JP2018193428A - ゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むブロー成形品 - Google Patents

ゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むブロー成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れるブロー用成形品を提供することを目的とする。【解決手段】マトリックス相(A)にゴム状弾性体粒子(B)を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂を含み、マトリックス相(A)は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体を含み、ゴム状弾性体粒子(B)を2.5〜11.0質量%含有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、ブロー成形品。【選択図】図1

Description

本発明は、特定のゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むブロー成形品に関するものである。具体的には、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れるブロー成形品を提供することを目的とする。
スチレン系樹脂、とりわけゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)は、剛性が高く、寸法安定性、着色性が良好で、廉価であることから、射出あるいは発泡やシート成形材料として、雑貨、包材、家電・工業部品等に広く使用されている。
近年、製品の大型化や、組み立て工程の省略化から部品の一体化が強く要求される時代の傾向から、例えば射出成形技術においても、より高度で複雑なものが求められるようになってきている。しかし、これらの技術を用いて成形するためには大型で複雑な金型、付属の設備が必要であることから、多大な投資が必要であり、製品設計、試作等も容易でないのが実状である。
一方、大型成形の観点から、ブロー成形(吹き込み成形)もまた、注目されている技術である。ブロー成形のメリットは、比較的大型な成形品を容易に得ることが可能であり、金型に対する投資も射出成形に比較すると廉価であり、金型加工も容易であることである。ブロー成形においては、パリソンを作り出す際に、そのパリソン自身の自重に耐えられず、偏肉や場合として切れてしまう、いわゆる「ドローダウン」の問題がある。このドローダウンを起こしやすい「耐ドローダウン性」に劣る成形材料は、偏肉が起きやすく、パリソンの切れも起きやすい。
上記の問題を解決するための試みとして、上述した種の用途において、例えば、特許文献1は、ゴム変性スチレン系樹脂のマトリックス相の重量平均分子量、その重量平均分子量と数平均分子量の比、分散粒子として含有するゴム状弾性体粒子の中位径や、ゲル分を適切な範囲に制御する方法が提案されている。また、特許文献2は、特定の多官能ビニル化合物共重合体を用いて、超高分子量多分岐型共重合体をスチレン含有モノビニル化合物からなる線状重合体内に導入した重合体をマトリックス相とする高分岐型ブロー成形用ゴム変性スチレン系樹脂組成物が提案されている。
特開2002−097340号公報 特開2013−100436号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、耐ドローダウン性の改善については十分ではなく、更なる成形性の改良が求められている。また、特許文献2に開示された技術では、多分岐構造を分子内に導入しているため、重合体の分子量が必然的に高くなり易く、ゲル状物質を制御するのは本質的に困難である。
ゲル状物質は、ブロー成形する際にクレーズの起点として作用する場合があるため、ゲル状物質による欠陥が少なく、ブロー成形性に優れた成形材料が求められている。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、本発明は、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れるブロー成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を、所定の共役ジビニル化合物と所定のモノビニル化合物とにより、適切な含有比で構成するとともに、当該マトリックス相の分子量及び分子量分布を、適切な範囲に制御することにより、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れるブロー用成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記に示すとおりである。
〔1〕
マトリックス相(A)にゴム状弾性体粒子(B)を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂を含み、
前記マトリックス相(A)は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体を含み、
前記ゴム状弾性体粒子(B)を2.5〜11.0質量%含有する
ゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、ブロー成形品。
〔2〕
前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)が20万〜35万であり、分子量200万以上の割合が0.2〜3.6%であり、前記共役ジビニル化合物の割合が前記モノビニル化合の総量1モルに対して1.2×10-6〜2.4×10-4モルである、〔1〕に記載のブロー成形品。
〔3〕
前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が1000〜30000である、〔1〕又は〔2〕に記載のブロー成形品。
〔4〕
前記共役ジビニル化合物が鎖状である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のブロー成形品。
〔5〕
前記共役ジビニル化合物の共役ビニル基が末端に位置する、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のブロー成形品。
〔6〕
前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体のZ平均分子量(Mz)とMwの比が1.8〜5.0である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のブロー成形品。
〔7〕
前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体の分子量100万以上の割合が3.4〜10.0%である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のブロー成形品。
〔8〕
前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみが0.2〜1.3であり、最大立ち上がり比が1.2〜5.0である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のブロー成形品。
〔9〕
前記共役ジビニル化合物が(水添)ポリブタジエンジ(メタ)アクリレートである、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のブロー成形品。
〔10〕
前記ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、脂肪酸金属塩0.05〜0.8質量部と、流動パラフィン0.05〜3質量部を添加してなる、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のブロー成形品。
本発明によれば、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れるブロー成形品を提供することができる。
実施例及び比較例で得られたスチレン系共重合体について、横軸をヘンキーひずみとし縦軸を伸長粘度としてプロットした両対数グラフを示す図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のブロー成形品は、本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むもの、好適には本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物からなるものである。
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、マトリックス相にゴム状弾性体粒子を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂を含み、(A)マトリックス相が、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体を含み、(B)ゴム状弾性体を2.5〜11.0質量%含有する。
本開示中、用語「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」とは、ゴム変性スチレン系樹脂を含む組成物である。「ゴム変性スチレン系樹脂」は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体を含むマトリックス相と、該マトリックス相中に分散している、ゴム状弾性体粒子の分散相とを含む。
ゴム変性スチレン系樹脂は、典型的には、1)ゴム状弾性体の存在下、上記共役ジビニル化合物と、スチレン系単量体及び任意に追加の単量体とを共重合して得ることができる他、2)i)上記共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とを共重合することによって得られたスチレン系共重合体と、ii)ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体及び任意に追加の単量体を重合して得られた上記共役ジビニル化合物を含まない従来のゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)とを、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法等で得ることができる。
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物は、前記の構成を有するため、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れる。
更に、本発明によれば、ブロー成形時に幾重にも伸ばされる箇所に対しても、凹凸形状や、それらのコーナー部のエッジ形状やR形状を美しく忠実に再現することができる安定した大型ブロー成形品を効率よく得ることができる。
なお、パリソン状態、偏肉、離型性、成形品外観、耐傷性については、例えば、後述する実施例に記載の方法で評価することができる。
<マトリックス相>
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体を含む。
本実施形態では、所定の共役ジビニル化合物と所定のモノビニル化合物を適切な含有比でマトリックス相を形成するスチレン系共重合体を構成することにより、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れるブロー成形品を提供することができる。
具体的には、理論に限定されないが、本実施形態では、所定の共役ジビニル化合物と所定のモノビニル化合物とを共重合させることで、得られるスチレン系共重合体を、モノビニル化合物で主に構成される複数の分子鎖部分と、それらの分子鎖部分間を相互に連結する共役ジビニル化合物とで形成し易くすることができるとともに、その際の2つの分子鎖部分間の間隔を所定の距離にすることができる(スチレン系共重合体の分子中に「H」字状となる分岐部分を導入し易いと推測される)。
そして、このようにスチレン系共重合体を形成することにより、スチレン系共重合体のそれぞれの分子が相互に効果的に絡み合い易くなり(このような効果を「絡み合い効果」とも称す)、それゆえに、当該スチレン系共重合体をマトリックス相として含むブロー成形品の耐ドローダウン性を向上させることができる。
<モノビニル化合物>
本実施形態のスチレン系共重合体は、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物が(スチレン系共重合体を形成する単量体として)含まれており、モノビニル化合物は、スチレン系化合物(モノマー)のみからなっていても、スチレン系化合物とともにスチレン系化合物と共重合可能な他のモノビニル基を有する化合物からなっていてもよい。
モノビニル化合物としては、スチレン系化合物の他、スチレン系化合物と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロニトリル等のビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。また、スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
また、スチレン系化合物の含有量としては、モノビニル化合物の含有量のうち50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
<共役ジビニル化合物>
本実施形態における共役ジビニル化合物は、数平均分子量(Mn)が850〜100000であり、分子内に共役ビニル基を少なくとも2つ有する化合物である。
また、本実施形態における共役ジビニル化合物は、網目状ではなく、鎖状であることが好ましく、主鎖には側鎖を有していても有しなくてもよい。鎖状であることにより、分子鎖をよりリニアな形状にすることができ、それにより、絡み合い効果を向上させやすい傾向があるためである。なお、側鎖は、例えば炭素数6以下が好ましく、炭素数4以下がより好ましい。
更に、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、分子内の任意に位置させることができるが、少なくとも2つの共役ビニル基のうちの2つの共役ビニル基は、分子中の異なる末端に位置していることが好ましい。また、共役ジビニル化合物が鎖状の場合には、当該2つの共役ビニル基は、主鎖の異なる末端に位置していることがより好ましい(すなわち、主鎖の両末端が共役ジビニル基になっていることがより好ましい)。共役ビニル基が末端に位置していることにより重合反応性を高めることができる。
更に、共役ジビニル化合物が、鎖状高分子であり、且つ、3つ以上の共役ビニル基を有する場合には、3つ以上の共役ビニル基のうち2つの共役ビニル基が末端に位置することが好ましく、当該3つ以上の共役ビニル基全てが末端に位置することがより好ましい。
なお、共役ジビニル化合物における共役ビニル基の数が多い場合には、分岐点が増え、反応器や成形機、及び原料を回収する工程においてゲル化が起こりやすくなる可能性が生じ、反応器や成形機の洗浄が必要になり生産性が低下する虞がある。これらの観点から、共役ジビニル化合物が有する共役ビニル基の数は、5つ以下であることが好ましく、4つ以下であることがより好ましく、3つ以下であることが更に好ましく、2つであることが特に好ましい。
ここで、本明細書において、分子について「末端」とは、分子の最も端となる位置(原子)のみならず、分子の最も端となる位置に近接した位置を含むものとし、当該近接した位置とは、具体的には、分子の伸び切り鎖長の20%に相当する端部を意味する。そして、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、モノビニル化合物との反応性の向上及びゲル化の抑制の観点から、共役ジビニル化合物分子の伸び切り鎖長の15%に相当する端部に位置することがより好ましく、10%に相当する端部に位置することが更に好ましく、5%に相当する端部に位置することが一層好ましい。
本実施形態において共役ビニル基とは、モノビニル化合物と共重合可能なオレフィン性二重結合と、当該オレフィン性二重結合と共役系を形成する構造(限定されないが、例えば、カルボニル基、アリール基等)とを有する基である。
共役ビニル基としては、特に限定されないが、例えば、アクリロイル基、ビニル基で置換されたアリール基が挙げられ、また、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基を有する構造としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ビニル、マレイン酸、フマル酸等が付加した構造も挙げられる。なお、少なくとも2つの共役ビニル基は、相互に同じであっても異なっていてもよい。
本実施形態の共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、850〜100000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1000〜80000、更に好ましくは1200〜80000、更により好ましくは1500〜60000、特に好ましくは1500〜30000である。数平均分子量(Mn)が850未満の場合は、共役ジビニル化合物の共役ビニル基間の距離が短いため、共役ジビニル化合物に結合したポリマー鎖間の距離が短くなり、十分な絡み合い効果が得られず、成形加工性に劣る。分子量が100000を超える場合は、共役ジビニル化合物の共役ビニル基間の距離が長くなり、末端にある共役ビニル基の反応性が低下し(共役ジビニル化合物の分子量が大きいので末端の共役ビニル基が反応しにくくなる)、高分子量成分の生成量が低下するため好ましくない。
なお、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を意味する。
本実施形態の共役ジビニル化合物の主鎖構造としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン等のポリオレフィンやポリスチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
具体的な共役ジビニル化合物としては、(水添)ポリブタジエン末端(メタ)アクリレート(「(水添)」は、水素添加された又は水素添加されていない化合物を指す。以下同様である。)、ポリエチレングリコール末端(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール末端(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールA末端(メタ)アクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールF末端(メタ)アクリレート等の末端ジ(メタ)アクリレート化合物、並びに(水添)ポリブタジエン末端ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコール末端ウレタンアクリレート、ポリプロピレングリコール末端ウレタンアクリレート、エトキシ化ビスフェノールA末端ウレタンアクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールF末端ウレタンアクリレート等の末端ウレタンアクリレート化合物等が挙げられる。例えば、ポリプロピレングリコール末端(メタ)アクリレートの場合は、数平均分子量(Mn)が850〜100000となるように繰返し単位のプロピレングリコールの結合数が決められる。共役ジビニル化合物は、スチレン系共重合体との相溶性の観点から、(水添)ポリブタジエン末端(メタ)アクリレート、ポリスチレン末端(メタ)アクリレート、ポリフェニレンエーテル末端ジビニルであることが好ましい。
なお、化合物名中の「末端」や「両末端」は、最も端の両方に共役ビニル基が位置することを意味する。
<ゴム状弾性体粒子>
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状弾性体粒子は、ゴム状弾性体の内側にスチレン系共重合体を内包し、且つ、外側にスチレン系単量体がグラフト重合したものである。
ゴム状弾性体粒子の含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の質量に対して2.5〜11.0質量%、好ましくは4.0〜9.0質量%、更に好ましくは4.9〜9.0質量%である。2.5質量%未満では、耐衝撃性が不十分となり、製品の割れ不良の原因となることから好ましくない。また、11.0質量%を超えると、剛性が著しく低下し、また、ブロー成形品表面の耐傷性も低下することから、好ましくない。
ゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン−ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状弾性体は1種以上用いることができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを用いることもできる。
とりわけスチレン−ブタジエン共重合体のブロック共重合体に関しては、重合過程に際して使用することも、また重合後のゴム変性スチレン系樹脂に対して追加添加することも可能である。追加添加する場合の添加量は、ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部の範囲であることが好ましい。このスチレン−ブタジエン共重合体のブロック共重合体は、市販されており、旭化成(株)より入手可能な「タフプレン」が挙げられる。
更に、上記スチレン系共重合体を含むマトリックス相には、分子量分布やゴム量の異なる2種以上の重合体を組み合わせてもよい。例えば、ゴム状弾性体量13質量%、分散粒径の平均粒子径が1.4μmのゴム変性ポリスチレンと、ゴム非補強スチレン系共重合体とを50:50でブレンドすることも、結果的には、マトリックス相において、ゴム状弾性体量6.5質量%、分散粒子の平均粒子径1.4μmとなり、本発明の範疇に含まれる。
<マトリックス相の共役ジビニル化合物の含有量>
本実施形態のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の共役ジビニル化合物の含有量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して1.2×10-6〜2.4×10-4モルであることが好ましく、より好ましくは0.9×10-5〜1.5×10-4モル、更に好ましくは1.2×10-5〜1.2×10-4モルである。含有量が1.2×10-6〜2.4×10-4モルである場合、高分子量樹脂の割合と粘弾性が適切に制御されるため、成形加工性と成形品外観を向上させることができる。
なお本開示で、モノビニル化合物の総量1モルに対する共役ジビニル化合物の含有量は、1H−NMR及び13C−NMRを使用して測定される値である。
<マトリックス相の分子量>
本実施形態のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は20万〜35万であり、好ましくは22万〜34万、より好ましくは23万〜32万である。スチレン系共重合体のMwを20万〜35万にすることにより、マトリックス相の強度を確保しつつ、ゲル状物質の発生を抑えてより成形加工性と流動性を向上させることができる。
また、本実施形態のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比は1.8〜5.0であることが好ましく、より好ましくは2.3〜5.0、更に好ましくは3.0〜4.7である。スチレン系共重合体のMwに対するMzの比を1.8〜5.0の範囲にすることにより、マトリックス相の強度を確保しつつ、ゲル状物質の発生を抑えてより成形加工性と流動性を向上させることができる。
なお、本実施形態のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体において、上記の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比(Mz/Mw)は、スチレン系単量体をラジカル重合する際に、共役ジビニル化合物の種類及び添加量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、溶媒の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び添加量等によって制御することができる。具体的には、上記の重量平均分子量(Mw)等の制御は、限定されるものではないが、例えば製造方法において、重合する際の重合開始剤の添加量を増加させ、重合の反応温度を低くすること、又は、重合溶媒の使用量を少なくする、又は、重合する際の滞留時間を長くする、等により制御することができ、このようにすることで、得られるスチレン系共重合体において、分子鎖を所望の形状とさせつつ、高分子量成分側も適切に増加させることができる。
なお、マトリックス相を形成するスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、後述の分子量100万以上の割合、200万以上の割合は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定される微分分子量分布の重量割合である。
<マトリックス相の高分子量成分の割合>
本実施形態のスチレン系共重合体の分子量200万以上の割合は0.2〜3.6%であることが好ましく、0.9〜3.6%であることがより好ましく、1.2〜2.3%であることが更に好ましい。分子量200万以上の割合を0.2〜3.6%の範囲にすることにより、ゲル状物質の含有量を非常に少なくすることができる。
また、分子量100万以上の割合は3.4〜10.0%であることが好ましく、4.5〜8.3%であることがより好ましく、5.5〜7.6%が更に好ましい。分子量100万以上の割合を3.4〜10.0%の範囲にすることにより、成形加工性と流動性に優れたマトリックス相を得ることができる。
なお、本実施形態のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の分子量の割合は、スチレン系単量体をラジカル重合する際に、共役ジビニル化合物の種類及び添加量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、溶媒の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び添加量等によって制御することができる。具体的には、上記の分子量200万以上、分子量100万以上の割合等の制御は、限定されるものではないが、例えば、製造方法において、重合する際の重合開始剤の添加量を増加させ、重合の反応温度を低くすること、又は、重合溶媒の使用量を少なくする、又は、重合する際の滞留時間を長くする、等により制御することができ、このようにすることで、得られるスチレン系共重合体において、低分子量成分側を低減させて、分子量200万以上、分子量100万以上の割合を適切にしつつ高分子量成分側を増加させることができる。
<ブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみ、最大立ち上がりひずみ、及び最大立ち上がり比>
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物は。予め重合したスチレン系共重合体90〜1質量%程度とゴム質を含有する成分としてHIPS樹脂、MBS樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂やSBS等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー1〜90質量%程度とを混練して作成してもよい。
この場合、予め重合したスチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみは、好ましくは0.2〜1.3であり、より好ましくは0.3〜1.1、更により好ましくは0.4〜1.0である。
本願明細書において「立ち上がりはじめひずみ」とは、ひずみ硬化の発現するひずみであり、成形加工性の指標となる。立ち上がりはじめひずみが小さいほど、言い換えれば立ち上がりが早いほど低延伸時からひずみ硬化がおこり、ブロー成形性に優れるため、成形品の偏肉が起こりにくくなることがあり、それゆえ成形品を薄肉化できることがある。
上記の場合のスチレン系共重合体の最大立ち上がり比は、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.3〜4.8、更により好ましくは1.4〜4.6である。
本願明細書において、「最大立ち上がり比」とは、(最大立ち上がりひずみの非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみの線形領域の伸長粘度)を意味し、「最大立ち上がりひずみ」とは、伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを意味する。最大立ち上がり比は、最大立ち上がりひずみにおけるひずみ硬化の度合いを表す指標となる。最大立ち上がり比が大きいほど、ひずみ硬化度合いが大きく、ブロー成形性に優れる。最大立ち上がり比が1.2以上であると、高ひずみ時、つまり樹脂が成形加工時に薄く伸ばされた際に伸長粘度が高くなるため、成形品の偏肉が起こりにくくなり、パリソンの切れも起きにくくなる傾向がある。最大立ち上がりが5.0以下であると、成形時の伸長粘度が高くなり過ぎないため、生産性と成形性のバランスの観点から好ましい。
特に大型ブロー成形品の凹凸部のデザイン形状によっては、ブロー成形の際に幾重にも伸ばされる箇所が生じることがある。そもそもスチレン系樹脂は適切な分子量分布を有することにより、溶融時の伸びは良好であるが、更に本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂のマトリックス相にスチレン系共重合体を導入することにより伸長粘度が高くなるため、そのような幾重にも伸ばされる箇所に対しても、凹凸形状や、それらのコーナー部のエッジ形状やR形状を美しく忠実に再現することが可能となる。
<分散粒子の平均粒子径>
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物に分散粒子として含まれるゴム状弾性体粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜2.5μm、より好ましくは0.7〜2.3μm、更により好ましくは0.8〜2.0μmである。0.5〜2.5μmの範囲にすることにより、剛性と機械的強度と光沢に優れたものが得られる。ゴム粒子径は、重合工程のゴム状分散粒子を形成させる領域(相転移)で反応器の撹拌機の回転数、用いるゴム状重合体の分子量や1,2−ビニル結合含有量、開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量等で調整することができる。
なお本開示で、平均粒子径は、超薄切片法による透過型電子顕微鏡写真から計測される値である。
<添加剤等>
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物には、未反応モノマーの回収工程における高分子の熱分解を抑制するために、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレートのような加工安定剤が含まれていてもよい。
また、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えばステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸及びその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン等の可塑剤、酸化防止剤が、本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わせて添加されてもよい。
酸化防止剤は、一般的に、熱成形時又は光暴露により生成したハイドロパーオキシラジカル等の過酸化物ラジカルを安定化するか、又は生成したハイドロパーオキサイド等の過酸化物を分解することができる成分である。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び過酸化物分解剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ラジカル連鎖禁止剤として、過酸化物分解剤は、系中に生成した過酸化物を更に安定なアルコール類に分解して自動酸化を防止することができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されないが、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スタイレネイテドフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキレイテッドビスフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及び3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキシスピロ〔5・5〕ウンデカン等が挙げられる。
過酸化物分解剤としては、以下に限定されないが、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の有機リン系過酸化物分解剤、並びにジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、及び2−メルカプトベンズイミダゾール等の有機イオウ系過酸化物分解剤が挙げられる。
酸化防止剤の添加量は、本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
特に、本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂には、添加剤として、脂肪酸金属塩及び流動パラフィンを添加することが好ましい。
脂肪酸金属塩は、主として離型性改良の目的で添加する。大型ブロー成形品は概して長辺が1m程度、場合によってはそれ以上の大型の成形品となることも想定される。大型成形品になればその分、金型への「食い付き」も強く、離型性が良好であることは、工業的な生産性の観点からも極めて重要である。
脂肪酸金属塩の添加量は、通常、ブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、0.05〜0.8質量部が好ましく、更に望ましくは0.1〜0.5質量部である。脂肪酸金属塩をゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、0.05〜0.8質量添加することにより、ブロー成形品の高いウエルド部強度を維持したまま、ブロー成形品の離型効果を高めることができる。
本発明にて使用される脂肪酸金属塩は、炭素数が12〜22の範囲である脂肪酸の群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属との任意の組み合わせから構成される脂肪酸金属塩としてよいが、この中でも、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛等が、特に離型効果や成形材料の熱安定性に優れ、好ましい。
一方、流動パラフィンは、表面の滑り性に由来する耐傷性を向上させる目的で添加する。具体的には、流動パラフィンの添加により表面の滑性が向上し、耐傷性も向上する。
流動パラフィンの添加量は、通常、ブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、0.05〜3質量部であり、更に望ましくは0.5〜2質量部である。流動パラフィンをゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、0.05〜3質量部添加することにより、溶融時の伸長粘度の低下を最小限に抑えた状態で、耐傷性に優れたブロー成形品を得ることができる。
上記流動パラフィンは、例えば、食品衛生法、食品、添加物等の規格基準で定められた流動パラフィンから選択することができる。この種の流動パラフィンの具体例としては、以下に限定されないが、エクソンモービル社から市販されているクリストールN52、クリストールN62、クリストールN72、クリストールN82、クリストールN122、クリストールN172、クリストールN262、クリストールN352、プライモールN542等が挙げられる。また、(株)松村石油研究所から市販されているモレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−55、モレスコホワイトP−60、モレスコホワイトP−70、モレスコホワイトP−80、モレスコホワイトP−85、モレスコホワイトP−100、モレスコホワイトP−120、モレスコホワイトP−150、モレスコホワイトP−200、モレスコホワイトP−230、モレスコホワイトP−260、モレスコホワイトP−300、モレスコホワイトP−35 0、モレスコホワイトP−350P等が挙げられる。更に、三光化学工業(株)から市販されている流動パラフィン40−S、60−S、70−S、80−S、90−S、100−S、120−S、150−S、260−S、350−S等が挙げられる。更にまた、CK Witco Corporationから市販されているホワイトミネラルオイルが挙げられる。
上記流動パラフィンの分子量は通常、動粘度で規定される。本実施形態における流動パラフィンとしては、例えば、試験方法JIS K2283で規定される40℃の動粘度が0.1〜60mm2/秒の範囲のものを用いることができ、1〜40mm2/秒のものが好ましい。また、流動パラフィンの好ましい重量平均分子量は、150〜500の範囲であり、より好ましくは180〜450の範囲であり、更に好ましくは200〜350の範囲である。重量平均分子量は、例えばガスクロマトグラフィーを用い、流動パラフィンの各分子量成分の重量平均値をとることで求められる。この粘度範囲あるいはこの分子量範囲の流動パラフィンを用いる場合、より高粘度あるいはより高分子量の流動パラフィンに比較して、得られるゴム変性スチレン系樹脂組成物を大きく可塑化し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のブロー成形性、例えばブロー成形品の表面光沢を大きく向上させる傾向にある。なお、粘度0.1mm2/秒以上あるいは重量平均分子量150以上の流動パラフィンを用いることは、得られるゴム変性スチレン系樹脂組成物の成形加工時に、金型汚染や成形品表面へのブリードを効果的に抑制する傾向があるため、好ましい。
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂の製造方法は、1)ゴム状弾性体の存在下、上記共役ジビニル化合物と、スチレン系単量体及び任意に追加の単量体とを共重合して得ることができる他、2)i)上記共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とを共重合することによって得られたスチレン系共重合体と、ii)ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体及び任意に追加の単量体を重合して得られた上記共役ジビニル化合物を含まない従来のゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)とを、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。
上記1)の方法では、原料溶液は、スチレン系化合物を含むモノビニル化合物と、ゴム状弾性体と、共役ジビニル化合物とを含む。本実施形態のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物の構成要素となる共役ジビニル化合物は、モノビニル化合物類、重合溶媒等に溶解した状態で、必要に応じて上記の反応器の途中から添加することもできる。
また、重合反応の制御の観点から、必要に応じて、重合溶媒、有機過酸化物等の重合開始剤や連鎖移動剤を使用することができる。
重合溶媒は、連続塊状重合や連続溶液重合において重合速度や分子量等を調整するために用いる。重合溶媒として、特に制限はないが、芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
更に、重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の溶剤、例えば、脂肪族炭化水素類等を芳香族炭化水素類に混合することができる。これらの溶剤は、単量体に対して、25質量%を超えない範囲で使用するのが好ましい。溶剤が25質量%を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ、得られる樹脂の衝撃強度の低下が大きくなる。
また、溶剤の回収のために、多量のエネルギーを要するので経済性も劣ってくる。溶剤は、重合が進み、比較的高粘度になってから添加してもよいし、あるいは重合前から添加しておいてもよいが、重合前に5〜20質量%の割合で添加しておく方が、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
特に共役ジビニル化合物の添加量を多くしたい場合には、ゲル化を抑制する観点から重合溶媒を使用することが好ましい。これにより、先に示した共役ジビニル化合物の添加量を増量することができ、ゲルが生じにくい。
重合開始剤として、特に制限はないが、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(PHC)、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド(PBD)、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。
重合開始剤は、スチレン系単量体に対して0.005〜0.08質量%添加することが好ましい。
連鎖移動剤としては、例えば、α−メチルスチレンリニアダイマー(αMSD)、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1−フェニルー2−フルオレン、ジベンテン、クロロホルム等のメルカプタン類、テルペン類、ハロゲン化合物、テレピノーレン等のテレピン類等を挙げることができる。
この連鎖移動剤の使用量は、特に制限はないが、一般的には単量体に対して、0.005〜0.3質量%程度添加することが好ましい。
より具体的な製造方法の一例としては、ゴム状重合体を溶解したスチレン系化合物を含むモノビニル化合物と、共役ジビニル化合物と、必要に応じて、重合溶媒、重合触媒、連鎖移動剤等を添加混合し、直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と未反応単量体等を除去する揮発分除去工程を備えた設備に連続的に単量体類を送入し、段階的に重合を進行させる所謂、連続塊状重合法が好適に用いられる。反応器の様式としては、完全混合型、層流型、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型の反応器等が例示される。これら反応器の配列の順序に特に制限は無いが、層流型反応器が好適に用いられる。
脱揮工程は、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は、加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが挙げられるが、揮発分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は、加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
上記2)の方法における、スチレン系共重合体の製造方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合法は、バッチ重合法であっても連続重合法であってもよく、生産性の点から連続重合法であることが好ましい。
連続塊状重合法としては、例えば、モノビニル化合物、共役ジビニル化合物、必要に応じて溶剤、重合触媒、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、単量体類を含む原料溶液を調製する。直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と、未反応単量体等の揮発性成分を除去する脱揮工程のための脱揮装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
次に、上記2)の方法における、上記共役ジビニル化合物を含まない従来のゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)の製造方法の例について説明する。典型的な態様において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体を、ゴム状重合体の存在下で重合させて、スチレン系重合体中にゴム状重合体が分散している海島構造を形成することを含む方法によって製造できる。スチレン系単量体の重合方法に関しては、特に制約はなく、スチレン系単量体にゴムを溶かした溶液を用いて、通常の塊状重合、溶液重合、懸濁重合等を行うことができる。
また、溶融時の流動性の調整のために、溶媒や連鎖移動剤を適宜選択して使用することが好ましい。
溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等を使用できる。溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、重合原料液の全量100質量%基準で、0〜50質量%の範囲の使用が好ましい。
連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等が用いられ、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、重合原料液の全量100質量%基準で、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.03〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.2質量%の範囲である。
重合反応温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃の範囲である。反応温度が80℃以上であれば生産性が良好で工業的に適当であり、一方、200℃以下であれば低分子量重合体が多量に生成することを回避でき好ましい。スチレン系重合体の目標分子量が重合温度のみで調整できない場合は、開始剤量、溶媒量、連鎖移動剤量等で制御すればよい。反応時間は、一般に0.5〜20時間、好ましくは2〜10時間である。反応時間が0.5時間以上であれば反応が良好に進行し、一方、20時間以下であれば生産性が良好で工業的に適当である。
本実施形態においては、フェノール系熱劣化防止剤を、上記の重合工程あるいは脱揮工程において、また重合工程後、脱揮工程前において添加することが好ましい。重合工程の終了後(好ましくは直後)であって脱揮工程の前にフェノール系熱劣化防止剤を添加することがより好ましい。
フェノール系熱劣化防止剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:スミライザーGM、住友化学社製)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレート(商品名:スミライザーGS、住友化学社製)を挙げることができる。
添加量は、最終反応器出口のスチレン系共重合体に対して0.01〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.3質量%、更に好ましくは0.03〜0.2質量%である。
フェノール系熱劣化防止剤の添加量が0.01〜0.5質量%であると、脱揮工程でのモノビニル化合物、及びその二量体や三量体の生成をより効果的に抑制することができる。
(脱揮工程)
脱揮装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
脱揮工程の条件は、特に制限されず、例えば、スチレン系共重合体の重合を塊状重合で行なう場合は、最終的に未反応のモノビニル化合物が、スチレン系共重合体中に好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進めることができる。脱揮処理により、未反応物(モノビニル化合物)及び/又は溶剤等の揮発分を除去することができる。
脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度である。脱揮処理の圧力は、好ましくは0.1〜50kPa、より好ましくは0.13〜13kPa、更に好ましくは0.13〜7kPa、特に好ましくは0.13〜1.3kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して脱揮する方法や、揮発成分を除去するよう設計された押出機等を通して脱揮することが望ましい。
<ブロー成形品>
本実施形態のブロー成形品としては、先に述べたユニットバス天面パネルの他、ユニットバス側面パネル、仮設トイレの天面・側面パネル、スキー場のリフト改札や遊園地の改札等に使用される屋外ボックスの天面・側面パネル等に代表されるハウジングパネル、オフィス等でよく使用されるパーテーション、商業用アミューズメント施設に設置されるゲーム機のハウジング、机あるいはテーブルの天面板及び側板、大型テレビ用のTV台天面板、オーディオラック天面板・底面板、ベッド下敷、収納棚側板、一般家庭における扉や襖、床材もしくは床下に敷きつめる構造部材等が挙げられる。
本発明のブロー成形品における、「大型」の具体的な定義として、成形品のブローピン部を塞いだ際の、中空部を含めた成形品体積が10000cm3以上であり、且つ、成形時のパリソン押し出し方向であるブロー成形品の長辺が80cm以上であるものを指す。
ブロー成形を行う際には、まず、アキュームレーター(樹脂溜り)にて溶融樹脂を必要量溜め込み、そこから円形のダイスを通じてパリソンを形成する。本発明にて提案しているブロー成形品には、その目的に応じてボルト、ナット、ネジ等の金属に代表される異種材料部品を一体化させることが可能である。一体化方法については本発明では特定されないが、成形前に予めこれらの部品を金型内にセットした後にブロー成形する方法が一般的である。
更に、本発明にて提案しているブロー成形品には、任意の方法により、接合、接着、切削、印刷等の2次加工を施すことが可能である。一例を挙げると、本実施形態のブロー成形品の応用例であるユニットバス天面パネルには、換気口とは別に、点検口と呼ばれる落とし蓋形式の開口部を設けることが義務付けられている。この点検口を設ける手段については本発明では特定されないが、一般的な加工法としては、成形後の製品に切削機器を用いて開口部を設ける方法が用いられている。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<測定及び評価方法>
測定及び評価は、以下の方法に基づいて行った。
(1)ブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物の原料となるスチレン系共重合体、及びゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相におけるモノビニル化合物に由来する単量体単位に対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物の試料調製:ゴム変性スチレン系樹脂組成物1gを精秤し、メチルエチルケトン/メタノール混合溶剤媒(混合重量質量比90/10)20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)日立製作所製himac(商品名)CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離した。遠心分離後の上澄み液を、メタノール中に再沈殿させた後濾別してゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を回収し、これを乾燥した。
なお、原料として使用したスチレン系共重合体のモノビニル化合物に由来する単量体単位に対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位を測定する場合は、上記の試料調製の操作は行わず、スチレン系共重合体のペレットをそのまま測定試料とした。
スチレン系共重合体又はゴム変性スチレン系樹脂組成物における、モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合は、1H−NMR及び13C−NMRを用いて求めた。
なお、測定装置としては日本電子株式会社製のJEOL−ECA500を使用し、その際、クロロホルム−d1を溶媒として使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
(2)共役ジビニル化合物、スチレン系共重合体、及びゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の分子量等の測定
共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)、スチレン系共重合体、及び(1)の方法で回収したゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量100万以上の割合、及び分子量200万以上の割合は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC−8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)を2本直列に接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
(3)ゴム状弾性体粒子含有量
ゴム変性スチレン系樹脂組成物0.4gを100mLのメスフラスコに入れて精秤した(W)。クロロホルム75mLを加えてよく分散させた後、一塩化ヨウ素18gを1000mLの四塩化炭素に溶かした溶液20mLを加えて冷暗所に保存し、8時間後にクロロホルムで標線に合わせた。これを25mL採取し、ヨウ化カリウム10gを水800mL、エタノール200mLの混合液に溶かした溶液60mLを加え、チオ硫酸ナトリウム10gを1000mLの水に溶かした溶液(モル濃度x)で滴定した。本試験AmL、空試験BmLとし、ゴム状弾性体粒子含有率(質量%)は以下の式により求めた。
ゴム状重合体粒子含有率(質量%)=10.8×x×(B−A)/W
(4)ゴム状弾性体粒子の粒子径
30μm径のアパーチャーチューブを装着したベックマンコールター株式会社製COULTER MULTISIZER III (商品名)にて、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のペレット2〜5粒をジメチルホルムアミド約5mL中に入れ約2〜5分間放置した。次に、ジメチルホルムアミド溶解分を適度の粒子濃度として測定し、体積基準のメジアン径を求めた。
(5)ソリッドシートのゲル状物質評価
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いてスチレン系共重合体を押し出し、厚さ0.5mmのシート(ソリッドシート)を作製した。得られたシートから縦100mm×横100mmの大きさに試験片を20枚切出し、短径と長径の平均が2mm以上のゲル状物質を目視で測定した。判定はゲル状物質が含まれていた試験片の数が0〜2個を「◎」、3〜10個を「○」、11個以上の場合を「×」とした。
(6)スチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみ、及び最大立ち上がり比の測定
スチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみ、及び最大立ち上がり比の測定は、以下の粘弾性測定に基づいて行った。
装置名:粘弾性測定装置 ARES−G2(TA Instruments社製)
測定システム:ARES−EVFオプション
試験片寸法:長さ20mm、厚さ0.7mm、幅10mm
伸長ひずみ速度:0.01/秒
温度:150℃
測定雰囲気:窒素気流中
予熱時間:1分
予備伸長ひずみ速度:0.05/秒
予備伸長長さ:0.295mm
予備伸長後緩和時間:1分
粘弾性測定は、試験片をローラーに取り付け、温度が測定温度で安定した後、上記の予熱時間、静置し、予熱を行った。予熱終了後、上記の条件で予備伸長を行った。予備伸長後、2分間静置し、予備伸長で生じた応力を緩和させ、測定した。
上記の粘弾性測定で得られた結果に基づき、横軸をヘンキーひずみとし、縦軸を伸長粘度としてプロットした両対数グラフを作成し、ヘンキーひずみが0.2〜0.5の範囲を線形領域として累乗近似の線形領域直線を作成した(例えば、図1の破線)。ひずみ硬化が起こると、この線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度よりも、実際の伸長粘度が大きくなる。そして、同じヘンキーひずみにおける、非線形領域の伸長粘度と線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度の差が非線形領域の伸長粘度の3%となる時のヘンキーひずみを、立ち上がりはじめひずみとした。また、最大立ち上がり比は、上記の粘弾性測定において伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを最大立ち上がりひずみとして、(最大立ち上がりひずみにおける非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみにおける線形領域を外挿した近似直線の伸長粘度)で算出した。
図1に、実施例及び比較例で得られたスチレン系共重合体について、横軸をヘンキーひずみとし縦軸を伸長粘度としてプロットした両対数グラフを示す。
(7)ブロー成形性
120mmφ単軸押出機(L/D=25)で温度200℃にてゴム変性スチレン系樹脂組成物を可塑化し、容積15リットルのアキュームレーター(設定温度:180℃)にゴム変性スチレン系樹脂組成物を溜め込み、直径50mmφのダイスよりパリソンを形成した。ブロー成形品の大きさは、縦×横×厚み=1800×900×50mm(製品容積63000cm3)で重量は約45kgに合わせた。尚、金型温度は70℃とし、成形サイクルは4分とした。
上記の成形品を100個ずつ作成し、この時の状況と成形体の状態をそれぞれにおいて比較した。
a)パリソンの状態を目視にて確認した。
判定は、パリソン切れが観察されなかった場合を「◎」、パリソン切れが5個未満観察された場合を「○」、5個以上20個未満パリソン切れが観察された場合を「△」、20個以上切れが観察された場合を「×」とした。
b)偏肉状態を下記のとおり評価した。
ブロー成形できた成型品を切断し、パリソンの上下における肉厚の比率を測定した。
パリソン下側の厚みに対する上側の厚みの比率の平均値において比較した。
比率=(下側肉厚)/(上側肉厚)
判定は、平均比率が1.2未満の場合を「◎」、平均比率が1.2以上1.5未満の場合を「○」、平均比率が1.5以上1.8未満の場合を「△」、平均比率が1.8以上の場合を「×」とした。
c)離型性を下記のとおり評価した。
上記の成形機にて実際に成形した際の離型性を評価した。
判定は、金型が開くと同時に、成形品が金型から離脱した場合を「◎」、金型が開くと同時とまではいかないが、生産上問題無いレベルである場合を「○」、時折、成形品が金型に食い付くことがあり、人手が掛かる場合を「△」とした。
d)成形品外観(光沢)を目視にて確認した。
判定は、大変光沢があり、美しい場合を「○」、光沢はあるが斑のある場合を「△」、光沢がなく、艶消し状に見える場合を「×」とした。
e)耐傷性は、酸化チタンマスターバッチで着色した成形品表面を手指の爪で強く掻きつけ、傷(マーク)の有無を目視で評価した。
判定は、全く傷が見えない場合を「○」、傷はあるが実用上問題無いレベルである場合を「△」、傷がよく目立つ場合を「×」とした。
<材料>
実施例及び比較例においては、以下の材料を用いた。
<スチレン系共重合体>
<共役ジビニル化合物>
(共役ジビニル化合物1)
共役ジビニル化合物1は、下記の方法に基づいて製造した。
撹拌機、温度計及び還流冷却管を取り付けた容量5Lの反応容器内に、ポリブタジエン両末端アルコール(Mn:1900)2742g、アクリル酸メチル379g、n−ヘキサン380g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.8194g、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.5533gを仕込んだ。得られた混合物を塩化カルシウム管内に通しながら、その混合物に空気を吹き込み、80〜85℃で還流脱水を行った。この混合物に含まれている水分をカールフィッシャー法により測定し、その含水量が200ppm以下であることを確認した。その後、エステル交換触媒として、テトラn−ブチルチタネート1.3685gを上記混合物に添加し、生成したメタノールをその共沸溶媒であるn−ヘキサンの還流下で反応系外に留去しながら、攪拌下で80〜85℃の反応温度で10時間反応させた。
次に、反応容器内の温度を75〜80℃に調整し、使用したアクリル酸メチル及びn−ヘキサンの95%以上が留出するまで減圧度70〜2kPaで濃縮し、過剰のアクリル酸メチルとn−ヘキサンを回収した。得られたポリブタジエン両末端ジアクリレート2070gに、トルエン2000g、アセトン200g、イオン交換水20g、及びエステル交換触媒としてハイドロタルサイト(組成式Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)〔協和化学工業(株)製、商品名:キョーワード500PL〕20gを添加し、75〜80℃で2時間処理した。次に、反応容器内の温度を75〜80℃に調整し、減圧度90〜35kPaで濃縮することにより、トルエンとアセトンと水の混合留出液400gを回収し、得られた濃縮液を空気加圧下で濾過して触媒及び吸着剤を分離し、更に温度60〜80℃及び減圧度30〜0.8kPaで溶媒を脱気し、共役ジビニル化合物1を得た。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、共役ジビニル化合物1のポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率を測定したところ99.3%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は1900であった。
共役ジビニル化合物2:ポリブタジエンジアクリレート [巴工業社製:CN307] Mn:3800
共役ジビニル化合物3:ポリブタジエン末端アクリレート [大阪有機化学工業社製:BAC‐45] Mn:4800
共役ジビニル化合物4:ウレタンアクリレートオリゴマー [巴工業社製:CN9014NS] Mn:8000
(共役ジビニル化合物5)
共役ジビニル化合物5は、下記の方法に基づいて製造した。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:25000に変更した以外は共役ジビニル化合物1の場合と同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物5は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.5%であった。また、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は26000であった。
(共役ジビニル化合物6)
共役ジビニル化合物6は、下記の方法に基づいて製造した。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:57000に変更した以外は共役ジビニル化合物1の場合と同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物6は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.2%であった。また、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は58000であった。
共役ジビニル化合物7:芳香族ウレタンアクリレート [巴工業社製:CN9782] Mn:5200
共役ジビニル化合物8:(2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノール重縮合物)とクロロメチルスチレンとの反応生成物[三菱ガス化学株式会社製:OPE−2ST]Mn:1200
共役ジビニル化合物9:1,3−ブチレンジオールジメタクリレート [和光純薬工業株式会社製] 分子量:226
共役ジビニル化合物10:NKエステル A−GLY−20E [新中村化学工業株式会社製] 分子量:1295、共役ジビニル化合物10の1分子中の平均の共役ビニルの数は3である。
共役ジビニル化合物11:ジビニルベンゼン [和光純薬工業社製] 分子量:130
共役ジビニル化合物12:ポリエチレングリコールジメタクリレート [シグマアルドリッチ社製] 分子量:750
なお、共役ジビニル化合物2〜9、11、12は、分子中の最も端の両方に共役ビニル基を有していた。
<モノビニル化合物>
スチレン:スチレンモノマー[旭化成株式会社製]
<ゴム状弾性体>
HIPS1:PSジャパン株式会社製 H0104
HIPS2:PSジャパン株式会社製 403R
HIPS3:PSジャパン株式会社製 H8117
HIPS4:PSジャパン株式会社製 HT478
HIPS5:PSジャパン株式会社製 475D
(HIPS6)
HIPS6は、下記の方法に基づいて製造した。
スチレン系単量体としてスチレン77.66質量%、ゴム状重合体としてポリブタジエンゴム(宇部興産社製BR15HB)9.19質量%、溶剤としてエチルベンゼン12.0質量%、可塑剤・添加剤として流動パラフィン(出光興産社製CP−68N)0.90質量%、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.004質量%、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.10質量%、酸化防止剤としてイルガノックス1076(BASFジャパン社製)0.15質量%を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器−1に、3.2リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を117℃/123℃/129℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分50回転とした。反応器出口の反応率は30%であった。
続いて層流型反応器−1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器−2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は136℃/138℃/140℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器−3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は147℃/156℃/159℃に設定した。
重合反応器(層流型反応器−3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、1.5〜2.0kPaの減圧下、脱揮後ペレタイズした。押出機の温度は235℃に設定した。
重合条件を以下の表3に示す。
<添加剤>
熱劣化防止剤1:2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレート[住友化学株式会社製:スミライザーGS]
熱劣化防止剤2:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製:IRGANOX1076]
<その他>
重合開始剤1:2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン[日油株式会社製:パーテトラA]
重合開始剤2:1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン[日油株式会社製:パーヘキサC]
<実施例1>
<スチレン系共重合体1>
スチレン80質量部、エチルベンゼン20質量部、共役ジビニル化合物1を0.035質量部(スチレン1モルに対して2.4×10-5モル)、重合開始剤1を0.030質量部添加して原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.00L/hrで連続的に供給した。ついで、第1反応器からの重合溶液を、原料溶液が通過する順番に、内容積3Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器では、原料溶液が通過する順番に、3ゾーンの温度を119、133、143℃の温度に保持した。第2ゾーンにおいて、重合開始剤2を0.03質量部添加した。ついで、第2反応器からの重合溶液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応モノマーや溶媒等の揮発性成分を取り除き、72時間の連続運転後に、評価用のスチレン系共重合体1を得た。
スチレン系共重合体1の製造条件と分析結果を表1に示す。
次に、スチレン系共重合体1と表1記載のHIPS1との質量比を60/40とし、該混合樹脂100質量部に対し、ステアリン酸亜鉛を0.2質量部、流動パラフィンを0.5質量部加えて東芝機械(株)製二軸押出機(TEM26SS−12−2V)を用いて、200℃、150rpmで混練し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
上記(1)〜(7)の方法で、評価を実施した。実施例1のゴム変性スチレン系樹脂組成物の諸物性及び諸評価の結果を表1に示す。
<実施例2〜14>
実施例2〜14は、表1に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を作成した。
実施例2〜14の測定及び評価結果を表1にまとめる。
なお、実施例4のスチレン系共重合体は、図1に示すように、ARES−EVFの測定においてひずみ硬化が発現したことがわかる。
<実施例15〜21>
実施例15〜21は、表2に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びそのブロー成形品を作成した。
なお、実施例15〜21で用いたスチレン系共重合体は、すべて実施例9で作成したスチレン系共重合体を用いた。
<比較例1〜8>
比較例1〜8は、スチレン系共重合体は用いずに、既存のスチレン系重合体を用いて、表5に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びそのブロー成形品を作成した。
なお、比較例1〜8で用いたスチレン系重合体は、以下のものを用いた。
スチレン系重合体1:PSジャパン株式会社製G9401
スチレン系重合体2:PSジャパン株式会社製G9305
スチレン系重合体3:PSジャパン株式会社製G8102
<比較例9〜14>
比較例9〜14は、表6に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を作成した。
比較例9〜14の測定及び評価結果を表6にまとめる。
<比較例15〜16>
比較例15〜16は、表5に示すように条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びそのブロー成形品を作成した。
なお、比較例15〜16で用いたスチレン系共重合体は、すべて実施例9で作成したスチレン系共重合体を用いた。また、比較例15〜16で用いたHIPSは以下のものを用いた。
<実施例22>
スチレン単量体88.7質量部、エチルベンゼン9質量部、共役ジビニル化合物4を0.48質量部(スチレン1モルに対して7.03×10-5モル)、ポリブタジエン[旭化成株式会社製:ジエン55]を2.3質量部、重合開始剤2を0.016質量部、連鎖移動剤1を0.02質量部添加して原料溶液を調整した。
調整した原料溶液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2Lの層流型反応器−1に3L/hrで連続的に供給し、温度を122℃/128℃/134℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分100回転とした。反応器出口の反応率は31%であった。続いて層流型反応器−1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2Lの層流型反応器−2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は147℃/150℃/153℃とした。続いて層流型反応器−2と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2Lの層流型反応器−3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は155℃/162℃/164℃とした。続いて層流型反応器−3からの反応液を220℃、1.5〜2.0kPaに調整された2段真空ベント付き押出機に供給し、未反応モノマーや溶媒等の揮発成分を取り除き、ストランド状に押し出した樹脂をカッティングしてペレットを得た。
次に、得られたゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対し、ステアリン酸亜鉛の粉末を0.2質量部加えて、三井鉱山(株)社製ヘンシェルミキサーFM10C/I型を用いて、600rpmで攪拌し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造条件と分析結果を表4に示す。
上記(1)〜(7)の方法で、評価を実施した。実施例22のゴム変性スチレン系樹脂組成物の諸物性及び諸評価の結果を表1に示す。
<比較例17>
比較例17は、表4に示すように条件を変更したこと以外は実施例22と同様にして行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びそのブロー成形品を作成した。
表5及び表6から明らかなように、モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が0〜1.7×10-6モルと少ない比較例1〜9のブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体では、ARES−EVFによる粘弾性の測定においてひずみ硬化が発現しなかった。
モノビニル化合物に由来する単量体単位の総量1モルに対する共役ジビニル化合物に由来する単量体単位の割合が4.1×10-4モルと多い比較例10では、スチレン系共重合体のARES−EVFによる粘弾性の測定において安定したデータを得ることができず、また、GPCの測定の際にTHF不溶分が多く測定することができず、更にゲル状物質が多かった。これらの理由により、比較例10では、評価に値するゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びそのブロー成形品を作成することができなかった。
また、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)を226、750と小さい比較例11、14では、ブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみが大きく、最大立ち上がり比が小さかった。
ブロー成形品に含まれるゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相を形成するスチレン系共重合体の分子量200万以上の割合を6.39%と多くし、立ち上がりはじめひずみを大きく制御した比較例12では、ブロー成形品のゲル状物質が多かった。
共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)を130と小さくした比較例13では、ブロー成形品のメルトマスフローレート(MFR)が小さく、ゲル状物質が多かった。
ゴム状弾性体粒子の含有量が11.3質量%と多く、流動パラフィンの添加量が4.0質量%と高い比較例15のブロー成形品では、パリソンの状態、偏肉は最も悪いレベルではなかったものの、離形性、ブロー成形品の外観、耐傷性に劣っていた。
ゴム状弾性体粒子の含有量が2.2質量%と低く、離型剤及び流動パラフィンの添加量が低い比較例16のブロー成形品では、パリソンの状態、偏肉、離形性、成形品の外観、耐傷性の全てのブロー成形性が劣っていた。
また、表4から明らかなように、離型剤と流動パラフィンの添加量は適量だが、ゴム状弾性体粒子の含有量が15.8質量%と多い比較例17のブロー成形品では、離形性、成形品外観はそれ程悪くはないものの、パリソンの状態、偏肉、耐傷性が劣っていた。
これに対し、表1及び表2から明らかなように、実施例1〜21のブロー成形品は、比較例1〜17で作製したブロー成形品よりも耐ドローダウン性に優れ、且つ得られた成形体の偏肉が少なく、製品外観が優れていることが分かる。また、表4から明らかなように、実施例22のブロー成形品は、流動パラフィンを含有していないため耐傷性には劣るものの、パリソンの状態、偏肉、離形性、成形品の外観は実用範囲内であることが分かる。
Figure 2018193428
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以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態のブロー成形品は、ゲル状物質による欠陥が少なく、パリソンの切れ、及び偏肉が起きにくく、耐ドローダウン性に優れる。更に本実施形態のブロー成形品のマトリックス相にスチレン系共重合体を導入することにより伸長粘度が高くなるため、ブロー成形時に幾重にも伸ばされる箇所に対しても、凹凸形状や、それらのコーナー部のエッジ形状やR形状を美しく忠実に再現することができる安定した大型ブロー成形品を効率よく得ることができるとともに、生産性が向上する。以上のことから、本実施形態のブロー成形品が産業界に果たす役割は大きい。

Claims (10)

  1. マトリックス相(A)にゴム状弾性体粒子(B)を分散粒子として含有するゴム変性スチレン系樹脂を含み、
    前記マトリックス相(A)は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体を含み、
    前記ゴム状弾性体粒子(B)を2.5〜11.0質量%含有する
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、ブロー成形品。
  2. 前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)が20万〜35万であり、分子量200万以上の割合が0.2〜3.6%であり、前記共役ジビニル化合物の割合が前記モノビニル化合の総量1モルに対して1.2×10-6〜2.4×10-4モルである、請求項1に記載のブロー成形品。
  3. 前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が1000〜30000である、請求項1又は2に記載のブロー成形品。
  4. 前記共役ジビニル化合物が鎖状である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロー成形品。
  5. 前記共役ジビニル化合物の共役ビニル基が末端に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロー成形品。
  6. 前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体のZ平均分子量(Mz)とMwの比が1.8〜5.0である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロー成形品。
  7. 前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体の分子量100万以上の割合が3.4〜10.0%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロー成形品。
  8. 前記マトリックス相(A)を形成するスチレン系共重合体の立ち上がりはじめひずみが0.2〜1.3であり、最大立ち上がり比が1.2〜5.0である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のブロー成形品。
  9. 前記共役ジビニル化合物が(水添)ポリブタジエンジ(メタ)アクリレートである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のブロー成形品。
  10. 前記ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、脂肪酸金属塩0.05〜0.8質量部と、流動パラフィン0.05〜3質量部を添加してなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブロー成形品。
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