本発明は、半導体レーザを駆動するレーザ駆動装置に関する。より具体的には、本発明は、光ディスク等の記録媒体にデータを書き込み、書き込まれたデータを読み出すためのレーザ駆動装置およびそのようなレーザ駆動装置を有する機器に関する。
半導体レーザを用いて記録媒体に情報を記録し再生する装置はこれまでに多数開発されている。このような装置の中でも光ディスク装置は、近年の情報量の増大に対応可能な装置として大いに注目されている。
光ディスク装置は光学ヘッドを有しており、その光学ヘッドに搭載された半導体レーザに電流を供給して半導体レーザを発光させる。情報の再生時には、光ディスク装置はディスク上に微弱な再生光を集光し、光ディスク上にマーク、ピット等として記録されている情報を反射率、偏向角などにより読み出す。また情報の記録時および消去時には、光ディスク装置は、半導体レーザに再生時よりも大きな電流を供給することによって強い光量(高パワー)で半導体レーザを発光させ、光ディスク上の材料に物理的な変化を生じさせることにより、マーク、ピット等として情報を記録し、または存在する情報を消去する。
図1は、半導体レーザを駆動するための一般的な接続構成を示す。レーザ駆動部2は、電源3から電圧(Vld)が供給されると、その電源3からの電流を半導体レーザ1に供給する。半導体レーザ1は、この電流に基づいて電流の大きさに応じたパワーで発光する。
図1では、レーザ駆動部2の動作に必要な電圧を「動作電圧Vtr」とし、半導体レーザ1の動作に必要な電圧を「動作電圧Vop」として表している。なお、動作電圧Vopは、半導体レーザ1を発光させるために必要なアノードとカソード間の電圧である。
半導体レーザ1が発光するためには、各電圧が以下の関係式を満たす必要がある。
Vld ≧ Vop + Vtr (式1)
ここで、レーザ動作電圧Vopは、半導体レーザに流す電流(レーザ駆動電流)等に応じて変化する。
図2は、半導体レーザのレーザ駆動電流−レーザ発光パワー特性A(Iop−P特性A)と、レーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性B(Iop−Vop特性B)とを示すグラフである。Iop−P特性Aに示されるように、半導体レーザの発光パワーはレーザ駆動電流に応じて変化する。よって、駆動電流の値(Iop)を制御することにより、所望のパワーで半導体レーザを発光させることができる。一方、Iop−Vop特性Bに示されるように、レーザ動作電圧Vopは、レーザ駆動電流に応じて動作電圧はVop0からVop2まで変化する。そのため、レーザ駆動部2に電力を供給する電源の電圧が、
Vld ≧ Vop2 + Vtr (式2)
であれば、全電流範囲に渡って不足なくレーザを発光させることが可能である。
ところが、レーザ駆動電流(またはレーザ動作電圧)の値とは無関係に式2が成立する電源電圧Vldを常に供給すると、電力が無駄に消費されてしまう。具体的には、レーザ駆動電流Iopが少ないとき(例えばIop=Iop1(図2)のとき)はレーザ動作電圧はVop1で十分あるが、式2はレーザ動作電圧をVop2と想定しているため、Iop1×(Vop2−Vop1)分の電力が無駄に消費されることになる。
このような課題に対し、例えば特許文献1には、レーザ駆動部に供給する電圧を、レーザの動作電圧に応じて段階的に切り替える技術が記載されている。
図3は、従来の半導体レーザ駆動装置300の機能ブロックの構成を示す。ユーザからの指示に基づいて、パワー設定部306は設定指示信号bを出力する。設定指示信号bは、例えば情報の記録または再生のいずれのモードで動作するかに応じて可変とする。レーザ駆動部302は、レーザパワー制御部307から出力された値(指示値)に基づいて、半導体レーザ301に駆動電流を流す。
半導体レーザ301がレーザ光を出射すると、その一部が光検出器303に入射する。光検出器303は、受けた光のパワー、すなわち半導体レーザ301の発光パワーに応じた大きさの電流を出力する。電流電圧変換器304は、光検出器303の出力電流を電圧信号に変換する。なお、光検出器303と電流電圧変換器304とによって発光パワー検出部305が構成され、発光パワー検出部305から半導体レーザ301の発光パワーを示すパワー検出信号aが出力される。
レーザパワー制御部307は、パワー検出信号aと基準電圧信号bとが等しくなるようにレーザ駆動部302への指示値を制御する。この結果、レーザ駆動部302が半導体レーザ301に供給するレーザ駆動電流の電流量を制御することができ、半導体レーザ301の発光パワーが、情報の再生および記録のそれぞれに適切に制御される。
一方、動作電圧検出部308は半導体レーザ301の動作電圧値Vopを検出し、電圧選択部309に送る。電圧選択部309は、動作電圧検出部308で検出されたレーザ動作電圧Vopの電圧値に応じて、レーザ駆動部302に供給する電圧Vcを選択し、その結果を電圧制御部310に送る。電圧制御部310は、例えばDC/DCコンバータにより構成されており、選択された電圧Vcをレーザ駆動部302に供給する。
ここで図4を参照しながら、電圧選択部309における電圧Vcの選択方法の例を説明する。図4は、従来の電圧選択処理の判断手順を示す。
ステップS41において、電圧選択部309は現在の動作電圧Vopと第一の電圧Vop1とを比較する。比較の結果、動作電圧Vopが所定電圧Vop1以上のときはステップS42に進み、動作電圧Vopが所定電圧Vop1以上のときにはステップ43に進む。
ステップS42では、電圧選択部309は、動作電圧Vopとして想定される最大Vop2に対応した電圧Vc=Vop2+Vtrを選択する。一方、ステップS43では、電圧選択部309はVc=Vop1+Vtrを選択する。これにより、不要な消費電力を低減することができる。
日本国特開2000−244052号公報
しかしながら、従来の構成には、半導体レーザの動作電圧を検出するための専用の構成要素(図3における動作電圧検出部308等)が必要であり、コストアップにもつながるという課題がある。また半導体レーザが搭載される光学ヘッド上には、そのような構成要素を設置するための空間が必要になるため、小型化に限界がある。
さらに、レーザ駆動部に供給する電圧Vcを段階的に切り替えるため、常に最適な電圧Vcを供給することは困難であった。その理由は、電圧Vcを切り替えるために考えられる方法、具体的には所定の電圧を分圧してその分圧比を可変とする方法を採用すると、電圧Vcを切り替える段数に応じた数の抵抗が必要となり、現実的には数段階の切り替えしか実現できないからである。
本発明の目的は、専用の構成要素を必要とせずに、不要な消費電力を低減できる半導体レーザ駆動装置を提供することである。
本発明によるレーザ駆動装置は、レーザを発光させるための駆動電流を供給するレーザ駆動部と、前記レーザの温度を検出する温度検出部と、前記レーザ駆動部に対して電源電圧を供給する電圧制御部であって、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力する電圧制御部とを備えている。
前記レーザ駆動装置は、前記レーザ駆動部への指示値を制御して前記レーザ駆動部から供給される駆動電流を調整することにより、前記レーザを所定の発光パワーで発光させるパワー制御部をさらに備えていてもよい。
前記レーザ駆動装置は、前記レーザを発光させる光量に応じて基準電圧の設定を指示する設定部をさらに備えていてもよい。
前記レーザ駆動装置は、前記レーザの発光パワーに応じた値を検出して、前記値に対応する信号を出力する発光パワー検出部をさらに備えている。前記パワー制御部は、前記発光パワー検出部から出力された信号の電圧および前記基準電圧に基づいて前記レーザ駆動部への指示値を制御し、前記信号の電圧と前記基準電圧とを一致させてもよい。
前記レーザが動作するために必要な動作電圧と駆動電流間の特性は温度に応じて異なっている。前記電圧制御部は、前記駆動電流および前記特性に基づいて前記電源電圧の電圧値を決定してもよい。
前記動作電圧は前記温度が低いほど高く、前記電圧制御部は、前記温度が低いほど高い電源電圧を供給してもよい。
前記レーザ駆動部は、波長が400nmから430nmまでの範囲に含まれるレーザを発光させるための駆動電流を出力してもよい。
本発明による光学ヘッドは、記録媒体の情報記録面に対して、データの書き込みおよび/または読み出しを行うために用いられる。前記光学ヘッドは、レーザと、レーザを発光させるための駆動電流を供給するレーザ駆動装置と、前記レーザからの光を前記情報記録面に集光する対物レンズと、前記情報記録面によって反射された光を受けて、光量に応じた信号を出力する受光部とを有している。前記レーザ駆動装置は、前記レーザの温度を検出する温度検出部と、前記レーザ駆動部に対して電源電圧を供給する電圧制御部であって、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力する電圧制御部とを備えている。
本発明による光ディスク装置は、光ディスクの情報記録面に対して、データの書き込みおよび/または読み出しを行うために用いられる。前記光ディスク装置は、前記光ディスクに光を放射し、前記情報記録面からの反射光に基づいてサーボ信号を生成して出力する光学ヘッドと、前記光学ヘッドから出力されたサーボ信号に基づいて、前記光の焦点位置を制御するための制御信号を生成する制御信号生成部と、前記制御信号に基づいて駆動信号を生成する駆動回路とを有している。前記光学ヘッドは、レーザと、レーザを発光させるための駆動電流を供給するレーザ駆動装置と、前記レーザからの光を前記情報記録面に集光する対物レンズと、前記駆動信号に基づいて前記対物レンズの位置を調整するアクチュエータと、前記情報記録面によって反射された光を受けて、光量に応じた信号を出力する受光部とを有している。さらに、前記レーザ駆動装置は、前記レーザの温度を検出する温度検出部と、前記レーザ駆動部に対して電源電圧を供給する電圧制御部であって、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力する電圧制御部とを備えている。
本発明によるレーザ駆動方法は、レーザを発光させるための駆動電流を供給するステップと、前記レーザの温度を検出するステップと、前記駆動電流を供給するステップを実行する際に電源電圧を供給するステップであって、検出された前記温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力するステップとを包含する。
本発明によれば、新たな構成要素を必要とすることなく電力の消費を抑えることが可能な半導体レーザの駆動装置が提供される。本発明による駆動装置を有する機器では省エネルギー化を図ることができるとともに、さらには温度上昇を抑制することができる。このような機器としては、青紫色レーザ光を用いて光ディスクに対してデータを書き込みおよび読み出す光ディスク装置等が好適であり、特に、機器の温度上昇の抑制および省電力化が厳しく要求される携帯型機器(携帯型光ディスク装置等)に好適である。
半導体レーザを駆動するための一般的な接続構成を示す図である。
半導体レーザのレーザ駆動電流−レーザ発光パワー特性A(Iop−P特性A)と、レーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性B(Iop−Vop特性B)とを示すグラフである。
従来の半導体レーザ駆動装置300の機能ブロックの構成を示す図である。
従来の電圧選択処理の判断手順を示す図である。
本発明の実施形態による光ディスク装置50の機能ブロックの構成を示す図である。
本発明の実施形態によるレーザ駆動装置10の機能ブロックの構成を示す図である。
レーザパワー制御部12の機能ブロックの構成を示す図である。
青紫色半導体レーザの温度に応じたレーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性(Iop−Vop特性)を示すグラフである。
温度検出部21および電圧制御部22の回路構成を示す図である。
(a)はサーミスタ21の抵抗値Rthの温度特性を示すグラフであり、(b)は電圧制御部22の出力電圧の温度特性を示すグラフである。
レーザ駆動部20の構成を示す図である。
光ディスク装置50の処理の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 半導体レーザ
7 受光部
8 電流電圧変換器
10 レーザ駆動装置
11 パワー設定部
12 レーザパワー制御部
20 レーザ駆動部
21 温度検出部
22 電圧制御部
24 発光パワー検出部
50 光ディスク装置
52 光学ヘッド
54 制御信号生成部
56 駆動回路
58 再生処理部
60 光ディスク
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図5は、本実施形態による光ディスク装置50の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置50は、光ディスク60に対してデータの書き込みおよび/または読み出しを行うことができる。光ディスク装置50は、例えば光ディスクに記録された映画を再生する携帯型のビデオ再生機器や、光ディスクに映像および音声を記録するカムコーダである。
光ディスク60は、例えばBD(Blu−Ray Disc)が想定される。なお、本明細書では光ディスクを挙げて説明するが、他には、例えば光学的にデータを読み取りおよび書き込み可能なカードなどの光学式情報記録媒体にも適用できる。
光ディスク装置50は、光学ヘッド52と、制御信号生成部54と、駆動回路56と、再生処理部58とを備えている。
光学ヘッド52は、光ディスク60に対してレーザ光を放射し、その反射光を受け取る光学系を有している。光学ヘッド52は、光の焦点位置を光ディスク60の半径方向および垂直方向に変化させて、光ディスク60のトラック上に正確に位置させるための制御を行う。そして、その制御が行われているときに、光ディスク60に対してデータの書き込みおよび/または読み出しを行う。光学ヘッド52の構成は後に詳述する。なお、図5には光ディスク60を記載しているが、これは説明の便宜のためであり、光ディスク装置50の構成要素ではないことに留意されたい。光ディスク60は光ディスク装置50に装填され、光ディスク装置50から取り出される。
制御信号生成部54は、例えば、光学ヘッド52から出力されたトラッキングエラー信号(TE信号)、フォーカスエラー信号(FE信号)等のサーボ信号に基づいて、レーザ光の光スポットと光ディスク60のトラックとの半径方向および垂直方向の位置関係を制御するための制御信号を生成する。制御信号生成部54から出力された制御信号は駆動回路56に与えられる。駆動回路56は、受け取った制御信号に基づいて駆動信号を生成し、後述のアクチュエータ5または光学ヘッド52の移送台(図示せず)に印加する。これらはそれぞれ、対物レンズ4または光学ヘッド52全体を光ディスク60の半径方向および垂直方向に移動させることによって、レーザ光の光スポットと光ディスク60のトラックとの位置関係を調整する。再生処理部58は、フォーカス制御、トラッキング制御等のサーボ制御が安定して行われているとき、光ディスク60からの反射光に対して所定の再生処理を行い、再生の対象となる映像および音声の各信号を出力する。
次に、光学ヘッド52の構成を説明する。光学ヘッド52は、半導体レーザ1と、ビームスプリッタ2と、コリメートレンズ3と、対物レンズ4と、アクチュエータ5と、回折素子6と、受光部7および19と、電流電圧変換器8と、信号処理部9と、レーザ駆動装置10と、集光レンズ18とを有する。
半導体レーザ1は、例えば、波長が405nmの青紫レーザ光を出力する光源である。この波長の値は厳密でなくてもよく、例えば400nmから415nmの範囲や、400nmから430nmの範囲であればよい。405±5nmの範囲であればより好ましい。
ビームスプリッタ2は、光の一部を透過し、その残りを反射する。コリメートレンズ3は、半導体レーザ1からの光を平行光に変換する。対物レンズ4は、半導体レーザ1から放射されたレーザ光を集束させ、所定の距離の位置に焦点を形成する。回折素子6は、光ディスク60から反射された光を受け取って、所定の回折領域によってその一部を回折させる。
受光部7は複数の受光領域を有しており、その受光領域の各々は受光した光の光量に応じた大きさの光電流を出力する。信号処理部9は、光電流に基づいてトラッキングエラー信号(TE信号)、フォーカスエラー信号(FE信号)、再生信号等を生成する。TE信号は、光ディスク60の半径方向に関する、レーザ光の光スポット位置と光ディスク60の所望のトラックとのずれを表す。FE信号は、光ディスク60の垂直方向に関する、レーザ光の光スポット位置と光ディスク60の情報記録面とのずれを表す。
集光レンズ18には、半導体レーザ1から放射された光の一部が入射し、受光部19に光ビームを集光させる。受光部19は、受光した光量に応じた大きさの光電流を出力する。電流電圧変換器8は、受光部19から出力された光電流を電圧に変換し、パワー検出信号aとして出力する。
次に、この光学ヘッド52において行われる処理を光の経路にそって説明する。半導体レーザ1から放射された光の大半は、ビームスプリッタ2を透過し、コリメートレンズ3で平行光へと変換されて対物レンズ4に入射し、対物レンズ4により光ディスク60の情報記録面に集光される。
光ディスク60で反射された光は、再び対物レンズ4、コリメートレンズ3を経て、ビームスプリッタ2に入射する。ビームスプリッタ2で反射された光は回折素子6に入射し、そこで回折により複数の光が得られる。受光部7の各受光領域は回折素子6で分割された光を受光する。各受光領域は受光量に応じた光電流を出力する。
受光部7から出力された光電流は、信号処理部9に送られる。信号処理部9は、光電流に基づいてTE信号およびFE信号を生成する。TE信号およびFE信号に基づいて制御信号生成部54において制御信号が生成され、トラッキング制御およびフォーカス制御が実現される。なお、どのようにFE信号およびTE信号を生成し、それらの信号に基づいてどのように対物レンズ4および光学ヘッド52の位置を調整するかについては周知であるため、その説明はここでは省略する。
一方、半導体レーザ1から放射された光の一部は、ビームスプリッタ2で反射され、集光レンズ18に入射し、集光レンズ18によって受光部19に集光される。受光部19から出力された光電流は電流電圧変換器8に送られる。光電流は電流電圧変換器8において電圧に変換されて、レーザ駆動装置10に送られ、レーザ駆動装置10はその光量に基づいて半導体レーザ1に流す電流量および電圧値を制御する。
次に、図6を参照しながら、レーザ駆動装置10の詳細な構成を説明する。図6は、本実施形態によるレーザ駆動装置10の機能ブロックの構成を示す。図6では、受光部19および電流電圧変換器8をまとめて、発光パワー検出部24として示している。
レーザ駆動装置10は、パワー設定部11と、レーザパワー制御部12と、レーザ駆動部20と、温度検出部21と、電圧制御部22とを有する。
これらの構成要素のうちのレーザ駆動部20は、レーザパワー制御部12から出力された値(指示値)に基づいて、半導体レーザ1に駆動電流を流す。そこで、レーザパワー制御部12に関連する構成要素を説明し、その後、電圧制御部22に関連する構成要素を説明する。
まずレーザパワー制御部12は、パワー設定部11から設定指示信号bを受け取る。設定指示信号bは、ユーザからの指示等に基づいて出力される。例えば、設定指示信号bは、光ディスク装置50が情報の記録および再生の両方が可能な機器であれば、ユーザが選択した動作(記録動作または再生動作)に対応するパワーを設定する指示(基準電圧)を含む。または設定指示信号bは、光ディスク装置50が再生専用の機器であるとき、またはカムコーダにおいて再生を行うときには、ユーザが選択した再生動作(通常再生動作、早送り再生動作等)に対応するパワーを設定する指示(基準電圧)を含む。
ここで図7を参照しながら、パワー設定部11およびレーザパワー制御部12の具体的な構成を説明する。図7は、パワー設定部11とレーザパワー制御部12の機能ブロックの構成を示す。パワー設定部11は、第1基準電圧源121aおよび第2基準電圧源121bと、スイッチ122とを有する。第1基準電圧源121aおよび第2基準電圧源121bは、それぞれ、例えば光ディスク60への情報の記録および再生に必要な発光パワーを得るための基準電圧を与えることが可能な電圧源である。スイッチ122は、記録または再生に応じていずれかの電圧源を差動増幅器123に接続する。
レーザパワー制御部12は差動増幅器123を有し、差動増幅器123は、電流電圧変換器8と接続され、電圧値によって表されたパワー検出信号aを受け取る。また差動増幅器123は、第1基準電圧源121aおよび第2基準電圧源121bの一方と接続されて動作の基準となる基準電圧を受け取る。
差動増幅器123は、パワー検出信号aに対応する電圧と、設定指示信号bに対応する、パワー設定部11内の電圧源からの基準電圧を受け取り、その差が演算され増幅された後、電圧信号Vkとして出力され、レーザ駆動部20に送られる。この電圧信号Vkは、レーザ駆動部20が半導体レーザ1に流す駆動電流を調整するための電圧として利用される。すなわち、レーザパワー制御部12は、半導体レーザ1を発光させるための駆動電流の電流量(電流値)を制御しているといえる。なお、半導体レーザ1が発光している間は、パワー検出信号aが常にレーザパワー制御部12に送られ、パワー検出信号aに基づくパワー制御が行われるため、レーザパワー制御部12は、パワー検出信号aと基準電圧信号とを一致させるように動作する。この結果、レーザ駆動部20が半導体レーザ1に供給する駆動電流の電流量を制御(調整)することができ、半導体レーザ1の発光パワーが動作に必要な強さになるよう適切に制御される。なお、図7に示すレーザパワー制御部12の構成は例であり、この態様に限られることはない。
続いて、再び図6を参照しながら温度検出部21および電圧制御部22を説明する。温度検出部21は、半導体レーザ1の周囲温度を検出して、検出した温度に応じた情報を電圧制御部22に与える。後述のように、本実施形態においては温度検出部21はサーミスタである。サーミスタは温度に応じて抵抗値が変化するため、その抵抗値の変化が電圧制御部22に対して与えられる情報となる。なお、図6においては、温度検出部21は半導体レーザ1と離れて配置されているが、これは記載の便宜のためである。温度検出部21は、例えば半導体レーザ1のパッケージの近傍に配置される。
以下に説明するように、上述の温度検出部21は半導体レーザ1の駆動に際して主要な役割を果たす。しかし、温度検出部21は本発明を実施化するための専用の構成要素である必要はない。半導体レーザを用いた一般の装置、例えば光学ヘッドおよびそのような光学ヘッドを備えた光ディスク装置では、以下に例示するような他の目的のため、既に温度を検出する素子を搭載しているからである。したがって、本実施形態による温度検出部21は、既に存在する光学ヘッドの構成要素を流用しているといえる。したがって、温度検出部21は必ずしもレーザ駆動装置10内に設けられている必要はない。換言すれば、レーザ駆動装置10は必ずしも温度検出部21をその構成要素として含んでいる必要はない。温度検出部21が光学ヘッド52内に設けられていればよい。
温度検出素子が光学ヘッド上に搭載される例は以下のとおりである。すなわち、半導体レーザは高温動作において破壊または劣化の恐れがあるため、高温時には再生または記録の動作を中止させる必要がある。そこで温度検出素子が設けられ、半導体レーザの周囲温度を検出して、その保護を図るために利用される。
また、光ディスク装置では、情報の再生または記録に最適な発光パワーやレーザ光の最適な記録ストラテジは、一般には温度によって異なっている。そのため、温度検出素子が設けられ、検出された温度に応じて、発光パワーまたは記録ストラテジを補正するために利用される(例えば、日本国特開平7−182721号公報や日本国特開2001−297437号公報)。
電圧制御部22はレーザ駆動部2に対して電源電圧Vcを供給する。電源電圧Vcはレーザ駆動部20および半導体レーザ1の駆動に必要な電源である。より詳しくは、電圧制御部22は、温度検出部21によって検出された温度に応じて、レーザ駆動部2に供給する電圧Vcを適応的に変化させる。電圧制御部22は、比較的低温のときには電圧Vcを上げるように制御し、比較的高温のときには電圧Vcを下げるように制御する。
ここで、温度検出部21および電圧制御部22の動作の原理を説明するために、半導体レーザ1を含む一般的なレーザ光源の動作電圧の温度依存性を説明する。波長が400〜430nmの青紫色レーザでは、低温になるに従ってレーザ動作電圧が高くなることが知られている(例えば、「月刊オプトロニクス」,2003年5月号,オプトロニクス社,P121)。図8は、青紫色半導体レーザの温度に応じたレーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性(Iop−Vop特性)を示すグラフである。半導体レーザの動作電圧は温度に大きく依存している。
具体的には、半導体レーザのパッケージ内の温度が比較的高いとき(例えば摂氏40度程度のとき)は、レーザ動作電圧(Vop)は比較的低い値(VopH)以下に収まる。一方、半導体レーザのパッケージ内の温度が比較的低いとき(例えば摂氏20度程度のとき)、レーザ動作電圧は急激に高くなり、その値は先のVopHの値よりも大きくなる。図2のレーザ駆動電流−レーザ発光パワー特性A(Iop−P特性A)に示すように、半導体レーザ1の発光パワー(P)が特定されると、そのパワーを与える駆動電流(Iop)が特定される。しかし、その駆動電流(Iop)を得るための動作電圧(Vop)の値は、半導体レーザ1の温度に応じて異なっている。
これらの事実を考慮して、本実施形態においては、電圧制御部22は、温度検出部21において検出した温度に応じて以下のように動作する。すなわち、高温時には電圧制御部22は、
Vc = VopH + Vtr (式3)
として得られる電圧Vcがレーザ駆動部2に供給されるように出力電圧Vcを制御する。式3において“Vtr”とは、レーザ駆動部2の動作に必要な電圧である。同様に、低温時には
Vc = VopL + Vtr (式4)
として得られる電圧Vcがレーザ駆動部2に供給されるように出力電圧Vcを制御する。各電圧値の具体例は、VopH=4.5V、VopL=6.5V、Vtr=2Vである。
低温および高温のいずれでも確実に動作させる観点からすれば式4で示すVcを常に供給すればよい。しかし、高温時に式3により得られる電圧Vcを供給することにより、(VopL−VopH)×Iop分の電力の低減が可能となる。
なお本明細書では、式3に示す動作電圧VopH、および、式4に示す動作電圧VopLの2段階で、電圧制御部22の出力電圧Vcの値を制御している。しかし2段階は例であり、より多くてもよいし、温度に応じて無段階に出力電圧Vcの値を制御してもよい。後者の制御は、例えば必要とされる駆動電流(Iop)の大きさごとに、半導体レーザ1の各温度における動作電圧を予めサンプリングしてテーブル等に保持しておけばよい。駆動電流(Iop)の大きさとそのときの半導体レーザ1の温度が特定されれば、そのテーブルを参照して動作電圧(Vop)を取得できる。その値を式3のVopL(または式4のVopH)に代入すれば、そのときの電圧Vcが特定される。
上述のように、温度検出部21は光学ヘッド52上に専用で設ける必要はないので、新たな構成要素を必要とせずに、省電力を実現できる。
なお、上述の温度は、半導体レーザのパッケージ内の温度であるとしているが、この温度はパッケージが配設される周辺環境の温度に応じて変化しうる。パッケージが光ディスク装置等のドライブ装置内に設けられると、ドライブ装置が動作していなかった環境下、例えばドライブ装置の起動直後ではパッケージの温度は室温と同等である。しかし、ドライブ装置が起動して所定時間が経過した後は、パッケージの温度は室温に対してさらに10〜20度程度は高くなる。よって、起動直後のパッケージ内温度と、一定時間以上時間が経過した後のパッケージ内温度との差が20度程度になることは十分生じうる。
次に、上述の動作を実現するための構成を説明する。図9は、温度検出部21および電圧制御部22の回路構成を示す。図9においては、これまでの温度検出部21は「サーミスタ21」として記述している。
一方、電圧制御部22は、電源31と、抵抗32および33とを有する。抵抗32はサーミスタ21と並列的に接続されている。抵抗32およびサーミスタ21のそれぞれの一端は、抵抗33の一端に接続されている。この接続線路中から、電圧制御部22の電圧Vcが取り出され出力される。抵抗32およびサーミスタ21の他端は設置されている。一方、抵抗33の他端には電源31(電圧値Vcc)が接続される。
図10(a)は、サーミスタ21の抵抗値Rthの温度特性を示す。サーミスタ21は、温度が下がると抵抗値Rthは上がり、温度が上がると抵抗値Rthは下がる。
一方、図10(b)は、電圧制御部22の出力電圧の温度特性を示す。抵抗33の抵抗値をR33などと表し、抵抗33を流れる電流の大きさをIと表すと、電圧制御部22の出力電圧Vcは、
Vc=(R32//Rtho)/[(R32//Rtho)+R33]・I (式5)
として得られる。図10(b)によれば、温度が下がると出力電圧Vcは上がり、温度が上がると出力電圧Vcは下がることが理解される。
次に、図6に示すレーザ駆動部20の具体的な構成を説明する。図11は、レーザ駆動部20の構成を示す。レーザ駆動部20はトランジスタとして実現できる。トランジスタ20のコレクタ端子は電圧制御部22と接続され、その出力電圧Vcが印加される。トランジスタ20のベース端子はレーザパワー制御部12と接続され、その出力電圧Vkが印加される。トランジスタ20のエミッタ端子は半導体レーザ1のアノード端子と接続される。ベース端子からエミッタ端子を経て半導体レーザ1に流れる電流Iopは、
Iop=(Vk−VBE)/z (式6)
として得られる。なお「VBE」はベース−エミッタ間の電圧、zはレーザのインピーダンスである。式6によれば、電流Iopはレーザパワー制御部12の出力電圧Vkによって制御され、電圧制御部22の出力電圧Vcによっては制御されていないことが理解される。
なお、記録および/または再生の品質を改善する目的で、半導体レーザ1の周辺温度を検出して、パワー設定部11およびレーザパワー制御部12における電圧Vkを変化させる手法も考えられる。この手法は、レーザ駆動部20のベース端子に印加される電圧Vkおよびその電圧に応じて定まる駆動電流の調整のために有効である。一方、電圧Vcはレーザ駆動部20のコレクタ端子に印加されるため、先の電圧Vkとは独立している。よって電圧Vcを調整して動作する最低限度に調整することが電力消費に関して有利であることに変わりはない。なお、レーザ駆動部20はトランジスタに限るものではなく、レーザパワー制御部20の出力値に応じて半導体レーザ1に供給する電流を制御できる構成要素であればよい。
次に、図12を参照しながら、上述の原理に基づいて動作する光ディスク装置50の処理を説明する。図12は、光ディスク装置50の処理の手順を示す。
まず光ディスク装置50の動作開始等に合わせて、ステップS121において、パワー設定部11はユーザ等から通常再生モード、早送り再生モード等の再生モードの指示を受け取る。次のステップS122では、パワー設定部11はその再生モードに応じて半導体レーザに供給する駆動電流を決定し、その駆動電流を得るための設定指示を出力する。ステップS123では、レーザパワー制御部12は、設定指示信号bに基づいて駆動電流を与えるための電圧Vkを出力する。
一方、ステップS124において、温度検出部21が半導体レーザ1の周辺温度を検出すると、ステップS125において電圧制御部22は周辺温度に応じた電圧Vcを出力する。この電圧は、半導体レーザ1が発光するために必要十分な電圧であり、過剰には印加されない。ステップS126では、レーザ駆動部20は、電圧Vkに基づいて決定されるレーザ駆動電流を半導体レーザ1に流すと、半導体レーザ1が発光する。
ステップS127では、レーザ駆動装置10において所定時間が経過したか否かが判断される。所定時間が経過していればステップS124に戻り、半導体レーザ1の周辺温度を検出する。所定時間が経過していなければ、ステップS128に進む。
このステップS127を規定した理由は、より柔軟にレーザ駆動制御を行うためである。「所定時間」とは温度検出部21において温度を検出するタイミングを意味しており、必ずしも固定値でなくてもよい。例えば光ディスク装置50の動作開始後5分以内であれば、「所定時間」を1分ごとに設定し、動作開始後5分以降は「所定時間」を5分ごとに設定することができる。動作開始直後は温度が上昇し始めるため、比較的高い頻度で半導体レーザ1の温度を検出する。一方、動作開始から5分程度経過すると温度の変化は概ね収束すると考えられるため、その後は比較的少ない頻度で半導体レーザ1の温度を検出すればよい。
ステップS128においては、レーザ駆動装置10において再生終了か否かが判断される。再生を継続するときには、ステップS126に戻り、レーザ駆動部20は半導体レーザ1に駆動電流を流し続ける。一方再生終了時には、駆動電流を遮断して半導体レーザ1の発光を停止し処理が終了する。なお、ステップS128の判断は、例えばパワー設定部11に対してパワーの供給停止等の指示が与えられるか否かで判断することができる。
以上の処理の手順を経ることにより、レーザ駆動装置10は半導体レーザ1の駆動に必要な電圧を過不足なく利用することができる。よって、レーザ駆動装置10を有する光学ヘッド52や、その光学ヘッド52を搭載した光ディスク装置50においては、極めて有効な省電力機能を提供することができる。この省電力機能は、特に使用可能な電力に制限のある携帯用光ディスク装置等に適用することが好適である。
以上説明した構成によれば、光学ヘッドに一般的に搭載される温度センサ等を温度検出部21として用いるので、新たな構成要素を必要とすることなく、低温でのレーザ発光と高温での省電力の両方が可能となる。
なお、温度検出部21を用いて電圧制御部22の出力電圧Vcを制御する本実施形態による構成は、青紫色レーザを用いたレーザ駆動装置において特に効果が大きい。その理由は、第1に、青紫色レーザのレーザ動作電圧の変動は、図8に示すように温度の影響が非常に大きく、温度によるレーザ動作電圧の変化に対応して電圧Vcを制御すると省電力への効果が大きいからである。第2に、青紫色レーザは赤色レーザ等に比べて、レーザ発光に必要なバンドギャップが大きいため、レーザ動作電圧は高くなる。よって、赤色レーザと比べると青紫色レーザの消費電力は増える傾向にあり、省電力および機器の温度上昇(特に高温時)に対する要求が赤色レーザの場合以上に大きいからである。
また図6では、パワー設定部11およびレーザパワー制御部12はレーザ駆動装置10内に設けられるとしている。しかし、これらはレーザ駆動装置10の外部に設けられていてもよい。例えば、これらはレーザ駆動装置10外部の光学ヘッド52内に設けられてもよいし、光学ヘッド52外部の光ディスク装置50内に設けられてもよい。
なお、本実施の形態において、サーミスタ31と抵抗32、33を組み合わせて、温度検出部21と電圧制御部22を構成する例を示したが、これに限るものではなく、サーミスタ21としてICチップを用いてもよいし、電圧制御部として、プログラミング可能な電源を用いてもよい。
また、本実施の形態においては、半導体レーザのカソード端子が接地されている例を示したが、アノード端子が電源に接続される場合でも、同様の効果を得られることは言うまでもない。
本発明によれば、新たな構成要素を必要とすることなく電力の消費を抑えることが可能な半導体レーザの駆動装置が提供される。本発明による駆動装置を有する機器では省エネルギー化を図ることができるとともに、さらには温度上昇を抑制することができる。このような機器としては、青紫色レーザ光を用いて光ディスクに対してデータを書き込みおよび読み出す光ディスク装置等が好適であり、特に、機器の温度上昇の抑制および省電力化が厳しく要求される携帯型機器(携帯型光ディスク装置等)に好適である。
本発明は、半導体レーザを駆動するレーザ駆動装置に関する。より具体的には、本発明は、光ディスク等の記録媒体にデータを書き込み、書き込まれたデータを読み出すためのレーザ駆動装置およびそのようなレーザ駆動装置を有する機器に関する。
半導体レーザを用いて記録媒体に情報を記録し再生する装置はこれまでに多数開発されている。このような装置の中でも光ディスク装置は、近年の情報量の増大に対応可能な装置として大いに注目されている。
光ディスク装置は光学ヘッドを有しており、その光学ヘッドに搭載された半導体レーザに電流を供給して半導体レーザを発光させる。情報の再生時には、光ディスク装置はディスク上に微弱な再生光を集光し、光ディスク上にマーク、ピット等として記録されている情報を反射率、偏向角などにより読み出す。また情報の記録時および消去時には、光ディスク装置は、半導体レーザに再生時よりも大きな電流を供給することによって強い光量(高パワー)で半導体レーザを発光させ、光ディスク上の材料に物理的な変化を生じさせることにより、マーク、ピット等として情報を記録し、または存在する情報を消去する。
図1は、半導体レーザを駆動するための一般的な接続構成を示す。レーザ駆動部2は、電源3から電圧(Vld)が供給されると、その電源3からの電流を半導体レーザ1に供給する。半導体レーザ1は、この電流に基づいて電流の大きさに応じたパワーで発光する。
図1では、レーザ駆動部2の動作に必要な電圧を「動作電圧Vtr」とし、半導体レーザ1の動作に必要な電圧を「動作電圧Vop」として表している。なお、動作電圧Vopは、半導体レーザ1を発光させるために必要なアノードとカソード間の電圧である。
半導体レーザ1が発光するためには、各電圧が以下の関係式を満たす必要がある。
Vld ≧ Vop + Vtr (式1)
ここで、レーザ動作電圧Vopは、半導体レーザに流す電流(レーザ駆動電流)等に応じて変化する。
図2は、半導体レーザのレーザ駆動電流−レーザ発光パワー特性A(Iop−P特性A)と、レーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性B(Iop−Vop特性B)とを示すグラフである。Iop−P特性Aに示されるように、半導体レーザの発光パワーはレーザ駆動電流に応じて変化する。よって、駆動電流の値(Iop)を制御することにより、所望のパワーで半導体レーザを発光させることができる。一方、Iop−Vop特性Bに示されるように、レーザ動作電圧Vopは、レーザ駆動電流に応じて動作電圧はVop0からVop2まで変化する。そのため、レーザ駆動部2に電力を供給する電源の電圧が、
Vld ≧ Vop2 + Vtr (式2)
であれば、全電流範囲に渡って不足なくレーザを発光させることが可能である。
ところが、レーザ駆動電流(またはレーザ動作電圧)の値とは無関係に式2が成立する電源電圧Vldを常に供給すると、電力が無駄に消費されてしまう。具体的には、レーザ駆動電流Iopが少ないとき(例えばIop=Iop1(図2)のとき)はレーザ動作電圧はVop1で十分あるが、式2はレーザ動作電圧をVop2と想定しているため、Iop1×(Vop2−Vop1)分の電力が無駄に消費されることになる。
このような課題に対し、例えば特許文献1には、レーザ駆動部に供給する電圧を、レーザの動作電圧に応じて段階的に切り替える技術が記載されている。
図3は、従来の半導体レーザ駆動装置300の機能ブロックの構成を示す。ユーザからの指示に基づいて、パワー設定部306は設定指示信号bを出力する。設定指示信号bは、例えば情報の記録または再生のいずれのモードで動作するかに応じて可変とする。レーザ駆動部302は、レーザパワー制御部307から出力された値(指示値)に基づいて、半導体レーザ301に駆動電流を流す。
半導体レーザ301がレーザ光を出射すると、その一部が光検出器303に入射する。光検出器303は、受けた光のパワー、すなわち半導体レーザ301の発光パワーに応じた大きさの電流を出力する。電流電圧変換器304は、光検出器303の出力電流を電圧信号に変換する。なお、光検出器303と電流電圧変換器304とによって発光パワー検出部305が構成され、発光パワー検出部305から半導体レーザ301の発光パワーを示すパワー検出信号aが出力される。
レーザパワー制御部307は、パワー検出信号aと基準電圧信号bとが等しくなるようにレーザ駆動部302への指示値を制御する。この結果、レーザ駆動部302が半導体レーザ301に供給するレーザ駆動電流の電流量を制御することができ、半導体レーザ301の発光パワーが、情報の再生および記録のそれぞれに適切に制御される。
一方、動作電圧検出部308は半導体レーザ301の動作電圧値Vopを検出し、電圧選択部309に送る。電圧選択部309は、動作電圧検出部308で検出されたレーザ動作電圧Vopの電圧値に応じて、レーザ駆動部302に供給する電圧Vcを選択し、その結果を電圧制御部310に送る。電圧制御部310は、例えばDC/DCコンバータにより構成されており、選択された電圧Vcをレーザ駆動部302に供給する。
ここで図4を参照しながら、電圧選択部309における電圧Vcの選択方法の例を説明する。図4は、従来の電圧選択処理の判断手順を示す。
ステップS41において、電圧選択部309は現在の動作電圧Vopと第一の電圧Vop1とを比較する。比較の結果、動作電圧Vopが所定電圧Vop1以上のときはステップS42に進み、動作電圧Vopが所定電圧Vop1以上のときにはステップ43に進む。
ステップS42では、電圧選択部309は、動作電圧Vopとして想定される最大Vop2に対応した電圧Vc=Vop2+Vtrを選択する。一方、ステップS43では、電圧選択部309はVc=Vop1+Vtrを選択する。これにより、不要な消費電力を低減することができる。
特開2000−244052号公報
しかしながら、従来の構成には、半導体レーザの動作電圧を検出するための専用の構成要素(図3における動作電圧検出部308等)が必要であり、コストアップにもつながるという課題がある。また半導体レーザが搭載される光学ヘッド上には、そのような構成要素を設置するための空間が必要になるため、小型化に限界がある。
さらに、レーザ駆動部に供給する電圧Vcを段階的に切り替えるため、常に最適な電圧Vcを供給することは困難であった。その理由は、電圧Vcを切り替えるために考えられる方法、具体的には所定の電圧を分圧してその分圧比を可変とする方法を採用すると、電圧Vcを切り替える段数に応じた数の抵抗が必要となり、現実的には数段階の切り替えしか実現できないからである。
本発明の目的は、専用の構成要素を必要とせずに、不要な消費電力を低減できる半導体レーザ駆動装置を提供することである。
本発明によるレーザ駆動装置は、レーザを発光させるための駆動電流を供給するレーザ駆動部と、前記レーザの温度を検出する温度検出部と、前記レーザ駆動部に対して電源電圧を供給する電圧制御部であって、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力する電圧制御部とを備えている。
前記レーザ駆動装置は、前記レーザ駆動部への指示値を制御して前記レーザ駆動部から供給される駆動電流を調整することにより、前記レーザを所定の発光パワーで発光させるパワー制御部をさらに備えていてもよい。
前記レーザ駆動装置は、前記レーザを発光させる光量に応じて基準電圧の設定を指示する設定部をさらに備えていてもよい。
前記レーザ駆動装置は、前記レーザの発光パワーに応じた値を検出して、前記値に対応する信号を出力する発光パワー検出部をさらに備えている。前記パワー制御部は、前記発光パワー検出部から出力された信号の電圧および前記基準電圧に基づいて前記レーザ駆動部への指示値を制御し、前記信号の電圧と前記基準電圧とを一致させてもよい。
前記レーザが動作するために必要な動作電圧と駆動電流間の特性は温度に応じて異なっている。前記電圧制御部は、前記駆動電流および前記特性に基づいて前記電源電圧の電圧値を決定してもよい。
前記動作電圧は前記温度が低いほど高く、前記電圧制御部は、前記温度が低いほど高い電源電圧を供給してもよい。
前記レーザ駆動部は、波長が400nmから430nmまでの範囲に含まれるレーザを発光させるための駆動電流を出力してもよい。
本発明による光学ヘッドは、記録媒体の情報記録面に対して、データの書き込みおよび/または読み出しを行うために用いられる。前記光学ヘッドは、レーザと、レーザを発光させるための駆動電流を供給するレーザ駆動装置と、前記レーザからの光を前記情報記録面に集光する対物レンズと、前記情報記録面によって反射された光を受けて、光量に応じた信号を出力する受光部とを有している。前記レーザ駆動装置は、前記レーザの温度を検出する温度検出部と、前記レーザ駆動部に対して電源電圧を供給する電圧制御部であって、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力する電圧制御部とを備えている。
本発明による光ディスク装置は、光ディスクの情報記録面に対して、データの書き込みおよび/または読み出しを行うために用いられる。前記光ディスク装置は、前記光ディスクに光を放射し、前記情報記録面からの反射光に基づいてサーボ信号を生成して出力する光学ヘッドと、前記光学ヘッドから出力されたサーボ信号に基づいて、前記光の焦点位置を制御するための制御信号を生成する制御信号生成部と、前記制御信号に基づいて駆動信号を生成する駆動回路とを有している。前記光学ヘッドは、レーザと、レーザを発光させるための駆動電流を供給するレーザ駆動装置と、前記レーザからの光を前記情報記録面に集光する対物レンズと、前記駆動信号に基づいて前記対物レンズの位置を調整するアクチュエータと、前記情報記録面によって反射された光を受けて、光量に応じた信号を出力する受光部とを有している。さらに、前記レーザ駆動装置は、前記レーザの温度を検出する温度検出部と、前記レーザ駆動部に対して電源電圧を供給する電圧制御部であって、前記温度検出部によって検出された温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力する電圧制御部とを備えている。
本発明によるレーザ駆動方法は、レーザを発光させるための駆動電流を供給するステップと、前記レーザの温度を検出するステップと、前記駆動電流を供給するステップを実行する際に電源電圧を供給するステップであって、検出された前記温度に応じて前記電源電圧の電圧値を変化させて出力するステップとを包含する。
本発明によれば、新たな構成要素を必要とすることなく電力の消費を抑えることが可能な半導体レーザの駆動装置が提供される。本発明による駆動装置を有する機器では省エネルギー化を図ることができるとともに、さらには温度上昇を抑制することができる。このような機器としては、青紫色レーザ光を用いて光ディスクに対してデータを書き込みおよび読み出す光ディスク装置等が好適であり、特に、機器の温度上昇の抑制および省電力化が厳しく要求される携帯型機器(携帯型光ディスク装置等)に好適である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図5は、本実施形態による光ディスク装置50の機能ブロックの構成を示す。光ディスク装置50は、光ディスク60に対してデータの書き込みおよび/または読み出しを行うことができる。光ディスク装置50は、例えば光ディスクに記録された映画を再生する携帯型のビデオ再生機器や、光ディスクに映像および音声を記録するカムコーダである。
光ディスク60は、例えばBD(Blu−Ray Disc)が想定される。なお、本明細書では光ディスクを挙げて説明するが、他には、例えば光学的にデータを読み取りおよび書き込み可能なカードなどの光学式情報記録媒体にも適用できる。
光ディスク装置50は、光学ヘッド52と、制御信号生成部54と、駆動回路56と、再生処理部58とを備えている。
光学ヘッド52は、光ディスク60に対してレーザ光を放射し、その反射光を受け取る光学系を有している。光学ヘッド52は、光の焦点位置を光ディスク60の半径方向および垂直方向に変化させて、光ディスク60のトラック上に正確に位置させるための制御を行う。そして、その制御が行われているときに、光ディスク60に対してデータの書き込みおよび/または読み出しを行う。光学ヘッド52の構成は後に詳述する。なお、図5には光ディスク60を記載しているが、これは説明の便宜のためであり、光ディスク装置50の構成要素ではないことに留意されたい。光ディスク60は光ディスク装置50に装填され、光ディスク装置50から取り出される。
制御信号生成部54は、例えば、光学ヘッド52から出力されたトラッキングエラー信号(TE信号)、フォーカスエラー信号(FE信号)等のサーボ信号に基づいて、レーザ光の光スポットと光ディスク60のトラックとの半径方向および垂直方向の位置関係を制御するための制御信号を生成する。制御信号生成部54から出力された制御信号は駆動回路56に与えられる。駆動回路56は、受け取った制御信号に基づいて駆動信号を生成し、後述のアクチュエータ5または光学ヘッド52の移送台(図示せず)に印加する。これらはそれぞれ、対物レンズ4または光学ヘッド52全体を光ディスク60の半径方向および垂直方向に移動させることによって、レーザ光の光スポットと光ディスク60のトラックとの位置関係を調整する。再生処理部58は、フォーカス制御、トラッキング制御等のサーボ制御が安定して行われているとき、光ディスク60からの反射光に対して所定の再生処理を行い、再生の対象となる映像および音声の各信号を出力する。
次に、光学ヘッド52の構成を説明する。光学ヘッド52は、半導体レーザ1と、ビームスプリッタ2と、コリメートレンズ3と、対物レンズ4と、アクチュエータ5と、回折素子6と、受光部7および19と、電流電圧変換器8と、信号処理部9と、レーザ駆動装置10と、集光レンズ18とを有する。
半導体レーザ1は、例えば、波長が405nmの青紫レーザ光を出力する光源である。この波長の値は厳密でなくてもよく、例えば400nmから415nmの範囲や、400nmから430nmの範囲であればよい。405±5nmの範囲であればより好ましい。
ビームスプリッタ2は、光の一部を透過し、その残りを反射する。コリメートレンズ3は、半導体レーザ1からの光を平行光に変換する。対物レンズ4は、半導体レーザ1から放射されたレーザ光を集束させ、所定の距離の位置に焦点を形成する。回折素子6は、光ディスク60から反射された光を受け取って、所定の回折領域によってその一部を回折させる。
受光部7は複数の受光領域を有しており、その受光領域の各々は受光した光の光量に応じた大きさの光電流を出力する。信号処理部9は、光電流に基づいてトラッキングエラー信号(TE信号)、フォーカスエラー信号(FE信号)、再生信号等を生成する。TE信号は、光ディスク60の半径方向に関する、レーザ光の光スポット位置と光ディスク60の所望のトラックとのずれを表す。FE信号は、光ディスク60の垂直方向に関する、レーザ光の光スポット位置と光ディスク60の情報記録面とのずれを表す。
集光レンズ18には、半導体レーザ1から放射された光の一部が入射し、受光部19に光ビームを集光させる。受光部19は、受光した光量に応じた大きさの光電流を出力する。電流電圧変換器8は、受光部19から出力された光電流を電圧に変換し、パワー検出信号aとして出力する。
次に、この光学ヘッド52において行われる処理を光の経路にそって説明する。半導体レーザ1から放射された光の大半は、ビームスプリッタ2を透過し、コリメートレンズ3で平行光へと変換されて対物レンズ4に入射し、対物レンズ4により光ディスク60の情報記録面に集光される。
光ディスク60で反射された光は、再び対物レンズ4、コリメートレンズ3を経て、ビームスプリッタ2に入射する。ビームスプリッタ2で反射された光は回折素子6に入射し、そこで回折により複数の光が得られる。受光部7の各受光領域は回折素子6で分割された光を受光する。各受光領域は受光量に応じた光電流を出力する。
受光部7から出力された光電流は、信号処理部9に送られる。信号処理部9は、光電流に基づいてTE信号およびFE信号を生成する。TE信号およびFE信号に基づいて制御信号生成部54において制御信号が生成され、トラッキング制御およびフォーカス制御が実現される。なお、どのようにFE信号およびTE信号を生成し、それらの信号に基づいてどのように対物レンズ4および光学ヘッド52の位置を調整するかについては周知であるため、その説明はここでは省略する。
一方、半導体レーザ1から放射された光の一部は、ビームスプリッタ2で反射され、集光レンズ18に入射し、集光レンズ18によって受光部19に集光される。受光部19から出力された光電流は電流電圧変換器8に送られる。光電流は電流電圧変換器8において電圧に変換されて、レーザ駆動装置10に送られ、レーザ駆動装置10はその光量に基づいて半導体レーザ1に流す電流量および電圧値を制御する。
次に、図6を参照しながら、レーザ駆動装置10の詳細な構成を説明する。図6は、本実施形態によるレーザ駆動装置10の機能ブロックの構成を示す。図6では、受光部19および電流電圧変換器8をまとめて、発光パワー検出部24として示している。
レーザ駆動装置10は、パワー設定部11と、レーザパワー制御部12と、レーザ駆動部20と、温度検出部21と、電圧制御部22とを有する。
これらの構成要素のうちのレーザ駆動部20は、レーザパワー制御部12から出力された値(指示値)に基づいて、半導体レーザ1に駆動電流を流す。そこで、レーザパワー制御部12に関連する構成要素を説明し、その後、電圧制御部22に関連する構成要素を説明する。
まずレーザパワー制御部12は、パワー設定部11から設定指示信号bを受け取る。設定指示信号bは、ユーザからの指示等に基づいて出力される。例えば、設定指示信号bは、光ディスク装置50が情報の記録および再生の両方が可能な機器であれば、ユーザが選択した動作(記録動作または再生動作)に対応するパワーを設定する指示(基準電圧)を含む。または設定指示信号bは、光ディスク装置50が再生専用の機器であるとき、またはカムコーダにおいて再生を行うときには、ユーザが選択した再生動作(通常再生動作、早送り再生動作等)に対応するパワーを設定する指示(基準電圧)を含む。
ここで図7を参照しながら、パワー設定部11およびレーザパワー制御部12の具体的な構成を説明する。図7は、パワー設定部11とレーザパワー制御部12の機能ブロックの構成を示す。パワー設定部11は、第1基準電圧源121aおよび第2基準電圧源121bと、スイッチ122とを有する。第1基準電圧源121aおよび第2基準電圧源121bは、それぞれ、例えば光ディスク60への情報の記録および再生に必要な発光パワーを得るための基準電圧を与えることが可能な電圧源である。スイッチ122は、記録または再生に応じていずれかの電圧源を差動増幅器123に接続する。
レーザパワー制御部12は差動増幅器123を有し、差動増幅器123は、電流電圧変換器8と接続され、電圧値によって表されたパワー検出信号aを受け取る。また差動増幅器123は、第1基準電圧源121aおよび第2基準電圧源121bの一方と接続されて動作の基準となる基準電圧を受け取る。
差動増幅器123は、パワー検出信号aに対応する電圧と、設定指示信号bに対応する、パワー設定部11内の電圧源からの基準電圧を受け取り、その差が演算され増幅された後、電圧信号Vkとして出力され、レーザ駆動部20に送られる。この電圧信号Vkは、レーザ駆動部20が半導体レーザ1に流す駆動電流を調整するための電圧として利用される。すなわち、レーザパワー制御部12は、半導体レーザ1を発光させるための駆動電流の電流量(電流値)を制御しているといえる。なお、半導体レーザ1が発光している間は、パワー検出信号aが常にレーザパワー制御部12に送られ、パワー検出信号aに基づくパワー制御が行われるため、レーザパワー制御部12は、パワー検出信号aと基準電圧信号とを一致させるように動作する。この結果、レーザ駆動部20が半導体レーザ1に供給する駆動電流の電流量を制御(調整)することができ、半導体レーザ1の発光パワーが動作に必要な強さになるよう適切に制御される。なお、図7に示すレーザパワー制御部12の構成は例であり、この態様に限られることはない。
続いて、再び図6を参照しながら温度検出部21および電圧制御部22を説明する。温度検出部21は、半導体レーザ1の周囲温度を検出して、検出した温度に応じた情報を電圧制御部22に与える。後述のように、本実施形態においては温度検出部21はサーミスタである。サーミスタは温度に応じて抵抗値が変化するため、その抵抗値の変化が電圧制御部22に対して与えられる情報となる。なお、図6においては、温度検出部21は半導体レーザ1と離れて配置されているが、これは記載の便宜のためである。温度検出部21は、例えば半導体レーザ1のパッケージの近傍に配置される。
以下に説明するように、上述の温度検出部21は半導体レーザ1の駆動に際して主要な役割を果たす。しかし、温度検出部21は本発明を実施化するための専用の構成要素である必要はない。半導体レーザを用いた一般の装置、例えば光学ヘッドおよびそのような光学ヘッドを備えた光ディスク装置では、以下に例示するような他の目的のため、既に温度を検出する素子を搭載しているからである。したがって、本実施形態による温度検出部21は、既に存在する光学ヘッドの構成要素を流用しているといえる。したがって、温度検出部21は必ずしもレーザ駆動装置10内に設けられている必要はない。換言すれば、レーザ駆動装置10は必ずしも温度検出部21をその構成要素として含んでいる必要はない。温度検出部21が光学ヘッド52内に設けられていればよい。
温度検出素子が光学ヘッド上に搭載される例は以下のとおりである。すなわち、半導体レーザは高温動作において破壊または劣化の恐れがあるため、高温時には再生または記録の動作を中止させる必要がある。そこで温度検出素子が設けられ、半導体レーザの周囲温度を検出して、その保護を図るために利用される。
また、光ディスク装置では、情報の再生または記録に最適な発光パワーやレーザ光の最適な記録ストラテジは、一般には温度によって異なっている。そのため、温度検出素子が設けられ、検出された温度に応じて、発光パワーまたは記録ストラテジを補正するために利用される(例えば、特開平7−182721号公報や特開2001−297437号公報)。
電圧制御部22はレーザ駆動部2に対して電源電圧Vcを供給する。電源電圧Vcはレーザ駆動部20および半導体レーザ1の駆動に必要な電源である。より詳しくは、電圧制御部22は、温度検出部21によって検出された温度に応じて、レーザ駆動部2に供給する電圧Vcを適応的に変化させる。電圧制御部22は、比較的低温のときには電圧Vcを上げるように制御し、比較的高温のときには電圧Vcを下げるように制御する。
ここで、温度検出部21および電圧制御部22の動作の原理を説明するために、半導体レーザ1を含む一般的なレーザ光源の動作電圧の温度依存性を説明する。波長が400〜430nmの青紫色レーザでは、低温になるに従ってレーザ動作電圧が高くなることが知られている(例えば、「月刊オプトロニクス」,2003年5月号,オプトロニクス社,P121)。図8は、青紫色半導体レーザの温度に応じたレーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性(Iop−Vop特性)を示すグラフである。半導体レーザの動作電圧は温度に大きく依存している。
具体的には、半導体レーザのパッケージ内の温度が比較的高いとき(例えば摂氏40度程度のとき)は、レーザ動作電圧(Vop)は比較的低い値(VopH)以下に収まる。一方、半導体レーザのパッケージ内の温度が比較的低いとき(例えば摂氏20度程度のとき)、レーザ動作電圧は急激に高くなり、その値は先のVopHの値よりも大きくなる。図2のレーザ駆動電流−レーザ発光パワー特性A(Iop−P特性A)に示すように、半導体レーザ1の発光パワー(P)が特定されると、そのパワーを与える駆動電流(Iop)が特定される。しかし、その駆動電流(Iop)を得るための動作電圧(Vop)の値は、半導体レーザ1の温度に応じて異なっている。
これらの事実を考慮して、本実施形態においては、電圧制御部22は、温度検出部21において検出した温度に応じて以下のように動作する。すなわち、高温時には電圧制御部22は、
Vc = VopH + Vtr (式3)
として得られる電圧Vcがレーザ駆動部2に供給されるように出力電圧Vcを制御する。式3において"Vtr"とは、レーザ駆動部2の動作に必要な電圧である。同様に、低温時には、
Vc = VopL + Vtr (式4)
として得られる電圧Vcがレーザ駆動部2に供給されるように出力電圧Vcを制御する。各電圧値の具体例は、VopH=4.5V、VopL=6.5V、Vtr=2Vである。
低温および高温のいずれでも確実に動作させる観点からすれば式4で示すVcを常に供給すればよい。しかし、高温時に式3により得られる電圧Vcを供給することにより、(VopL-VopH)×Iop分の電力の低減が可能となる。
なお本明細書では、式3に示す動作電圧VopH、および、式4に示す動作電圧VopLの2段階で、電圧制御部22の出力電圧Vcの値を制御している。しかし2段階は例であり、より多くてもよいし、温度に応じて無段階に出力電圧Vcの値を制御してもよい。後者の制御は、例えば必要とされる駆動電流(Iop)の大きさごとに、半導体レーザ1の各温度における動作電圧を予めサンプリングしてテーブル等に保持しておけばよい。駆動電流(Iop)の大きさとそのときの半導体レーザ1の温度が特定されれば、そのテーブルを参照して動作電圧(Vop)を取得できる。その値を式3のVopL(または式4のVopH)に代入すれば、そのときの電圧Vcが特定される。
上述のように、温度検出部21は光学ヘッド52上に専用で設ける必要はないので、新たな構成要素を必要とせずに、省電力を実現できる。
なお、上述の温度は、半導体レーザのパッケージ内の温度であるとしているが、この温度はパッケージが配設される周辺環境の温度に応じて変化しうる。パッケージが光ディスク装置等のドライブ装置内に設けられると、ドライブ装置が動作していなかった環境下、例えばドライブ装置の起動直後ではパッケージの温度は室温と同等である。しかし、ドライブ装置が起動して所定時間が経過した後は、パッケージの温度は室温に対してさらに10〜20度程度は高くなる。よって、起動直後のパッケージ内温度と、一定時間以上時間が経過した後のパッケージ内温度との差が20度程度になることは十分生じうる。
次に、上述の動作を実現するための構成を説明する。図9は、温度検出部21および電圧制御部22の回路構成を示す。図9においては、これまでの温度検出部21は「サーミスタ21」として記述している。
一方、電圧制御部22は、電源31と、抵抗32および33とを有する。抵抗32はサーミスタ21と並列的に接続されている。抵抗32およびサーミスタ21のそれぞれの一端は、抵抗33の一端に接続されている。この接続線路中から、電圧制御部22の電圧Vcが取り出され出力される。抵抗32およびサーミスタ21の他端は設置されている。一方、抵抗33の他端には電源31(電圧値Vcc)が接続される。
図10(a)は、サーミスタ21の抵抗値Rthの温度特性を示す。サーミスタ21は、温度が下がると抵抗値Rthは上がり、温度が上がると抵抗値Rthは下がる。
一方、図10(b)は、電圧制御部22の出力電圧の温度特性を示す。抵抗33の抵抗値をR33などと表し、抵抗33を流れる電流の大きさをIと表すと、電圧制御部22の出力電圧Vcは、
Vc=(R32//Rtho)/[(R32//Rtho)+R33]・I (式5)
として得られる。図10(b)によれば、温度が下がると出力電圧Vcは上がり、温度が上がると出力電圧Vcは下がることが理解される。
次に、図6に示すレーザ駆動部20の具体的な構成を説明する。図11は、レーザ駆動部20の構成を示す。レーザ駆動部20はトランジスタとして実現できる。トランジスタ20のコレクタ端子は電圧制御部22と接続され、その出力電圧Vcが印加される。トランジスタ20のベース端子はレーザパワー制御部12と接続され、その出力電圧Vkが印加される。トランジスタ20のエミッタ端子は半導体レーザ1のアノード端子と接続される。ベース端子からエミッタ端子を経て半導体レーザ1に流れる電流Iopは、
Iop=(Vk−VBE)/z (式6)
として得られる。なお「VBE」はベース−エミッタ間の電圧、zはレーザのインピーダンスである。式6によれば、電流Iopはレーザパワー制御部12の出力電圧Vkによって制御され、電圧制御部22の出力電圧Vcによっては制御されていないことが理解される。
なお、記録および/または再生の品質を改善する目的で、半導体レーザ1の周辺温度を検出して、パワー設定部11およびレーザパワー制御部12における電圧Vkを変化させる手法も考えられる。この手法は、レーザ駆動部20のベース端子に印加される電圧Vkおよびその電圧に応じて定まる駆動電流の調整のために有効である。一方、電圧Vcはレーザ駆動部20のコレクタ端子に印加されるため、先の電圧Vkとは独立している。よって電圧Vcを調整して動作する最低限度に調整することが電力消費に関して有利であることに変わりはない。なお、レーザ駆動部20はトランジスタに限るものではなく、レーザパワー制御部20の出力値に応じて半導体レーザ1に供給する電流を制御できる構成要素であればよい。
次に、図12を参照しながら、上述の原理に基づいて動作する光ディスク装置50の処理を説明する。図12は、光ディスク装置50の処理の手順を示す。
まず光ディスク装置50の動作開始等に合わせて、ステップS121において、パワー設定部11はユーザ等から通常再生モード、早送り再生モード等の再生モードの指示を受け取る。次のステップS122では、パワー設定部11はその再生モードに応じて半導体レーザに供給する駆動電流を決定し、その駆動電流を得るための設定指示を出力する。ステップS123では、レーザパワー制御部12は、設定指示信号bに基づいて駆動電流を与えるための電圧Vkを出力する。
一方、ステップS124において、温度検出部21が半導体レーザ1の周辺温度を検出すると、ステップS125において電圧制御部22は周辺温度に応じた電圧Vcを出力する。この電圧は、半導体レーザ1が発光するために必要十分な電圧であり、過剰には印加されない。ステップS126では、レーザ駆動部20は、電圧Vkに基づいて決定されるレーザ駆動電流を半導体レーザ1に流すと、半導体レーザ1が発光する。
ステップS127では、レーザ駆動装置10において所定時間が経過したか否かが判断される。所定時間が経過していればステップS124に戻り、半導体レーザ1の周辺温度を検出する。所定時間が経過していなければ、ステップS128に進む。
このステップS127を規定した理由は、より柔軟にレーザ駆動制御を行うためである。「所定時間」とは温度検出部21において温度を検出するタイミングを意味しており、必ずしも固定値でなくてもよい。例えば光ディスク装置50の動作開始後5分以内であれば、「所定時間」を1分ごとに設定し、動作開始後5分以降は「所定時間」を5分ごとに設定することができる。動作開始直後は温度が上昇し始めるため、比較的高い頻度で半導体レーザ1の温度を検出する。一方、動作開始から5分程度経過すると温度の変化は概ね収束すると考えられるため、その後は比較的少ない頻度で半導体レーザ1の温度を検出すればよい。
ステップS128においては、レーザ駆動装置10において再生終了か否かが判断される。再生を継続するときには、ステップS126に戻り、レーザ駆動部20は半導体レーザ1に駆動電流を流し続ける。一方再生終了時には、駆動電流を遮断して半導体レーザ1の発光を停止し処理が終了する。なお、ステップS128の判断は、例えばパワー設定部11に対してパワーの供給停止等の指示が与えられるか否かで判断することができる。
以上の処理の手順を経ることにより、レーザ駆動装置10は半導体レーザ1の駆動に必要な電圧を過不足なく利用することができる。よって、レーザ駆動装置10を有する光学ヘッド52や、その光学ヘッド52を搭載した光ディスク装置50においては、極めて有効な省電力機能を提供することができる。この省電力機能は、特に使用可能な電力に制限のある携帯用光ディスク装置等に適用することが好適である。
以上説明した構成によれば、光学ヘッドに一般的に搭載される温度センサ等を温度検出部21として用いるので、新たな構成要素を必要とすることなく、低温でのレーザ発光と高温での省電力の両方が可能となる。
なお、温度検出部21を用いて電圧制御部22の出力電圧Vcを制御する本実施形態による構成は、青紫色レーザを用いたレーザ駆動装置において特に効果が大きい。その理由は、第1に、青紫色レーザのレーザ動作電圧の変動は、図8に示すように温度の影響が非常に大きく、温度によるレーザ動作電圧の変化に対応して電圧Vcを制御すると省電力への効果が大きいからである。第2に、青紫色レーザは赤色レーザ等に比べて、レーザ発光に必要なバンドギャップが大きいため、レーザ動作電圧は高くなる。よって、赤色レーザと比べると青紫色レーザの消費電力は増える傾向にあり、省電力および機器の温度上昇(特に高温時)に対する要求が赤色レーザの場合以上に大きいからである。
また図6では、パワー設定部11およびレーザパワー制御部12はレーザ駆動装置10内に設けられるとしている。しかし、これらはレーザ駆動装置10の外部に設けられていてもよい。例えば、これらはレーザ駆動装置10外部の光学ヘッド52内に設けられてもよいし、光学ヘッド52外部の光ディスク装置50内に設けられてもよい。
なお、本実施の形態において、サーミスタ31と抵抗32、33を組み合わせて、温度検出部21と電圧制御部22を構成する例を示したが、これに限るものではなく、サーミスタ21としてICチップを用いてもよいし、電圧制御部として、プログラミング可能な電源を用いてもよい。
また、本実施の形態においては、半導体レーザのカソード端子が接地されている例を示したが、アノード端子が電源に接続される場合でも、同様の効果を得られることは言うまでもない。
本発明によれば、新たな構成要素を必要とすることなく電力の消費を抑えることが可能な半導体レーザの駆動装置が提供される。本発明による駆動装置を有する機器では省エネルギー化を図ることができるとともに、さらには温度上昇を抑制することができる。このような機器としては、青紫色レーザ光を用いて光ディスクに対してデータを書き込みおよび読み出す光ディスク装置等が好適であり、特に、機器の温度上昇の抑制および省電力化が厳しく要求される携帯型機器(携帯型光ディスク装置等)に好適である。
半導体レーザを駆動するための一般的な接続構成を示す図である。
半導体レーザのレーザ駆動電流−レーザ発光パワー特性A(Iop−P特性A)と、レーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性B(Iop−Vop特性B)とを示すグラフである。
従来の半導体レーザ駆動装置300の機能ブロックの構成を示す図である。
従来の電圧選択処理の判断手順を示す図である。
本発明の実施形態による光ディスク装置50の機能ブロックの構成を示す図である。
本発明の実施形態によるレーザ駆動装置10の機能ブロックの構成を示す図である。
レーザパワー制御部12の機能ブロックの構成を示す図である。
青紫色半導体レーザの温度に応じたレーザ駆動電流−レーザ動作電圧特性(Iop−Vop特性)を示すグラフである。
温度検出部21および電圧制御部22の回路構成を示す図である。
(a)はサーミスタ21の抵抗値Rthの温度特性を示すグラフであり、(b)は電圧制御部22の出力電圧の温度特性を示すグラフである。
レーザ駆動部20の構成を示す図である。
光ディスク装置50の処理の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 半導体レーザ
7 受光部
8 電流電圧変換器
10 レーザ駆動装置
11 パワー設定部
12 レーザパワー制御部
20 レーザ駆動部
21 温度検出部
22 電圧制御部
24 発光パワー検出部
50 光ディスク装置
52 光学ヘッド
54 制御信号生成部
56 駆動回路
58 再生処理部
60 光ディスク