JP2001323352A - 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板 - Google Patents

加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板

Info

Publication number
JP2001323352A
JP2001323352A JP2000142154A JP2000142154A JP2001323352A JP 2001323352 A JP2001323352 A JP 2001323352A JP 2000142154 A JP2000142154 A JP 2000142154A JP 2000142154 A JP2000142154 A JP 2000142154A JP 2001323352 A JP2001323352 A JP 2001323352A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
mass
flux density
magnetic flux
workability
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000142154A
Other languages
English (en)
Inventor
Atsuto Honda
厚人 本田
Yasuyuki Hayakawa
康之 早川
Yuka Komori
ゆか 小森
Masaki Kono
正樹 河野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP2000142154A priority Critical patent/JP2001323352A/ja
Publication of JP2001323352A publication Critical patent/JP2001323352A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 加工性およびリサイクル性に優れるととも
に、低鉄損しかも高磁束密度である無方向性電磁鋼板を
提供する。 【解決手段】 Si:1.5 〜4.0 mass%およびMn:0.005
〜2.00mass%を含み、かつC、AlおよびNをそれぞれ、
C:0.0050mass%以下、Al:0.030 mass%以下、N:0.
0030mass%以下に低減し、残部は鉄および不可避不純物
の組成に調整し、鋼板の{100 }インバース強度と結晶
粒径(μm)との積を100 以上とするともに、鉄損W
15/50 :3.20W/kg以下かつ磁束密度B50:(1.650+0.02
5 ×W15/50)T以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主として電気機
器鉄心材料に用いられる無方向性電磁鋼板、特に低鉄損
かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、電力をはじめとする、エネルギー
の節減という、世界的な動きの中、電気機器について
も、その高効率化が強く要望されている。また、電気機
器を小型化する観点から、特に鉄心材料の小型化に対す
る要望も高まっている。さらには、環境への配慮から、
電気機器における鉄心材料のリサイクル化への対応も急
務となっている。
【0003】この電気機器の高効率化や鉄心材料の小型
化には、鉄心の素材となる電磁鋼板の磁気特性を改善す
ることが有効である。ここに、従来の無方向性電磁鋼板
の分野では、磁気特性のうち、特に鉄損を低減する手段
として、電気抵抗を増加することによって渦電流損を低
下させるために、Si、AlおよびMn等の含有量を高める手
法が、一般に用いられてきた。しかし、この手法は、磁
束密度の低下を免れることができないという、本質的な
問題を抱えていた。
【0004】一方、単にSiやAl等の含有量を高めるだけ
でなく、併せてCやSを低減すること、あるいは特開昭
58−15143号公報に記載されているようにBを添
加したり、特開平3−281758号公報に記載されて
いるようにNiを添加したりするなど、合金成分を増加さ
せることも、一般に知られている方法である。これら合
金成分を添加する方法では、主に鉄損は改善されるもの
の、磁束密度の改善効果は小さく満足できるものではな
かった。さらに、合金添加に伴って鋼板の硬さが上昇し
て加工性が劣化するため、この無方向性電磁鋼板を加工
して電気機器に使用する場合の汎用性に乏しく、その用
途は極めて限定されたものとなっていた。
【0005】また、製造プロセスを変更し、製品板の結
晶方位の集積度合、すなわち集合組織を改善して磁気特
性を向上させる方法が、いくつか提案されている。例え
ば、特開昭58−181822号公報には、Si: 2.8〜
4.0 mass%およびAl: 0.3〜2.0 mass%を含む鋼に200
〜500 ℃の温度範囲内で温間圧延を施し、{100 }<UV
W >組織を発達させる方法が、そして特開平3−294
422号公報には、Si:1.5 〜4.0 mass%およびAl:
0.1〜2.0 mass%を含む鋼を熱間圧延した後、1000℃以
上1200℃以下の熱延板焼鈍と圧下率:80〜90%の冷間圧
延との組み合わせによって、{100 }組織を発達させる
方法が、それぞれ開示されている。
【0006】しかし、これらの方法による磁気特性の改
善効果は、未だ満足できるものではなく、さらには加工
性およびリサイクル性にも問題を残していた。つまり、
鋼中にある程度以上のAlが含まれていると、まず鋼板の
硬さが上昇して加工性が阻害され、また鉄心材料をリサ
イクルしたり需要家でスクラップ処理する場合に電気炉
の電極を傷める、という問題に発展する。
【0007】さらに、鉄心のリサイクル材を用いてモー
タのシャフトなどを鋳造する場合、0.1 mass%以上のAl
が含まれていると、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行し
て粘性が増大し、溶鋼の鋳型内充填性が悪化するため
に、健全な鋳込みが阻害されることも問題になってい
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、この発明の目
的は、加工性およびリサイクル性に優れるとともに、低
鉄損しかも高磁束密度である無方向性電磁鋼板を提供す
るところにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明の要旨構成は、
次の通りである。 (1) Si:1.5 〜4.0 mass%およびMn:0.005 〜2.00mass
%を含み、かつC、AlおよびNをそれぞれ、C:0.0050
mass%以下、Al:0.030 mass%以下、N:0.0030mass%
以下に低減し、残部は鉄および不可避不純物の組成に成
り、鋼板の{100 }インバース強度と結晶粒径(μm)
との積が100 以上であり、鉄損W15/50:3.20W/kg以下
かつ磁束密度B50:(1.650+0.025 ×W15/50)T以上で
あることを特徴とする加工性およびリサイクル性に優れ
た低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板。
【0010】(2) 上記(1) において、さらにSb:0.005
〜0.50mass%を含有することを特徴とする加工性および
リサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性
電磁鋼板。
【0011】(3) 上記(1) または(2) において、鋼板の
硬さが200 HV1以下であることを特徴とする加工性およ
びリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向
性電磁鋼板。
【0012】ここで、{100 }インバース強度とは、最
終製品板における{100 }方位のX線反射面強度の、ラ
ンダム集合組織のそれに対する比を意味する。また、結
晶粒径は、鋼板の断面組織の光学顕微鏡写真を基に、線
分法により求められる。
【0013】
【発明の実施の形態】さて、電気機器のモータあるいは
トランスの効率を高めるためには、これらの銅損や鉄損
を低減することが必要であり、銅損および鉄損をともに
低減するためには、素材の磁束密度を高めかつ鉄損を低
減する必要がある。ところが、一般に鉄損を低減するた
めに添加する、Siなどの比抵抗増加成分は、飽和磁束密
度を低下させることから、鉄損および磁束密度を両立さ
せるのは非常に困難であった。この点、集合組織の改善
は、鉄損および磁束密度を両立させ得る優れた手段であ
るが、この手段にも自ずと限界があった。
【0014】このような状況の下、新たに材料を開発す
るには、まず素材の鉄損と磁束密度とをいかにバランス
させれば電気機器の高効率化に繋がるか、を知ることが
非常に重要になる。そこで、発明者らは、最近一般的に
用いられるようになった、500 WのブラシレスDCモー
タを用いて、この鉄心に種々の素材を適用した際のモー
タ効率について調査した。ここで、モータ効率とは、D
Cモータにおける入力に対する出力の比率であり、92%
以上であれば極めて高効率と言える。
【0015】その調査結果を、図1に示すように、鉄損
15/50 が3.2 W/kg以下かつ磁束密度B50が(1.650 +
0.025 ×W15/50 )T以上を満足する範囲にある素材を
鉄心に適用した場合に、モータ効率が向上することを新
たに知見した。これは、素材の鉄損と磁束密度とのバラ
ンスを上記の範囲に調整することにより、機器での鉄損
と銅損とが高度にバランスした結果である。この知見
は、DCモータに限らず、AC誘導モータや小型トラン
スにおいても基本的には同じである。従って、鉄損およ
び磁束密度が上記した好適範囲を満足することが、新た
な材料開発の明確な指針になるのである。
【0016】次に、上記の知見を踏まえ、鉄損および磁
束密度が上記範囲を満足し、さらに加工性およびリサイ
クル性をも確保し得る、無方向電磁鋼板の成分組成につ
いて鋭意検討した。まず、Alは、従来、磁気特性向上の
ために必要であるとして添加されてきたが、加工性およ
びリサイクル性を阻害することから、ここではAlを低減
することが肝要である。
【0017】すなわち、Alは、鋼板の製造工程におい
て、鋼板表面の酸化を促進するために、圧延工程で圧延
ロールの磨耗を早めて圧延性を阻害したり、鋼板の硬さ
を高めるために、需要家が打ち抜き加工する際に金型の
劣化を早めて作業時間やコストを増大させる等、加工性
に関して不利な成分である。また、電気機器などのスク
ラップを利用して鋳造を行う場合に、Alが含まれている
と、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行して粘性が増大
し、溶鋼の鋳型内充填性が悪化するために、健全な鋳物
が得られないことがあり、Alを含むスクラップはリサイ
クル性に乏しいものになる。
【0018】従って、加工性およびリサイクル性を向上
するには、Alの含有量を低減することが有効になる。し
かしながら、一方でAlの低減は、磁気特性、とりわけ鉄
損の増大をまねくことになる。しかしながら、発明者ら
の研究によれば、Alを低減した上で、その他の鋼中成分
を適切に調整することにより、加工性およびリサイクル
性、そして磁気特性の全てを満足させ得ることが、新た
に判明した。すなわち、発明者らは、数多くの実験結果
を解析するうちに、Si量が十分にあり、かつN量が低い
場合に、Alをほとんど添加しなくても、良好な鉄損特性
が得られることを見出した。そこで、Al量とN量につい
て、系統的にその影響を明らかにするために、以下の実
験を行った。
【0019】まず、成分としてC:0.002 mass%および
Mn: 0.20 mass%を基本成分とし、これにSi、Nおよび
Al量を種々に変化させて含有させた、種々の鋼塊を溶製
した。これらの鋼塊を1050℃に加熱し、熱間圧延にて2.
3 mmに仕上げ、その後約1000℃で熱延板焼純を施し、焼
鈍後の鋼板を酸洗し、冷間圧延にて最終板厚の0.35mmに
仕上げたのち、約1000℃×10秒間の再結晶焼鈍を行い製
品板とした。これらの製品板から、圧延方向と平行にお
よび圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切り出し
て、JIS C2550に準拠して鉄損を測定し、その平均の鉄
損を求めた。その結果を図2に示すように、Si量が高く
かつN量が低い場合にのみ、Alが0.030 mass%以下の範
囲でも鉄損が著しく低減されることが、定量的に判明し
た。
【0020】上述したように、Si量の高い高級無方向性
電磁鋼板では、従来鉄損を改善するために、Alを添加し
て固有電気抵抗を増加させる手法が採用されてきた。ま
た、Alの添加は、結晶粒成長を抑制する鋼中析出物であ
るAlN を凝集粗大化させ、結晶粒の成長を促進させる効
果もある。これらの効果を得るためには、Alを一定量以
上確保することが必要であり、従来Alの含有量は少なく
とも0.1 mass%を超える範囲に規制され、通常は0.4 〜
1.0 mass%程度で含有されていた。しかし、発明者らの
上記実験によれば、従来技術の範囲よりもはるかにAl量
を低減した場合でも、N量を規制することにより、Alを
含有させた場合と同等以上に良好な集合組織が発達し鉄
損特性が向上することが、新たに見出されたのである。
【0021】このように素材成分において、Nを低減し
た上でAlの含有量を低減することによって、良好な集合
組織が発達する理由については必ずしも明らかではない
が、発明者らは、不純物の粒界移動抑制効果に関連づけ
て以下のように考えている。すなわち、Alを低減するこ
とにより、より純鉄に近い結晶格子の配列状態へと近づ
くため、粒界構造に依存する本来的な移動速度差が顕在
化して、再結晶に伴う粒成長過程で一部の粒界のみが優
先的に移動し、{111 }、{554 }、{321 }など数多
くの磁気的に不利な結晶粒の成長が抑制され、{100 }
強度が増加する方向への集合組織変化が引き起こされる
結果、磁気特性が向上したものと考えられる。特に、十
分なSi量を含有し、かつN量を0.0030mass%以下に低減
した場合には、AlN 析出物が形成されにくくなる結果、
{100 }強度が増加する方向への粒界移動が促進される
と考えられる。
【0022】このように、Alを多量添加することなく集
合組織を改善して磁気特性を向上する手法では、Alが減
量されるため素材のリサイクル性が改善され、また合金
元素の添加量が減少するため飽和磁束密度を高めること
ができる。併せて、合金元素の添加量が減少されると、
鋼板の硬さ上昇が抑制されるから、製品の加工性が確保
されて、汎用電気製品への適用が促進される、利点も得
られる。
【0023】次に、発明者らは、上記のAlおよびNの低
減による効果をさらに高めることを目的として、鋼板の
集合組織について詳細に検討した。この結果、電磁鋼板
の集合組織の指標となる{100 }インバース強度および
結晶粒径を高度に規定することによって、鉄損および磁
束密度の改善をより安定して図れることを、新たに見出
した。
【0024】すなわち、Si、AlおよびN量を所定の範囲
に規定した成分組成であっても、磁束密度B50が図1に
示した適合域から外れる場合が散見されたことから、こ
の原因を明らかにするために、Si:1.5 〜3.5 mass%、
Al:0.0002〜0.0150mass%およびN:0.0020mass%を含
む、種々の鋼塊を溶製して実験に供した。そして、これ
らの鋼塊を、1100℃に加熱してから熱間圧延にて2.4 mm
厚に仕上げた後、種々の条件で熱延板焼鈍を施し、鋼板
を酸洗してから、冷間圧延にて最終板厚の0.35mmに仕上
げた。次いで、冷間圧延後、種々の雰囲気において、 7
00〜1100℃の温度域で10秒間の再結晶焼鈍を行い製品板
とした。かくして得られた製品板から、圧延方向と平行
におよび圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切り出
して、JIS C2550に準拠して磁束密度および鉄損を測定
し、その平均の磁束密度および鉄損を求めた。また、各
鋼板について、その表層付近の{100 }インバース強度
をX線測定により求めるとともに、結晶粒径を鋼板断面
における光学顕微鏡の組織観察に基づいて、線分法によ
り求めた。その結果は、磁束密度および鉄損はB50−1.
635 −0.025 ×W15/50に整理した上で、{100 }インバ
ース強度および結晶粒径の積との関係として、図3に示
す。
【0025】図3に示すように、{100 }インバース強
度および結晶粒径の積が100 以上の場合に、安定してB
50≧1.650 +0.025 ×W15/50の特性が得られることが判
明した。この理由は必ずしも明らかではないが、発明者
らは次のように考えている。すなわち、{100 }インバ
ース強度が高いことが磁気特性には有利であるのは知ら
れているが、この発明に従ってAlを低減した特殊な材料
においては、{100 }インバース強度を高めるととも
に、結晶粒径に関する要件も満足させることによって、
磁気特性の向上が安定して得られたところから、{100
}インバース強度と結晶粒径とのバランスが適正に保
たれるときに、はじめて安定した磁気特性が得られるも
のと、考えられる。
【0026】さらに、この発明の無方向性電磁鋼板で
は、需要家での加工性を損なうことのないように、鋼板
のビッカース硬さを200 HV1以下に規制することが好ま
しい。すなわち、Alを低減して鋼板表面での酸化を抑制
して金型の早期磨耗を回避することに併せて、鋼板の硬
さを200 HV1以下に規制することによって、鋼板の加工
性が格段に改善されるのである。一方、鋼板の硬さが12
0 HV1未満になると、逆に打ち抜いた端面に、だれやつ
ぶれが発生して金型からの離脱が阻害されたり、打ち抜
き後のかえりが大きくなって鋼板の占積率などに悪影響
を及ぼす場合があるから、120 HV1以上とすることが好
ましい。
【0027】この鋼板硬さの規制は、主にAlを低減する
ことによって達成されるものであるが、不純物元素が多
量に存在したり、最終焼純において焼鈍温度が不十分で
あったり、あるいは焼鈍中に酸化や窒化が生じた場合な
どには、所望の硬さを安定して得るのが困難となること
がある。従って、この発明に従って不純物を低減するこ
とは勿論、製造工程における、焼鈍を過度に酸化や窒化
が生じない雰囲気にすることが有効である。なお、この
発明では、酸化や窒化の核となる鋼中Al量を低減してい
るため、他の鋼種と比較すると、酸化や窒化は生じにく
い、利点がある。
【0028】また、酸化や窒化に対する抑制効果のあ
る、Sbを添加することも、鋼板の硬さを200 HV1以下に
するのに有効である。さらに、Sbの添加は、低Alの場合
のAlNの微細析出を抑制し、かつこれらの粒成長阻害作
用を抑制することにより、より磁気特性上有利な集合組
織形成を促進させるのにも有効である。これらの効果を
得るには、Sbを0.005 〜0.50mass%の範囲で添加するこ
とが好ましい。
【0029】以下に、この発明の各構成要件の限定理由
について詳述する。まず、この発明の無方向性電磁鋼板
の成分組成としては、Si:1.5 〜4.0 mass%およびMn:
0.005 〜2.00mass%を含有することが必須である。すな
わち、Siを含有させて電気抵抗を増大させ、鉄損を低減
する必要があり、この鉄損改善のためには1.5 mass%以
上の含有が必要である。一方、Siの含有量が4.0 mass%
以上になると、磁束密度が低下することおよび製品の二
次加工性が著しく劣化することから、1.5 〜4.0 mass%
の範囲に限定する。
【0030】Mnは、良好な熱間加工性を得るために必要
な成分であり、そのためには0.005mass%以上の含有が
必要になる。一方、2.00mass%を超えると、飽和磁束密
度が低下するため、0.005 〜2.00mass%の範囲に限定と
する。
【0031】また、Cは、磁気時効劣化を抑制し、かつ
低Al化による集合組織の改善効果を十分に発揮させるた
めに、0.0050mass%以下に低減する必要がある。なお、
Cの低減は、溶鋼の段階で0.0050mass%以下としてもよ
いし、溶鋼段階で0.0050mass%をこえていても途中工程
での脱炭処理により0.0050mass%以下としてもよく、要
は再結晶焼鈍中の鋼板におけるC含有量が50ppm 以下で
あることが重要になる。
【0032】次に、優れた磁気特性を得るために、鋼板
のAl量を0.030 mass%以下およびN量を0.0030mass%以
下に低減することが肝要である。すなわち、Al含有量が
0.030 mass%をこえると、製品板における集合組織が劣
化して磁束密度が低下するため、0.030 mass%以下、好
ましくは0.010 mass%以下に低減する。また、N量が0.
0030mass%をこえると、AlN 析出物が形成されて、再結
晶焼鈍時の集合組織の発達と結晶粒の成長とが抑制さ
れ、鉄損が大きく劣化するため、N量は0.0030mass%以
下、好ましくは0.0025mass%以下に低減する。
【0033】また、Sbは、AlN 析出形態および粒界移動
時の良好な集合組織形成のために、有効な成分であり、
0.005 mass%未満ではその効果に乏しく、一方0.5 mass
%をこえると、逆に粒成長性を阻害するため、0.005 〜
0.5mass %の範囲で添加することが好ましい。
【0034】なお、Ni、Sn、Cu、PおよびCrなども、集
合組織の形成に有利に働くことが確認されており、これ
らを添加することに問題はない。しかし、Niが2.0 mass
%、Snが1.0 mass%、Cuが1.0 mass%、Pが0.3 mass
%、そしてCrが3.0 mass%をこえる範囲では粒界移動が
抑制されて集合組織の形成や粒成長性が阻害されるた
め、これらの上限値をこえない範囲で各成分を添加する
必要がある。
【0035】以上の成分組成を有する鋼板は、鉄損W
15/50 :3.20W/kg以下かつ磁束密度B 50:(1.650 +0.
025 ×W15/50 )T以上の磁気特性を有し、しかも加工
性およびリサイクル性に優れたものとなる。
【0036】さらに、優れた磁気特性を安定して得るた
めに、鋼板の{100 }インバース強度と結晶粒径(μ
m)との積が100 以上とすることが肝要である。なぜな
ら、図3に示したように、磁束密度B50を安定して(1.
650 +0.025 ×W15/50 )T以上にするには、上記積を
100 以上とする必要があるからである。
【0037】なお、結晶粒径は、30μm未満では鉄損が
劣化し、一方500 μmをこえると加工性が劣化するため
に、30〜500 μmの範囲内にすることが好ましい。同様
に、{100 }インバース強度は、0.1 未満では鉄損およ
び磁束密度を劣化するため、0.1 以上とすることが好ま
しい。
【0038】ちなみに、上記した成分組成の溶鋼は、通
常の造塊法や連続鋳造法にてスラブを製造してもよい
し、100 mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造して
もよい。次いで、スラブは通常の方法で加熱して熱間圧
延に供するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延しても
よい。なお、薄鋳片の場合には熱間圧延しても良いし、
熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進んでもよ
い。次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、さらに必
要に応じて中間焼鈍を挟み1回以上の冷間圧延を施した
後、連続焼鈍を行い、必要に応じて絶縁コーティングを
施す。積層した鋼板の鉄損を改善するために、鋼板表面
に絶縁コーティングを施すが、この目的のためには、2
種類以上の被膜からなる多層膜であってもよいし、樹脂
等を混合させたコーティングを施してもよい。
【0039】ここで、上記の製造工程において、結晶粒
径と{100 }インバース強度との積を100 以上に制御す
るために、冷間圧延前の結晶組織を均一な再結晶組織と
するとともに、最終の焼鈍時には、その昇温速度および
到達温度を管理し、再結晶および粒成長が十分に行われ
るように、注意を払う必要がある。同様に、冷間圧延時
の鋼板温度を管理することも、結晶粒径と{100 }イン
バース強度との積を100 以上に制御するために有効であ
り、その際の温度は80℃以上とすることが好ましい。
【0040】
【実施例】実施例1 表1に示す成分組成に成る鋼スラブを連続鋳造にて製造
した。この鋼スラブを1150℃で50分間加熱し、熱間圧延
にて2.6 mm厚に仕上げたのち、980 ℃×1分の熱延板焼
鈍を行い、酸洗してスケールを除去した後、180 ℃の温
度で冷間圧延を行って、鋼板Gを0.20mm厚に仕上げた以
外は、全ての鋼板を0.35mmの最終板厚に仕上げた。次い
で、水素雰囲気で1015℃×30秒の再結晶焼鈍を施し、半
有機コーティング液を塗布して300 ℃で焼き付けて製品
とした。なお、再結晶焼鈍時の昇温速度を制御すること
によって、集合組織を適宜制御した。
【0041】かくして得られた製品板から、圧延方向と
平行におよび圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切
り出して、JIS C2550に準拠して磁束密度および鉄損を
測定した。また、各鋼板について、その表層付近の{10
0 }インバース強度をX線測定により求めるとともに、
結晶粒径を鋼板断面における光学顕微鏡の組織観察に基
づいて、線分法により求めた。これらの測定結果を表2
に示すように、この発明の成分範囲に従うことによっ
て、磁気特性の良好な製品が得られていることがわか
る。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】実施例2 表3に示す成分組成に成る鋼スラブを連続鋳造にて製造
した。この鋼スラブを1150℃で50分間加熱し、熱間圧延
にて2.6 mm厚に仕上げたのち、980 ℃×1分の熱延板焼
鈍を行い、酸洗してスケールを除去した後、表4に示す
種々の温度で冷間圧延を行って0.35mmの最終板厚に仕上
げた。次いで、水素雰囲気で1015℃×30秒の再結晶焼鈍
を施し、半有機コーティング液を塗布して300 ℃で焼き
付けて製品とした。
【0045】かくして得られた製品板から、圧延方向と
平行におよび圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切
り出して、JIS C2550に準拠して磁束密度および鉄損を
測定した。また、各鋼板について、その表層付近の{10
0 }インバース強度をX線測定により求めるとともに、
結晶粒径を鋼板断面における光学顕微鏡の組織観察に基
づいて、線分法により求めた。これらの測定結果を表4
に併記するように、この発明の成分範囲に従うことによ
って、磁気特性の良好な製品が得られていることがわか
る。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【発明の効果】この発明によれば、加工性およびリサイ
クル性に優れるとともに、低鉄損しかも高磁束密度であ
る無方向性電磁鋼板を安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 モータ効率に及ぼす磁束密度B50および鉄損
15/50 の影響を示す図である。
【図2】 鉄損W15/50 に及ぼすAl、SiおよびN量の影
響を示す図である。
【図3】 磁気特性に及ぼす結晶粒径および{100 }イ
ンバース強度の影響を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 小森 ゆか 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 河野 正樹 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 5E041 AA02 AA19 CA02 CA04 NN01 NN06 NN13 NN15

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Si:1.5 〜4.0 mass%およびMn:0.005 〜
    2.00mass%を含み、 かつC、AlおよびNをそれぞれ、C:0.0050mass%以
    下、Al:0.030 mass%以下、N:0.0030mass%以下に低
    減し、 残部は鉄および不可避不純物の組成に成り、 鋼板の{100 }インバース強度と結晶粒径(μm)との
    積が100 以上であり、 鉄損W15/50 :3.20W/kg以下かつ磁束密度B50:(1.650
    +0.025 ×W15/50)T 以上であることを特徴とする加工性およびリサイクル性
    に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、さらにSb:0.005 〜
    0.50mass%を含有する組成に成ることを特徴とする加工
    性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の
    無方向性電磁鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼板の硬さ
    が200 HV1以下であることを特徴とする加工性およびリ
    サイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電
    磁鋼板。
JP2000142154A 2000-05-15 2000-05-15 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板 Pending JP2001323352A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000142154A JP2001323352A (ja) 2000-05-15 2000-05-15 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000142154A JP2001323352A (ja) 2000-05-15 2000-05-15 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001323352A true JP2001323352A (ja) 2001-11-22

Family

ID=18649175

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000142154A Pending JP2001323352A (ja) 2000-05-15 2000-05-15 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001323352A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012177188A (ja) * 2011-01-31 2012-09-13 Kobe Steel Ltd 永久磁石モータ用ロータ鉄心
WO2018079059A1 (ja) * 2016-10-27 2018-05-03 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2018135414A1 (ja) * 2017-01-17 2018-07-26 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2020139198A (ja) * 2019-02-28 2020-09-03 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012177188A (ja) * 2011-01-31 2012-09-13 Kobe Steel Ltd 永久磁石モータ用ロータ鉄心
WO2018079059A1 (ja) * 2016-10-27 2018-05-03 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JPWO2018079059A1 (ja) * 2016-10-27 2018-10-25 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
US11056256B2 (en) 2016-10-27 2021-07-06 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet and method of producing same
WO2018135414A1 (ja) * 2017-01-17 2018-07-26 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2018115362A (ja) * 2017-01-17 2018-07-26 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
TWI710647B (zh) * 2017-01-17 2020-11-21 日商杰富意鋼鐵股份有限公司 無方向性電磁鋼板
US11286537B2 (en) 2017-01-17 2022-03-29 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet and method of producing same
JP2020139198A (ja) * 2019-02-28 2020-09-03 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板
JP7284383B2 (ja) 2019-02-28 2023-05-31 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4126479B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
KR20180087374A (ko) 무방향성 전기 강판, 및 무방향성 전기 강판의 제조 방법
JPWO2003002777A1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2020136993A1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2004013365A1 (ja) 無方向性電磁鋼板、回転機用部材および回転機
JP2008050686A (ja) 強度と磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法
JP2008127612A (ja) 分割コア用無方向性電磁鋼板
JP2012046806A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
EP3358027A1 (en) Non-oriented electromagnetic steel sheet and manufacturing method of same
JP2010024509A (ja) 高強度無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4319889B2 (ja) 全周磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP4358550B2 (ja) 圧延方向とその板面内垂直方向磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2001323344A (ja) 加工性およびリサイクル性に優れた無方向性電磁鋼板
JP2001335897A (ja) 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板
JP2001323347A (ja) 加工性、リサイクル性および歪み取り焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板
JP4258951B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP2001323352A (ja) 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板
JP4186384B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP2005002401A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0841542A (ja) 磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JP4258952B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
CN113166871A (zh) 无取向电工钢板及其制造方法
JP2002146493A (ja) 機械強度特性と磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2003013190A (ja) 高級無方向性電磁鋼板
JP2001323349A (ja) 加工性およびリサイクル性に優れた低鉄損かつ高磁束密度の無方向性電磁鋼板