JP2004322105A - H形鋼の製造方法及び孔型ロール - Google Patents
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Abstract
【課題】圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する。
【解決手段】素材6を粗形鋼片4に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル9及びエッジャミル10を有する中間圧延機群11を用いて粗形鋼片4を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼7を製造する際に、中間圧延工程の最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bを内側に曲げる変形を付与する。
【選択図】 図1
【解決手段】素材6を粗形鋼片4に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル9及びエッジャミル10を有する中間圧延機群11を用いて粗形鋼片4を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼7を製造する際に、中間圧延工程の最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bを内側に曲げる変形を付与する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、H形鋼の製造方法に関するものであり、例えばH542×475 ×25/45 という、特に極めて大きな寸法を有するH形鋼 (以下、「超大寸H形鋼」という) の製造方法及び孔型ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超大寸H形鋼は、主に、分解圧延されたビームブランクを素材として圧延により製造されてきた。また、超大寸H形鋼は、製造コストを低減するために、薄肉の連鋳スラブを圧延素材として直接圧延することにより製造されるようになった。このため、これまでにも、薄肉の連鋳スラブから超大寸H形鋼を圧延により製造する発明が多数提案されている。
【0003】
近年では、建設構造物が高層化されるにともなって、鋼材はよりいっそう大断面化、極厚化さらには高強度化される傾向にあり、特に、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼に対するニーズが高まってきた。
【0004】
薄肉の連鋳スラブから超大寸H形鋼を圧延により直接製造するには、フランジ幅の確保や圧延能率の低下防止等の解決すべき課題があり、これまでにも多数の発明が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数のボックス孔型を用いてウェブ高さを縮小してフランジ対応部を拡幅し、成形孔型(造形孔型)を用いて粗形鋼片に仕上げる際に、造形孔型による造形圧延の途中で鋼片を90度転回してボックス孔型を用いてウェブ高さ方向に圧下を行ってフランジ内面の肉引けを防止して粗形鋼片のフランジボリュームを確保し、続くユニバーサル圧延によりフランジ幅を確保する発明が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、薄肉扁平の鋼片の両端に複数の割り孔型(ベリー孔型)を用いてスリットを刻設し、このスリットを順次押し広げ、その後、ボックス孔型で鋼片の両縁部に凹部を形成し、次いで造形孔型で凹部を有する粗形鋼片を製造する発明が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−269501号公報
【特許文献2】特開平7−164003号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来の発明によっても、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造することはできない。
【0009】
特許文献1により開示された発明により超大寸H形鋼を製造するには、造形圧延中に複数回ウェブ高さ圧下を行わなければならないため、圧延能率の低下を招いてしまう。
【0010】
一方、特許文献2により開示された発明によれば、造形孔型の圧延中のボックス孔型でウェブ高さ圧下を行う工程を省略できるため、圧延能率の低下を招くことはない。しかし、この発明によっても、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼のフランジ幅を確保することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、このような従来の技術が有する課題を解決し、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する方法及び孔型ロールを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、例えばブレークダウンミルを用いて、素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、例えば仕上ユニバーサルミルを用いて、中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際に、中間圧延工程の一部のパスにおいて、被圧延材のフランジを内側に曲げる変形を付与することを特徴とするH形鋼の製造方法である。これにより、このフランジをフランジ幅方向へ拡げることができる。
【0013】
また、本発明は、例えばブレークダウンミルを用いて、素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、例えば仕上ユニバーサルミルを用いて、中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際に、中間圧延工程の一部の同一のパスにおいて、被圧延材のフランジにこのフランジを内側に曲げる変形とフランジの厚み方向への圧下とを付与することを特徴とするH形鋼の製造方法である。これにより、このフランジをフランジ幅方向へ拡げることができる。
【0014】
これらの本発明にかかるH形鋼の製造方法では、変形が、粗ユニバーサルミルの竪ロールと被圧延材のフランジ外面との接触開始点を、粗ユニバーサルミルの水平ロールと被圧延材のフランジ内面の接触開始点よりもフランジ先端側に位置させることによって付与されることが例示される。
【0015】
また、本発明は、素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて前記粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、前記中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際の粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型ロールであって、素材を幅方向に圧下する少なくとも一つの孔型を有し、該孔型が下記の条件を充足することを特徴とする孔型ロールである。
【0016】
YR >WR ×Tan(θ)/2 ・・・・・・(3)
WR > tw ・・・・・・(4)
ここで、YR :孔型の底部中央に設けられた突起の深さ
WR :孔型の底部中央に設けられた突起の幅
θ :粗ユニバーサルミルの竪ロールのテーパ角度
tw :粗形鋼片のウエブ厚
また、これらの本発明にかかるH形鋼の製造方法では、中間圧延を行われる前の被圧延材がフランジ外面の中央部に凹部を有することが例示される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるH形鋼の製造方法の実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、中間圧延工程の一部のパスが中間圧延工程の粗ユニバーサルミルによる最初のパスである場合を例にとる。
【0018】
図1は、本実施の形態における中間圧延工程の粗ユニバーサルミル1の最初のパスにおける竪ロール2、水平ロール3と被圧延材である粗形鋼片4との接触状況を示す説明図である。また、図2(a) 〜図2(d) は本実施の形態の粗圧延工程を示す説明図であり、図2(e) は中間圧延工程を示す説明図である。さらに、図3は粗圧延工程で用いるブレークダウンミル5の孔型I 〜IVの配置を示す説明図である。
【0019】
本実施の形態では、H形鋼の素材6に粗圧延、中間圧延及び仕上圧延を順次行ってH形鋼7を製造する。そこで、これらの各工程について順次説明する。
[粗圧延工程]
本実施の形態では、ブレークダウンミル5を用いて素材6を粗形鋼片4に粗圧延する。図3において、ブレークダウンミル5の孔型ロールの孔型I 〜III はいずれも孔底の中央部に突起を有するベリー孔型であり、孔型IVは成形孔型(造形孔型)である。
【0020】
本実施の形態では、加熱された連鋳スラブは素材6としてブレークダウンミル5に供給され、図3に示すベリー孔型I によりスラブの幅方向を上下として粗圧延を行うことにより、図2(a) に示すように両縁部に凹部が形成される。
【0021】
図2(a) に示すように凹部を形成された素材は、図3に示すベリー孔型II、III により凹部が順次押し広げられ、図2(b) 及び図2(c) に示すように素材の両縁部に凹部を有する鋼片に成形される。このように、本実施の形態では、素材は、底部に突起を有するベリー孔型I 〜III により連鋳鋼片の両縁部に凹部を有するドッグボーン状の鋼片に成形される。
【0022】
図2(c) に示すように凹部を形成された素材は、図3に示す造形孔型IVにより、図2(d) に示すように、下記の関係を満足する所定の凹部4a、4aをフランジ幅中央部に備える粗形鋼片4に成形される。
【0023】
図4(a) 〜図4(e) は、この粗圧延工程を経て製造される粗形鋼片4の形状の変化を示す説明図である。図4(d) 及び図4(e) に示すように、この粗形鋼片4は、下記(1) 式及び(2) 式により規定される関係を満足する寸法を有する。
【0024】
Y>W×Tan(θ)/2 ・・・・・・(1)
W>tw ・・・・・・(2)
(1) 式及び(2) 式において、Wは粗形鋼片4に形成された凹部4aの幅であり、Yは粗形鋼片4に形成された凹部4の深さであり、tw は粗形鋼片4のウェブ厚であり、θは図4(e) における粗ユニバーサルミルの竪ロールに設けられるテーパ角度である。
【0025】
また、図3に示すように、ベリー孔型III の形状は(3) 式及び(4) 式に示す関係を満足するように決定すればよい。
YR >WR ×Tan(θ)/2 ・・・・・・(3)
WR > tw ・・・・・・(4)
(3) 式及び(4) 式において、WR は孔型III に設けられた突起5aの幅であり、YR は孔型III に設けられた突起5aの深さである。
【0026】
粗圧延工程における素材6は図2(a) 〜図2(d) に示すように凹部を有しているため、造形孔型IVの圧延の際に孔型開放部からの材料の噛み出しが抑制される。したがって、造形孔型IVによる複数パスの圧延途中で、鋼片の幅方向を上下としてベリー孔型I 〜III で行う圧延(エッジング圧延)の回数を、低減することができる。
【0027】
つまり、ドッグボーン状の鋼片は凹部を有するので、造形孔型による圧延の際の上下ロールからの材料の噛み出しが抑制されるために、造形孔型による圧延途中で材料を90度転回して行うエッジング圧延の回数が低減される。これにより、本実施の形態によれば、圧延能率の低下が抑制される。
【0028】
後述するが、本実施の形態では、粗圧延工程によって粗形鋼片のフランジ中央部に所定の凹部を形成するため、図1に示すように、粗ユニバーサル圧延の最初のパスで、粗ユニバーサルミルの竪ロール2と粗形鋼片4との接触開始点Aが、粗ユニバーサルミルの水平ロール3と粗形鋼片4との接触開始点Bよりも、フランジ先端側となる。
【0029】
上述した事項以外は、本実施の形態における粗圧延工程は、この種の粗圧延工程と同じであるため、これ以上の説明は省略する。
[中間圧延工程]
本実施の形態では、粗圧延を行われた粗形鋼片4に対して、粗ユニバーサルミル1及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて中間圧延を行い、中間圧延材を製造する。
【0030】
本実施の形態では、図1に示すように、この中間圧延工程における粗ユニバーサルミルの最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bを内側に曲げる変形を与える。すなわち、本実施の形態では、粗形鋼片4のフランジ中央部に凹部4aを形成してあるため、粗ユニバーサルミル1による最初の圧下の際に、粗ユニバーサルミル1の竪ロール2と粗形鋼片4との接触開始点Aが、粗ユニバーサルミル1の水平ロール3と粗形鋼片4との接触開始点Bよりも、フランジ先端側となる。これにより、粗ユニバーサル圧延の最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bを内側に曲げる変形 (図1における白抜き矢印方向への変形) が付与される。
【0031】
そして、このパス以降、粗ユニバーサルミル1及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて通常の条件で中間圧延が行われ、中間圧延材が製造される。
このように、本実施の形態では、粗ユニバーサルミル1を用いた中間圧延の最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bにこのフランジ4bを内側に曲げる変形とフランジ4bの厚み方向への圧下とが付与される。これにより、粗形鋼片4が例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼の粗形鋼片であっても、この粗形鋼片4のフランジ4bをフランジ幅方向へ充分に拡げて、所望の寸法を有する超大寸H形鋼を製造することができる。
【0032】
このように、本実施の形態では、粗形鋼片4に凹部4aを形成するため、粗ユニバーサルミル1の最初のパスで、フランジ4bの厚み圧下だけではなくフランジ4bの曲げ成形も付与され、これらにより、フランジ4bの幅が大幅に拡大される。
【0033】
[仕上圧延工程]
このようにして中間圧延が行われた中間圧延材に対して、仕上ユニバーサルミルを用いて、通常1パスで仕上圧延を行うことにより、製品であるH形鋼を製造する。
【0034】
本実施の形態によれば、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造することができる。
【0035】
【実施例】
さらに、実施例として、本発明にかかるH形鋼の製造方法を、H500×500 極厚シリーズのH形鋼の製造に適用した結果を説明する。
【0036】
図5は本実施例で用いたH形鋼の圧延工程7を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、ブレークダウンミル8、粗ユニバーサルミル9及びエッジャーミル10から構成される中間圧延機群11、ならびに仕上ユニバーサルミル12を用いた。
【0037】
ブレークダウンミル8は上下一対の孔型ロールを有する。この孔型ロールは、図3に示すように、平坦孔型の孔底中央部に突起を設けた3種類のベリー孔型I 、II、III と造形孔型IVとが刻設されている。なお、ベリー孔型III の形状は、上述した(3) 式及び(4) 式をともに満足するように、突起幅WR =242mm 、突起高さYR =140mm とした。
【0038】
粗ユニバーサルミル9は公知のミルであり、一対の竪ロールと一対の水平ロールとを有し、竪ロールのテーパ角度θ=5度とした。また、エッジャーロール10は公知のミルであり、上下一対の水平ロールを有する。さらに、仕上ユニバーサルミル12は公知のユニバーサルミルである。
【0039】
素材として用いた連鋳スラブの寸法は、厚さ250mm 、幅1500mmであり、これを加熱炉で1250℃に加熱した。
続く粗圧延工程において、まず加熱したスラブを幅方向を上下として、ベリー孔型I;2パス、ベリー孔型II;5パス、ベリー孔型II;5パスの圧延により、ウェブ高さ859mm 、フランジ幅626mm 、ウェブ厚250mm のドッグボーン状の鋼片とした。次に、この鋼片を90度転回し、造形孔型IVにより11パスの圧延を行って、ウェブ厚80mm、フランジ幅510mm(フランジ脚長215mm)、ウェブ高さ900mm の粗形鋼片4に成形した。なお、粗形鋼片4のフランジ幅の中央部に形成された凹部の幅W=205mm 、凹部の深さY=103mm であり、(1) 式及び(2) 式を充足する。
【0040】
次に、粗形鋼片4を、粗ユニバーサルミル9及びエッジャーミル10から構成される中間圧延機群11による往復圧延の中間圧延と仕上ユニバーサルミル12による1パスの圧延により製品(H542 ×475 ×25/45)に仕上げた。なお、粗ユニバーサルミル9による第1パスから第3パスの圧延では、粗ユニバーサルミル9の竪ロールと粗形鋼片4との接触開始点Aが、粗ユニバーサルミル9の水平ロール3と粗形鋼片4との接触開始点Bよりもフランジ先端側になるようにして、フランジ4bを内側に曲げる変形を与えた。
【0041】
また、上記と同様の孔型I〜IVを用い、上記と同様の連鋳スラブから、ウェブ厚75mm、フランジ幅505mm(フランジ脚長215mm)、ウェブ高さ900mm の粗形鋼片を成形し、これを上記と同様に中間圧延機群11及び仕上ユニバーサルミル12にて製品 (H612×490 ×40/80)に仕上げた。なお、粗形鋼片にフランジ幅中央部に形成された凹部の幅W=200mm 、凹部の深さ=100mm であり、(1) 式及び(2) 式を充足する。
【0042】
本発明の方法により、ブレークダウンミル8に設けた孔型形状を変更することなく、厚さ250mm 及び幅1500mmの連鋳スラブから、ウェブ厚さ25〜70mm、フランジ厚45〜80mmまでのH500×500 シリーズを製造した。
【0043】
また、比較のために、図6に示す従来の方法により圧延した結果を示す。図5に示すブレークダウンミル8、粗ユニバーサルミル9及びエッジャーミル10から構成される中間圧延機群11、ならびに仕上ユニバーサルミル12を用いた。
【0044】
また図7には、この従来の方法で用いたブレークダウンミル8の孔型形状を示す。図7に示すように、ブレークダウンミル8は、上下一対の孔型ロールを有し、孔型ロールには平坦孔型の孔底中央部に突起を設けた3種類のベリー孔型I 、II、III と、平坦部を有するボックス孔型IVと、造形孔型V とが設けられている。
【0045】
素材として用いた連鋳スラブの寸法は、厚さ250mm 及び幅1400mmであり、これを加熱炉で1250℃に加熱した。続く粗圧延工程において、図6に示すように、先ず加熱スラブを幅方向を上下として、孔型I;2パス、孔型II;5パス、孔型III;3 パス、孔型IV;3パスの圧延を行って、ウェブ高さ780mm 、フランジ幅620mm 、ウェブ厚250mm のドッグボーン状鋼片13とした。
【0046】
次に、この鋼片13を90度転回し、造形孔型を用いた10パスの圧延により、ウェブ厚250mm のドッグボーン状鋼片13とした。次に、この鋼片13を90度転回し、造形孔型を用いた10パスの圧延により、ウェブ厚68mm、フランジ幅498mm(フランジ脚長215mm)、ウェブ高さ810mm の粗形鋼片14に成形した。
【0047】
なお、フランジ外面の噛み出し防止のため、造形孔型による圧延の途中で鋼片13を90度転回し、孔型IVによるエッジング圧延を合計4パス行った。なお、孔型I 、II、III での圧延時にスラブ両端部に形成された凹部は、造形孔型V による圧延と圧延中に行う孔型IVによるエッジング圧延とによりほぼ平坦になっていた。
【0048】
次に、この粗形鋼片を粗ユニバーサルミル9とエッジャミル10から構成される中間圧延機群11による往復圧延による中間圧延と、仕上ユニバーサルミル12による1パスの仕上圧延とにより、製品(H532 ×475 ×25/40)に仕上げた。なお、粗ユニバーサルミル9による圧延では、粗ユニバーサルミル9の竪ロールと粗形鋼片との接触開始点はフランジ幅中央となり、また粗ユニバーサルミル9の水平ロールと粗形鋼片との接触開始点はフランジ幅中央となり、粗ユニバーサルミル9の水平ロールと粗形鋼片との接触開始点よりもフランジ中央側となるため、フランジを内側に曲げる変形は生じなかった。
【0049】
この方法では、フランジ厚が40mm以上の上記サイズの製品を製造できたものの、フランジ厚が45mm以上となるサイズ、例えばH542×475 ×25/45 のサイズでは、フランジ幅の確保が不充分であり、フランジ先端の内面に角落ちが発生した。
【0050】
また、本発明にかかる方法により得られた製品 (H532×475 ×25/45)は、圧延能率が120 トン/時間であったのに対し、従来法により得られた製品 (532 ×475 ×25/40)は圧延能率が110 トン/時間であった。
【0051】
このように、本発明によれば、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する方法を提供できた。
【0052】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における中間圧延工程の粗ユニバーサルミルにおける竪ロール、水平ロールと粗形鋼片との接触状況を示す説明図である。
【図2】図2(a) 〜図2(d) は実施の形態の粗圧延工程を示す説明図であり、図2(e) は中間圧延工程を示す説明図である。
【図3】粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型I 〜IVの配置を示す説明図である。
【図4】図4(a) 〜図4(e) は、粗圧延工程を経て製造される粗形鋼片の形状の変化を示す説明図である。
【図5】実施例で用いたH形鋼の圧延工程を模式的に示す説明図である。
【図6】H形鋼の従来の圧延工程における粗圧延工程及び中間圧延工程を示す説明図である。
【図7】H形鋼の従来の圧延工程における粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型I 〜V の配置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 粗ユニバーサルミル
2 竪ロール
3 水平ロール
4 粗形鋼片
5 ブレークダウンミル
6 素材
【発明の属する技術分野】
本発明は、H形鋼の製造方法に関するものであり、例えばH542×475 ×25/45 という、特に極めて大きな寸法を有するH形鋼 (以下、「超大寸H形鋼」という) の製造方法及び孔型ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超大寸H形鋼は、主に、分解圧延されたビームブランクを素材として圧延により製造されてきた。また、超大寸H形鋼は、製造コストを低減するために、薄肉の連鋳スラブを圧延素材として直接圧延することにより製造されるようになった。このため、これまでにも、薄肉の連鋳スラブから超大寸H形鋼を圧延により製造する発明が多数提案されている。
【0003】
近年では、建設構造物が高層化されるにともなって、鋼材はよりいっそう大断面化、極厚化さらには高強度化される傾向にあり、特に、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼に対するニーズが高まってきた。
【0004】
薄肉の連鋳スラブから超大寸H形鋼を圧延により直接製造するには、フランジ幅の確保や圧延能率の低下防止等の解決すべき課題があり、これまでにも多数の発明が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数のボックス孔型を用いてウェブ高さを縮小してフランジ対応部を拡幅し、成形孔型(造形孔型)を用いて粗形鋼片に仕上げる際に、造形孔型による造形圧延の途中で鋼片を90度転回してボックス孔型を用いてウェブ高さ方向に圧下を行ってフランジ内面の肉引けを防止して粗形鋼片のフランジボリュームを確保し、続くユニバーサル圧延によりフランジ幅を確保する発明が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、薄肉扁平の鋼片の両端に複数の割り孔型(ベリー孔型)を用いてスリットを刻設し、このスリットを順次押し広げ、その後、ボックス孔型で鋼片の両縁部に凹部を形成し、次いで造形孔型で凹部を有する粗形鋼片を製造する発明が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−269501号公報
【特許文献2】特開平7−164003号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来の発明によっても、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造することはできない。
【0009】
特許文献1により開示された発明により超大寸H形鋼を製造するには、造形圧延中に複数回ウェブ高さ圧下を行わなければならないため、圧延能率の低下を招いてしまう。
【0010】
一方、特許文献2により開示された発明によれば、造形孔型の圧延中のボックス孔型でウェブ高さ圧下を行う工程を省略できるため、圧延能率の低下を招くことはない。しかし、この発明によっても、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼のフランジ幅を確保することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、このような従来の技術が有する課題を解決し、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する方法及び孔型ロールを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、例えばブレークダウンミルを用いて、素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、例えば仕上ユニバーサルミルを用いて、中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際に、中間圧延工程の一部のパスにおいて、被圧延材のフランジを内側に曲げる変形を付与することを特徴とするH形鋼の製造方法である。これにより、このフランジをフランジ幅方向へ拡げることができる。
【0013】
また、本発明は、例えばブレークダウンミルを用いて、素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、例えば仕上ユニバーサルミルを用いて、中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際に、中間圧延工程の一部の同一のパスにおいて、被圧延材のフランジにこのフランジを内側に曲げる変形とフランジの厚み方向への圧下とを付与することを特徴とするH形鋼の製造方法である。これにより、このフランジをフランジ幅方向へ拡げることができる。
【0014】
これらの本発明にかかるH形鋼の製造方法では、変形が、粗ユニバーサルミルの竪ロールと被圧延材のフランジ外面との接触開始点を、粗ユニバーサルミルの水平ロールと被圧延材のフランジ内面の接触開始点よりもフランジ先端側に位置させることによって付与されることが例示される。
【0015】
また、本発明は、素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて前記粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、前記中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際の粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型ロールであって、素材を幅方向に圧下する少なくとも一つの孔型を有し、該孔型が下記の条件を充足することを特徴とする孔型ロールである。
【0016】
YR >WR ×Tan(θ)/2 ・・・・・・(3)
WR > tw ・・・・・・(4)
ここで、YR :孔型の底部中央に設けられた突起の深さ
WR :孔型の底部中央に設けられた突起の幅
θ :粗ユニバーサルミルの竪ロールのテーパ角度
tw :粗形鋼片のウエブ厚
また、これらの本発明にかかるH形鋼の製造方法では、中間圧延を行われる前の被圧延材がフランジ外面の中央部に凹部を有することが例示される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるH形鋼の製造方法の実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、中間圧延工程の一部のパスが中間圧延工程の粗ユニバーサルミルによる最初のパスである場合を例にとる。
【0018】
図1は、本実施の形態における中間圧延工程の粗ユニバーサルミル1の最初のパスにおける竪ロール2、水平ロール3と被圧延材である粗形鋼片4との接触状況を示す説明図である。また、図2(a) 〜図2(d) は本実施の形態の粗圧延工程を示す説明図であり、図2(e) は中間圧延工程を示す説明図である。さらに、図3は粗圧延工程で用いるブレークダウンミル5の孔型I 〜IVの配置を示す説明図である。
【0019】
本実施の形態では、H形鋼の素材6に粗圧延、中間圧延及び仕上圧延を順次行ってH形鋼7を製造する。そこで、これらの各工程について順次説明する。
[粗圧延工程]
本実施の形態では、ブレークダウンミル5を用いて素材6を粗形鋼片4に粗圧延する。図3において、ブレークダウンミル5の孔型ロールの孔型I 〜III はいずれも孔底の中央部に突起を有するベリー孔型であり、孔型IVは成形孔型(造形孔型)である。
【0020】
本実施の形態では、加熱された連鋳スラブは素材6としてブレークダウンミル5に供給され、図3に示すベリー孔型I によりスラブの幅方向を上下として粗圧延を行うことにより、図2(a) に示すように両縁部に凹部が形成される。
【0021】
図2(a) に示すように凹部を形成された素材は、図3に示すベリー孔型II、III により凹部が順次押し広げられ、図2(b) 及び図2(c) に示すように素材の両縁部に凹部を有する鋼片に成形される。このように、本実施の形態では、素材は、底部に突起を有するベリー孔型I 〜III により連鋳鋼片の両縁部に凹部を有するドッグボーン状の鋼片に成形される。
【0022】
図2(c) に示すように凹部を形成された素材は、図3に示す造形孔型IVにより、図2(d) に示すように、下記の関係を満足する所定の凹部4a、4aをフランジ幅中央部に備える粗形鋼片4に成形される。
【0023】
図4(a) 〜図4(e) は、この粗圧延工程を経て製造される粗形鋼片4の形状の変化を示す説明図である。図4(d) 及び図4(e) に示すように、この粗形鋼片4は、下記(1) 式及び(2) 式により規定される関係を満足する寸法を有する。
【0024】
Y>W×Tan(θ)/2 ・・・・・・(1)
W>tw ・・・・・・(2)
(1) 式及び(2) 式において、Wは粗形鋼片4に形成された凹部4aの幅であり、Yは粗形鋼片4に形成された凹部4の深さであり、tw は粗形鋼片4のウェブ厚であり、θは図4(e) における粗ユニバーサルミルの竪ロールに設けられるテーパ角度である。
【0025】
また、図3に示すように、ベリー孔型III の形状は(3) 式及び(4) 式に示す関係を満足するように決定すればよい。
YR >WR ×Tan(θ)/2 ・・・・・・(3)
WR > tw ・・・・・・(4)
(3) 式及び(4) 式において、WR は孔型III に設けられた突起5aの幅であり、YR は孔型III に設けられた突起5aの深さである。
【0026】
粗圧延工程における素材6は図2(a) 〜図2(d) に示すように凹部を有しているため、造形孔型IVの圧延の際に孔型開放部からの材料の噛み出しが抑制される。したがって、造形孔型IVによる複数パスの圧延途中で、鋼片の幅方向を上下としてベリー孔型I 〜III で行う圧延(エッジング圧延)の回数を、低減することができる。
【0027】
つまり、ドッグボーン状の鋼片は凹部を有するので、造形孔型による圧延の際の上下ロールからの材料の噛み出しが抑制されるために、造形孔型による圧延途中で材料を90度転回して行うエッジング圧延の回数が低減される。これにより、本実施の形態によれば、圧延能率の低下が抑制される。
【0028】
後述するが、本実施の形態では、粗圧延工程によって粗形鋼片のフランジ中央部に所定の凹部を形成するため、図1に示すように、粗ユニバーサル圧延の最初のパスで、粗ユニバーサルミルの竪ロール2と粗形鋼片4との接触開始点Aが、粗ユニバーサルミルの水平ロール3と粗形鋼片4との接触開始点Bよりも、フランジ先端側となる。
【0029】
上述した事項以外は、本実施の形態における粗圧延工程は、この種の粗圧延工程と同じであるため、これ以上の説明は省略する。
[中間圧延工程]
本実施の形態では、粗圧延を行われた粗形鋼片4に対して、粗ユニバーサルミル1及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて中間圧延を行い、中間圧延材を製造する。
【0030】
本実施の形態では、図1に示すように、この中間圧延工程における粗ユニバーサルミルの最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bを内側に曲げる変形を与える。すなわち、本実施の形態では、粗形鋼片4のフランジ中央部に凹部4aを形成してあるため、粗ユニバーサルミル1による最初の圧下の際に、粗ユニバーサルミル1の竪ロール2と粗形鋼片4との接触開始点Aが、粗ユニバーサルミル1の水平ロール3と粗形鋼片4との接触開始点Bよりも、フランジ先端側となる。これにより、粗ユニバーサル圧延の最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bを内側に曲げる変形 (図1における白抜き矢印方向への変形) が付与される。
【0031】
そして、このパス以降、粗ユニバーサルミル1及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて通常の条件で中間圧延が行われ、中間圧延材が製造される。
このように、本実施の形態では、粗ユニバーサルミル1を用いた中間圧延の最初のパスにおいて、粗形鋼片4のフランジ4bにこのフランジ4bを内側に曲げる変形とフランジ4bの厚み方向への圧下とが付与される。これにより、粗形鋼片4が例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼の粗形鋼片であっても、この粗形鋼片4のフランジ4bをフランジ幅方向へ充分に拡げて、所望の寸法を有する超大寸H形鋼を製造することができる。
【0032】
このように、本実施の形態では、粗形鋼片4に凹部4aを形成するため、粗ユニバーサルミル1の最初のパスで、フランジ4bの厚み圧下だけではなくフランジ4bの曲げ成形も付与され、これらにより、フランジ4bの幅が大幅に拡大される。
【0033】
[仕上圧延工程]
このようにして中間圧延が行われた中間圧延材に対して、仕上ユニバーサルミルを用いて、通常1パスで仕上圧延を行うことにより、製品であるH形鋼を製造する。
【0034】
本実施の形態によれば、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造することができる。
【0035】
【実施例】
さらに、実施例として、本発明にかかるH形鋼の製造方法を、H500×500 極厚シリーズのH形鋼の製造に適用した結果を説明する。
【0036】
図5は本実施例で用いたH形鋼の圧延工程7を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、ブレークダウンミル8、粗ユニバーサルミル9及びエッジャーミル10から構成される中間圧延機群11、ならびに仕上ユニバーサルミル12を用いた。
【0037】
ブレークダウンミル8は上下一対の孔型ロールを有する。この孔型ロールは、図3に示すように、平坦孔型の孔底中央部に突起を設けた3種類のベリー孔型I 、II、III と造形孔型IVとが刻設されている。なお、ベリー孔型III の形状は、上述した(3) 式及び(4) 式をともに満足するように、突起幅WR =242mm 、突起高さYR =140mm とした。
【0038】
粗ユニバーサルミル9は公知のミルであり、一対の竪ロールと一対の水平ロールとを有し、竪ロールのテーパ角度θ=5度とした。また、エッジャーロール10は公知のミルであり、上下一対の水平ロールを有する。さらに、仕上ユニバーサルミル12は公知のユニバーサルミルである。
【0039】
素材として用いた連鋳スラブの寸法は、厚さ250mm 、幅1500mmであり、これを加熱炉で1250℃に加熱した。
続く粗圧延工程において、まず加熱したスラブを幅方向を上下として、ベリー孔型I;2パス、ベリー孔型II;5パス、ベリー孔型II;5パスの圧延により、ウェブ高さ859mm 、フランジ幅626mm 、ウェブ厚250mm のドッグボーン状の鋼片とした。次に、この鋼片を90度転回し、造形孔型IVにより11パスの圧延を行って、ウェブ厚80mm、フランジ幅510mm(フランジ脚長215mm)、ウェブ高さ900mm の粗形鋼片4に成形した。なお、粗形鋼片4のフランジ幅の中央部に形成された凹部の幅W=205mm 、凹部の深さY=103mm であり、(1) 式及び(2) 式を充足する。
【0040】
次に、粗形鋼片4を、粗ユニバーサルミル9及びエッジャーミル10から構成される中間圧延機群11による往復圧延の中間圧延と仕上ユニバーサルミル12による1パスの圧延により製品(H542 ×475 ×25/45)に仕上げた。なお、粗ユニバーサルミル9による第1パスから第3パスの圧延では、粗ユニバーサルミル9の竪ロールと粗形鋼片4との接触開始点Aが、粗ユニバーサルミル9の水平ロール3と粗形鋼片4との接触開始点Bよりもフランジ先端側になるようにして、フランジ4bを内側に曲げる変形を与えた。
【0041】
また、上記と同様の孔型I〜IVを用い、上記と同様の連鋳スラブから、ウェブ厚75mm、フランジ幅505mm(フランジ脚長215mm)、ウェブ高さ900mm の粗形鋼片を成形し、これを上記と同様に中間圧延機群11及び仕上ユニバーサルミル12にて製品 (H612×490 ×40/80)に仕上げた。なお、粗形鋼片にフランジ幅中央部に形成された凹部の幅W=200mm 、凹部の深さ=100mm であり、(1) 式及び(2) 式を充足する。
【0042】
本発明の方法により、ブレークダウンミル8に設けた孔型形状を変更することなく、厚さ250mm 及び幅1500mmの連鋳スラブから、ウェブ厚さ25〜70mm、フランジ厚45〜80mmまでのH500×500 シリーズを製造した。
【0043】
また、比較のために、図6に示す従来の方法により圧延した結果を示す。図5に示すブレークダウンミル8、粗ユニバーサルミル9及びエッジャーミル10から構成される中間圧延機群11、ならびに仕上ユニバーサルミル12を用いた。
【0044】
また図7には、この従来の方法で用いたブレークダウンミル8の孔型形状を示す。図7に示すように、ブレークダウンミル8は、上下一対の孔型ロールを有し、孔型ロールには平坦孔型の孔底中央部に突起を設けた3種類のベリー孔型I 、II、III と、平坦部を有するボックス孔型IVと、造形孔型V とが設けられている。
【0045】
素材として用いた連鋳スラブの寸法は、厚さ250mm 及び幅1400mmであり、これを加熱炉で1250℃に加熱した。続く粗圧延工程において、図6に示すように、先ず加熱スラブを幅方向を上下として、孔型I;2パス、孔型II;5パス、孔型III;3 パス、孔型IV;3パスの圧延を行って、ウェブ高さ780mm 、フランジ幅620mm 、ウェブ厚250mm のドッグボーン状鋼片13とした。
【0046】
次に、この鋼片13を90度転回し、造形孔型を用いた10パスの圧延により、ウェブ厚250mm のドッグボーン状鋼片13とした。次に、この鋼片13を90度転回し、造形孔型を用いた10パスの圧延により、ウェブ厚68mm、フランジ幅498mm(フランジ脚長215mm)、ウェブ高さ810mm の粗形鋼片14に成形した。
【0047】
なお、フランジ外面の噛み出し防止のため、造形孔型による圧延の途中で鋼片13を90度転回し、孔型IVによるエッジング圧延を合計4パス行った。なお、孔型I 、II、III での圧延時にスラブ両端部に形成された凹部は、造形孔型V による圧延と圧延中に行う孔型IVによるエッジング圧延とによりほぼ平坦になっていた。
【0048】
次に、この粗形鋼片を粗ユニバーサルミル9とエッジャミル10から構成される中間圧延機群11による往復圧延による中間圧延と、仕上ユニバーサルミル12による1パスの仕上圧延とにより、製品(H532 ×475 ×25/40)に仕上げた。なお、粗ユニバーサルミル9による圧延では、粗ユニバーサルミル9の竪ロールと粗形鋼片との接触開始点はフランジ幅中央となり、また粗ユニバーサルミル9の水平ロールと粗形鋼片との接触開始点はフランジ幅中央となり、粗ユニバーサルミル9の水平ロールと粗形鋼片との接触開始点よりもフランジ中央側となるため、フランジを内側に曲げる変形は生じなかった。
【0049】
この方法では、フランジ厚が40mm以上の上記サイズの製品を製造できたものの、フランジ厚が45mm以上となるサイズ、例えばH542×475 ×25/45 のサイズでは、フランジ幅の確保が不充分であり、フランジ先端の内面に角落ちが発生した。
【0050】
また、本発明にかかる方法により得られた製品 (H532×475 ×25/45)は、圧延能率が120 トン/時間であったのに対し、従来法により得られた製品 (532 ×475 ×25/40)は圧延能率が110 トン/時間であった。
【0051】
このように、本発明によれば、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する方法を提供できた。
【0052】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、圧延能率の低下を招くことなくフランジ幅を確保し、例えばH542×475 ×25/45 という寸法を有する超大寸H形鋼を製造する方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における中間圧延工程の粗ユニバーサルミルにおける竪ロール、水平ロールと粗形鋼片との接触状況を示す説明図である。
【図2】図2(a) 〜図2(d) は実施の形態の粗圧延工程を示す説明図であり、図2(e) は中間圧延工程を示す説明図である。
【図3】粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型I 〜IVの配置を示す説明図である。
【図4】図4(a) 〜図4(e) は、粗圧延工程を経て製造される粗形鋼片の形状の変化を示す説明図である。
【図5】実施例で用いたH形鋼の圧延工程を模式的に示す説明図である。
【図6】H形鋼の従来の圧延工程における粗圧延工程及び中間圧延工程を示す説明図である。
【図7】H形鋼の従来の圧延工程における粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型I 〜V の配置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 粗ユニバーサルミル
2 竪ロール
3 水平ロール
4 粗形鋼片
5 ブレークダウンミル
6 素材
Claims (5)
- 素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて前記粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、前記中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際に、
前記中間圧延工程の一部のパスにおいて、被圧延材のフランジを内側に曲げる変形を付与すること
を特徴とするH形鋼の製造方法。 - 素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて前記粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、前記中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際に、
前記中間圧延工程の一部の同一のパスにおいて、被圧延材のフランジに該フランジを内側に曲げる変形と該フランジの厚み方向への圧下とを付与すること
を特徴とするH形鋼の製造方法。 - 前記変形は、前記粗ユニバーサルミルの竪ロールと前記被圧延材のフランジ外面との接触開始点を、該粗ユニバーサルミルの水平ロールと該被圧延材のフランジ内面との接触開始点よりもフランジ先端側に位置させることによって付与される請求項1又は請求項2に記載されたH形鋼の製造方法。
- 前記中間圧延を行われる前の前記被圧延材は、フランジ外面の中央部に凹部を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたH形鋼の製造方法。
- 素材を粗形鋼片に粗圧延する粗圧延工程と、粗ユニバーサルミル及びエッジャミルを有する中間圧延機群を用いて前記粗形鋼片を中間圧延材に中間圧延する中間圧延工程と、前記中間圧延材を製品に仕上圧延する仕上圧延工程とを順次経てH形鋼を製造する際の粗圧延工程で用いるブレークダウンミルの孔型ロールであって、素材を幅方向に圧下する少なくとも一つの孔型を有し、該孔型が下記の条件を充足することを特徴とする孔型ロール。
YR >WR ×Tan(θ)/2 ・・・・・・(3)
WR > tw ・・・・・・(4)
ここで、YR :孔型の底部中央に設けられた突起の深さ
WR :孔型の底部中央に設けられた突起の幅
θ :粗ユニバーサルミルの竪ロールのテーパ角度
tw :粗形鋼片のウエブ厚
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Effective date: 20070703 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |