガンを用いたウェットブラスト処理の具体的な態様は特に限定されないが、例えば、使用済み基材を水平方向に搬送し、その上側に固定された投射ガンから、搬送されている使用済み基材に対してウェットブラスト処理用スラリーを噴射する態様が好ましい。なお、使用済み基材の搬送速度は特に限定されないが、10〜100mm/秒程度が好ましい。そしてウェットブラスト処理は3回以上行うことが好ましく、6回以上行うことがより好ましく、10回以上行うことが更に好ましい。ウェットブラスト処理を3回以上行えば、生成されるCNTのG/D比を高めることができる。
清掃工程においては、初期化工程後の基材上を清掃して、図2に示すような、使用済み基材から炭素成分等の不純物が除去された再利用基材20を得る。清掃工程では、初期化工程において用いた洗浄方法とは異なる方法、例えば、基材表面を水洗し、布により拭き取る方法や、基材表面を水洗し、エアーを吹き付けて乾燥する方法等により、基材上を清掃する。ウェットブラスト処理による洗浄を実施した後の基材表面には、炭素成分などの不純物が除去しきれずに残存している場合があるが、初期化工程後に基材を清掃することによって、残存する炭素成分などの不純物を十分に取り除くことができる。なお、基材表面に残存する炭素成分等と基材との接着力は、初期化工程におけるウェットブラスト処理による洗浄により低下している。従って、清掃工程では、水洗、拭き取り等によって容易に炭素成分等を取り除くことができる。
そして、上述した再利用基材製造工程において使用済み基材に対して初期化工程と任意の清掃工程とを実施して得られる再利用基材は、例えば図2に示すような、使用済み基材から炭素成分等の不純物が除去された構成を有している。具体的には、図2に示す再利用基材20は、基材10と、基材10の両面に設けられた浸炭防止層11と、基材10の主表面側(図2では上側)に位置する浸炭防止層11の上に設けられた下地層12と、下地層12の基材10側とは反対側の表面に設けられた触媒層13とを備えている。なお、下地層12や触媒層13が前述した初期化工程および清掃工程において除去された場合には、再利用基材は下地層12や触媒層13を有さない構成となる。
なお、基材の腐食を十分に抑制する観点からは、ウェットブラスト処理による洗浄において使用する水を含む分散媒のpHは、4以上10以下であることが好ましい。
ここで、上述したとおり、再利用基材20からは炭素成分等が十分に除去されていることが好ましく、再利用基材20は炭素成分等が表面に残存していないことが特に好ましい。ここで、再利用基材20から炭素成分が除去されていることは、例えば基材表面のラマンスペクトル測定により評価することが可能である。ラマンスペクトルにおいて、炭素成分は、1593cm-1付近のグラファイトの振動モード、または、1350cm-1付近の結晶性の低いアモルファス炭素化合物の振動モードとして検出することが可能である。従って、再利用基材20は、これらのピークが観測されないことが好ましい。
なお、接触角は、再利用基材の触媒層側の表面に純水を2マイクロリットル滴下し、5秒後の液滴から、θ/2法を用いて算出することができる。
再利用基材製造工程で得られた再利用基材を使用し、触媒基材製造工程においてカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造する際に使用する本発明のカーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法の一例は、再利用基材の表面にCNT合成用触媒を担持させ、再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を少なくとも含む。なお、触媒基材製造工程は、任意に、CNT合成用触媒の下地となる下地層を再利用基材の表面に形成する下地層形成工程を触媒層形成工程の前に含んでいてもよい。
そのため、触媒基材製造工程では、再利用基材の表面にCNT合成用触媒を再び担持させ、再利用基材上に触媒層を再び形成する。なお、触媒層を再び形成する前に再利用基材上に下地層を形成すれば、使用済みの触媒層と、次のCNTの合成に使用する触媒層とを下地層で分離し、触媒層を良好に形成することができる。従って、触媒基材製造工程では、下地層形成工程を実施することが好ましい。
再利用基材20の触媒層13上への下地層の形成には、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより下地層を形成する場合について説明する。
また、塗工液A中の安定剤の量は特に限定されないが、有機溶剤100mL当たり、好ましくは0.01g以上、より好ましくは0.1g以上であり、好ましくは20g以下、より好ましくは3g以下である。
触媒層の形成には、下地層と同様に、ウェットプロセスまたはドライプロセス(スパッタリング蒸着法など)のいずれを用いてもよい。成膜装置の簡便さ、スループットの速さ、原材料費の安さなどの観点からは、ウェットプロセスを用いるのが好ましい。
以下、一例として、ウェットプロセスにより触媒層を形成する場合について説明する。
そして、上述した触媒基材製造工程において再利用基材20に対して下地層形成工程と触媒層形成工程とを実施して得られるカーボンナノチューブ生成用触媒基材は、例えば図4に示すような、再利用基材20の触媒層13側に新たな下地層22および触媒層23が順次積層された構成を有している。具体的には、図4に示すカーボンナノチューブ生成用触媒基材1は、基材10、浸炭防止層11、下地層12および触媒層13を有する再利用基材20と、再利用基材20の触媒層13側の表面に新たに設けられた下地層22と、下地層22の再利用基材20側とは反対側の表面に新たに設けられた触媒層23とを備えている。
CNT成長工程では、触媒基材製造工程において得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用し、CVD法等の既知の手法を用いてカーボンナノチューブ生成用触媒基材上でCNTを合成する。なお、CNT成長工程では、再利用基材の上に下地層や触媒層を新たに形成してなるカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用しているので、高品質のCNTを安定的に合成することができる。
なお、CNT成長工程は、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ生成用触媒基材を受容する合成炉(反応チャンバ)および加熱手段を備える既知のCNT生産装置を用いて実施することができる。具体的には、例えば、熱CVD炉、熱加熱炉、電気炉、乾燥炉、恒温槽、雰囲気炉、ガス置換炉、マッフル炉、オーブン、真空加熱炉、プラズマ反応炉、マイクロプラズマ反応炉、RFプラズマ反応炉、電磁波加熱反応炉、マイクロ波照射反応炉、赤外線照射加熱炉、紫外線加熱反応炉、MBE反応炉、MOCVD反応炉、レーザ加熱装置等の、公知のCNT生産装置をいずれも使用できる。このような生産装置の例として、図7に示すCVD装置が挙げられる。
また、このCVD装置は、極めて微量の触媒賦活剤を高精度に制御して供給するために、原料ガス140および雰囲気ガス150の供給管に、原料ガス140および雰囲気ガス150から触媒賦活剤を除去するための純化装置190を備えている。さらに図示していないが、CVD装置には、流量制御弁や圧力制御弁などを含む制御装置が適所に付設されている。
なお、形成されるCNT配向集合体は、例えば以下の性状を有していることが好ましい。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ、第1方向からの反射強度が第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在する。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現する。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1以下、より好ましくは0.25以上、1未満である。
なお、実施例および比較例において、G/D比、BET比表面積および算術平均粗さは、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
CNT配向集合体を試料とし、顕微レーザラマンシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、NicoletAlmega XR)を用い、基材中心部付近のCNTについて測定した。
<BET比表面積>
BET比表面積測定装置((株)マウンテック製、HM model−1210)を用いて測定した。
<算術平均粗さ>
レーザ顕微鏡(キーエンス製、VK−9700)を用いて、対物倍率50倍で測定した。
<使用済み基材の準備>
アルミニウム化合物としてのアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを、有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてのトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、塗工液Aを調製した。
また、鉄化合物としての酢酸鉄174mgを有機溶剤としての2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤としてのトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、塗工液Bを調製した。
基材としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、40mm×100mm、厚さ0.3mm、Cr18%、算術平均粗さRa≒0.59μm)の表面に、室温25℃、相対湿度50%の環境下でディップコーティングにより、上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、基材を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ薄膜(下地層)を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、基材に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、アルミナ薄膜を備える基材を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える基材を引き上げた。その後、5分間風乾(乾燥温度45℃)することにより、膜厚3nmの鉄薄膜(触媒層)を形成した。
次に、図7に示すCVD装置(反応チャンバのサイズ:直径30mm、加熱長360mm)を用いて基材上にCNT配向集合体を形成した。具体的には、作製した基材を、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×105Paに保持されたCVD装置の反応チャンバ内に設置し、この反応チャンバ内に、He:100sccm、H2:900sccmを6分間導入した。これにより、CNT合成用触媒(鉄)は還元されて微粒子化が促進され、単層CNTの成長に適した状態(下地層上にナノメートルサイズの触媒微粒子が多数形成された状態)となった(フォーメーション工程)。なお、このときの触媒微粒子の密度は、1×1012〜1×1014個/cm2に調整した。その後、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×105Paに保持された状態の反応チャンバ内に、He:850sccm、C2H4:59sccm、H2O:H2O濃度が300ppmとなる量を5分間供給した。これにより、単層CNTが各触媒微粒子から成長した(CNT成長工程)。
そして、CNT成長工程の終了後、反応チャンバ内にHe:1000sccmのみを供給し、残余の原料ガスや触媒賦活剤を排除した。これにより、カーボンナノチューブ配向集合体が表面に形成された基材が得られた。
その後、得られた基材の表面から、基材上に成長したCNT配向集合体を剥離した。具体的には、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラを使用し、CNT配向集合体を剥離した。剥離時には、ヘラの鋭利部をCNT配向集合体と基材との境界に当て、基材からCNT配向集合体をそぎ取るように、基材面に沿って鋭利部を動かした。これにより、CNT配向集合体を基材から剥ぎ取り、使用済み基材を得た。
次に、得られた使用済み基材に対し、幅広スリット式投射ガンを備えたウェットブラスト装置(マコー(株)社製PFE300)を用いてウェットブラスト処理による洗浄を行い、再利用基材を得た(初期化工程)。
ここで、ウェットブラスト処理に用いるウェットブラスト処理用スラリーは、平均粒子径が7μm(JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に規定された粒度♯2000に相当)であるアルミナからなる研磨材(砥粒)を、分散媒としての水中に分散させて調製した。なお、研磨材の濃度は15体積%であった。またウェットブラスト処理は、投射ガンの下を50mm/秒で水平方向に搬送される使用済み基材に対して、以下の条件で1回行った。
投射ガンの圧縮空気圧力:0.09MPa
投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離:30mm
投射角度φ:90°
なお、清掃工程後の使用済み基材の算術平均粗さRaは0.59μmであった。
再利用基材の表面に、上記と同様の条件で、ディップコーティングにより厚さ40nmのアルミナ薄膜(下地層)と、厚さ3.0nmの鉄薄膜(触媒層)を製膜してカーボンナノチューブ生成用触媒基材を製造した。
得られたカーボンナノチューブ生成用触媒基材を使用して、CVD装置によるCNT配向集合体の成長、CNT配向集合体の剥離、再利用基材の調製、及び、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製を、5回繰り返した。
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理の処理回数を1回からそれぞれ3、6、10回に変更した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材およびカーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、実施例2〜4において5回生成したCNT配合集合体のG/D比およびBET比表面積は、それぞれ以下の範囲内であり、ウェットブラスト処理を用いた初期化工程を実施して再利用基材を製造することによって、基材を繰り返し使用しても品質に優れるCNTの合成が可能であることが確認できた。
実施例2:G/D比:3〜5、BET比表面積900〜1000m2/g
実施例3:G/D比:4〜5、BET比表面積900〜1000m2/g
実施例4:G/D比:5〜6、BET比表面積950〜1050m2/g
また、図9〜11に、ウェットブラスト処理による初期化工程を実施する前の使用済み基材、ウェットブラスト処理(1回)による初期化工程を実施した後の使用済み基材(実施例1)、およびウェットブラスト処理(6回)による初期化工程を実施した後の使用済み基材(実施例3)のそれぞれの表面を、SEMにより観察して得られる画像を示す。これらの画像から、ウェットブラスト処理による初期化工程を実施して再利用基材を製造することで、基材表面がCNT合成に適した状態に粗面化されていることがわかる。
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理による洗浄に替えて、水中において使用済み基材をロールブラシ(材質ナイロン、繊維径0.2mm)でブラッシングする洗浄を1分間実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は80°となっており、接触角の変化はみられなかった。
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理による洗浄に替えて、2%塩酸水溶液中に使用済み基材を1時間浸漬する酸洗浄を実施した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に洗浄前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、洗浄前は79°であったのに対し、洗浄後は73°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
再利用基材の調製時に、ウェットブラスト処理による洗浄に替えて、空気雰囲気下、約800℃の温度で5分間使用済み基材を熱処理した以外は実施例1と同様にして、使用済み基材の準備、再利用基材の調製、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の調製、CNTの繰り返し合成を行なった。なお、再利用基材の調製時に熱処理前後での基材の水に対する接触角を測定したところ、熱処理前は79°であったのに対し、熱処理後は72°となっており、基材上の汚れが除去できていることが確認された。
11 浸炭防止層
12,22,92 下地層
13,23,93 触媒層
14,24 不純物
20 再利用基材
110 カーボンナノチューブ生成用触媒基材
120 反応チャンバ
130 加熱コイル
140 原料ガス
150 雰囲気ガス
160 排気管
170 触媒賦活剤
180 触媒賦活剤供給管
190 純化装置
Claims (4)
- 表面からカーボンナノチューブが剥離された使用済み基材を用いた再利用基材の製造方法であって、
前記使用済み基材の前記表面を洗浄する初期化工程を含み、
前記洗浄が、ウェットブラスト処理による洗浄である、再利用基材の製造方法。 - 前記初期化工程の後に、前記表面を清掃する清掃工程を更に含む、請求項1に記載の再利用基材の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の再利用基材の製造方法により得られた再利用基材の前記表面側にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させ、前記再利用基材上に触媒層を形成する触媒層形成工程を含む、カーボンナノチューブ生成用触媒基材の製造方法。
- 請求項1また2に記載の再利用基材の製造方法により得られた再利用基材を用いる、カーボンナノチューブの製造方法。
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