JP2004175313A - 車両制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、少なくとも二つの駆動輪の各々に電動機と動力伝達機構と制御装置とが設けられた車両において、一の駆動輪の制御装置に異常が発生した場合に、他の駆動輪の制御装置が一の駆動輪の動力伝達機構を制御することによって一の駆動輪の駆動トルクを制御可能とし、以て一の駆動輪の駆動トルクと他の駆動輪の駆動トルクとの調和を図ることを特徴としている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などの車両に関し、特に電動機の動力を利用して車輪を駆動する車両の制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電動機(モータ)の動力を利用して車輪を駆動する自動車として、車両の前輪と後輪とのうちの一方を内燃機関およびまたはモータによって駆動し、他方をモータによって駆動する四輪駆動車が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)
【特許文献1】
特開平11−208304号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したような従来の技術では、モータを含む駆動系やモータの制御系に異常が発生した場合についての考察がなされていない。
【0003】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、電動機の動力を利用して車輪を駆動する車両において、異常発生時に好適なフェイル処理を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち本発明にかかる車両制御装置は、
車両に設けられる複数の車輪と、
前記車輪のうちの少なくとも二つの駆動輪の各々に設けられる電動機と、
前記電動機と前記駆動輪との間の動力伝達率を変更する動力伝達機構と、
前記駆動輪毎に設けられて各駆動輪の電動機および動力伝達機構を制御する制御装置と、
前記駆動輪のうちの一の駆動輪の制御装置に異常が発生した場合に、他の駆動輪の制御装置により前記一の駆動輪の動力伝達機構を制御させるフェイル処理手段と、
を備えるようにした。
【0005】
この車両制御装置は、少なくとも二つの駆動輪の各々に電動機と動力伝達機構と制御装置とが設けられた車両において、一の駆動輪の制御装置に異常が発生した場合に、他の駆動輪の制御装置が一の駆動輪の動力伝達機構を制御することにより、一の駆動輪の駆動トルクを制御可能としたことを最大の特徴としている。
【0006】
かかる車両制御装置では、一の駆動輪の制御装置に異常が発生すると、フェイル処理手段が前記一の駆動輪の動力伝達機構を制御させるべく前記他の駆動輪の制御装置を作動させる。
【0007】
この場合、他の駆動輪の制御装置は、他の駆動輪の電動機及び動力伝達機構に加え、一の駆動輪の動力伝達機構を制御することになる。
【0008】
この結果、一の駆動輪の動力伝達機構の動力伝達率が制御され、以て一の駆動輪において電動機から駆動輪へ伝達される駆動トルクが適当な大きさとなる。
【0009】
本発明において駆動輪が車両の左右の前輪である場合、又は車両の左右の後輪である場合には、フェイル処理手段は、一方の駆動輪の制御装置が異常を発生すると、他方の駆動輪の制御装置により一方の駆動輪の動力伝達機構を制御させるようにしてもよい。
【0010】
この場合、他方の駆動輪の制御装置は、他方の駆動輪の電動機及び動力伝達機構を制御するとともに、一方の駆動輪の動力伝達機構を制御することになる。
【0011】
この結果、一方の駆動輪において電動機から駆動輪へ伝達される駆動トルクが適当な大きさとなるため、一方の駆動輪の駆動トルクと他方の駆動輪の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【0012】
また、本発明にかかる駆動輪が車両の前後左右に配置された4つの車輪である場合には、フェイル処理手段は、一の駆動輪の制御装置が異常を発生すると、前記一の駆動輪と対角する他の駆動輪の制御装置により前記一の駆動輪の動力伝達機構を制御させるようにしてもよい。
【0013】
例えば、(1)車両の左前輪の制御装置が異常を発生した場合には右後輪の制御装置が右後輪の電動機及び動力伝達機構を制御するとともに左前輪の動力伝達機構を制御し、(2)車両の右前輪の制御装置が異常を発生した場合には左後輪の制御装置が左後輪の電動機及び動力伝達機構を制御するとともに右前輪の動力伝達機構を制御し、(3)車両の右後輪の制御装置が異常を発生した場合には左前輪の制御装置が左後輪の電動機及び動力伝達機構を制御するとともに右後輪の動力伝達機構を制御し、(4)車両の左後輪の制御装置が異常を発生した場合には右前輪の制御装置が右前輪の電動機及び動力伝達機構を制御するとともに左後輪の制御装置を制御する。
【0014】
このように異常を発生した駆動輪の動力伝達機構が、該駆動輪と対角する駆動輪の制御装置によって制御されると、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られることとなり、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【0015】
ここで、制御装置に異常が発生する態様としては、制御装置が電動機を作動させた状態で異常に陥る態様と、制御装置が電動機の作動を停止させた状態で異常に陥る態様とが想定される。
【0016】
先ず、複数の駆動輪のうち一の駆動輪の制御装置が電動機を作動させた状態で異常に陥った場合は、他の駆動輪の制御装置は、一の駆動輪の動力伝達機構の動力伝達率を制御することにより、一の駆動輪の駆動トルクを所望の大きさにすることができる。
【0017】
例えば、一の駆動輪の電動機のトルクが他の駆動輪の電動機のトルクより高い場合は、他の駆動輪の制御装置は、一の駆動輪の動力伝達機構の動力伝達率を低下させることにより一の駆動輪の駆動トルクを他の駆動輪の駆動トルクと同等まで低下させる。
【0018】
また、一の駆動輪の電動機のトルクが他の駆動輪の電動機のトルクより低い場合は、他の駆動輪の制御装置は、一の駆動輪の動力伝達機構による動力伝達を遮断させるようにしてもよい。尚、他の駆動輪の制御装置は、他の駆動輪の電動機のトルクを低下させ、若しくは、他の駆動輪の動力伝達機構の伝達率を低下させることにより、他の駆動輪の駆動トルクを一の駆動輪の駆動トルクと同等まで低下させるようにしてもよい。
【0019】
次に、複数の駆動輪のうち一の駆動輪の制御装置が電動機の作動を停止させた状態で異常に陥った場合は、他の駆動輪の制御装置は、一の駆動輪の動力伝達機構による動力伝達を遮断させることにより、一の駆動輪の駆動トルクを“0”とさせるようにうしてもよい。
【0020】
その際、一の駆動輪と他の駆動輪とが車両の左右に配置された駆動輪であれば、他の駆動輪の制御装置は、一の駆動輪の動力伝達機構による動力伝達を遮断すると同時に他の駆動輪の動力伝達機構による動力伝達も遮断することが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる車両制御装置の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用する車両の概略構成を示す図である。図1に示す車両1は、内燃機関とモータとによって駆動されるハイブリット式の四輪駆動車である。
【0023】
車両1には、内燃機関2が搭載されている。この内燃機関2には、機関出力軸(クランクシャフト)の回転速度を変更する変速機3が連結されている。この変速機3には、右前輪4の車軸5と左前輪6の車軸7とが接続されている。
【0024】
この場合、内燃機関2の機関出力軸の回転トルクは、変速機3及び車軸5、7を介して左右の前輪4、6へ分配されることになる。
【0025】
次に、車両1の右後輪8の車軸9は、第1のクラッチ10を介して、第1のモータ(M1)11のモータシャフト12と接続されている。第1のモータ(M1)11は、本発明にかかる電動機に相当するものであり、三相交流式のモータ或いは直流式のモータである。
【0026】
第1のクラッチ10及び第1のモータ(M1)11の各々は、第1のモータコントローラ(MC1)13と電気的に接続されている。この第1のモータコントローラ(MC1)13は、第1のクラッチ10の断続及びスリップ率を制御するとともに、第1のモータ(M1)11の発生トルクを制御する装置であり、例えば、演算処理回路(CPU)と変換器(インバータ)とから構成されている。
【0027】
車両1の左後輪14の車軸15は、第2のクラッチ16を介して、第2のモータ(M2)17のモータシャフト18と接続されている。第2のモータ(M2)17の構成は、第1のモータ(M1)11と同一である。
【0028】
第2のクラッチ16及び第2のモータ(M2)17の各々は、第2のモータコントローラ(MC2)19と電気的に接続されている。この第2のモータコントローラ(MC2)19は、第2のクラッチ16の断続及びスリップ率を制御するとともに、第2のモータ(M2)17の発生トルクを制御する装置であり、前記した第1のモータコントローラ(MC1)13と同様に構成されている。
【0029】
第1のモータコントローラ(MC1)13及び第2のモータコントローラ(MC2)19にはバッテリ20が電気的に接続され、第1のモータコントローラ(MC1)13及び第2のモータコントローラ(MC2)19がバッテリ20から第1のモータ(M1)11及び第2のモータ(M2)17の各々へ駆動電流を印加することが可能となっている。
【0030】
このように構成された車両1には、内燃機関2の運転状態、第1のモータコントローラ(MC1)13及び第2のモータコントローラ(MC2)19の作動状態を統合的に制御する算術論理演算回路(ECU)21が設けられている。
【0031】
ECU21は、内燃機関2、変速機3、第1のモータコントローラ(MC1)13、第2のモータコントローラ(MC2)19、及びバッテリ20と電気的に接続されている。
【0032】
例えば、ECU21は、車両1に要求される駆動トルク(以下、要求駆動トルクと称する)を演算し、その要求駆動トルクから4つの車輪4、6、8、14の各々に要求される駆動トルク(以下、車輪別要求駆動トルクと称する)を演算する。
【0033】
要求駆動トルクを演算する方法としては、アクセルペダルの操作量、変速機3のシフトポジション、走行速度(又は、車輪の回転速度)などをパラメータとして要求駆動トルクを算出する方法を例示することができる。
【0034】
また、車輪別要求駆動トルクを演算する方法としては、各車輪4、6、8、14の回転速度、ステアリングホイールの操舵角、車両1の加速度などをパラメータとして4つの車輪の駆動トルク配分比を決定し、その駆動トルク配分比と要求駆動トルクから車輪別要求駆動トルクを算出する方法を例示することができる。
【0035】
ECU21は、前輪4、6の車輪別要求駆動トルクに従って内燃機関2の運転状態及び変速機3の変速比を制御し、右後輪8の車輪別要求駆動トルクを第1のモータコントローラ(MC1)13へ送信し、左後輪14の車輪別要求駆動トルクを第2のモータコントローラ(MC2)19へ送信する。
【0036】
第1のモータコントローラ(MC1)13は、ECU21から受信した車輪別要求駆動トルクに従って第1のクラッチ10及び第1のモータ(M1)11を制御する。
【0037】
例えば、車輪別要求駆動トルクが正の値を示している場合は、ECU21は、第1のクラッチ10を連結させるとともに、車輪別要求駆動トルクに応じた駆動電流を第1のモータ(M1)11に印加させる。
【0038】
一方、車輪別要求駆動トルクが負の値を示している場合は、ECU21は、第1のクラッチ10を連結させるとともに、車輪別要求駆動トルクに応じた励磁電流を第1のモータ(M1)11へ印加させることにより、第1のモータ(M1)11を発電機として作動させ、以て右後輪8の運動エネルギを電気エネルギに変換する回生発電を行う。
【0039】
車輪別要求駆動トルクが“0”である場合には、ECU21は、第1のクラッチ10を遮断させるとともに、第1のモータ(M1)11に対する駆動電流の印加及び励磁電流の印加を停止する。
【0040】
第2のモータコントローラ(MC2)19は、前述した第1のモータコントローラ(MC1)13と同様に、ECU21から受信した車輪別要求駆動トルクに従って第2のクラッチ16及び第2のモータ(M2)17を制御する。
【0041】
ところで、第1のモータコントローラ(MC1)13または第2のモータコントローラ(MC2)19が異常を発生した場合には、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの調和が乱れ、車両1の走行安定性が低下する可能性がある。
【0042】
これに対し、本実施の形態では、第1のモータコントローラ(MC1)13と第2のモータコントローラ(MC2)19とを通信回線を介して接続し、第1のモータコントローラ(MC1)13と第2のクラッチ16とを電気的に接続し、更に第2のモータコントローラ(MC2)19と第1のクラッチ10とを電気配線を介して接続する。そして、ECU21と第1のモータコントローラ(MC1)13と第2のモータコントローラ(MC2)19との各々は、相互監視機能を備え、互いの異常を判定することができるようにした。
【0043】
但し、第1のモータコントローラ(MC1)13及び第2のモータコントローラ(MC2)19の異常判定機能をECU21の異常判定機能に統合させるようにしてもよく、或いは、ECU21の異常判定機能を第1のモータコントローラ(MC1)13およびまたは第2のモータコントローラ(MC2)19の異常判定機能に統合させるようにしてもよい。
【0044】
第1のモータコントローラ(MC1)13と第2のモータコントローラ(MC2)19とは、互いの異常判定を行うにあたり、各々以下に示すようなフェイル制御を実行する。
【0045】
先ず、第1のモータコントローラ(MC1)13は、図2に示すような第1のフェイル制御ルーチンを実行する。この第1のフェイル制御ルーチンは、例えば、第1のモータコントローラ(MC1)13内に設けられた記憶装置に記憶され、該第1のモータコントローラ(MC1)13が一定時間毎の割り込み処理として実行するルーチンである。
【0046】
第1のフェイル制御ルーチンでは、第1のモータコントローラ(MC1)13は、先ずS201において、第2のモータコントローラ(MC2)19が異常であるか否かを判別する。
【0047】
第2のモータコントローラ(MC2)19が異常であるか否かを判別する方法としては、ECU21から第2のモータコントローラ(MC2)19へ送信される車輪別要求駆動トルクと第2のモータコントローラ(MC2)19から第2のモータ(M2)17へ印加される駆動電流とを監視し、前記駆動電流が前記車輪別要求駆動トルクに対応しておらず且つ前記駆動電流が一定値に固定されていることを条件に、第2のモータコントローラ(MC2)19が異常であると判定する方法を例示することができる。
【0048】
前記S201において第2のモータコントローラ(MC2)19が正常であると判定された場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S210へ進み、第1のクラッチ10及び第1のモータ(M1)11を通常通りに制御する。
【0049】
一方、前記S201において第2のモータコントローラ(MC2)19が異常であると判定された場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S202へ進み、第2のモータコントローラ(MC2)19が異常である旨をECU21へ通知し、S203〜S209においてフェイルセーフ制御を実行する。
【0050】
この場合、車両1の室内に警告灯などを設け、ECU21が前記した警告灯を点灯させるようにしてもよい。
【0051】
S203では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第2のモータ(M2)17がモータとして作動状態にあるか否か、すなわち、第2のモータコントローラ(MC2)19が第2のモータ(M2)17をモータとして作動させた状態で異常を発生しているか否かを判別する。
【0052】
例えば、第1のモータコントローラ(MC1)13は、ECU21から第2のモータコントローラ(MC2)19へ送信される車輪別要求駆動トルクが正の値を示していれば第2のモータ(M2)17がモータとして作動状態にあると判定することができる。
【0053】
前記S203において第2のモータ(M2)17がモータとして作動状態にあると判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S204へ進む。
【0054】
S204では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、ECU21から第2のモータコントローラ(MC2)19へ送信される車輪別要求駆動トルク:TqrM2を読み込むとともに、第2のモータコントローラ(MC2)19から第2のモータ(M2)17へ印加されている駆動電流値に基づいて第2のモータ(M2)17の実際のトルク(以下、実トルクと称する):TqM2を算出する。続いて、第1のモータコントローラ(MC1)13は、車輪別要求駆動トルク:TqrM2が実トルク:TqM2より小さいか否かを判別する。
【0055】
前記S204において車輪別要求駆動トルク:TqrM2が実トルク:TqM2より小さいと判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S205へ進む。
【0056】
S205では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第2のモータ(M2)17から左後輪14へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM2と一致するように第2のクラッチ16のスリップ制御を行う。
【0057】
例えば、第1のモータコントローラ(MC1)13は、車輪別要求駆動トルク:TqrM2と実トルク:TqM2との偏差が大きくなるほどスリップ率を高くし、車輪別要求駆動トルク:TqrM2と実トルク:TqM2との偏差が小さくなるほどスリップ率を低くする。但し、車輪別要求駆動トルク:TqrM2と実トルク:TqM2との偏差が過剰に大きくなった場合等は、第1のモータコントローラ(MC1)13は第2のクラッチ16のスリップ制御を中断してもよい。
【0058】
このように第2のクラッチ16のスリップ制御が行われると、第2のクラッチ16の動力伝達率が低下するため、第2のモータ(M2)17から左後輪14へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM2まで低下するようになる。
【0059】
この結果、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制されることになる。
【0060】
また、前述したS204において車輪別要求駆動トルク:TqrM2が実トルク:TqM2以下であると判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S206へ進み、車輪別要求駆動トルク:TqrM2と実トルク:TqM2とが等しいか否かを判別する。
【0061】
前記S206において車輪別要求駆動トルク:TqrM2と実トルク:TqM2とが等しいと判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第2のクラッチ16の動力伝達率が100%となるように第2のクラッチ16を連結させて本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0062】
この場合、左後輪14の駆動トルクが車輪別要求駆動トルク:TqrM2と一致することになる。その結果、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制される。
【0063】
また、前記S206において車輪別要求駆動トルク:TqrM2と実トルク:TqM2とが等しくないと判定された場合、すなわち、車輪別要求駆動トルク:TqrM2が実トルク:TqM2より大きい場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S207へ進む。
【0064】
S207では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第2のクラッチ16のスリップ制御を実行する。例えば、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第2のクラッチ16のスリップ率を徐々に高くし、最終的に第2のクラッチ16を遮断させる。
【0065】
S208では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第1のクラッチ10を遮断させるとともに、第1のモータ(M1)11の作動を停止させるべくバッテリ20から第1のモータ(M1)11に対する駆動電流の印加を停止させる。
【0066】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの双方が“0”となるため、右後輪8と左後輪14の駆動トルクの調和が図られる。更に、第2のクラッチ16が遮断される際に、第2のクラッチ16のスリップ率が徐々に高くさせられるため、左後輪14の駆動トルクが急激に変化することがない。
【0067】
上記したように第1のクラッチ10及び第2のクラッチ16が遮断された場合には、ECU21が車両1の要求駆動トルクを右前輪4と左前輪6のみに配分すべく車輪別要求駆動トルクを算出し、その車輪別要求駆動トルクに従って内燃機関2の運転状態及び変速機3の変速比を制御するようにしてもよい。
【0068】
この場合、車両1は、内燃機関2が発生するトルクのみで走行することなる。すなわち、車両1は、右前輪4及び左前輪6によって駆動されることになる。その結果、車両1の4つの車輪(右前輪4、左前輪6、右後輪8、及び左後輪14)の駆動トルクの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制される。
【0069】
また、前述したS203において第2のモータ(M2)17がモータとして作動していないと判定された場合、言い換えれば、第2のモータ(M2)17が作動停止状態にある場合、或いは、第2のモータ(M2)17が発電機として作動している場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S209へ進む。
【0070】
S209では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第1のクラッチ10及び第2のクラッチ16を遮断させるとともに、第1のモータ(M1)11の作動を停止させるべくバッテリ20から第1のモータ(M1)11に対する駆動電流の印加を停止させる。
【0071】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの双方が“0”となるため、右後輪8と左後輪14の駆動トルクの調和が図られる。
【0072】
このように、第1のモータコントローラ(MC1)13が第1のフェイル制御ルーチンを実行することにより、第2のモータコントローラ(MC2)19に異常が発生した場合であっても、右後輪8と左後輪14の駆動トルクの調和が図られるため、車両1の走行安定性の低下が抑制されることとなる。
【0073】
次に、第2のモータコントローラ(MC2)19は、図3に示すようなフェイル制御ルーチンを実行する。このフェイル制御ルーチンは、例えば、第2のモータコントローラ(MC2)19内に設けられた記憶装置に記憶され、該第2のモータコントローラ(MC2)19が一定時間毎の割り込み処理として実行するルーチンである。
【0074】
第2のフェイル制御ルーチンでは、第2のモータコントローラ(MC2)19は、先ずS301において、第1のモータコントローラ(MC1)13が異常であるか否かを判別する。
【0075】
前記S301において第1のモータコントローラ(MC1)13が正常であると判定された場合には、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S310へ進み、第2のクラッチ16及び第2のモータ(M2)17を通常通りに制御する。
【0076】
一方、前記S301において第1のモータコントローラ(MC1)13が異常であると判定された場合には、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S302へ進み、第1のモータコントローラ(MC1)13が異常である旨をECU21へ通知し、S303〜S309においてフェイルセーフ制御を実行する。
【0077】
この場合、車両1の室内に警告灯などを設け、ECU21が前記した警告灯を点灯させるようにしてもよい。
【0078】
S303では、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第1のモータ(M1)11がモータとして作動状態にあるか否か、すなわち、第1のモータコントローラ(MC1)13が第1のモータ(M1)11をモータとして作動させた状態で異常を発生しているか否かを判別する。
【0079】
前記S303において第1のモータ(M1)11がモータとして作動状態にあると判定された場合は、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S304へ進む。
【0080】
S304では、第2のモータコントローラ(MC2)19は、ECU21から第1のモータコントローラ(MC1)13へ送信される車輪別要求駆動トルク:TqrM1を読み込むとともに、第1のモータコントローラ(MC1)13から第1のモータ(M1)11へ印加されている駆動電流値に基づいて第1のモータ(M1)11の実際のトルク(以下、実トルクと称する):TqM1を算出する。続いて、第2のモータコントローラ(MC2)19は、車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1より小さいか否かを判別する。
【0081】
前記S304において車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1より小さいと判定された場合は、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S305へ進む。
【0082】
S305では、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第1のモータ(M1)11から右後輪8へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM1と一致するように第1のクラッチ10のスリップ制御を行う。
【0083】
例えば、第2のモータコントローラ(MC2)19は、車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1との偏差が大きくなるほどスリップ率を高くし、車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1との偏差が小さくなるほどスリップ率を低くする。
【0084】
このように第1のクラッチ10のスリップ制御が行われると、第1のクラッチ10の動力伝達率が低下するため、第1のモータ(M1)11から右後輪8へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM1まで低下するようになる。
【0085】
この結果、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制されることになる。
【0086】
また、前述したS304において車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1以下であると判定された場合は、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S306へ進み、車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1とが等しいか否かを判別する。
【0087】
前記S306において車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1とが等しいと判定された場合は、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第1のクラッチ10の動力伝達率が100%となるように第1のクラッチ10を連結させて本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0088】
この場合、右後輪8の駆動トルクが車輪別要求駆動トルク:TqrM1と一致することになる。その結果、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制される。
【0089】
前記S306において車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1とが等しくないと判定された場合、すなわち、車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1より大きい場合には、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S307へ進む。
【0090】
S307では、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第1のクラッチ10のスリップ制御を行う。具体的には、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第1のクラッチ10のスリップ率を徐々に高くし、最終的に第1のクラッチ10を遮断する。
【0091】
S308では、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第2のクラッチ16を遮断させるとともに、第2のモータ(M2)17の作動を停止させるべくバッテリ20から第2のモータ(M2)17に対する駆動電流の印加を停止させる。
【0092】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの双方が“0”となるため、右後輪8と左後輪14の駆動トルクの調和が図られる。更に、第1のクラッチ10が遮断される際には、該第1のクラッチ10のスリップ率が徐々に高くされるため、右後輪8の駆動トルクが急激に変化することがない。
【0093】
上記したように第1のクラッチ10及び第2のクラッチ16が遮断された場合には、ECU21が車両1の要求駆動トルクを右前輪4と左前輪6のみに配分すべく車輪別要求駆動トルクを算出し、その車輪別要求駆動トルクに従って内燃機関2の運転状態及び変速機3の変速比を制御するようにしてもよい。
【0094】
この場合、車両1は、内燃機関2が発生するトルクのみで走行することなる。すなわち、車両1は、右前輪4及び左前輪6によって駆動されることになる。その結果、車両1の4つの車輪(右前輪4、左前輪6、右後輪8、及び左後輪14)の駆動トルクの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制される。
【0095】
また、前述したS303において第1のモータ(M1)11がモータとして作動していないと判定された場合、言い換えれば、第1のモータ(M1)11が作動停止状態にある場合、或いは、第1のモータ(M1)11が発電機として作動している場合には、第2のモータコントローラ(MC2)19は、S309へ進む。
【0096】
S309では、第2のモータコントローラ(MC2)19は、第1のクラッチ10及び第2のクラッチ16を遮断させるとともに、第2のモータ(M2)17の作動を停止させるべくバッテリ20から第2のモータ(M2)17に対する駆動電流の印加を停止させる。
【0097】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左後輪14の駆動トルクとの双方が“0”となるため、右後輪8と左後輪14の駆動トルクの調和が図られる。
【0098】
このように、第2のモータコントローラ(MC2)19が第2のフェイル制御ルーチンを実行することにより、第1のモータコントローラ(MC1)13に異常が発生した場合であっても、右後輪8と左後輪14の駆動トルクの調和が図られるため、車両1の走行安定性の低下が抑制されることとなる。
【0099】
<他の実施の形態>
前述した実施の形態のでは、内燃機関の動力とモータの動力とにより駆動されるハイブリット式の四輪駆動車に本発明を適用する例について述べたが、モータにより4つの車輪が駆動される電動式の四輪駆動車に本発明を適用するようにしてもよい。
【0100】
図4は、電動式四輪駆動車の概略構成を示す図である。図4において、前述した実施の形態と同様の構成要素については、前述した実施の形態と同一の符号が付されている。
【0101】
車両1の右前輪4の車軸22は、第3のクラッチ23を介して、第3のモータ(M3)24のモータシャフト25と接続されている。
【0102】
第3のクラッチ23及び第3のモータ(M3)24の各々は、第3のモータコントローラ(MC3)26と電気的に接続されている。この第3のモータコントローラ(MC3)26は、第1のモータコントローラ(MC1)13及び第2のモータコントローラ(MC2)19と同様に構成されている。
【0103】
車両1の左前輪6の車軸27は、第4のクラッチ28を介して、第4のモータ(M4)29のモータシャフト30と接続されている。
【0104】
第4のクラッチ28及び第4のモータ(M4)29の各々は、第4のモータコントローラ(MC4)31と電気的に接続されている。この第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のモータコントローラ(MC1)13及び第2のモータコントローラ(MC2)19と同様に構成されている。
【0105】
第1のモータコントローラ(MC1)13、第2のモータコントローラ(MC2)19、第3のモータコントローラ(MC3)26、及び第4のモータコントローラ(MC4)31は図示しないバッテリと電気的に接続され、バッテリから第1のモータ(M1)11、第2のモータ(M2)17、第3のモータ(M3)24、第4のモータ(M4)29の各々へ駆動電流を印加することが可能となっている。
【0106】
第1のモータコントローラ(MC1)13と第4のモータコントローラ(MC4)31とは通信回線を介して接続され、第2のモータコントローラ(MC2)19と第3のモータコントローラ(MC3)26とは通信回線を介して接続されている。
【0107】
更に、第1のモータコントローラ(MC1)13は第4のクラッチ28と電気的に接続され、第2のモータコントローラ(MC2)19は第3のクラッチ23と電気的に接続され、第3のモータコントローラ(MC3)26は第2のクラッチ16と電気的に接続され、第4のモータコントローラ(MC4)31は第1のクラッチ10と電気的に接続されている。
【0108】
第1のモータコントローラ(MC1)13、第2のモータコントローラ(MC2)19、第3のモータコントローラ(MC3)26、及び第4のモータコントローラ(MC4)31の各々は、ECU21と電気的に接続されている。
【0109】
第1のモータコントローラ(MC1)13と第4のモータコントローラ(MC4)31との各々は、相互監視機能を備え、互いの異常を判定することができるようになっている。
【0110】
第2のモータコントローラ(MC2)19と第3のモータコントローラ(MC3)26との各々も、相互監視機構を備え、互いの異常を判定することができるようになっている。
【0111】
このように構成された車両1では、第1のモータコントローラ(MC1)13、
と第4のモータコントローラ(MC4)31の各々は以下に示すようなフェイル制御を実行する。
【0112】
先ず、第1のモータコントローラ(MC1)13は、図5に示すような第1のフェイル制御ルーチンを実行する。
【0113】
第1のフェイル制御ルーチンでは、第1のモータコントローラ(MC1)13は、先ずS501において、第4のモータコントローラ(MC4)31が異常であるか否かを判別する。
【0114】
前記S501において第4のモータコントローラ(MC4)31が正常であると判定された場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S510へ進み、第1のクラッチ10及び第1のモータ(M1)11を通常通りに制御する。
【0115】
一方、前記S501において第4のモータコントローラ(MC4)31が異常であると判定された場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S502へ進み、第4のモータコントローラ(MC4)31が異常である旨をECU21へ通知した後、S503〜S509においてフェイルセーフ制御を実行する。
【0116】
この場合、ECU21は、車両1の室内に設けられた警告灯などを点灯させるようにしてもよい。
【0117】
S503では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第4のモータコントローラ(MC4)31がモータとして作動状態にあるか否か、すなわち、第4のモータコントローラ(MC4)31が第4のモータ(M4)29をモータとして作動させた状態で異常を発生しているか否かを判別する。
【0118】
前記S503において第4のモータコントローラ(MC4)31がモータとして作動状態にあると判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S504へ進む。
【0119】
S504では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、ECU21から第4のモータコントローラ(MC4)31へ送信される車輪別要求駆動トルク:TqrM4を読み込むとともに、第4のモータコントローラ(MC4)31から第4のモータ(M4)29へ駆動電流値に基づいて第4のモータ(M4)29の実トルク:TqM4を演算する。続いて、第1のモータコントローラ(MC1)13は、車輪別要求駆動トルク:TqrM4が実トルク:TqM4より小さいか否かを判別する。
【0120】
前記S504において車輪別要求駆動トルク:TqrM4が実トルク:TqM4より小さいと判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S505へ進む。
【0121】
S505では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第4のモータコントローラ(MC4)31から左前輪6へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM4と一致するように第4のクラッチ28のスリップ制御を行う。
【0122】
例えば、第1のモータコントローラ(MC1)13は、車輪別要求駆動トルク:TqrM4と実トルク:TqM4との偏差が大きくなるほどスリップ率を高くし、車輪別要求駆動トルク:TqrM4と実トルク:TqM4との偏差が小さくなるほどスリップ率を低くする。
【0123】
このように第4のクラッチ28のスリップ制御が行われると、第4のクラッチ28の動力伝達率が低下するため、第4のモータ(M4)29から左前輪6へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM4まで低下するようになる。
【0124】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの調和が維持されることになる。その結果、車両1の前後左右に配置された4つの車輪の駆動トルクの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制されることとなる。
【0125】
また、前述したS504において車輪別要求駆動トルク:TqrM4が実トルク:TqM4以下であると判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S506へ進み、車輪別要求駆動トルク:TqrM4と実トルク:TqM4とが等しいか否かを判別する。
【0126】
前記S506において車輪別要求駆動トルク:TqrM4と実トルク:TqM4とが等しいと判定された場合は、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第4のクラッチ28の動力伝達率が100%となるように第4のクラッチ28を連結させて本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0127】
この場合、左前輪6の駆動トルクが車輪別要求駆動トルク:TqrM4と一致することになる。その結果、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの調和が維持されることになる。その結果、車両1の前後左右に配置された4つの車輪の駆動トルクの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制される。
【0128】
前記S506において車輪別要求駆動トルク:TqrM4と実トルク:TqM4とが等しくないと判定された場合、すなわち、車輪別要求駆動トルク:TqrM4が実トルク:TqM4より大きい場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S507へ進む。
【0129】
S507では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第4のクラッチ28のスリップ制御を行う。例えば、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第4のクラッチ28のスリップ率を徐々に高め、最終的に第4のクラッチ28を遮断させる。
【0130】
S508では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第1のクラッチ10を遮断させるとともに、第1のモータ(M1)11の作動を停止させるべくバッテリ20から第1のモータ(M1)11に対する駆動電流の印加を停止させる。
【0131】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの双方が“0”となる。更に、第4のクラッチ28が遮断される際に、第4のクラッチ28のスリップ率が徐々に高くさせられるため、左前輪6の駆動トルクが急激に変化することがない。
【0132】
上記したように右後輪8と左前輪6の駆動トルクが“0”とされた場合には、ECU21が車両1の要求駆動トルクを左後輪14及び右前輪4のみに配分すべく車輪別要求駆動トルクを算出し、それらの車輪別要求駆動トルクを第2のモータコントローラ(MC2)19及び第3のモータコントローラ(MC3)26へ送信するようにしてもよい。
【0133】
第2のモータコントローラ(MC2)19及び第3のモータコントローラ(MC3)26は、ECU21から受信した車輪別要求駆動トルクに従って、第2のクラッチ16、第2のモータ(M2)17、第3のクラッチ23、第3のモータ(M3)24を制御する。
【0134】
この場合、車両1は右前輪4と左後輪14とによって駆動されることになる。すなわち、車両1の対角に配置された二つの車輪によって車両1が駆動されることになる。
【0135】
この結果、車両1において、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られることとなり、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【0136】
また、前述したS503において第4のモータ(M4)29がモータとして作動していないと判定された場合、言い換えれば、第4のモータ(M4)29が作動停止状態にある場合、或いは、第4のモータ(M4)29が発電機として作動している場合には、第1のモータコントローラ(MC1)13は、S509へ進む。
【0137】
S509では、第1のモータコントローラ(MC1)13は、第1のクラッチ10及び第4のクラッチ28を遮断させるとともに、第1のモータ(M1)11の作動を停止させるべくバッテリ20から第1のモータ(M1)11に対する駆動電流の印加を停止させる。
【0138】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの双方が“0”となる。
【0139】
上記したように右後輪8と左前輪6の駆動トルクが“0”とされた場合には、ECU21が車両1の要求駆動トルクを左後輪14及び右前輪4のみに配分すべく車輪別要求駆動トルクを算出し、それらの車輪別要求駆動トルクを第2のモータコントローラ(MC2)19及び第3のモータコントローラ(MC3)26へ送信するようにしてもよい。
【0140】
第2のモータコントローラ(MC2)19及び第3のモータコントローラ(MC3)26は、ECU21から受信した車輪別要求駆動トルクに従って、第2のクラッチ16、第2のモータ(M2)17、第3のクラッチ23、第3のモータ(M3)24を制御する。
【0141】
この場合、車両1は右前輪4と左後輪14とによって駆動されることになる。すなわち、車両1の対角に配置された二つの車輪によって車両1が駆動されることになる。
【0142】
この結果、車両1において、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られることとなり、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【0143】
このように、第1のモータコントローラ(MC1)13が第1のフェイル制御ルーチンを実行することにより、第4のモータコントローラ(MC4)31に異常が発生した場合であっても、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られるため、車両1の走行安定性の低下が抑制されることとなる。
【0144】
次に、第4のモータコントローラ(MC4)31は、図6に示すようなフェイル制御ルーチンを実行する。
【0145】
第2のフェイル制御ルーチンでは、第4のモータコントローラ(MC4)31は、先ずS601において、第1のモータコントローラ(MC1)13が異常であるか否かを判別する。
【0146】
前記S601において第1のモータコントローラ(MC1)13が正常であると判定された場合には、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S610へ進み、第4のクラッチ28及び第4のモータ(M4)29を通常通りに制御する。
【0147】
一方、前記S601において第1のモータコントローラ(MC1)13が異常であると判定された場合には、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S602へ進み、第1のモータコントローラ(MC1)13が異常である旨をECU21へ通知した後に、S603〜S609においてフェイルセーフ制御を実行する。
【0148】
この場合、ECU21は、車両1の室内に設けられた警告灯などを点灯させるようにしてもよい。
【0149】
S603では、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のモータ(M1)11がモータとして作動状態にあるか否か、すなわち、第1のモータコントローラ(MC1)13が第1のモータ(M1)11をモータとして作動させた状態で異常を発生しているか否かを判別する。
【0150】
前記S603において第1のモータ(M1)11がモータとして作動状態にあると判定された場合は、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S604へ進む。
【0151】
S604では、第4のモータコントローラ(MC4)31は、ECU21から第1のモータコントローラ(MC1)13へ送信される車輪別要求駆動トルク:TqrM1を読み込むとともに、第1のモータコントローラ(MC1)13から第1のモータ(M1)11へ印加されている駆動電流値に基づいて第1のモータ(M1)11の実トルク:TqM1を算出する。続いて、第4のモータコントローラ(MC4)31は、車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1より小さいか否かを判別する。
【0152】
前記S604において車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1より小さいと判定された場合は、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S605へ進む。
【0153】
S605では、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のモータ(M1)11から右後輪8へ伝達されるトルクが前記車輪別要求駆動トルク:TqrM1と一致するように第1のクラッチ10のスリップ制御を行う。
【0154】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの調和が維持されることになる。その結果、車両1の前後左右に配置された4つの車輪の駆動トルクの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制されることとなる。
【0155】
また、前述したS604において車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1以下であると判定された場合は、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S606へ進み、車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1とが等しいか否かを判別する。
【0156】
前記S606において車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1とが等しいと判定された場合は、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のクラッチ10の動力伝達率が100%となるように第1のクラッチ10を連結させて本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0157】
この場合、右後輪8の駆動トルクが車輪別要求駆動トルク:TqrM1と一致することになる。その結果、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両1の走行安定性の低下が抑制される。
【0158】
前記S606において車輪別要求駆動トルク:TqrM1と実トルク:TqM1とが等しくないと判定された場合、すなわち、車輪別要求駆動トルク:TqrM1が実トルク:TqM1より大きい場合には、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S607へ進む。
【0159】
S607では、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のクラッチ10のスリップ制御を行う。具体的には、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のクラッチ10のスリップ率を徐々に高めていき、最終的には第1のクラッチ10を遮断させる。
【0160】
S608では、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第4のクラッチ28を遮断させるとともに、第4のモータ(M4)29の作動を停止させる。
【0161】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの双方が“0”となる。更に、第1のクラッチ10が遮断される際に、第1のクラッチ10のスリップ率が徐々に高くさせられるため、右後輪8の駆動トルクが急激に変化することがない。
【0162】
上記したように右後輪8と左前輪6の駆動トルクが“0”とされた場合には、ECU21が車両1の要求駆動トルクを左後輪14及び右前輪4のみに配分すべく車輪別要求駆動トルクを算出し、それらの車輪別要求駆動トルクを第2のモータコントローラ(MC2)19及び第3のモータコントローラ(MC3)26へ送信するようにしてもよい。
【0163】
第2のモータコントローラ(MC2)19及び第3のモータコントローラ(MC3)26は、ECU21から受信した車輪別要求駆動トルクに従って、第2のクラッチ16、第2のモータ(M2)17、第3のクラッチ23、第3のモータ(M3)24を制御する。
【0164】
この場合、車両1は右前輪4と左後輪14とによって駆動されることになる。すなわち、車両1の対角に配置された二つの車輪によって車両1が駆動されることになる。
【0165】
この結果、車両1において、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られることとなり、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【0166】
また、前述したS603において第1のモータ(M1)11がモータとして作動していないと判定された場合、言い換えれば、第1のモータ(M1)11が作動停止状態にある場合、或いは、第1のモータ(M1)11が発電機として作動している場合には、第4のモータコントローラ(MC4)31は、S609へ進む。
【0167】
S609では、第4のモータコントローラ(MC4)31は、第1のクラッチ10及び第4のクラッチ28を遮断させるとともに、第4のモータ(M4)29の作動を停止させる。
【0168】
この場合、右後輪8の駆動トルクと左前輪6の駆動トルクとの双方が“0”となるため、ECU21が車両1の要求駆動トルクを左後輪14及び右前輪4のみに配分するようにすれば、車両1が右前輪4と左後輪14とによって駆動されることになる。すなわち、車両1の対角に配置された二つの車輪によって車両1が駆動されることになる。
【0169】
この結果、車両1において、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られることとなり、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【0170】
このように、第4のモータコントローラ(MC4)31が第2のフェイル制御ルーチンを実行することにより、第1のモータコントローラ(MC1)13に異常が発生した場合であっても、前後輪の駆動トルクの調和が図られると同時に左右輪の駆動トルクの調和が図られるため、車両1の走行安定性の低下が抑制されることとなる。
【0171】
また、第2のモータコントローラ(MC2)19と第3のモータコントローラ(MC3)26の各々も前述した第1のモータコントローラ(MC1)13及び第4のモータコントローラ(MC4)31と同様のフェイル処理を実行する。
【0172】
このように、第1のモータコントローラ(MC1)13、第2のモータコントローラ(MC2)19、第3のモータコントローラ(MC3)26、第4のモータコントローラ(MC4)31が上記したようなフェイル制御を実行することにより、4つの車輪のうちの一の車輪のモータコントローラに異常が発生した場合であっても、車両1の走行安定性の低下を抑制することが可能となる。
【0173】
【発明の効果】
本発明にかかる車両制御装置では、少なくとも二つの駆動輪の各々に電動機と動力伝達機構と制御装置とが設けられた車両において、一の駆動輪の制御装置に異常が発生した場合に、他の駆動輪の制御装置が一の駆動輪の動力伝達機構を制御することにより、一の駆動輪の駆動トルクを制御することが可能となる。
【0174】
この結果、一の駆動輪の駆動トルクと他の駆動輪の駆動トルクとの調和が図られ、以て車両の走行安定性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における車両の概略構成を示す図
【図2】第1のフェイル制御ルーチンを示すフローチャート図
【図3】第2のフェイル制御ルーチンを示すフローチャート図
【図4】他の実施の形態における車両の概略構成を示す図
【図5】他の実施の形態における第1のフェイル制御ルーチンを示すフローチャート図
【図6】他の実施の形態における第2のフェイル制御ルーチンを示すフローチャート図
【符号の説明】
1・・・車両
4・・・右前輪
6・・・左前輪
8・・・右後輪
10・・第1のクラッチ
11・・第1のモータ(M1)
13・・第1のモータコントローラ(MC1)
14・・左後輪
16・・第2のクラッチ
17・・第2のモータ(M2)
19・・第2のモータコントローラ(MC2)
21・・ECU
23・・第3のクラッチ
24・・第3のモータ(M3)
26・・第3のモータコントローラ(MC3)
28・・第4のクラッチ
29・・第4のモータ(M4)
31・・第4のモータコントローラ(MC4)
Claims (5)
- 車両に設けられる複数の車輪と、
前記車輪のうちの少なくとも二つの駆動輪の各々に設けられる電動機と、
前記電動機と前記駆動輪との間の動力伝達率を変更する動力伝達機構と、
前記駆動輪毎に設けられて各駆動輪の電動機およびまたは動力伝達機構を制御する制御装置と、
前記駆動輪のうちの一の駆動輪の制御装置に異常が発生した場合に、他の駆動輪の制御装置により前記一の駆動輪の動力伝達機構を制御させるフェイル処理手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。 - 前記駆動輪は、前記車両の左右に配置された前輪または後輪であり、
前記フェイル処理手段は、前記駆動輪の一方の制御装置に異常が発生した場合に、他方の駆動輪の制御装置によって前記一方の駆動輪の動力伝達機構を制御させることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。 - 前記駆動輪は、前記車両の前後左右に配置された車輪であり、
前記フェイル処理手段は、前記駆動輪のうちの一の車輪の制御装置に異常が発生した場合に、前記一の駆動輪と対角に位置する他の駆動輪の制御装置によって前記一の駆動輪の動力伝達機構を制御させることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。 - 前記フェイル処理手段は、前記一の駆動輪の電動機の出力が前記他の駆動輪の電動機に比して過大である場合には、前記他の駆動輪の制御装置により、前記一の駆動輪の動力伝達機構の動力伝達率を低下させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の車両制御装置。
- 前記フェイル処理手段は、前記一の駆動輪の電動機の出力が前記他の駆動輪の電動機に比して過小である場合には、前記他の駆動輪の制御装置により、前記一の駆動輪の動力伝達機構による動力伝達を遮断させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の車両制御装置。
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