JP2008222702A - ビニル基含有化合物の重合防止剤および重合防止方法 - Google Patents

ビニル基含有化合物の重合防止剤および重合防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 (メタ)アクリル酸エステルの製造過程での重合を防止し、しかも、蒸留・精製工程などを経た後の(メタ)アクリル酸エスエル製品中に混入しにくい重合防止剤、およびその防止方法を提供する。
【解決手段】 当該重合防止剤は、サリチル酸(SAL)と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO)とを有機溶媒中で50〜100℃の温度で反応させて得られる、SALと4H−TEMPOとの配位化合物であり、当該化合物を重合防止剤として使用する重合防止方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル(本発明では、これらを「(メタ)アクリル酸エステル」という。)などのビニル基含有化合物の重合の防止に好適な重合防止剤、およびこの重合防止剤を用いた重合防止方法に関する。
(メタ)アクリル酸エステルなどのビニル基含有化合物の製造や貯蔵時における重合を防止するための重合防止剤として、N−オキシル化合物が有効であることはよく知られている。
例えば、特開2000−103763号公報(特許文献1)には、水溶性のN−オキシル化合物に特定量の水を共存させてビニル基含有化合物の重合を防止する方法が記載されている。また、特開2003−267929号公報(特許文献2)には、N−オキシル化合物とマンガン酸化物、銅塩化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物およびニトロソ化合物から選ばれる少なくとも1種とを併用して(メタ)アクリル酸の重合を防止する方法が記載されている。また、特許第3825518号公報(特許文献3)には、N−オキシル化合物とコバルト化合物とを併用して(メタ)アクリル酸およびそのエスエルの重合を防止する方法が記載されている。さらに、特公平4−14121号公報(特許文献4)には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノオキシル)セバケート化合物などを用いてビニル基含有化合物の重合を防止する方法が記載されている。
特開2000−103763号公報 特開2003−267929号公報 特許第3825518号公報 特公平4−14121号公報
(メタ)アクリル酸エステルなどの製造の際には、減圧下、40〜200℃程度の温度で蒸留・精製することが一般に行われているが、この蒸留・精製の際に、従来のN−オキシル化合物は、蒸気圧を有するため、僅かではあるが不可避的に留出物に随伴し、その結果、製品中に混入することになる。しかし、高品質の(メタ)アクリル酸エステルなどを製造するには、このようなN−オキシル化合物の混入を防止することが望ましい。
そこで、本発明は、(メタ)アクリル酸エステルなどのビニル基含有化合物に関し、その蒸留・精製の際に製品中へ混入することがなく、しかも、良好な重合防止効果を有する、新規な重合防止剤、およびそれを用いた重合防止方法を提供しようとするものである。
本発明者らの研究によれば、N−オキシル化合物をオキシ酸と反応させると、得られる生成物は、減圧下、40〜200℃の範囲の温度で実質的に蒸気圧を有しない(すなわち、実質的に気化しない。)ので、蒸留・精製の際に製品へ混入することがなく、しかも、良好な重合防止効果を発揮することをわかった。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は次のとおりのものである。
(1) オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールから選ばれる少なくとも1種とN−オキシル化合物とから合成される配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤。
(2) オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールの官能基であるカルボキシル基および/またはヒドロキシル基のHが残存する請求項1記載のビニル基含有化合物の重合防止剤。
(3) 脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(1)
Figure 2008222702
(式中、YはCH、CHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、CHOCHCHOH、CHCOOH、CHCOCHまたはC=Oである。)で表されるN−オキシル化合物とを溶媒中で反応させて得られる配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤。
(4) 脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(2)
Figure 2008222702
(式中、YはCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、またはCHOCHCHOHである。)で表されるN−オキシル化合物とを溶媒中で反応させて得られる配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤。
(化学構造)
H−NMR分析において、プロトン比がオキシ酸:一般式(2)のN−オキシル化合物=1:1であり、オキシ酸のカルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)由来のHのピーク、また一般式(2)のN−オキシル化合物の水酸基(−OH)由来のHのピークが認められる。
(5) ビニル基含有化合物の重合を防止するにあたり、重合防止剤として、脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(2)
Figure 2008222702
(式中、YはCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、またはCHOCHCHOHである。)で表されるN−オキシル化合物とを有機溶媒中で50〜100℃の温度で反応させて得られる配位化合物を用いることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止方法。
(化学構造)
H−NMR分析において、プロトン比がオキシ酸:一般式(2)のN−オキシル化合物=1:1であり、オキシ酸のカルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)由来のHのピーク、また一般式(2)のN−オキシル化合物の水酸基(−OH)由来のHのピークが認められる。
(6) 上記(5)記載の配位化合物を合成する際に得られる反応混合液を重合防止剤として添加・使用するビニル基含有化合物の重合防止方法。
(7) ビニル基含有化合物が(メタ)アクリル酸エステルである上記(1)〜(6)のいずれかに記載のビニル基含有化合物の重合防止方法。
本発明の重合防止剤は、ビニル基含有化合物の重合防止に、N−オキシル化合物とほぼ同等の効果を発揮し、しかも、減圧下、40〜200℃での蒸留・精製の際に、留出物中に混入しにくい。このため、本発明の重合防止剤を用いることにより、減圧下、40〜200℃の蒸留・精製の際の重合を効果的に防止し、しかも、当該重合防止剤の混入が非常に少ない。(言い換えると当該重合防止剤の製品への混入が極力少ない)高純度の精製ビニル基含有化合物を得ることができる。
本発明の重合防止剤は、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得るのに特に好適に用いられる。
本発明の重合防止剤は、ビニル基含有化合物の貯蔵、輸送あるいは移送の際の重合防止にも好適に用いられる。
本発明の重合防止剤は、オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールから選ばれる少なくとも1種とN−オキシル化合物とから合成される配位化合物からなるものである。
上記オキシ酸としては、グリコール酸類、乳酸類、グリセリン酸類、リンゴ酸類、酒石酸類、クエン酸類などの炭素鎖が飽和炭化水素である化合物や、オキシ安息香酸類、トリオキシ安息香酸類などの炭素鎖が芳香族炭化水素である化合物が挙げられる。これらのオキシ酸は、分子中に2つ以上の官能基を持つことから、異性体も含まれる。
上記多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ドデカンテトラカルボン酸などの炭素鎖が飽和炭化水素である化合物、マレイン酸、フマル酸などの炭素鎖が不飽和炭化水素である化合物、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの炭素鎖が芳香族炭化水素である化合物が挙げられる。これらの多価カルボン酸は、分子中に2つ以上の官能基を持つことから、異性体も含まれる。また、ジ−、トリ−、テトラ−カルボン酸類のなかにはカルボン酸無水物も含まれる。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの縮合物(炭素数2〜10のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2,3,4,5−テトラヒドロキシヘキサン、キシリトール、マンニトールなどの炭素鎖が飽和炭化水素である化合物、2,6−ジヒドロキシトルエン、カテコール、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、レゾルシン、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリス(ヒドロキシエチル)フェノール、1,2,4,5−テトラヒドロキシベンゼンなどの炭素鎖が芳香族炭化水素である化合物が挙げられる。
本発明の重合防止剤のもう一つの原料である、N−オキシル化合物については特に制限はなく、ビニル基含有化合物の重合防止剤として一般に用いられているものであればいずれも使用することができる。なかでも、前記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−オキシル化合物が好適に用いられる。このN−オキシル化合物の代表例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシメチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシメトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシエトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどが挙げられる。なかでも、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが好適に用いられる。
本発明の重合防止剤のなかでも、脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(1)
Figure 2008222702
(式中、YはCH、CHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、CHOCHCHOH、CHCOOH、CHCOCHまたはC=Oである。)で表されるN−オキシル化合物とを有機溶媒中で触媒の不存在下に50〜100℃の温度で反応させて得られる、下記の理化学的性質を有する化合物からなるものが好適である。
a.白色結晶(25℃)
b.水(25℃)に難溶(無色透明液、白色結晶が沈殿)
c.アクリル酸(25℃)中で呈色する(橙色透明)が、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノール中では無色透明。
また、脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(2)
Figure 2008222702
(式中、YはCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、またはCHOCHCHOHである。)で表されるN−オキシル化合物とを有機溶媒中で触媒の不存在下に50〜100℃の温度で反応させて得られる、下記の化学構造と理化学的性質とを有する化合物からなるものが好適である。
(化学構造)
H−NMR分析において、プロトン比がオキシ酸:一般式(2)のN−オキシル化合物=1:1であり、オキシ酸のカルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)由来のHのピーク、また一般式(2)のN−オキシル化合物の水酸基(−OH)由来のHのピークが認められる。
a.白色結晶(25℃)
b.水(25℃)に難溶(無色透明液、白色結晶が沈殿)
c.アクリル酸(25℃)中で呈色する(橙色透明)が、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノール中では無色透明。
上記脂肪族オキシ酸としては、炭素数2〜10の飽和炭化水素残基を有するオキシ酸、例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸が挙げられる。また、芳香族オキシ酸としては、炭素数6〜10の芳香族炭化水素残基を有するオキシ酸、例えば、オキシ安息香酸類、およびトリオキシ安息香酸類が挙げられる。これらのオキシ酸は、分子中に2つ以上の官能基を持つことから、異性体も含まれる。
上記好適な重合防止剤のなかでも、脂肪族または芳香族オキシ酸として、サリチル酸を、また、N−オキシル化合物として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを用いて得られる化合物が特に好適に用いられる。そこで、本発明の重合防止剤について、脂肪族または芳香族オキシ酸として、サリチル酸(SAL)を、また、N−オキシル化合物として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO)を用いた場合を例に挙げて説明する。
4H−TEMPOとSALとを有機溶媒中で触媒不存在下に50〜100℃の温度で反応させると白色結晶が得られる。この白色結晶をH−NMR分析すると、プロトン比が4H−TEMPO:SAL=1:1であり、SALのカルボキシル基(−COOH)由来のHのピークと4H−TEMPOの水酸基(−OH)由来のHのピークとが認められる。
また、上記結晶は次の理化学的性質を有している。
a.白色結晶(25℃)
b.常温(25℃)の水に難溶。
c.常温(25℃)のアクリル酸に溶解し橙色透明液となる。しかし、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノールにそれぞれに溶解するが無色透明となる。つまり、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノールのいずれかに溶解するが無色透明となる。
d.アセトンに溶解するが呈色しない。また、無色透明となる。
したがって、上記結晶は、4H−TEMPOとSALとからなる配位化合物であると推測される(後記実施例1参照)。
より具体的には、サリチル酸(SAL)と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO)とを溶媒中に反応させて得られる、下記の化学構造と理化学的性質とを有する配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤は好ましい実施形態である。
(化学構造)
H−NMR分析において、プロトン比が4H−TEMPO:SAL=1:1であり、SALのカルボキシル基(−COOH)由来のHのピーク、また4H−TEMPOの水酸基(−OH)由来のHのピークが認められる。
(理化学的性質)
a.白色結晶(25℃)
b.水(25℃)に難溶(無色透明液、白色結晶が沈殿)
c.アクリル酸(25℃)中で呈色する(橙色透明)が、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノール中では無色透明。
また上記はより具体的に反応原料を特定した発明である。その反応の条件としては、上記溶媒が有機溶媒である上記の重合防止剤は好ましい形態である。上記溶媒がプロトン性溶媒である重合防止剤も好ましい形態である。上記反応が触媒の不存在下に行われるものである重合防止剤は好ましい形態である。具体的には、上記重合防止剤を得る反応であるが、有機溶媒中で触媒の不存在下に50〜100℃の温度である反応は好ましい形態である。
なお、上記有機溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのアルコール類であるプロトン性溶媒が反応性が高いという点で好ましく用いられる。溶媒によっては、生成物との溶解度が高く、単離しがたいものもあるが、その場合は、溶媒と共に溶液として添加してもよい。
また、上記反応であるが、水溶媒あるいは有機溶媒の中でも、非プロトン性溶媒(例えば、THFやDMSO)では反応が進行しにくい場合もある。その場合は所定の温度をかけ反応させればよい。あるいは反応タイミングを向上させるために原料同士の接触を効率よく行うように、攪拌器が付設した反応器では攪拌の速度を高くするなどミキシング効率を高める手法をとればよい。また必要に応じ、室温よりも高い温度で反応を行う。
本発明の重合防止剤を用いることにより、前記効果が得られる理由については未だ解明されていないが、N−オキシル化合物のN−O基にオキシ酸が配位結合するため、N−オキシル化合物それ自体の重合防止性能を保持しながら、実質的に蒸気圧を有しないものになると考えられている。
本発明の重合防止剤は、上記の4H−TEMPOとSALとから得られるものに限定されるものではなく、前記オキシ酸と一般式(1)または一般式(2)で表されるN−オキシル化合物とを、有機溶媒中で反応させて得られる化合物もまた有効に用いることができる。
オキシ酸の使用量は、N−オキシル化合物1モルあたり、0.3〜10モル、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.2〜5モル、更に好ましくは0.5〜5モルであり、さらに好ましくは0.5〜2モルである。N−オキシル化合物の量が、反応に使用されるオキシ酸の量より少ないと効率よく当該塩化合物が生成しにくい。よって、上記モル比の範囲であれば、より効率よく本発明にかかる当該配位化合物の生成が可能になるので、本発明にあっては好ましい形態である。
また、さらに好ましい反応条件としては、反応させる溶媒中のN−オキシル化合物の濃度としては、0.01〜50重量%の範囲が好ましい。さらに言えば0.11〜30重量%の範囲が好ましい。最も好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。当該配位化合物を得る反応に使用するN−オキシル化合物の濃度が、0.01重量%未満の低い濃度では、配位反応が進行しにくく、効率よく目的物を得ることが難しくなる。またN−オキシル化合物の濃度が50重量%より高ければ、N−オキシル化合物が析出する場合があり反応が進行しにくい。つまり配位反応に関与するまでに、析出してしまい、反応の効率が低下してしまう。
よって、本発明にかかる目的に配位化合物を効率よく、確実に製造し、反応系から分離するためには、上記の範囲で原料を使用することが好ましい。
また、反応温度は、130℃以下、好ましくは120℃以下、さらには100℃以下が好ましい。具体的には20〜130℃の範囲、より好ましくは20〜120℃の範囲、さらに好ましくは20〜100℃の範囲である。さらに好ましくは50〜100℃、更に好ましくは80〜100℃の範囲である。また原料の分解が起こっても、本発明の目的物が所定量生成する条件であれば、反応温度条件は適宜選択して採用可能である。しかし、重合防止剤としての機能、目的物の生成収率、反応速度などを考慮した場合、上記の温度範囲に調整することが好ましい。
上記反応温度を調整する理由であるが、置換基によっても異なるが、N−オキシル化合物の分解温度がおよそ140℃前後であるので、反応温度が高すぎると不用意に分解するからである。(例えば、4H−TEMPOは146℃である。)
本発明の重合防止剤である目的化合物を製造する場合の反応であるが、当該重合防止剤である目的化合物が効率よく製造されるのであれば、触媒を使用しても、触媒を使用しなくてもよい。触媒を使用しない触媒不存在下の反応であれば、触媒残渣との分離工程も必要なく、また、使用した触媒や触媒残渣と目的物との影響(不用意な反応による副生物の生成)なども考慮する必要がなく、工業的に有利といえる。
よって本発明の目的化合物を得るには、上記溶媒中での反応が触媒不存在下に行われることが好ましい形態である。勿論触媒存在下であっても目的とする化合物の製造に問題なければ、当該反応に触媒を使用することは可能である。
また本発明では、上記反応を利用した本発明における目的化合物にかかる重合防止剤の製造方法は好ましい実施形態となる。つまり、本発明は、オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールから選ばれる少なくとも1種とN−オキシル化合物とから合成される重合防止剤として使用できる配位化合物の製造方法でもある。
また本発明の重合防止剤にかかる配位化合物であるが、その配位化合物の好ましい製造方法は、実施例で示したように、上記の反応後、つまり有機溶媒の存在下に、N−オキシル化合物と、オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールから選択される群の少なくともいずれかひとつと反応させた後、得られた結晶を分離または反応系から単離し、必要に応じ当該結晶を洗浄する、または精製する工程を経て製造する方法である。その理由は、目的とする配位反応を効率よく確実に行うために好ましいからである。本発明にかかる化合物においては、このように段階を経て目的物を製造することにより、余分な副反応を起こすことなく、N−オキシル化合物と、オキシ酸、多価カルボン酸、多価アルコールの少なくともいずれかと効率よく配位が行われ、純度の高い結晶として得ることができることも見出したのである。
また、確実な配位反応のために、または、副反応が少なく得られる結晶の純度が高くなるなどの理由により、上記の反応後、つまり有機溶媒の存在下に、N−オキシル化合物と、オキシ酸、多価カルボン酸、多価アルコールの少なくともいずれかと反応させた後、得られた結晶を分離または反応系から単離し、必要に応じ当該結晶を洗浄する、または精製する工程を経て製造された本発明の化合物であると、重合防止効果が優れているともいえる。
また本発明にかかる化合物の好ましい純度は、80%以上〜100%の範囲である。より好ましくは純度85%以上〜100%の範囲である。さらには90%以上〜100%の範囲である。さらに好ましい純度は95%以上〜100%の範囲である。
また本発明では、当該配位化合物を使用したビニル基含有化合物の重合防止方法も好ましい実施形態でもある。
また本発明では、当該配位化合物を含有する重合防止剤としての提供も好ましい形態となる。当該配位化合物の本発明への重合防止剤組成物としての含有量は、重合防止剤組成物が所定の重合防止機能を保有していればその配位化合物の含有量は、好ましくは、50重量%〜100重量%の範囲である。本発明にかかる配位化合物の含有量が多ければ、その機能(良好な重合防止性、低い着色性、高沸点成分なので蒸留塔留出側、つまり製品側に留出しにくい性能など)が、良好に発揮できるからである。より好ましくは、60重量%〜100重量%の範囲で、さらには70重量%〜100重量%の範囲、さらには80重量%〜100重量%の範囲である。
本発明の重合防止剤は、ビニル基含有化合物を、減圧下、40〜200℃の範囲の温度で蒸留・精製する工程の他に、その合成、回収、貯蔵、輸送、移送などにおいても、その重合防止のために有効に用いられる。
本発明のビニル基含有化合物の代表例としては、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどを挙げることができる。またより沸点の高いスチレン、ビニルスチレン、ジビニルベンゼン、各種ジアルキルアクリレートなど、より沸点が高く、精製時(蒸留時)に重合や着色を避けかつ製品留出側には余分な重合防止剤が移行しない精製工程が好ましいビニル基含有化合物の重合防止のための使用は好ましい形態といえる。
本発明の重合防止剤は、減圧(例えば、1.3〜500hPa、好ましくは2〜100hPa)下、40〜200℃の蒸留・精製工程を含む、(メタ)アクリル酸エステルの製造の際に特に好適に用いられる。具体的には、触媒の存在下での(メタ)アクリル酸とアルコールとの反応工程、(メタ)アクリル酸エステルの分離工程、溶剤の分離工程、軽沸点物の分離工程、高沸点物の分離工程、抽出工程などの諸工程において、本発明の重合防止剤を(メタ)アクリル酸エステルと共存させればよい。本発明の重合防止剤は、従来のN−オキシル化合物で問題であった使用時のビニル基含有化合物への着色が防止できる。また蒸留時に留出側に移行しにくいので、製品としての目的ビニル基含有化合物に対して余分な重合防止作用をもたらさない。つまり精製時に必要な重合防止性能を発揮しながら、製品としてのビニル基含有化合物として良好な重合性をも保持させることが可能になる。よって上記の中でヒドロキシル基を保有する(メタ)アルキルアクリレートの精製時に使用する形態が好ましい。ヒドロキシル基を保有する(メタ)アルキルアクリレートは重合性が高く、かつ用途によっては着色をきらい、かつ、製品としての高い重合性が要求されるビニル基含有化合物であるので本発明の重合防止剤を使用するには最適である。
また本発明にかかる重合防止剤を、蒸留工程などで使用する場合、ビニル基含有化合物のガスなどによる気相部での重合を、合わせてより効果的に防止するために、気相部で有効に重合防止機能を有する重合防止剤を併用する形態が好ましい。
本発明の重合防止剤の使用方法の一例としては、常圧では沸点が、100℃〜300℃の範囲などの高い沸点を示すビニル化合物を減圧下で蒸留することである。この減圧下での蒸留により、沸点を下げ、蒸留塔の温度を、50℃〜150℃の範囲の温度で運転することができる。この場合の蒸留塔での真空度は、例えば4〜100hPaである。蒸留に使用する蒸留塔の形式などにより適宜設定可能である。しかし、このように蒸留条件を調整することで重合性が高いビニル化合物であっても、不必要な量まで重合禁止剤を使用することなく、かつ、留出液側に当該重合禁止剤が移行しにくい条件にて、蒸留工程での精製が可能になる。また上記蒸留塔は、蒸留段がある段塔式の蒸留塔でもよいし、単蒸留塔であってもよい。
本発明の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステルなどのビニル基含有化合物を貯蔵また移送する際にも用いることができる。
本発明の重合防止剤は、単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、その重合防止機能を阻害しない限り、従来公知のビニル基含有化合物の重合防止剤と組み合わせて使用することもできる。
一般に工業的に用いられるものであれば使用可能であり、具体的には、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール化合物;N−イソプロピル−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類;チオジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン化合物;ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅等のジアルキルジチオカルバミン酸銅塩類;2,2,4,4−テトラメチルアゼチジン−1−オキシル、2,2−ジメチル−4,4−ジプロピルアゼチジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチル−3−オキソピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、6−アザ−7,7−ジメチル−スピロ(4,5)デカン−6−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−アセトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−1−オキシル、4,4’,4’’−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)ホスファイト、4,4´−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)セバケート等のN−オキシル化合物;等が挙げられる。これら重合防止剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また併用して着色しやすい重合防止剤は目的によっては使用量を調整するとか、使用を避けてもよい。
本発明の重合防止剤の使用量は、適用するビニル基含有化合物の種類、適用温度条件などにより異なるので一概に特定できないが、通常、ビニル基含有化合物の0.0001〜0.1質量%であり、好ましくは0.0001〜0.01質量%、より好ましくは0.0001〜0.001質量%である。
本発明の重合防止剤の適用方法には特に制限はなく、ビニル基含有化合物の重合防止に一般に用いられている方法に従って適宜行うことができる。例えば、重合防止剤を粉体として添加しても、あるいは製品(メタ)アクリル酸エステルまたは他の有機溶剤に溶解して溶液として添加してもよい。また、本重合防止剤を精製する前の、反応液の状態で添加してもよい。
本発明の有利な実施態様を示している以下の実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
橙色粉体である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO)5g(0.03モル)と白色粉体であるサリチル酸(SAL)15g(0.11モル)と溶媒としてのエタノール80gとを、容量200mlの攪拌機付きガラス製丸底フラスコに仕込み、オイルバスにて80℃に昇温して5時間反応させた。反応液を30℃まで冷却して、しばらくすると白色結晶が析出したので、吸引ろ過装置で固液分離した。分離したろ液中の未反応4H−TEMPO濃度を液クロマトグラフィーで測定したところ2.5質量%であった(4H−TEMPOの反応転化率50%)。分離した結晶を超純水100gにて結晶を5回洗浄し、減圧乾燥したところ、4gの白色結晶が得られた。
上記結晶を下記条件下にH−NMR分析を行った。
装置:AVANCE 300(BRUKER BIOSPIN製)
溶媒:アセトン−d6(99.9%)
NMR分析チャートを図1に示す。参考のため、使用したSALのNMR分析チャートを図2として示した。具体的には、図2には、実施例1で得られた化合物のH−NMR分析チャートを下に、SALのH−NMR分析チャートをその上部に示し、お互いのピークを比較したものである。
また、4H−TEMPOはラジカルを持つ常磁性化合物のため磁場を与えて測定するNMRは影響が出るためNMRチャートが得られない。その代わりとしてピペリジンのNMRチャートを図3として示した。図2は、SALの−COOH基と−OH基を確認するためのNMR分析チャートであり、図3は、ピペリジンのシクロヘキシル環のピークがシャープであることを確認するためのNMR分析チャートである。さらに、シクロヘキサノールのNMRチャートを図4に示した。図4は、4H−TEMPOの−OH基を確認するためのNMR分析チャートである。図5は、溶媒として用いたアセトン−d6の不純物ピークを確認するためのNMR分析チャートである。
図1〜5から、上記結晶はプロトン比が4H−TEMPO:SAL=1:1の化合物であり、SALのカルボキシル基(−COOH)由来のHと4H−TEMPOの水酸基(−OH)由来のHとを有することがわかる。SALの−COOH由来のHが存在することから、上記結晶はピペリジウムイオンになっていないこと、また、4H−TEMPOの水酸基(−OH)由来のHとその他の官能基のHも存在することから上記結晶はエステル結合などの共有結合も持たないことが確認される。上記のことから、上記結晶はSALと4H−TEMPOとの配位化合物と推測される。また、得られた結晶4gの4H−TEMPOとしての反応転化率は45%であり、固液分離したろ液中の未反応4H−TEMPOから求めた反応転化率50%と一致する。
また、本発明にかかる塩のNMR測定条件であるが、まず、図2のSALの構造が確認できる条件でまずNMRを測定する。そしてその条件で、得られた塩を確認する。という手順で測定を行うことが好ましい。
なお図3〜図5のNMRチャートは、SDBS(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)のウェブサイトから、2006年の10月〜11月の時期に入手したものである。アドレスは、http://www.aist.go.jp/RIODB/SDBSであった。
上記結晶は次の理化学的性質を有していた。なお、溶液に溶解させ色を観測した時の濃度は1重量%(溶質1gに溶媒99g)になるように調整した。また結晶の溶解性あるいは溶解時に呈色する色を観測するときに使用した溶媒である、アクリル酸、エチレングリコール、エタノール、イソブタノールであるが、アクリル酸は市販の高純度精製アクリル酸(日本触媒社製、ロット:6G31HD)を使用した。またヒドロキシエチルメタクリレートは、日本触媒社製、ロット:6E22HAを使用した。また溶解実験や発色実験などで使用した他の有機溶媒は、すべて関東化学社製の特級品を使用し、溶解時に呈色する色(発色する色)に対する不純物(例えば酸成分)の影響が出ないようにした。
a)白色結晶(25℃)
b)常温(25℃)での水に難溶で、無色透明液となる。また白色結晶が沈殿する。
c)常温(25℃)のアクリル酸に溶解し橙色透明となる。しかし、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノールにそれぞれに溶解するが無色透明となる。つまり、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノールのいずれかに溶解するが無色透明となる。
d)アセトンに溶解するが呈色しない。無色透明な液となる。また、上記結晶をアセトンに溶解し、ガスクロマトグラフィー分析(インジェクション温度:200℃、カラム温度:100℃)を行ったところ、アセトン由来のピークのみが検出された。気化室(インサートガラス)を確認すると白色結晶が付着していた。よってこの分析より、上記実施例で得られた結晶の純度は少なくとも99%以上であると考えられる。
(実施例2)
実施例1において、溶媒としてエタノールに代えてヒドロキシエチルメタクリレート80gを用いた以外は実施例1と同様に行った。反応液を30℃まで冷却して、しばらくすると白色結晶が析出したので、吸引ろ過装置で固液分離した。分離したろ液中の未反応4H−TEMPO濃度を液クロマトグラフィーで測定したところ0.2質量%であり(4H−TMPOの反応転化率95%)、分離した結晶を洗浄/乾燥したところ、8gの白色結晶が得られた。得られた結晶8gの4H−TEMPOとしての反応転化率は90%であり、固液分離したろ液中の未反応4H−TEMPOから求めた反応転化率90%と一致する。また得られた項目dにおける分析結果も実施例1と同様であり、実施例2の結晶も99%以上の純度であると考えられる。
(実施例3)
実施例1において、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルに代えて橙色粉体である2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)5g、溶媒としてエタノールに代えてヒドロキシエチルメタクリレート80gを用いた以外は実施例1と同様に行った。反応液を30℃まで冷却して、しばらくすると白色結晶が析出したので、吸引ろ過装置で固液分離した。分離したろ液中の未反応TEMPO濃度を液クロマトグラフィーで測定したところ0.5質量%であり(TEMPOの反応転化率90%)、分離した結晶を洗浄/乾燥したところ8gの白色結晶が得られた。得られた結晶8gのTEMPOとしての反応転化率は85%であり、固液分離したろ液中の未反応TEMPOから求めた反応転化率90%と一致する。
上記結晶のNMR分析チャートを図6に示す。実施例1と同様に図2、3、5および6から、上記結晶はプロトン比がTEMPO:SAL=1:1の化合物であり、SALのカルボキシル基(−COOH)由来のHが存在することから、上記結晶はピペリジウムイオンになっていないこと、また、官能基を持たないTEMPOから得られていることから、上記結晶はSALとTEMPOとの配位化合物と推測される。
上記結晶は次の理化学的性質を実施例1と同様に確認した。
a)白色結晶(25℃)
b)常温(25℃)での水に難溶で、無色透明液となる。また白色結晶が沈澱する。
c)常温(25℃)のアクリル酸に溶解した橙色透明となる。しかし、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノールのそれぞれに溶解するが無色透明となる。つまり、エチレングリコール、エタノールおよびイソブタノールのいずれかに溶解するが無色透明となる。
d)アセトンに溶解するが呈色しない。無色透明な液となる。また、上記結晶をアセトンに溶解し、ガスクロマトグラフィー分析(インジェクション温度:200℃、カラム温度:100℃)を行ったところ、アセトン由来のピークのみが検出された。気化室(インサートガラス)を確認したところ白色結晶が付着していた。よってこの分析より、上記実施例で得られた結晶の純度は99%以上であると考えられる。
(実施例4〜9)
4H−TEMPOおよびSALに代えて表1に示すN−オキシル化合物、オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールを用い、溶媒としてエタノールに代えてヒドロキシエチルメタクリレートを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。表1に示す反応液を30℃まで冷却しても結晶が析出しなかったので、反応液中の未反応N−オキシル化合物濃度を液クロマトグラフィーで測定して反応転化率を求めた。
Figure 2008222702
(実施例10)
実施例1で得られた白色結晶0.1g、メチルハイドロキノン0.1gおよびヒドロキシエチルメタクリレート1000gを、真空蒸留装置にセットした容量1Lのガラス製丸底フラスコに仕込み、真空度4〜6hPa、内温70〜80℃で空気を5ml/minでバブリングしながら2時間かけて蒸留し、950gの精製ヒドロキシエチルメタクリレートを得た。この蒸留操作において、ヒドロキシエチルメタクリレートの重合は全く認められなかった。
次に、上記精製ヒドロキシエチルメタクリレートを100℃に調整したオイルバスに浸し、重合熱による温度上昇が見られるまでの時間を、重合開始時間として、測定したところ、8時間後に温度が上昇し、重合が開始した。
(比較例1)
実施例10で原料として用いたヒドロキシエチルメタクリレートを、実施例10の精製ヒドロキシエチルメタクリレートと同様に、100℃に調整したオイルバスに浸し、重合熱による温度上昇が見られるまでの時間を、重合開始時間として、測定した。重合開始時間は8時間であった。
実施例10と比較例1の重合開始時間は同一であることから、実施例10で用いた白色結晶は、精製ヒドロキシエチルメタクリレート中に含有されていない、すなわち、蒸留時に留出していないことがわかる。留出していれば、精製ヒドロキシエチルメタクリレートの重合開始時間は、原料ヒドロキシエチルメタクリレートの重合開始時間に比べて、延長されるはずである。また上記形態、つまり精製留出液側に留出しないような重合防止剤は、本発明の好ましい実施形態の一つであるといえる。
(比較例2)
実施例10において、白色結晶の代わりに4H−TEMPO0.1gを用いた以外は実施例10と同様の操作を行った。精製ヒドロキシエチルメタクリレートを液クロマトグラフィー分析を行ったところ、4H−TEMPOが20ppm含まれていた。また、重合開始時間は25時間であった。これら結果から、4H−TEMPOは蒸留時に留出し、精製ヒドロキシエチルメタクリレート中に混入することがわかる。
(実施例11)
ガラス製容器にヒドロキシエチルメタクリレート100gを仕込み、さらに実施例1で得られた白色結晶0.002g(4H−TEMPOとして0.001質量%)を添加した。この容器を100℃に調整したオイルバスに浸し、重合開始時間を測定したところ、14時間であった。
(比較例3)
実施例11において、白色結晶の代わりに4H−TEMPO0.001g(0.001質量%)を用いた以外は、実施例11と同様にして、重合開始時間を測定したところ、14時間であった。
実施例11と比較例3との比較により、白色結晶は4H−TEMPOと同等の重合防止効果を有することがわかる。
(比較例4)
実施例10において、白色結晶の代わりに4H−TEMPO0.02gを用いた以外は実施例10と同様の操作を行った。精製ヒドロキシエチルメタクリレートを液クロマトグラフィー分析を行ったところ、4H−TEMPOが2ppm含まれていた。また、重合開始時間は9時間であった。この比較例は、従来の4H−TEMPO化合物を添加して、本件の対象物での重合防止効果と同等の添加量を調整し重合を防止することは通常行われるが、重合防止対象のビニル化合物であるヒドロキシエチルメタクリレートを精製するとその留出分に、4H−TEMPOが混入してくる問題があることを示している。よって、従来の4H−TEMPOなど比較的高沸点を有する重合防止剤であっても精製工程などの留出液側への移行は避けられない。よって製品側(ビニル化合物)に余分な重合防止剤が移行する場合もあり問題となる場合もありえる。
(比較例5)
実施例10において、白色結晶の代わりに4H−TEMPO0.02g、SAL0.1gを用いた以外は実施例10と同様の操作を行った。精製ヒドロキシエチルメタクリレートを液クロマトグラフィー分析を行ったところ、4H−TEMPOが2ppm含まれていた。また、重合開始時間は9時間であった。この結果から、SAL存在下でも比較例4と同等の4H−TEMPOが蒸留時に留出し、精製ヒドロキシエチルメタクリレート中に混入することがわかる。この比較例5からも比較例4と同様の現象、(通常の方法による重合防止処理では精製工程などの留出液側への移行は避けられない場合や、また製品側(ビニル化合物)に余分な重合防止剤が移行する場合もあり問題となりえる)ことを説明するものである。
(実施例12)
実施例10において、白色結晶の代わりに実施例2でオイルバスにて80℃に昇温して5時間反応させた冷却前の反応液を0.4g(4H−TEMPOとして0.02g)を用いた以外は実施例10と同様の操作を行った。精製ヒドロキシエチルメタクリレートを液クロマトグラフィー分析を行ったところ、4H−TEMPOが1ppm以下であり、また、重合開始時間は8時間であった。この実施例は、白色結晶を添加しなくても4H−TEMPOが95%反応した反応液を添加することによって、重合防止対象のビニル化合物であるヒドロキシエチルメタクリレートを精製する際に、その留出分に4H−TEMPOが混入しない白色結晶を添加する効果と同等であることを示している。
実施例1で得られた合成物のH−NMR分析チャートである。 実施例1で得られた化合物のH−NMR分析チャートを下に、SALのH−NMR分析チャートをその上部に示したものである。 ピペリジンのH−NMR分析チャートである。 シクロヘキサノールのH−NMR分析チャートである。 実施例1で溶媒として用いたアセトンd6の不純物ピークを確認するためのH−NMR分析チャートである。 実施例3で得られた合成物のH−NMR分析チャートである。

Claims (7)

  1. オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールから選ばれる少なくとも1種とN−オキシル化合物とから合成される配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤。
  2. オキシ酸、多価カルボン酸および多価アルコールの官能基であるカルボキシル基および/またはヒドロキシル基のHが残存する請求項1記載のビニル基含有化合物の重合防止剤。
  3. 脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(1)
    Figure 2008222702
    (式中、YはCH、CHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、CHOCHCHOH、CHCOOH、CHCOCHまたはC=Oである。)で表されるN−オキシル化合物とを溶媒中で反応させて得られる配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤。
  4. 脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(2)
    Figure 2008222702
    (式中、YはCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、またはCHOCHCHOHである。)で表されるN−オキシル化合物とを溶媒中で反応させて得られる配位化合物からなることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止剤。
    (化学構造)
    H−NMR分析において、プロトン比がオキシ酸:一般式(2)のN−オキシル化合物=1:1であり、オキシ酸のカルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)由来のHのピーク、また一般式(2)のN−オキシル化合物の水酸基(−OH)由来のHのピークが認められる。
  5. ビニル基含有化合物の重合を防止するにあたり、重合防止剤として、脂肪族または芳香族オキシ酸と、一般式(3)
    Figure 2008222702
    (式中、YはCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHOCHOH、またはCHOCHCHOHである。)で表されるN−オキシル化合物とを有機溶媒中で50〜100℃の温度で反応させて得られる配位化合物を用いることを特徴とするビニル基含有化合物の重合防止方法。
    (化学構造)
    H−NMR分析において、プロトン比がオキシ酸:一般式(3)のN−オキシル化合物=1:1であり、オキシ酸のカルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)由来のHのピーク、また一般式(3)のN−オキシル化合物の水酸基(−OH)由来のHのピークが認められる。
  6. 請求項5記載の配位化合物を合成する際に得られる反応混合液を重合防止剤として添加・使用するビニル基含有化合物の重合防止方法。
  7. ビニル基含有化合物が(メタ)アクリル酸エステルである請求項1〜6のいずれかに記載のビニル基含有化合物の重合防止方法。
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