JPWO2017130492A1 - ポリカーボネート樹脂組成物、熱線遮蔽成形体および熱線遮蔽積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
当該温度上昇を解消するために、近年、各種建築物や輸送機器の窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等の製造、建設分野では、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽することにより、明るさを維持しながら室内等の温度上昇を抑制する機能を有する、熱線遮蔽機能を有する成形体への需要が急増している。
その上、当該熱線遮蔽板においては、透明成形体と熱線反射フィルムとの接着性が良くないので、経時変化により透明成形体と熱線反射フィルムとの剥離が生じる、といった欠点も有している。
そして、複合タングステン酸化物微粒子を、樹脂等の高分子媒体に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体の紫外線による色調変化の現象は、高分子媒体に紫外線が照射された際、当該紫外線のエネルギーによって高分子鎖が切断されて活性な有害ラジカルが次々に発生し、高分子の劣化が連鎖的に進み、これらの有害ラジカルが複合タングステン酸化物微粒子に還元的に作用し、新たに5価のタングステンが増加するに伴って着色濃度が高くなることを知見した。
ここで、上記着色防止剤のうち、リン系着色防止剤はリンを含有する着色防止剤であり、リンを含むリン系官能基を備えた化合物が好ましいとされ、リン系官能基には、3価と5価のリンを含むものがあり、下記の式(1)で3価のリンを含むリン系官能基を備えたリン系着色防止剤、式(2)で5価のリンを含むリン系官能基を備えたリン系着色防止剤の一般式が例示されている。
[尚、式(1)および式(2)において、x、y、zは、0または1の値をとる。また、R1、R2およびR3は、一般式CmHnで表される直鎖、環状、もしくは分岐構造のある炭化水素基、または、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、または、水素原子である。さらに、yまたはzが1の場合には、R2またはR3は、金属原子でもよい。]
また、ホスフィン基等の3価のリンを含有するリン系官能基は、主として過酸化物分解機能、すなわち、P原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解し、過酸化物が分解してラジカル化する反応を阻害する機能を有していると考えられる。
また、特許文献14には、ポリカーボネート樹脂の重合反応終了後、樹脂の溶融安定性を良好なものとするため、ヒンダードフェノール系化合物が酸化防止剤として提案されており、特許文献15には、ポリカーボネート樹脂製造に際し、着色防止を目的としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を加えることが提案されている。
当該知見に基づき、本発明者らは、赤外線遮蔽材料微粒子分散体の色調変化、透過率の低下を、紫外線エネルギーによる高分子材料の劣化による有害ラジカル発生に起因するものとして捉え、上述した有害ラジカルの活性を抑制するために、ヒンダードアミン系光安定剤や、リン系着色防止剤等の着色防止剤を添加することが有効である等、の対策を開示してきた。
当該研究の結果、検討対象を、赤外線遮蔽機能を有する赤外線遮蔽材料微粒子へ広げ、上述した紫外線エネルギーだけでなく、熱可塑性樹脂シート材や成形体が太陽光を受けた際に、当該赤外線遮蔽材料微粒子が発生する熱や、空気中の水分、酸素が当該赤外線遮蔽材料微粒子へ与える影響までも考慮した上での、経時的な可視光透過率の低下、熱線遮蔽機能の低下について検討することに想到した。
そして、赤外線遮蔽材料微粒子として複合タングステン酸化物微粒子(本発明において便宜の為、「(A)」という符号を付記する場合がある。)を含有し、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(本明細書において便宜の為、「(C)」という符号を付記する場合がある。)を用いた樹脂組成物や、当該樹脂組成物を用いた熱線遮蔽成形体に、耐候性改良剤(本明細書において便宜の為、「(B)」という符号を付記する場合がある。)を所定量添加することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明に至った。
ここで、耐候性改良剤(B)の形態として、亜リン酸エステル化合物を含むもの(本明細書において便宜の為、「(B1)」という符号を付記する場合がある。)、亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸系安定剤および硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(本明細書において便宜の為、「(B2)」という符号を付記する場合がある。)、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(本明細書において便宜の為、「(B3)」という符号を付記する場合がある。)、のいずれかが好ましいことも知見した。
複合タングステン酸化物微粒子(A)と、耐候性改良剤(B)と、ポリカーボネート樹脂(C)とを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)が、一般式MxWOy(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記耐候性改良剤(B)が、亜リン酸エステル化合物を含むもの(B1)、
または、亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸系安定剤および硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B2)、
または、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B3)、のいずれかであり、
前記耐候性改良剤(B)の添加量が、前記複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
第2の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散粒子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
第3の発明は、
前記亜リン酸エステル化合物の構造が、一般式(3)で示されることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
[但し、一般式(3)中、R1、R2、R4、およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を示す。
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示し、
Xは、単なる結合、硫黄原子または式(3−1)で示される2価の残基を示し、
(但し、式(3−1)中、R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基を示す。)
Aは炭素数2〜8のアルキレン基または式(3−2)で示される2価の残基を示し、
(但し、式(3−2)中、R7は、単なる結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素原子側に結合していることを示す。)
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
第4の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)を示す一般式MxWOyのM元素が、Cs、Rbから選ばれる1種以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
第5の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)が、六方晶であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
第6の発明は、
第1〜第5の発明のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物と、ポリカーボネート樹脂(C)、または、ポリカーボネート樹脂(C)と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂との、溶融混練物の成形体であることを特徴とする熱線遮蔽成形体である。
第7の発明は、
第6の発明に記載の熱線遮蔽成形体が、他の透明成形体上に積層されていることを特徴とする熱線遮蔽積層体である。
さらに詳しくは、複合タングステン酸化物微粒子が、一般式MxWOy(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子である。そして、耐候性改良剤が、亜リン酸エステル化合物を含むもの(B1)、または、亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸系安定剤および硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B2)、または、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B3)、のいずれかであり、当該耐候性改良剤(B)の添加量が、上記複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、0.1〜20重量部であることを特徴としている。
以下、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物、それを用いた熱線遮蔽成形体および熱線遮蔽積層体について、(1)複合タングステン酸化物微粒子(A)、(2)耐候性改良剤(B)、(3)ポリカーボネート樹脂(C)、(4)熱線遮蔽成形体、(5)熱線遮蔽積層体、の順で詳細に説明する。
(a)本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の組成、結晶構造
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子(A)は、熱線遮蔽効果を発現する成分であり、一般式MxWOy(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で示される複合タングステン酸化物微粒子である。
粒子による光の散乱を低減することを重視するのであれば、本発明に用いる複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。その理由は、分散粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減される結果、熱線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できる。即ち、分散粒子の分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上するからである。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。なお、本発明において、微粒子の分散粒子径とは、媒体中に分散している微粒子が凝集して生成した凝集粒子の径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することができる。例えば、微粒子分散液から微粒子の単体や凝集体が存在する状態のサンプルを採取し、当該サンプルを、動的光散乱法を原理とした粒度分布計を用いて測定し求めることができる。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、赤外線吸収特性を有している。この結果、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物、それを用いた熱線遮蔽成形体および熱線遮蔽積層体は、当該複合タングステン酸化物微粒子を含有することにより、赤外領域、特に近赤外領域の光の透過を抑制することができ、熱線遮蔽能を発揮することができる。
また、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の可視領域における光の吸光係数が、近赤外領域の吸光係数と比較して非常に小さいため、近赤外領域の光の透過を十分に抑制したときでも、可視領域の光に対して高い透過性を保つことができる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物に用いる耐候性改良剤(B)は、
亜リン酸エステル化合物を含むもの(B1)、
亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸系安定剤および硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B2)、
ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B3)、という3つの構成(添加形態と記す場合がある)のいずれかであることが好ましい。
前記耐候性改良剤(B)の添加量が、前記複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して0.1重量部以上であれば、所望の耐候性改良効果を得ることができ好ましい。一方、当該添加量が20重量部以下であれば、成形体の機械的強度の低下が懸念されず好ましい。
即ち、前記所定量の耐候性改良剤(B)を、上述したポリカーボネート樹脂組成物の構成とすることにより、紫外線エネルギーだけでなく、太陽光を受けた際に発生する熱や空気中の水分、酸素の影響を受けて起こる複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物の耐候性劣化が抑制される。この結果、耐候性に優れたポリカーボネート樹脂組成物や、当該ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造された耐候性に優れた熱線遮蔽成形体、および、熱線遮蔽積層体を得ることができるのである。
具体的には、ポリカーボネート樹脂の加工時や重合時における熱分解による色相や物性の低下を抑制する為に、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト等のリン系安定剤を、ポリカーボネートに含有させる方法が、特許文献11,12に提案されている。
ところが、当該リン系安定剤をポリカーボネート樹脂に含有させると、時間の経過と伴にポリカーボネート組成物が白濁するという問題があった。
この問題に関して、前記一般式(3)で示される亜リン酸エステル化合物を配合することで、著しく優れた耐白濁性が得られるのみならず、優れた耐熱分解性、長期安定性を示すことが特許文献13に提案されている。
一方、本発明は、複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物が、長い時間をかけて太陽光線や空気中の湿度等の影響を受け、含まれている複合タングステン酸化物微粒子の光学的特性が劣化していくことを抑制して、耐候性を向上させるものである。ところが、本発明と目的が異なる特許文献11〜13においては、当該複合タングステン酸化物微粒子の耐候性を向上させることに係る亜リン酸エステル化合物やリン系安定剤の使用と、その効果とについては、記載も示唆もないものであった。
即ち、本発明者らは独自の研究により、前記一般式(3)で示される亜リン酸エステル化合物が、複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物の耐候性を向上させるという効果を、初めて知見したものである。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物に用いる亜リン酸エステル化合物(添加形態B1、または、B2)は、一般式(3)で示される化合物である。
一般式(3)中において、R1、R2、R4、およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を示す。
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。
Xは、単なる結合、硫黄原子または式(3−1)で示される2価の残基を示す。
(式(3−1)中において、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基を示す。)
Aは炭素数2〜8のアルキレン基または式(3−2)で示される2価の残基を示す。
(式(3−2)中において、R7は単なる結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は酸素原子側に結合していることを示す。)
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。
上記一般式(3)で示される亜リン酸エステル化合物において、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を示す。
前記炭素数5〜12のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基などが挙げられる。 前記炭素数5〜12のアルキルシクロアルキル基としては、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
前記炭素数7〜12のフェニル基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示すが、炭素数1〜8のアルキル基としては、R1、R2、R4、R5において上述したのと同様の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。R3は、水素原子または、R2において上記したと同様の炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基などであることがさらに好ましい。
Xは、単なる結合、硫黄原子または式(3−1)で示される2価の残基を示す。
(式中、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基を示す。)
式(3−1)で示される2価の残基において、R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基を示すが、ここで炭素数1〜8のアルキル基および炭素数5〜12のシクロアルキル基としては、(i)R1、R2、R4およびR5において上述したものと同様のアルキル基およびシクロアルキル基がそれぞれ例示される。
Xは、単なる結合、メチレン基またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等が置換したメチレン基であることが好ましく、単なる結合であることがさらに好ましい。
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基、または、式(3−2)で示される2価の残基を示す。
炭素数2〜8のアルキレン基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられ、プロピレン基であることがさらに好ましい。
式(3−2)で示される2価の残基は、酸素原子とベンゼン核とに結合しているが、*は酸素原子と結合していることを示している。
(式中、R7は、単なる結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素原子側に結合していることを示す。)
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、(i)R1、R2、R4およびR5において説明したものと同様のアルキル基が、好ましく挙げられる。
炭素数1〜8のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、t−ペントキシ基、i−オクトキシ基、t−オクトキシ基、2−エチルヘキトキシ基などが、好ましく挙げられる。
炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えばベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α、α−ジメチルベンジルオキシ基などが、好ましく挙げられる。
Y、Zは、例えば、Yがヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、Zが水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であってもよいし、Zがヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、Yが水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であってもよい。
前記一般式(3)で示される亜リン酸エステル化合物の中でも、R1およびR4がt−アルキル基、シクロヘキシルまたは1−メチルシクロヘキシル基であり、R2が炭素数1〜5のアルキル基であり、R5が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、R3が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xが単なる結合であり、Aが炭素数2〜8のアルキレン基であることが、特に好ましい。
本発明に係る、複合タングステン酸化物微粒子、ポリカーボネート樹脂、および、耐候性改良剤を含むポリカーボネート樹脂組成物においては、当該耐候性改良剤として、上述した亜リン酸エステル化合物とヒンダードフェノール系安定剤とを含むもの(添加形態B2)、または、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(添加形態B3)、を用いる構成も好ましい。
当該構成を採ることにより、上述した太陽光線を受けた際に発生する熱や空気中の水分、酸素の影響を受けて起こる複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物の耐候性劣化が抑制される効果に加えて、太陽光線中の紫外線エネルギーによるポリカーボネート樹脂の劣化も抑制された、ポリカーボネート樹脂組成物やそれを用いた熱線遮蔽成形体を得ることができるからである。
しかしながら、前記ヒンダードフェノール系安定剤が、複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物の耐候性劣化を抑制する効果を増強させる目的と、その効果については、特許文献15には記載も示唆もないものであった。
そして、低分子型のヒンダードフェノール系安定剤の好適な例としては、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,4−ジ−メチル−6−第3ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、高分子型のヒンダードフェノール系安定剤の好適な例としては、上記ヒンダードフェノール系着色防止剤を側鎖に持つビニル、アクリル、メタクリル、スチリル等のモノマーの重合体や、上記ヒンダードフェノール系着色防止剤の構造が主鎖に組み込まれた重合体等が挙げられる。
尚、前記低分子型のヒンダードフェノール系安定剤よりも、前記高分子型のヒンダードフェノール系安定剤の方が好ましい場合がある。また、前記高分子型の化合物を用いる場合には、当該化合物にさらに架橋構造を導入しても良い。
これに対して、本発明においては、耐候性改良剤(B)として、前記亜リン酸エステル化合物とヒンダードフェノール系安定剤とを含むもの(添加形態B2)、または、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(添加形態B3)、とすることにより、従来検討されていた紫外線エネルギーに対してだけでなく、太陽光を受けた際に発生する熱や空気中の水分、酸素の影響を受けて起こる複合タングステン酸化物微粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物の耐候性劣化を抑制する効果を増強することができる。尤も、前記耐候性改良剤による作用効果や過程には未解明な点も多く、いまだ詳細を説明できていない。
本発明に係る、複合タングステン酸化物微粒子(A)、ポリカーボネート樹脂(C)、および、耐候性改良剤を含むポリカーボネート樹脂組成物においては、当該耐候性改良剤(B)として、上述した亜リン酸エステル化合物とリン酸系安定剤とを含むもの(添加形態B2)、または、上述したヒンダードフェノール系安定剤とリン酸系安定剤とを含むもの(添加形態B3)も好ましい。
そして、これらのリン系官能基の中でも、ホスホン酸基を備えたホスホン酸系着色防止剤は、金属イオンを効率よく捕捉でき、耐加水分解性などの安定性にも優れるので、着色防止剤として、特に好適であると考えられる。
本発明に係る、複合タングステン酸化物微粒子(A)、ポリカーボネート樹脂(C)、および、耐候性改良剤(B)を含むポリカーボネート樹脂組成物においては、当該耐候性改良剤(B)として、上述した亜リン酸エステル化合物と硫黄系安定剤とを含むもの(添加形態B2)、あるいは、上述したヒンダードフェノール系安定剤と硫黄系安定剤とを含むもの(添加形態B3)も好ましい。
低分子型の硫黄系安定剤の好適な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC12H25)2)、ジステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)2)、ラウリルステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)(CH2CH2COOC12H25))、ジミリスチルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC14H29)2)、ジステアリルβ、β’−チオジブチレート(S(CH(CH3)CH2COOC18H39)2)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(C6H4NHNCSH)、ジラウリルサルファイド(S(C12H25)2)等が挙げられる。
これらの硫黄系安定剤は、主として過酸化物分解機能を有していると考えられ、着色防止剤として特に好適であると考えられる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂(C)は、この分野で使用されているポリカーボネート樹脂であれば特に制限されないが、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて製造されるものである。
当該製造反応の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
前記二価フェノールとカーボネート前駆体とを、界面重合法によって重合してポリカーボネート樹脂(C)を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂(C)には、三官能基以上を有する多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(シクロアルキルを含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びに当該二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、製造された2種以上のポリカーボネート樹脂を混合した混合物であってもよい。
さらにポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
さらに単官能性フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能性フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
ポリカーボネート樹脂(C)の粘度平均分子量は、14,000〜100,000であり、20,000〜30,000が好ましく、22,000〜28,000がより好ましく、23,000〜26,000がさらに好ましい。
まず、数式(4)にて算出される比粘度(ηsp)の値を、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求める。
ηsp=(t−t0)/t0 数式(4)
(t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数)
求められた比粘度(ηsp)の値を数式(5)に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c 数式(5)
(但し、[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7g/dl
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、複合タングステン酸化物微粒子(A)、ポリカーボネート樹脂(C)および耐候性改良剤(B)を含んでおり、上記ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には、特に制限はなく、例えば、
a)ポリカーボネート樹脂(C)の重合反応の途中または重合反応終了時に、複合タングステン酸化物微粒子(A)と耐候性改良剤(B)を混合する方法、
b)ポリカーボネート樹脂(C)混練途中等、ポリカーボネート樹脂(C)が溶融した状態で、複合タングステン酸化物微粒子(A)と耐候性改良剤(B)を混合する方法、
c)ポリカーボネート樹脂(C)がペレット等固体状態となっているものに、複合タングステン酸化物微粒子(A)と耐候性改良剤(B)を混合後、押出機等で溶融・混練する方法等が挙げられる。
本発明に係る熱線遮蔽成形体は、上記複合タングステン酸化物微粒子(A)、上記ポリカーボネート樹脂(C)および上記耐候性改良剤(B)を含むポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂(C)、または、ポリカーボネート樹脂(C)と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂により希釈・溶融混練され、その後、所定の形状に成形されてなる成形体である。
上記熱線遮蔽成形体の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、または、回転成形等の方法を用いることができる。特に、射出成形、押出成形によれば効率的に所望の形状に成形できるので好ましい。
以下、(a)押出成形、(b)射出成形について簡単に説明する。
押出成形法により板状(シート状)、フィルム状の成形体を得る方法としては、Tダイなどの押出機を用いて押し出した溶融アクリル樹脂を冷却ロールで冷却しながら引き取る方法が採用される。成形温度は、使用するポリカーボネート樹脂成形材料の組成等によって異なるが、十分な流動性が得られるように樹脂の融点或いはガラス転移温度より50〜150℃高い温度に加温する。例えば、200℃以上、好ましくは240℃〜330℃とする。200℃以上であれば、高分子特有の粘度を低下させることができ、複合タングステン酸化物微粒子(A)をポリカーボネート樹脂(C)中に均一に分散させることができ好ましい。350℃よりも低ければ、ポリカーボネート樹脂(C)が分解し劣化することがなく、好ましい。
射出成形法により本発明に係る成形体を得る方法としては、通常の射出成形法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、および超高速射出成形なども利用することができる。中でも射出プレス成形は下記の理由などから好適である。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
本発明に係る熱線遮蔽積層体は、上記熱線遮蔽成形体が、他の透明成形体上に積層されていることを特徴としている。上記熱線遮蔽積層体は、それ自体で建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に使用することができる。
本実施例において使用する原料について、(1)複合タングステン酸化物微粒子(A)、(2)耐候性改良剤(B)、(3)ポリカーボネート樹脂(C)の順に説明する。
(1)複合タングステン酸化物微粒子(A)
複合タングステン酸化物微粒子として、Cs0.33WO3微粒子分散物(Cs0.33WO3微粒子含量20質量%)(住友金属鉱山(株)製)を用いた。
(2)耐候性改良剤(B)
亜リン酸エステル化合物として、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert―ブチルジベンジル[d,f][1,3,2]ジオキシホスフェピン (住友化学株式会社製:スミライザー(登録商標)GP(本実施例において、耐候性改良剤「Ba」と記載する。))を用いた。
ヒンダードフェノール系安定剤として、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート (BASF社製、商品名イルガノックス(登録商標)1010(本実施例において、耐候性改良剤「Bb」と記載する。))を用いた。
リン酸系安定剤として、トリス(2,4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(株式会社ADEKA製、商品名アデカスタブ(登録商標)AS2112(本実施例において、耐候性改良剤「Bc」と記載する。))を用いた。
硫黄系安定剤として、ジミリスチル(3,3’−チオジプロピオネート)、(住友化学株式会社製、商品名スミライザー(登録商標)TPM(本実施例において、耐候性改良剤「Bd」と記載する。))を用いた。
(3)ポリカーボネート樹脂(C)
ポリカーボネート樹脂として、ポリカーボネート樹脂ペレット、(Bayer社製、商品名マクロロン(登録商標)AL2647)を用いた。
本実施例において得られた熱線遮蔽成形体の光学特性評価において、ヘイズH(%)は、ヘイズメーター(村上色彩研究所製)を使用し、JIS K 7136に準拠して測定した。また、可視光透過率T(%)、日射透過率ST(%)は、分光光度計U−4000(日立製作所製)を使用し、JIS R 3106に準拠して測定した。
ポリカーボネート樹脂ペレット100重量部、複合タングステン酸化物微粒子0.15重量部、および、耐候性改良剤(Ba)0.75重量部を均一に混合した後、二軸押出機(東洋精機製作所製)を用いて290℃で溶融混練し、押し出された直径3mmのストランドをカットし、ペレットを得た。
得られたペレットと、ポリカーボネート樹脂ペレットとを秤量し、複合タングステン酸化物微粒子の含有量が0.05質量%となるように調整した後、均一に混合して混合物を得た。当該混合物を射出成形機(東洋精機製作所製)に装填して射出成形し、実施例1に係る10cm×5cm、厚さ2.0mmのシート状成形体を得た。
さらに、実施例1に係るシート状成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、光学特性としてヘイズH(%)、可視光透過率(%)、日射透過率ST(%)を評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Ba)の添加量を0.015重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例2に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Ba)の添加量を3.0重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例3に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例3に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Ba)の添加量を0.75重量部、(Bb)の添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例4に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例4に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Ba)の添加量を0.75重量部、(Bc)の添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例5に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例5に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Ba)の添加量を0.75重量部、(Bd)の添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例6に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例6に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Ba)の添加量を1.5重量部、(Bc)の添加量を0.25重量部、(Bd)の添加量を0.25重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例7に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例7に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Bb)の添加量を0.75重量部、(Bc)の添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例8に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例8に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Bb)の添加量を0.01重量部、(Bc)の添加量を0.005重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例9に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例9に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Bb)の添加量を2.25重量部、(Bc)の添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例10に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例10に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Bb)の添加量を0.75重量部、(Bd)の添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例11に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例11に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(Bb)の添加量を1.5重量部、(Bc)の添加量を0.25重量部、(Bd)の添加量を0.25重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例12に係るシート状成形体を得た。
そして、実施例12に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(B)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1に係るシート状成形体を得た。
そして、比較例1に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(B)として(Bb)のみを用い、その添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例2に係るシート状成形体を得た。
そして、比較例2に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(B)として(Bc)のみを用い、その添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例3に係るシート状成形体を得た。
そして、比較例3に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
耐候性改良剤(B)として(Bd)のみを用い、その添加量を0.75重量部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例4に係るシート状成形体を得た。
そして、比較例4に係るシート状成形体の光学的特性を、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
表1に示す結果より、複合タングステン酸化物微粒子1重量部に対して、本発明に係る耐候性改良剤である亜リン酸エステル化合物(添加形態B1)を、0.1〜20重量部の範囲で添加して得られた実施例1〜3に係る成形体は、成形時において優れた可視光透過率、日射透過率、ヘイズを示していた。そして、120℃空気浴中に30日間保持した後の光学特性も、可視光透過率、日射透過率、ヘイズとも変化がないことが判明した。
従って、耐候性改良剤としての亜リン酸エステル化合物(添加形態B1)は、複合タングステン酸化物微粒子を含有するポリカーボネート樹脂組成物が、太陽光を受けた際に発生する熱や空気中の水分、酸素の影響を受けた際の複合タングステン酸化物微粒子の耐候性劣化による経時的な赤外線遮蔽機能の低下を抑制していることが判明した。
この結果、耐候性改良剤として、亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤やリン酸系安定剤や硫黄系安定剤とを併用することが出来ることも判明した。
この結果、耐候性改良剤として、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤や硫黄系安定剤とを併用することが出来ることも判明した。
比較例1に係る成形体の初期光学特性は、優れた可視光透過率、日射透過率、ヘイズを示している。しかし、120℃空気浴中に30日間保持した後の光学特性は、日射透過率が大きく上昇し、可視光透過率も上昇しており、赤外線遮蔽性能が大きく劣化していることが判明した。
この結果より、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤を単独で添加した場合は、複合タングステン酸化物微粒子を含有するポリカーボネート樹脂組成物が、太陽光を受けた際に発生する熱や空気中の水分、酸素の影響を受けた際の複合タングステン酸化物微粒子の耐候性劣化による経時的な赤外線遮蔽機能の低下を抑制することは、困難であると考えられる。
12:WO6を単位として形成される8面体が6個集合して形成される六角形の空隙(トンネル)中に配置されるM元素。
Claims (7)
- 複合タングステン酸化物微粒子(A)と、耐候性改良剤(B)と、ポリカーボネート樹脂(C)とを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)が、一般式MxWOy(但し、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu、Naから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦x≦0.5、2.2≦y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記耐候性改良剤(B)が、亜リン酸エステル化合物を含むもの(B1)、
または、亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸系安定剤および硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B2)、
または、ヒンダードフェノール系安定剤と、リン酸系安定剤、硫黄系安定剤から選ばれる1種類以上とを含むもの(B3)、のいずれかであり、
前記耐候性改良剤(B)の添加量が、前記複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。 - 前記複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散粒子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記亜リン酸エステル化合物の構造が、一般式(3)で示されることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[但し、一般式(3)中、R1、R2、R4、およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を示す。
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示し、
Xは、単なる結合、硫黄原子または式(3−1)で示される2価の残基を示し、
(但し、式(3−1)中、R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜12のシクロアルキル基を示す。)
Aは炭素数2〜8のアルキレン基または式(3−2)で示される2価の残基を示し、
(但し、式(3−2)中、R7は、単なる結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素原子側に結合していることを示す。)
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。] - 前記複合タングステン酸化物微粒子(A)を示す一般式MxWOyのM元素が、Cs、Rbから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子(A)が、六方晶であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物と、ポリカーボネート樹脂(C)、または、ポリカーボネート樹脂(C)と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂との、溶融混練物の成形体であることを特徴とする熱線遮蔽成形体。
- 請求項6に記載の熱線遮蔽成形体が、他の透明成形体上に積層されていることを特徴とする熱線遮蔽積層体。
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