JP2016148002A - ポリオレフィン架橋発泡成形体及びポリオレフィン架橋性発泡成形体とそれらの製造方法、並びに、ポリオレフィン架橋発泡製品 - Google Patents

ポリオレフィン架橋発泡成形体及びポリオレフィン架橋性発泡成形体とそれらの製造方法、並びに、ポリオレフィン架橋発泡製品 Download PDF

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宏樹 千葉
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Abstract

【課題】耐熱性及び必要に応じて機械強度、難燃性に優れ、しかも金属水和物を高充填しても外観に優れるポリオレフィン架橋発泡成形体及びこの成形体を廉価な押出発泡法にて製造可能な製造方法、このポリオレフィン架橋発泡成形体を製造可能なポリオレフィン架橋性発泡成形体及びその製造方法、並びに、ポリオレフィン架橋発泡製品を提供する。【解決手段】ポリオレフィン系樹脂と有機過酸化物と金属水和物とシランカップリング剤とを特定の質量割合で溶融混合して溶融混合物を調製する工程(i)と、溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させて発泡成形体を得る工程(ii)とを有する製造方法、これにより製造されるポリオレフィン架橋発泡成形体及びポリオレフィン架橋性発泡成形体、並びに、ポリオレフィン架橋発泡製品。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン架橋発泡成形体及びポリオレフィン架橋性発泡成形体とそれらの製造方法、並びに、ポリオレフィン架橋発泡製品に関する。
ポリオレフィン架橋発泡体からなる製品は、目地材、屋根材といった建築土木資材から、エアコン又は冷蔵庫の断熱材や、パイプカバー等の産業資材、さらには自動車内装材といった幅広い用途において、工業的に利用されている。
これらの用途に用いられる製品には、耐熱性等の特性が求められる。例えば、優れた耐熱性等を有する製品とするには、ポリオレフィン系樹脂を架橋させた材料が用いられる。
従来、ポリオレフィン系樹脂を架橋させる方法として、電子線架橋や、シラン架橋等の化学架橋を利用する方法がある。なかでも、シラン架橋法は、ポリオレフィン系樹脂を押出発泡時に架橋させず、押出発泡後に水分と接触させて架橋させる方法であるため、ポリオレフィン系樹脂の架橋方法として、好ましく用いられる。
例えば、特許文献1には、シリル変性ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂とからなる樹脂を主成分とする基材樹脂を、発泡剤とともに加熱、加圧条件下で混練して発泡性溶融物とし、該溶融物を低圧域に押し出して発泡体を得た後に、該発泡体をシラノール縮合触媒存在下で水分と接触させて架橋発泡体とする架橋ポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂60〜97重量%とシラン架橋性ポリオレフィン系樹脂3〜40重量%とからなる基材樹脂、架橋触媒、架橋剤及び発泡剤とを押出機内で溶融混練しつつ、押出機内でゲル分率25%までの架橋反応を進行させて押出発泡させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法が記載されている。
また、上記用途に用いられる製品には、耐熱性以外にも、機械特性(好ましくは機械強度)、難燃性等の特性も求められる。製品に耐熱性、機械特性及び難燃性を付与するには、ポリオレフィン系樹脂を架橋させるだけでなく、ポリオレフィン系樹脂に無機フィラーを、高い含有量、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して50〜150質量部で、充填(高充填)させることが効果的である。
しかし、電子線架橋方法や化学架橋方法において、無機フィラーを高充填させると、ポリオレフィン系樹脂を発泡成形すること自体が困難となる。
また、ポリオレフィン系樹脂を発泡成形できたとしても、発泡体成形時や後加工時に無機フィラーが脱落することがある。ここで、無機フィラーが脱落するとは、発泡体中の樹脂と接触していた無機フィラーが発泡体と接触しない状態になることをいう。このように無機フィラーが脱落すると、架橋発泡体が期待した耐熱性、機械強度又は難燃性を発現しなくなる。さらに外観も悪くなる傾向にある。その一方で、無機フィラーの充填量を抑えると、発泡成形が可能となり、優れた外観を付与できるが、架橋発泡体としては、耐熱性、機械強度及び難燃性に劣るものとなってしまう。
上記特許文献1及び2に記載のシラン架橋法においても、無機フィラーを高充填させることは想定されてなく、ポリオレフィン系樹脂に無機フィラーを高充填すること及びその具体的方法、条件は記載されていない。すなわち、特許文献1には、無機充填剤を総重量の40質量%を限度に添加できることが記載されている(同文献の段落[0062])。しかし、実施例では、気泡調整剤としてタルクを1.0質量%添加しているにすぎない。また、特許文献2の実施例4(同文献の段落[0043])では、架橋剤として水酸化アルミニウム3水和物を用いているが、これを無機フィラーと考えても、2.0質量%添加しているにすぎない。
このように、従来の発泡成形体においては、発泡成形を可能とし、優れた外観を発泡成形体に付与するためには、無機フィラーの含有量を少なくする必要があり、十分な耐熱性、機械強度及び難燃性を発泡成形体に付与できなかった。
特許第3867941号公報 特許第3520909号公報
本発明は、従来のシラン架橋法が有する課題を克服し、耐熱性、及び必要に応じて機械強度、難燃性にも優れ、しかも金属水和物を高充填しても外観に優れるポリオレフィン架橋発泡成形体、及び、このポリオレフィン架橋発泡成形体を廉価な押出発泡法にて製造可能な製造方法を提供することを、課題する。
また、本発明は、上記の優れた特性を有するポリオレフィン架橋発泡成形体を製造可能な、ポリオレフィン架橋性発泡成形体及びその製造方法を提供することを、課題する。
さらに、本発明は、ポリオレフィン架橋発泡成形体を含むポリオレフィン架橋発泡製品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、先に金属水和物とシランカップリング剤とポリオレフィン系樹脂と有機過酸化物とを溶融混合して、金属水和物がシランカップリング剤を介して担持されたポリオレフィン系樹脂を含有する溶融混合物を調製すると、ポリオレフィン系樹脂に金属水和物を高い含有量で配合させても、この溶融混合物を発泡剤の存在下で発泡成形させることができ、しかも架橋構造を持つポリオレフィン架橋発泡成形体を形成できることを見出した。さらに、このポリオレフィン架橋発泡成形体が、優れた、耐熱性及び外観と、さらには機械強度及び難燃性をも兼ね備えることを見出した。本発明者らはこの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
本発明の課題は以下の手段によって達成された。
(1)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物20〜200質量部と、シランカップリング剤0.5〜15.0質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して、溶融混合物を調製する工程(i)と、
前記溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させて、発泡成形体を得る工程(ii)と、
前記発泡成形体を水分と接触させて架橋させる工程(iii)とを、有するポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
(2)前記工程(ii)が、前記溶融混合物とシラノール縮合触媒とを溶融混合させながら発泡剤の存在下で発泡成形させる(1)に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
(3)前記発泡剤が、物理発泡剤である(1)又は(2)に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
(4)前記工程(iii)が、15〜30℃の温度下で行われる(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法により製造されてなるポリオレフィン架橋発泡成形体であって、
(I)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して20〜200質量部の金属水和物とを含み、
(II)前記金属水和物がシランカップリング剤を介して化学結合によって前記ポリオレフィン系樹脂に担持されており、
(III)前記ポリオレフィン系樹脂が架橋構造を持ち、ゲル分率が50%以上であり、
(IV)発泡倍率が1.5〜10倍である
ポリオレフィン架橋発泡成形体。
(6)前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン又はポリエチレン共重合体の樹脂である(5)に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体。
(7)前記金属水和物が、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである(5)又は(6)に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体。
(8)上記(5)〜(7)のいずれか1項に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体を含むポリオレフィン架橋発泡製品。
(9)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物20〜200質量部と、シランカップリング剤0.5〜15.0質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して、溶融混合物を調製する工程(i)と、
前記溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させて、発泡成形体を得る工程(ii)とを有する、ポリオレフィン架橋性発泡成形体の製造方法。
(10)上記(9)に記載のポリオレフィン架橋性発泡成形体の製造方法により製造されてなるポリオレフィン架橋性発泡成形体。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明によれば、耐熱性に優れ、金属水和物を高充填しても外観に優れるポリオレフィン架橋発泡成形体を、廉価な押出発泡法にて、製造することができる。さらに、本発明によれば、耐熱性及び外観に加え、必要に応じて優れた機械強度及び難燃性の少なくとも1つをも備えたポリオレフィン架橋発泡成形体を押出発泡法にて製造できる。
したがって、本発明により、優れた、耐熱性及び外観と、必要に応じて機械強度、難燃性をも兼ね備えたポリオレフィン架橋発泡成形体、及び、このポリオレフィン架橋発泡成形体を廉価な押出発泡法にて製造可能な製造方法を提供できる。また、上記の優れた特性を有するポリオレフィン架橋発泡成形体を形成可能な、ポリオレフィン架橋性発泡成形体及びその製造方法を提供できる。さらには、上記の優れた特性を有するポリオレフィン架橋発泡成形体を含むポリオレフィン架橋発泡製品を提供できる。
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
本発明の「ポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法」及び本発明の「ポリオレフィン架橋性発泡成形体の製造方法」は、いずれも、少なくとも下記工程(i)及び(ii)を行う。したがって、本発明の「ポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法」及び本発明の「ポリオレフィン架橋性発泡成形体の製造方法」を併せて以下に説明する(両製造方法に共通する説明においては、本発明の製造方法ということがある。)。
工程(i):ポリオレフィン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物20〜200質量部と、シランカップリング剤0.5〜15.0質量部とを、有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して、溶融混合物を調製する工程
工程(ii):溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させて、発泡成形体を得る工程
まず、本発明の製造方法に用いられる各成分について、説明する。
(A)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、シランカップリング剤がグラフト化反応可能な部位を有する樹脂であれば特に限定されない。好ましくは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる重合体からなる樹脂が挙げられる。このような樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレン共重合体の各樹脂が挙げられる。ここで、ポリエチレン共重合体は、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体であればよく、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン成分と酸共重合成分又は酸エステル共重合成分とを有するポリエチレン共重合体が挙げられる。
なかでも、金属水和物に対する受容性が高く、金属水和物を多量に配合しても機械強度を維持できる点から、ポリエチレン又はポリエチレン共重合体の樹脂が好ましく、ポリエチレン又はエチレン−α−オレフィン共重合体の樹脂がより好ましい。
本発明において、各重合体及び共重合体の含有量は、含有量の合計が100質量%となるように、下記含有量の範囲内で決定される。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
ポリエチレンとしては、構成成分としてエチレン成分を含む重合体であれば特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。なかでも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂中の、ポリエチレンからなる樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量%中、0〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、特に限定されないが、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンの具体例としては、特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレン−プロピレン共重合体である。
ポリオレフィン系樹脂中の、エチレン−α−オレフィン共重合体からなる樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量%中、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。
エチレン成分と、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分とを有するポリオレフィン共重合体としては、特に限定されない。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。このなかでも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、さらには金属水和物への受容性及び難燃性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることが特に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂中の、上記ポリオレフィン共重合体からなる樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量%中、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。
ポリプロピレンは、構成成分としてプロピレン成分を含む重合体からなる樹脂であれば特に限定されない。ポリプロピレン樹脂には、プロピレンの単独重合体(h−PP)、少量のエチレン及び/又は1−ブテンとの共重合体であるランダムポリプロピレン(r−PP)、及び、エチレンゴム等のゴムをh−PPやr−PPに分散したブロックポリプロピレン(b−PP)等を含む。これらのなかでもランダムポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ社製)、PM940M、PM921V(いずれも、商品名、サンアロマー社製)、住友ノーブレン(登録商標、住友化学社製)、及びプライムポリプロ(登録商標、プライムポリマー社製)等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂中の、ポリプロピレン樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量%中、0〜49質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。
(B)有機過酸化物
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、後述するシランカップリング剤のグラフト化反応部位とポリオレフィン系樹脂とのラジカル反応(ポリオレフィン系樹脂からの水素ラジカル引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を生じさせる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R、RC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましい。ここで、R〜Rは各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR〜Rのうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性と着色性の点で、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の分解温度は、80〜195℃であるのが好ましく、125〜180℃であるのがより好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
(C)金属水和物
金属水和物は、無機フィラーに包含されるが、そのなかでも、本発明においては、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位を表面に少なくとも有するものを用いる。金属水和物の化学結合しうる部位は、特に限定されないが、シランカップリング剤の反応部位と水素結合等による化学結合しうる部位、又は、共有結合による化学結合しうる部位が挙げられる。具体的には、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
このような金属水和物としては、水和水、結晶水又は水酸基を有する金属化合物が挙げられる。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウムウイスカ、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
金属水和物は、予め表面処理した表面処理金属水和物を使用することもできる。予め表面処理した表面処理金属水和物としては、後述するシランカップリング剤で表面処理された金属水和物、後述するシランカップリング剤以外のもので表面処理された金属水和物、脂肪酸又はリン酸エステルで表面処理された金属水和物等が挙げられる。表面処理金属水和物の表面処理量は、特に限定されないが、例えば、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。下限は0.5質量%以上が好ましい。
金属水和物の平均粒径は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであることがさらに好ましい。金属水和物の平均粒径が0.01μm未満であると金属水和物同士が2次凝集しやすく、機械特性及び難燃性が低下する傾向があり、10μmを超えると金属水和物の添加による補強効果及び難燃性が低下する傾向がある。なお、平均粒径とは、TEM、SEM等により測定した金属水和物100個の粒径から求められる平均値をいう。
金属水和物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属水和物は、上記のなかでも、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムが、難燃性の点で、好ましい。
(D)シランカップリング剤
本発明においては、シランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下でポリオレフィン系樹脂にグラフト化反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、金属水和物の化学結合しうる部位と反応する反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものを用いる。このようなシランカップリング剤として、従来、シラン架橋法に用いられるシランカップリング剤が挙げられ、例えば、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
Figure 2016148002
一般式(1)中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基、水素原子又はY13である。Y11、Y12及びY13は各々独立に加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。
a11は、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等を挙げることができ、好ましくはビニル基である。
b11は、脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13であり、脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。Rb11は、好ましくは後述のY13である。
11、Y12及びY13は、加水分解しうる有機基であり、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜8のアリールオキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が挙げられる。なかでも、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1のアシルオキシ基(OCOCH))であり、さらに好ましくは炭素数1又は2のアルコキシ基である。加水分解しうる有機基としは、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、アセチルオキシ基、(メタ)アクリロオキシ基等を挙げることができる。このなかでも反応性の点からメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
シランカップリング剤としては、好ましくは加水分解速度の速いシランカップリング剤であり、より好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じであるシランカップリング剤である。このようなシランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン等を挙げることができる。
上記シランカップリング剤のなかでも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、そのままで用いても、溶媒等で希釈して用いてもよい。
(E)シラノール縮合触媒
本発明の製造方法においては、工程(iii)において、ポリオレフィン系樹脂にグラフト化されたシランカップリング剤同士を水分の存在下で縮合反応させる目的で、シラノール縮合触媒を用いてもよい。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介してポリオレフィン系樹脂同士の架橋が促進される。ポリオレフィン系樹脂同士が架橋すると、耐熱性、機械強度及び難燃性に優れた発泡成形体を得ることができる。
シラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が用いられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。これらのなかでも、特に好ましくは、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物である。
<キャリア樹脂>
シラノール縮合触媒は単独で用いることができるが、キャリア樹脂に混合して触媒マスターバッチとして用いることもできる。キャリア樹脂としては、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂と同様のものを用いることができ、シラノール触媒と親和性がよく難燃性の点で、ポリエチレン樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂としては、直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等挙げられ、直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが好ましく、直鎖低密度ポリエチレンが特に好ましい。
(F)発泡剤
本発明の製造方法においては、発泡成形の際に溶融混合物を発泡させる発泡剤を存在させる。発泡剤は、化学発泡剤でも物理発泡剤でもよく、またこれら両方を用いてもよい。
化学発泡剤は、特定温度以上で分解してガスを発生するものをいう。具体的には、アゾジカルボンアミド(ADCA)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンジアミン(DPT)のような有機発泡剤の他、重曹(炭酸水素ナトリウム)、ホウ水素化ナトリウム等の無機発泡剤が挙げられる。このなかでは、ガス発生量、発泡成形性、分解残渣及び分解温度の観点から、アゾジカルボンアミド又は重曹が好ましい。
物理発泡剤は、押出機内で加圧されてポリオレフィン系樹脂に溶解した状態で押出機出口から開放された際に減圧によって気化するものをいう。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタンのような炭化水素系発泡剤の他、塩化ジメチル、塩化メチレンのような塩素化炭化水素系発泡剤、フロンガス、さらには炭酸ガス、窒素ガス、空気等の無機系発泡剤が挙げられる。このなかでは、ポリオレフィン系樹脂への溶解度、発泡成形性及び環境への影響の観点から、プロパン、ブタン、炭酸ガス又は窒素ガスが好ましく、製造時の安全性を高めることができる点では、炭酸ガス又は窒素ガスが特に好ましい。
本発明においては、製造時のコストの点から、物理発泡剤が好ましい。
(G)添加剤
本発明の製造方法においては、酸化防止剤や滑剤、金属不活性剤、難燃(助)剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。これらの添加剤を使用する場合、特に酸化防止剤や金属不活性剤が、シランカップリング剤の、ポリオレフィン系樹脂へのグラフトを阻害しないように、キャリア樹脂に加えることがよい。これら添加物の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜に設定される。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン等が挙げられる。
滑剤としては、炭化水素、シロキサン、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル、アルコール、金属石けん等の各滑剤が挙げられる。
次に、本発明の製造方法を説明する。
本発明の製造方法においては、ポリオレフィン系樹脂と、有機過酸化物と、金属水和物と、シランカップリング剤とを溶融混合する工程(i)を行う。
工程(i)において、有機過酸化物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.01〜0.6質量部であり、好ましくは0.1〜0.5質量部である。有機過酸化物の含有量が0.01質量部未満では、シランカップリング剤のポリオレフィン系樹脂へのグラフト化反応が進行せずにシランカップリング剤同士の重合が生じる場合がある。一方、0.6質量部を超えると、シランカップリング剤が揮発しやすくなり、又は、副反応によってポリオレフィン系樹脂成分の多くが直接的に架橋して凝集塊(ブツ)を形成し、外観が劣る場合がある。すなわち、有機過酸化物の含有量を上記範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト化反応を行うことができ、ゲル状のブツも発生することなく押し出し性に優れた溶融混合物を得ることができる。
金属水和物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、20〜200質量部であり、好ましくは50〜150部である。金属水和物の含有量が20質量部未満では、金属水和物がポリオレフィン系樹脂に担持されていたとしても、ポリオレフィン架橋発泡成形体に所望の機械強度や難燃性を付与できない場合がある。一方、200質量部を超えると溶融混合が困難になるとともに、押出発泡成形も困難となる場合がある。
シランカップリング剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.5〜15.0質量部であり、好ましくは0.7〜10.0質量部、より好ましくは1.2〜6.0質量部である。シランカップリング剤の含有量が0.5質量部未満であると、グラフト化反応が十分に進行せず、ポリオレフィン架橋発泡成形体に所望の機械強度や耐熱性、難燃性を付与できない場合がある。一方、15.0質量部を超えると、それ以上のシランカップリング剤が金属水和物表面に吸着しきれず、シランカップリング剤が溶融混合中に揮発してしまい、経済的でない。また、吸着しないシランカップリング剤が縮合して、ポリオレフィン架橋発泡成形体にブツや焼けが生じて外観が悪化する場合がある。特に外観不良は15.0質量部を超える場合に顕著である。またそもそも発泡成形自体が困難になる。
溶融混合の方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の装置を用いることができる。なかでも、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーがポリオレフィン系樹脂の分散性やグラフト化反応の安定性の面で好ましい。
溶融混合する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは、有機過酸化物の分解温度+(1〜80)℃である。この温度で上記成分を溶融混合することにより、後述するように、金属水和物がシランカップリング剤を介して担持されたポリオレフィン系樹脂(シラングラフトポリマー)を形成できる。すなわち、有機過酸化物の分解温度未満で溶融混合すると、シラングラフト化反応が起こらず、シラングラフトポリマーが生成しない。そのため、所望の耐熱性と機械強度を得ることができない。また、押出発泡成形中に有機過酸化物が反応(分解)してしまい、所望の発泡倍率を得ることができない場合がある。溶融混合時の分解温度はポリオレフィン系樹脂が溶融してから設定することが好ましい。
溶融混合における、その他の条件は適宜決定することができる。例えば、混合時間は、上記溶融温度でシランカップリング剤のポリオレフィン系樹脂へのグラフト化反応が十分に進行する時間であればよく、例えば、5分〜1時間が好ましい。
工程(i)において、ポリオレフィン系樹脂、有機過酸化物、金属水和物及びシランカップリング剤の混合順は特に限定されない。例えば、これら成分を同時(一度)に密閉型ミキサー等に投入して溶融混合することもできる。また、金属水和物とシランカップリング剤を先に混合し、得られた混合物をポリオレフィン系樹脂と有機過酸化物に混合する方法も好ましい。このような混合順(混合方法)により、シランカップリング剤が効率よく金属水和物に吸着又は反応し、溶融混合時にシランカップリング剤が揮発することを抑えることができる。その結果、シラングラフトポリマーを効率よく形成することができる。また、吸着しないシランカップリング剤同士が縮合してブツが生じることを防ぐこともできる。
一方、特許文献1及び2に記載の製造方法のように、シランカップリング剤等を予め反応させて得られるシリル変性ポリプロピレン系樹脂又はシラン架橋性ポリオレフィン系樹脂を用いて、これらの樹脂と金属水和物とを後から混合した場合には、シリル変性ポリプロピレン系樹脂等が有するシリルエステル基は樹脂中に低い密度(含有率)で固定(結合)されて存在するため、金属水和物の表面に高密度(高確率)でシリルエステル基と接触させることが困難である。その結果、シリルエステル基のほぼすべてに金属水和物を結合させることができない。
工程(i)においては、シラノール縮合触媒を実質的に混合せずに各成分を溶融混合することが好ましい。これにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができ、溶融混合しやすく、また押出発泡成形の際に所望の形状を得ることができる。ここで、「実質的に混合せず」とは、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。例えば、工程(i)において、シラノール縮合触媒は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01質量部以下であれば存在していてもよい。
このようにして、工程(i)を行うと、溶融混合物が調製される。この溶融混合物は上記のシラングラフトポリマーを含有している。このシラングラフトポリマーは、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、少なくとも工程(ii)での発泡成形における発泡成形性が保持されたものとする。
本発明の製造方法において、シラノール縮合触媒を用いる場合、後述する工程(ii)の発泡成形を行う前に、工程(i)で得られた溶融混合物とシラノール縮合触媒とを混合することが好ましい。
溶融混合物とシラノール縮合触媒との混合は、溶融混合物の発泡成形時にシラノール縮合触媒が溶融混合物に混合されていれば、特に限定されない。例えば、工程(ii)を行う前に、溶融混合物とシラノール縮合触媒とを適宜の混合機で溶融混合することもできる。また、溶融混合物とシラノール縮合触媒とを押出機に投入し、押出機内で溶融混合することもできる。いずれにおいても、溶融混合物とシラノール縮合触媒とを溶融混合させて発泡成形することができる。溶融混合物とシラノール縮合触媒との混合は工程(i)の溶融混合条件を採用できる。
シラノール縮合触媒を用いる場合、シラノール縮合触媒の含有量は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。シラノール縮合触媒(E)の含有量が、上述の範囲内にあると、シランカップリング剤の縮合反応が速やかに進行して均一な架橋構造を形成できる。これにより、ポリオレフィン架橋発泡成形体に機械強度と耐熱性が発現し、また生産性も向上する。さらには、部分的なゲル化を抑えてポリオレフィン架橋発泡成形体の外観及び樹脂物性に優れる。
シラノール縮合触媒は、キャリア樹脂との混合物であることが好ましい。用いるキャリア樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは1〜25質量部である。キャリア樹脂の含有量が、1〜50質量部であると、シラノール縮合触媒の分散性が向上して、架橋反応を速やかに進行させることができる。その結果、ポリオレフィン架橋発泡成形体の外観が優れるとともに、機械強度と耐熱性にも優れる。
本発明の製造方法においては、次いで、溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させる工程(ii)を行う。
押出機としては、特に限定されないが、単軸押出機又は二軸押出機を用いることができる。また、タンデムシステムのように2台の押出機を直列に連結させて使用してもよく、多層押出のように複数の押出機を並列に連結させて使用してもよい。発泡成形には、成形用ダイとして、Tダイ、ハンガーコートダイ、ロッドダイ、サーキュラーダイ、異形ダイ等を用いることができる。
押出発泡成形は、押出機のシリンダー温度(溶融温度)をポリオレフィン系樹脂が溶融する温度以上に設定して行う。さらに、発泡剤として化学発泡剤を使用する場合は、化学発泡剤が分解する温度以上に設定して行う。好ましいシリンダー温度としては、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度+(5〜30)℃又は化学発泡剤の分解温度+(5〜30)℃である。シリンダー温度を上記温度に設定することにより、溶融混合物を発泡成形前に溶融させることができる。特に、シラノール縮合触媒又は発泡剤を用いる場合、工程(i)で得られた溶融混合物とシラノール縮合触媒又は発泡剤とを混合することができる。
押出機のダイ温度(発泡成形温度)は、所望の発泡倍率によって適宜調整することができ、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度−30℃以上、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度+20℃以下の範囲内に設定することができる。
本発明の製造方法において、後述する工程(ii)の発泡成形を行う前に、工程(i)で得られた溶融混合物と発泡剤とを混合する。
溶融混合物と発泡剤との混合は、溶融混合物の発泡成形時に発泡剤が溶融混合物に混合されていれば、特に限定されない。例えば、工程(ii)を行う前に、溶融混合物と発泡剤とを適宜の混合機で混合することもできる。また、溶融混合物と発泡剤とともに又は別々に押出機に投入し、押出機内で溶融混合することもできる。いずれにおいても、溶融混合物を発泡剤の存在下で発泡成形することができる。
物理発泡剤を用いる場合、物理発泡剤は、ガスボンベ等から押出機のシリンダー部へ注入することができる。例えば、ガスボンベから直接押出機に注入してもよく、ガス流量制御装置及び昇圧器を介して注入してもよい。物理発泡剤の注入は、押出機シリンダー部の中流部から下流部にかけてガス供給ポートを取り付けて行うことができる。
化学発泡剤を用いる場合、化学発泡剤単独で使用してもよいし、触媒マスターバッチを使用する場合、そのキャリア樹脂に含有させてもよい。
物理発泡剤の注入量及び化学発泡剤の添加量は、所望の発泡倍率により適宜に決定される。
物理発泡剤の注入圧は1〜10MPaの範囲が好ましく、物理発泡剤の注入量はガス濃度に換算して0.1〜8質量%の範囲とすることが好ましい。
化学発泡剤の添加量は、所望の発泡倍率によって適宜決定することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂の質量に対するガス発生体積に換算して1〜30mL/gの範囲とすることが好ましい。
このようにして、工程(ii)を行うと、溶融混合物が発泡成形された発泡成形体として、ポリオレフィン架橋性発泡成形体が得られる。このポリオレフィン架橋性発泡成形体は、溶融混合物と同様に、未架橋体のシラングラフトポリマーを含有している。したがって、本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体は、工程(iii)を行うことによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法においては、得られたポリオレフィン架橋性発泡成形体を水分と接触させて架橋させる工程(iii)を行う。
この工程(iii)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。ポリオレフィン架橋性発泡成形体を水分と接触させることで、ポリオレフィン架橋性発泡成形体中のシラングラフトポリマーが有するシランカップリング剤、特に、後述する、金属水和物と結合していないシランカップリング剤のシリルエステル基が加水分解して、シラノール縮合する。これにより、ポリオレフィン系樹脂の、シランカップリング剤を介した架橋構造が形成され、ポリオレフィン架橋発泡成形体を得ることができる。
工程(iii)において、ポリオレフィン架橋性発泡成形体を水分と接触させる条件は、常温(15〜30℃)で保管する条件でも、シラノール縮合反応が起こる。シラノール縮合反応をさらに加速(促進)させるために、ポリオレフィン架橋性発泡成形体を積極的に水分に接触させることもできる。例えば、温水(40〜60℃)への浸水、湿熱槽への投入、水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力を掛けてもよい。
接触時間は、シラノール縮合反応の進行に応じて適宜に設定できる。
このようにして、本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法が実施され、本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体が製造される。
本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体において、優れた、耐熱性及び外観、さらには機械強度及び難燃性が発現する機構並びに発泡成形への影響についての詳細は定かではないが、以下のように考えられる。
工程(i)において、ポリオレフィン系樹脂と有機過酸化物と金属水和物とシランカップリング剤とを混合すると、シランカップリング剤に含まれる反応部位が加水分解しうる基である場合、その一部が加水分解を起こす(加水分解しうる基がシリルエステル基等である場合、シラノール基として存在する)。そして、反応部位(加水分解してなる基、好ましくはシラノール基)が金属水和物表面の化学結合しうる部位に作用、反応して物理的又は化学的に吸着又は結合する。
一方、ポリオレフィン系樹脂と有機過酸化物と金属水和物とシランカップリング剤とを溶融混合すると、有機過酸化物の分解により発生したラジカルを起点として、シランカップリング剤に含まれるグラフト化反応部位(好ましくはエチレン性不飽和基)がポリオレフィン系樹脂のグラフト化反応可能な部位にグラフト化反応する。
上記シランカップリング剤と金属水和物との反応、及び、シランカップリング剤とポリオレフィン系樹脂とのグラフト化反応により、金属水和物がシランカップリング剤を介して化学結合によってポリオレフィン系樹脂に担持された構造をとることができる(シラングラフトポリマーが形成される)と考えられる。
次いで、シラングラフトポリマーを含有する溶融混合物を発泡剤の存在下で押出発泡成形すると(工程(ii))、溶融混合物が押出機の出口から開放された際に、外方向に広がりながら気泡成長する。具体的には、物理発泡剤のガス又は化学発泡剤から発生したガスが溶解した溶融混合物が押出機の出口から開放された際に、ガスが減圧によって気泡化して溶融混合物中のシラングラフトポリマーを押し広げながら気泡成長していく。
このとき、ポリオレフィン系樹脂と金属水和物とを混合しただけ(シランカップリング剤を用いない場合)であると、金属水和物は単独で存在し、ポリオレフィン系樹脂との界面で摩擦を起こす。これにより、発泡成形前の溶融混合物(押出機中で溶融している)の溶融粘度及び溶融張力が高くなる。このため、気泡成長時において、ガスの膨張力に対してポリオレフィン系樹脂の溶融張力が勝る状態となり、ガスがポリオレフィン系樹脂を外側に押し広げることができずに、ポリオレフィン系樹脂から抜けてしまう(脱気)。その結果、ポリオレフィン系樹脂が十分に発泡せず、高い発泡倍率を得ることができなくなる。
しかし、本発明ではシランカップリング剤と有機過酸化物を用いる。したがって、上記のように、金属水和物がシランカップリング剤を介してポリオレフィン系樹脂に担持されている。この場合、金属水和物とポリオレフィン系樹脂との界面の割合は、シランカップリング剤を用いない場合に比べて小さくなる。これにより、発泡成形前の溶融混合物の溶融粘度及び溶融張力も同様に低くなる。このため、気泡成長時において、ガスの膨張力に対してシラングラフトポリマーの溶融張力は同程度に釣り合った状態とすることができ、適度にガスがシラングラフトポリマーを押し広げることができる。その結果、金属水和物をポリオレフィン系樹脂に高充填でき、しかもシラングラフトポリマーが十分に発泡して、高い発泡倍率を得ることができると考えられる。
このようにして発泡成形したポリオレフィン架橋性発泡成形体には、ポリオレフィン系樹脂にグラフト化したシランカップリング剤のうち金属水和物と結合していないシランカップリング剤が一部存在する。このシランカップリング剤のシリルエステル基同士が水分と接触することで、加水分解及びシラノール縮合反応を起こす。これにより、シランカップリング剤同士の架橋構造が形成され、ポリオレフィン系樹脂同士が架橋すると考えられる。
一方、ポリオレフィン系樹脂にグラフト化したシランカップリング剤のうち金属水和物と結合したシランカップリング剤は、シリルエステル基同士の縮合反応が起こりにくい。しかし、1つの金属水和物に複数のシランカップリング剤が結合すると、ポリオレフィン系樹脂同士が金属水酸化物とシランカップリング剤とを介して架橋すると考えられる。
このように、ポリオレフィン架橋発泡成形体は、金属水和物が高充填され、ポリオレフィン系樹脂が架橋構造を有している。したがって、耐熱性、機械強度、難燃性及び外観のいずれにも優れたものとすることができる。
本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体は、上記優れた特性のほかにも、好ましくは、下記(I)〜(IV)を満たしている。
(I)ポリオレフィン架橋発泡成形体は、ポリオレフィン系樹脂と、金属水和物をポリオレフィン系樹脂100質量部に対して20〜200質量部含んでいる。
(II)金属水和物の全部又は一部が、シランカップリング剤を介して化学結合によってポリオレフィン系樹脂に担持されている。すなわち、金属水和物が結合したシランカップリング剤がポリオレフィン系樹脂にグラフトしてなるシラングラフトポリマーを含有している。
(III)ポリオレフィン系樹脂が架橋構造を持ち、ポリオレフィン架橋発泡成形体のゲル分率が50%以上である。
ポリオレフィン系樹脂の架橋構造は、上記のように、シラノール縮合反応によるシランカップリング剤同士の架橋構造、1つの金属水和物に結合した複数のシランカップリング剤を介した架橋構造等が挙げられる。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂が架橋していることは、ポリオレフィン架橋発泡成形体のゲル分率により、評価、確認することができる。本発明において、ゲル分率は、50%以上であり、好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。ゲル分率が上記範囲にあると、ポリオレフィン系樹脂が架橋構造を形成していることを確認できる。また、ポリオレフィン架橋発泡成形体の耐熱性等が優れたものとなる。
ゲル分率は、ポリオレフィン架橋発泡成形体の質量に対するキシレン不溶分(120℃、24時間含浸)の質量の割合(ただし、質量測定では無機水和物の含有量を差し引いて計算する。以下、同じ。)である。測定方法及び条件は後述する。ゲル分率は、架橋剤量や架橋条件等によって、所定の範囲に設定できる。
(IV)ポリオレフィン架橋発泡成形体の発泡倍率が1.5〜10倍であり、好ましくは2〜8倍である。発泡倍率が1.5倍未満であると発泡体としての軽量効果が薄れてしまう場合がある。一方、10倍を超えると所望の機械強度が得られなくなる場合がある。発泡倍率の測定方法は後述する。発泡倍率は、発泡剤量や発泡時の温度、圧力等によって、所定の範囲に設定できる。
ポリオレフィン架橋発泡成形体は、複数の気泡を有している。気泡は、隣接する他の気泡と互いに連続した連続性気泡であってもよく、隣接する他の気泡と連続しない独立性気泡であってもよい。
ポリオレフィン架橋発泡成形体が有する気泡の気泡径は、特に限定されないが、下記測定方法による径として、10〜2000μmとすることが好ましい。気泡径が2000μmを超えると機械強度が不足する場合がある。一方、10μm未満であると発泡倍率が不足する場合、又は、連続気泡率が高くなりすぎる場合がある。
本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体の好ましい形態を説明する。
本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体の外観形状は、シート状及びロッド条など、その他制限はなく、押出機に取り付けられたダイにて成形可能な形状であれば適用できる。
シート状である場合のシート厚み、又は、ロッド条である場合のロッド径、球径としては、特に限定されないが、ダイの出口サイズ等の調整によって、0.1〜100mmとすることができる。
本発明のポリオレフィン架橋発泡製品は、本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体を含む製品であればよい。例えば、本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体そのものであってもよく、本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体と他の部材、例えば支持体、支持枠等とからなるものであってもよい。
本発明のポリオレフィン架橋発泡製品に用いられるポリオレフィン架橋発泡成形体は、上記製造方法で得られた成形体の形状のままであってもよく、また上記製造方法で得られた成形体を押出発泡成形直後又は後工程で別形状に成形加工したものでもよい。
本発明のポリオレフィン架橋発泡製品が用いられる用途は、特に限定されないが、上記建築土木資材、各種断熱材、産業資材及び自動車内装材等の各用途が好適に挙げられる。したがって、本発明のポリオレフィン架橋発泡製品は、用途に応じて、形状及び寸法が設定される。
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
ポリオレフィン系樹脂(A)として高密度ポリエチレン:HJ362(商品名、日本ポリエチレン社製)100質量部と、有機過酸化物(B)としてジクミルパーオキサイド:PERKADOX BC−FF(商品名、化薬アクゾ社製、分解179℃)0.1質量部と、金属水和物(C)として水酸化マグネシウム:マグシーズFK−621(商品名、神島化学社製、ビニルトリメトキシシラン1.0質量%での表面処理品、平均粒径1.0μm))60質量部と、シランカップリング剤(D)としてビニルトリメトキシシラン:KBM1003(商品名、信越シリコーン社製)5.5質量部とを、BMミキサー(日本ロール製造社製:2L インテンシブミキサー(バンバリーミキサー))内に投入し、200℃で10分間加熱混練(溶融混合)して、溶融混合物を得た(工程(i))。
得られた溶融混合物は、シラングラフトポリマーを含有していた。
次いで、40mm単軸押出機(池貝社製FS−40、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=34)の先端にロッドダイ(孔径2mm、ランド長2mm)を取り付け、シリンダー温度150℃、ヘッド温度及びダイ温度128℃に設定した。この単軸押出機に、得られた溶融混合物を投入し、かつ、ガス圧5MPaの炭酸ガスをシリンダー部に注入して、ガス濃度が1.6質量%となる注入量にて、溶融混合物を炭酸ガスの存在下で溶融させながら押し出して発泡成形した。このようにして、ロッド状のポリオレフィン架橋性発泡成形体を得た(工程(ii))。
続いて、ポリオレフィン架橋性発泡成形体を60℃の恒温水槽の温水中に72時間含浸させて、ポリオレフィン架橋発泡体を得た(工程(iii))。
<実施例2>
実施例1の工程(i)と同様にして溶融混合物を調製した。
次いで、実施例1で用いた押出機と同じ押出機を準備し、シリンダー温度150℃、ヘッド温度及びダイ温度132℃に設定した。この単軸押出機に、得られた溶融混合物を投入し、かつ、ガス圧1.5MPaの炭酸ガスをシリンダー部に注入して、ガス濃度0.2質量%となる注入量にて、溶融混合物を炭酸ガスの存在下で溶融させながら押し出して発泡成形した。このようにして、ロッド状のポリオレフィン架橋性発泡成形体を得た(工程(ii))。
続いて、ポリオレフィン架橋性発泡成形体を実施例1と同様の条件にて温水に含浸させて、ポリオレフィン架橋発泡体を得た(工程(iii))。
<実施例3>
実施例1の工程(i)と同様にして溶融混合物を調製した。
また、シラノール縮合触媒(E)としてジオクチルスズジラウリレート:KS−1200A−1(商品名、堺化学工業社製)1質量部と、キャリア樹脂として直鎖低密度ポリエチレン:ノバテックPE UE−320(商品名、三菱油化社製)100質量部を、1Lニーダーを用いて、160℃にて10分間溶融混合して、触媒マスターバッチを調製した。
次いで、実施例1で用いた押出機と同じ押出機を準備し、シリンダー温度150℃、ヘッド温度及びダイ温度135℃に設定した。この単軸押出機に、触媒マスターバッチ5質量部と上記溶融混合物165.6質量部とを投入し(シラノール縮合触媒の含有量はポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.05質量部)、かつ、ガス圧1.5MPaの炭酸ガスをシリンダー部に注入して、ガス濃度0.5質量%となる注入量にて、溶融混合物及び触媒マスターバッチを炭酸ガスの存在下で溶融混合しながら押し出して発泡成形した。このようにして、ロッド状のポリオレフィン架橋性発泡成形体を得た(工程(ii))。
続いて、ポリオレフィン架橋性発泡成形体を60℃の恒温水槽の温水に48時間含浸させて、ポリオレフィン架橋発泡組成体を得た(工程(iii))。
<比較例1>
ポリオレフィン系樹脂(A)として高密度ポリエチレン:HJ362(商品名、日本ポリエチレン製)100質量部と、金属水和物(C)として水酸化マグネシウム:マグシーズFK−621(商品名、神島化学社製、ビニルトリメトキシシラン1.0質量%での表面処理品、平均粒径1.0μm)60質量部とを、実施例1と同様の条件で、BMミキサーにて加熱混練し、水酸化マグネシウムマスターバッチを得た。
次いで、実施例1と同じ押出機を用いて、シリンダー温度150℃、ヘッド温度及びダイ温度132℃とし、水酸化マグネシウムマスターバッチを投入し、かつガス圧3.0MPaの炭酸ガスをシリンダー部に注入して、ガス濃度1.5質量%となる注入量にて、押し出して発泡成形した。このようにして、ロッド状の発泡成形体を得た。
<比較例2>
比較例1で得た水酸化マグネシウムマスターバッチを、実施例1と同じ押出機を用いて、シリンダー温度150℃、ヘッド温度及びダイ温度130℃として、投入し、かつガス圧4.0MPaの炭酸ガスをシリンダー部に注入して、ガス濃度1.8質量%となる注入量にて押し出して発泡成形した。このようにして、ロッド状の発泡成形体を得た。
各例で得られたポリオレフィン架橋発泡体及び架橋発泡体について、発泡倍率、気泡径、ゲル分率及び加熱変形率を測定し、外観を評価した。その結果を、各成分の含有量及び製造条件とともに表1に示す。
<発泡倍率の測定>
ポリオレフィン架橋発泡体又は架橋発泡体の発泡倍率を、水中置換法にて、次式を用いて算出した。
(発泡倍率)=(発泡前の組成物の密度)/(発泡組成物の密度)
ここで、発泡前の組成物とは、工程(ii)において溶融状態にある組成物を意味し、具体的には、工程(i)で得られる溶融混合物とシラノール触媒、キャリア樹脂、発泡剤及び添加剤等との混合物(成形材料)である。発泡組成物とは、ポリオレフィン架橋性発泡成形体を意味する。
<気泡径の測定>
各ポリオレフィン架橋発泡体又は架橋発泡体の任意の断面を冷凍破断によって切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察して、ポリオレフィン架橋発泡体又は架橋発泡体の気泡径を計測した。
具体的には、ASTM D3576−77に準じ、各ポリオレフィン架橋発泡体又は架橋発泡体の断面のSEM写真を撮影し、SEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、これら2つの直線が横切る気泡の弦の長さを測定し、平均値tを求めた。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
d=t/(0.616×M)
<ゲル分率の測定>
各ポリオレフィン架橋発泡体又は架橋発泡体から切り出した試験片を、金属メッシュ製の袋に入れ、メッシュ袋を試験管中で120℃に加熱したキシレンに24時間含浸させた。その後、メッシュ袋を試験管から取り出して十分に乾燥させた。このときの含浸、乾燥処理前後での不溶分の質量を測定して、下記式により算出した値をゲル分率とした。ただし、質量測定では水酸化マグネシウムの質量を差し引いて計算した。
(ゲル分率%)=(含浸、乾燥処理後の不溶分の質量)/(含浸、乾燥処理前の試験片の質量)×100
本発明において、ゲル分率はポリオレフィン系樹脂の架橋の形成及び程度の指標となるものであり、50%以上が好ましい。
<加熱変形率の測定>
高発泡倍率とした実施例1のポリオレフィン架橋発泡体については、50mm長の棒状試験片を用いた。また、低発泡倍率とした実施例2及び3のポリオレフィン架橋発泡体、並びに、比較例1及び2の架橋発泡体については、それぞれ、10mm長の棒状試験片を用いた。
これらの試験片に、それぞれ、160℃に熱した質量1kgのアイロンを30秒間載せて試験を行った。この試験前後での各試験片の厚み(直径)の変化率を下記式より算出して、加熱変形率とした。
(加熱変形率%)=(試験後の厚み)/(試験前の厚み)×100
本発明の加熱変形率の測定において、本試験による加熱変形率は70%が耐熱性の点で合格レベルである。
<外観試験>
各ポリオレフィン架橋発泡体又は架橋発泡体の外観評価は、表面性や形状を肉眼で観察した。ここで、表面性とはポリオレフィン架橋発泡成形体の表面の凹凸の程度のことをさし、表面性がよい(本試験において問題ない)とは表面の凹凸が少なく平滑であることをいう。また、形状は、ポリオレフィン架橋発泡成形体の形状(工程(ii)以降でポリオレフィン架橋性発泡成形体等を変形させない)のうねりの程度をさす。
本発明の外観試験において、表面性がよく、形状がうねっていない場合(ポリオレフィン架橋発泡成形体が棒状体として得られた場合)が合格レベルである。
Figure 2016148002
表1の結果から次のことが分かる。
すなわち、実施例1〜3では、発泡倍率が1.6〜7.5倍の範囲で表面性(外観)の良好なポリオレフィン架橋発泡成形体を得ることができた。しかも、この優れた外観は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して60質量部もの水酸化マグネシウムを用いていても得ることができた。
また、ゲル分率が50%以上であることから、ポリオレフィン架橋発泡成形体に含まれるポリオレフィン系樹脂は上記の架橋構造が十分に形成されていた。ポリオレフィン架橋発泡成形体はこのようなポリオレフィン系樹脂が架橋したポリオレフィン架橋樹脂を含有するため、加熱変形率も70%以上であるという優れた耐熱性が得られた。
一方、比較例1及び2は、いずれも、有機過酸化物とシランカップリング剤を用いておらず、発泡倍率は最大で2.4倍と高くはならなかった。また、水酸化マグネシウムを60質量部含有していても押し出し発泡成形することができたが、水酸化マグネシウムがポリオレフィン系樹脂から脱落したことが確認できた。そのため、ポリオレフィン系樹脂が架橋構造を持たず、ゲル分率は26%と低くかった。また、加熱変形率は20%以下であり、実施例1〜3に比べて大きく劣る結果であった。しかも、比較例1及び2の架橋発泡体は、いずれも、うねりが生じ、真っ直ぐで外観の良好なロッド状の架橋発泡体を得ることができなかった。
以上のように、工程(i)〜(iii)を経る本発明のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法により、金属水和物を高充填したポリオレフィン系樹脂(溶融混合物)を広い発泡倍率の範囲で外観よく押出発泡成形することができ、最終的に耐熱性に優れたポリオレフィン架橋発泡成形体を製造できることが示された。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物20〜200質量部と、シランカップリング剤0.5〜15.0質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して、溶融混合物を調製する工程(i)と、
    前記溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させて、発泡成形体を得る工程(ii)と、
    前記発泡成形体を水分と接触させて架橋させる工程(iii)とを、有するポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
  2. 前記工程(ii)が、前記溶融混合物とシラノール縮合触媒とを溶融混合させながら発泡剤の存在下で発泡成形させる請求項1に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
  3. 前記発泡剤が、物理発泡剤である請求項1又は2に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
  4. 前記工程(iii)が、15〜30℃の温度下で行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体の製造方法により製造されてなるポリオレフィン架橋発泡成形体であって、
    (I)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して20〜200質量部の金属水和物とを含み、
    (II)前記金属水和物がシランカップリング剤を介して化学結合によって前記ポリオレフィン系樹脂に担持されており、
    (III)前記ポリオレフィン系樹脂が架橋構造を持ち、ゲル分率が50%以上であり、
    (IV)発泡倍率が1.5〜10倍であるポリオレフィン架橋発泡成形体。
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン又はポリエチレン共重合体の樹脂である請求項5に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体。
  7. 前記金属水和物が、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである請求項5又は6に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン架橋発泡成形体を含むポリオレフィン架橋発泡製品。
  9. ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物20〜200質量部と、シランカップリング剤0.5〜15.0質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して、溶融混合物を調製する工程(i)と、
    前記溶融混合物を押出機を用いて溶融させながら発泡剤の存在下で発泡成形させて、発泡成形体を得る工程(ii)とを有する、ポリオレフィン架橋性発泡成形体の製造方法。
  10. 請求項9に記載のポリオレフィン架橋性発泡成形体の製造方法により製造されてなるポリオレフィン架橋性発泡成形体。
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