JPWO2006052009A1 - カーボンナノチューブ集合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
基板上に所定の粒径を有する金属微粒子を形成する工程と、 前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃〜400℃の所定温度に加熱して表面を還元する工程と、 前記金属微粒子を反応炉内で所定の反応温度に加熱する工程と、 前記金属微粒子の加熱を開始した後、カーボンナノチューブの成長を開始するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間が600秒以内となるように反応炉に有機化合物蒸気を導入して前記金属微粒子上にカーボンナノチューブを成長させる工程と、を含むカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
Description
本発明はグラフェンシート層数の揃ったカーボンナノチューブの集合からなるカーボンナノチューブ集合体、およびその製造方法に関するものである。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートが年輪状に積層した構造を有する繊維状炭素の一種であり、直径が0.43nm〜数10nmであるのに対して、長さは通常100nm〜数100μmに達し、極めてアスペクト比が高いナノ炭素繊維である。ここでグラフェンシートとは、グラファイト(黒鉛)の結晶を構成する、sp2混成軌道の炭素原子が正六角形の頂点に位置する層のことを指す。
1層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ(single−walled carbon nanotube、SWCNTと略す)と呼ばれ、2層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは2層カーボンナノチューブ(double−walled carbon nanotube、DWCNTと略す)と呼ばれ、3層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは3層カーボンナノチューブ(triple−walled carbon nanotube、3WCNTと略す)と呼ばれ、4層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは4層カーボンナノチューブ(quad−walled carbon nanotube、4WCNTと略す)と呼ばれ、5層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは5層カーボンナノチューブ(quint−walled carbon nanotube、5WCNTと略す)と呼ばれ、6層以上のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは総括して多層カーボンナノチューブ(multi−walled carbon nanotube(MWCNT)と略す)と呼ばれることが多い。以下、複数本のカーボンナノチューブを指すときには、SWCNTsのように複数の意味の”s”を付けて表記する。
グラフェンシートの円筒面では、炭素原子が形成する六角網面がらせん状に巻かれた形態を示すが、そのらせん状態をカイラリティと呼ぶ。カーボンナノチューブの各種物性は、グラフェンシートの層数、チューブの直径、カイラリティによって異なることが知られている。
カーボンナノチューブの製造方法としては、有機化合物蒸気を原料とするCVD法、黒鉛電極を用いるアーク放電法、レーザ蒸発法、液相合成法等が用いられている。
例えば、ニコライ P(Nikolaev P)、他6名、「一酸化炭素からの単層カーボンナノチューブの気相触媒成長」(”Gas−phase catalytic growth of single−walled carbon nanotubes from carbon monoxide.”)、ケミカルフィジックスレターズ(Chemical Physics Letters)、1999年、313巻、p.91−97(文献1)には、鉄粒子を触媒として用い、高圧の一酸化炭素の不均化反応によってSWCNTsを製造する方法が記載されており、この方法によればSWCNTsだけを選択的に製造できるとされている。
また、丸山(S.Maruyama)、他6名、「石英基板上への垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の成長とその光学異方性」(”Growth of vertically aligned single−walled carbon nanotube films on quartz substrates and their optical anisotropy”)、ケミカルフィジックスレターズ(Chemical Physics Letters)、2004年、386巻、p.298−303(文献2)には、エタノールを原料として用いたCVD法により、SWCNTsだけを選択的に基板上に形成する方法が開示されている。
一方、DWCNTsの製造方法としては、篠原(Hisanori Shinohara)、他6名、「ゼオライトを用いたCCVD法による高純度二層カーボンナノチューブの合成」(”Synthesis of high purity double wall carbon nanotubes by the CCVD method using zeolites”)、第26回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム講演要旨集、フラーレン・ナノチューブ研究会、2004年1月7日、p.100(文献3)に、アルコールを原料としゼオライトに担持した金属微粒子を触媒として用いるCVD法により、50〜60%のDWCNTsを含むカーボンナノチューブ混合物を製造する方法が開示されている。
なお、カーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するために当業者が通常用いる手段としては、個々のカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡により観察し、カーボンナノチューブの壁面に現れるグラフェンシート層の像を観察画像上で計数する方法が一般的である。多数のカーボンナノチューブの集合体において所定の層数を有するカーボンナノチューブが占める割合を評価する手段としては、集合体を透過型電子顕微鏡により観察し、無作為に抽出した多数のカーボンナノチューブの層数をそれぞれ判定して、抽出したカーボンナノチューブの全数に対する所定の層数を有するカーボンナノチューブの数をもって評価することが行われている。
1層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ(single−walled carbon nanotube、SWCNTと略す)と呼ばれ、2層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは2層カーボンナノチューブ(double−walled carbon nanotube、DWCNTと略す)と呼ばれ、3層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは3層カーボンナノチューブ(triple−walled carbon nanotube、3WCNTと略す)と呼ばれ、4層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは4層カーボンナノチューブ(quad−walled carbon nanotube、4WCNTと略す)と呼ばれ、5層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは5層カーボンナノチューブ(quint−walled carbon nanotube、5WCNTと略す)と呼ばれ、6層以上のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブは総括して多層カーボンナノチューブ(multi−walled carbon nanotube(MWCNT)と略す)と呼ばれることが多い。以下、複数本のカーボンナノチューブを指すときには、SWCNTsのように複数の意味の”s”を付けて表記する。
グラフェンシートの円筒面では、炭素原子が形成する六角網面がらせん状に巻かれた形態を示すが、そのらせん状態をカイラリティと呼ぶ。カーボンナノチューブの各種物性は、グラフェンシートの層数、チューブの直径、カイラリティによって異なることが知られている。
カーボンナノチューブの製造方法としては、有機化合物蒸気を原料とするCVD法、黒鉛電極を用いるアーク放電法、レーザ蒸発法、液相合成法等が用いられている。
例えば、ニコライ P(Nikolaev P)、他6名、「一酸化炭素からの単層カーボンナノチューブの気相触媒成長」(”Gas−phase catalytic growth of single−walled carbon nanotubes from carbon monoxide.”)、ケミカルフィジックスレターズ(Chemical Physics Letters)、1999年、313巻、p.91−97(文献1)には、鉄粒子を触媒として用い、高圧の一酸化炭素の不均化反応によってSWCNTsを製造する方法が記載されており、この方法によればSWCNTsだけを選択的に製造できるとされている。
また、丸山(S.Maruyama)、他6名、「石英基板上への垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の成長とその光学異方性」(”Growth of vertically aligned single−walled carbon nanotube films on quartz substrates and their optical anisotropy”)、ケミカルフィジックスレターズ(Chemical Physics Letters)、2004年、386巻、p.298−303(文献2)には、エタノールを原料として用いたCVD法により、SWCNTsだけを選択的に基板上に形成する方法が開示されている。
一方、DWCNTsの製造方法としては、篠原(Hisanori Shinohara)、他6名、「ゼオライトを用いたCCVD法による高純度二層カーボンナノチューブの合成」(”Synthesis of high purity double wall carbon nanotubes by the CCVD method using zeolites”)、第26回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム講演要旨集、フラーレン・ナノチューブ研究会、2004年1月7日、p.100(文献3)に、アルコールを原料としゼオライトに担持した金属微粒子を触媒として用いるCVD法により、50〜60%のDWCNTsを含むカーボンナノチューブ混合物を製造する方法が開示されている。
なお、カーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するために当業者が通常用いる手段としては、個々のカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡により観察し、カーボンナノチューブの壁面に現れるグラフェンシート層の像を観察画像上で計数する方法が一般的である。多数のカーボンナノチューブの集合体において所定の層数を有するカーボンナノチューブが占める割合を評価する手段としては、集合体を透過型電子顕微鏡により観察し、無作為に抽出した多数のカーボンナノチューブの層数をそれぞれ判定して、抽出したカーボンナノチューブの全数に対する所定の層数を有するカーボンナノチューブの数をもって評価することが行われている。
しかしながら、従来知られているいずれの製造方法によっても、その生成物は種々の構造を有するカーボンナノチューブの混合物となり、SWCNTsを除いて、主として単一のグラフェンシート層数を有するカーボンナノチューブの集合体を製造することには成功していないのが現状である。生成物に含まれる金属微粒子や炭素粒子などの不純物は、酸処理や加熱酸化処理によって除去することが可能であるが、グラフェンシート層数やチューブ直径、カイラリティが異なるカーボンナノチューブ同士は、結晶構造、化学的性質、幾何学的特徴が極めて近いため、混合物から特定のカーボンナノチューブのみを選択的に抽出することもまた、非常に困難である。
一方、カーボンナノチューブのグラフェンシート層数に関係する物性を積極的に利用し、新たな特性を備えた炭素材料として応用する場合には、該炭素材料に含有されるカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を単一のものとすることが望ましいことから、所望の層数を有するカーボンナノチューブを選択的に製造する技術の開発が待たれていた。
本発明は、かかる課題の解決を目的とするものであって、主として所望のグラフェンシート層数を有するカーボンナノチューブからなり、電子源等の各種炭素材料として利用可能なカーボンナノチューブ集合体を提供するものである。
本発明は、n層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブ(以下n層カーボンナノチューブ)を選択的に製造することが可能な方法を提供する。
本発明に係るn層カーボンナノチューブの製造方法は、金属微粒子を触媒として用いるCVD法の一種である。金属微粒子を触媒として用いるCVD法では、金属微粒子の表面を還元して触媒活性を与えた後、所定のカーボンナノチューブ成長温度に加熱して、原料となる有機化合物蒸気を接触させ、金属微粒子表面にカーボンナノチューブを成長させる。本発明者らは、従来のカーボンナノチューブの製造方法において、所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造できず、多種類の混合物となってしまう理由について研究を重ね、その原因が金属微粒子の還元工程ないしカーボンナノチューブ成長工程における、金属微粒子の加熱条件に存在することを見出した。
すなわち本発明者らが見出したところによれば、n層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記各工程における金属微粒子の加熱時間や加熱温度、カーボンナノチューブ成長工程における有機化合物蒸気の導入タイミングが特に重要である。さらにこれらの条件に加え、金属微粒子の粒径を所望のnに合わせて所定の値に調整することにより、所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造することができるのである。
その理由は概ね以下のように理解される。すなわち、金属微粒子に触媒活性を付与するため還元雰囲気下で加熱すると、加熱条件によっては金属微粒子同士の凝集が始まり、その粒径が所望の値よりも拡大する方向に外れてしまうため、所望のn層カーボンナノチューブを製造することができなくなる。また金属微粒子の当初の粒径ばらつきが大きければ、それに応じてカーボンナノチューブの層数もばらつきを持つことになる。
そこで本発明者らは、金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長し始めるまでの期間において、金属微粒子同士を凝集させず、当初の粒径を維持できる製造条件を繰り返し検討した結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法は、
基板上に所定の粒径を有する金属微粒子を形成する工程と、
前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃〜400℃の所定温度に加熱して表面を還元する工程と、
前記金属微粒子を反応炉内で所定の反応温度に加熱する工程と、
前記金属微粒子の加熱を開始した後、カーボンナノチューブの成長を開始するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間が600秒以内となるように反応炉に有機化合物蒸気を導入して前記金属微粒子上にカーボンナノチューブを成長させる工程と、
を含む。
金属微粒子を触媒とするカーボンナノチューブ集合体の製造方法では、金属微粒子の還元やカーボンナノチューブの成長工程で、金属微粒子を加熱することが必要になる。この際、金属微粒子の凝集は温度が450℃を超えると顕著になるが、金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長を始めると、金属微粒子上に付着した炭素によって金属微粒子同士の凝集が妨げられ、それ以上凝集は進行しないと考えられる。そこで金属微粒子の粒径を所定の値に維持し、n層カーボンナノチューブを選択的に成長させるためには、金属微粒子の加熱を開始した後、カーボンナノチューブの成長が開始されるまでの期間において、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を所定の時間以内とすればよい。本発明者らが見出したところによれば、その上限時間は600秒であり、300秒以内とすることがより好ましい。
また、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記金属微粒子の加熱を開始した後、前記反応温度において反応炉に有機化合物蒸気を導入するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内とすることが好ましい。
金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長を始めると、金属微粒子同士の凝集が妨げられることは上記のとおりである。ここでカーボンナノチューブの成長開始時点を、外部から直接的に判断できない場合も考えられる。そこで本発明においては、金属微粒子の温度が450℃を超える時間の基準として、カーボンナノチューブの成長開始時点ではなく、金属微粒子が所定の反応温度に達し、かつ原料となる有機化合物蒸気が反応炉に導入された時点を用いてもよい。金属微粒子の加熱を開始した後、前記反応温度において反応炉に有機化合物蒸気を導入するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内、より好ましくは300秒以内とすることにより、金属微粒子の凝集を抑制し、その粒径を維持することで所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造できるのである。
なお、所定の反応温度とは、金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長することが予め明らかとなっている温度を意味し、有機化合物蒸気が反応炉に導入されれば直ちにカーボンナノチューブが成長開始する温度のことである。
さらに、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記金属微粒子を所定の反応温度に加熱する工程の前に、前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃以上400℃以下の所定温度に加熱して表面を還元する工程を有する。
本発明の特徴は、金属微粒子を450℃を超える温度に加熱する時間を短く抑える点にあるが、このような条件範囲では金属微粒子の表面を十分に還元することができず、触媒活性が不十分であったり、また触媒活性にむらを生じたりして、所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造することが難しい場合がある。そのため本発明においては、金属微粒子を前記所定の反応温度に加熱する以前に、300℃以上400℃以下の温度において還元反応を十分行い、必要な触媒活性を付与する。加熱温度が300℃より低いと還元反応が十分進行せず、また400℃を超えると金属微粒子の凝集が始まる恐れがあるため、還元温度は300℃以上400℃以下であることが必要であり、その保持時間は480秒以上であることが好ましく、600秒以上であることが特に好ましい。
また、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記所定の反応温度が500℃以上であることが好ましい。反応温度が500℃より低いとアモルファスカーボンの成長が優位となりカーボンナノチューブの収率が極端に低下してしまう傾向にある。したがって反応温度は500℃以上であることが望ましい。一方、反応温度を1300℃より高い温度に設定する場合は、基板や反応炉の構成材料として高温に耐えうる材料を用いなければならず、装置上の制約が大きくなるので、反応温度は1300℃以下とすることが好ましい。
さて、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を所定範囲内とするためには、450℃を超える領域における金属微粒子の昇温速度をある程度速くする必要がある。そのためには、金属微粒子の加熱源として、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーターを用いるのが良い。そこで本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記金属微粒子の加熱が、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーターによって行われることが好ましい。
上記金属微粒子を構成する金属としては、カーボンナノチューブ成長反応の触媒として機能する、コバルト、モリブデン、ニッケル及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属、又はこれらの金属の合金を用いることが好ましい。、また、その形成方法としては、これらの金属のイオンを含有する溶液(好ましくはエタノール溶液)を用いるディッピング法、或いはこれらの金属又はその合金をターゲットとするスパッタリング法を用いることが好ましい。
また、カーボンナノチューブの原料となる有機化合物としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、メタノール、エタノール、プロパノールからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、又は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
以上の特徴を有する本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法において、製造されるカーボンナノチューブのグラフェンシート層数nを所望の値に揃えるためには、金属微粒子の粒径を、nに応じて所定の範囲内に調整する必要がある。本発明者らが独自に調査した結果、n層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、金属微粒子の平均粒径を、nに応じて以下の範囲とすればよいことが判明した。
すなわち、単層(1層)カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を8nm以下とする。
2層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を8nm〜11nmとする。
3層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を11nm〜15nmとする。
4層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を15nm〜18nmとする。
5層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を18nm〜21nmとする。
なお、本発明に係る金属微粒子の粒径は、以下のようにして測定した値である。すなわち、基板上に形成した金属微粒子を加熱して還元処理が終了し、所定の反応温度に到達してカーボンナノチューブの成長が始まる直前に、有機化合物蒸気を導入することなく基板を室温まで急冷し、その基板上の金属微粒子を高分解能走査型電子顕微鏡(以下、高分解能SEMという)にて観察した。つまり、還元処理を終えて、まさにカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子の直径を観察し、SEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定した。また、ここで金属微粒子の粒径とは、金属微粒子の外形が完全な球形でない場合は短径の値を指す。
以上の製造方法を開発したことにより、本発明者らは、これまで製造し得なかった極めて層数純度(カーボンナノチューブ集合体全体に占めるn層カーボンナノチューブの割合)の高いカーボンナノチューブ集合体を、電子源等の各種炭素材料として利用可能な規模の集合体として製造することに成功した。
すなわち本発明のカーボンナノチューブ集合体は、下記(i)〜(iv)のものである。
(i)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち2層カーボンナノチューブの占める割合が70%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
(ii)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち3層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
(iii)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち4層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
(iv)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち5層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
また、本発明においては、基板上での金属微粒子の析出密度を上げることで前記(i)〜(iv)のカーボンナノチューブ集合体として、カーボンナノチューブの成長方向が前記基板の表面に対して法線方向に揃っているものが好適に得られる。
さらに、本発明の電界放出型ディスプレイは、電子源として、前記本発明のカーボンナノチューブ集合体を用いることを特徴とする。
本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法によれば、n=1〜5の範囲内において、特定のn層カーボンナノチューブを選択的に、かつ電子源等の各種炭素材料として利用可能な規模の集合体として製造することができる。この製造方法によれば始めからn層カーボンナノチューブを主とする集合体を製造することができるので、多種類のカーボンナノチューブの混合物から特定のn層カーボンナノチューブを選別する必要がなく、特性の揃ったカーボンナノチューブ集合体を製造することができ、各種デバイスへの応用が容易になる。
また、本発明のカーボンナノチューブ集合体は、表面のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数が揃っているため、電界放出型ディスプレイ装置等のデバイスへの応用が容易であり、さらにグラフェンシート層数に依存する物性に関係する各種の特性を向上させることができる。
一方、カーボンナノチューブのグラフェンシート層数に関係する物性を積極的に利用し、新たな特性を備えた炭素材料として応用する場合には、該炭素材料に含有されるカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を単一のものとすることが望ましいことから、所望の層数を有するカーボンナノチューブを選択的に製造する技術の開発が待たれていた。
本発明は、かかる課題の解決を目的とするものであって、主として所望のグラフェンシート層数を有するカーボンナノチューブからなり、電子源等の各種炭素材料として利用可能なカーボンナノチューブ集合体を提供するものである。
本発明は、n層のグラフェンシートからなるカーボンナノチューブ(以下n層カーボンナノチューブ)を選択的に製造することが可能な方法を提供する。
本発明に係るn層カーボンナノチューブの製造方法は、金属微粒子を触媒として用いるCVD法の一種である。金属微粒子を触媒として用いるCVD法では、金属微粒子の表面を還元して触媒活性を与えた後、所定のカーボンナノチューブ成長温度に加熱して、原料となる有機化合物蒸気を接触させ、金属微粒子表面にカーボンナノチューブを成長させる。本発明者らは、従来のカーボンナノチューブの製造方法において、所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造できず、多種類の混合物となってしまう理由について研究を重ね、その原因が金属微粒子の還元工程ないしカーボンナノチューブ成長工程における、金属微粒子の加熱条件に存在することを見出した。
すなわち本発明者らが見出したところによれば、n層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記各工程における金属微粒子の加熱時間や加熱温度、カーボンナノチューブ成長工程における有機化合物蒸気の導入タイミングが特に重要である。さらにこれらの条件に加え、金属微粒子の粒径を所望のnに合わせて所定の値に調整することにより、所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造することができるのである。
その理由は概ね以下のように理解される。すなわち、金属微粒子に触媒活性を付与するため還元雰囲気下で加熱すると、加熱条件によっては金属微粒子同士の凝集が始まり、その粒径が所望の値よりも拡大する方向に外れてしまうため、所望のn層カーボンナノチューブを製造することができなくなる。また金属微粒子の当初の粒径ばらつきが大きければ、それに応じてカーボンナノチューブの層数もばらつきを持つことになる。
そこで本発明者らは、金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長し始めるまでの期間において、金属微粒子同士を凝集させず、当初の粒径を維持できる製造条件を繰り返し検討した結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法は、
基板上に所定の粒径を有する金属微粒子を形成する工程と、
前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃〜400℃の所定温度に加熱して表面を還元する工程と、
前記金属微粒子を反応炉内で所定の反応温度に加熱する工程と、
前記金属微粒子の加熱を開始した後、カーボンナノチューブの成長を開始するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間が600秒以内となるように反応炉に有機化合物蒸気を導入して前記金属微粒子上にカーボンナノチューブを成長させる工程と、
を含む。
金属微粒子を触媒とするカーボンナノチューブ集合体の製造方法では、金属微粒子の還元やカーボンナノチューブの成長工程で、金属微粒子を加熱することが必要になる。この際、金属微粒子の凝集は温度が450℃を超えると顕著になるが、金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長を始めると、金属微粒子上に付着した炭素によって金属微粒子同士の凝集が妨げられ、それ以上凝集は進行しないと考えられる。そこで金属微粒子の粒径を所定の値に維持し、n層カーボンナノチューブを選択的に成長させるためには、金属微粒子の加熱を開始した後、カーボンナノチューブの成長が開始されるまでの期間において、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を所定の時間以内とすればよい。本発明者らが見出したところによれば、その上限時間は600秒であり、300秒以内とすることがより好ましい。
また、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記金属微粒子の加熱を開始した後、前記反応温度において反応炉に有機化合物蒸気を導入するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内とすることが好ましい。
金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長を始めると、金属微粒子同士の凝集が妨げられることは上記のとおりである。ここでカーボンナノチューブの成長開始時点を、外部から直接的に判断できない場合も考えられる。そこで本発明においては、金属微粒子の温度が450℃を超える時間の基準として、カーボンナノチューブの成長開始時点ではなく、金属微粒子が所定の反応温度に達し、かつ原料となる有機化合物蒸気が反応炉に導入された時点を用いてもよい。金属微粒子の加熱を開始した後、前記反応温度において反応炉に有機化合物蒸気を導入するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内、より好ましくは300秒以内とすることにより、金属微粒子の凝集を抑制し、その粒径を維持することで所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造できるのである。
なお、所定の反応温度とは、金属微粒子上にカーボンナノチューブが成長することが予め明らかとなっている温度を意味し、有機化合物蒸気が反応炉に導入されれば直ちにカーボンナノチューブが成長開始する温度のことである。
さらに、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記金属微粒子を所定の反応温度に加熱する工程の前に、前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃以上400℃以下の所定温度に加熱して表面を還元する工程を有する。
本発明の特徴は、金属微粒子を450℃を超える温度に加熱する時間を短く抑える点にあるが、このような条件範囲では金属微粒子の表面を十分に還元することができず、触媒活性が不十分であったり、また触媒活性にむらを生じたりして、所望のn層カーボンナノチューブのみを選択的に製造することが難しい場合がある。そのため本発明においては、金属微粒子を前記所定の反応温度に加熱する以前に、300℃以上400℃以下の温度において還元反応を十分行い、必要な触媒活性を付与する。加熱温度が300℃より低いと還元反応が十分進行せず、また400℃を超えると金属微粒子の凝集が始まる恐れがあるため、還元温度は300℃以上400℃以下であることが必要であり、その保持時間は480秒以上であることが好ましく、600秒以上であることが特に好ましい。
また、本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記所定の反応温度が500℃以上であることが好ましい。反応温度が500℃より低いとアモルファスカーボンの成長が優位となりカーボンナノチューブの収率が極端に低下してしまう傾向にある。したがって反応温度は500℃以上であることが望ましい。一方、反応温度を1300℃より高い温度に設定する場合は、基板や反応炉の構成材料として高温に耐えうる材料を用いなければならず、装置上の制約が大きくなるので、反応温度は1300℃以下とすることが好ましい。
さて、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を所定範囲内とするためには、450℃を超える領域における金属微粒子の昇温速度をある程度速くする必要がある。そのためには、金属微粒子の加熱源として、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーターを用いるのが良い。そこで本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法においては、前記金属微粒子の加熱が、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーターによって行われることが好ましい。
上記金属微粒子を構成する金属としては、カーボンナノチューブ成長反応の触媒として機能する、コバルト、モリブデン、ニッケル及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属、又はこれらの金属の合金を用いることが好ましい。、また、その形成方法としては、これらの金属のイオンを含有する溶液(好ましくはエタノール溶液)を用いるディッピング法、或いはこれらの金属又はその合金をターゲットとするスパッタリング法を用いることが好ましい。
また、カーボンナノチューブの原料となる有機化合物としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、メタノール、エタノール、プロパノールからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、又は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
以上の特徴を有する本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法において、製造されるカーボンナノチューブのグラフェンシート層数nを所望の値に揃えるためには、金属微粒子の粒径を、nに応じて所定の範囲内に調整する必要がある。本発明者らが独自に調査した結果、n層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、金属微粒子の平均粒径を、nに応じて以下の範囲とすればよいことが判明した。
すなわち、単層(1層)カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を8nm以下とする。
2層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を8nm〜11nmとする。
3層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を11nm〜15nmとする。
4層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を15nm〜18nmとする。
5層カーボンナノチューブを選択的に製造するためには、前記基板上に形成された金属微粒子の粒径を18nm〜21nmとする。
なお、本発明に係る金属微粒子の粒径は、以下のようにして測定した値である。すなわち、基板上に形成した金属微粒子を加熱して還元処理が終了し、所定の反応温度に到達してカーボンナノチューブの成長が始まる直前に、有機化合物蒸気を導入することなく基板を室温まで急冷し、その基板上の金属微粒子を高分解能走査型電子顕微鏡(以下、高分解能SEMという)にて観察した。つまり、還元処理を終えて、まさにカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子の直径を観察し、SEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定した。また、ここで金属微粒子の粒径とは、金属微粒子の外形が完全な球形でない場合は短径の値を指す。
以上の製造方法を開発したことにより、本発明者らは、これまで製造し得なかった極めて層数純度(カーボンナノチューブ集合体全体に占めるn層カーボンナノチューブの割合)の高いカーボンナノチューブ集合体を、電子源等の各種炭素材料として利用可能な規模の集合体として製造することに成功した。
すなわち本発明のカーボンナノチューブ集合体は、下記(i)〜(iv)のものである。
(i)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち2層カーボンナノチューブの占める割合が70%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
(ii)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち3層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
(iii)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち4層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
(iv)基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち5層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
また、本発明においては、基板上での金属微粒子の析出密度を上げることで前記(i)〜(iv)のカーボンナノチューブ集合体として、カーボンナノチューブの成長方向が前記基板の表面に対して法線方向に揃っているものが好適に得られる。
さらに、本発明の電界放出型ディスプレイは、電子源として、前記本発明のカーボンナノチューブ集合体を用いることを特徴とする。
本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法によれば、n=1〜5の範囲内において、特定のn層カーボンナノチューブを選択的に、かつ電子源等の各種炭素材料として利用可能な規模の集合体として製造することができる。この製造方法によれば始めからn層カーボンナノチューブを主とする集合体を製造することができるので、多種類のカーボンナノチューブの混合物から特定のn層カーボンナノチューブを選別する必要がなく、特性の揃ったカーボンナノチューブ集合体を製造することができ、各種デバイスへの応用が容易になる。
また、本発明のカーボンナノチューブ集合体は、表面のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数が揃っているため、電界放出型ディスプレイ装置等のデバイスへの応用が容易であり、さらにグラフェンシート層数に依存する物性に関係する各種の特性を向上させることができる。
図1はカーボンナノチューブ製造装置の一例を示す概略図である。
図2は実施例における製造条件を表す温度プロファイルである。
図3は実施例1、3、5、7において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真である。
図4は実施例1、3、7、9、10において得られた基板上の金属微粒子の粒径分布を示すグラフである。
図5は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図6は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図7は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図8は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図9は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図10は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図11は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図12は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図13は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図14は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図15は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図16は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図17は実施例1、3、7、9、10で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果を示すグラフである。
図18は実施例1〜3、5〜10で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果を示すグラフである。
図19は実施例1、3、7、9、10で製造したカーボンナノチューブの直径分布を示すグラフである。
図20は実施例1で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図21は実施例1で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図22は実施例3で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図23は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図24は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図25は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図26は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図27は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図28は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図29は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図30は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図31は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図32は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図33は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図34は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図35は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図36は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図37は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図38は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図39は実施例3で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図40は実施例4で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図41は参考例1で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図42は実施例6、比較例1において得られた基板上の金属微粒子の粒径分布を示すグラフである。
図43は実施例6、比較例1で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果を示すグラフである。
図44は実施例6で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図45は比較例1における製造条件を表す温度プロファイルである。
図46は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図47は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図48は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図49は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図50は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図51は実施例7で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図52は実施例9で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図53は実施例10で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図54は実施例12で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図55は本発明に係る電界放出型ディスプレイの概略断面図である。
図56は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図57は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図58は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図59は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図60は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図61は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図62は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図63は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図64は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図65は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図2は実施例における製造条件を表す温度プロファイルである。
図3は実施例1、3、5、7において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真である。
図4は実施例1、3、7、9、10において得られた基板上の金属微粒子の粒径分布を示すグラフである。
図5は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図6は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図7は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図8は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図9は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図10は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図11は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図12は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図13は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図14は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図15は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図16は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図17は実施例1、3、7、9、10で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果を示すグラフである。
図18は実施例1〜3、5〜10で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果を示すグラフである。
図19は実施例1、3、7、9、10で製造したカーボンナノチューブの直径分布を示すグラフである。
図20は実施例1で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図21は実施例1で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図22は実施例3で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図23は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図24は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図25は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図26は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図27は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図28は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図29は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図30は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図31は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図32は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図33は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図34は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図35は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図36は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図37は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図38は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図39は実施例3で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図40は実施例4で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図41は参考例1で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図42は実施例6、比較例1において得られた基板上の金属微粒子の粒径分布を示すグラフである。
図43は実施例6、比較例1で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果を示すグラフである。
図44は実施例6で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図45は比較例1における製造条件を表す温度プロファイルである。
図46は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図47は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図48は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図49は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図50は実施例7で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図51は実施例7で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを示すグラフである。
図52は実施例9で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図53は実施例10で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図54は実施例12で製造したカーボンナノチューブ集合体のSEM写真である。
図55は本発明に係る電界放出型ディスプレイの概略断面図である。
図56は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図57は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図58は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図59は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図60は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図61は実施例1で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図62は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図63は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図64は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図65は実施例3で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法は、金属微粒子形成工程、還元工程、CVD工程からなる。金属微粒子形成工程は基板上に金属微粒子を形成する工程であり、還元工程は金属微粒子表面を還元して触媒活性を付与する工程であり、CVD工程は金属微粒子を触媒としてカーボンナノチューブを成長させる工程である。以下、各工程ごとに本発明に係るカーボンナノチューブ製造方法の好適な一実施形態を説明する。
[金属微粒子形成工程]
始めに基板を用意する。基板の材質としては、石英ガラス、シリコン単結晶、各種セラミックや金属を用いることができる。また基板の表面性状は、所望の粒径の金属微粒子を形成するため平滑に研磨されている必要があり、表面粗さ(RMS)を数nm以下とすることが好ましい。基板の大きさ、厚さは任意であるが、基板の熱容量が大きくなると還元工程以降で金属微粒子の急速加熱が技術的に困難になりやすいため、基板の厚さは5mm程度以下とするのが良い。
基板を用意したら、所望の粒径の金属微粒子を均一に形成するため、前処理として超音波振動下で洗剤、水、アルコール系溶媒等により精密洗浄を行うことが望ましい。
金属微粒子を構成する金属には、カーボンナノチューブ成長の触媒として作用する金属を使用する。具体的には、コバルト、モリブデン、ニッケル及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属、又はこれらの金属からなる合金を用いるのが良い。
金属微粒子の粒径は、製造しようとするカーボンナノチューブのグラフェンシート層数に応じて調整する。すなわち、単層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が8nm以下であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、2層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が8nm以上11nm以下(好ましくは8nm超11nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、3層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が11nm以上15nm以下(好ましくは11nm超15nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、4層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が15nm以上18nm以下(好ましくは15nm超18nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、5層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が18nm以上21nm以下(好ましくは18nm超21nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
なお、金属微粒子の外形が球形から外れている場合は、最短径を粒径とみなして粒径制御を行う。
所望の粒径を有する金属微粒子を基板上に形成する第1の方法は、マグネトロンスパッタリングによる方法である。マグネトロンスパッタリング装置の成膜室内に基板を格納して高真空まで排気する。次に成膜室にアルゴンガス等の希ガスを導入し、圧力を0.1Paないし3Pa程度に調整する。ターゲットとしては前記各金属からなるものを用い、ターゲットに負の高電圧を印加してスパッタリングを行う。ターゲット表面からスパッタリングにより放出された単原子ないしクラスターサイズの金属微粒子は、ターゲットに対向する位置に置かれた基板上に付着する。
金属微粒子の粒径はスパッタリング条件によって調整可能であり、ターゲットに投入する電力を小さく、かつ放電時間を短くするほど粒径を小さくすることができる。具体的には電力密度0.2〜1W/cm2程度、放電時間は数秒ないし数十秒の範囲で調整すればよい。
また金属微粒子の粒径のばらつき(標準偏差)は放電時間の調整により制御可能である。放電時間を短くするほど粒径のばらつきが小さくなるので、適切な放電時間を選択すれば粒径のばらつきを必要に応じて所定値以下とすることができる。
所望の粒径を有する金属微粒子を基板上に形成する第2の方法は、ディップコート法である。ディップコート法は、金属イオンを含有する溶液中に基板を浸漬してから引き上げ、溶媒を除去して基板上に金属微粒子を析出させる方法である。
ディップコート法に用いる溶液としては、析出させようとする金属の酢酸塩、硝酸塩、塩化物等の金属塩を、エタノール、アセトン、水等の溶媒に溶解したものを用いることができる。
ディップコート法を用いて金属微粒子を基板上に形成する場合、金属微粒子の粒径は溶液中の金属イオン濃度により制御することができる。金属イオン濃度が低いほど金属微粒子の粒径は小さくなり、逆に金属イオン濃度が高いと粒径は大きくなる。また金属イオン濃度以外にも、基板の引き上げ速度を調整することによっても粒径を制御することが可能である。
基板の引き上げ速度は粒径のばらつきにも影響する。粒径のばらつきを小さくするためには基板の引き上げ速度を遅くすることが有効である。したがって基板の引き上げ速度は、粒径および必要に応じて粒径のばらつきが所定値となるように調整すれば良い。
マグネトロンスパッタリング法及びディップコート法以外にも、真空蒸着等の真空成膜プロセスにおいて堆積時間を短くすることによって、所望の粒径を有する金属微粒子を形成することが可能である。
[還元工程]
基板上に形成された金属微粒子は表面が酸化されていることが多く、そのままではカーボンナノチューブを均一に成長させることが困難である。そこで、カーボンナノチューブ成長前に金属微粒子表面を還元することが行われる。
金属微粒子表面の還元は、金属微粒子を形成した基板を反応炉に格納し、反応炉内を還元雰囲気として、金属微粒子を所定の還元反応温度に加熱することによって行われる。反応炉内を還元雰囲気とするには、水素ガスや希釈水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガスを反応炉に導入する。また、水素ガスを含有する還元雰囲気とする場合、水素濃度が1容量%以上であることが好ましい。さらに、反応炉内の圧力は特に制限されず、0.1Pa〜105Paの範囲の圧力が好ましい。
還元温度は300℃以上であれば金属微粒子表面を還元することができる。また、本発明においては、後述するようにカーボンナノチューブの成長が始まるまでに金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内とする必要があり、このような条件下では還元反応を十分進行させることが難しいので、金属微粒子が凝集しない400℃以下で事前に金属微粒子の表面を還元する必要がある。すなわち還元温度を300℃以上400℃以下とすれば、金属微粒子を凝集させることなく十分に還元反応を進行させることができ、結果として層数純度の高いカーボンナノチューブを製造することができるのである。また、上記の還元温度での保持時間は480秒以上であることが好ましく、600秒以上であることが特に好ましい。保持時間が上記下限未満では、金属微粒子の表面が十分に還元されず、結果としてカーボンナノチューブが十分に成長しなくなる傾向にある。
[カーボンナノチューブ集合体の製造装置]
図1は、本発明に係るカーボンナノチューブ集合体の製造方法を実現することのできる製造装置の一例である。
反応炉11の中心には、真空排気およびガス置換が可能な炉心管14が配置される。炉心管14の外側には、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーター(好ましくは赤外線炉)12が備えられており、炉心管14の内部に配置された基板ホルダー15上の基板16を均一かつ急速に加熱することができる。基板15の温度は温度計18により計測され、予めプログラムされた所定の温度となるよう、制御装置17によりヒーター12への供給電力が制御される。
反応炉11の外部には、還元性ガス供給ライン1と不活性ガス供給ライン2とがあり、それぞれのガスはバルブ3及びバルブ4を介して製造装置に供給される。それぞれのガス流量はマスフローコントローラー等の流量制御機構(不図示)により一定値に制御することができる。
還元性ガスと不活性ガスとは、バルブ5を介して原料容器21の内部に供給される。原料容器21はヒーター8及び水浴9により所定温度に加熱可能に構成されており、内部に充填された原料10の蒸気を一定蒸気圧で生成することができる。原料容器21の内部で発生した原料蒸気は、バルブ5を介して供給される還元性ガスまたは不活性ガスと共に、又は単独で、バルブ7を介して反応炉11内の炉心管14に供給される。このときバルブ6の開度を適度に調整することによって、還元性ガス、不活性ガス、有機化合物蒸気の供給量をそれぞれ独立に制御することができる。
炉心管14に供給された上記各ガスは、炉心管内に配置された基板上の金属微粒子の還元反応、または金属微粒子上のカーボンナノチューブ成長反応に使われ、副生成物等を含む排気ガスはコールドトラップ等の除害装置20及び油回転ポンプ等の排気装置19を通って系外へ排出される。
なお、図1に示した構成を有する製造装置は、還元工程だけでなく、次のCVD工程においても使用することが可能である。
[CVD工程]
還元工程により金属微粒子の表面を還元した後、これを触媒としてカーボンナノチューブを成長させる。なお、還元工程とカーボンナノチューブ成長工程とは、同一装置で連続して行うことが望ましい。表面が還元された金属微粒子を大気等の酸化性雰囲気にさらすと、微粒子表面が再び酸化して触媒活性が低下し、所望のカーボンナノチューブを成長させにくくなるためである。
カーボンナノチューブを金属微粒子上に成長させるためには、金属微粒子を所定の反応温度に加熱し、有機化合物蒸気と接触させる。以下、CVD工程の例として、図1の装置を用いる場合の手順を説明する。
前工程で基板16上の金属微粒子の表面を還元した後、金属微粒子を所定の反応温度まで加熱する。反応温度は触媒金属の種類や、原料として用いる有機化合物の種類によって異なるが、例えばエタノールを原料として用いる場合は600℃〜1000℃程度、メタンを原料として用いる場合は700℃〜1200℃程度が好ましい。
ここで反応温度が500℃より低い場合はアモルファスカーボンの成長が優位となりカーボンナノチューブの収率が低下してしまうという不具合がある。一方、反応温度を1300℃より高い温度に設定する場合には、基板や反応炉の構成材料として高温に耐えうる材料を用いなければならず、装置上の制約が大きくなる。したがって反応温度は500℃以上とすることが望ましく、1300℃以下であればより好ましい。
昇温中の雰囲気は還元性雰囲気のままでも良いし、希ガス等の不活性ガス雰囲気に置換しても良い。重要なのは、カーボンナノチューブが成長を始めるまでの期間において、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内、より好ましくは300秒以内とする点である。この上限時間には、前工程で450℃を越えた時間も含まれる。なぜならば、金属微粒子の温度が450℃を超えると、カーボンナノチューブが成長を始めていない限り、雰囲気の如何によらず金属微粒子が凝集し始めるからである。
このような制限時間内に金属微粒子の温度を所定の反応温度まで上昇させ、さらにカーボンナノチューブの成長を開始させるためには、金属微粒子の温度を急速に上昇させる必要がある。必要な昇温速度を得るための手段として、図1に示した製造装置には、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーター12が備えられている。かかるヒーター12を用いることにより、加熱対象となる金属微粒子および金属微粒子が形成された基板16を急速に加熱することが可能となる。
金属微粒子は粒径が極めて小さいため、その温度を直接測定して所望の昇温速度が得られるように制御することは困難である。そこで金属微粒子が形成された基板16の表面(金属微粒子を有する面)の温度を熱電対等の温度計18により測定することで、所定の昇温速度が得られるように、制御装置17によりヒーター12を制御する。金属微粒子は熱容量が非常に小さく、また金属であるため熱伝導性が高いので、金属微粒子の温度は基板表面温度とほぼ同一とみなすことができ、上記の制御方法により金属微粒子の温度を制御することができるのである。
なお、基板両面に金属微粒子を形成した場合でも、基板16が十分に薄く両面の温度がほぼ等しいとみなせる場合には、基板片面の温度を測定すれば十分である。
上記の加熱手段を用い、金属微粒子を所定の反応温度まで加熱したら、カーボンナノチューブの原料となる有機化合物蒸気を反応炉11の炉心管14に導入する。
カーボンナノチューブの原料となる有機化合物としては、直鎖の炭化水素類であるメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、又は直鎖の1価アルコール類であるメタノール、エタノール、プロパノールからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、又は芳香族炭化水素類であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。また、これらの化合物以外にも、金属微粒子上にカーボンナノチューブを生成可能な有機化合物を原料として用いることが可能である。
反応炉に有機化合物蒸気が導入されると、金属微粒子の温度が所定の反応温度に到達していれば、直ちにカーボンナノチューブが成長しはじめる。カーボンナノチューブが成長を始めた後は、金属微粒子表面が原料化合物や炭素、反応中間体等により覆われるため、反応温度が450℃を超えていたとしてもそれ以上金属微粒子の凝集が進行することなく、成長開始時における粒径が維持され、その粒径に応じたグラフェンシート層数のカーボンナノチューブが連続的に成長する。
したがって金属微粒子の凝集を抑制し、所望のグラフェンシート層数のカーボンナノチューブのみを選択的に製造するためには、金属微粒子の加熱を開始してからカーボンナノチューブが成長を開始するまでの期間において、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を所定の時間内とすればよく、カーボンナノチューブが成長を開始する時点は、金属微粒子が所定の反応温度に到達し、かつ反応炉に原料となる有機化合物蒸気が導入された時点とすることができる。ここで金属微粒子の温度が450℃を超える時間は600秒以内とする必要があり、300秒以内とすることがより好ましい。450℃を越える時間が短いほど、金属微粒子の凝集程度を低く抑えることができ、カーボンナノチューブの層数純度が向上するからである。
以上の手順により、金属微粒子上に所望の長さのカーボンナノチューブを成長させたら、有機化合物蒸気の供給を止め、反応炉11内を常温に戻して、カーボンナノチューブが表面に形成された基板を取り出す。カーボンナノチューブが表面に形成された基板は、応用用途によってはそのままカーボンナノチューブ集合体として用いることができるし、また適当な手段によってカーボンナノチューブを基板から分離し、必要に応じて酸処理や酸化処理を施して精製した後、粉末状のカーボンナノチューブ集合体からなる炭素材料とすることもできる。
[金属微粒子形成工程]
始めに基板を用意する。基板の材質としては、石英ガラス、シリコン単結晶、各種セラミックや金属を用いることができる。また基板の表面性状は、所望の粒径の金属微粒子を形成するため平滑に研磨されている必要があり、表面粗さ(RMS)を数nm以下とすることが好ましい。基板の大きさ、厚さは任意であるが、基板の熱容量が大きくなると還元工程以降で金属微粒子の急速加熱が技術的に困難になりやすいため、基板の厚さは5mm程度以下とするのが良い。
基板を用意したら、所望の粒径の金属微粒子を均一に形成するため、前処理として超音波振動下で洗剤、水、アルコール系溶媒等により精密洗浄を行うことが望ましい。
金属微粒子を構成する金属には、カーボンナノチューブ成長の触媒として作用する金属を使用する。具体的には、コバルト、モリブデン、ニッケル及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属、又はこれらの金属からなる合金を用いるのが良い。
金属微粒子の粒径は、製造しようとするカーボンナノチューブのグラフェンシート層数に応じて調整する。すなわち、単層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が8nm以下であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、2層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が8nm以上11nm以下(好ましくは8nm超11nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、3層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が11nm以上15nm以下(好ましくは11nm超15nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、4層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が15nm以上18nm以下(好ましくは15nm超18nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
また、5層カーボンナノチューブを製造しようとする場合は、粒径が18nm以上21nm以下(好ましくは18nm超21nm以下)であるような金属微粒子群を基板上に形成する。
なお、金属微粒子の外形が球形から外れている場合は、最短径を粒径とみなして粒径制御を行う。
所望の粒径を有する金属微粒子を基板上に形成する第1の方法は、マグネトロンスパッタリングによる方法である。マグネトロンスパッタリング装置の成膜室内に基板を格納して高真空まで排気する。次に成膜室にアルゴンガス等の希ガスを導入し、圧力を0.1Paないし3Pa程度に調整する。ターゲットとしては前記各金属からなるものを用い、ターゲットに負の高電圧を印加してスパッタリングを行う。ターゲット表面からスパッタリングにより放出された単原子ないしクラスターサイズの金属微粒子は、ターゲットに対向する位置に置かれた基板上に付着する。
金属微粒子の粒径はスパッタリング条件によって調整可能であり、ターゲットに投入する電力を小さく、かつ放電時間を短くするほど粒径を小さくすることができる。具体的には電力密度0.2〜1W/cm2程度、放電時間は数秒ないし数十秒の範囲で調整すればよい。
また金属微粒子の粒径のばらつき(標準偏差)は放電時間の調整により制御可能である。放電時間を短くするほど粒径のばらつきが小さくなるので、適切な放電時間を選択すれば粒径のばらつきを必要に応じて所定値以下とすることができる。
所望の粒径を有する金属微粒子を基板上に形成する第2の方法は、ディップコート法である。ディップコート法は、金属イオンを含有する溶液中に基板を浸漬してから引き上げ、溶媒を除去して基板上に金属微粒子を析出させる方法である。
ディップコート法に用いる溶液としては、析出させようとする金属の酢酸塩、硝酸塩、塩化物等の金属塩を、エタノール、アセトン、水等の溶媒に溶解したものを用いることができる。
ディップコート法を用いて金属微粒子を基板上に形成する場合、金属微粒子の粒径は溶液中の金属イオン濃度により制御することができる。金属イオン濃度が低いほど金属微粒子の粒径は小さくなり、逆に金属イオン濃度が高いと粒径は大きくなる。また金属イオン濃度以外にも、基板の引き上げ速度を調整することによっても粒径を制御することが可能である。
基板の引き上げ速度は粒径のばらつきにも影響する。粒径のばらつきを小さくするためには基板の引き上げ速度を遅くすることが有効である。したがって基板の引き上げ速度は、粒径および必要に応じて粒径のばらつきが所定値となるように調整すれば良い。
マグネトロンスパッタリング法及びディップコート法以外にも、真空蒸着等の真空成膜プロセスにおいて堆積時間を短くすることによって、所望の粒径を有する金属微粒子を形成することが可能である。
[還元工程]
基板上に形成された金属微粒子は表面が酸化されていることが多く、そのままではカーボンナノチューブを均一に成長させることが困難である。そこで、カーボンナノチューブ成長前に金属微粒子表面を還元することが行われる。
金属微粒子表面の還元は、金属微粒子を形成した基板を反応炉に格納し、反応炉内を還元雰囲気として、金属微粒子を所定の還元反応温度に加熱することによって行われる。反応炉内を還元雰囲気とするには、水素ガスや希釈水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガスを反応炉に導入する。また、水素ガスを含有する還元雰囲気とする場合、水素濃度が1容量%以上であることが好ましい。さらに、反応炉内の圧力は特に制限されず、0.1Pa〜105Paの範囲の圧力が好ましい。
還元温度は300℃以上であれば金属微粒子表面を還元することができる。また、本発明においては、後述するようにカーボンナノチューブの成長が始まるまでに金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内とする必要があり、このような条件下では還元反応を十分進行させることが難しいので、金属微粒子が凝集しない400℃以下で事前に金属微粒子の表面を還元する必要がある。すなわち還元温度を300℃以上400℃以下とすれば、金属微粒子を凝集させることなく十分に還元反応を進行させることができ、結果として層数純度の高いカーボンナノチューブを製造することができるのである。また、上記の還元温度での保持時間は480秒以上であることが好ましく、600秒以上であることが特に好ましい。保持時間が上記下限未満では、金属微粒子の表面が十分に還元されず、結果としてカーボンナノチューブが十分に成長しなくなる傾向にある。
[カーボンナノチューブ集合体の製造装置]
図1は、本発明に係るカーボンナノチューブ集合体の製造方法を実現することのできる製造装置の一例である。
反応炉11の中心には、真空排気およびガス置換が可能な炉心管14が配置される。炉心管14の外側には、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーター(好ましくは赤外線炉)12が備えられており、炉心管14の内部に配置された基板ホルダー15上の基板16を均一かつ急速に加熱することができる。基板15の温度は温度計18により計測され、予めプログラムされた所定の温度となるよう、制御装置17によりヒーター12への供給電力が制御される。
反応炉11の外部には、還元性ガス供給ライン1と不活性ガス供給ライン2とがあり、それぞれのガスはバルブ3及びバルブ4を介して製造装置に供給される。それぞれのガス流量はマスフローコントローラー等の流量制御機構(不図示)により一定値に制御することができる。
還元性ガスと不活性ガスとは、バルブ5を介して原料容器21の内部に供給される。原料容器21はヒーター8及び水浴9により所定温度に加熱可能に構成されており、内部に充填された原料10の蒸気を一定蒸気圧で生成することができる。原料容器21の内部で発生した原料蒸気は、バルブ5を介して供給される還元性ガスまたは不活性ガスと共に、又は単独で、バルブ7を介して反応炉11内の炉心管14に供給される。このときバルブ6の開度を適度に調整することによって、還元性ガス、不活性ガス、有機化合物蒸気の供給量をそれぞれ独立に制御することができる。
炉心管14に供給された上記各ガスは、炉心管内に配置された基板上の金属微粒子の還元反応、または金属微粒子上のカーボンナノチューブ成長反応に使われ、副生成物等を含む排気ガスはコールドトラップ等の除害装置20及び油回転ポンプ等の排気装置19を通って系外へ排出される。
なお、図1に示した構成を有する製造装置は、還元工程だけでなく、次のCVD工程においても使用することが可能である。
[CVD工程]
還元工程により金属微粒子の表面を還元した後、これを触媒としてカーボンナノチューブを成長させる。なお、還元工程とカーボンナノチューブ成長工程とは、同一装置で連続して行うことが望ましい。表面が還元された金属微粒子を大気等の酸化性雰囲気にさらすと、微粒子表面が再び酸化して触媒活性が低下し、所望のカーボンナノチューブを成長させにくくなるためである。
カーボンナノチューブを金属微粒子上に成長させるためには、金属微粒子を所定の反応温度に加熱し、有機化合物蒸気と接触させる。以下、CVD工程の例として、図1の装置を用いる場合の手順を説明する。
前工程で基板16上の金属微粒子の表面を還元した後、金属微粒子を所定の反応温度まで加熱する。反応温度は触媒金属の種類や、原料として用いる有機化合物の種類によって異なるが、例えばエタノールを原料として用いる場合は600℃〜1000℃程度、メタンを原料として用いる場合は700℃〜1200℃程度が好ましい。
ここで反応温度が500℃より低い場合はアモルファスカーボンの成長が優位となりカーボンナノチューブの収率が低下してしまうという不具合がある。一方、反応温度を1300℃より高い温度に設定する場合には、基板や反応炉の構成材料として高温に耐えうる材料を用いなければならず、装置上の制約が大きくなる。したがって反応温度は500℃以上とすることが望ましく、1300℃以下であればより好ましい。
昇温中の雰囲気は還元性雰囲気のままでも良いし、希ガス等の不活性ガス雰囲気に置換しても良い。重要なのは、カーボンナノチューブが成長を始めるまでの期間において、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内、より好ましくは300秒以内とする点である。この上限時間には、前工程で450℃を越えた時間も含まれる。なぜならば、金属微粒子の温度が450℃を超えると、カーボンナノチューブが成長を始めていない限り、雰囲気の如何によらず金属微粒子が凝集し始めるからである。
このような制限時間内に金属微粒子の温度を所定の反応温度まで上昇させ、さらにカーボンナノチューブの成長を開始させるためには、金属微粒子の温度を急速に上昇させる必要がある。必要な昇温速度を得るための手段として、図1に示した製造装置には、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーター12が備えられている。かかるヒーター12を用いることにより、加熱対象となる金属微粒子および金属微粒子が形成された基板16を急速に加熱することが可能となる。
金属微粒子は粒径が極めて小さいため、その温度を直接測定して所望の昇温速度が得られるように制御することは困難である。そこで金属微粒子が形成された基板16の表面(金属微粒子を有する面)の温度を熱電対等の温度計18により測定することで、所定の昇温速度が得られるように、制御装置17によりヒーター12を制御する。金属微粒子は熱容量が非常に小さく、また金属であるため熱伝導性が高いので、金属微粒子の温度は基板表面温度とほぼ同一とみなすことができ、上記の制御方法により金属微粒子の温度を制御することができるのである。
なお、基板両面に金属微粒子を形成した場合でも、基板16が十分に薄く両面の温度がほぼ等しいとみなせる場合には、基板片面の温度を測定すれば十分である。
上記の加熱手段を用い、金属微粒子を所定の反応温度まで加熱したら、カーボンナノチューブの原料となる有機化合物蒸気を反応炉11の炉心管14に導入する。
カーボンナノチューブの原料となる有機化合物としては、直鎖の炭化水素類であるメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、又は直鎖の1価アルコール類であるメタノール、エタノール、プロパノールからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、又は芳香族炭化水素類であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。また、これらの化合物以外にも、金属微粒子上にカーボンナノチューブを生成可能な有機化合物を原料として用いることが可能である。
反応炉に有機化合物蒸気が導入されると、金属微粒子の温度が所定の反応温度に到達していれば、直ちにカーボンナノチューブが成長しはじめる。カーボンナノチューブが成長を始めた後は、金属微粒子表面が原料化合物や炭素、反応中間体等により覆われるため、反応温度が450℃を超えていたとしてもそれ以上金属微粒子の凝集が進行することなく、成長開始時における粒径が維持され、その粒径に応じたグラフェンシート層数のカーボンナノチューブが連続的に成長する。
したがって金属微粒子の凝集を抑制し、所望のグラフェンシート層数のカーボンナノチューブのみを選択的に製造するためには、金属微粒子の加熱を開始してからカーボンナノチューブが成長を開始するまでの期間において、金属微粒子の温度が450℃を超える時間を所定の時間内とすればよく、カーボンナノチューブが成長を開始する時点は、金属微粒子が所定の反応温度に到達し、かつ反応炉に原料となる有機化合物蒸気が導入された時点とすることができる。ここで金属微粒子の温度が450℃を超える時間は600秒以内とする必要があり、300秒以内とすることがより好ましい。450℃を越える時間が短いほど、金属微粒子の凝集程度を低く抑えることができ、カーボンナノチューブの層数純度が向上するからである。
以上の手順により、金属微粒子上に所望の長さのカーボンナノチューブを成長させたら、有機化合物蒸気の供給を止め、反応炉11内を常温に戻して、カーボンナノチューブが表面に形成された基板を取り出す。カーボンナノチューブが表面に形成された基板は、応用用途によってはそのままカーボンナノチューブ集合体として用いることができるし、また適当な手段によってカーボンナノチューブを基板から分離し、必要に応じて酸処理や酸化処理を施して精製した後、粉末状のカーボンナノチューブ集合体からなる炭素材料とすることもできる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、石英ガラス基板を用い、コバルト−モリブデンを触媒として、単層カーボンナノチューブを製造した。
始めにコバルト−モリブデン含有エタノール溶液を調製した。酢酸コバルト4水和物(純度99%以上)及び酢酸モリブデン(2量体、純度99%以上)を所定量秤量し、エタノール(純度99.5%以上)に溶解して、コバルト濃度が0.01質量%、モリブデン濃度が0.01質量%の溶液を調製した。なおコバルト及びモリブデンの濃度は金属換算値である。
次に、表面を光学研磨した20mm×20mm×0.5nmおよびφ30mm×3mmの2種類の石英ガラス基板を用意し、前記コバルト−モリブデン溶液中に10秒間浸漬した後、8mm/秒の速度で引き上げた。引き上げは大気中で行った。溶液から引き上げた基板は大気中で加熱することにより、溶媒であるアルコールを除去し、コバルト−モリブデン微粒子を基板上に形成した。
上記の工程により、表面に所定粒径のコバルト−モリブデン微粒子を形成した基板を、図1に示す構造を有する製造装置の炉心管14に格納した。このとき基板の温度を計測するため、基板上面に温度計18を接触させて固定した。
次に反応炉を密閉し、内部を0.4Paまで真空排気した後、バルブ3及びバルブ6を開放して水素ガスを供給し、炉心管14の内圧を70kPaとした。炉心管14の内圧を維持しながらヒーター12への通電を開始し、基板温度が5℃/秒で上昇するように制御装置17によりヒーター(赤外線炉、アルバック理工株式会社製、RHL−P610)12への供給電力を制御した。
基板温度が400℃に達したら、その状態を30分間保持してコバルト−モリブデン微粒子の表面を十分に還元し、カーボンナノチューブ成長のための触媒活性を付与した。
上記の還元工程が終了した後、引き続き反応温度に設定した800℃まで1.3℃/秒の昇温速度で加熱し、800℃に達したら直ちにバルブ5及びバルブ7を開放して、エタノールを充填した原料容器21からエタノール蒸気を反応炉に導入し、カーボンナノチューブの成長を開始した。このとき基板温度が450℃を超えてからカーボンナノチューブが成長し始めるまでの時間Δtは、約270秒であった。
カーボンナノチューブの成長中は基板16の温度を800℃、炉心管14の内圧を1kPaに維持し、1時間保持した後、水素ガス及びエタノール蒸気の導入を止め、バルブ4を開放して炉心管14内にArガスを流通させながら基板16を室温まで冷却した。図2は工程全体の温度プロファイルである。
また、上記のカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子の粒径を以下のようにして測定した。すなわち、上記の還元処理が終了した後、引き続き反応温度に設定した800℃に到達してカーボンナノチューブの成長が始まる直前に、エタノール蒸気を導入することなく基板を室温まで急冷し、その基板上の金属微粒子を高分解能SEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した。図3に、実施例1において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。図3に示すSEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定したところ、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:2.1〜8.0nm、平均値:5.6nm、標準偏差:1.29)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数及び外径を確認するため、基板上の10mm×10mmの領域からカーボンナノチューブを機械的に採取し、観察用の銅メッシュにのせて透過型電子顕微鏡(以下、TEMというにより観察を行った。観察に使用したTEMは日立製作所製HF−2000型、加速電圧は200kVとした。図5〜図16は、本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図5は最も低倍率で観察したものであり、Iの領域を拡大観察したものが図6である。さらに図6のa、b、cの領域を拡大したものが、それぞれ図7、図10、図13である。
図7における領域a−1の拡大像が図8であるが、カーボンナノチューブのTEM像においてカーボンナノチューブの壁面を構成するグラフェンシートは暗い線として観察され、図8のカーボンナノチューブ壁面には1層のみが認められるので、単層カーボンナノチューブであると判断することができる。同様に図7における領域a−2の拡大像である図9においても、観察されるカーボンナノチューブの像において壁面にはグラフェンシート1層のみが認められるので、単層カーボンナノチューブと判断される。以下同様に、図10における領域b−1及びb−2の拡大像である図11及び図12、図13における領域c−1、c−2、c−3の拡大像である図14、図15、図16で観察されるいずれのカーボンナノチューブも単層カーボンナノチューブであることが明らかである。
さらに、銅メッシュ上の別の部分を観察してみた。図56は、低倍率のTEM像で、繊維状物質であることがわかる。図56を拡大した図57からは、繊維状物質が互いにつたのように絡み合っている様子がわかる。図57を拡大した図58からは、カーボンナノチューブの多くが互いに束(バンドル)を形成しているが、一部に孤立している部分も見られる。図58をさらに拡大した図59、図60、図61からは、全てのカーボンナノチューブが、グラフェンシート1層のみからなる単層カーボンナノチューブであると認められる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブの全てが単層カーボンナノチューブ(SWCNTs:100%)であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、SWCNTsの直径の範囲は1.5〜3.1nm、平均値は2.0nmであった。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定したところ、図20及び図21に示すように、観測されたGバンドは、SWCNTsに特有の位置および形状を呈していた。また、結晶性の乱れに起因するDバンドの相対強度が低いことから、良質なSWCNTsが合成できていることが確認された。さらに、SWCNTs断面の伸縮振動に起因するRBM(ラジアルブリージングモード)が観測されていることからも、SWCNTsが合成できていることが確認された。また、図21中に示すように、近似式を用いて励起波長に共鳴しているチューブの直径を推測することができた。なお、ラマン分光の励起光源としては、Ar+イオンレーザ(514.5nm)を用いた。
なお、本実施例において基板形状による生成物性状の差は認められず、これは以下の実施例及び比較例についても同様であった。
(実施例2)
実施例2では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.02質量%、モリブデン0.02質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブの全てが単層カーボンナノチューブ(SWCNTs:100%)であった。
(実施例3)
実施例3では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.03質量%、モリブデン0.03質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。図3に、実施例3において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。図3に示すSEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定したところ、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:6.1〜12.0nm、平均値:9.4nm、標準偏差:1.32)を有していることが確認された。
図22は本実施例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近の走査型電子顕微鏡(以下SEM)写真である。観察に用いたSEMは日立製作所製S−5000H型、加速電圧は5kVとした。図22によれば、基板表面にカーボンナノチューブが一様に高密度に成長していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図23〜図38は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図23は最も低倍率で観察したものであり、IIの領域を拡大観察したものが図24である。またIIIの領域を拡大観察したものが図36である。さらにIIの領域から、d、e、f、gのそれぞれの領域を拡大観察したものが図25、図30、図32、図34であり、IIIの領域からiの領域を拡大観察したものが図37である。
図25におけるd−1の拡大像が図26であるが、図26で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート2層が認められるので2層カーボンナノチューブと判断することができる。また同様にd−2からd−4の拡大像である図27から図29で観察されるカーボンナノチューブも2層カーボンナノチューブである。以下同様に、図30における領域e−1(図31)、図32における領域f−1(図33)、図34における領域g−1(図35)、図37における領域i−1(図38)で観察されるカーボンナノチューブも主として2層カーボンナノチューブであると認められる。
さらに、銅メッシュ上の別の部分を観察してみた。図62は、低倍率のTEM像で、繊維状物質が毛玉のように丸まっている様子がわかる。図62を拡大した図63からは、繊維状物質が互いに孤立しており、実施例1の単層カーボンナノチューブのような束を形成していないことがわかる。図63を拡大した図64と図65からは、観察されるカーボンナノチューブのほとんどが、グラフェンシート2層からなる2層カーボンナノチューブであると認められる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが6.3%、DWCNTsが87.5%、3WCNTsが6.2%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
SWCNTsの直径の範囲:1.4nm
SWCNTsの直径の平均値:1.4nm
DWCNTsの直径の範囲:2.5〜3.7nm
DWCNTsの直径の平均値:3.1nm
3WCNTsの直径の範囲:3.9〜4.2nm
3WCNTsの直径の平均値:4.1nm。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定したところ、図39に示すように、観測されたGバンドは、DWCNTsに特有の位置および形状を呈していた。また、結晶性の乱れに起因するDバンドの相対強度が低いことから、良質なDWCNTsが合成できていることが確認された。なお、ラマン分光の励起光源としては、Ar+イオンレーザ(514.5nm)を用いた。
(実施例4)
実施例4では、還元雰囲気中400℃における保持時間を600秒(10分)とした以外は実施例3と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
図40は本実施例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図40によれば、基板表面にカーボンナノチューブが一様に高密度に成長していることが確認された。
(参考例1)
参考例1では、還元雰囲気中400℃における保持時間を300秒(5分)とした以外は実施例3と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
図41は本参考例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図41によれば、基板上の金属微粒子の還元が不十分で金属酸化物粒子の状態のものが多く、カーボンナノチューブが十分に成長していないことが確認された。
(実施例5)
実施例5では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.04質量%、モリブデン0.04質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。図3に、実施例5において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。
本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが2.2%、DWCNTsが51.1%、3WCNTsが26.7%、4WCNTsが17.8%、5WCNTSが2.2%であった。
(実施例6)
実施例6では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.06質量%、モリブデン0.06質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図42に示す粒径分布(触媒直径の範囲:4.0〜16.0nm、平均値:10.8nm、標準偏差:2.31)を有していることが確認された。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図43に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが17.6%、DWCNTsが15.7%、3WCNTsが56.9%、4WCNTsが9.8%であった。
図44は本実施例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図44によれば、基板表面にカーボンナノチューブが一様に高密度に成長していることが確認された。
(比較例1)
比較例1では、先ず、実施例6と同様にしてコバルト−モリブデン微粒子を基板上に形成した。
次に、この基板を、図1に示す構造を有する製造装置の炉心管14に格納した。次に反応炉を密閉し、内部を0.4Paまで真空排気した後、バルブ3及びバルブ6を開放して水素ガスを供給し、炉心管14の内圧を70kPaとした。炉心管14の内圧を維持しながらヒーター12への通電を開始し、基板温度が0.5℃/秒で上昇するように制御装置17によりヒーター12への供給電力を制御した。比較例1では途中温度で保持することをせず、反応温度に設定した800℃まで連続的に昇温させながら、同時に還元反応を行わせた。基板温度が800℃に達したら直ちにバルブ5及びバルブ7を開放して、水素ガスに加えてエタノール蒸気を炉心管14に導入し、カーボンナノチューブの成長を開始した。このとき基板温度が450℃を超えてからカーボンナノチューブが成長し始めるまでの時間Δtは、約700秒であった。
カーボンナノチューブの成長中は基板16の温度を800℃、炉心管14の内圧を1kPaに維持し、1時間保持した後、水素ガス及びエタノール蒸気の導入を止めて、炉心管14内にArガスを流通させながら基板16を室温まで冷却した。図45は工程全体の温度プロファイルである。
また、実施例1と同様にして、本比較例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図42に示す粒径分布(触媒直径の範囲:2.0〜16.0nm、平均値:8.0nm、標準偏差:3.01)を有していることが確認された。
さらに、本比較例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図43に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが51.5%、DWCNTsが20.6%、3WCNTsが19.9%、4WCNTsが7.3%、5WCNTsが0.7%であり、最も割合の多かったSWCNTsでもその占める割合は51.5%に過ぎなかった。
(実施例7)
実施例7では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.07質量%、モリブデン0.07質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。図3に、実施例3において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。図3に示すSEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定したところ、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:8.1〜17.0nm、平均値:12.7nm、標凖偏差:2.07)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図46〜図50は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。図46〜図50で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート3層が認められるので3層カーボンナノチューブと判断することができる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが3.2%、DWCNTsが6.5%、3WCNTsが74.2%、4WCNTsが16.1%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
SWCNTsの直径の範囲:1.5nm
SWCNTsの直径の平均値:1.5nm
DWCNTsの直径の範囲:2.5〜4.0nm
DWCNTsの直径の平均値:3.3nm
3WCNTsの直径の範囲:3.5〜4.9nm
3WCNTsの直径の平均値:4.1nm
4WCNTsの直径の範囲:4.2〜5.0nm
4WCNTsの直径の平均値:4.6nm。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定したところ、図51に示すように、観測されたGバンドおよびDバンドの位置、形状、強度比は、3層以上のMWCNTsに特有のものであることが確認された。なお、ラマン分光の励起光源としては、Ar+イオンレーザ(514.5nm)を用いた。
(実施例8)
実施例8では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.1質量%、モリブデン0.1質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが3.1%、DWCNTsが4.2%、3WCNTsが76.0%、4WCNTsが16.7%であった。
(実施例9)
実施例9では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.5質量%、モリブデン0.5質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:11.1〜21.0nm、平均値:15.2nm、標準偏差:1.76)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図52は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。図52で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート4層が認められるので4層カーボンナノチューブと判断することができる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、3WCNTsが22.9%、4WCNTsが61.9%、5WCNTsが15.2%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
3WCNTsの直径の範囲:3.9〜4.7nm
3WCNTsの直径の平均値:4.3nm
4WCNTsの直径の範囲:4.2〜5.5nm
4WCNTsの直径の平均値:4.8nm
5WCNTsの直径の範囲:5.2〜5.7nm
5WCNTsの直径の平均値:5.5nm。
(実施例10)
実施例10では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト1.0質量%、モリブデン1.0質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:13.1〜22.0nm、平均値:18.9nm、標準偏差:1.98)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図53は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。図53で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート5層が認められるので5層カーボンナノチューブと判断することができる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、3WCNTsが6.3%、4WCNTsが23.5%、5WCNTsが59.0%、MWCNTsが11.2%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
3WCNTsの直径の範囲:4.2〜4.8nm
3WCNTsの直径の平均値:4.5nm
4WCNTsの直径の範囲:4.6〜5.3nm
4WCNTsの直径の平均値:5.0nm
5WCNTsの直径の範囲:5.3〜6.5nm
5WCNTsの直径の平均値:5.8nm
MWCNTsの直径の範囲:5.8〜6.5nm
MWCNTsの直径の平均値:6.2nm。
(実施例11〜15)
実施例11〜15では、石英ガラス基板を用い、鉄を触媒としてカーボンナノチューブを製造した。
始めに、表面を光学研磨した20mm×20mm×0.5mmおよびφ30mm×3mmの2種類の石英ガラス基板を用意し、マグネトロンスパッタリング装置(北野精機株式会社製、形式名:TWS)の成膜室内に基板を格納して高真空まで排気した。次に成膜室にアルゴンガスを導入し、圧力を2Paに調整した。ターゲットとしては前段でタングステン、後段で鉄からなるものを用い、ターゲットに負の高電圧を印加してスパッタリングを行った。このようにしてスパッタ法によって基板上に前段でタングステン薄膜を2nmの厚さで堆積させ、次いで後段で鉄薄膜を0.2nm(実施例11)、0.4nm(実施例12)、0.6nm(実施例13)、0.7nm(実施例14)、0.8nm(実施例15)の厚さとなるようにそれぞれ堆積させた。
次に、上記の工程により表面に鉄薄膜を形成した基板を用いた以外は実施例1と同様にして、還元処理を施した後に鉄微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の鉄微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、以下に示す粒径分布を有していることが確認された。
実施例11 触媒直径の範囲:2.0〜7.0nm
実施例12 触媒直径の範囲:6.0〜12.0nm
実施例13 触媒直径の範囲:8.0〜16.0nm
実施例14 触媒直径の範囲:10.0〜19.0nm
実施例15 触媒直径の範囲:16.0〜22.0nm。
次に、実施例1と同様にしてTEM観察により本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、表1に示す結果が得られた。表1に示す結果から明らかなように、鉄を触媒として用いた場合も、鉄膜厚を変化させることで触媒粒径を変化させることができ、カーボンナノチューブのグラフェンシート層数を制御できることが確認された。
図54は実施例12により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図54によれば、基板表面にカーボンナノチューブが密集して垂直方向に成長していることが確認された。
(実施例16)
実施例16は、本発明のカーボンナノチューブ集合体(炭素材料)を電子源として用いた電界放出型ディスプレイ装置に関するものである。図55は該ディスプレイの概略断面図であり、33はエミッタ電極、34は絶縁体、35はゲート電極、36は電子源、37は蛍光体、38は直流電源である。
実施例16の電界放出型ディスプレイ装置において、電子源36は本発明のカーボンナノチューブ集合体で構成されている。直流電源38により負電位にバイアスされたエミッタ電極33上の電子源36からは、電界放出現象により電子が放出され、対向する蛍光体37に衝突して蛍光を発生する。このときゲート電極35は電子引き出し電極として作用し、電子源36から電子を引き出すという機能を有する。また絶縁体34は、複数の電子源36間の絶縁層として作用し、電子源36間で放電することを防止する機能を有する。
本発明に係る電界放出型ディスプレイは、電子源として層数純度の高いカーボンナノチューブを用いているので、層数純度が低い多種類のカーボンナノチューブの混合物を電子源として用いたディスプレイと比較して、輝度むらや寿命むらの低減が期待できる。
(実施例1)
実施例1では、石英ガラス基板を用い、コバルト−モリブデンを触媒として、単層カーボンナノチューブを製造した。
始めにコバルト−モリブデン含有エタノール溶液を調製した。酢酸コバルト4水和物(純度99%以上)及び酢酸モリブデン(2量体、純度99%以上)を所定量秤量し、エタノール(純度99.5%以上)に溶解して、コバルト濃度が0.01質量%、モリブデン濃度が0.01質量%の溶液を調製した。なおコバルト及びモリブデンの濃度は金属換算値である。
次に、表面を光学研磨した20mm×20mm×0.5nmおよびφ30mm×3mmの2種類の石英ガラス基板を用意し、前記コバルト−モリブデン溶液中に10秒間浸漬した後、8mm/秒の速度で引き上げた。引き上げは大気中で行った。溶液から引き上げた基板は大気中で加熱することにより、溶媒であるアルコールを除去し、コバルト−モリブデン微粒子を基板上に形成した。
上記の工程により、表面に所定粒径のコバルト−モリブデン微粒子を形成した基板を、図1に示す構造を有する製造装置の炉心管14に格納した。このとき基板の温度を計測するため、基板上面に温度計18を接触させて固定した。
次に反応炉を密閉し、内部を0.4Paまで真空排気した後、バルブ3及びバルブ6を開放して水素ガスを供給し、炉心管14の内圧を70kPaとした。炉心管14の内圧を維持しながらヒーター12への通電を開始し、基板温度が5℃/秒で上昇するように制御装置17によりヒーター(赤外線炉、アルバック理工株式会社製、RHL−P610)12への供給電力を制御した。
基板温度が400℃に達したら、その状態を30分間保持してコバルト−モリブデン微粒子の表面を十分に還元し、カーボンナノチューブ成長のための触媒活性を付与した。
上記の還元工程が終了した後、引き続き反応温度に設定した800℃まで1.3℃/秒の昇温速度で加熱し、800℃に達したら直ちにバルブ5及びバルブ7を開放して、エタノールを充填した原料容器21からエタノール蒸気を反応炉に導入し、カーボンナノチューブの成長を開始した。このとき基板温度が450℃を超えてからカーボンナノチューブが成長し始めるまでの時間Δtは、約270秒であった。
カーボンナノチューブの成長中は基板16の温度を800℃、炉心管14の内圧を1kPaに維持し、1時間保持した後、水素ガス及びエタノール蒸気の導入を止め、バルブ4を開放して炉心管14内にArガスを流通させながら基板16を室温まで冷却した。図2は工程全体の温度プロファイルである。
また、上記のカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子の粒径を以下のようにして測定した。すなわち、上記の還元処理が終了した後、引き続き反応温度に設定した800℃に到達してカーボンナノチューブの成長が始まる直前に、エタノール蒸気を導入することなく基板を室温まで急冷し、その基板上の金属微粒子を高分解能SEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した。図3に、実施例1において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。図3に示すSEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定したところ、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:2.1〜8.0nm、平均値:5.6nm、標準偏差:1.29)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数及び外径を確認するため、基板上の10mm×10mmの領域からカーボンナノチューブを機械的に採取し、観察用の銅メッシュにのせて透過型電子顕微鏡(以下、TEMというにより観察を行った。観察に使用したTEMは日立製作所製HF−2000型、加速電圧は200kVとした。図5〜図16は、本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図5は最も低倍率で観察したものであり、Iの領域を拡大観察したものが図6である。さらに図6のa、b、cの領域を拡大したものが、それぞれ図7、図10、図13である。
図7における領域a−1の拡大像が図8であるが、カーボンナノチューブのTEM像においてカーボンナノチューブの壁面を構成するグラフェンシートは暗い線として観察され、図8のカーボンナノチューブ壁面には1層のみが認められるので、単層カーボンナノチューブであると判断することができる。同様に図7における領域a−2の拡大像である図9においても、観察されるカーボンナノチューブの像において壁面にはグラフェンシート1層のみが認められるので、単層カーボンナノチューブと判断される。以下同様に、図10における領域b−1及びb−2の拡大像である図11及び図12、図13における領域c−1、c−2、c−3の拡大像である図14、図15、図16で観察されるいずれのカーボンナノチューブも単層カーボンナノチューブであることが明らかである。
さらに、銅メッシュ上の別の部分を観察してみた。図56は、低倍率のTEM像で、繊維状物質であることがわかる。図56を拡大した図57からは、繊維状物質が互いにつたのように絡み合っている様子がわかる。図57を拡大した図58からは、カーボンナノチューブの多くが互いに束(バンドル)を形成しているが、一部に孤立している部分も見られる。図58をさらに拡大した図59、図60、図61からは、全てのカーボンナノチューブが、グラフェンシート1層のみからなる単層カーボンナノチューブであると認められる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブの全てが単層カーボンナノチューブ(SWCNTs:100%)であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、SWCNTsの直径の範囲は1.5〜3.1nm、平均値は2.0nmであった。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定したところ、図20及び図21に示すように、観測されたGバンドは、SWCNTsに特有の位置および形状を呈していた。また、結晶性の乱れに起因するDバンドの相対強度が低いことから、良質なSWCNTsが合成できていることが確認された。さらに、SWCNTs断面の伸縮振動に起因するRBM(ラジアルブリージングモード)が観測されていることからも、SWCNTsが合成できていることが確認された。また、図21中に示すように、近似式を用いて励起波長に共鳴しているチューブの直径を推測することができた。なお、ラマン分光の励起光源としては、Ar+イオンレーザ(514.5nm)を用いた。
なお、本実施例において基板形状による生成物性状の差は認められず、これは以下の実施例及び比較例についても同様であった。
(実施例2)
実施例2では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.02質量%、モリブデン0.02質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブの全てが単層カーボンナノチューブ(SWCNTs:100%)であった。
(実施例3)
実施例3では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.03質量%、モリブデン0.03質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。図3に、実施例3において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。図3に示すSEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定したところ、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:6.1〜12.0nm、平均値:9.4nm、標準偏差:1.32)を有していることが確認された。
図22は本実施例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近の走査型電子顕微鏡(以下SEM)写真である。観察に用いたSEMは日立製作所製S−5000H型、加速電圧は5kVとした。図22によれば、基板表面にカーボンナノチューブが一様に高密度に成長していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図23〜図38は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。
図23は最も低倍率で観察したものであり、IIの領域を拡大観察したものが図24である。またIIIの領域を拡大観察したものが図36である。さらにIIの領域から、d、e、f、gのそれぞれの領域を拡大観察したものが図25、図30、図32、図34であり、IIIの領域からiの領域を拡大観察したものが図37である。
図25におけるd−1の拡大像が図26であるが、図26で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート2層が認められるので2層カーボンナノチューブと判断することができる。また同様にd−2からd−4の拡大像である図27から図29で観察されるカーボンナノチューブも2層カーボンナノチューブである。以下同様に、図30における領域e−1(図31)、図32における領域f−1(図33)、図34における領域g−1(図35)、図37における領域i−1(図38)で観察されるカーボンナノチューブも主として2層カーボンナノチューブであると認められる。
さらに、銅メッシュ上の別の部分を観察してみた。図62は、低倍率のTEM像で、繊維状物質が毛玉のように丸まっている様子がわかる。図62を拡大した図63からは、繊維状物質が互いに孤立しており、実施例1の単層カーボンナノチューブのような束を形成していないことがわかる。図63を拡大した図64と図65からは、観察されるカーボンナノチューブのほとんどが、グラフェンシート2層からなる2層カーボンナノチューブであると認められる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが6.3%、DWCNTsが87.5%、3WCNTsが6.2%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
SWCNTsの直径の範囲:1.4nm
SWCNTsの直径の平均値:1.4nm
DWCNTsの直径の範囲:2.5〜3.7nm
DWCNTsの直径の平均値:3.1nm
3WCNTsの直径の範囲:3.9〜4.2nm
3WCNTsの直径の平均値:4.1nm。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定したところ、図39に示すように、観測されたGバンドは、DWCNTsに特有の位置および形状を呈していた。また、結晶性の乱れに起因するDバンドの相対強度が低いことから、良質なDWCNTsが合成できていることが確認された。なお、ラマン分光の励起光源としては、Ar+イオンレーザ(514.5nm)を用いた。
(実施例4)
実施例4では、還元雰囲気中400℃における保持時間を600秒(10分)とした以外は実施例3と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
図40は本実施例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図40によれば、基板表面にカーボンナノチューブが一様に高密度に成長していることが確認された。
(参考例1)
参考例1では、還元雰囲気中400℃における保持時間を300秒(5分)とした以外は実施例3と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
図41は本参考例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図41によれば、基板上の金属微粒子の還元が不十分で金属酸化物粒子の状態のものが多く、カーボンナノチューブが十分に成長していないことが確認された。
(実施例5)
実施例5では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.04質量%、モリブデン0.04質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。図3に、実施例5において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。
本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが2.2%、DWCNTsが51.1%、3WCNTsが26.7%、4WCNTsが17.8%、5WCNTSが2.2%であった。
(実施例6)
実施例6では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.06質量%、モリブデン0.06質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図42に示す粒径分布(触媒直径の範囲:4.0〜16.0nm、平均値:10.8nm、標準偏差:2.31)を有していることが確認された。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図43に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが17.6%、DWCNTsが15.7%、3WCNTsが56.9%、4WCNTsが9.8%であった。
図44は本実施例により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図44によれば、基板表面にカーボンナノチューブが一様に高密度に成長していることが確認された。
(比較例1)
比較例1では、先ず、実施例6と同様にしてコバルト−モリブデン微粒子を基板上に形成した。
次に、この基板を、図1に示す構造を有する製造装置の炉心管14に格納した。次に反応炉を密閉し、内部を0.4Paまで真空排気した後、バルブ3及びバルブ6を開放して水素ガスを供給し、炉心管14の内圧を70kPaとした。炉心管14の内圧を維持しながらヒーター12への通電を開始し、基板温度が0.5℃/秒で上昇するように制御装置17によりヒーター12への供給電力を制御した。比較例1では途中温度で保持することをせず、反応温度に設定した800℃まで連続的に昇温させながら、同時に還元反応を行わせた。基板温度が800℃に達したら直ちにバルブ5及びバルブ7を開放して、水素ガスに加えてエタノール蒸気を炉心管14に導入し、カーボンナノチューブの成長を開始した。このとき基板温度が450℃を超えてからカーボンナノチューブが成長し始めるまでの時間Δtは、約700秒であった。
カーボンナノチューブの成長中は基板16の温度を800℃、炉心管14の内圧を1kPaに維持し、1時間保持した後、水素ガス及びエタノール蒸気の導入を止めて、炉心管14内にArガスを流通させながら基板16を室温まで冷却した。図45は工程全体の温度プロファイルである。
また、実施例1と同様にして、本比較例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図42に示す粒径分布(触媒直径の範囲:2.0〜16.0nm、平均値:8.0nm、標準偏差:3.01)を有していることが確認された。
さらに、本比較例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図43に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが51.5%、DWCNTsが20.6%、3WCNTsが19.9%、4WCNTsが7.3%、5WCNTsが0.7%であり、最も割合の多かったSWCNTsでもその占める割合は51.5%に過ぎなかった。
(実施例7)
実施例7では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.07質量%、モリブデン0.07質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。図3に、実施例3において得られた基板上の金属微粒子のSEM写真を示す。図3に示すSEM像で白く見える還元された金属微粒子各々に対して定規を当てて粒径を測定したところ、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:8.1〜17.0nm、平均値:12.7nm、標凖偏差:2.07)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図46〜図50は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。図46〜図50で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート3層が認められるので3層カーボンナノチューブと判断することができる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが3.2%、DWCNTsが6.5%、3WCNTsが74.2%、4WCNTsが16.1%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
SWCNTsの直径の範囲:1.5nm
SWCNTsの直径の平均値:1.5nm
DWCNTsの直径の範囲:2.5〜4.0nm
DWCNTsの直径の平均値:3.3nm
3WCNTsの直径の範囲:3.5〜4.9nm
3WCNTsの直径の平均値:4.1nm
4WCNTsの直径の範囲:4.2〜5.0nm
4WCNTsの直径の平均値:4.6nm。
さらに、本実施例で製造したカーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定したところ、図51に示すように、観測されたGバンドおよびDバンドの位置、形状、強度比は、3層以上のMWCNTsに特有のものであることが確認された。なお、ラマン分光の励起光源としては、Ar+イオンレーザ(514.5nm)を用いた。
(実施例8)
実施例8では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.1質量%、モリブデン0.1質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、SWCNTsが3.1%、DWCNTsが4.2%、3WCNTsが76.0%、4WCNTsが16.7%であった。
(実施例9)
実施例9では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト0.5質量%、モリブデン0.5質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:11.1〜21.0nm、平均値:15.2nm、標準偏差:1.76)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図52は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。図52で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート4層が認められるので4層カーボンナノチューブと判断することができる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、3WCNTsが22.9%、4WCNTsが61.9%、5WCNTsが15.2%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
3WCNTsの直径の範囲:3.9〜4.7nm
3WCNTsの直径の平均値:4.3nm
4WCNTsの直径の範囲:4.2〜5.5nm
4WCNTsの直径の平均値:4.8nm
5WCNTsの直径の範囲:5.2〜5.7nm
5WCNTsの直径の平均値:5.5nm。
(実施例10)
実施例10では、コバルト−モリブデン微粒子を形成するための溶液としてコバルト1.0質量%、モリブデン1.0質量%のものを用いた以外は実施例1と同様にして、コバルト−モリブデン微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の金属微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、図4に示す粒径分布(触媒直径の範囲:13.1〜22.0nm、平均値:18.9nm、標準偏差:1.98)を有していることが確認された。
次に、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を確認するため、実施例1と同様にしてTEM観察を行った。図53は本実施例で製造したカーボンナノチューブのTEM写真である。図53で観察されるカーボンナノチューブの像には、壁面にグラフェンシート5層が認められるので5層カーボンナノチューブと判断することができる。
以上の観察により、本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、図17及び図18に示すように、無作為に抽出した計100本のカーボンナノチューブのうち、3WCNTsが6.3%、4WCNTsが23.5%、5WCNTsが59.0%、MWCNTsが11.2%であった。また、本実施例で製造したカーボンナノチューブの直径は、図19にも示すように、以下の通りであった。
3WCNTsの直径の範囲:4.2〜4.8nm
3WCNTsの直径の平均値:4.5nm
4WCNTsの直径の範囲:4.6〜5.3nm
4WCNTsの直径の平均値:5.0nm
5WCNTsの直径の範囲:5.3〜6.5nm
5WCNTsの直径の平均値:5.8nm
MWCNTsの直径の範囲:5.8〜6.5nm
MWCNTsの直径の平均値:6.2nm。
(実施例11〜15)
実施例11〜15では、石英ガラス基板を用い、鉄を触媒としてカーボンナノチューブを製造した。
始めに、表面を光学研磨した20mm×20mm×0.5mmおよびφ30mm×3mmの2種類の石英ガラス基板を用意し、マグネトロンスパッタリング装置(北野精機株式会社製、形式名:TWS)の成膜室内に基板を格納して高真空まで排気した。次に成膜室にアルゴンガスを導入し、圧力を2Paに調整した。ターゲットとしては前段でタングステン、後段で鉄からなるものを用い、ターゲットに負の高電圧を印加してスパッタリングを行った。このようにしてスパッタ法によって基板上に前段でタングステン薄膜を2nmの厚さで堆積させ、次いで後段で鉄薄膜を0.2nm(実施例11)、0.4nm(実施例12)、0.6nm(実施例13)、0.7nm(実施例14)、0.8nm(実施例15)の厚さとなるようにそれぞれ堆積させた。
次に、上記の工程により表面に鉄薄膜を形成した基板を用いた以外は実施例1と同様にして、還元処理を施した後に鉄微粒子を触媒として石英ガラス基板上にカーボンナノチューブ集合体を製造した。
また、実施例1と同様にして、本実施例においてカーボンナノチューブの成長が始まる直前の鉄微粒子を高分解能SEMにて観察した。その結果、以下に示す粒径分布を有していることが確認された。
実施例11 触媒直径の範囲:2.0〜7.0nm
実施例12 触媒直径の範囲:6.0〜12.0nm
実施例13 触媒直径の範囲:8.0〜16.0nm
実施例14 触媒直径の範囲:10.0〜19.0nm
実施例15 触媒直径の範囲:16.0〜22.0nm。
次に、実施例1と同様にしてTEM観察により本実施例で製造したカーボンナノチューブのグラフェンシート層数を評価した結果、表1に示す結果が得られた。表1に示す結果から明らかなように、鉄を触媒として用いた場合も、鉄膜厚を変化させることで触媒粒径を変化させることができ、カーボンナノチューブのグラフェンシート層数を制御できることが確認された。
図54は実施例12により製造したカーボンナノチューブ集合体の基板表面付近のSEM写真である。図54によれば、基板表面にカーボンナノチューブが密集して垂直方向に成長していることが確認された。
実施例16は、本発明のカーボンナノチューブ集合体(炭素材料)を電子源として用いた電界放出型ディスプレイ装置に関するものである。図55は該ディスプレイの概略断面図であり、33はエミッタ電極、34は絶縁体、35はゲート電極、36は電子源、37は蛍光体、38は直流電源である。
実施例16の電界放出型ディスプレイ装置において、電子源36は本発明のカーボンナノチューブ集合体で構成されている。直流電源38により負電位にバイアスされたエミッタ電極33上の電子源36からは、電界放出現象により電子が放出され、対向する蛍光体37に衝突して蛍光を発生する。このときゲート電極35は電子引き出し電極として作用し、電子源36から電子を引き出すという機能を有する。また絶縁体34は、複数の電子源36間の絶縁層として作用し、電子源36間で放電することを防止する機能を有する。
本発明に係る電界放出型ディスプレイは、電子源として層数純度の高いカーボンナノチューブを用いているので、層数純度が低い多種類のカーボンナノチューブの混合物を電子源として用いたディスプレイと比較して、輝度むらや寿命むらの低減が期待できる。
本発明のカーボンナノチューブ集合体の製造方法によれば、n層カーボンナノチューブを高い純度で選択的に製造することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ集合体は、主としてカーボンナノチューブからなる炭素材料であって、含有するカーボンナノチューブのうちn層カーボンナノチューブ(n=2ないし5のいずれか)の占める割合が高く、これまでにない層数純度の高いカーボンナノチューブ集合体であるので、グラフェンシート層数に依存する物性を利用した各種デバイス、例えば電子放出特性を利用する電界放出型ディスプレイの電子源や、導電性を利用する集積回路の層間配線材料などとして利用することができる。
Claims (23)
- 基板上に所定の粒径を有する金属微粒子を形成する工程と、
前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃〜400℃の所定温度に加熱して表面を還元する工程と、
前記金属微粒子を反応炉内で所定の反応温度に加熱する工程と、
前記金属微粒子の加熱を開始した後、カーボンナノチューブの成長を開始するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間が600秒以内となるように反応炉に有機化合物蒸気を導入して前記金属微粒子上にカーボンナノチューブを成長させる工程と、
を含むカーボンナノチューブ集合体の製造方法。 - 前記金属微粒子の加熱を開始した後、前記反応温度において反応炉に有機化合物蒸気を導入するまでの期間において、前記金属微粒子の温度が450℃を超える時間を600秒以内とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記金属微粒子の表面を還元する工程において、前記金属微粒子を還元雰囲気中で300℃〜400℃の所定温度に600秒以上保持する、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記所定の反応温度が500℃以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記金属微粒子の加熱が、波長1.0μm〜1.7μmの範囲にエネルギー分光分布のピークを有する輻射ヒーターによって行われる、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記金属微粒子が、コバルト、モリブデン、ニッケル及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属、またはこれらの金属の合金からなる、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記金属微粒子を形成する工程が、コバルトイオン、モリブデンイオン、ニッケルイオン及び鉄イオンからなる群から選ばれた少なくとも1種のイオンを含有する溶液中に基板を浸漬した後に引き上げるものである、請求項6に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記基板上に金属微粒子を形成する工程が、コバルト、モリブデン、ニッケル及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属、又はこれらの金属からなる合金をターゲットとするスパッタリングによるものである、請求項6に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記有機化合物が、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン、ベンゼン誘導体、ナフタレン、ナフタレン誘導体、アントラセン及びアントラセン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記基板上に形成された金属微粒子の粒径が8nm以下であり、得られるカーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記基板上に形成された金属微粒子の粒径が8nm〜11nmであり、得られるカーボンナノチューブが2層カーボンナノチューブである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記基板上に形成された金属微粒子の粒径が11nm〜15nmであり、得られるカーボンナノチューブが3層カーボンナノチューブである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記基板上に形成された金属微粒子の粒径が15nm〜18nmであり、得られるカーボンナノチューブが4層カーボンナノチューブである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 前記基板上に形成された金属微粒子の粒径が18nm〜21nmであり、得られるカーボンナノチューブが5層カーボンナノチューブである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
- 基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち2層カーボンナノチューブの占める割合が70%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
- 前記カーボンナノチューブの成長方向が前記基板の表面に対して法線方向に揃っている、請求項15に記載のカーボンナノチューブ集合体。
- 基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち3層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
- 前記カーボンナノチューブの成長方向が前記基板の表面に対して法線方向に揃っている、請求項17に記載のカーボンナノチューブ集合体。
- 基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち4層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
- 前記カーボンナノチューブの成長方向が前記基板の表面に対して法線方向に揃っている、請求項19に記載のカーボンナノチューブ集合体。
- 基板上に直接成長したカーボンナノチューブの集合体であって、該集合体に含まれるカーボンナノチューブのうち5層カーボンナノチューブの占める割合が50%以上であるカーボンナノチューブ集合体。
- 前記カーボンナノチューブの成長方向が前記基板の表面に対して法線方向に揃っている、請求項21に記載のカーボンナノチューブ集合体。
- 請求項15〜22のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ集合体を電子源として用いる電界放出型ディスプレイ。
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