JP2013100436A - 高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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広平 西野
Hidetaka Fujimatsu
秀隆 藤松
Keiichi Hayashi
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Abstract

【課題】高分岐型超高分子量共重合体を含有し、溶融張力と溶融延伸性のバランスに優れる高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物と、それを使用した大型ブロー成形品を提供する。
【解決手段】ゴム成分を溶解したスチレンを必須とするモノビニル化合物に、平均して1分子中にビニル基を2以上有し、分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を、重量基準で100ppm〜3000ppm添加した原料溶液を、重合反応器に連続的に供給して重合させて得られ、溶剤可溶性多官能ビニル共重合体とモノビニル化合物が重合して生じる高分岐型超高分子量共重合体とモノビニル化合物が重合して生じる線状重合体とを含み、Mwが15万〜40万、Mz/Mwが2.2〜5.0、分子量100万〜150万における分岐比gMが0.85〜0.40である高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム成分を溶解したスチレンを必須とするモノビニル化合物と一分子内に複数の二重結合を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体とを連続的に重合反応器に供給する連続重合法によって得られる高分岐型超高分子量共重合体と線状重合体とを含有する高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物とそれから得られる成形品に関するものであり、この樹脂組成物は大型成形品のブロー成形性に優れている。
ゴム変性スチレン系樹脂は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、寸法安定性や着色性に優れることから、工業用品や包装材料、日用品として幅広い分野で使用されている。また、大型成形品の分野では、浴室天井や洗面化粧台などの住宅設備やスポイラーなどの自動車部品等の大型成形品がブロー成形によって製造されている。ブロー成形は射出成形に比べて、金型のコストが廉価であり、金型加工も容易であることから、低コストで大型成形品を得ることができる。しかしながら、ブロー成形によって大型成形品を成形する場合、パリソンが自重に耐えられずドローダウンが生じ、成形品の肉厚が不均一になったり、成形自体が不可能となることがある。成形品の肉厚が不均一になると、薄肉部分の剛性が低下し、耐衝撃性も低下する。
耐ドローダウン性の改善として、ゴム変性スチレン系樹脂の分子量を上げて、高粘度化する方法が考えられるが、パリソンの押出時に流動が不安定となり、メルトフラクチャーが発生し、流れ方向に肉厚が不均一となってしまう。パリソンの押出を安定させつつ、耐ドローダウン性を改善するには、溶融樹脂の流動性(粘性)と弾性を表す溶融張力とのバランスが重要であり、さらに溶融状態での伸びを表す溶融延伸性とのバランスが重要となる。
溶融張力を制御する手段としては、スチレン系樹脂に超高分子量成分を含有させる方法が有効であることが知られている。
超高分子量成分を含有する樹脂組成物を得る方法としては、例えば、特許文献1に記載された分子量が200万以上の成分を一定範囲内で含有するスチレン系重合体組成物がある。この組成物を得るためには、重合の前段において低温下で重合を進行させる方法やアニオン重合等で別途重合した超高分子量重合体をブレンドする方法が提案されているが、この方法では、生産性に劣ったり、別途重合した成分をブレンドする場合はコスト高となる等の問題点があった。
上記の問題を回避するために、例えば特許文献2に記載された多官能ビニル化合物単位を含有する100万以上の分子量成分を一定範囲内で含有するスチレン系重合体などがあり、分岐型超高分子量成分を含有させるために芳香族ジビニル化合物に代表される芳香族多官能ビニル化合物を極少量、ビニル系単量体に添加し重合することが提案されている。しかし、この手段を連続塊状重合に応用すると長期の反応を継続した場合、重合反応器の壁面に存在する境膜と呼ばれる流動が停止している領域においてゲル化が進行するという問題点があり、上記を避けようとすると多官能芳香族ビニル化合物の添加量に制限を受け、望ましい超高分子量成分量を生成させることが困難であった。
さらに、特許文献3には多官能重合開始剤を用いたゴム変性スチレン系樹脂が開示されているが、この方法ではスチレン系重合体全体が高分子量化しやすく、それを避けるために多量の連鎖移動剤を使用すると効果が不十分となる。また、特許文献4には多分岐状マクロモノマーを用いて得られる線状ポリスチレンと多分岐状ポリスチレンからなるスチレン系樹脂組成物により、溶融張力に優れることが開示されているが、溶融延伸性の改善は不十分である。
特公昭62−61231号公報 特開平10−130443号公報 特開2002−145968号公報 特開2003−292707号公報
本発明の目的は、ブロー成形時の耐ドローダウン性を改善するため、溶融張力と溶融延伸性のバランスに優れた、ゲル状物がなく、高分岐型超高分子量体を含有するブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物とそれから得られる成形品を提供することである。
すなわち本発明は、以下に記載する通りの高分岐型インジェクションブロー用ゴム変性スチレン系樹脂組成物とそれから得られる成形品である。
(1) ゴム成分を溶解したスチレンを必須とするモノビニル化合物に、平均して1分子中にビニル基を2以上有し、分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を、重量基準で100ppm〜3000ppm添加し、1個以上連続して配置された重合反応器に、原料溶液を連続的に供給して重合反応を進行させて得られる、該溶剤可溶性多官能ビニル共重合体と該モノビニル化合物が重合して生じる高分岐型超高分子量共重合体と該モノビニル化合物が重合して生じる線状重合体とを含むゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、重量平均分子量(Mw)が15万〜40万で、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜5.0、分子量100万〜150万における分岐比gMが0.85〜0.40であることを特徴とする高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(2) 溶剤可溶性多官能ビニル共重合体は、ジビニル化合物と共重合可能なモノビニル化合物とを重合して得られ、更に下記式(a1)で表されるジビニル化合物由来のペンダントビニル基含有単位を構造単位中にモル分率として0.10〜0.50の範囲で含有し、その重量平均分子量における慣性半径(nm)と上記モル分率の比が10〜80の範囲内にあることを特徴とする(1)の高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
Figure 2013100436
(式中、R1はジビニル化合物に由来する炭化水素基を示す。)
(3) 上記(1)または(2)に記載の高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物をブロー成形して得られることを特徴とするブロー成形品。
本発明の高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、高分岐型超高分子量共重合体と線状重合体をバランスよく含有し、溶融張力と溶融延伸性のバランスに優れることから、耐ドローダウン性に優れ、大型成形品のブロー成形に適しており、肉厚の均一な成形品を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物(以下、ゴム変性スチレン系樹脂組成物ともいう)の製造方法としては、ゴム成分を溶解したスチレンを含むモノビニル化合物と溶剤可溶性多官能ビニル共重合体(以下、多官能ビニル共重合体ともいう)と、必要に応じて溶剤、重合触媒、連鎖移動剤等を添加混合し、直列および/または並列に配列された1個以上の反応器と未反応単量体等を除去する揮発分除去工程を備えた設備に連続的に単量体類を送入し、段階的に重合を進行させる所謂、連続塊状重合法が好適に用いられる。反応器の様式としては、完全混合型の槽型反応器、プラグフロー性を有する塔型反応器、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型の反応器等が例示される。これら反応器の配列の順序に特に制限は無いが、連続生産においてゲル状物の生成を抑制するためには、多官能ビニル共重合体が未反応の状態で、反応器壁面の境膜中に高濃度に滞留する状態を発現させないことが重要であり、第一の反応器として完全混合型の槽型反応器を選択することが好ましい。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。重合反応器は、1個以上連続して配置されるが、1個の場合は、単独でよく、2個以上の場合は、少なくとも2つは連続的(直列)に配置される。
原料溶液は、スチレンを含むモノビニル化合物と、ゴム成分及び多官能ビニル共重合体を含む。本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の構成要素となる多官能ビニル共重合体は、モノビニル化合物類、重合溶媒等に溶解した状態で、必要に応じて上記の反応器の途中から添加することもできる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の原料として使用されるスチレンを必須とするモノビニル化合物(以下、スチレン系モノマーともいう)は、スチレンが100%であってもよく、スチレンと他のモノビニル化合物を含む混合物であってもよい。他のモノビニル化合物としては、スチレンと共重合可能なオレフィン性二重結合を有するものであればよく、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー類、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。これらの他のモノビニル化合物は1種もしくは2種以上を併用して使用することもできる。そして、スチレンと他のモノビニル化合物の割合は、スチレン50〜100モル%、他のモノビニル化合物0〜50モル%であることが、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の特性を生かすために好ましい。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の構成要素となるゴム成分としては、ゴム状重合体であることが好ましい。ゴム状重合体としては、常温でゴム的性質を示すものであればよく、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体類、スチレン−ブタジエンブロック共重合体類、水添(部分水添)ポリブタジエン、水添(部分水添)スチレン−ブタジエン共重合体類、水添(部分水添)スチレン−ブタジエンブロック共重合体類、エチレン−プロピレン系共重合体類、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体類、イソプレン重合体類、スチレン−イソプレン共重合体類等である。これらのゴム状重合体は、その1種のみを用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。ゴム成分は、スチレン系モノマーに溶解して使用するが、組成物中には後述の相転移の機構によりミクロな粒子状に分散する。
ゴム成分の使用量は、スチレン系モノマー100重量部に対し、2〜12重量部が好ましく、より好ましくは3〜8重量部である。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の原料として使用される多官能ビニル共重合体は、スチレン系モノマーと共重合化されることで高度に分岐された超高分子量のスチレン系樹脂を与えるものである。
上記多官能ビニル共重合体は、特開2004−123873号公報、特開2005−213443号公報、WO2009/110453等に開示されている方法に準じて得ることができる。具体的には、ジビニル化合物と少なくとも1種以上のモノビニル化合物を使用し、共重合させて、式(a1)で示される反応性のペンダントビニル基を有する共重合体を得るものである。さらに、上記特許文献に記載されるように末端にビニル基以外の他の末端基が導入されたものを使用することもでき、特にフェノキシメタクリレート類のような不飽和結合を分子内に有する化合物にて末端変性されたものは(a1)以外にも架橋点として作用することが可能となるため好ましい。この場合は、末端の不飽和結合含有構造単位(a2)もビニル基を有するので、式(a1)の構造単位との合計のモル分率(a3)は、全体のビニル基の存在量を示すことになる。
多官能ビニル共重合体を得るために使用するジビニル化合物としては、ジビニルベンゼンに代表されるジビニル芳香族化合物類やエチレングリコールジ(メタ)アクリレートに代表される脂肪族、脂環式(メタ)アクリレート類等が例示される。
また、ここで使用するモノビニル化合物としては、前述したようなスチレン等のモノビニル芳香族化合物を含むモノビニル化合物類が挙げられる。
多官能ビニル共重合体の製造方法としては、例えば、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及び他のモノビニル化合物から選ばれる2種以上の化合物を、ルイス酸触媒、エステル化合物から選ばれる助触媒の存在下、カチオン共重合させることにより得ることができる。また(メタ)アクリレート系のジビニル、モノビニル化合物を使用する場合は、カチオン重合では反応が進行しないため過酸化物等のラジカル触媒の存在下でラジカル重合することにより得ることができる。
ジビニル化合物とモノビニル化合物の使用量は、本発明で使用される多官能ビニル共重合体の組成を与えるように決められるが、ジビニル化合物を、好ましくは全単量体の10〜90モル%、より好ましくは30〜90モル%使用する。モノビニル化合物を好ましくは全単量体の90〜10モル%、より好ましくは70〜10モル%使用する。ここで、2−フェノキシエチルメタクリレートのようなカチオン重合においては末端変性剤として作用するものは単量体としては計算しない。
多官能ビニル共重合体の製造で用いられるルイス酸触媒としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。分子量及び分子量分布の制御及び重合活性の観点から、三フッ化ホウ素のエーテル(ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等)錯体が最も好ましく使用される。ルイス酸触媒は単量体化合物1モルに対して、0.001〜10モルの範囲内で用いるが、より好ましくは0.001〜0.01モルである。ルイス酸触媒の使用量が過大であると、重合速度が大きくなりすぎるため、分子量分布の制御が困難となるので好ましくない。
助触媒としてはエステル化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。その中で、重合速度及び共重合体の分子量分布制御の観点から炭素数4〜30のエステル化合物が好適に使用される。入手の容易さの観点から、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチルが好適に使用される。助触媒は単量体化合物1モルに対して0.001〜10モルの範囲内で使用するが、より好ましくは0.01〜1モルである。助触媒の使用量が過大であると、重合速度が減少し、共重合体の収率が低下する。一方、助触媒の使用量が過少であると、重合反応の選択性が低下し、分子量分布の増大、ゲルの生成等が生じる他、重合反応の制御が困難となる。
また、ラジカル重合で多官能ビニル共重合体を製造する際に用いられる触媒としては、アゾビスイソブチロニトリルに代表されるアゾ系化合物、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の単官能性の過酸化物や1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンのような2官能性以上の多官能性の過酸化物が例示され、単独または2種以上を併用して使用することができる。
本発明で使用する多官能ビニル共重合体は上記のような製造方法で得ることができるが、単量体として使用するジビニル化合物のビニル基の一部は重合させずに残すことが必要である。そして、少なくとも平均して1分子中に2以上、好ましくは3以上のビニル基が存在するようにする。このビニル基は主として上記式(a1)で表わされる構造単位として存在する。そして、ビニル基の一部は重合させずに残すことにより架橋反応を抑制し、溶剤可溶性を与えることができる。ここで、溶剤可溶性とは、トルエン、キシレン、THF(テトラヒドロフラン)、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることをいい、具体的にはこれらの溶媒100gに、25℃において5g以上が溶解し、ゲルが発生しないことをいう。一方、ジビニル化合物の一部は2つビニル基が反応して架橋又は分岐することが必要であり、これにより分岐構造を有する共重合体とすることができる。このように、ジビニル化合物の一部については2つのビニル基の一つは反応させ、一つは重合させずに残し、他の一部については2つのビニル基を共に反応させることにより本発明で使用する多官能ビニル共重合体を得ることができる。このような多官能ビニル共重合体を得る重合方法は、上記のように公知であり、上記のようにして製造することができる。
多官能ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜70,000がより好ましい。1,000より小さい場合は、芳香族ジビニル化合物や多官能(メタ)アクリレート類を用いた場合と同様に連続重合におけるゲル化の進行抑制効果は小さくなり、連続重合において十分な効果を得難い。
多官能ビニル共重合体に導入されるジビニル化合物由来のビニル基を含有するユニットは上記式(a1)で表わされる構造単位を有するが、この構造単位(a1)のモル分率は、0.10〜0.50であることがよい。0.10モルより少ない場合は、ブロー成形用途に必要な高分子量の高分岐型超高分子量共重合体が得られにくい。一方、0.50モルを超える場合は、高分岐型超高分子量共重合体の分子量が過度に増大し、ゲル化が起こりやすくなり、ブロー成形品の外観不良等を引き起こしやすい。
ここで、構造単位(a1)、末端変性剤由来の二重結合(a2)および両者の合計のモル分率(a3)は日本電子製JNM−LA600型核磁共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により構造を決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
上記したように不飽和結合を分子内に有する化合物にて末端変性したものは、式(a1)で表わされる構造単位の他に、末端の不飽和結合含有構造単位(a2)もビニル基を有するので、両者の合計のモル分率(a3)が、0.10〜0.50であることがよい。
また、多官能ビニル共重合体は、その重量平均分子量における慣性半径(nm)と上記構造単位(a1)のモル分率又は上記合計のモル分率(a3)との比が、本用途に必要な溶融張力と溶融延伸性を付与するための高分岐型超高分子量共重合体をゲル化を伴わずに調整するためには、10〜80の範囲にあることが好ましい。上記の比が80を超える場合は、ゲル化は進行しないが、高分岐型超高分子量共重合体が十分に得られにくい傾向がある。一方、10より小さい場合は、高分岐型超高分子量共重合体がゲルにまで成長する傾向があり、ブロー成形時に微小なゲルによる外観不良等の不具合が起こりやすくなる傾向がある。
ここで、慣性半径は、試料を0.5%のTHF溶液に調整した後、メンブランフィルターにてろ過し、ろ液についてGPC多角度光散乱法を用いて測定を行った。さらに、試料を0.2%THF溶液に調整後1日放置した。その後、THFを用いて4種類の濃度(0.02、0.05、0.10、0.12wt%)の溶液に希釈し、これらの溶液を用いてdn/dc値(固有の屈折率増分:溶質の濃度変化に対して、そのポリマー溶液の屈折率がどのくらい変化するかを表した値)の測定を行い、得られたdn/dc値から試料の慣性半径を算出した。
多官能ビニル共重合体は分子量に分布を持つ重合体であり、当然、その慣性半径も分布を有しているため、重量平均分子量における慣性半径を全体の慣性半径の平均値として採用するものである。
ここで定義した慣性半径と二重結合の含有量を表わす指標である構造単位(a1)のモル分率又は上記合計のモル分率(a3)の比は、高分岐型超高分子量共重合体を構成する際に、核となる多官能ビニル共重合体が重合反応溶液中でどのような広がりの中に、どれだけの反応点を有しているかを表す指標といえる。この比が小さ過ぎると、反応点が近傍にあり、ゲル化を引き起こしやすくなり、またこの比が大き過ぎると分岐型成分の高分子量化が困難となる。
スチレン系モノマーに対する多官能ビニル共重合体の配合率としては、重量基準で100ppm〜3000ppmであり、100ppm〜1000ppmがより好ましい。多官能ビニル共重合体の配合率が100ppmより少ない場合は、高分岐型超高分子量共重合体の生成量が不十分となり、一方、3000ppmを越える場合は、ゲルを生じ、ブロー成形時に微小なゲルによる外観不良等の不具合を引き起こす可能性がある。
前記多官能ビニル共重合体とスチレン系モノマーとを共重合させることにより、多官能ビニル共重合体とスチレン系モノマーとの共重合体である高分岐型超高分子量共重合体と、スチレン系モノマーだけから生成する線状重合体と粒子状に分散したゴム成分の混合物である本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物が得られる。スチレン系モノマーとして2種類以上を用いた場合は、線状重合体は共重合体となる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、15万〜40万であり、20万〜35万であることが好ましく、23万〜33万であることがより好ましい。Mwが15万未満ではゴム変性スチレン系樹脂組成物の強度が不十分であり、Mwが40万を超えると流動性が著しく悪化し、成形性が低下する。ゴム変性スチレン系樹脂組成物のMwは、重合工程の反応温度、滞留時間、多官能ビニル共重合体の配合割合、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。なお、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は高分岐型超高分子量共重合体と線状重合体からなるスチレン系樹脂組成物のマトリクス相にゴム状分散粒子が分散した形態であり、分子量はマトリクス相の分子量を意味する。そのため、分子量測定に用いる試料はゴム状分散粒子を除去したものを使用した。具体的には、後述するゲル分測定により調製したサンプルを用いた。
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製 Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
上記分子量の測定は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
また、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)は、2.2〜5.0であり、2.3〜4.0が好ましく、2.6〜3.5であることがより好ましい。Mz/Mwが2.2未満であると、高分岐型超高分子量共重合体の含有量が不十分となり、Mz/Mwが5.0を超えると高分岐型超高分子量共重合体の分子量が高くなり、製造過程においてゲルが生成しやすくなる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の分子量100万〜150万の成分における分岐比gMは、0.85〜0.40であり、0.80〜0.50であることが好ましい。分岐比gMは、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれる高分岐型超高分子量共重合体の分岐の程度を表しており、分岐比gMが低いほど分岐が多いことを表している。分岐比gMが0.85超えると分岐が不足し、分岐比gMが0.40未満として分岐を増やしても、それ以上の改良効果が得られない。
分岐比gMはゲルパーミエイションクロマトグラフィー多角度レーザー光散乱光度計(GPC−MALS法)により、分子量と回転半径の測定を行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の回転半径<r2brと直鎖ポリスチレンの回転半径<r2linから分岐比gM=<r2br/<r2linを計算し、分子量100万〜150万の間の平均値として算出した。なお、分岐の大きいポリマーは回転半径が小さいため、分岐比gMの値は小さくなり、分岐が少ないポリマーほど1に近い数値となる。GPC−MALSの測定は次の条件にて行った。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex DS−4
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:室温
検出器:示差屈折計
MALS機種:Wyatt Technology社製 DAWN DSP−F
波長:633nm(He−Ne)
上記分岐比gMは標準直鎖多分散ポリスチレン(昭和電工製:NBS706)の分岐比gMを1とした場合に対する数値を算出したものである。なお、本測定においては、GPC測定と同様に、試料はゴム状分散粒子を除去したものを使用した。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物のMz/Mwは高分岐型超高分子量共重合体の含有量、分岐比gMは分岐の程度に関係しており、これらの因子はスチレン系モノマーに対する多官能ビニル共重合体の配合割合や重合条件を調整することにより制御することができる。なお、本発明の多官能ビニル共重合体を用いることで、重合初期から高分岐型超高分子量共重合体を効率よく生成させることができ、重合条件によるポリマー設計の自由度が大きい。特にゴム変性スチレン系樹脂組成物の重合においては、重合前半においてゴム状分散粒子のサイズをコントロールする必要があり、重合温度や重合開始剤の種類及び添加量には制限があったが、本発明の多官能ビニル化合物共重合体を用いることで、容易に高分岐型超高分子量体を生成させることができる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物中の残存スチレンモノマー及び残存重合溶媒の総量は、500μg/g以下であることが好ましく、350μg/g以下であることがより好ましい。ゴム変性スチレン系樹脂組成物中の残存スチレンモノマー及び残存重合溶媒の総量が多いと、押出機の出口や熱成形時に、これらの成分が揮発し金型が汚染されたり、成形品の表面に付着して外観不良等の問題となるため、極力低減することが好ましい。
上記残存スチレンモノマー及び残存重合溶媒の量は、樹脂500mgを、内部標準物質としてシクロペンタノールを含むDMF(ジメチルホルムアミド)10mlに溶解し、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
ガスクロマトグラフ:HP−5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−WAX、0.25mm×30m、膜厚0.5μm
インジェクション温度:220℃
カラム温度:60℃〜150℃、10℃/min
ディテクター温度:220℃
スプリット比:30/1
残存スチレンモノマー及び重合溶媒は、脱揮工程の構成及び脱揮工程の運転条件により、低減することができ、二段脱揮或いは二段注水脱揮などの構成とすることで好ましい範囲に調整することができる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のメタノール可溶分は、0.5〜4.0質量%であることが好ましく、1.0〜2.5質量%であることがより好ましい。メタノール可溶分が0.5質量%未満では機械的特性として、引張破壊歪みが低下する。メタノール可溶分が4.0質量%を超えると耐ドローダウン性が悪化し、成形品の耐熱性も低下する。メタノール可溶分とは樹脂組成物中のメタノールに可溶な成分を指し、例えばゴム変性スチレン系樹脂の重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)の他にホワイトオイル、シリコーンオイル等の各種添加剤や残存スチレンモノマー及び残存重合溶媒等の低分子量成分が含まれる。メタノール可溶分は、重合過程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)の発生量、ホワイトオイル等の各種添加剤の添加量、残存スチレンモノマー及び残存重合溶媒の量により調整することができる。
なお、メタノール可溶分は樹脂組成物1gを精秤(質量P)し、メチルエチルケトンを40mL加えて溶解し、メタノール400mLを急激に加えて、メタノール不溶分(樹脂成分)を析出、沈殿させる。約10分間静置した後、ガラスフィルターで徐々にろ過してメタノール不溶分を分離し、120℃の真空乾燥機にて2時間減圧下で乾燥した後、デシケータ内で約25分間放冷し、乾燥したメタノール不溶分の質量Nを測定することで、次式によって求めた。
メタノール可溶分(質量%)=(P−N)/P×100
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゲル分は10〜20質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。ゲル分はゴム変性スチレン系樹脂組成物の分散相を構成するゴム状分散粒子の含有量を表し、ゲル分が10質量%未満では耐衝撃性が低下し、20質量%を超えると耐ドローダウン性が悪化し、成形品の剛性も低下する。ゲル分は、原料として使用するゴム状重合体の濃度と後述するグラフト率によって調整することができる。
ゲル分は、1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し(質量W)、50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液35ミリリットルを加えて溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H−2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得て、セーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて120℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量Gを測定して、次のように求めることができる。
ゲル分(質量%)=(G/W)×100
なお、デカンテーションにより分離した上澄み液を300mlビーカーに入れ、メタノール250ミリリットルを急激に加え、ポリマー分を再沈させ、沈殿したポリマー分をフィルターで吸引ろ過し、フィルター上のポリマーを真空乾燥機にいれて1.5時間以上真空乾燥し、前述の平均分子量(Mz、Mw)および分岐比gMの測定サンプルとした。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のグラフト率は0.8〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましい。グラフト率が0.8満或いは3.0を超える場合、耐衝撃性が低下する。グラフト率はゴム状分散粒子中のポリスチレンとゴム分の比を表し、ゴム状分散粒子が単位ゴム分当たりにグラフトしたポリスチレン及び内包したポリスチレンの量を表す。グラフト率は、使用するゴム状重合体の1,2−ビニル結合の含有量、重合開始剤の種類及び添加量、ゴム粒子を形成させる反応器の形式などによって調整することができる。グラフト率はゲル分とゴム分より、グラフト率=(ゲル分−ゴム分)/ゴム分によって算出した。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え、暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の膨潤比SRは8〜16であることが好ましく、9〜14であることがより好ましい。膨潤比はゴム状分散粒子の架橋度を表しており、8未満では耐衝撃性が低下するため、好ましくない。また、膨潤比が16を超えると、成形加工時にゴム状分散粒子が流動方向に対して大きく変形し、流動方向に沿って割れやすくなる。膨潤比は重合工程を出た後の脱揮工程における温度と滞留時間によって調製することができる。また、原料として使用するゴム状重合体の種類にもより、1,2−ビニル結合含有量の少ないハイシスポリブタジエンゴムは、ローシスゴムに比べて膨潤比が高めの傾向となる。
膨潤比SRは、1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し、トルエン30ミリリットルを加え溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H−2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去してトルエンで膨潤した不溶分の質量Sを測定し、続いてトルエンで膨潤した不溶分をセーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥した後、更に真空乾燥機にて120℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケータ中で冷却した後、不溶分の乾燥質量Dを測定して、次のように求めることができる。
膨潤比SR=S/D
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子の粒子径は、1.0〜5.0μmであることが好ましく、1.5〜3.5μmであることがより好ましい。粒子径が1.0μm未満では耐衝撃性が低下し、5.0μmを超えると光沢が低下して外観が悪化する。ゴム状分散粒子の粒子径は、使用するゴム状重合体の1,2−ビニル結合含有量や溶液粘度、重合工程のゴム状分散粒子を形成させる領域(相転移)における攪拌速度や重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量などによって制御することができる。また、ゴム状重合体として、スチレンが結合したスチレン−ブタジエンゴムを用いることで、小粒子径化することができる。
ゴム状分散粒子の粒子径は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を四酸化オスミウムで染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、超薄切片におけるゴム状分散粒子のTEM写真を撮影し、ゴム状分散粒子の直径を計測して体積基準の中位径として粒子径を算出した。
本発明のスチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、1.0g/10分以上5.5g/10分未満であることが好ましく、2.5g/10分以上、4.0g/10分未満であることがより好ましい。1.0g/10分未満では、流動性が不足し、パリソンの押出時に流動が不安定となり、メルトフラクチャーが発生しやすくなるため好ましくない。5.5g/10分上ではドローダウンが発生しやすくなるため好ましくない。MFRは、JIS K−7210に基づき測定することができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物の190℃で測定した溶融張力値は13〜20gfであること好ましい。また、最大溶融延伸倍率は30が好ましい。溶融張力値が13gf未満では、耐ドローダウン性に劣るため、成形品の肉厚が不均一となりやすい。溶融張力値が20gfを超えると流動性とのバランスが取れなくなる傾向がある。また、最大溶融延伸倍率が30未満では、パリソンの伸びが不足して、成形時にパリソンが破断したり、成形品の型再現性が悪化する傾向がある。溶融張力とのバランスが取れる限りは、最大溶融延伸倍率の上限値は制限されるものではない。
溶融張力値は、東洋精機製「キャピログラフ1B型」を使用し、バレル温度190℃、バレル径9.55mm、キャピラリー長さ:L=10mm、キャピラリー径:D=1mm(L/D=10)、バレル内の押出し速度10mm/分にて樹脂を押出し、荷重測定部をダイから60cm下方にセットし、キャピラリーより流出してきたストランド状の樹脂を巻き取り器にセットし、巻き取り線速度を4m/分から徐々に速度を上昇していき、ストランドが破断するまでの荷重を測定する。荷重は巻き取り線速度を上げていくと、一定値に安定するので、荷重が安定した範囲を平均化して溶融張力値とした。また、ストランドが破断したときの巻き取り線速度(m/分)とキャピラリー内の流速(m/分)の比を最大溶融延伸倍率(倍)とした。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する際には、重合反応の制御の観点から、必要に応じて重合溶媒、有機過酸化物等の重合開始剤や脂肪族メルカプタン等の連鎖移動剤を使用することができる。
重合溶媒は連続重合において反応物の粘性を低下させるために用いるものであり、その有機溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
特に多官能ビニル共重合体の添加量を多くしたい場合には、ゲル化を抑制する観点から重合溶媒を使用することが好ましい。これにより、先に示した多官能ビニル共重合体の添加量を飛躍的に増量することができ、ゲルが生じにくい。
重合溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、ゲル化を制御するという観点から、通常、重合反応器内の組成として、1〜50質量%であることが好ましく、3〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。50質量%を超える場合は、生産性が著しく低下したり、ゴム変性スチレン系樹脂の分子量が過度に低下する傾向がある。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の分子量調整に連鎖移動剤を用いることができ、例えば、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、前述のように、ゴム成分を溶解したスチレン系モノマーに多官能ビニル共重合体を添加して連続重合することにより得られるが、加工の容易さを付与したり、強度の向上のために、予め重合されたスチレン系樹脂や前述の流動パラフィン類以外の添加剤等を押出機で溶融ブレンドしたり、ペレット状態でドライブレンドして用いることもできる。
上記のスチレン系樹脂や添加剤としては、流動性の改良のためのGP−PS樹脂や強度向上のためのゴム質を含有するMBS樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂やSBS等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、添加剤としてはステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸及びその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン等の可塑剤、酸化防止剤が挙げられる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、ブロー成形用であるが、特に大型押出ブロー成形に適しており、間欠押出方式(アキュムレータ方式)に適する。本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いることにより、パリソンの重量が10kgを超えるような大型成形品でも耐ドローダウン性は良好であり、肉厚の均一な成形品を得ることができる。本発明の大型ブロー成形とは、上記アキュムレータ容量が10L以上、50L未満の成形機を用いて行う成形を意味し、代表的な成形品としては、自動車のバンパー、エアスポイラー等の外装部品やユニットバス、およびユニットバスの天井材などが例示される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
合成例(多官能ビニル共重合体A)
ジビニルベンゼン3.1モル(399.4g)、エチルビニルベンゼン0.7モル(95.1g)、スチレン0.3モル(31.6g)、2−フェノキシエチルメタクリレート2.3モル(463.5g)、トルエン974.3gを3.0Lの反応器内に投入し、50℃で42.6gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を添加し、6.5時間反応させた。重合反応を炭酸水素ナトリウム溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、多官能ビニル共重合体A372.5gを得た。この多官能ビニル共重合体Aの重量平均分子量Mwは8000で、ジビニル化合物由来のビニル基を含有する構造単位(a1)のモル分率は0.44、末端の2−フェノキシエチルメタクリレート由来の二重結合(a2)は0.03、両者を合わせた合計のモル分率(a3)は0.47であった。また重量平均分子量8000における共重合体の慣性半径は6.4nmであった。本共重合体の二重結合のモル分率と慣性半径の比は13.6であり、かつ、直鎖型の分子量8000における慣性半径が15nmであることと比較すると本合成例における多官能ビニル共重合体は分岐構造をとっていることがわかる。
製造例(実施例及び比較例)
(スチレン系樹脂組成物PS−1〜PS−10の製造)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と攪拌翼付塔型プラグフロー型反応器である第2反応器および第3反応器、スタティックミキサー式プラグフロー型反応器である第4反応器を直列に接続して重合工程を構成した。各反応器の容量は、第1反応器を25L、第2反応器を40L、第3反応器を50L、第4反応器を50Lとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。ポリブタジエンは、旭化成ケミカルズ株式会社製ジエン55AEを使用した。重合開始剤及び連鎖移動剤は、第3反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレンに対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1中、重合開始剤−1は2,2−ジ(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製パーテトラA)であり、重合開始剤−2はt−ブチルクミルパーオキサイド(日油株式会社製パーブチルC)であり、t−ドデシルメルカプタンは連鎖移動剤である。架橋剤は、上記合成例で得た多官能ビニル共重合体A又はジビニルベンゼン(DVB)を使用し、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレン質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加した。
続いて、第4反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液に、重合体に対して表1の濃度となるようホワイトオイルを添加/混合し、直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。なお、PS−1〜3は実施例であり、PS−4〜10は比較例である。
なお、それぞれの条件にて連続運転でのゲル状物の有無を確認したところ、PS−6とPS−10の条件では24時間の時点で多孔ダイからのストランドにゲル状物が多数含まれ、運転の継続が困難であった。
また、各反応器出口とペレットの分子量Mw、Mzより、多官能ビニル共重合体を用いることで、重合初期より高分岐型超高分子量共重合体が効率良く生成していることがわかる。
Figure 2013100436
実施例1
スチレン系樹脂組成物PS−1を90mmφの単軸押出機でシリンダー温度190℃にて樹脂を可塑化し、アキュムレータに樹脂を溜めて、300mmφのダイスよりパリソンを押出しした。パリソンの重量は12kg、成形品の大きさは2000×500×50mmとした。パリソンの押出時に、メルトフラクチャーの発生状態より、流動安定性を評価した(○:メルトフラクチャー発生なし、△:部分的にメルトフラクチャーが発生、×:メルトフラクチャー発生により流れ方向の肉厚変動大)。また、パリソンの状態より、耐ドローダウン性を評価した(○:ドローダウンがなく、安定して連続成形可能、△:ドローダウンにより、成形状態が不安定、×:ドローダウンが著しく、連続成形不可能)。さらに、成形品を切断し、パリソンの上下における肉厚を計測し、肉厚の均一性として評価した(○:肉厚が均一、×:肉厚が不均一)。
また、シャルピー衝撃強さは、JIS K 7111に基づき、方法1eA(エッジワイズ衝撃)により求めた。ビカット軟化温度は、JIS K 7206に基づき、昇温速度50℃/h、荷重50Nの条件にて求めた。
実施例2〜3、比較例1〜5
表2に示した名称のスチレン系樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。製造例で得られたスチレン系樹脂組成物の特性および成形特性の評価結果を表2に示す。
Figure 2013100436

Claims (3)

  1. ゴム成分を溶解したスチレンを必須とするモノビニル化合物に、平均して1分子中にビニル基を2以上有し、分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル共重合体を、重量基準で100ppm〜3000ppm添加した原料溶液を、1個以上連続して配置された重合反応器に、連続的に供給して重合反応を進行させて得られ、該溶剤可溶性多官能ビニル共重合体と該モノビニル化合物が重合して生じる高分岐型超高分子量共重合体と、該モノビニル化合物が重合して生じる線状重合体とを含むゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、重量平均分子量(Mw)が15万〜40万で、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2〜5.0、分子量100万〜150万における分岐比gMが0.85〜0.40であって、200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)が、1.0g/10分以上5.5g/10分未満であることを特徴とする高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  2. 溶剤可溶性多官能ビニル共重合体が、ジビニル化合物と共重合可能なモノビニル化合物とを重合して得られ、下記式(a1)で表されるジビニル化合物由来のペンダントビニル基含有単位を構造単位中にモル分率として0.10〜0.50の範囲で含有し、その重量平均分子量における慣性半径(nm)と上記モル分率の比が10〜80の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
    Figure 2013100436
    (式中、R1はジビニル化合物に由来する炭化水素基を示す。)
  3. 請求項1〜2のいずれか1項に記載の高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするブロー成形品。
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