JPS6365010B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は射出成形機の射出制御方法に関する
ものである。

射出成形機における１成形サイクル中の各工程
の中で、溶融樹脂を金型内に充填する射出工程
は、成形品品質に影響を及ぼす極めて重要な工程
である。

また成形品の品質を改善し不良を解消すること
を目的とした種々の射出工程プログラム制御装置
が実用化されている。

本発明は、油圧回路に比例電磁式流量制御弁及
び比例電磁式圧力制御弁を組込み、射出スクリユ
あるいは射出プランジヤの位置の検出装置を備え
た射出成形機において、射出ストロークを幾つか
に分割し、射出スクリユあるいは射出プランジヤ
の速度あるいは射出シリンダ油圧圧力を設定して
おき、射出前進するに従つて速度あるいは圧力を
電気的に切換えることができ、かつその分割位置
を任意に設定できる射出工程プログラム制御に係
わるものである。

射出工程は射出開始から樹脂が金型内にほぼ充
満するまでの充填工程と、金型内に充満した樹脂
を圧縮する圧縮工程と、圧縮充填した溶融樹脂を
冷却による収縮分を補充填するため又は製品部の
樹脂の逆流をとるため等の保圧工程に分割して考
えることができる。

従来はこれらの各工程を射出工程プログラム制
御装置により、正確に分割して制御しようとして
も、樹脂の挙動、制御装置の応答遅れなどから極
めて困難なため、制御装置における速度、圧力等
の制御の変更点を便宜的に工程の分岐点と考え、
速度、圧力あるいは制御分割位置、タイマーの時
間等の設定を、試行錯誤を繰返した上にて決定
し、充填工程、圧縮工程、保圧工程と分割する曖
味なものであつた。特に射出速度制御領域から射
出圧力制御領域への切換時には、射出スクリユあ
るいは射出プランジヤの速度、射出シリンダ油圧
圧力の急激な変化などが伴なつていた。

上記急激な変化は成形品品質に悪影響を及ぼす
のみならず射出工程の動作の繰返し安定性を悪く
し、一定品質の成形品を生産しにくいものとする
欠点があつた。

射出工程は連続した一連の過程であり、本来そ
れぞれの工程の分割点を見いだすことは極めて困
難なことで、それを制御の面から画一的に速度制
御領域あるいは圧力制御領域として分割制御する
ことが、上記欠点を生む原因となる。

本発明の方法を理解し易くするために、従来方
法の１例を第１図により説明する。なおこの図は
射出工程におけるスクリユの動作を、スクリユ位
置、時間と速度指令値、実速度、圧力指令値、実
油圧圧力の関係をもつて示すものである。

図中横軸は、Ｘ―X′の左側s₀―s₄までスクリユ
ーの位置を表わし、Ｘ―X′の右側s₄〜Ｋまでは時
間を表わす。縦軸は、射出速度指令値（設定値）
Vi（ｉ＝１、２、３、４）及び実射出速度（スク
リユ速度）Va射出シリンダ油圧圧力指令値（設
定値）Pi（ｉ＝１、２、３、４）及び実油圧圧力
Paである。またs₀―Ａ―Ｂ―Ｃ―Ｄ―Ｅ―Ｆに
至る曲線は、射出スクリユ速度（射出速度）を示
し、s₀―Ｇ―Ｈ―Ｉ―Ｊ―Ｋに至る曲線は、射出
シリンダ内油圧圧力を示すものである。

射出開始時s₀位置にあつたスクリユは、射出開
始と共に速度V₁の設定値により制御されて移動
開始する。

スクリユがs₁位置に達すると速度指令値はV₂
となり２段目の速度となり、s₂位置にて速度指令
値はV₃となり３段目の速度となり、s₃位置にて
速度指令値はV₄となり４段目の速度となる。V₄
の速度はV₃よりも減速をさせる。一方射出シリ
ンダ油圧圧力は、負荷とのバランスによつて変動
しながら設定圧力（指令値P₁）以下の圧力で推
移し、s₃点通過直後速度設定値が低くなつたため
一時に降下する。s₄点に近づくに従い再び圧力は
上昇して金型内樹脂の充填率が100％に近づくと
油圧圧力は急激に上昇し、s₄点で圧力指令値はP₂
に切替り、射出行程は、速度制御域から圧力制御
域に移行する。s₄点にスクリユが到達後、前もつ
て設定された設定時間T₁が経過すると、射出圧
力設定値はP₃の設定値となり、前もつて設定さ
れた設定時間T₂が経過するとP₄の設定値となり、
圧力によつて制御され射出工程終了信号により射
出工程は完了し射出圧力は解除される。

上記の様に従来の射出制御方法においては充填
工程は速度制御で行ない、圧縮工程と保圧工程に
ついては射出シリンダ油圧圧力の圧力制御により
行なつていた。この様に圧縮工程を直接制御せず
に速度制御工程（充填工程）から圧力制御工程へ
の切換制御で圧縮工程を替えていたのでは、切換
精度を高めるために充填完了直前の射出速度を低
下させかつスクリユ検出位置精度を向上させたと
しても、充填完了時（s₄点）の射出スクリユ、射
出ラム、流動樹脂の慣性エネルギー等は無視でき
ないためそれらの慣性力を低減させるために、充
填工程直後の油圧圧力を急激に下降させねばなら
ない。

これは圧縮工程を速度制御から圧力制御に切換
させることによる過渡的な状態にて制御している
ことになり、制御装置全体の特性からして、制御
の安定性に欠けることとなる。また速度制御用の
流量制御バルブは定格流量の５％以下は制御の繰
返し安定性が極端に悪くなるので、安定成形する
ためには充填完了直前の速度は一定レベル以下に
設定することができない。

一方、肉薄の成形品のように、充填工程終期に
射出速度を低下させることのできないものもあり
この場合は速度を遅くして切換精度を高めること
はできない。

本発明は上述のような従来方法の欠点を排除す
るために考えられたものであつて、充填工程、圧
縮工程、保圧工程の各工程への移行にあたり、便
宜的に区分した際に生じがちな各工程の分割点前
後の上記急激な変化を抑制し、一定品質の成形品
を容易に成形することができる新たな射出制御方
法を提供せんとするものである。

本発明は射出工程において、充填工程は射出ス
クリユあるいは射出プランジヤ速度（以下速度と
いう）制御により制御し、充填工程から圧縮工程
への切換え点は射出スクリユーあるいは射出プラ
ンジヤの位置により行ない、圧縮工程の速度の設
定値は、望ましくは充填工程終期速度よりも低く
し、射出シリンダー内油圧圧力（以下圧力とい
う）の設定値はほぼ圧縮工程了時の圧力と一致す
る値となし速度及び圧力の上限値を決めて速度制
御から圧力制御への移行を負荷とのバランスによ
つて行なわせるべくしたフローテイング制御域を
圧縮工程とし、圧縮工程から保圧工程への切換点
は射出スクリユあるいは射出プランジヤの位置に
より行い保圧工程は圧力制御によつて行なうよう
にしたものである。

次に本発明の１実施例を第２図及び第３図によ
り説明する。なお装置としては電磁比例式流量制
御弁及び電磁比例式圧力制御弁により、速度及び
圧力を４段階に設定することができるものを用い
た。また第３図は従来例と比較し易いように、第
１図と同一の座標を用いた。

１は射出成形機の加熱筒であり、３は射出スク
リユ（以下スクリユという）で、射出ラム５と連
結されており射出シリンダ４の圧油により前進
し、オイルモータ６によりスプライン軸をかいし
て回転できる。射出シリンダ４に作用する圧油は
油圧回路中に設けられた電磁比例式流量制御弁９
によりその流量が調節される。制御弁９は電流等
の電気信号の大小によりその弁開度を調整するよ
うになつている。８は電磁比例式圧力制御弁で電
流等の電気信号の大小により油圧回路圧力の最大
値を制御するようになつている。１０は電磁切換
弁で電気信号によつて、油圧源１１を射出シリン
ダ４に接続させる。

７は位置検出器であり、エンコーダ又はポテン
シヨメータ等で構成され、ラツクとピニオンによ
つてスクリユ３の動きと同期させている。

１２は位置信号処理回路部であり、検出器７の
電気信号を位置の信号に処理しスクリユ位置信号
を発生させる。１３は比較演算部でスクリユ位置
信号と位置設定器１４，１５，１６，１７の設定
値と比較し流量指令部１８、及びタイミング信号
発生部３０にタイミング指令信号を発生させる。
タイミング信号発生部３０は時間設定器２３によ
つて時間設定できるタイマー機能を含んでおり、
比較演算部１３からの信号により、圧力指令部２
４へ、タイミング信号を発生させる。

１８は流量指令部であり比較演算部１３のタイ
ミング信号により、速度設定器１９，２０，２
１，２２のいずれか一つを選択し、その速度設定
器の設定値信号を増巾器２９へ電圧信号として出
力し、増巾器２９によつて、その電圧信号は制御
弁９の制御信号として電流信号に変換され制御弁
９を作動させる。

２４は圧力指令部であり、タイミング信号発生
部３０からのタイミング信号により、圧力設定器
２５，２６，２７，２８ろいずれか一つを選択
し、その圧力設定器の設定値信号を増巾器２９′
へ電圧信号として出力し増巾器２９′によつてそ
の電圧信号は電流信号に変換され制御弁８を作動
させる。

次に制御方法について説明する。射出行程開始
時、スクリユはs₀位置にある。射出成形機制御装
置（図示なし）からの射出信号により電磁切換弁
１０が動作するとともに比較演算部１３、及びタ
イミング信号発生部３０の信号によつて速度設定
器１９により速度はV₁に圧力設定器２５により
圧力はP₁に設定され射出を開始する。スクリユ
３の移動にともない位置検出器７は絶えずその位
置あるいは移動量を検出し位置信号処理回路部１
２により位置信号が比較演算部１３へ送られてい
る。スクリユ３が位置設定器１４の設定値s₁位置
になると比較演算部１３からタイミング信号が発
せられ、流量指令部１８は速度設定器２０を選択
し速度の設定値はV₂となる。さらにスクリユ３
が前進し位置設定器１５の設定値s₂位置となると
比較演算部１３からタイミング信号が発せられ流
量指令部１８は速度設定器２１を選択し速度設定
値V₃となる。さらにスクリユ３が前進し位置設
定器１６の設定値s₃位置となると比較演算部１３
からタイミング信号が発せられ流量指令部１８は
速度設定器２１を選択し速度の設定値はV₄とな
るとともに比較演算部１３からのタイミング信号
によつて、タイミング信号発生部３０は圧力変更
タイミング信号を発生し圧力指令部２４は圧力設
定器２６を選択し圧力設定値はP₁からP₂に切換
る。

さらにスクリユ３は前進し、位置設定器１７の
設定値であるs₄位置に到達すると、比較演算部１
３からタイミング信号が発せられ、タイミング信
号発生部３０からの圧力変更タイミング信号によ
り圧力指令部２４は圧力設定器２７を選択し、圧
力設定値はP₂からP₃に切換る。一方タイミング
信号発生部３０は、スクリユ３がs₄位置に達する
と時間計測を開始する。時間設定器２３の設定時
間T₁時間が経過すると、タイミング信号発生部
３０は圧力変更タイミング信号を発生し、この信
号により圧力指令部２４は圧力設定器２８を選択
し圧力設定値はP₃よりP₄に切換る。射出成形機
制御装置（図示なし）からの射出完了信号によ
り、圧力、速度の指令が解除され、電磁切換弁１
０がOFFすることによつて射出工程が終了する。
前述のように本発明の射出工程制御方法は、スク
リユ３が射出開始位置s₀よりs₃まで移動する間の
充填工程は速度制御により行なわせs₃位置にて溶
融樹脂は金型キヤビテイ内にほぼ充満されるよう
になし、スクリユ３がs₃〜s₄位置の区間、すなわ
ち圧縮工程区間において速度設定器１７に設定さ
れた設定値V₄、圧力設定器２０に設定された設
定値P₂で、かつ望ましくはV₄の設定値はV₃の設
定値より低く、P₂の設定値はP₃の設定値よりも
やや高めとし、速度制御から圧力制御への移行
を、ステツプ的な過渡状態とさせない様に、負荷
とのバランスによつて行なわせるべくした速度制
御でもなく、また圧力制御でもないフローテイン
グ制御状態を設定条件により作り出し、P₂の設
定圧力とスクリユ３の位置s₄によつて溶融樹脂は
金型キヤビテイ内にほぼ100％充填させ、圧縮工
程終了はスクリユ位置によつて制御して、保圧行
程は時間制御となるべくしたものである。

以上説明した様に、本発明は圧縮工程において
フローテイング制御を行ない、圧縮工程の終了時
点はスクリユ位置により制御することにより次の
ような効果を有する。

(1) 速度制御から圧力制御にスムーズに移行で
き、過渡的な状態がないから制御の安定性が向
上し、このため一定品質の成形品の生産が可能
となる。

(2) スクリユー、ラム、樹脂等の慣性エネルギー
の影響を少なくすることができるので動圧の影
響が小さくなりスクリユのストロークとP₂設
定圧力によつて射出量は一義的に決め易くなり
成形条件決めがしやすくなり操作性が向上す
る。

(3) フローテイング制御の特徴から圧縮工程終了
直前には自動的にスクリユー速度が減速される
ので、制御装置の欠点である応答遅れを改善す
るために従来とられていた速度の減速はそれ程
する必要はなく、場合によつては速度を上げる
ことができるので肉薄の成形品等の速度をおと
せない成形品の場合に有効である。

(4) 低速の設定が必要ないため、比例電磁式流量
制御弁を繰返し安定性の良い流量制御域で使用
できるので制御の安定性が向上し、このため一
定品質の成形品の生産が可能となる。

(5) 制御装置は従来のものとほとんど同一価格で
製作できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の射出工程プログラムによる射出
制御方法の説明図、第２図は本発明の射出制御方
法を実施する場合に用いられる装置のブロツク
図、第３図は本発明の射出制御方法を示す第１図
と同様な説明図である。 １…加熱筒、３…スクリユ、４…射出シリン
ダ、５…射出ラム、６…オイルモータ、７…位置
検出器、８…電磁比例式圧力制御弁、９…電磁比
例式流量制御弁、１０…電磁切換弁、１１…油圧
源、１２…位置信号処理回路部、１３…比較演算
部、１４，１５，１６，１７、…位置設定器、１
８…流量指令部、１９，２０，２１，２２…速度
設定器、２３…時間設定器、２４…圧力指令部、
２５，２６，２７，２８…圧力設定器、２９，２
９′…増巾器、３０…タイミング信号発生部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 射出成形機の射出工程制御において、充填工
   程は射出シリンダの流量を変化させて射出プラン
   ジヤまたはスクリユの前進する速度を予め設定し
   たプログラムにより速度制御し、充填工程から圧
   縮工程への切換え点及び圧縮工程から保圧工程へ
   の切換え点は、いずれも射出スクリユまたはプラ
   ンジヤの位置により制御し、圧縮工程中の射出シ
   リンダ油圧圧力設定値は、圧縮工程終了時の射出
   シリンダ内油圧圧力値とほぼ一致するように予め
   設定し、圧縮工程中の制御は射出スクリユまたは
   プランジヤの速度及び射出シリンダ油圧圧力設定
   値と負荷とによるバランスによつてなされるフロ
   ーテイング制御により行ない、保圧工程中は予め
   設定した時間による制御により、射出シリンダ内
   油圧圧力を変化させて保圧圧力を予め設定したプ
   ログラムにより制御したことを特徴とする射出成
   形機の射出工程制御方法。