JP2014032270A - 位相差フィルム及びそれを用いた複合偏光板 - Google Patents

位相差フィルム及びそれを用いた複合偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】オレフィン系樹脂からなり、画像表示装置の組み立て過程において溶剤等の有機薬品に触れることがあっても、その後の熱履歴で割れや破れの発生しにくい、すなわち耐ソルベントクラック性に優れる位相差フィルムを提供する。
【解決手段】50nm以上の面内位相差を有するオレフィン系樹脂フィルムの両面に、カチオン重合硬化により形成された保護膜を有する位相差フィルムが提供される。この保護膜は、芳香環を有しないエポキシ化合物を硬化性成分とする硬化性樹脂組成物から形成することができる。また、この位相差フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを有する偏光板とが積層されている複合偏光板も提供される。上記の両面に保護膜を有する位相差フィルムと偏光板とは、感圧接着剤を介して積層することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶表示装置をはじめとする画像表示装置に好適に使用される位相差フィルム及びそれが偏光板に貼合された複合偏光板に関するものである。本発明の位相差フィルムは、画像表示装置の組み立て工程で接触する薬品に対する耐性、特に耐ソルベントクラック性に優れており、また近年のモジュールの薄型軽量化及び高輝度化を目的として、液晶パネル等の画像表示パネルの表面に、LOCA(Liquid Optically-Clear Adhesive、 光学透明接着剤液)を用いてカバーガラスやタッチセンサーモジュール付きカバーガラス(後者は単に「タッチパネル」と呼ばれることが多い)を貼り合わせた構成の各種画像表示装置に有用である。
液晶表示装置は従来から、卓上計算機や電子時計などに使用されているが、さらに最近では、携帯電話などのモバイル機器から大型テレビに至るまで、画面サイズを問わずに使用されるようになってきており、急激にその用途が広がりつつある。また、液晶表示装置以外の画像表示装置としては特に、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置が、モバイル用途を中心に需要増加の傾向にある。液晶表示装置では通常、液晶セルの表裏に一対の偏光板が配置されて液晶パネルとなる。有機EL表示装置では、有機EL素子の視認側に、偏光板、特に楕円ないし円偏光板を配置して、反射防止機能を持たせた有機ELパネルとすることが多い。楕円ないし円偏光板は、直線偏光板に1/4波長位相差板(すなわちλ/4板)を両者の軸が所定の角度で交差するように積層したものである。これらの画像表示装置に使用される偏光板についても、その展開に伴い、需要が増大しているばかりでなく、各用途に適する性能が求められている。
上記のような画像表示装置に広く用いられている偏光板(直線偏光板)は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向している偏光子の両面に、液状の接着剤を介して透明保護フィルム、典型的にはトリアセチルセルロースフィルムを接着した構成で製造されている。これをそのまま、あるいは必要により、光学特性を有する位相差フィルムなどの光学層を貼り合わせた形態で、感圧接着剤(粘着剤とも呼ばれる)を用いて液晶セルや有機EL素子などの画像表示素子に貼合され、表示パネル、さらに画像表示装置とされる。
位相差フィルムとしては、耐熱性、光学特性、透明性、電気特性などにおいて優れた性能を有するオレフィン系樹脂からなるフィルムを、延伸配向させることによって得られるものが、広く用いられている。しかし、一般的に耐薬品性に優れるとされるオレフィン系樹脂においても、応力がかかった状態で溶剤等の有機薬品に触れた場合には、その接触部分から容易に割れや破れが発生してしまい、接触する有機薬品の種類によっては、耐ソルベントクラック性に劣ることがあった。
特開平 8-259784 号公報(特許文献1)には、エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂を用い、これを架橋させることにより、耐溶剤性や耐薬品性を向上させた樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、耐ソルベントクラック性を向上させることはできるものの、架橋の制御が困難で、副生物が生じたり、重合開始剤が残留したりすることがあるという問題に加え、架橋により得られる樹脂フィルムが脆くなり、耐衝撃性等の機械的強度が低下してしまうことがあるという問題があった。一般的に位相差フィルムは、長尺ロール状態で取り扱われるとき、フィルムが弛まないように張力がかかることから、機械的強度の低下は、張力がかかったときにフィルムが破断してしまうなどの可能性があり、生産性の観点からは大きな問題であった。
また、特開 2007-16102 号公報(特許文献2)には、融点を有しない非晶性環状オレフィン系重合体に、融点を有する結晶性環状オレフィン系重合体を配合した樹脂組成物とすることで、射出成形、圧縮成形、押出成形等の成形方法により、透明性と耐ソルベントクラック性に優れる成形体が得られることが開示されている。しかし、非晶性樹脂に結晶性樹脂を配合した場合には、樹脂の透明性が低下する傾向にある。画像表示装置に用いられる光学フィルムにおいて、透明性の低下は画像品位の低下につながることから、この文献が開示する樹脂組成物を光学フィルムに適用することは困難であった。
一方、近年の画像表示装置の表示品位の高度化及び薄型化に伴い、偏光板も薄型化が進んでいる。薄型となった偏光板はフィルムとしてのコシが弱くなり、取り扱いが難しく、例えば、偏光板を表示装置に貼りつけるために用いられる感圧接着剤が、画像表示装置表面や偏光板表面に付着してしまうという不具合が生じることがあった。画像表示装置表面や偏光板表面に付着した感圧接着剤は、有機溶剤を染み込ませた柔らかい布で拭き取られることが多いが、拭き取り作業のときに偏光板の端部に有機溶剤が接触し、ソルベントクラックを生じる懸念があった。
さらに、タッチスイッチ(タッチパネル)を備える表示装置の表示品位向上のため、特開平 9-274536 号公報(特許文献3)には、偏光板が貼り付けられている表示パネル表面とタッチパネル裏面とを、液状の透明接着剤(先に述べたLOCA)を用いて貼り合わせることが提案されている。特開 2004-5540号公報(特許文献4)に示されるように、表示パネル表面とタッチパネル裏面とを感圧接着剤(粘着剤)により貼り合わせる技術も提案されているが、感圧接着剤を用いる場合には、表示パネルもタッチパネルも湾曲しにくいため、気泡を混入せずに貼り合わせることが難しく、液状の接着剤のほうが大気圧下での作業が可能で生産性に優れている。表示パネル表面に透明な保護カバーを取り付ける場合も同様である。表示パネル表面と保護カバー又はタッチパネルとを液状の透明接着剤で貼り合わせれば、両者の界面における反射を防ぐことができ、表示品位が向上し、一体化に伴って薄型化も可能となるが、接着剤が液状であるために、偏光板端部への液ダレが発生してしまい、接着剤を構成する溶剤によりソルベントクラックを生じる懸念があった。
特開 2011-59663 号公報(特許文献5)には、環状オレフィン系樹脂フィルム上に直接ホメオトロピック配向を固定化するため、オキセタン環を有する(メタ)アクリル化合物を含有する液晶性組成物を用いる技術が開示されている。
特開平8−259784号公報 特開2007−16102号公報 特開平9−274536号公報 特開2004−5540号公報 特開2011−59663号公報
本発明の一つの課題は、オレフィン系樹脂からなり、画像表示装置の組み立て過程において溶剤等の有機薬品に触れることがあっても、その後の熱履歴で割れや破れの発生しにくい、すなわち耐ソルベントクラック性に優れる位相差フィルムを提供することにある。本発明のもう一つの課題は、この位相差フィルムを偏光板と組み合わせて、光学補償機能を有し、耐ソルベントクラック性にも優れる複合偏光板を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、50nm以上の面内位相差を有するオレフィン系樹脂フィルムの両面に、カチオン重合硬化により形成された保護膜を有する位相差フィルムが提供される。この位相差フィルムにおいて、上記の保護膜は、芳香環を有しないエポキシ化合物を硬化性成分とする硬化性樹脂組成物から形成されていることが好ましい。
また本発明によれば、上で規定した位相差フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを有する偏光板とが積層されている複合偏光板も提供される。この複合偏光板において、上記の両面に保護膜を有する位相差フィルムと偏光板とは、感圧接着剤を介して積層することができる。
本発明の位相差フィルムは、その両面にカチオン重合硬化により形成された保護膜を有することで、耐ソルベントクラック性に優れたものとなる。この位相差フィルムが偏光板に積層された複合偏光板も、環境変化によって位相差フィルムに割れや破れなどが発生しにくいので、耐久性に優れたものとなる。これらの位相差フィルム及び複合偏光板は、液晶パネルや有機ELパネルを包含する表示パネル、特に有機薬品に触れる可能性がある表示パネルに対して、有効に用いることができる。
本発明では、50nm以上の面内位相差を有するオレフィン系樹脂フィルムの両面に、カチオン重合硬化により保護膜を形成して、耐ソルベントクラック性の改善された位相差フィルムとする。
[オレフィン系樹脂フィルム]
オレフィン系樹脂とは、エチレンやプロピレンのような鎖状脂肪族オレフィン、又はノルボルネンやその置換体(以下、これらを総称してノルボルネン系モノマーとも称する)のような環状オレフィンから導かれる構成単位を有する樹脂である。オレフィン系樹脂は2種以上のモノマーを用いた共重合体であってもよい。なかでも、環状オレフィンから導かれる構成単位を主成分とする環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
環状オレフィン系樹脂を構成する代表的なモノマーは、ノルボルネンである。ここでノルボルネンとは、ノルボルナンの1つの炭素−炭素結合が二重結合となった化合物であって、IUPAC 命名法によれば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンと命名されるものである。ノルボルネンの置換体の例を挙げると、ノルボルネンの二重結合位置を1,2−位として、3−置換体、4−置換体、4,5−ジ置換体などがあり、さらにはジシクロペンタジエンやジメタノオクタヒドロナフタレンなども、環状オレフィン系樹脂を構成するモノマーとすることができる。
ノルボルネン系モノマーを構成単位とする環状オレフィン系樹脂は、その主鎖にノルボルナン環を有していてもよいし、ノルボルナン環を有しなくてもよい。主鎖にノルボルナン環を有しない環状オレフィン系樹脂を形成するノルボルネン系モノマーとしては、例えば、開環により5員環となるもの、代表的には、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1−又は4−メチルノルボルネン、4−フェニルノルボルネンなどが挙げられる。環状オレフィン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
環状オレフィン系樹脂のより具体的な例を挙げると、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの開環共重合体、それらにマレイン酸付加やシクロペンタジエン付加などがなされたポリマー変性物、これらを水素添加した重合体又は共重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの付加共重合体などがある。共重合体とする場合の他のモノマーとして、α−オレフィン類、シクロアルケン類、非共役ジエン類などが挙げられる。これらのなかでも環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーを用いた開環重合体に水素添加した樹脂であるのが好ましい。
環状オレフィン系樹脂は、それから形成される原反フィルムに延伸処理を施して位相差フィルムとすることができるほか、延伸に加え、所定の収縮率を有する収縮性フィルムを貼り合わせて加熱収縮処理を施すことにより、均一性が高く、大きな位相差値を有する位相差フィルムとすることもできる。
ノルボルネン系モノマーを用いた環状オレフィン系樹脂として、市販されているものの例を商品名で挙げると、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオネックス”及び“ゼオノア”、JSR(株)から販売されている“アートン”などがある。これらの環状オレフィン系樹脂のフィルムやその延伸フィルムも、市販品を入手することができ、例えば、いずれも商品名で、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”などがある。
また、位相差フィルムには、オレフィン系樹脂を2種類以上含む混合樹脂からなるフィルムや、オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂からなるフィルムを用いることもできる。例えば、オレフィン系樹脂を2種類以上含む混合樹脂としては、上記した環状オレフィン系樹脂と鎖状脂肪族オレフィン系樹脂との混合物を挙げることができる。オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を用いる場合、他の熱可塑性樹脂は、目的に応じて適切なものが選択すればよい。具体例を挙げると、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂などがある。熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性付与などが挙げられる。
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を用いる場合、他の熱可塑性樹脂の含有量は通常、樹脂全体に対して50重量%以下であり、さらには40重量%以下であるのが好ましい。他の熱可塑性樹脂の含有量をこの範囲内とすることによって、光弾性係数の絶対値が小さく、良好な波長分散特性を示し、かつ、耐久性、機械的強度及び透明性に優れる位相差フィルムを得ることができる。
オレフィン系樹脂は、溶液からのキャスティング法や溶融押出法などにより、製膜することができる。2種以上の混合樹脂から製膜する場合は、例えば、樹脂成分を所定の割合で溶媒とともに撹拌混合して得られる均一溶液を用いてキャスティング法によりフィルムを作製する方法、樹脂成分を所定の割合で溶融混合し、溶融押出法によりフィルムを作製する方法などが採用できる。
オレフィン系樹脂フィルムは、残存溶媒、安定剤、可塑剤、老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの成分を必要に応じて含有していてもよい。また、表面粗さを小さくするため、レベリング剤を含有することもできる。
本発明で用いるオレフィン系樹脂フィルムは、面内位相差を有するものであり、その面内位相差は、50nm以上とする。ここで、面内位相差Reは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz 、そしてフィルムの厚さをdとして、下式(1)で定義される。
Re=(nx−ny)×d (1)
面内位相差Reが50nm以上であれば、位相差フィルムとしての延伸配向が十分になされた状態となり、本発明による耐ソルベントクラック性の効果が有効に発現される。面内位相差Reが大きいほど、延伸による配向が大きくなっていることから、本発明による耐ソルベントクラック性の発現効果も大きくなる。面内位相差Reは、本発明の位相差フィルムが適用される液晶表示装置や有機EL表示装置に求められる値に適宜設定されるが、一般には300nm以下である。
位相差にはそのほか、厚み方向位相差Rthがあり、これは下式(2)で定義される。また、位相差フィルムの2軸性の目安となるNz係数は、下式(3)で定義される。
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (2)
Nz係数=(nx−nz)/(nx−ny) (3)
Nz係数が1のとき、位相差フィルムの延伸配向は完全1軸性となり、本発明による耐ソルベントクラック性の効果が最も大きくなる。Nz係数が大きくなるにつれて、2軸性の配向となり、本発明による耐ソルベントクラック性の効果が発現しにくくなる。そのため、本発明で用いるオレフィン系樹脂フィルムは、そのNz係数が1以上3以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1以上2以下の範囲である。これらの位相差値及びNz係数は、可視光の中心付近の波長における値でありうるが、本明細書では、特に断らない限り、波長590nmにおける値とする。
上記のような屈折率異方性を有するオレフィン系樹脂フィルムは、オレフィン系樹脂からなるフィルムを、自由端縦一軸延伸、テンター横一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸など、適宜な方式で延伸することによって得られ、延伸倍率と延伸速度とを適切に調整するほか、延伸時の予熱温度、延伸温度、ヒートセット温度、及び冷却温度のような各種温度、またそれぞれの変化パターンを適宜選択することにより、所望の屈折率異方性を与えるフィルムを得ることができる。
位相差フィルムは、面内位相差Reが同じ値であれば、その厚さdが薄いほうが、面内遅相軸方向の屈折率nxと面内進相軸方向の屈折率nyとの差が大きく、したがって延伸による配向が大きいことを意味する。本発明に用いるオレフィン系樹脂フィルムは、その厚さが10〜50μmの範囲内にあることが好ましく、さらには15〜30μmの範囲内にあることがより好ましい。
[保護膜]
以上説明した面内位相差を有するオレフィン系樹脂フィルムの両面に、保護膜を形成する。この保護膜は、カチオン重合硬化によって形成する。そのため、保護膜の形成には、カチオン重合性の成分を含有する硬化性樹脂組成物が用いられる。また、カチオン重合性の成分に加えて、アクリル系化合物やメタクリル系化合物のようなラジカル重合性の成分が配合された樹脂組成物を用いることもできる。
カチオン重合性の成分としては、エポキシ化合物やオキセタン化合物を挙げることができる。なかでも、エポキシ化合物が好ましく用いられる。保護膜の形成に用いられるカチオン重合性のエポキシ化合物は、分子中に平均2個以上のエポキシ基を有し、反応により硬化する化合物又はオリゴマーである。エポキシ化合物のなかでも、耐候性や屈折率、カチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を有しないエポキシ化合物を主成分として用いることが好ましい。このような分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物として、水素化エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。
水素化エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の芳香環が水素添加されている化合物である。芳香族エポキシ化合物の水素化物は、芳香族エポキシ化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物を触媒の存在下及び加圧下で、芳香環に対して選択的に水素化反応を行って得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化する方法により得ることができる。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、及びビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、及びエポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの原料であって、ビスフェノール類を代表例とする芳香族ポリヒドロキシ化合物を上記のように核水添し、その水酸基にエピクロロヒドリンを反応させれば、芳香族エポキシ化合物の水素化物が得られる。なかでも、芳香族エポキシ化合物の水素化物として、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが好ましい。
次に脂環式エポキシ化合物について説明すると、これは、次式に示すような、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物であり、式中のmは2〜5の整数を表す。
Figure 2014032270
したがって脂環式エポキシ化合物とは、上記式で示される構造を少なくとも1個有し、それを含めて分子内に合計2個以上のエポキシ基を有する化合物である。上記の式における (CH2)m 中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。また、脂環式環を形成する水素がメチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。なかでも、エポキシシクロペンタン環(上式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上式においてm=4のもの)を有するエポキシ化合物を用いることが好ましい。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を示す。
(1)下式(I)に相当するエポキシシクロヘキシルメチル エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
Figure 2014032270
式中、R1 及びR2 は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。
(2)下式(II)に相当するアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
Figure 2014032270
式中、R3 及びR4 は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、nは2〜20の整数を表す。
(3)下式(III) に相当するジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル類:
Figure 2014032270
式中、R5 及びR6 は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは2〜20の整数を表す。
(4)下式(IV)に相当するポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
Figure 2014032270
式中、R7 及びR8 は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、qは2〜10の整数を表す。
(5)下式(V)に相当するアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
Figure 2014032270
式中、R9 及びR10は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、rは2〜20の整数を表す。
(6)下式(VI)に相当するジエポキシトリスピロ化合物:
Figure 2014032270
式中、R11及びR12は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。
(7)下式(VII)に相当するジエポキシモノスピロ化合物:
Figure 2014032270
式中、R13及びR14は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。
(8)下式(VIII)に相当するビニルシクロヘキセンジエポキシド類:
Figure 2014032270
式中、R15は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。
(9)下式(IX)に相当するエポキシシクロペンチルエーテル類:
Figure 2014032270
式中、R16及びR17は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。
(10)下式(X)に相当するジエポキシトリシクロデカン類:
Figure 2014032270
式中、R18は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。
これらのなかでも代表的な脂環式エポキシ化合物を、以下に掲げる。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔式(I)において、R1=R2=Hの化合物〕、
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート〔式(I)において、R1=6−CH3、R2=6−CH3の化合物〕、
エチレン ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)〔式(II)において、R3=R4=H、n=2の化合物〕、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート〔式(III) において、R5=R6=H、p=4の化合物〕、
ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート〔式(III)において、R5=6−CH3、R6=6−CH3、p=4の化合物〕、
エチレングリコール ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)〔式
(V)において、 R9=R10=H、r=2の化合物〕。
次に脂肪族エポキシ化合物について説明すると、脂肪族エポキシ化合物には、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルがある。これらの例として、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
エポキシ化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数のエポキシ化合物を混合して用いてもよい。また、単官能のエポキシ化合物、すなわち分子中に1個のエポキシ基を有する化合物を、塗工性改良などの目的で少量配合することもできる。
本発明で使用するエポキシ化合物は、そのエポキシ当量が通常 30〜3,000g/当量であり、好ましくは 50〜1,500g/当量である。エポキシ当量が30g/当量を下回ると、硬化後の保護膜の可撓性が低下したり、オレフィン系樹脂フィルムに対する接着強度が低下したりする可能性がある。一方、エポキシ当量が 3,000g/当量を超えると、他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
本発明において、オレフィン系樹脂フィルム両面の保護膜は、カチオン重合硬化により形成される。そこで、保護膜形成のためのカチオン重合性の成分を含有する硬化性樹脂組成物には、カチオン重合開始剤を配合することが好ましい。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射若しくは加熱によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ化合物を代表例とするカチオン重合性成分の重合反応を開始する。
光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での保護膜の形成が可能となり、オレフィン系樹脂フィルムの耐熱性あるいは膨張による歪を考慮する必要が減少し、保護膜を良好に形成することができる。また、光カチオン重合開始剤は光で触媒的に作用するため、カチオン重合性成分に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄−アレーン錯体などを挙げることができる。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
鉄−アレーン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤は市場から容易に入手できる。市販品の例を挙げると、いずれも商品名で、日本化薬(株)から販売されている“カヤラッド PCI-220”及び“カヤラッド PCI-620”、ダウケミカル社から販売されている“UVI-6990”、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマー SP-150”及び“アデカオプトマー SP-170”、日本曹達(株)から販売されている“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”及び“CIP-2064S”、みどり化学(株)から販売されている“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、
“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、
“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”及び“DTS-103”、ローディア社から販売されている“PI-2074”などがある。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物を代表例とするカチオン重合性成分100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは15重量部以下である。その量が少なすぎると、硬化が不十分になり、保護膜の機械強度や接着強度が低下する。また、その量が多すぎると、保護膜中にイオン性物質が増加することで保護膜の吸湿性が高くなり、耐久性能が低下する可能性があるので、好ましくない。
さらに、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。具体的な光増感剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。光増感剤は、保護膜形成用の光カチオン重合性樹脂組成物を100重量部としたときに、 0.1〜20重量部の範囲で含有するのが好ましい。
次に、熱カチオン重合開始剤について説明する。加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する化合物として、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。熱カチオン重合開始剤も、市場から容易に入手できる。市販品の例を挙げると、いずれも商品名で、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトン CP77”及び“アデカオプトン CP66”、 日本曹達(株)から販売されている“CI-2639”及び“CI-2624”、三新化学工業(株)から販売されている“サンエイド SI-60L”、“サンエイド SI-80L”及び“サンエイド SI-100L”などがある。
以上説明した光カチオン重合と熱カチオン重合を併用することも、有用な技術である。
本発明で保護膜を形成するための硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物に加え、オキセタン化合物やポリオール化合物など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。オキセタン化合物は先述のとおり、カチオン重合によって硬化する化合物でもある。
オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であり、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。オキセタン化合物も、市場から容易に入手できる。市販品の例を挙げると、いずれも東亞合成(株)から販売されている商品名で、“アロンオキセタン OXT-101”、“アロンオキセタン OXT-121”、“アロンオキセタン OXT-211”、“アロンオキセタン OXT-221”及び“アロンオキセタン OXT-212”などがある。オキセタン化合物は、硬化性樹脂組成物中、通常5〜95重量%、好ましくは30〜70重量%の割合で使用される。
ポリオール化合物は、フェノール性水酸基以外の酸性基が存在しないものであることが好ましく、例えば、水酸基以外の官能基を有しないポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、フェノール性水酸基を有するポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物などを挙げることができる。これらポリオール類の分子量は、通常48以上、好ましくは62以上、さらに好ましくは100以上、また好ましくは 1,000以下である。これらポリオール化合物の配合量は、硬化性樹脂組成物中、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
さらに、本発明の効果を損なわない限り、硬化性樹脂組成物にはその他の添加剤、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、赤外線吸収剤などを配合することができる。イオントラップ剤には、例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系、及びこれらの混合系のような無機化合物が包含される。酸化防止剤には、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが包含される。また赤外線吸収剤には、例えば、シアニン系、オキソノール系、チオピリリウムスクアリリウム系、チオピリリウムクロコニウム系、ピリリウムスクアリリウム系又はピリリウムクロコニウム系の化合物が包含される。赤外線吸収剤が添加された硬化性樹脂組成物から保護膜を形成すれば、得られる位相差フィルム又は複合偏光板を、レーザー光の照射により切断することが容易になる。
保護膜は、未硬化の硬化性樹脂組成物を、オレフィン系樹脂フィルムの表面に塗工した後、その塗工層を、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射又は/及び加熱により硬化させて、形成する。オレフィン系樹脂フィルム両面の保護膜は、フィルムの片面ずつ上記の塗工と硬化を繰り返すことにより形成してもよいし、フィルムの両面に硬化性樹脂組成物を塗工し、両面の硬化を同時に行うことにより形成してもよい。
オレフィン系樹脂フィルムへの硬化性樹脂組成物の塗工には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、オレフィン系樹脂フィルムの光学性能を低下させることなく、硬化性樹脂組成物を良好に溶解するものが用いられる。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。
活性エネルギー線の照射により硬化させる場合、用いる光源として、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを挙げることができる。硬化性樹脂組成物への光照射強度は、目的とする組成物ごとに決定されるが、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が、例えば、 0.1〜100mW/cm2 程度となるようにすればよい。硬化性樹脂組成物への光照射強度が小さいと、反応時間が長くなりすぎ、一方でそれが大きいと、ランプから輻射される熱及び組成物の重合時の発熱により、硬化後の保護膜の黄変やオレフィン系樹脂フィルムの劣化を生じる可能性がある。硬化性樹脂組成物への光照射時間は、やはり組成物ごとに制御されるが、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。硬化性樹脂組成物への積算光量が小さいと、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる保護膜の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量を大きくしようとすると、照射時間が長くなり、生産性向上には不利になる。
加熱により硬化させる場合は、一般的に知られた条件で加熱すればよく、通常は硬化性樹脂組成物に配合された熱カチオン重合開始剤がカチオン種やルイス酸を発生する温度以上で加熱が行われ、例えば50〜200℃程度の温度で実施される。
活性エネルギー線の照射又は加熱のいずれの条件で硬化させる場合でも、オレフィン系樹脂フィルムの光学特性や透過率など各種性能が変化しない条件で硬化させることが好ましい。保護膜の厚さは、薄型軽量性、保護機能、取扱い性などの観点から、0.1μm以上10μm 以下であるのが好ましく、さらには0.1μm以上5μm 以下であるのがより好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの両面に設けられる保護膜は、その表裏で異なる組成とすることもできる。
この保護膜は、位相差を有し、光学補償機能が付与されたものであってもよいし、位相差を有しないものであってもよい。例えば、オレフィン系樹脂フィルムの一方の面に設ける保護膜は位相差のないものとし、他方の面に設ける保護膜は位相差を有し、光学補償機能が付与されたものとすることもできる。保護膜に位相差を付与する場合は、保護膜形成用の硬化性樹脂組成物に液晶性化合物を含有させておき、フィルム上への塗工によりその液晶性化合物を配向させた後、カチオン重合により硬化させ、配向状態を固定化する方法が、好ましく採用される。オレフィン系樹脂フィルムに液晶性化合物を含む硬化性樹脂組成物を塗工し、配向した保護膜を形成する技術は、先の特許文献5(特開 2011-59663 号公報)に開示されている。この文献の開示に準じて、オキセタン環を有する(メタ)アクリル化合物に液晶性化合物が配合された硬化性樹脂組成物をオレフィン系樹脂フィルムに塗工し、カチオン重合硬化させることで、ある種の位相差が付与された保護膜を形成することができる。
[偏光板及び複合偏光板]
本発明により、オレフィン系樹脂フィルムの両面に保護膜が形成された位相差フィルムは、偏光板と組み合わせて、複合偏光板とすることができる。ここで用いる偏光板は、直線偏光板、すなわち、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有する光学素子であり、かかる機能は、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムによってもたらされる。
偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、及び染色後にホウ酸を用いた架橋処理を施すことによって、製造される。一軸延伸は、染色の前に行うこともできるし、染色と同時に行うこともできるし、染色後の例えば架橋処理と同時に行うこともできる。もちろん、これら複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。一軸延伸と二色性色素による染色を組み合わせることにより、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向し、その配向方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する機能が発現される。二色性色素としては、一般にヨウ素又は二色性の有機染料が用いられる。
このようなポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルム自体を偏光板とし、これを先に説明した位相差フィルムに積層することもできるが、一般には、偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムが貼合された状態で偏光板となる。偏光フィルムに貼合される保護フィルムは、透明な樹脂フィルムであればよく、その樹脂として、例えば、トリアセチルセルロースに代表されるアセチルセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂に代表される先に説明した環状オレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂に代表される鎖状オレフィン系樹脂などが用いられる。
偏光フィルムへの保護フィルムの貼合には、一般に接着剤が用いられる。このための接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を代表例とする水系の接着剤、エポキシ化合物やアクリル系化合物を硬化性成分とし、重合開始剤が配合された紫外線硬化型接着剤などであることができる。
[位相差フィルムと偏光板との積層]
位相差フィルムと偏光板との積層には、感圧接着剤を用いることができる。感圧接着剤は、アクリル酸エステルに少量の官能基含有単量体が共重合されたアクリル樹脂に、イソシアネート系化合物などからなる架橋剤が配合された、アクリル系の感圧接着剤で構成するのが一般的である。
[複合偏光板のチップカット]
上記のようにして得られる複合偏光板は、通常、長尺のロール形状や大尺のシート形状で製造されることが多く、所望の形状と光学軸を有する複合偏光板とするためには、さらに鋭利な刃を持った切断工具により、又はレーザー光の照射により切断(チップカット)される。さらに、必要に応じて外周端部を回転刃やフライカット法にて連続的に切削加工してもよい。本発明の複合偏光板においては、切断時に発生する微細なクラックがケミカルクラックの基点となることを防ぐため、レーザー光の照射により切断したり、切断後の端面を切削加工したりすることが好ましい。
[表示パネル]
位相差フィルムと偏光板が積層された複合偏光板は、液晶セルや有機EL素子等の表示素子に貼着され、表示パネルとなる。このとき一般には、位相差フィルム側が表示素子に向くように配置される。複合偏光板の表示素子への貼着にも、通常はアクリル系の感圧接着剤が用いられる。液晶セルや有機EL素子をはじめとする表示素子は、その表面がガラスで構成されることが多いので、そこへの貼着に用いられる感圧接着剤は、上記したアクリル樹脂と架橋剤に加え、ガラスとの接着性を高めるためにシラン化合物が配合されているのが一般的である。
本発明の位相差フィルムは、位相差が付与されたオレフィン系樹脂フィルムの両面に保護膜が形成されている。その端面ではオレフィン系樹脂がむき出しになっているものの、上記保護膜を存在させたことで、複合偏光板として表示セルに貼着し、表示パネルを組み立てるときに、溶剤等の有機薬品に触れ、その状態で熱履歴を受けても、オレフィン系樹脂フィルムの応力がかかっている方向(延伸倍率の大きい方向、すなわち遅相軸方向)に入りやすい割れ、いわゆるソルベントクラックを、有効に防止することができる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。
[実施例1]
(A)光硬化性樹脂組成物の調製と物性測定
以下の各成分を混合し、脱泡して、光硬化性樹脂組成物を液体状態で調製した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 75部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 20部
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル 5部
トリアリールスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤
2.25部
なお、光カチオン重合開始剤は、50%プロピレンカーボネート溶液の形で入手したものを使用した。上に示した配合量(2.25部)は、固形分量である。
(B)両面に保護膜が形成された位相差フィルムの作製
環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルム〔JSR(株)から入手した商品名“アートンフィルム”、長尺ロールフィルムの幅方向(TD)に遅相軸があり、Re=115nm、Nz係数=1.4、厚さ20μm)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上で調製した光硬化性樹脂組成物を硬化後の膜厚が約2μm となるようにバーコーターを用いて塗工した。フュージョンUVシステムズ社製の紫外線ランプ“Dバルブ”が取り付けられたベルトコンベア付き紫外線照射装置を用い、積算光量が250mJ/cm2 となるように紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させた。“アートンフィルム”の他面にも同様に、コロナ放電処理、光硬化性樹脂組成物の塗布、及び紫外線照射による光硬化性樹脂組成物の硬化を行って、“アートンフィルム”の両面に保護膜を有する位相差フィルムを作製した。
(C)水系接着剤の調製
水100部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した“KL-318”〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加して、水系接着剤とした。
(D)偏光板の作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が 0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。
この偏光フィルムの一方の面に、表面にケン化処理が施された厚さ40μm のトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)から入手した商品名“コニカタック KC4UYW”〕を貼合し、もう一方の面には、厚さ23μmの環状オレフィン系樹脂フィルム〔日本ゼオン(株)から入手した商品名“ゼオノアフィルム ZF14-023”〕 の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面を貼合して、偏光板を作製した。貼合には、それぞれ先に示した水系接着剤を用い、貼合後80℃で5分間乾燥することにより、トリアセチルセルロースフィルム及び環状オレフィン系樹脂フィルムを偏光フィルムに接着させた。得られた偏光板は、その後、40℃で168時間養生した。
(E)感圧接着剤シート
いずれも感圧接着剤メーカーから入手した以下のものを用いた。
感圧接着剤シートA: アクリル酸ブチルを主成分とし、少量のアクリル酸が共重合されているアクリル樹脂に、イソシアネート系架橋剤及び紫外線硬化性成分が配合され、紫外線硬化によって貯蔵弾性率が高められた15μm厚の粘着剤層が、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)上に形成されているもの。
感圧接着剤シートB: アクリル酸ブチルを主成分とし、少量のアクリル酸2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸が共重合されているアクリル樹脂に、イソシアネート系架橋剤及びシラン化合物が配合されている25μm厚の粘着剤層が、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)上に形成されているもの。
(F)複合偏光板の作製
上の(D)で作製した偏光板の環状オレフィン系樹脂フィルム側に、感圧接着剤シートAを貼合し、セパレータを剥がした後、その感圧接着剤面に、上の(B)で作製した両面に保護膜を有する位相差フィルムを、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とがほぼ直交するように貼合した。また、位相差フィルムの偏光板と反対側の面には、感圧接着剤シートBを貼り合わせて、以下の層構成を有する複合偏光板(ただし、接着剤層の表示は省略)を作製した。
トリアセチルセルロースフィルム/
偏光フィルム/
環状オレフィン系樹脂フィルム“ゼオノアフィルム ZF14-023 ”/
感圧接着剤シートA/
硬化保護膜/
環状オレフィン系位相差フィルム“アートンフィルム”/
硬化保護膜/
感圧接着剤シートB/
セパレータ
なお、各フィルムに感圧接着剤シートを貼り合わせるにあたっては、それぞれのフィルム又はシートを10m/分の速度で移動させながら、各貼合面に280Wの出力強度でコロナ放電処理を施し、感圧接着剤シートとフィルムの密着性を高めてから貼り合わせた。
[実施例2]
光硬化性樹脂組成物の配合を以下のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、両面に保護膜が形成された位相差フィルム及び複合偏光板を作製した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 70部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 20部
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル 10部
トリアリールスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤
2.25部
[比較例1]
環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルム“アートンフィルム”に保護膜を形成することなく、そのまま用い、その他は実施例1と同様にして、複合偏光板を作製した。
[光学特性の評価試験]
実施例1及び2で作製した両面に保護膜が形成された位相差フィルム、及び比較例1で用いた保護膜が形成されていない位相差フィルムにつき、王子計測機器(株)製の位相差測定装置“KOBRA-WPR” を用いて面内位相差を測定し、また(株)村上色彩技術研究所製のヘーズメーター“HM-150”を用いてヘーズを測定し、結果を表1に示した。表1の結果から、保護膜のない比較例1の位相差フィルムに比べ、保護膜を形成した実施例1及び2の位相差フィルムは、事実上光学特性の変化が見られないことが確認された。
Figure 2014032270
[機械特性の評価試験]
実施例1及び2で作製した両面に保護膜が形成された位相差フィルム、並びに比較例1で用いた保護膜が形成されていない位相差フィルムから、幅10mm×長さ200mmの試験片を切り出し、標線間距離を100mmとしてこれを(株)島津製作所製の万能試験機“オートグラフ AG-I” にセットし、引張速度50mm/分で引張試験を行い、ヤング率及び破断強度を求めた。試験は、長尺ロールフィルムの機械方向(長さ方向、MD)を長辺として切り出した試験片、及び長尺ロールフィルムの幅方向(MD)を長辺として切り出した試験片のそれぞれについて行い、結果を表2に示した。表2の結果から、保護膜のない比較例1の位相差フィルムに比べ、保護膜を形成した実施例1及び2の位相差フィルムは、事実上機械強度の変化が見られないことが確認された。
Figure 2014032270
[耐ソルベントクラック性の評価試験]
実施例1及び2並びに比較例1で作製した複合偏光板から、60mm×100mmのサイズで、長辺(100mmの辺)を基準(0°)とし、偏光板側から環状オレフィン系位相差フィルム及び感圧接着剤を下にして見たときの反時計回り方向を正として、偏光板の吸収軸が83°、位相差フィルムの遅相軸が173°となるようスーパーカッター〔(株)荻野精機製作所製〕を用いて裁断した。それぞれの複合偏光板からセパレータを剥がし、露出した感圧接着剤面を無アルカリガラス(コーニング社から入手した商品名“Eagle-XG”)に貼合し、温度50℃、圧力0.5MPaで20分間のオートクレーブ処理を行い、複合偏光板を無アルカリガラスに十分密着させた。
次に、このガラス貼合複合偏光板の短辺端面(すなわち、位相差フィルムの遅相軸と概ね直交する端面)に、オレイン酸〔和光純薬工業(株)から入手した1級試薬〕を滴下した。そのオレイン酸(溶剤)が蒸発しないようにカバーガラスを被せた状態で、そのまま3時間放置した後、カバーガラスを取り外して溶剤を拭き取った。その後、−40℃の温度での保持時間30分、85℃の温度での保持時間30分、温度移行時間0分に設定された冷熱衝撃試験槽に入れて、「−40℃の温度で30分保持→温度を80℃に変更→その温度で30分保持→温度を−40℃に変更」を50サイクル(50時間)繰り返す冷熱衝撃試験を行った。また比較例1のガラス貼合複合偏光板については、オレイン酸(溶剤)を滴下しない状態でも、上と同じ冷熱衝撃試験を行った。
試験後のガラス貼合複合偏光板につき、溶剤を滴下した端面を偏光板側から観察して、位相差フィルムのクラックの有無を確認し、クラックが認められた場合は、端面からクラック先端までの長さを測定した。結果を表3に示した。
Figure 2014032270
表3からわかるように、保護膜が形成されていない位相差フィルムから複合偏光板を作製した比較例1では、溶剤との接触なしに冷熱衝撃試験を行った場合にはクラックが発生しなかったが、端面に溶剤が触れた後の冷熱衝撃試験により、その溶剤が触れた端面にクラックが発生した。これに対し、保護膜が形成された位相差フィルムから複合偏光板を作製した実施例1及び2では、端面に溶剤が触れた後の冷熱衝撃試験によっても、クラックが発生しなかった。これより、オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムの両面に硬化保護膜を形成することが、端面自体は溶剤に触れることになるものの、耐ソルベントクラック性の改善に有効であることが確認された。

Claims (4)

  1. 50nm以上の面内位相差を有するオレフィン系樹脂フィルムの両面に、カチオン重合硬化により形成された保護膜を有することを特徴とする位相差フィルム。
  2. 前記保護膜は、芳香環を有しないエポキシ化合物を硬化性成分とする硬化性樹脂組成物から形成されている請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の位相差フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを有する偏光板とが積層されていることを特徴とする複合偏光板。
  4. 前記位相差フィルムと前記偏光板とが感圧接着剤を介して積層されている請求項3に記載の複合偏光板。
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