JP2001323351A - 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板 - Google Patents
加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板Info
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Abstract
に、低鉄損しかも高磁束密度である無方向性電磁鋼板を
提供する。 【解決手段】 Si:1.5 〜4.0 mass%、Mn:0.0050〜2.
00mass%およびCu:0.010 〜0.1 mass%を含み、かつ
C、AlおよびNをそれぞれ、C:0.0050mass%以下、A
l:0.030 mass%以下、N:0.0030mass%以下に低減
し、残部は鉄および不可避不純物の組成に調整し、鋼板
の表面にCrを含有しない絶縁被膜を形成し、鉄損W
15/50 :3.20W/kg以下かつ磁束密度B50:(1.650+0.02
5 ×W15/50)T以上とする。
Description
器鉄心材料に用いられる無方向性電磁鋼板、特に低鉄損
かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板に関するものであ
る。
の節減という、世界的な動きの中、電気機器について
も、その高効率化が強く要望されている。また、電気機
器を小型化する観点から、特に鉄心材料の小型化に対す
る要望も高まっている。さらには、環境への配慮から、
電気機器における鉄心材料のリサイクル化への対応も急
務となっている。
化には、鉄心の素材となる電磁鋼板の磁気特性を改善す
ることが有効である。ここに、従来の無方向性電磁鋼板
の分野では、磁気特性のうち、特に鉄損を低減する手段
として、電気抵抗を増加することによって渦電流損を低
下させるために、Si、AlおよびMn等の含有量を高める手
法が、一般に用いられてきた。しかし、この手法は、磁
束密度の低下を免れることができないという、本質的な
問題を抱えていた。
でなく、併せてCやSを低減すること、あるいは特開昭
58−15143号公報に記載されているようにBを添
加したり、特開平3−281758号公報に記載されて
いるようにNiを添加したりするなど、合金成分を増加さ
せることも、一般に知られている方法である。これら合
金成分を添加する方法では、主に鉄損は改善されるもの
の、磁束密度の改善効果は小さく満足できるものではな
かった。さらに、合金添加に伴って鋼板の硬さが上昇し
て加工性が劣化するため、この無方向性電磁鋼板を加工
して電気機器に使用する場合の汎用性に乏しく、その用
途は極めて限定されたものとなっていた。
晶方位の集積度合、すなわち集合組織を改善して磁気特
性を向上させる方法が、いくつか提案されている。例え
ば、特開昭58−181822号公報には、Si: 2.8〜
4.0 mass%およびAl: 0.3〜2.0 mass%を含む鋼に200
〜500 ℃の温度範囲内で温間圧延を施し、{100 }<UV
W >組織を発達させる方法が、そして特開平3−294
422号公報には、Si:1.5 〜4.0 mass%およびAl:
0.1〜2.0 mass%を含む鋼を熱間圧延した後、1000℃以
上1200℃以下の熱延板焼鈍と圧下率:80〜90%の冷間圧
延との組み合わせによって、{100 }組織を発達させる
方法が、それぞれ開示されている。
善効果は、未だ満足できるものではなく、さらには加工
性およびリサイクル性にも問題を残していた。つまり、
鋼中にある程度以上のAlが含まれていると、まず鋼板の
硬さが上昇して加工性が阻害され、また鉄心材料をリサ
イクルしたり需要家でスクラップ処理する場合に電気炉
の電極を傷める、という問題に発展する。
タのシャフトなどを鋳造する場合、0.1 mass%以上のAl
が含まれていると、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行し
て粘性が増大し、溶鋼の鋳型内充填性が悪化するため
に、健全な鋳込みが阻害されることも問題になってい
た。
は、Si含有量が0.4 mass%程度までの低Si鋼において、
主に低コスト化を所期して商品化がなされている。しか
しながら、優れた磁気特性、つまり低鉄損かつ高磁束密
度が要求される場合、AlはSiとともに鉄損低減に必須の
成分であるために、添加することを余儀なくされてい
た。従って、優れた磁気特性を有する電磁鋼板は、リサ
イクル性に劣ることが必然であり、この種の電磁鋼板で
はリサイクル性の改善策が検討されることもなかったの
である。
て、電磁鋼板の表面に形成される絶縁被膜中のCrを除去
することが、特公昭56−36708号および同58−
50593号各公報などに開示されているが、通常の絶
縁被膜に比べて、耐食性に劣る場合がある等の問題があ
り、実用化されるに到っていない。
優れ、しかも真にリサイクル性に優れる電磁鋼板、すな
わちAl含有量が低く、またCrが含まれない絶縁被膜を有
する電磁鋼板は、それを実現するための技術が未だ確立
していないのである。
リサイクル性に優れるとともに、低鉄損しかも高磁束密
度である無方向性電磁鋼板を提供するところにある。
次の通りである。 (1) Si:1.5 〜4.0 mass%、Mn:0.0050〜2.00mass%
およびCu:0.010 〜0.1 mass%を含み、かつC、Alおよ
びNをそれぞれ、C:0.0050mass%以下、Al:0.030 ma
ss%以下、N:0.0030mass%以下に低減し、残部は鉄お
よび不可避不純物の組成に成り、鋼板の表面にCrを含有
しない絶縁被膜を有し、鉄損W15/50 :3.20W/kg以下か
つ磁束密度B50:(1.650+0.025 ×W15/50)T以上であ
ることを特徴とする加工性およびリサイクル性に優れた
低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板。
〜0.50mass%を含有することを特徴とする加工性および
リサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性
電磁鋼板。
硬さが200 HV1以下であることを特徴とする加工性およ
びリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向
性電磁鋼板。
トランスの効率を高めるためには、これらの銅損や鉄損
を低減することが必要であり、銅損および鉄損をともに
低減するためには、素材の磁束密度を高めかつ鉄損を低
減する必要がある。ところが、一般に鉄損を低減するた
めに添加する、Siなどの比抵抗増加成分は、飽和磁束密
度を低下させることから、鉄損および磁束密度を両立さ
せるのは非常に困難であった。この点、集合組織の改善
は、鉄損および磁束密度を両立させ得る優れた手段であ
るが、この手段にも自ずと限界があった。
るには、まず素材の鉄損と磁束密度とをいかにバランス
させれば電気機器の高効率化に繋がるか、を知ることが
非常に重要になる。そこで、発明者らは、最近一般的に
用いられるようになった、500 WのブラシレスDCモー
タを用いて、この鉄心に種々の素材を適用した際のモー
タ効率について調査した。ここで、モータ効率とは、D
Cモータにおける入力に対する出力の比率であり、92%
以上であれば極めて高効率と言える。
W15/50 が3.2 W/kg以下かつ磁束密度B50が(1.650 +
0.025 ×W15/50 )T以上を満足する範囲にある素材を
鉄心に適用した場合に、モータ効率が向上することを新
たに知見した。これは、素材の鉄損と磁束密度とのバラ
ンスを上記の範囲に調整することにより、機器での鉄損
と銅損とが高度にバランスした結果である。この知見
は、DCモータに限らず、AC誘導モータや小型トラン
スにおいても基本的には同じである。従って、鉄損およ
び磁束密度が上記した好適範囲を満足することが、新た
な材料開発の明確な指針になるのである。
束密度が上記範囲を満足し、さらに加工性およびリサイ
クル性をも確保し得る、無方向電磁鋼板の成分組成につ
いて鋭意検討した。まず、Alは、従来、磁気特性向上の
ために必要であるとして添加されてきたが、加工性およ
びリサイクル性を阻害することから、ここではAlを低減
することが肝要である。
て、鋼板表面の酸化を促進するために、圧延工程で圧延
ロールの磨耗を早めて圧延性を阻害したり、鋼板の硬さ
を高めるために、需要家が打ち抜き加工する際に金型の
劣化を早めて作業時間やコストを増大させる等、加工性
に関して不利な成分である。また、電気機器などのスク
ラップを利用して鋳造を行う場合に、Alが含まれている
と、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行して粘性が増大
し、溶鋼の鋳型内充填性が悪化するために、健全な鋳物
が得られないことがあり、Alを含むスクラップはリサイ
クル性に乏しいものになる。
するには、Alの含有量を低減することが有効になる。し
かしながら、一方でAlの低減は、磁気特性、とりわけ鉄
損の増大をまねくことになる。しかしながら、発明者ら
の研究によれば、Alを低減した上で、その他の鋼中成分
を適切に調整することにより、加工性およびリサイクル
性、そして磁気特性の全てを満足させ得ることが、新た
に判明した。すなわち、発明者らは、数多くの実験結果
を解析するうちに、Si量が十分にあり、かつN量が低い
場合に、Alをほとんど添加しなくても、良好な鉄損特性
が得られることを見出した。そこで、Al量とN量につい
て、系統的にその影響を明らかにするために、以下の実
験を行った。
Mn: 0.20 mass%を基本成分とし、これにSi、Nおよび
Al量を種々に変化させて含有させた、種々の鋼塊を溶製
した。これらの鋼塊を1050℃に加熱し、熱間圧延にて2.
3 mmに仕上げ、その後約1000℃で熱延板焼純を施し、焼
鈍後の鋼板を酸洗し、冷間圧延にて最終板厚の0.35mmに
仕上げたのち、約1000℃×10秒間の再結晶焼鈍を行い製
品板とした。これらの製品板から、圧延方向と平行にお
よび圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切り出し
て、JIS C2550に準拠して鉄損を測定し、その平均の鉄
損を求めた。その結果を図2に示すように、Si量が高く
かつN量が低い場合にのみ、Alが0.030 mass%以下の範
囲でも鉄損が著しく低減されることが、定量的に判明し
た。
電磁鋼板では、従来鉄損を改善するために、Alを添加し
て固有電気抵抗を増加させる手法が採用されてきた。ま
た、Alの添加は、結晶粒成長を抑制する鋼中析出物であ
るAlN を凝集粗大化させ、結晶粒の成長を促進させる効
果もある。これらの効果を得るためには、Alを一定量以
上確保することが必要であり、従来Alの含有量は少なく
とも0.1 mass%を超える範囲に規制され、通常は0.4 〜
1.0 mass%程度で含有されていた。しかし、発明者らの
上記実験によれば、従来技術の範囲よりもはるかにAl量
を低減した場合でも、N量を規制することにより、Alを
含有させた場合と同等以上に良好な集合組織が発達し鉄
損特性が向上することが、新たに見出されたのである。
た上でAlの含有量を低減することによって、良好な集合
組織が発達する理由については必ずしも明らかではない
が、発明者らは、不純物の粒界移動抑制効果に関連づけ
て以下のように考えている。すなわち、Alを低減するこ
とにより、より純鉄に近い結晶格子の配列状態へと近づ
くため、粒界構造に依存する本来的な移動速度差が顕在
化して、再結晶に伴う粒成長過程で一部の粒界のみが優
先的に移動し、{111 }、{554 }、{321 }など数多
くの磁気的に不利な結晶粒の成長が抑制され、{100 }
強度が増加する方向への集合組織変化が引き起こされる
結果、磁気特性が向上したものと考えられる。特に、十
分なSi量を含有し、かつN量を0.0030mass%以下に低減
した場合には、AlN 析出物が形成されにくくなる結果、
{100 }強度が増加する方向への粒界移動が促進される
と考えられる。
合組織を改善して磁気特性を向上する手法では、Alが減
量されるため素材のリサイクル性が改善され、また合金
元素の添加量が減少するため飽和磁束密度を高めること
ができる。併せて、合金元素の添加量が減少されると、
鋼板の硬さ上昇が抑制されるから、製品の加工性が確保
されて、汎用電気製品への適用が促進される、利点も得
られる。
減によって、磁気特性、そして加工性およびリサイクル
性を共に改善した電磁鋼板について、さらにリサイクル
性を高めることを目的として、絶縁被膜からCrを除くこ
とを検討した。まず、Crを含まない絶縁被膜として、樹
脂と無機物との混合被膜、無機被膜および樹脂被膜をそ
れぞれ電磁鋼板に適用したところ、従来のCrを含有する
絶縁被膜を適用した場合と比べて、同等かそれ以上の耐
食性を得ることができなかった。特に、腐食ばらつきが
大きく、安定した耐食性を得ることができなかった。
Crを含まない絶縁被膜を形成した際の耐食性を向上させ
るためには、鋼中成分として表層の耐食性に関与する微
量成分を制御することが効果的ではないかと考え、鋭意
検討を重ねたところ、Alを抑制した含Si鋼においてCu量
を制御することにより、Crを含まない絶縁被膜の耐食性
を向上させ得ることを、新たに知見した。
よび低Al材において、それぞれ微量成分としてのCu量を
種々に変化させた、種々の鋼塊を溶製して実験に供し
た。これらの鋼塊は1025℃に加熱し熱間圧延にて2.3 mm
厚に仕上げた。その後、1020℃で30sの熱延板焼鈍を施
し、焼鈍後の鋼板を塩酸酸洗して脱スケールした後、冷
間圧延にて最終板厚の0.35mmに仕上げた。この冷間圧延
後、約1000℃×10秒間、露点−30℃で再結晶焼鈍を行っ
た。次いで、これらの焼鈍板に、Crを含有しない絶縁被
膜とCrを含有する絶縁被膜とを、それぞれロールコータ
で目付量1.0 g/m2 で塗布したのち、200 〜300 ℃で
焼付け処理を行った。なお、Crを含有しない絶縁被膜
は、エポキシ系樹脂40mass%+シリカゾル60mass%のコ
ーティング液を塗布して形成した。また、Crを含有する
絶縁被膜は、重クロム酸塩80mass%+有機樹脂20mass%
のコーティング液を塗布して形成した。
て、JIS Z2371に準拠して塩水噴霧試験を10時間にわた
って行い、鋼板表面に発生した錆の発生面積率を、標準
試験片と比較して目視で読み取り、錆面積発生率として
評価した。その評価結果を図3に示すように、Alを抑制
した鋼板(低Al材)においてCuを添加することにより、
Crを含有しない絶縁被膜の耐食性が向上することが判明
した。
縁被膜の耐食性が向上した理由は、Siを1.5mass %以上
含有しかつAlを抑制した鋼板において、添加したCuが鋼
板表層の成分濃化現象ひいては表層酸化物の形成に影響
を及ぼし、雰囲気からの保護性に劣るCrを含有しない絶
縁被膜の耐食性を向上させたためと考えられる。特に、
Alの含有量によって、Cuの添加効果に差異が生じた理由
は明らかではないが、発明者らは次のように考えてい
る。すなわち、Cuは元来偏析元素であり、鉄表面錆の進
行を抑制する元素として知られ、一方Alは非常に酸化し
やすい元素であり、今回のような低露点焼鈍でも鋼板表
層に濃化して極表層(表面から1μm以下の深さ領域)
の組成を著しく変化させることが知られている。これら
の事項を踏まえ、今回の実験結果を検討すると、1.5 ma
ss%以上のSiを含有する鋼に、従来添加されていた0.4
mass%程度のAlは、鋼板表層に濃化して鋼板自体の耐腐
食性を向上させていたが、Alを抑制することによりその
効果が無くなる代わりに、添加したCuの表面偏析効果
が、特に耐雰囲気保護性に劣る、Crを含有しない絶縁被
膜において、耐腐食性という形で顕在化したものと考え
られる。
は、需要家での加工性を損なうことのないように、鋼板
のビッカース硬さを200 HV1以下に規制することが好ま
しい。すなわち、Alを低減して鋼板表面での酸化を抑制
して金型の早期磨耗を回避することに併せて、鋼板の硬
さを200 HV1以下に規制することによって、鋼板の加工
性が格段に改善されるのである。一方、鋼板の硬さが12
0 HV1未満になると、逆に打ち抜いた端面に、だれやつ
ぶれが発生して金型からの離脱が阻害されたり、打ち抜
き後のかえりが大きくなって鋼板の占積率などに悪影響
を及ぼす場合があるから、120 HV1以上とすることが好
ましい。
ことによって達成されるものであるが、不純物元素が多
量に存在したり、最終焼純において焼鈍温度が不十分で
あったり、あるいは焼鈍中に酸化や窒化が生じた場合な
どには、所望の硬さを安定して得るのが困難となること
がある。従って、この発明に従って不純物を低減するこ
とは勿論、製造工程における、焼鈍を過度に酸化や窒化
が生じない雰囲気にすることが有効である。なお、この
発明では、酸化や窒化の核となる鋼中Al量を低減してい
るため、他の鋼種と比較すると、酸化や窒化は生じにく
い、利点がある。
る、Sbを添加することも、鋼板の硬さを200 HV1以下に
するのに有効である。さらに、Sbの添加は、低Alの場合
のAlNの微細析出を抑制し、かつこれらの粒成長阻害作
用を抑制することにより、より磁気特性上有利な集合組
織形成を促進させるのにも有効である。これらの効果を
得るには、Sbを0.005 〜0.50mass%の範囲で添加するこ
とが好ましい。
について詳述する。まず、この発明の無方向性電磁鋼板
の成分組成としては、Si:1.5 〜4.0 mass%およびMn:
0.0050〜2.00mass%を含有することが必須である。すな
わち、Siを含有させて電気抵抗を増大させ、鉄損を低減
する必要があり、この鉄損改善のためには1.5 mass%以
上の含有が必要である。一方、Siの含有量が4.0 mass%
以上になると、磁束密度が低下することおよび製品の二
次加工性が著しく劣化することから、1.5 〜4.0 mass%
の範囲に限定する。
な成分であり、そのためには0.0050mass%以上の含有が
必要になる。一方、2.00mass%を超えると、飽和磁束密
度が低下するため、0.0050〜2.00mass%の範囲に限定と
する。
低Al化による集合組織の改善効果を十分に発揮させるた
めに、0.0050mass%以下に低減する必要がある。なお、
Cの低減は、溶鋼の段階で0.0050mass%以下としてもよ
いし、溶鋼段階で0.0050mass%をこえていても途中工程
での脱炭処理により0.0050mass%以下としてもよく、要
は再結晶焼鈍中の鋼板におけるC含有量が50ppm 以下で
あることが重要になる。
のAl量を0.030 mass%以下およびN量を0.0030mass%以
下に低減することが肝要である。すなわち、Al含有量が
0.030 mass%をこえると、製品板における集合組織が劣
化して磁束密度が低下するため、0.030 mass%以下、好
ましくは0.010 mass%以下に低減する。また、N量が0.
0030mass%をこえると、AlN 析出物が形成されて、再結
晶焼鈍時の集合組織の発達と結晶粒の成長とが抑制さ
れ、鉄損が大きく劣化するため、N量は0.0030mass%以
下、好ましくは0.0025mass%以下に低減する。
性を向上させる重要な元素である。このCuの含有量は、
上述の図3に示した実験結果から明らかなように、0.01
0mass %未満では絶縁被膜の耐食性を向上する効果が期
待できず、一方0.1 mass%をこえると、耐食性の効果は
継続するが表面欠陥が発生し易くなるため、0.010 〜0.
1 mass%の範囲とする。
時の良好な集合組織形成のために、有効な成分であり、
0.005 mass%未満ではその効果に乏しく、一方0.5 mass
%をこえると、逆に粒成長性を阻害するため、0.005 〜
0.5mass %の範囲で添加することが好ましい。
形成に有利に働くことが確認されており、これらを添加
することに問題はない。しかし、Niが2.0 mass%、Snが
1.0mass%、そしてPが0.3 mass%をこえる範囲では粒
界移動が抑制されて集合組織の形成や粒成長性が阻害さ
れるため、これらの上限値をこえない範囲で各成分を添
加する必要がある。一方、例えばS、Se、TiおよびNbな
どの不純物成分は極力低減することが望ましい。
15/50 :3.20W/kg以下かつ磁束密度B 50:(1.650 +0.
025 ×W15/50 )T以上の磁気特性を有し、しかも加工
性およびリサイクル性に優れたものとなる。
常の造塊法や連続鋳造法にてスラブを製造してもよい
し、100 mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造して
もよい。次いで、スラブは通常の方法で加熱して熱間圧
延に供するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延しても
よい。なお、薄鋳片の場合には熱間圧延しても良いし、
熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進んでもよ
い。次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、さらに必
要に応じて中間焼鈍を挟み1回以上の冷間圧延を施した
後、連続焼鈍を行い、絶縁被膜を被成する。
ら、Crを含有しないものであることが肝要である。すな
わち、Crは、被膜特性に関して、耐食性を向上させる非
常に有用な元素であるが、環境および人体に有害な物質
であるため、極力使用しないことが望ましい。現在、電
磁鋼板に適用される無機絶縁被膜には、無害の3価のCr
が利用されているが、たとえ製品に含まれるCrが無害な
3価のCrであっても、その製造工程では、6価Crを使用
するため、この製造において発生する廃液や産業廃棄物
廃等を介して、環境に悪影響を与える可能性がある。現
在、排水等の処理は十分に処置されているものの、根本
的にCrを使用しないで環境に悪影響を全く与えないこと
が、理想的である。また、Crは、一旦製品に使用された
場合、この製品をリサイクルするためには、脱Cr処理等
の余分な処置が必要となり、それ故リサイクルが敬遠さ
れ、リサイクル性が阻害されてしまう。
から、鋼自体のリサイクル性が向上した、Alを低減した
素材については、Crを含有しない絶縁被膜を適用するこ
とが、リサイクル性や環境対策上極めて有益になるので
ある。
は、シリカやアルミナと樹脂とを混合したものや、リン
酸塩と樹脂とを混合したもの、またはリン酸単体の無機
コート等が適用可能である。これらの素材に、各種被膜
特性を向上させるための微量元素、例えばB等を添加す
ることも可能である。さらに、2種類以上の被膜からな
る多層膜であってもよい。
造にて製造した。この鋼スラブを1180℃で50分間加熱
し、熱間圧延にて2.4 mm厚に仕上げたのち、1000℃×1
分の熱延板焼鈍を行い、酸洗してスケールを除去した
後、180 ℃の温度で冷間圧延を行って、0.35mmの最終板
厚に仕上げた。次いで、水素雰囲気で1000℃×10秒、露
点−25℃で再結晶焼鈍を施し、Crを含有しない半有機コ
ーティング液(シリカゾル45mass%+アクリル系樹脂55
mass%)を、目付量1.0 g/m2 になるように塗布し
て、300 ℃で焼き付けて製品とした。
平行におよび圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切
り出して、JIS C2550に準拠して磁束密度および鉄損を
測定した。また、JIS Z2371に準拠して塩水噴霧試験を
10時間にわたって行い、鋼板表面に発生した錆の発生面
積率を、事前に同面積率を測定下標準試験片との目視に
よる比較によって測定し、錆面積発生率として評価し
た。これらの測定結果を表3に示すように、この発明の
成分範囲に従うことによって、磁気特性および耐食性の
良好な製品が得られていることがわかる。
クル性に優れるとともに、低鉄損しかも高磁束密度であ
る無方向性電磁鋼板を提供することができる。
W15/50 の影響を示す図である。
響を示す図である。
である。
Claims (3)
- 【請求項1】Si:1.5 〜4.0 mass%、Mn:0.0050〜2.00
mass%およびCu:0.010 〜0.1 mass%を含み、 かつC、AlおよびNをそれぞれ、C:0.0050mass%以
下、Al:0.030 mass%以下、N:0.0030mass%以下に低
減し、 残部は鉄および不可避不純物の組成に成り、 鋼板の表面にCrを含有しない絶縁被膜を有し、 鉄損W15/50 :3.20W/kg以下かつ磁束密度B50:(1.650
+0.025 ×W15/50)T 以上であることを特徴とする加工性およびリサイクル性
に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】 請求項1において、さらにSb:0.005 〜
0.50mass%を含有する組成に成ることを特徴とする加工
性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の
無方向性電磁鋼板。 - 【請求項3】 請求項1または2において、鋼板の硬さ
が200 HV1以下であることを特徴とする加工性およびリ
サイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電
磁鋼板。
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