JP2004263103A - 芳香族ビニル化合物の重合抑制剤および重合抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ビニル化合物の重合抑制剤としてN−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン、N−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンなどの立体障害性の三級炭化水素基、脂環炭化水素基を有するN−ニトロソ化合物を有効成分とする。また、該N−ニトロソ化合物と1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オンなどのN−オキシル化合物を組合せて使用する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のN−ニトロソ化合物を有効成分とした芳香族ビニル化合物の重合抑制剤および当該重合抑制剤を用いて芳香族ビニル化合物の製造、精製、貯蔵或いは輸送工程で発生する重合を抑制し、あるいは石油精製プラント等で芳香族ビニル化合物の重合による汚れが発生するプロセスに対し、汚れの発生を抑制する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ビニル化合物、特にスチレンはポリスチレン、合成ゴム、ABS樹脂などの製造原料として産業上非常に重要な化合物であり、工業的に大量に生産されている。
【0003】
一般に芳香族ビニル化合物は極めて重合し易く、製造あるいは精製工程において、熱が加わる等の要因により容易に重合し、芳香族ビニル化合物モノマーの収率を低下させ、さらに関連設備の中に汚れ(ファウリング)を生じ設備の運転上、支障を来すなどの問題がある。また、芳香族ビニル化合物の製造、精製工程以外でも、石油精製プラント等では、芳香族ビニル化合物の存在により、該化合物の重合に起因する汚れが発生するといった問題がある。これらの問題を回避するために一般に重合抑制剤が使用されている。
【0004】
重合抑制剤は、各種の化合物が知られているが、ニトロソ化合物では、N,N−ニトロソメチルアニリン〔例えば、特許文献1参照〕、N−ニトロソジフェニルアミンとジニトロ−o−クレゾールの組み合わせ〔例えば、特許文献2参照〕、N−ニトロソジフェニルアミンとジニトロ−p−クレゾールの組み合わせ〔例えば、特許文献3参照〕、ニトロソフェノール〔例えば、特許文献4参照〕、N−ニトロソ−N,N’−ジ−3−ペンチル−p−フェニレンジアミン〔例えば、特許文献5参照〕などの提案がある。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第288,138号明細書
【特許文献2】
米国特許第3,988,212号明細書
【特許文献3】
米国特許第4,341,600号明細書
【特許文献4】
特開平5−156233号公報
【特許文献5】
特開平11−140001号公報
【0006】
また、スチレン類を含む芳香族ビニル化合物に対する重合抑制剤として、安定N−オキシル化合物(例えば、特許文献6参照)が提案された。しかしながら、安定N−オキシル化合物は、初期の重合抑制に極めて有効であるが、ラジカルとの反応により自身が消失されると薬剤不在と同じ速度で重合が起こり、特に芳香族ビニル化合物を分離精製することを目的とした蒸留塔塔底部で、プロセス液体の滞留時間が比較的長い場合、あるいは複数の蒸留塔を備えた分離プロセスにおいて該重合禁止剤添加部から後段の蒸留塔では安定N−オキシル化合物が消費され尽くし、重合抑制が期待できないという問題があった。この他、安定N−オキシル化合物とp−ニトロソフェノールの組合せ〔例えば、特許文献7参照〕、安定N−オキシル化合物とp−ニトロフェノールの組合せ〔例えば、特許文献8参照〕、ニトロフェノールとスルホン酸類の組合せ〔例えば、特許文献9参照〕などを用いる提案がある。
【0007】
【特許文献6】
特開平1−165534号公報
【特許文献7】
特開平8−59524号公報
【特許文献8】
特開平9−268138号公報
【特許文献9】
特開2003−12708号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ニトロソ化合物、ニトロフェノールなどの重合抑制剤は、一般に毒性が高く、出来るだけ少量で所望の効果が発現することが望まれている。かかる見地から、本発明は、芳香族ビニル化合物に対して従来より少ない量で効果が発現する重合抑制剤およびこれを用いてなる芳香族ビニル化合物の重合抑制方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは芳香族ビニル化合物の重合反応特性と、種々のニトロソ化合物における重合抑制特性を詳細に検討した結果、ニトロソ基に隣接して立体的に大きな立体障害基を有する三級炭化水素基、脂環炭化水素基を導入することにより従来公知のN−ニトロソ−N−メチルアニリン、N−ニトロソ−N−フェニルアニリン(N−ニトロソジフェニルアミン)よりも重合抑制効果が増強するのみならず、芳香族ビニル化合物を扱う工程で一般的に使用されている2,4−ジニトロ−6−sec−ブチルフェノール(DNBP)と比べても抑制効果が高いことを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、芳香族ビニル化合物の重合抑制剤に係り、下記一般式(1)で表されるN−ニトロソ化合物を有効成分として含有する。
【化3】
(式中、R1は立体障害性の三級炭化水素基又は脂環炭化水素基、Arは炭素原子数6ないし14の芳香族炭化水素基を示す)
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤に係り、前記N−ニトロソ化合物が、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン及び/又はN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤に係り、さらに下記一般式(2)で表されるN−オキシル化合物を含有する。
【化4】
(式中、R2は水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸又は炭素数1〜3のアミドである)
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤に係り、前記N−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのうちの少なくとの1種である。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤に係り、前記N−ニトロソ化合物と前記N−オキシル化合物を重量比で95:5〜1:2で含有する。
【0015】
請求項6に係る発明は、芳香族ビニル化合物の重合抑制剤方法に係り、芳香族ビニル化合物の製造、精製、貯蔵或いは輸送工程において、請求項1乃至5のうちのいずれか記載の重合抑制剤を添加することである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の重合抑制剤の対象とする芳香族ビニル化合物は、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼンなどである。
【0017】
重合抑制剤であるN−ニトロソ化合物は前記一般式(1)で表されものであり、式中、Rは立体障害性の三級炭化水素基又は脂環炭化水素基であり、具体的にはtert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、2−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘプチル基、2−エチルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、2−メチルシクロオクチル基、2−エチルシクロオクチル基であり、好ましくはtert−ブチル基、シクロヘキシル基である。Arは炭素原子数6ないし14のアリール基を表し、具体的にはフェニル基、トリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、クメニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等であり、これらのN−ニトロソ化合物はプロセスの状況に合わせてその1種類をあるいは2種類以上を組み合わせて使用する。
【0018】
本発明の重合抑制方法を実施する対象は、芳香族ビニル化合物を製造、精製、貯蔵、あるいは輸送する工程などである。
【0019】
重合抑制剤は、基本的に重合の進行速度を遅くする重合抑制タイプと、重合が開始する迄の時間を遅らせる重合禁止するタイプがある。実際の重合抑制剤を、厳密に区分することはできないが、本発明のN−ニトロソ化合物は、重合抑制タイプの傾向が強いものである。芳香族ビニル化合物を扱う工程では、滞留時間が長い個所がしばしば存在するので、一般的には禁止剤タイプよりも抑制剤タイプがより好ましく選ばれるが、重合禁止機能をさらに付与することでより効果的に使用できることがある。
【0020】
芳香族ビニル化合物を扱う工程における重合抑制は、上記N−ニトロソ化合物に、重合禁止タイプのN−オキシル化合物を組合せることで、さらに効果を上げることができる。
【0021】
本発明において、N−ニトロソ化合物と組合せて用いるN−オキシル化合物は、前記一般式(2)で表されるピペリジン−1−オキシルである。一般式(2)においてR2は水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基又は炭素数1〜3のアミド基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基があり、炭素数1〜3のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基があり、炭素数1〜3のカルボン酸基としては蟻酸基、酢酸基、プロピオン酸基があり、炭素数1〜3のアミド基としては蟻酸アミド基、酢酸アミド基、プロピオン酸アミド基がある。具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルバモイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられ、好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。これらのN−オキシル化合物はプロセスの状況に合わせてその1種類をあるいは2種類以上を組み合わせて使用する。
【0022】
本発明の重合抑制剤は、N−ニトロソ化合物、あるいはN−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を含む重合抑制剤で有り、通常、N−ニトロソ化合物、N−オキシル化合物を溶解し得る有機溶剤、例えば芳香族系有機溶剤に溶解して使用される。具体的な有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が有り、これらの1種以上が用いられる。重合抑制剤中のN−ニトロソ化合物、N−オキシル化合物の濃度は、一律に決められるものではなく、適宜決定されれば良いが、一般にはそれぞれ1〜20重量%である。また、N−ニトロソ化合物、N−オキシル化合物の溶解度や溶解安定性を改善するためにアルコール類[例えば、エチレングリコール、ブチルグリコール等]を配合しても何ら差し支えない。本発明の効果を妨げない範囲において、従来から使用されてきた重合抑制剤を配合してもよい。
【0023】
N−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を含む重合抑制剤の場合、N−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物の配合比は、目的とする芳香族ビニル化合物の種類、量、運転状況および重合抑制効果の要求の程度により一律に決められるものでなく適宜決定されれば良いが、通常、重量比でN−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を95:5〜1:2であり、好ましくは9:1〜1:1である。
【0024】
本発明の重合抑制剤の調製方法は、特に限定されるものではなく、N−ニトロソ化合物、あるいはN−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を撹拌下、芳香族系有機溶剤に溶解することによって行われる。
【0025】
本発明の重合抑制剤の添加量についても、芳香族ビニル化合物の種類や量はもちろん、工程の運転状況、要求度、経済的観点などを加味して決められるべきものであり、一律に決めることはできないが、一般的にはN−ニトロソ化合物を、芳香族ビニル化合物に基づいて1〜2000ppm、好ましくは10〜1000ppmである。この範囲よりも少ないと効果が十分でないことが多く、またこの範囲より多くとも工程上は大きな問題はないが、添加量の増加に見合う効果の増大が得られず、むしろ経済的に好ましくないことが多い。
【0026】
また、N−オキシル化合物を組み合わせて用いる場合に、N−オキシル化合物の量は限定するものではなく、工程の運転状況や経済的観点から任意に決められるものであるが、一般的には、芳香族ビニル化合物に基づいて1〜2000ppm、好ましくは5〜500ppmである。この範囲よりも少ないと組合せて用いることの意義が十分大きくないことがあり、またこの範囲を超えて多くすると、効果は充分あるが添加量の割に効果が大きくならず、経済的にみて不利となることがある。
【0027】
本発明のN−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物は、上記のように重合抑制の機能が少し異なっており、本発明のN−ニトロソ化合物は、初期の重合抑制は安定N−オキシル化合物に比べ劣るものの、比較的長時間にわたり重合を抑制することができ、N−オキシル化合物は、初期の重合抑制に優れるが、時間を経て系内のラジカルと反応して消耗するとそれ以後は実質的に重合抑制効果がなくなる。従って、工程の要求に応じて両者の最適配合を設定して添加することが望ましい。例えば、工程の状況から長期間にわたり、重合を抑制したい場合にはN−ニトロソ化合物を多く、初期の重合を抑制したい場合はN−オキシル化合物を多くするなど、任意に添加量、および組合せ比率を変えて最適化を図ることができる。
【0028】
本発明において、N−ニトロソ化合物単独に、あるいはN−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を組み合わせて該工程に添加する場所は特に限定されるものではないが、通常、芳香族ビニル化合物が重合し、汚れとして問題化する箇所より上流のプロセスに添加する。例えば、スチレンは一般にエチルベンゼンの脱水素反応によって製造され、生成したスチレンと未反応エチルベンゼンを連続的に蒸留分離していることから、そのエチルベンゼン脱水素後の蒸留塔群に供給するのがよい。
【0029】
工程への添加方法は特に限定されるものではないが、通常、ある特定箇所に一括添加するか、あるいはいくつかの箇所に分けて添加するなどの方法が適宜選択される。この際、N−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物はそれぞれ別々にまた添加場所を変えて添加することも出来るが、予め両者を所望する比率で混合し、そのプロセス流体と同じ液体、例えばスチレンの場合にはエチルベンゼンや粗スチレンに溶解して添加するのが実際上便利である。
【0030】
上記で説明したように、ニトロソ基に隣接して立体的に大きな立体障害基を有するN−ニトロソ化合物を用いることにその特徴がある。立体的に大きな基の導入により、重合抑制特性が変化する理由は明らかでないが、重合抑制を担う活性点であるニトロソ基とラジカルとの反応により生じたニトロキサイドが立体的に大きい基で挟まれ、安定化されたものと考えられる。また、後記実施例で示すように、本発明のN−ニトロソ化合物は、芳香族ビニル化合物を扱う工程で一般的に使用されている2,4−ジニトロ−6−sec−ブチルフェノール(DNBP)よりも抑制効果が高いという利点を有する。
【0031】
【実施例】
実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0032】
〔評価に用いた重合抑制剤〕
(本発明のN−ニトロソ化合物)
N−1:N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン〔「H−2」(商品名)、大内新興(株)製〕
N−2:N−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリン(N−2)
米国特許第2,692,287号記載の方法に準じて以下の方法でN−(tert−ブチル)アニリン合成し、次に亜硝酸と反応させてN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンを得た。100mlのガラス製耐圧容器にアニリン塩酸塩1.3g(10ミリモル)、tert−ブチルアルコール3.7g(50ミリモル)、ヨウ素0.005gを入れ、140℃で5時間加熱した。加熱後、反応混合物を水に溶解させ、次いで水酸化アンモニウム溶液を加え、ジエチルエーテルにより抽出した。減圧下で溶媒を留去し、残留物を得、シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより該残留物を精製し、N−tert−ブチルアニリンを得た。合成したN−tert−ブチルアニリン1.49g(10ミリモル)を200mlフラスコに入れ、0℃に冷却しながら1:1濃塩酸40ml(濃塩酸20mlと水20mlの混合液)を加え、次に亜硝酸ナトリウム溶液〔亜硝酸ナトリウム0.76g(11ミリモル)を水15mlに溶解した溶液〕を20分間かけて滴下した。滴下終了後、過剰の酸を水酸化ナトリウム溶液で中和し、反応混合物を分液ロートに注ぎ、100mlのジエチルエーテルで抽出した。水層と有機層を分離し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去し、N−ニトロソ−N−tert−ブチルアニリンを得た。反応は、ほぼ定量的に進行し、精製することなしに重合抑制剤の試験に供した。
N−3:N−ニトロソ−1−(tert−ブチル)アミノナフタレン
「N−2」において、アニリン塩酸塩の代わりに1−アミノナフタレン塩酸塩を使用してN−ニトロソ−1−(tert−ブチル)アミノナフタレンを合成した。
【0033】
〔比較で用いたN−ニトロソ化合物〕
N−4:N−ニトロソ−N−メチルアニリン〔「H−1」(商品名)、大内新興(株)製〕を使用した。
N−5:N−ニトロソ−N−フェニルアニリン〔「スコノック」(商品名)、大内新興(株)〕を使用した。
【0034】
〔比較で用いたその他の重合抑制剤〕
DNBP:2,4−ジニトロ−6−sec−ブチルフェノール(SNPE社製)
【0035】
〔N−オキシル化合物〕
TEMPO:1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジ
H−TEMPO:1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(Aldrich社製)
O−TEMPO:1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(Aldrich社製)
【0036】
〔重合抑制試験1〕
還流冷却器を備えた4つ口セパラブルフラスコにスチレンモノマー(予めアルカリ洗浄してモノマー中に含まれる重合抑制剤を除き、水洗、乾燥した)100gを入れ、所定量の重合抑制剤を加え、高純度窒素ガスを80mL/分の流量で通気しながら120℃に加熱、保持した。一定時間毎に内容物の一部を取り出し、9倍容量のメタノールを加えて生成したポリマーを液中に懸濁状態で析出させ、濾過してポリマー重量を秤量した。ポリマー量から、モノマー中のポリマー生成量%を計算で求めた。結果を表1にまとめた。
【0037】
【表1】
【0038】
この結果から、本発明の立体障害性置換基のあるN−ニトロソ化合物は、長期にわたって重合を抑制していることが分かる。置換基がメチル基、フェニル基の場合には極く初期の重合は抑制しうるが、その後は速い速度で重合が進行しているに対して、本発明のN−ニトロソ化合物は試験開始後120分後であってもポリマー濃度は約1%程度であり本発明の重合抑制剤が従来使用のN−ニトロソアニリン誘導体と比較して極めて優れた重合抑制剤であることが容易に理解される。さらに比較例(4,5)には現在実工程で一般的に使用されている2,4−ジニトロ−6−sec−ブチルフェノール(DNBP)について行ったが、重合抑制効果を比較すると本発明の重合抑制剤がこの重合抑制剤より優れた重合抑制効果を有していることを明瞭に示している。
【0039】
〔重合抑制試験2〕
重合抑制試験1と同様な試験方法により、N−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を組合せて重合抑制効果を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
本発明のN−ニトロソ化合物とN−オキシル化合物を組合せて添加することにより、初期の重合はもちろんのこと、長期にわたり重合が抑制され相乗効果が発揮されることが理解される。
【0042】
【発明の効果】
本発明のN−ニトロソ化合物を使用することにより、芳香族ビニル化合物を製造、精製、貯蔵するプロセスにおける初期の重合はもちろんのこと、長期にわたり重合を抑制することが可能になる。本発明のN−ニトロソ化合物は、従来使用のN−ニトロソ化合物に比べて少量で効果が発現することから、使用量を減らすことができ、経済効果とともに、取扱い上の煩雑さも軽減される。
Claims (6)
- 前記N−ニトロソ化合物が、N−ニトロソ−N−シクロヘキシルアニリン及び/又はN−ニトロソ−N−(tert−ブチル)アニリンある請求項1記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤。
- 前記N−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのうちの少なくとも1種である請求項3記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤。
- 前記N−ニトロソ化合物と前記N−オキシル化合物を重量比で95:5〜1:2である請求項3又は4記載の芳香族ビニル化合物の重合抑制剤。
- 芳香族ビニル化合物の製造、精製、貯蔵或いは輸送工程において、請求項1乃至5のうちのいずれか記載の重合抑制剤を添加することを特徴とする芳香族ビニル化合物の重合抑制方法。
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