JP2004276697A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動パワーステアリング装置において、第1のトルクセンサ1と、第1のトルクセンサ1で検出されたドライバによる操舵トルクに応じた目標アシストトルクを設定するアシストトルク設定手段9と、目標アシストトルクが発生するようにモータ7を制御するモータ制御手段10と、第2のトルクセンサ2と、トルクセンサ1,2の故障を検出する異常検出手段8とを有し、モータ制御手段10は、トルクセンサ1,2の故障が判定されると目標アシストトルク制限値のテーリング処理を行ない、アシストトルク設定手段9は、第1のトルクセンサ1の故障時には第2のトルクセンサ2で検出された操舵トルクに基づいて目標アシストトルク設定するように構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータにより操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電動パワーステアリング装置は、ドライバがステアリングホイールに対して作用させるトルク(操舵トルク)に応じてモータよりアシストトルクを発生させるようになっており、この操舵トルクを検出するためのトルクセンサがそなえられている。また、このトルクセンサに異常が生じた際には、モータの誤作動を回避するための制御(フェールセーフ制御)が行なわれるようになっている。
【0003】
このフェールセーフ制御の手法の具体例としては、トルクセンサに何らかの障害が発生したことが検出された場合に、モータによるアシストトルクの発生を直ちにキャンセルし、ドライバによる操舵トルクのみで操舵させるモード(マニュアルモード)へ移行する手法(従来技術1)や、トルクセンサの障害検出に基づき、モータへ供給する電流を徐々に低下させることによって、緩やかにマニュアルモードへ移行する手法などが提案されている(例えば、特許文献1参照:従来技術2)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−58505号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術1では、ドライバの操舵時にトルクセンサに障害が発生すると、直ちにモータによるアシストトルクがゼロとなるため、ドライバは、このアシストトルク相当分の操舵トルクを瞬時にステアリングホイールへ作用させて舵角調整をする必要がある。ところが、このような短時間の間に正確な舵角調整を行なうことは現実的には難しく、この場合、結果的に車両の挙動が不安定になる虞がある。また、アシストトルクが急激になくなるのでドライバが違和感を覚えるという課題がある。
【0006】
一方、特許文献1には、トルクセンサに障害が発生した場合に、モータへ供給される実電流を時間の経過に伴って徐々に低下させる手法により、緩やかにマニュアルモードへ移行する旨が開示されている。なお、モータへ供給される実電流値は舵角に基づいており、事前に設定されている。
しかし、実際には、障害発生時の実電流値から徐々にその値を減ずる上述の制御(以後、テーリング制御という)中であっても、通常、舵角は適宜変更されるため、テーリング制御中にモータによって生じるアシストトルクとドライバによる操舵トルクとの間にミスマッチが生ずる場合がある。例えば、トルクセンサ故障時にモータへ供給されていた実電流がテーリング制御により徐々に減じられている間にドライバがステアリングホイールを所定角変更したためアシストトルクが不要となった場合であっても、ドライバによる舵角変更操作とは無関係に、モータは既に開始されたテーリング制御に従って、アシストトルクを発生してしまうこととなる。
【0007】
このように、特許文献1(従来技術2)による手法では、ドライバは操舵に違和感を覚える虞があり、場合によってはドライバによる操舵トルクに反するようなアシストトルクが生じることになり、ドライバビリティが低下してしまう場合がある。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、トルクセンサに障害が生じた場合であっても、確実かつ安全なフェールセーフ制御を実行できる、電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明の電動パワーステアリング装置は、ドライバによる操舵トルクをモータによってアシストする電動パワーステアリング装置において、 該ドライバの操舵トルクを検出する第1のトルクセンサと、該第1のトルクセンサで検出された操舵トルクに応じた目標アシストトルクを設定するアシストトルク設定手段と、該アシストトルク設定手段で設定された目標アシストトルクが発生するように該モータの作動を制御するモータ制御手段と、該第1のトルクセンサと並列に設けられて該ドライバの操舵トルクを検出する第2のトルクセンサと、該第1及び該第2のトルクセンサの故障を検出する異常検出手段とを有し、該モータ制御手段は、該異常検出手段により該第1及び該第2のトルクセンサのいずれか一方の故障が判定されると該モータの目標アシストトルクの制限値を0まで暫減させるテーリング処理を行なうとともに、該アシストトルク設定手段は、該第1のトルクセンサの故障時には該第2のトルクセンサで検出された操舵トルクに基づいて該目標アシストトルクを設定することを特徴としている。
【0009】
これにより第1のトルクセンサ又は第2のトルクセンサのどちらか一方のトルクセンサが故障した場合にモータによるアシストトルクの制限値(最大値)を徐々に低下させることができる。また、一方のトルクセンサに故障が生じた場合であっても、他方の正常運転中のトルクセンサによってドライバの操舵トルクを検出することができるので、アシストトルク上限値のテーリング処理中にドライバがステアリング操作を行なった場合であっても、当該ステアリング操作に応じたアシストトルクがその制限値内で生じるように確実にモータが制御される。
【0010】
また、請求項2記載の本発明の電動パワーステアリング装置は、上記請求項1記載の構成において、該異常検出手段は、該第1のトルクセンサ又は該第2のトルクセンサから検出される検出値が所定の閾値を超えると故障と判定することを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の電動パワーステアリング装置は、上記請求項1記載の構成において、該異常検出手段は、該第1のトルクセンサから検出される検出値と該第2のトルクセンサから検出される検出値との偏差が所定値以上となると、該第1及び該第2のトルクセンサののうち絶対値の大きい値を検出しているトルクセンサが故障していると判定することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置について図1〜図5を用いて説明すると、図1はその構成を示す模式的なブロック図、図2および図3はその作用を説明する模式的なタイムチャート、図4はその制御を示すマップを示す図、図5はその動作について説明するフローチャートである。
【0012】
本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置は、主に第1のトルクセンサ(メインセンサ)1、第2のトルクセンサ(サブセンサ)2、ECU3、モータユニット4、バッテリ5によって構成されている。
メインセンサ1は、ECU3に電気的に接続され、ドライバ(図示略)がステアリングホイール(図示略)に作用させる操舵力(操舵トルク)の大きさを検出し、この操舵トルクに応じた第1トルク値(電圧値;検出値)V1としてECU3に送信するものである。
【0013】
サブセンサ2も、メインセンサ1と同様に、ECU3と電気的に接続されており、上述の操舵トルクの大きさを検出し、この操舵トルクに応じた第2トルク値(電圧値;検出値)V2としてECU3に送信するものである。なお、このサブセンサ2はメインセンサ1よりも精度は劣るものの低コストなセンサが用いられ、コストの抑制に寄与している。
【0014】
つまり、本実施形態の電動パワーステアリング装置においては、操舵トルクの大きさを検出するセンサが2つ設けられており、操舵トルクの検出信頼性が高められるようになっている。
モータユニット4は、駆動回路6とモータ7とによって構成されている。また、この駆動回路6はバッテリ5とモータ7との間に介装されるようになっており、ECU3からの制御信号に基づいて、バッテリ5から供給される電力を調節してモータ7へ供給するようになっている。
【0015】
モータ7は、直流ブラシモータであって、ステアリングホイールとラック&ピニオン機構(図示略)等を介して機械的に接続され、バッテリ5から駆動回路6を介して供給された電力に応じたトルク(アシストトルク)を生じ、このアシストトルクによって、ドライバによるステアリング操作を軽減するようになっている。
【0016】
ECU3は異常検出部(異常検出手段)8、アシストトルク演算部(アシストトルク設定手段)9、モータコントローラ(モータ制御手段)10によって構成され、また、このモータコントローラ10にはテーリング処理部11が内蔵されている。
アシストトルク演算部9は、メインセンサ1によって検出された第1トルク値V1とサブセンサ2によって検出された第2トルク値V2とが入力されるようになっており、2つのトルク値のうちいずれか一方の値に基づいて目標アシストトルク値(電圧値)VTを設定し、後段のモータコントローラ10へ出力するようになっている。なお、通常はメインセンサ1によって検出された第1トルク値V1に基づいて目標アシストトルク値VTが設定されるようになっている。
【0017】
モータコントローラ10は、アシストトルク演算部9において設定された目標アシストトルク値VTを電流値ITへ変換するとともに、モータユニット4内の駆動回路6からモータ7へ供給される電流値IMが上記の目標アシストトルク値ITとなるように駆動回路6を制御するものであり、これにより、モータ7によって生じるアシストトルクの大きさが制御されるようになっている。
【0018】
モータコントローラ10内のテーリング処理部11は、異常検出部8から出力されるエラー信号に基づいて、上述の目標アシストトルク値(電流値)ITの上限値を所定時間かけて徐々に減ずる処理(テーリング処理もしくは暫減処理)を実行するものである。なお、この異常検出部8からのエラー信号およびテーリング処理については後述する。
【0019】
異常検出部8は、メインセンサ1から出力された第1トルク値V1とサブセンサ2から出力された第2トルク値V2とをモニタすることによってメインセンサ1またはサブセンサ2が故障したことを検出し、この故障検出が行われた場合にはエラー信号をアシストトルク演算部9とモータコントローラ10とに出力するようになっている。なお、このエラー信号にはメインセンサ1もしくはサブセンサ2のいずれのセンサが故障中であるかを示すフラグが含まれるようになっている。
【0020】
なお、上述の異常検出部8、アシストトルク演算部9、モータコントローラ10、テーリング処理部11はそれぞれソフトウェアによって実現されているが、電気回路によって実現してもよい。
ここで、異常検出部8によってメインセンサ1またはサブセンサ2の故障が検出された場合の制御を図2と図3とを使って説明する。
【0021】
図2のタイムチャートにおいて、Aで示す時点でメインセンサ1に故障が発生し、メインセンサ1からECU3へ出力される第1トルク値V1が急激に上昇し、図中一点鎖線Cで示すメインセンサ1の上限値(所定の閾値)を越えると(時点B参照)、異常検出部8はメインセンサ1の故障を検出・判定し、モータコントローラ10とアシストトルク演算部9とにエラー信号を送信するようになっている。
【0022】
そして、図2中矢印Dで示すように、モータコントローラ10からモータユニットへ出力される目標アシストトルク値(電流値)ITの上限値(制限値)ITLを徐々にゼロまで減ずる処理(テーリング処理)が、上記のエラー信号の受信したモータコントローラ10のテーリング処理部11によって行われるようになっている。
【0023】
また、この時、アシストトルク演算部9は、メインセンサ1もしくはサブセンサ2のいずれのセンサが故障中であるかを上述のエラー信号に基づいて判定し、故障中ではないセンサ、即ち、サブセンサ2によって検出された操舵トルク値V2に基づいて目標アシストトルク値VTを設定する制御を実行し、設定された目標アシストトルク値VTをモータコントローラ10へ出力するようになっている。
【0024】
また、この図2に示す例では、時点Bから目標アシストトルクの上限値ITLに対するテーリング処理が開始されているが、この時点でドライバの操舵トルクに応じた実際の目標アシストトルク値ITは、上限値ITLを下回っているため、モータコントローラ10から駆動回路6へは目標アシストトルク値ITがそのまま出力されて、モータ7からはドライバの操舵トルクに応じたアシストトルクが生じることとなる。
【0025】
そして、矢印Eで示すように、テーリング処理によって減少中の目標アシストトルク上限値ITLが、目標アシストトルク値IT以下になると、モータ7へ供給される実電流IMも目標アシストトルク上限値ITLに対するテーリング処理に伴って徐々に減少して最終的にはゼロとなり、モータによるアシストトルクを使って操舵する通常モードから、ドライバによる操舵トルクのみで操舵するマニュアルモードへ滑らかに移行することでフェールセーフ制御が完了する。
【0026】
なお、時点Bにおいて、目標アシストトルク値ITが図中Δで示すように低下しているが、これはメインセンサ1によって検出された操舵トルク値V1に基づいて設定されていた目標アシストトルクトルク値ITが、サブセンサ2によって検出された操舵トルク値V2に基づいて設定された目標アシストトルク値ITへ切り替えられた際に生じたものである。
【0027】
また、図3のタイムチャートに示す例においては、図中Fで示す時点でサブセンサ2が故障し、このため、サブセンサ2から出力される第2トルク値V2が急激に上昇している。そして、この第2トルク値V2が図中一点鎖線Hで示すサブセンサ2の上限値Hを越えた場合(時点G)に異常検出部8はサブセンサ2が故障していると検出・判定し、モータコントローラ10とアシストトルク演算部9とにエラー信号を送信するようになっている。
【0028】
そして、図3中矢印Jで示すように、エラー信号を受信したモータコントローラ10のテーリング処理部11は、目標アシストトルクの上限値ITLを徐々にゼロまで減ずるテーリング処理を行なうようになっている。
なお、上述したように、アシストトルク演算部9は、通常は、高い精度を有するメインセンサ1によって検出された情報(操舵トルク)に基づいて目標アシストトルクを算出するようになっており、サブセンサ2からの情報は用いられない。つまり、サブセンサ2は、あくまでメインセンサ1のバックアップとして設けられており、メインセンサ1の故障時にのみ使用される。
【0029】
したがって、サブセンサ2が故障しても、メインセンサ1が正常であれば、常に適切なアシストトルクが設定され、ドライバが違和感を覚えるようなこともない。しかし、サブセンサ2が停止した状態のまま車両が運転される場合には上記のバックアップ機能が発揮されないことになる。
そこで、このようなサブセンサ2のみの故障時にも、上述のようなテーリング処理により徐々に目標アシストトルク上限値を0にすることにより、ドライバにバックアップ機能が動作していないことを実感させることで、修理を促すようにしているのである。
【0030】
具体的には、サブセンサ2が故障中であることが異常検出手段によって検出されると、図3中矢印Jで示すように目標アシストトルク上限値ITLに対するテーリング処理が開始されているが、ドライバの操舵トルクに応じた実際の目標アシストトルク値ITは目標アシストトルク上限値ITL以下に収まっているため、モータコントローラ10からモータユニット4の駆動回路6へ出力される目標アシストトルク値ITは特にその値が変更されることなくそのまま出力され、モータ7は操舵トルクに応じたアシストトルクを生じ、ドライバは引き続き通常と同様にステアリング操作を行なうことが可能になっている。
【0031】
そして、矢印Kで示すように、テーリング処理によって減少中の目標アシストトルク上限値ITLが、目標アシストトルク値IT以下になると、実際にモータ7へ供給される電流値IMも目標アシストトルク上限値ITLの低下に伴って徐々に減少し、最終的にはゼロとなることでモータ7によるアシストトルクもゼロとなり、マニュアルモードへスムーズに移行することでフェールセーフ制御が完了するようになっている。
【0032】
ここで、従来の技術と本願発明とを改めて比較すると、従来技術1によれば、例えば、トルクセンサの故障が検出された時点で直ちに目標アシストトルク値をゼロとすることで、モータから出力されるアシストトルクを一気にゼロとしてマニュアル運転モードへ切り替えていたが、モータによるアシストトルクが突然ゼロになると、ドライバがこの切り替え制御に対応できず、操舵トルクが不足し、車両挙動が不安定となる虞があったが、本実施形態の電動ステアリング装置によれば、トルクセンサで故障が発生後、目標アシストトルクの上限値を徐々に減ずるテーリング処理を実行することで、徐々にアシストトルクが減少するので、ドライバはこのアシストトルクの減少に伴って徐々に操舵トルクを増加させればよく、ステアリング操作を確実に行ないながらスムーズにマニュアルモードへ移行することが可能となる。
【0033】
また、従来技術2によれば、トルクセンサに障害が発生した場合に、モータへ供給される実電流を時間の経過に伴って徐々に低下させているが、実際には、テーリング制御中であってもドライバによって舵角は適宜変更されているため、テーリング制御中のモータによって生ずるアシストトルクとドライバの意図する舵角操作との間にミスマッチが生ずる場合がある。
【0034】
これに対して、本実施形態においては、トルクセンサを2つ設けるとともに、モータ7へ実際に供給される電流値をテーリング処理するのではなく、目標アシストトルク値ITのアシストトルク上限値ITLをテーリング処理している。
これにより、メイントルクセンサ1が故障により作動しなくなった場合であっても、サブセンサ2によってドライバによる舵角操作を確実に検出することが可能となるとともに、アシストトルク上限値ITLのテーリング処理中であっても目標アシストトルク値ITがアシストトルク上限値ITLを下回っている場合においては、正常作動中のトルクセンサによって検出された操舵トルクに基づいて、通常通りにモータ7によってアシストトルクを生じさせることが可能となる。
【0035】
したがって、当該テーリング処理中においてドライバが舵角操作を行なった場合であっても、モータ7はドライバの意図に沿ったアシストトルクを発生することができる。
なお、上述のように2つのトルクセンサを設けて構成した場合には、一方のトルクセンサが故障した場合であっても正常に作動している他方のセンサによって検出される操舵トルクに応じたアシストトルクをモータによって生じさせる通常モードを維持することは可能であり、ドライバは何ら不都合を感じず、点検・修理を行うことなく運転を続けることが考えられる。しかし、このような状態で残りの正常なトルクセンサが故障するとアシストトルクの設定ができなくなるので、車両の挙動が不安定になる虞がある。そこで、あえてマニュアルモードへ移行するフェールセーフ制御を実行し、車両の保守作業を速やかに行なうことをドライバに促すようにしている。
【0036】
ところで、異常検出部8は、図2および図3に示すように、メインセンサ1またはサブセンサ2の各センサから出力される操舵トルク値V1またはV2が、それぞれ所定の閾値を超えたか否かで故障か正常かの判断を行なっていたが、これとは別の故障検出手法について、図4を使って説明する。
図4は、異常検出部8に内蔵されるマップであって、このマップは、メインセンサ1から出力される操舵トルク値V1とサブセンサ2から出力される操舵トルク値V2との偏差の値(以後、制御値という)が通常動作範囲12に収まっていれば両センサは正常と判定され、一方、制御値が通常動作範囲12から外れた場合にはいずれかのセンサが異常であると判定するようになっている。
【0037】
また、このマップによる異常判定においては、メインセンサ1から出力された操舵トルク値V1の絶対値よりもサブセンサ2から出力された操舵トルク値V2の絶対値の方が小さい領域13と、サブセンサ2から出力された操舵トルクV2の絶対値よりもメインセンサ1から出力された操舵トルク値V1の絶対値の方が小さい領域14とが設定されており、制御値がどの領域にあるかによってメインセンサ1またはサブセンサ2のいずれか一方が故障中であると判定できるようになっている。
【0038】
つまり、異常検出部8は、マップによって、メインセンサ1から出力された操舵トルク値V1と、サブセンサ2から出力された操舵トルク値V2とのうち、いずれか絶対値の大きい方の操舵トルク値を出力したセンサが故障していると判定するとともに、絶対値の小さい値(つまり、ゼロに近い値)を示しているセンサは正常であるとみなし、この正常なセンサから出力された操舵トルク値に基づいて目標アシストトルク値VTを設定するようになっている。
【0039】
本発明の電動パワーステアリング装置は上述のように構成されているので、図5に示す動作フローを用いてその作用を説明すると、まず、ステップS1において、メインセンサ1およびサブセンサ2のそれぞれによって検出された操舵トルクが対応する電圧値V1,V2としてECU3へ出力される。
そして、ステップS2においてメインセンサ1又はサブセンサ2の故障が異常検出部8によって検出されると、いずれのセンサが故障中であるかを示すフラグを含んだエラー信号がアシストトルク演算部9とモータコントローラ10とのそれぞれに出力される。
【0040】
次に、ステップS3において、エラー信号において示された故障中のトルクセンサではない他方のトルクセンサ(正常なトルクセンサ)によって検出された操舵トルク値がアシストトルク演算部9によって選択され、ここで選択された操舵トルク値に応じた目標アシストトルク値VTが設定される。
そして、ステップS4において、モータコントローラ10はステップS3で設定された目標アシストトルク値(電圧値)VTを目標アシストトルク(電流値)ITに変換するとともに、モータコントローラ10のテーリング処理部11は、受信したエラー信号に基づき、目標アシストトルクの上限値ITLを徐々に暫減するテーリング処理を実行する。このとき、目標アシストトルクITが目標アシストトルク上限値以下である場合には、正常なセンサによって検出された操舵トルクに応じた目標アシストトルクITがそのままモータユニット4へ出力され、通常通りにアシストトルクがモータ7により生じる。一方、目標アシストトルクITが目標アシストトルク上限値以上である場合には、目標アシストトルク上限値ITLによって制限され、結果的にテーリング処理されている目標アシストトルク上限値ITLがモータユニット4へ出力されることで、モータ7によって生じるアシストトルクもテーリング処理に応じて徐々に減じられ、最終的にはゼロとなってマニュアルモードへ移行し、フェールセーフ制御が完了する。
【0041】
これにより、メインセンサ(第1のトルクセンサ)1又はサブセンサ(第2のトルクセンサ)2のどちらか一方のトルクセンサが故障した場合にモータ7によるアシストトルクの制限値(最大値)を徐々に低下させることができるので、ドライバの違和感を極力抑制しながら、確実に通常モードからマニュアルモードへ移行し、フェールセーフ制御を完了することができる。
【0042】
また、一方のトルクセンサに故障が生じた場合であっても、テーリング処理中は、他方の正常運転中のトルクセンサによってドライバの操舵トルクを検出することができるので、テーリング処理中にドライバがステアリング操作を行なった場合であっても、当該ステアリング操作に応じたアシストトルクがその制限値内で生じるようにモータ7を制御でき、安全性の更なる向上に寄与することができる。
【0043】
また、異常検出手段がメインセンサ又はサブセンサ2から検出される操舵トルク値(検出値)が所定の閾値を超えると、当該センサが故障していると判断するので、簡単且つ確実に故障中のセンサを特定することが可能となり、一方、正常動作中のセンサによって検出された操舵トルクに基づいてアシストトルクの制御をすることができるので、安全性の向上に寄与することが可能となる。
【0044】
また、異常検出手段が、メインセンサ1から検出される検出値と、サブセンサ2から検出される検出値との偏差が所定値以上になると、メインセンサ1及びサブセンサ2のうち大きい値を検出しているセンサが故障していると判定するので、容易に故障中のセンサを特定することが可能となり、一方、正常動作中のセンサによって検出された操舵トルクに基づいてアシストトルクの制御をすることで、安全性の向上に寄与することが可能となる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の電動パワーステアリング装置によれば、トルクセンサに障害が生じた場合であっても、確実かつ安全なフェールセーフ制御を実行することが可能となる。つまり、第1のトルクセンサ又は第2のトルクセンサのどちらか一方のトルクセンサが故障した場合にモータによるアシストトルクの制限値(最大値)を徐々に低下させることができるので、ドライバの違和感を極力抑制しながら、確実に通常モードからマニュアルモードへ移行し、フェールセーフ制御を完了することができる。また、一方のトルクセンサに故障が生じた場合であっても、他方の正常運転中のトルクセンサによってドライバの操舵トルクを検出することができるので、アシストトルク上限値のテーリング処理中にドライバがステアリング操作を行なった場合であっても、当該ステアリング操作に応じたアシストトルクがその制限値内で生じるようにモータを制御でき、安全性の更なる向上に寄与することができる(請求項1)。
【0046】
また、異常検出手段が第1のトルクセンサ又は第2のトルクセンサから検出される検出値が所定の閾値を超えると、当該センサが故障していると判断するので、確実に故障中のセンサを特定することが可能となり、一方、正常動作中のセンサによって検出された操舵トルクに基づいてアシストトルクの制御をすることができるので、安全性の向上に寄与することが可能となる(請求項2)。
【0047】
また、異常検出手段が、第1のトルクセンサから検出される検出値と、第2のトルクセンサから検出される検出値との偏差が所定値以上になると、第1及び第2のトルクセンサのうち大きい値を検出しているセンサが故障していると判定するので、容易に故障中のセンサを特定することが可能となり、一方、正常動作中のセンサによって検出された操舵トルクに基づいてアシストトルクの制御をすることで、安全性の向上に寄与することが可能となる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置のメインセンサが故障した場合の制御を示す、模式的なタイムチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置のサブセンサが故障した場合の制御を示す、模式的なタイムチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置のセンサ故障判定に用いられるマップの模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置による動作フローである。
【符号の説明】
1 メインセンサ(第1のトルクセンサ)
2 サブセンサ(第2のトルクセンサ)
7 モータ
8 異常検出部(異常検出手段)
9 アシストトルク演算部(アシストトルク設定手段)
10 モータコントローラ(モータ制御手段)
11 テーリング処理部
Claims (3)
- ドライバによる操舵トルクをモータによってアシストする電動パワーステアリング装置において、
該ドライバの操舵トルクを検出する第1のトルクセンサと、
該第1のトルクセンサで検出された操舵トルクに応じた目標アシストトルクを設定するアシストトルク設定手段と、
該アシストトルク設定手段で設定された目標アシストトルクが発生するように該モータの作動を制御するモータ制御手段と、
該第1のトルクセンサと並列に設けられて該ドライバの操舵トルクを検出する第2のトルクセンサと、
該第1及び該第2のトルクセンサの故障を検出する異常検出手段とを有し、
該モータ制御手段は、該異常検出手段により該第1及び該第2のトルクセンサのいずれか一方の故障が判定されると該モータの目標アシストトルクの制限値を0まで暫減させるテーリング処理を行なうとともに、
該アシストトルク設定手段は、該第1のトルクセンサの故障時には該第2のトルクセンサで検出された操舵トルクに基づいて該目標アシストトルクを設定することを特徴とする、電動パワーステアリング装置。 - 該異常検出手段は、該第1のトルクセンサ又は該第2のトルクセンサから検出される検出値が所定の閾値を超えると故障と判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の電動パワーステアリング装置。 - 該異常検出手段は、該第1のトルクセンサから検出される検出値と該第2のトルクセンサから検出される検出値との偏差が所定値以上となると、該第1及び該第2のトルクセンサののうち絶対値の大きい値を検出しているトルクセンサが故障していると判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
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